(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110251
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】粘着剤組成物および粘着シート
(51)【国際特許分類】
C09J 153/02 20060101AFI20240807BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240807BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
C09J153/02
C09J7/38
C09J11/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014733
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100154449
【弁理士】
【氏名又は名称】谷 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100174159
【弁理士】
【氏名又は名称】梅原 めぐみ
(72)【発明者】
【氏名】中川 宗重
(72)【発明者】
【氏名】田村 彰規
(72)【発明者】
【氏名】山口 智雄
(72)【発明者】
【氏名】畑中 逸大
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA05
4J004AB01
4J004DB03
4J004EA01
4J004EA06
4J004FA08
4J040DM011
4J040JA09
4J040JB09
4J040KA16
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4J040KA26
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4J040KA32
4J040KA35
4J040KA42
4J040LA06
4J040NA12
4J040NA15
4J040NA19
(57)【要約】
【課題】軟質粗面接着性とブロッキング防止性とを両立した粘着剤を形成可能な粘着剤組成物を提供する。
【解決手段】モノビニル置換芳香族化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体と、粘着付与樹脂と、軟化剤と、充填剤と、を含有する粘着剤組成物が提供される。この粘着剤組成物において、上記粘着付与樹脂の含有量は、上記ブロック共重合体100重量部に対して45重量部以上150重量部以下である。上記軟化剤の含有量は、上記ブロック共重合体100重量部に対して3重量部以上45重量部以下である。上記充填剤の含有量は、上記ブロック共重合体100重量部に対して3重量部以上70重量部以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノビニル置換芳香族化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体と、粘着付与樹脂と、軟化剤と、充填剤と、を含有し、
前記粘着付与樹脂の含有量は、前記ブロック共重合体100重量部に対して45重量部以上150重量部以下であり、
前記軟化剤の含有量は、前記ブロック共重合体100重量部に対して3重量部以上45重量部以下であり、
前記充填剤の含有量は、前記ブロック共重合体100重量部に対して3重量部以上70重量部以下である、粘着剤組成物。
【請求項2】
前記粘着付与樹脂は、
芳香環を含まない天然物系粘着付与樹脂(A)と、
芳香環を含む石油系粘着付与樹脂(B)と、
を含む、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記粘着付与樹脂(A)は、粘着付与樹脂(A1)としてのテルペン樹脂と、粘着付与樹脂(A2)としてのロジン系樹脂と、を含む、請求項2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
フェノール系粘着付与樹脂の含有量が、前記ブロック共重合体100重量部に対して30重量部未満である、請求項1~3のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
前記ブロック共重合体はスチレン系ブロック共重合体である、請求項1~3のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
前記スチレン系ブロック共重合体のスチレン含有量は10~22重量%である、請求項5に記載の粘着剤組成物。
【請求項7】
前記スチレン系ブロック共重合体に占めるジブロック体の割合は60重量%超である、請求項5に記載の粘着剤組成物。
【請求項8】
有機溶剤の含有量が1重量%未満である、請求項1~3のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項9】
請求項1~3のいずれか一項に記載の粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有する、粘着シート。
【請求項10】
23℃、50%RHの環境下にて、引張速度300mm/分、剥離角度180度の条件で測定される軟質ウレタンフォームに対する粘着力が3N/10mm以上である、請求項9に記載の粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノビニル置換芳香族化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体(例えばスチレン系ブロック共重合体)を含む粘着剤組成物に関する。また、本発明は、上記ブロック共重合体を含む粘着剤層を備えた粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に粘着剤(感圧接着剤ともいう。以下同じ。)は、室温付近の温度域において柔らかい固体(粘弾性体)の状態を呈し、圧力により簡単に被着体に接着する性質を有する。かかる性質を活かして、粘着剤は、作業性がよく接着信頼性の高い接合手段として、家電製品から自動車、OA機器等の各種産業分野において広く利用されている。かかる粘着剤の代表的な組成として、常温でゴム弾性を示すポリマーと粘着付与樹脂とを含む組成が挙げられる。例えば特許文献1には、スチレン-イソプレンブロック共重合体と粘着付与樹脂とを含む粘着剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
粘着剤の被着体に対する接着性は、被着体の表面形状や性状によって異なる。例えば軟質ウレタンフォームのような軟質多孔質体は、表面が多孔質の粗面であることに加えて粘着剤を圧着する際に被着体が変形しやすいなどの事情により、接着性が不足しがちな被着体である。特許文献1では、スチレン-イソプレンブロック共重合体と粘着付与樹脂とを含む粘着剤を用いて、ポリプロピレン板の粗面である被着体に対する粘着力が検討されているが、軟質多孔質体の粗面である被着体に対する接着性は検討されていない。
【0005】
ところで、粘着剤は、典型的には粘着剤層を含む粘着シートの形態で用いられる。被着体に貼り付けられる前の粘着シートは、粘着剤の相互付着を防ぐため、粘着剤層の表面(粘着面)を剥離性の表面(剥離面)に当接させた形態で、加工、保存、搬送、供給などの取り扱いが行われることが多い。上記剥離性表面は、剥離ライナーの表面や、基材付き片面粘着シートにおける基材背面(粘着剤層とは反対側の表面)などであり得る。しかし、このように粘着面を剥離面に当接させた形態であっても、粘着剤が上記剥離面よりも外方にはみ出して相互付着(ブロッキング)を生じることがある。特に、粘着シートがロール状に巻回された粘着シートロールの形態や、枚葉状の粘着シートが積み重ねられた形態では、粘着剤層の厚み方向に加わる圧縮応力によって粘着シート端面からの粘着剤のはみ出しが促進されるため、上記ブロッキングが起こりやすい。
【0006】
粘着剤のはみ出しに起因するブロッキングを改善しようとする場合、圧力を受けても変形しにくい比較的硬めの粘着剤が設計され得る。しかし、粘着剤を硬くすると、該粘着剤を軟質多孔質体の粗面に密着させることはより困難になる傾向にある。つまり、軟質多孔質体の粗面に対する接着性(以下、軟質粗面接着性ともいう。)と、ブロッキングの発生抑制(ブロッキング防止性)とは、トレードオフの関係にある。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みて創出されたものであり、軟質粗面接着性とブロッキング防止性とを両立した粘着剤を形成可能な粘着剤組成物を提供することを目的とする。関連する他の目的は、軟質粗面接着性とブロッキング防止性とのバランスのよい粘着シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この明細書によると、モノビニル置換芳香族化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体と、粘着付与樹脂と、軟化剤と、充填剤と、を含有する粘着剤組成物が提供される。上記粘着付与樹脂の含有量は、上記ブロック共重合体100重量部に対して45重量部以上150重量部以下である。上記軟化剤の含有量は、上記ブロック共重合体100重量部に対して3重量部以上45重量部以下である。そして、上記充填剤の含有量は、上記ブロック共重合体100重量部に対して3重量部以上70重量部以下である。上記の粘着剤組成物によると、モノビニル置換芳香族化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体を含む組成で、軟質粗面接着性とブロッキング防止性とを両立した粘着剤を形成することができる。
【0009】
いくつかの好ましい態様において、上記粘着付与樹脂は、芳香環を含まない天然物系粘着付与樹脂(A)と、芳香環を含む石油系粘着付与樹脂(B)と、を含む。モノビニル置換芳香族化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体を含む粘着剤組成物において、粘着付与樹脂(A)および(B)と、軟化剤と、充填剤とを組み合わせて使用することにより、ここに開示される技術による効果が好ましく実現される。
【0010】
いくつかの好ましい態様において、上記粘着付与樹脂(A)は、粘着付与樹脂(A1)としてのテルペン樹脂と、粘着付与樹脂(A2)としてのロジン系樹脂と、を含む。粘着付与樹脂(A)として、テルペン樹脂とロジン系樹脂とを組み合わせて使用することにより、ここに開示される技術による効果がより好ましく実現される。
【0011】
いくつかの好ましい態様に係る粘着剤組成物において、フェノール系粘着付与樹脂の含有量は、上記ブロック共重合体100重量部に対して30重量部未満である。フェノール系粘着付与樹脂の使用量を上記のように制限することにより、保存性がよく、粘着特性等の品質安定性に優れた(例えば、経時による粘着シートの性能劣化が抑制された)粘着剤が好ましく得られる。
【0012】
いくつかの態様において、上記ブロック共重合体として、スチレン系ブロック共重合体が好ましく採用される。上記スチレン系ブロック共重合体を含有する粘着剤において、ここに開示される技術による効果は好ましく実現される。なかでも、スチレン-イソプレンブロック共重合体を含む粘着剤において、ここに開示される技術による効果は好適に発揮され得る。
【0013】
いくつかの好ましい態様において、上記スチレン系ブロック共重合体のスチレン含有量は10~22重量%である。スチレン系ブロック共重合体のスチレン含有量を上記の範囲とすることにより、軟質粗面接着性とブロッキング防止性とを両立した粘着剤が得られやすい。
【0014】
いくつかの好ましい態様において、上記スチレン系ブロック共重合体に占めるジブロック体の割合(ジブロック体比率)は60重量%超である。ジブロック体比率が上記範囲にあるスチレン系ブロック共重合体によると、軟質粗面接着性とブロッキング防止性とをバランスよく両立した粘着剤が得られやすい。
【0015】
ここに開示される粘着剤組成物のいくつかの態様において、該粘着剤組成物は、有機溶剤の含有量が1重量%未満である。そのような粘着剤組成物は、ホットメルト型の粘着剤組成物であり得る。ホットメルト型の粘着剤組成物は、有機溶剤を実質的に含有しない加熱溶融状態で塗工され得るので、生産性や環境負荷軽減の観点から好ましい。ホットメルト型の粘着剤組成物は、充填剤を良好に分散させやすいという観点からも好ましい。
【0016】
また、この明細書によると、ここに開示されるいずれかの粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有する粘着シートが提供される。上記粘着シートによると、モノビニル置換芳香族化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体を含む粘着剤層を含む構成において、軟質粗面接着性とブロッキング防止性とが両立される。
【0017】
いくつかの好ましい態様に係る粘着シートは、23℃、50%RHの環境下にて、引張速度300mm/分、剥離角度180度の条件で測定される軟質ウレタンフォームに対する粘着力が3N/10mm以上である。ここに開示される技術によると、このように所定以上の軟質ウレタンフォーム粘着力を発揮し、かつブロッキング防止性のよい粘着シートが提供され得る。
【0018】
なお、本明細書に記載された各要素を適宜組み合わせたものも、本件特許出願によって特許による保護を求める発明の範囲に含まれ得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】一実施形態に係る粘着シート(基材レス両面粘着シート)の構成を示す模式的断面図である。
【
図2】他の一実施形態に係る粘着シート(基材レス両面粘着シート)の構成を示す模式的断面図である。
【
図3】他の一実施形態に係る粘着シート(基材付き両面粘着シート)の構成を示す模式的断面図である。
【
図4】他の一実施形態に係る粘着シート(基材付き片面粘着シート)の構成を示す模式的断面図である。
【
図5】ブロッキング防止性試験の方法を示す模式的説明図である。
【
図6】定荷重剥離試験の方法を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、本明細書に記載された発明の実施についての教示と出願時の技術常識とに基づいて当業者に理解され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
なお、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明することがあり、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、図面に記載の実施形態は、本発明を明瞭に説明するために模式化されており、実際に提供される製品のサイズや縮尺を正確に表したものではない。
【0021】
この明細書において「粘着剤」とは、前述のように、室温付近の温度域において柔らかい固体(粘弾性体)の状態を呈し、圧力により簡単に被着体に接着する性質を有する材料をいう。ここに開示される技術における粘着剤は、粘着剤組成物の固形分または粘着剤層の構成成分としても把握され得る。
【0022】
この明細書において「モノビニル置換芳香族化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体」とは、モノビニル置換芳香族化合物を主モノマー(50重量%を超える共重合成分をいう。以下同じ。)とするセグメント(以下「Aセグメント」ともいう。)と、共役ジエン化合物を主モノマーとするセグメント(以下「Bセグメント」ともいう。)とを、それぞれ少なくとも一つ有するポリマーをいう。一般に、Aセグメントのガラス転移温度はBセグメントのガラス転移温度よりも高い。かかるポリマーの代表的な構造として、Bセグメント(ソフトセグメント)の両端にそれぞれAセグメント(ハードセグメント)を有するトリブロック構造の共重合体(A-B-A構造のトリブロック体)、一つのAセグメントと一つのBセグメントとからなるジブロック構造の共重合体(A-B構造のジブロック体)等が挙げられる。
【0023】
この明細書において「スチレン系ブロック共重合体」とは、少なくとも一つのスチレンブロックを有するポリマーを意味する。上記スチレンブロックとは、スチレンを主モノマーとするセグメントを指す。実質的にスチレンのみからなるセグメントは、ここでいうスチレンブロックの典型例である。また、「スチレン-イソプレンブロック共重合体」とは、少なくとも一つのスチレンブロックと、少なくとも一つのイソプレンブロック(イソプレンを主モノマーとするセグメント)とを有するポリマーをいう。スチレン-イソプレンブロック共重合体の代表例として、イソプレンブロック(ソフトセグメント)の両端にそれぞれスチレンブロック(ハードセグメント)を有するトリブロック構造の共重合体(トリブロック体)、一つのイソプレンブロックと一つのスチレンブロックとからなるジブロック構造の共重合体(ジブロック体)等が挙げられる。「スチレン-ブタジエンブロック共重合体」とは、少なくとも一つのスチレンブロックと、少なくとも一つのブタジエンブロック(ブタジエンを主モノマーとするセグメント)とを有するポリマーをいう。
【0024】
この明細書において、スチレン系ブロック共重合体の「スチレン含有量」とは、当該ブロック共重合体の全体重量に占めるスチレン成分の重量割合をいう。上記スチレン含有量は、NMR(核磁器共鳴スペクトル法)により測定することができる。
また、スチレン系ブロック共重合体に占めるジブロック体の割合(以下「ジブロック体比率」または「ジブロック比」ということがある。)は、次の方法により求められる。すなわち、スチレン系ブロック共重合体をテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、東ソー社製GS5000HおよびG4000Hの液体クロマトグラフ用カラムをそれぞれ2段ずつ計4段を直列につなぎ、移動相にTHFを用いて、温度40℃、流量1mL/分の条件下で高速液体クロマトグラフィを行う。得られたチャートからジブロック体に対応するピーク面積を測定する。そして、全体のピーク面積に対する上記ジブロック体に対応するピーク面積の百分率を算出することにより、ジブロック体比率が求められる。
【0025】
この明細書において、「重量」は「質量」と読み替えてもよいものとする。例えば、「重量%」は「質量%」と読み替えてもよく、「重量部」は「質量部」と読み替えてもよいものとする。
【0026】
<粘着剤組成物>
(モノビニル置換芳香族化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体)
ここに開示される粘着剤組成物は、モノビニル置換芳香族化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体を含有する。上記モノビニル置換芳香族化合物とは、ビニル基を有する官能基が芳香環に一つ結合した化合物を指す。上記芳香環の代表例として、ベンゼン環(ビニル基を有しない官能基(例えばアルキル基)で置換されたベンゼン環であり得る。)が挙げられる。上記モノビニル置換芳香族化合物の具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン等が挙げられる。上記共役ジエン化合物の具体例としては、1,3-ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。このようなブロック共重合体は、1種を単独で、または2種以上を併用することができる。
【0027】
なお、モノビニル置換芳香族化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体は、粘着剤のベースポリマーとして用いられ得る成分である。粘着剤の「ベースポリマー」とは、該粘着剤に含まれるゴム状ポリマー(室温付近の温度域においてゴム弾性を示すポリマー)のうちの主成分(すなわち、該ゴム状ポリマーの50重量%超を占める成分)をいう。
【0028】
上記ブロック共重合体におけるAセグメント(ハードセグメント)は、上記モノビニル置換芳香族化合物(2種以上を併用し得る。)の共重合割合が70重量%以上(より好ましくは90重量%以上であり、実質的に100重量%であってもよい。)であることが好ましい。上記ブロック共重合体におけるBセグメント(ソフトセグメント)は、上記共役ジエン化合物(2種以上を併用し得る。)の共重合割合が70重量%以上(より好ましくは90重量%以上であり、実質的に100重量%であってもよい。)であることが好ましい。かかるブロック共重合体によると、より高性能な粘着シートが実現され得る。
【0029】
上記ブロック共重合体は、ジブロック体、トリブロック体、放射状(radial)体、これらの混合物、等の形態であり得る。トリブロック体や放射状体においては、ポリマー鎖の末端にAセグメント(例えばスチレンブロック)が配されていることが好ましい。ポリマー鎖の末端に配されたAセグメントは、集まってドメインを形成しやすく、これにより疑似的な架橋構造が形成されて粘着剤の凝集性が向上するためである。
ここに開示される技術におけるブロック共重合体としては、被着体に対する粘着力(剥離強度)の観点から、ジブロック体比率が30重量%以上(より好ましくは40重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上、特に好ましくは60重量%以上、典型的には65重量%以上)のものを好ましく用いることができる。剥離強度(例えば、軟質多孔質体の粗面に対する剥離強度)の観点から、ジブロック体比率が70重量%以上(例えば、70重量%超、71重量%以上、73重量%以上または75重量%以上)のブロック共重合体が特に好ましい。また、凝集性等の観点から、ジブロック体比率が90重量%以下(より好ましくは85重量%以下、例えば80重量%以下)のブロック共重合体を好ましく用いることができる。例えば、ジブロック体比率が60~85重量%のブロック共重合体が好ましく、ジブロック体比率が70~85重量%(例えば、70重量%を超えて80重量%以下)のブロック共重合体がより好ましい。
【0030】
(スチレン系ブロック共重合体)
いくつかの態様において、上記ブロック共重合体はスチレン系ブロック共重合体である。例えば、上記ブロック共重合体がスチレン-イソプレンブロック共重合体およびスチレン-ブタジエンブロック共重合体の少なくとも一方を含む態様が好ましい。上記スチレン系ブロック共重合体は、その少なくとも一部が水素化(水素原子が付加)した水素化物を含んでもよい。上記スチレン系ブロック共重合体は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。粘着剤に含まれるスチレン系ブロック共重合体のうち、スチレン-イソプレンブロック共重合体の割合が70重量%以上であるか、スチレン-ブタジエンブロック共重合体の割合が70重量%以上であるか、あるいはスチレン-イソプレンブロック共重合体とスチレン-ブタジエンブロック共重合体との合計割合が70重量%以上であることが好ましい。いくつかの好ましい態様では、上記スチレン系ブロック共重合体の実質的に全部(例えば95~100重量%)がスチレン-イソプレンブロック共重合体である。他のいくつかの好ましい態様では、上記スチレン系ブロック共重合体の実質的に全部(例えば95~100重量%)がスチレン-ブタジエンブロック共重合体である。このような組成によると、ここに開示される技術を適用することの効果がよりよく発揮され得る。
【0031】
上記スチレン系ブロック共重合体は、ジブロック体、トリブロック体、放射状(radial)体、これらの混合物、等の形態であり得る。トリブロック体および放射状体においては、ポリマー鎖の末端にスチレンブロックが配されていることが好ましい。ポリマー鎖の末端に配されたスチレンブロックは、集まってスチレンドメインを形成しやすく、これにより疑似的な架橋構造が形成されて粘着剤の凝集性が向上するためである。ここに開示される技術において用いられるスチレン系ブロック共重合体としては、被着体に対する粘着力(剥離強度)の観点から、ジブロック体比率が30重量%以上(より好ましくは40重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上、特に好ましくは60重量%以上、典型的には65重量%以上)のものを好ましく用いることができる。ジブロック体比率が70重量%以上(例えば、70重量%超、71重量%以上、73重量%以上または75重量%以上)のスチレン系ブロック共重合体であってもよい。また、凝集性等の観点から、ジブロック体比率が90重量%以下(より好ましくは85重量%以下、例えば80重量%以下)のスチレン系ブロック共重合体を好ましく用いることができる。ここに開示される技術を適用して軟質粗面接着性とブロッキング防止性とをバランス良く両立させる観点から、ジブロック体比率が60~85重量%のスチレン系ブロック共重合体が好ましく、70~85重量%(例えば70重量%を超えて80重量%以下)のスチレン系ブロック共重合体がより好ましい。
【0032】
上記スチレン系ブロック共重合体のスチレン含有量は、例えば、5~40重量%であり得る。凝集性の観点から、通常は、スチレン含有量が10重量%以上(より好ましくは10重量%超、例えば12重量%以上)のスチレン系ブロック共重合体が好ましい。また、剥離強度の観点から、スチレン含有量は35重量%以下(典型的には30重量%以下、より好ましくは25重量%以下)が好ましく、22重量%以下(典型的には20重量%未満、例えば18重量%以下)が特に好ましい。ここに開示される技術を適用することの効果(軟質粗面接着性とブロッキング防止性とを両立する効果)をよりよく発揮させる観点から、いくつかの態様において、スチレン含有量が10~22重量%のスチレン系ブロック共重合体を好ましく採用し得る。
【0033】
(粘着付与樹脂)
ここに開示される粘着剤組成物は、上記ブロック共重合体に加えて粘着付与樹脂を含む。粘着付与樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。粘着付与樹脂としては、特に限定されず、例えば石油系粘着付与樹脂、天然物系粘着付与樹脂のいずれも使用可能である。ここで、石油系粘着付与樹脂は、石油資源に由来する化合物であり、石油資源に由来する化学構造を有し、その化学構造に基づく粘着剤への相溶性や化学的性質等により、粘着特性を付与するものである。また、天然物系粘着付与樹脂は、天然物に由来する成分を含む化合物であり、天然物に由来する化学構造を有し、その化学構造に基づく粘着剤への相溶性や化学的性質等により、粘着特性を付与するものである。ここに開示される技術では、石油系粘着付与樹脂、天然物系粘着付与樹脂の化学構造に基づき、それらの1種または2種以上を適切に選定して、軟質粗面接着性とブロッキング防止性とのバランスのよい粘着剤が設計される。
【0034】
石油系粘着付与樹脂の例としては、脂肪族系(C5系)石油樹脂、芳香族系(C9系)石油樹脂、脂肪族/芳香族共重合系(C5/C9系)石油樹脂、スチレン系樹脂、これらの水素添加物(例えば、芳香族系石油樹脂に水素添加して得られる脂環族系石油樹脂)等が挙げられる。石油系粘着付与樹脂の他の例としては、クマロン・インデン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂が挙げられる。石油系粘着付与樹脂は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
スチレン系樹脂の例としては、スチレンの単独重合体を主成分とするもの、α-メチルスチレンの単独重合体を主成分とするもの、ビニルトルエンの単独重合体を主成分とするもの、スチレン、α-メチルスチレンおよびビニルトルエンのうち2種以上をモノマー組成に含む共重合体を主成分とするもの(例えば、α-メチルスチレン/スチレン共重合体を主成分とするα-メチルスチレン/スチレン共重合体樹脂)等が挙げられる。
【0036】
クマロン・インデン樹脂としては、樹脂の骨格(主鎖)を構成するモノマー成分としてクマロンおよびインデンを含む樹脂を用いることができる。クマロンおよびインデン以外に樹脂の骨格に含まれ得るモノマー成分としては、スチレン、α-メチルスチレン、メチルインデン、ビニルトルエン等が例示される。
【0037】
天然物系粘着付与樹脂の例としては、テルペン樹脂、ロジン系樹脂等が挙げられる。テルペン樹脂には、非変性テルペン樹脂、変性テルペン樹脂が含まれる。ロジン系樹脂には、ロジン誘導体樹脂が含まれる。天然物系粘着付与樹脂は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
テルペン樹脂(非変性テルペン樹脂)の例としては、α-ピネン重合体、β-ピネン重合体、ジペンテン重合体等が挙げられる。変性テルペン樹脂の例としては、上記テルペン樹脂を変性(フェノール変性、芳香族変性(例えばスチレン変性)、水素添加変性、炭化水素変性等)したものが挙げられる。具体的には、テルペンフェノール樹脂、芳香族変性(例えばスチレン変性)テルペン樹脂、水素添加テルペン樹脂等が例示される。上記テルペンフェノール樹脂には、水素添加テルペンフェノール樹脂が含まれ得る。
【0039】
上記「テルペンフェノール樹脂」とは、テルペン残基およびフェノール残基を含むポリマーを指し、テルペンとフェノール化合物との共重合体(テルペン-フェノール共重合体樹脂)と、テルペンの単独重合体または共重合体(テルペン樹脂、典型的には未変性テルペン樹脂)をフェノール変性したもの(フェノール変性テルペン樹脂)との双方を包含する概念である。
【0040】
ロジン系樹脂の具体的としては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等の未変性ロジン(生ロジン);これらの未変性ロジンを水添化、不均化、重合等により変性した変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、その他の化学的に修飾されたロジン等);等が挙げられる。また、ロジン誘導体樹脂の例としては、未変性ロジンをアルコール類によりエステル化したもの(すなわち、ロジンのエステル化物)、変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン等)をアルコール類によりエステル化したもの(すなわち、変性ロジンのエステル化物)等のロジンエステル類;未変性ロジンや変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン等)を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジン類;ロジンエステル類を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類;未変性ロジン、変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン等)、不飽和脂肪酸変性ロジン類または不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類におけるカルボキシル基を還元処理したロジンアルコール類;未変性ロジン、変性ロジン、各種ロジン誘導体等のロジン類(特に、ロジンエステル類)の金属塩;ロジン類(未変性ロジン、変性ロジン、各種ロジン誘導体等)にフェノールを酸触媒で付加させ熱重合することにより得られるロジンフェノール樹脂;等が挙げられる。
【0041】
ここに開示される技術において用いられる粘着付与樹脂の軟化点は、通常は、40℃よりも高く、60℃以上であってもよい。いくつかの態様において、粘着付与樹脂の軟化点は、80℃以上(例えば80℃超)であり、好ましくは100℃以上(例えば100℃超)である。粘着付与樹脂の軟化点の上限は、特に限定されず、通常、200℃以下が適当であり、粗面接着性等の観点から、好ましくは180℃以下、より好ましくは170℃以下(例えば160℃以下)であり、140℃以下であってもよく、120℃以下でもよい。
【0042】
ここで、この明細書において粘着付与樹脂の軟化点は、JIS K5902およびJIS K2207に規定する軟化点試験方法(環球法)に基づいて測定された値として定義される。具体的には、試料をできるだけ低温ですみやかに融解し、これを平らな金属板の上に置いた環の中に、泡ができないように注意して満たす。冷えた後、少し加熱した小刀で環の上端を含む平面から盛り上がった部分を切り去る。次に、径85mm以上、高さ127mm以上のガラス容器(加熱浴)の中に支持器(環台)を入れ、グリセリンを深さ90mm以上となるまで注ぐ。次に、鋼球(径9.5mm、重量3.5g)と、試料を満たした環とを互いに接触しないようにしてグリセリン中に浸し、グリセリンの温度を20℃プラスマイナス5℃に15分間保つ。次に、環中の試料の表面の中央に鋼球をのせ、これを支持器の上の定位置に置く。次に、環の上端からグリセリン面までの距離を50mmに保ち、温度計を置き、温度計の水銀球の中心の位置を環の中心と同じ高さとし、容器を加熱する。加熱に用いるブンゼンバーナーの炎は、容器の底の中心と縁との中間にあたるようにし、加熱を均等にする。なお、加熱が始まってから40℃に達したのちの浴温の上昇する割合は、毎分5.0プラスマイナス0.5℃でなければならない。試料がしだいに軟化して環から流れ落ち、ついに底板に接触したときの温度を読み、これを軟化点とする。軟化点の測定は、同時に2個以上行い、その平均値を採用する。
【0043】
(天然物系粘着付与樹脂(A))
いくつかの態様において、粘着付与樹脂として、芳香環を含まない天然物系粘着付与樹脂(A)が用いられる。芳香環を含まない分子構造を有する天然物系粘着付与樹脂は、上記ブロック共重合体を含む粘着剤によく相溶し、その添加効果が好適に発揮され得る。また、芳香環を含まない分子構造を有する天然物系粘着付与樹脂を使用することにより、軟質粗面接着性が得られやすい傾向があり、また、良好な保存性が得られやすい。
【0044】
上記天然物系粘着付与樹脂(A)としては、上述の天然物系粘着付与樹脂のうち、芳香環を含まない分子構造を有するものを特に制限なく使用することができる。例えば、テルペン樹脂、変性テルペン樹脂、ロジン系樹脂、ロジン誘導体樹脂等を用いることができる。天然物系粘着付与樹脂(A)は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
上記天然物系粘着付与樹脂(A)の軟化点は、通常は、40℃よりも高く、60℃以上であってもよい。いくつかの態様において、天然物系粘着付与樹脂(A)の軟化点は、粘着剤の凝集力等の観点から、80℃よりも高いことが適当であり、90℃以上であることが好ましく、100℃以上(例えば100℃超)であってもよく、110℃以上(例えば110℃超)であってもよく、115℃以上であってもよく、120℃以上であってもよく、140℃以上でもよく、150℃以上でもよい。上記天然物系粘着付与樹脂(A)の軟化点の上限は、特に限定されず、通常、200℃以下が適当であり、軟質粗面接着性等の観点から、好ましくは180℃以下、より好ましくは170℃以下(例えば160℃以下)であり、140℃以下であってもよく、120℃以下でもよい。
【0046】
いくつかの好ましい態様において、天然物系粘着付与樹脂(A)として、テルペン樹脂が用いられ得る。上記テルペン樹脂は、上記ブロック共重合体を含む粘着剤によく相溶し、その添加効果が好適に発揮され得る。特に限定して解釈されるものではないが、上記テルペン樹脂は、上記ブロック共重合体のソフトセグメント(共役ジエン化合物を主モノマーとするセグメント)によく相溶し、当該ソフトセグメントに適度な凝集力を付与すると考えられる。例えば、適当量の上記テルペン樹脂を用いることにより、軟質粗面接着性と他の特性(例えば、定荷重剥離特性)とをバランスよく両立することができる。
【0047】
上記テルペン樹脂の軟化点は、通常は、40℃よりも高く、60℃以上であってもよい。いくつかの態様において、粘着剤の凝集力等の観点から、上記テルペン樹脂の軟化点は、80℃よりも高いことが適当であり、90℃以上であることが好ましく、95℃以上であることがより好ましく、100℃以上(例えば100℃超)であってもよく、110℃以上(例えば110℃超)であってもよい。上記テルペン樹脂の軟化点の上限は、通常、200℃以下が適当であり、粗面接着性等の観点から、好ましくは160℃以下、より好ましくは140℃以下であり、120℃以下であってもよい。
【0048】
天然物系粘着付与樹脂(A)としてテルペン樹脂を使用する態様において、粘着剤組成物における上記テルペン樹脂の含有量は、上記ブロック共重合体100重量部に対して、例えば1重量部以上であってもよく、10重量部以上でもよい。いくつかの好ましい態様において、上記テルペン樹脂の添加効果を効果的に発揮する観点から、上記ブロック共重合体100重量部に対する上記テルペン樹脂の含有量は、20重量部以上であることが適当であり、30重量部以上であってもよく、40重量部以上でもよく、50重量部以上でもよい。いくつかの態様において、上記ブロック共重合体100重量部に対する上記テルペン樹脂の含有量は、120重量部未満とすることが適当であり、軟質粗面接着性の観点から、好ましくは100重量部以下、より好ましくは80重量部以下であり、70重量部以下であってもよく、60重量部以下であってもよく、50重量部以下でもよい。
【0049】
特に限定するものではないが、天然物系粘着付与樹脂(A)としてテルペン樹脂を使用する態様において、上記ブロック共重合体中のBセグメント(共役ジエン化合物を主モノマーとするセグメント)1重量部に対する上記テルペン樹脂の量は、例えば0.1重量部以上であり、好ましくは0.2重量部以上であり、0.4重量部以上であってもよく、0.5重量部以上でもよく、0.6重量部以上でもよい。いくつかの態様において、上記ブロック共重合体のBセグメント1重量部に対する上記テルペン樹脂の量は、1.5重量部以下とすることが適当であり、軟質粗面接着性とブロッキング防止性とを両立する観点から、好ましくは1.2重量部以下、より好ましくは1重量部以下であり、0.8重量部以下であってもよく、0.6重量部以下でもよい。上記範囲のテルペン樹脂量とすることにより、テルペン樹脂のソフトセグメントに対する相溶作用に基づき、上記テルペン樹脂の添加効果が効果的に発揮され得る。
【0050】
いくつかの好ましい態様において、天然物系粘着付与樹脂(A)として、ロジン系樹脂が用いられ得る。上記ロジン系樹脂は、上記ブロック共重合体を含む粘着剤によく相溶し、その添加効果が好適に発揮され得る。特に限定して解釈されるものではないが、上記ロジン系樹脂は、通常、一分子中に高極性領域と低極性領域とを有し、上記ブロック共重合体の各セグメント(ハードセグメントおよびソフトセグメント)に相溶し、上記テルペン樹脂とは異なる相溶作用に基づき、軟質粗面接着性とブロッキング防止性との両立に寄与すると考えられる。また、ロジン系樹脂の使用は、金属等の極性被着体に対する接着性を改善し得る点でも有利である。
【0051】
上記ロジン系樹脂の軟化点は、通常は、40℃よりも高く、60℃以上であってもよい。いくつかの態様において、粘着剤の凝集力等の観点から、上記ロジン系樹脂の軟化点は、80℃よりも高いことが適当であり、100℃以上であることが好ましく、110℃以上であることがより好ましく、130℃以上であってもよく、150℃以上であってもよくい。上記ロジン系樹脂の軟化点の上限は、通常、200℃以下が適当であり、軟質粗面接着性等の観点から、好ましくは180℃以下であり、170℃以下であってもよい。
【0052】
天然物系粘着付与樹脂(A)としてロジン系樹脂を使用する態様において、粘着剤組成物における上記ロジン系樹脂の含有量は、上記ブロック共重合体100重量部に対して、例えば1重量部以上であってもよく、10重量部以上でもよい。いくつかの好ましい態様において、上記ロジン系樹脂の添加効果を効果的に発揮する観点から、上記ブロック共重合体100重量部に対する上記ロジン系樹脂の含有量は、20重量部以上であり、30重量部以上であってもよく、40重量部以上でもよく、50重量部以上でもよい。いくつかの態様において、上記ブロック共重合体100重量部に対する上記ロジン系樹脂の含有量は、120重量部以下とすることが適当であり、軟質粗面接着性の観点から、好ましくは100重量部以下、より好ましくは80重量部以下であり、70重量部以下であってもよく、50重量部以下でもよく、30重量部以下でもよく、25重量部以下でもよい。
【0053】
いくつかの好ましい態様において、天然物系粘着付与樹脂(A)は、粘着付与樹脂(A1)としてのテルペン樹脂と、粘着付与樹脂(A2)としてのロジン系樹脂と、を含む。粘着付与樹脂(A)として、テルペン樹脂とロジン系樹脂とを併用することにより、軟質粗面接着性とブロッキング防止性とをバランスよく両立することができ、他の特性(例えば、定荷重剥離特性)との両立も容易となる傾向にある。粘着付与樹脂(A1)と粘着付与樹脂(A2)とを併用する態様において、その使用比率は特に限定されない。いくつかの態様において、粘着付与樹脂(A2)の含有量に対する粘着付与樹脂(A1)の含有量の比(A1/A2)は、例えば1/10以上であり、1/5以上であってもよく、1/3以上でもよく、1/2以上でもよく、2/3以上でもよく、1以上でもよい。上記比(A1/A2)は、10以下でもよく、5以下でもよく、3以下でもよく、2以下でもよい。
【0054】
天然物系粘着付与樹脂(A)を使用する態様において、粘着剤組成物における上記天然物系粘着付与樹脂(A)の含有量(2種以上含有する場合はそれらの合計量)は、特に限定されず、所望の効果を実現するよう適切な量が採用され得る。いくつかの態様において、天然物系粘着付与樹脂(A)の含有量は、上記ブロック共重合体100重量部に対して30重量部を超えて140重量部未満であり、35~120重量部であってもよい。いくつかの好ましい態様において、天然物系粘着付与樹脂(A)の含有量は、上記ブロック共重合体100重量部に対して40~90重量部である。これにより、軟質粗面接着性とブロッキング防止性とをバランスよく改善することができる。上記ブロック共重合体100重量部に対する上記天然物系粘着付与樹脂(A)の含有量は、50重量部以上であってもよく、60重量部以上でもよく、70重量部以上でもよく、80重量部以上でもよい。また、上記ブロック共重合体100重量部に対する上記天然物系粘着付与樹脂(A)の含有量は、好ましくは110重量部以下であり、90重量部以下であってもよく、80重量部以下でもよく、60重量部以下でもよい。
【0055】
(石油系粘着付与樹脂(B))
いくつかの態様において、粘着付与樹脂は、芳香環を含む石油系粘着付与樹脂(B)を含む。芳香環を含む分子構造を有する石油系粘着付与樹脂は、上記ブロック共重合体を含む粘着剤によく相溶し、その添加効果が好適に発揮され得る。特に限定して解釈されるものではないが、上記石油系粘着付与樹脂(B)は、芳香環を有することから、上記ブロック共重合体のハードセグメント(モノビニル置換芳香族化合物を主モノマーとするセグメント)が集まって形成されたドメイン(以下「ハードドメイン」ともいう。例えば所定の軟化点を有する芳香族系石油樹脂がハードドメインに相溶することにより、該ハードドメインによる疑似架橋に基づく特性が調節され、例えば粘着剤の凝集力の改善に寄与するものと考えられる。
【0056】
上記石油系粘着付与樹脂(B)としては、上述の石油系粘着付与樹脂のうち、芳香環を含む分子構造を有するものを特に制限なく使用することができる。例えば、芳香族系(C9系)石油樹脂、脂肪族/芳香族共重合系(C5/C9系)石油樹脂、スチレン系樹脂、クマロン・インデン樹脂等を用いることができる。なかでも、芳香族系石油樹脂、スチレン系樹脂が好ましい。石油系粘着付与樹脂(B)は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0057】
いくつかの態様において、上記石油系粘着付与樹脂(B)の軟化点は100℃よりも大きい。凝集力向上の観点から、石油系粘着付与樹脂(B)の軟化点は、110℃以上が適当であり、好ましくは125℃以上であり、135℃以上であってもよく、150℃以上であってもよい。上記石油系粘着付与樹脂(B)の軟化点の上限は、特に限定されず、通常、200℃以下が適当であり、軟質粗面接着性等の観点から、好ましくは180℃以下、より好ましくは170℃以下(例えば160℃以下)であり、150℃以下であってもよく、140℃以下であってもよく、130℃以下であってもよい。
【0058】
石油系粘着付与樹脂(B)を使用する態様において、粘着剤組成物における上記石油系粘着付与樹脂(B)の含有量(2種以上含有する場合はそれらの合計量)は、特に限定されず、所望の効果を実現するよう適切な量が採用され得る。いくつかの態様において、石油系粘着付与樹脂(B)の含有量は、上記ブロック共重合体100重量部に対して0重量部を超えて50重量部未満であり、例えば1~45重量部であってよく、3~40重量部であってもよい。いくつかの好ましい態様において、石油系粘着付与樹脂(B)の含有量は、上記ブロック共重合体100重量部に対して5~35重量部である。これにより、軟質粗面接着性とブロッキング防止性とをバランスよく改善することができる。上記ブロック共重合体100重量部に対する上記石油系粘着付与樹脂(B)の含有量は、10重量部以上であってもよく、15重量部以上でもよく、20重量部以上でもよく、25重量部以上でもよく、30重量部以上でもよい。また、上記ブロック共重合体100重量部に対する上記石油系粘着付与樹脂(B)の含有量は、軟質粗面接着性の観点から、30重量部以下であってもよく、25重量部以下でもよい。
【0059】
特に限定するものではないが、石油系粘着付与樹脂(B)を使用する態様において、上記ブロック共重合体中のAセグメント(モノビニル置換芳香族化合物を主モノマーとするセグメント。上記ブロック共重合体がスチレン系ブロック共重合体である態様においてはスチレン成分)1重量部に対する上記石油系粘着付与樹脂(B)の量は、例えば0.3重量部以上であり、0.6重量部以上であってもよく、1重量部以上でもよく、1.3重量部以上でもよく、2重量部以上でもよい。いくつかの態様において、上記ブロック共重合体のAセグメント(例えばスチレン成分)1重量部に対する上記石油系粘着付与樹脂(B)の量は、2.7重量部以下とすることが適当であり、粗面接着性の観点から、2.4重量部以下であってもよく、1.8重量部以下でもよく、1.5重量部以下でもよい。上記範囲の石油系粘着付与樹脂(B)量とすることにより、石油系粘着付与樹脂(B)が、上記ブロック共重合体のハードセグメントが集まって形成されたドメイン(例えば、スチレン系ブロック共重合体におけるスチレンドメイン)によく相溶し、上記石油系粘着付与樹脂(B)の添加効果が効果的に発揮され得る。
【0060】
いくつかの好ましい態様において、粘着付与樹脂として、上記天然物系粘着付与樹脂(A)と上記石油系粘着付与樹脂(B)とが併用される。天然物系粘着付与樹脂(A)と石油系粘着付与樹脂(B)とを併用することで、各粘着付与樹脂の化学構造の違いに基づく上記ブロック共重合体への作用を利用して、軟質粗面接着性とブロッキング防止性とを両立し、良好な保存性を有する粘着剤を形成しやすい。天然物系粘着付与樹脂(A)と石油系粘着付与樹脂(B)とを併用する態様において、その使用比率は特に限定されない。いくつかの態様において、石油系粘着付与樹脂(B)の含有量に対する天然物系粘着付与樹脂(A)の含有量の比(A/B)は、重量基準で、例えば1以上であり、2以上が好ましく、3以上であってもよく、4以上でもよく、5以上でもよく、6以上でもよい。上記比(A/B)は、例えば20以下であり、16以下が適当であり、12以下であってもよく、10以下でもよい。
【0061】
(その他の粘着付与樹脂)
粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない限度で、天然物系粘着付与樹脂(A)および石油系粘着付与樹脂(B)とは異なる粘着付与樹脂を含んでもよい。天然物系粘着付与樹脂(A)および石油系粘着付与樹脂(B)とは異なる粘着付与樹脂としては、芳香環を含む天然物系粘着付与樹脂、芳香環を含まない石油系粘着付与樹脂等が挙げられる。芳香環を含む天然物系粘着付与樹脂としては、芳香族変性テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、ロジンフェノール樹脂が挙げられる。また、芳香環を含まない石油系粘着付与樹脂としては、脂肪族系(C5系)石油樹脂、脂環族系石油樹脂等が挙げられる。
【0062】
ここに開示される技術によると、天然物系粘着付与樹脂(A)および石油系粘着付与樹脂(B)以外の粘着付与樹脂に頼ることなく(換言すれば、必須成分とすることなく)、軟質粗面接着性とブロッキング防止性のバランスのよい粘着剤を形成することができる。したがって、天然物系粘着付与樹脂(A)および石油系粘着付与樹脂(B)とは異なる粘着付与樹脂の使用量が制限された組成や、そのような粘着付与樹脂を実質的に含まない組成を採用することが可能である。例えば、天然物系粘着付与樹脂(A)および石油系粘着付与樹脂(B)とは異なる粘着付与樹脂の含有量は、粘着剤組成物に含まれる粘着付与樹脂の総量中、30重量%未満とすることができ、10重量%未満であってもよく、3重量%未満でもよく、1重量%未満でもよい。ここに開示される技術は、粘着剤組成物が、天然物系粘着付与樹脂(A)および石油系粘着付与樹脂(B)とは異なる粘着付与樹脂を実質的に含まない態様で実施することができる。
【0063】
また、ここに開示される技術によると、フェノール系粘着付与樹脂(例えばテルペンフェノール樹脂)に頼ることなく、フェノール系粘着付与樹脂以外の粘着付与樹脂種および使用量に基づき、軟質粗面接着性とブロッキング防止性とを両立することができる。フェノール系粘着付与樹脂は、粘着特性の向上に寄与し得る一方、粘着剤の劣化を促進する要因となりやすい。したがって、フェノール系粘着付与樹脂を必須成分とすることなく、軟質粗面接着性とブロッキング防止性とを両立し得ることは、優れた保存性を得る点でも有意義である。かかる構成によると、所望の粘着特性を有する粘着剤を、長期的な品質安定性を有する形態で実現することができる。そのような観点から、フェノール系粘着付与樹脂の含有量は、粘着剤組成物に含まれる粘着付与樹脂の総量中、30重量%未満とすることができ、10重量%未満であってもよく、3重量%未満でもよく、1重量%未満でもよい。ここに開示される技術は、粘着剤組成物が、フェノール系粘着付与樹脂を実質的に含まない態様で実施することができる。また、粘着剤組成物におけるフェノール系粘着付与樹脂の含有量は、上記ブロック共重合体100重量部に対して30重量部未満であることが好ましく、10重量部未満であることがより好ましく、3重量部未満であることがさらに好ましく、1重量部未満であることが特に好ましい。フェノール系粘着付与樹脂の使用量を上記のように制限することにより、保存性がよく、粘着特性等の品質安定性に優れた粘着剤が好ましく得られる。なお、ここでいうフェノール系粘着付与樹脂とは、フェノール骨格を含む分子構造を有する粘着付与樹脂を意味し、テルペンフェノール樹脂、水素添加テルペンフェノール樹脂、フェノール樹脂(アルキルフェノール樹脂、キシレン-ホルムアルデヒド樹脂等)、ロジンフェノール樹脂等を包含する概念である。
【0064】
(粘着付与樹脂の含有量)
粘着剤組成物における粘着付与樹脂の含有量(2種以上の粘着付与樹脂を含む態様では、それらの合計量(総量))は、特に限定されず、所望の効果を実現するよう適当な量が採用され得る。いくつかの態様において、粘着付与樹脂の含有量は、上記ブロック共重合体100重量部に対して、例えば35重量部を超えて160重量部未満であってよく、45~150重量部であってもよく、50~130重量部であってもよい。いくつかの好ましい態様において、粘着付与樹脂の含有量は、上記ブロック共重合体100重量部に対して60~120重量部である。これにより、軟質粗面接着性とブロッキング防止性とをバランスよく改善することができる。上記ブロック共重合体100重量部に対する粘着付与樹脂の含有量は、70重量部以上であってもよく、80重量部以上でもよく、90重量部以上でもよい。また、上記ブロック共重合体100重量部に対する粘着付与樹脂の含有量は、好ましくは115重量部以下であり、110重量部以下でもよく、100重量部以下でもよい。いくつかの態様において、上記ブロック共重合体100重量部に対する粘着付与樹脂の含有量は、100重量部未満であってもよく、90重量部未満でもよく、80重量部未満でもよい。このように粘着付与樹脂の総量が制限された構成であっても、ここに開示される技術によると、所望の効果を実現することができる。
【0065】
(軟化剤)
ここに開示される粘着剤組成物は、さらに軟化剤を含む。粘着剤に軟化剤を含ませることによって、被着体に対する密着性が向上し、軟質粗面接着性を向上させることができる。ここで、本明細書における軟化剤とは、室温(例えば25℃)において液体または粘稠性を示す流動体であるか、あるいは軟化点が40℃以下である材料をいうものとする。上記軟化点は、上述の粘着付与樹脂の軟化点の測定方法と同様の方法で測定することができる。
【0066】
軟化剤の種類は特に限定されず、粘着剤組成(上記ブロック共重合体の種類や、粘着付与樹脂の種類)等に応じて適切なものが選択される。軟化剤としては、ポリブテンやポリイソプレン等の液状ゴム、パラフィン系オイルやナフテン系オイル等のプロセスオイルが挙げられる。また、軟化剤として、液状テルペン樹脂や液状ロジン系樹脂等の液状樹脂を用いてもよい。軟化剤の他の例としては、例えば、ステアリン酸やパルミチン酸のような高級脂肪酸のエステル(高級脂肪酸エステル)や、脂肪酸アミドが挙げられる。なかでも、液状テルペン樹脂やプロセスオイルが好ましく用いられる。軟化剤は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0067】
粘着剤組成物における軟化剤の含有量は、特に限定されず、所望の効果を実現するよう適切な量が採用され得る。いくつかの態様において、軟化剤の含有量は、上記ブロック共重合体100重量部に対して0重量部を超えて50重量部未満であり、1~45重量部であってもよく、3~45重量部であってもよく、3~40重量部であってもよい。いくつかの好ましい態様において、軟化剤の含有量は、上記ブロック共重合体100重量部に対して5~35重量部である。これにより、軟質粗面接着性とブロッキング防止性とがバランスよく改善された粘着剤を形成しやすい。上記ブロック共重合体100重量部に対する軟化剤の含有量は、10重量部以上であってもよく、15重量部以上でもよく、20重量部以上でもよい。また、上記ブロック共重合体100重量部に対する軟化剤の含有量は、30重量部以下であってもよく、25重量部以下でもよく、20重量部以下でもよい。
【0068】
(充填剤)
ここに開示される粘着剤組成物は、さらに充填剤を含む。粘着剤に充填剤を含有させることにより、粘着剤のバルク強度を向上させ、粘着剤の変形(ひいては、該変形による粘着剤のはみ出し)を抑制し得る。一方、粘着剤のバルク強度を向上させると、軟質粗面接着性は概して低下する傾向にある。ここに開示される技術では、充填剤の配合によりバルク強度を高める一方で、粘着付与樹脂および軟化剤の含有量をそれぞれ適切な範囲に設定する。このことによって、高いバルク強度に基づく粘着剤のはみ出し抑制(ブロッキング防止性)と、軟質粗面接着性とを両立させることができる。
【0069】
充填剤としては、特に制限されず、粘着剤に含有させることで該粘着剤の変形抑制に寄与し得る材料を適宜選択して用いることができる。例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、リン酸カルシウム、タルク、シリカ、硫酸アルミニウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、アルミナ、マイカ、クレー、ケイ酸アルミニウム、ケイ砂、軽石粉、スレート粉、カーボンブラック、グラファイト、ガラス繊維、ガラス球、等が挙げられる。好ましく使用し得る充填剤の例として、炭酸カルシウム、酸化チタン、リン酸カルシウムが挙げられる。上記充填剤を配合すると、粘着剤に適度の凝集性を付与することができる。充填剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0070】
充填剤の平均粒子径は、例えば凡そ0.1μm以上であり得る、いくつかの態様において、充填剤の平均粒子径は、粘着剤中に均等に解砕して存在させやすいことから、凡そ0.5μm以上であることが適当であり、1μm以上であることが好ましく、1.5μm以上であってもよく、2μm以上であってもよく、3μm以上でもよく、5μm以上でもよく、7μm以上でもよく、10μm以上でもよく、15μm以上でもよい。また、粘着剤組成物の塗工性や粘着シートの外観品質等の観点から、いくつかの態様において、充填剤の平均粒子径は、100μm以下であることが適当であり、50μm以下であることが好ましく、30μm以下(例えば20μm以下)であることがより好ましく、18μm以下であってもよく、15μm以下であってもよく、12μm以下、9μm以下または6μm以下であってもよい。例えば、平均粒子径が0.5μm~15μmの範囲内にある充填剤を好ましく採用し得る。なお、この明細書において、充填剤の平均粒子径は、JIS Z8825:2022に準拠した手法(レーザー回析・散乱法)により得られる粒度分布において、体積基準の累積粒度が50%となる粒径(メジアン径)と規定される。
【0071】
充填剤の形状は特に限定されず、例えば粒状(球状(略球状や真球状を包含する。)、無定形の粒状など)、針状、繊維状、板状などが挙げられる。いくつかの態様において、粒状の充填剤を好ましく採用し得る。粒状(例えば球状)の充填剤は、針状、繊維状、板状などの顕著な異方性を有する形状の充填剤に比べて、粘着剤組成物の塗工性や、粘着剤層の表面平滑性の観点から有利となり得る。充填剤には、適宜の表面処理が施されていていてもよく、施されていなくてもよい。入手容易性やコスト等の観点から、いくつかの態様において、表面処理されていない(無処理の)充填剤を好ましく採用し得る。
【0072】
充填剤の含有量は、特に限定されず、所望の効果を実現するよう適切な量が採用され得る。いくつかの態様において、上記ブロック共重合体100重量部に対する充填剤の含有量は、例えば1重量部以上であってよく、粘着剤の凝集力の観点から3重量部以上(例えば、3重量部以上50重量部以下)であることが適当であり、5重量部以上であることが好ましく、10重量部以上であってもよく、20重量部以上であってもよく、25重量部以上でもよく、30重量部以上でもよい。また、いくつかの態様において、上記ブロック共重合体100重量部に対する充填剤の含有量は、例えば75重量部未満であってよく、粘着剤のタックや柔軟性(ひいては軟質粗面接着性)の観点から70重量部以下であることが好ましく、65重量部以下であってもよく、60重量部以下であってもよく、55重量部以下、50重量部以下、45重量部以下または、40重量部以下であってもよい。
【0073】
いくつかの態様において、上記充填剤の含有量W1(重量基準)は、上記粘着付与樹脂の含有量と上記軟化剤の含有量との合計量W2(重量基準)に対して、例えば0.05倍以上0.80倍以下(すなわち、W1/W2が0.05~0.80)であることが適当である。W1/W2が上記範囲にあると、粘着剤の変形を抑制しつつ軟質粗面接着性の良い粘着剤が得られやすい傾向にある。上記W1/W2は、0.06以上であってもよく、0.10以上であってもよく、0.20以上または0.30以上であってもよい。また、上記W1/W2は、0.60以下であってもよく、0.50以下であってもよい。
【0074】
(イソシアネート化合物)
ここに開示される粘着剤組成物は、さらにイソシアネート化合物を含んでもよい。イソシアネート化合物を用いることにより、粘着剤の凝集力が改善され得る。イソシアネート化合物としては、多官能イソシアネート(1分子当たり平均2個以上のイソシアネート基を有する化合物をいい、イソシアヌレート構造を有するものを包含する。)が好ましく使用され得る。かかる多官能イソシアネートとしては、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する各種のイソシアネート化合物(ポリイソシアネート)から選択される1種または2種以上を用いることができる。かかる多官能イソシアネートの例として、脂肪族ポリイソシアネート類、脂環族ポリイソシアネート類、芳香族ポリイソシアネート類等が挙げられる。
【0075】
イソシアネート化合物を用いる場合、その使用量は特に限定されないが、例えば上記ブロック共重合体100重量部に対して0重量部を超えて10重量部以下(典型的には0.01~10重量部)とすることができる。通常は、ブロック共重合体100重量部に対するイソシアネート化合物の使用量を0.1~10重量部とすることが適当であり、0.1~5重量部(典型的には0.3~3重量部、例えば0.5~1重量部)とすることが好ましい。また、いくつかの態様において、粘着剤組成物は、イソシアネート化合物を実質的に含有しないものであってもよい。ここに開示される技術によると、イソシアネート化合物を用いることなく、粘着剤のブロッキング防止性を向上させることができる。なお、粘着剤組成物がイソシアネート化合物を実質的に含有しないとは、粘着剤組成物に含まれるイソシアネート化合物の含有量が0.1重量%未満(例えば0~0.05重量%)であることをいう。
【0076】
(老化防止剤)
ここに開示される粘着剤組成物には、必要に応じて老化防止剤を含有させることができる。老化防止剤の使用により、粘着剤の品質安定性は向上し得る。老化防止剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。老化防止剤としては、リン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤等)、ヒンダードアミン系酸化防止剤、芳香族アミン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が挙げられる。特に限定するものではないが、ここに開示される粘着剤組成物に含まれる老化防止剤の量は、上記ブロック共重合体100重量部に対して、例えば概ね20重量部以下とすることができ、通常は10重量部以下とすることが適当であり、5重量部以下としてもよい。また、上記老化防止剤の量は、上記ブロック共重合体100重量部に対して、例えば0.1重量部以上とすることができ、0.5重量部以上としてもよく、1重量部以上としてもよい。
【0077】
(その他成分)
ここに開示される粘着剤組成物は、必要に応じて、レベリング剤、架橋剤、架橋助剤、着色剤(顔料、染料等)、帯電防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の、粘着剤の分野において一般的な各種の添加剤を含有するものであり得る。このような各種添加剤については、従来公知のものを常法により使用することができる。また、ここに開示される粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない限度で、モノビニル置換芳香族化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体以外のゴム状ポリマーを1種または2種以上含んでもよい。ここに開示される技術は、上記粘着剤組成物が上記ブロック共重合体以外のゴム状ポリマーを実質的に含有しない態様(例えば、上記ブロック共重合体100重量部当たりの含有量が0~1重量部である態様)で好ましく実施され得る。
【0078】
いくつかの態様において、上記粘着剤組成物は、キレート化合物を実質的に含まない組成であり得る。ここで、上記キレート化合物とは、例えば、アルカリ土類金属の酸化物と、該酸化物が配位可能な官能基(水酸基、メチロール基等)を有する樹脂(アルキルフェノール樹脂等)とのキレート化合物を指す。ここに開示される技術は、上記粘着剤組成物が、このようなキレート化合物を全く含まないか、あるいは該キレート化合物の含有割合が1重量%以下である態様で好ましく実施され得る。かかる態様によると、より軟質粗面接着性に優れた粘着シートが実現され得る。
【0079】
いくつかの好ましい態様において、上記粘着剤組成物は、モノビニル置換芳香族化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体と、粘着付与樹脂と、軟化剤と、充填剤との合計量が、該粘着剤組成物から形成される粘着剤の全重量(すなわち、この粘着剤により構成される粘着剤層の重量)の90重量%以上を占める組成であり得る。例えば、上記合計量が上記粘着剤の全重量の90~99.8重量%(典型的には、例えば95~99.5重量%)である態様を好ましく採用し得る。
【0080】
ここに開示される粘着剤組成物の形態は特に限定されず、例えば、上述のような組成の粘着剤(粘着成分)を有機溶媒中に含む形態(溶剤型)の粘着剤組成物、粘着剤が水性溶媒に分散した形態(水分散型、典型的には水性エマルション型)の粘着剤組成物、ホットメルト型の粘着剤組成物等であり得る。
【0081】
ここに開示される粘着剤層は、実質的に有機溶剤を含まない粘着剤組成物から形成され得る。ここで、粘着剤組成物が実質的に有機溶剤を含まない(無溶剤型であるともいう。)とは、粘着剤組成物中の有機溶剤量が1重量%未満(例えば0.1重量%未満)であることをいう。そのような粘着剤組成物は、ホットメルト型の粘着剤組成物であり得る。ホットメルト型の粘着剤組成物は、有機溶剤を実質的に含有しない加熱溶融状態で塗工され得るので、生産性や環境負荷軽減の観点から好ましい。
【0082】
(粘着剤層形成方法)
粘着剤組成物から粘着剤層を形成する方法としては、特に限定されず、公知の適当な方法を採用することができる。例えば、ホットメルト型塗工法、カレンダー法、キャスティング法、インフレーション押出し法、Tダイ押出し法等の方法により粘着剤層を形成することができる。粘着剤組成物の保存安定性(例えば、充填剤の沈降防止や凝集抑制)の観点から、無溶剤型の粘着剤組成物から粘着剤層を形成することが好ましい。なかでも、充填剤の分散性を向上させて凝集物による塗工ムラを防止する観点から、二軸押出機を用いて作製した粘着剤をホットメルト型塗工方法で塗工することが好ましい。
【0083】
以下、ここに開示される技術において適用されるホットメルト型塗工方法の一例を説明する。ホットメルト型塗工法を適用して、粘着剤組成物を溶融押出しによりフィルム状に成形する場合、粘着剤組成物は、比較的高温(具体的には100℃以上、例えば150~220℃)に加熱され、流動性の高い溶融状態とされる。次いで、ホットメルト型塗工装置の押出機のダイから上記加熱により溶融状態の粘着剤組成物が適当な速度(塗工速度)で押し出され、塗工される。なお、塗工時の温度は、通常、溶融時の温度と概ね同じである。押出機としては、特に限定されず、例えば公知の二軸押出機が好ましく用いられる。上記ダイから押し出された粘着剤組成物は、バックロール上のフィルム(基材または剥離ライナー)に連続的に塗工される。なお、バックロールとは、別名、コーティングロールともいい、上記フィルム塗工面の反対面(非塗工面)に配置され、該フィルムを送る機能を有するロールである。このようにして、粘着剤組成物は層状(フィルム状ともいう。)に成形される。層状に成形された粘着剤組成物は、さらに、紫外線等の活性エネルギー線を照射するなどの架橋処理により硬化されてもよい。このようにして、粘着剤層は形成される。層状に成形された粘着剤組成物は、必要に応じて、適当な温度条件下(例えば凡そ30~50℃)に一定時間以上(例えば12時間以上)保管して熟成してもよい。上記のようなホットメルト型塗工により形成された粘着剤は、ホットメルト型粘着剤ともいう。なお、上記押出機を備えるホットメルト型塗工装置は、粘着剤組成物を混合するフィーダーや、バックロール、上述の架橋処理を実施する架橋処理部、その他の機構(フィルターや脱気用ベント等)を備えるものであり得る。また、上記バックロールとしては、調温可能なロール(加熱ロールともいう。)が好ましく用いられる。
【0084】
ここに開示される粘着剤層(ここに開示されるいずれかの粘着剤組成物から形成された粘着剤層であり得る。)は、有機溶剤残存量が1000ppm未満(粘着剤1g当たりの有機溶剤量が1000μg未満(すなわち、1000μg/1g粘着剤未満))であり得る。このように実質的に無溶剤型(典型的にはホットメルト型)の粘着剤を備える構成において、ここに開示される技術による効果を好ましく実現することができる。いくつかの態様において、粘着剤層中の有機溶剤残存量は、例えば900ppm未満であってもよく、800ppm未満でもよく、700ppm未満でもよく、600ppm未満でもよく、いくつかの好ましい態様において、500ppm未満でもよく、400ppm未満でもよく、300ppm未満でもよく、200ppm未満でもよく、100ppm未満でもよい。いくつかの態様において、粘着剤層中の有機溶剤残存量は、例えば90ppm未満であってもよく、80ppm未満でもよく、70ppm未満でもよく、60ppm未満でもよく、50ppm未満でもよく、40ppm未満でもよく、30ppm未満でもよく、20ppm未満でもよく、10ppm未満でもよい。このように有機溶剤残存量の少ない粘着剤は、環境負荷低減の観点からも好ましい。上記有機溶剤残存量が所定値未満となる粘着剤層は、実質的に無溶剤型の粘着剤組成物(典型的には、ホットメルト型粘着剤組成物)から形成され得る。したがって、本明細書において有機溶剤残存量が1000ppm未満である粘着剤(層)は、無溶剤型粘着剤(層)、さらにはホットメルト型粘着剤(層)と言い換えることができるものとする。粘着剤層の有機溶剤残存量は、具体的には、後述の実施例に記載の方法で測定される。
【0085】
(粘着剤層の厚さ)
特に限定するものではないが、粘着剤層の厚さは、凡そ4μm以上(例えば20μm以上)程度が適当である。粘着剤層の厚さは、例えば30μm以上であってよく、40μm以上であってもよく、50μm以上であってもよい。いくつかの態様において、軟質粗面接着性の観点から、粘着剤層の厚さは、例えば55μm以上または55μm超であることが有利であり、60μm以上であることが好ましく、80μm以上であってもよく、100μm以上(例えば100μm超)であってもよく、120μm以上でもよく、140μm以上でもよい。粘着シートを構成する粘着剤層が厚み方向に圧縮される場合、該粘着剤層の厚みが大きくなると、粘着シート端面からの粘着剤のはみ出し長さはより大きくなる傾向にあり、これによりブロッキング防止性は低下する傾向にある。したがって、ここに開示される技術を適用してはみ出し長さを抑えることが特に有意義である。また、粘着剤層の厚さは、例えば1000μm以下程度とすることができ、750μm以下であってもよく、500μm以下でもよく、400μm以下でもよい。上記の厚さを有する粘着剤層によると、軟質粗面接着性とブロッキング防止性とをおよびバランスよく両立しやすい。いくつかの好ましい態様において、粘着剤層の厚さは、凡そ300μm以下であってよく、250μm以下であってもよく、200μm以下であってもよく、160μm以下であってもよい。基材付き両面粘着シートの場合、基材の少なくとも片面に上記厚さを有する粘着剤層を有する構成であることが適当であり、基材の両面それぞれに上記厚さの粘着剤層が設けられた構成とすることが好ましい。各粘着剤層の厚さは同じであってもよく異なっていてもよい。
【0086】
ここに開示される粘着剤組成物は、該粘着剤組成物から形成された厚さ130μmの粘着剤層(基材レス両面粘着シート)について、後述する実施例に記載の方法で行われるブロッキング防止性試験により粘着剤のはみ出し長さ(ブロッキング防止性)を測定した場合において、上記はみ出し長さが550μm未満であることが適当であり、500μm未満であることが好ましく、450μm未満(例えば420μm未満または400μm未満)であることがより好ましい。厚さ130μmにおいて上記はみ出し長さを示す粘着剤層を形成する粘着剤組成物によると、軟質粗面接着性とブロッキング防止性との両立に適した粘着シートが実現され得る。上記はみ出し長さの下限は特に制限されず、ブロッキング防止の観点から上記はみ出し長さは短いほど有利である。一方、軟質粗面接着性とブロッキング防止性とをバランスよく両立する観点から、いくつかの態様において、上記はみ出し長さは、例えば50μm以上であってよく、100μm以上であってもよく、150μm以上、200μm以上または250μm以上であってもよい。
【0087】
いくつかの態様において、粘着剤層に含まれる充填剤(典型的には、該粘着剤層の形成に用いられた粘着剤組成物に由来する充填剤)の平均粒子径[μm]は、粘着剤層の厚さ[μm]に対する比(すなわち、平均粒子径/粘着剤層厚さの比)が0.70未満(例えば0.50未満)となる範囲であることが適当である。上記比が大きすぎると、粘着剤組成物を所望の厚みに塗布する際に塗工スジが発生しやすくなることがあり得る。特に、無溶剤型の粘着剤層では、最終的に形成される粘着剤層の厚さと粘着剤組成物の塗布厚との違いが小さいため、上記比が塗工スジ発生の程度に影響しやすい。塗工スジの発生をよりよく防止することは、粘着シートの製造歩留まりの改善や品質安定性向上の観点から有益である。かかる観点から、いくつかの態様において、平均粒子径/粘着剤層厚さの比は、例えば0.30未満、好ましくは0.20未満(例えば0.17未満)、より好ましくは0.14未満(例えば0.12未満)である。
【0088】
<粘着シートの構造例>
ここに開示される粘着シート(テープ状等の長尺状の形態であり得る。)は、例えば、
図1に示す断面構造を有する両面粘着シートの形態であり得る。この両面粘着シート1は、粘着剤層11からなる基材レスの(すなわち、基材を有しない)粘着シートである。使用前(被着体への貼り付け前)の両面粘着シート1は、
図1に示すように、前面21Aおよび背面21Bがいずれも剥離面である剥離ライナー21と重ね合わされて渦巻き状に巻回された粘着シートロールの形態であり得る。上記粘着シートロールにおいて、粘着剤層11は、その一方の表面(第1粘着面)11Aおよび他方の表面(第2粘着面)11Bが、剥離ライナー21の背面21Bおよび前面21Aにそれぞれ当接して保護されている。
このような形態の粘着シートロールでは、粘着シートを剥離ライナーと重ね合わせてロール形態に巻取る際の張力等に起因してロールの半径方向(粘着シートの厚さ方向)に生じる内部応力により、ロールの端面(粘着シートの幅方向の両端)において粘着剤層が剥離ライナーから外方にはみ出すことがある。上記はみ出しの程度によっては、はみ出した粘着剤の相互付着(ブロッキング)が生じ、粘着シートロールの保管時や使用時の取扱い性が低下し得る。ここに開示される粘着シートは、粘着剤のはみ出しが抑制されていることにより、良好なブロッキング防止性を示し得る。
【0089】
なお、粘着シート1は、例えば
図2に示すように、基材レスの粘着剤層11の第一粘着面11Aおよび第二粘着面11Bが、少なくとも該粘着剤層側の表面(前面)が剥離面となっている剥離ライナー21,22によってそれぞれ保護された形態であってもよい。
図2に示す粘着シート1は、使用前において、2枚の剥離ライナー21,22とともに渦巻き状に巻回された粘着シートロールの形態や、所定のサイズまたは外形に加工された枚葉状の形態であり得る。
図1または
図2に示すような基材レスの両面粘着シートでは、同程度の厚さの粘着剤層を有する基材付きの粘着シートに比べて、上記はみ出し長さが大きくなりがちである。したがって、ここに開示される技術を適用して軟質粗面接着性とブロッキング防止性とを両立させることが特に有意義である。
【0090】
また、ここに開示される粘着シートは、例えば、
図3に示す断面構造を有する両面粘着シートの形態であり得る。この両面粘着シート2は、基材(例えばプラスチックフィルム)15と、その基材15の両面にそれぞれ支持された第一粘着剤層11および第二粘着剤層12とを備える。より詳しくは、基材15の第一面15Aおよび第二面15B(いずれも非剥離性)に、第一粘着剤層11および第二粘着剤層12がそれぞれ設けられている。使用前(被着体への貼り付け前)の両面粘着シート1は、
図3に示すように、前面21Aおよび背面21Bがいずれも剥離面である剥離ライナー21と重ね合わされて渦巻き状に巻回された形態であり得る。かかる形態の両面粘着シート1は、第二粘着剤層12の表面(第二粘着面12A)が剥離ライナー21の前面21Aにより、第一粘着剤層11の表面(第一粘着面11A)が剥離ライナー21の背面21Bにより、それぞれ保護されている。あるいは、第一粘着面11Aおよび第二粘着面12Aが2枚の独立した剥離ライナーによりそれぞれ保護された形態であってもよい。
【0091】
ここに開示される技術は、また、
図4に示すように、基材15と該基材の第一面(非剥離面)15Aに支持された粘着剤層11とを備える片面粘着タイプの基材付き粘着シート3にも適用され得る。使用前の粘着シート3は、例えば
図4に示すように、その粘着剤層11の表面(粘着面)11Aが、少なくとも該粘着剤層側の表面(前面)が剥離面となっている剥離ライナー21で保護された形態であり得る。あるいは、剥離ライナー21を省略し、第二面15Bが剥離面となっている基材15を用い、基材付き粘着シート3を巻回することにより第一粘着面11Aが基材15の第二面15Bに当接して保護された形態であってもよい。
【0092】
<基材>
ここに開示される技術を基材付き両面粘着シートまたは基材付き片面粘着シートに適用する場合、基材としては、例えば、ポリプロピレンフィルム、エチレン-プロピレン共重合体フィルム、ポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム等のプラスチックフィルム;ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリクロロプレンフォーム等の発泡体からなる発泡体シート;各種の繊維状物質(麻、綿等の天然繊維、ポリエステル、ビニロン等の合成繊維、アセテート等の半合成繊維、等であり得る。)の単独または混紡等による織布および不織布(和紙、上質紙等の紙類を包含する意味である。);アルミニウム箔、銅箔等の金属箔;等を、粘着シートの用途に応じて適宜選択して用いることができる。上記プラスチックフィルム(典型的には非多孔質のプラスチック膜を指し、織布や不織布とは区別される概念である。)としては、無延伸フィルムおよび延伸(一軸延伸または二軸延伸)フィルムのいずれも使用可能である。また、基材のうち粘着剤層が設けられる面には、下塗剤の塗布、コロナ放電処理等の表面処理が施されていてもよい。
【0093】
基材として利用される不織布としては、例えば、木材パルプ等のパルプ類、綿、麻等の天然繊維から構成される不織布;ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維等のポリエステル繊維、レーヨン、ビニロン、アセテート繊維、ポリビニルアルコール(PVA)繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維、ポリウレタン繊維等の化学繊維(合成繊維)から構成される不織布;材質の異なる2種以上の繊維を併用して構成された不織布;等が挙げられる。なかでも、粘着剤の含浸性や耐反撥性の観点から、パルプや麻(例えば麻パルプ)から構成される不織布、PET繊維から構成される不織布等が好ましい。不織布基材の使用は、粘着シートの柔軟性向上や手切れ性向上にも寄与する。
【0094】
不織布(不織布基材)としては、坪量が凡そ30g/m2以下(例えば25g/m2以下、典型的には20g/m2以下)のものを好ましく採用し得る。かかる坪量の不織布は、軽量でかつ粘着性能に優れた粘着シートを作製するのに適している。耐反撥性の観点からは、坪量が18g/m2未満(例えば16g/m2以下、典型的には15g/m2以下)の不織布が好ましい。基材自体の強度を向上する観点からは、上記坪量は10g/m2以上(例えば12g/m2以上、典型的には13g/m2以上)であることが好ましい。
【0095】
不織布基材の嵩密度(坪量を厚さで除して算出され得る。)は、凡そ0.20g/cm3以上が適当であり、0.25g/cm3以上(例えば0.30g/cm3以上)が好ましく、また凡そ0.50g/cm3以下が適当であり、0.40g/cm3以下(例えば0.35g/cm3以下)が好ましい。嵩密度が上記の範囲内であることにより、基材自体が適当な強度を有し、良好な粘着剤含浸性が得られる。耐反撥性の観点からは、嵩密度0.25~0.40g/cm3(例えば0.30~0.35g/cm3)程度の不織布基材の使用が特に好ましい。
【0096】
不織布基材は、上述のような構成繊維の他に、デンプン(例えば、カチオン化デンプン)、ポリアクリルアミド、ビスコース、ポリビニルアルコール、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン等の樹脂成分を含有し得る。上記樹脂成分は、当該不織布基材の紙力増強剤として機能するものであり得る。かかる樹脂成分を必要に応じて使用することにより、不織布基材の強度を調整することができる。不織布基材は、その他、歩留まり向上剤、濾水剤、粘度調整剤、分散剤等の、不織布の製造に関する分野において一般的な添加剤を必要に応じて含有し得る。
【0097】
基材の厚さは目的に応じて適宜選択できるが、一般的には概ね2μm以上(典型的には10μm以上)とすることが適当であり、また、500μm以下(典型的には200μm以下)とすることが好ましい。基材として不織布を用いる場合には、不織布基材の厚さは、凡そ150μm以下であることが適当である。粘着剤を基材全体に充分に含浸させる観点からは、上記厚さは100μm以下(例えば70μm以下)であることが好ましい。また、粘着シート作製時の取扱い性を考慮すると、上記厚さは10μm以上(例えば25μm以上)であることが好ましい。耐反撥性の観点からは、上記厚さは30μm以上(例えば35μm以上、典型的には40μm以上)であることが好ましく、また60μm以下(例えば50μm以下、典型的には45μm以下)であることが好ましい。
【0098】
<粘着シートの厚さ>
ここに開示される粘着シートの総厚さ(粘着剤層および基材の厚さは含むが、剥離ライナーの厚さは含まない。)は、特に限定されず、薄膜化、軽量化、省資源化等の観点から、凡そ1000μm以下(例えば500μm以下、典型的には300μm以下)とすることが好ましく、150μm以下であってもよい。また、良好な粘着特性を確保する等の観点から、50μm以上(例えば70μm以上、典型的には100μm以上)とすることが適当である。
【0099】
<剥離ライナー>
剥離ライナーとしては、慣用の剥離紙等を使用することができ、特に限定されない。例えば、プラスチックフィルムや紙等の基材の表面に剥離処理層を有する剥離ライナー、フッ素系ポリマー(ポリテトラフルオロエチレン等)やポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)の低接着性材料からなる剥離ライナー等を用いることができる。上記剥離処理層は、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離処理剤により上記基材を表面処理して形成されたものであり得る。
【0100】
<粘着シートの特性>
ここに開示される粘着シートは、23℃、50%RHの環境下にて、引張速度300mm/分、剥離角度180度の条件で測定される軟質ウレタンフォームに対する粘着力(対フォーム粘着力)が3N/10mm以上であることが好ましい。上記フォーム表面は粗面であるので、上記の対フォーム粘着力を示す粘着シートは、軟質粗面に対して十分な接着性を発揮し得る。粗面接着性の観点から、上記対フォーム粘着力は、4N/10mm以上がより好ましく、4.5N/10mm以上がさらに好ましく、5N/10mm以上(例えば5.5N/10mm以上)が特に好ましい。なお、上記対フォーム粘着力の上限は特に限定されず、例えば10N/10mm以下程度であってもよい。対フォーム粘着力は、被着体としての軟質ウレタンフォームの表面に2kgのローラを1往復させて圧着し、30分間放置した後、JIS Z 0237に準じて引張速度300mm/分、剥離角度180度の条件で測定される。被着体(軟質ウレタンフォーム)としては、イノアックコーポレーション社製のカラーフォーム(商品名「ECS」(灰色))またはその相当品が用いられる。上記軟質ウレタンフォーム(商品名「ECS」(灰色))は、密度22±2kg/m3、硬さ(JIS K 6400-2(2004)に規定するD法による。)107.9±22.6Nのポリエーテルウレタンフォームである。対フォーム粘着力は、より具体的には、後述の実施例に記載の方法で測定される。
【0101】
ここに開示される粘着シートのいくつかの態様において、該粘着シートは、後述する実施例に記載の方法で行われるブロッキング防止性試験において、粘着剤のはみ出し長さ(ブロッキング防止性)が550μm未満であることが適当であり、500μm未満であることが好ましく、450μm未満(例えば420μm未満または400μm未満)であることがより好ましい。また、粘着剤層の厚さが上述したいずれかの下限値以上または下限値超(例えば、55μm超、100μm超など)であって、かつ上記はみ出し長さを示す粘着シートが好ましい。例えば、少なくとも粘着剤層の厚さが130μmである場合において上記はみ出し長さを示す粘着シートが好ましい。上記はみ出し長さの下限は特に制限されず、ブロッキング防止の観点から上記はみ出し長さは短いほど有利である。一方、軟質粗面接着性とブロッキング防止性とをバランスよく両立する観点から、いくつかの態様において、上記はみ出し長さは、例えば50μm以上であってよく、100μm以上であってもよく、150μm以上、200μm以上または250μm以上であってもよい。
【0102】
いくつかの態様において、粘着シートは、後述の実施例に記載の方法で行われる定荷重剥離試験において、初期(すなわち、老化試験前)の剥離距離が5mm以下であることが好ましい。かかる特性を満足する粘着シートは、継続的な剥離負荷に対して十分な耐性を有するので、接着信頼性の高い接合固定を実現し得る。上記定荷重剥離試験における剥離距離は、より好ましくは3mm以下、さらに好ましくは2mm以下、特に好ましくは1.5mm以下(例えば1mm以下)である。初期の剥離距離の下限は0(ゼロ)である。いくつかの態様に係る粘着シートでは、軟質粗面接着性とのバランスを考慮して、初期の剥離距離が例えば0.1mm以上であってよく、0.3mm以上であってもよく、0.5mm以上または0.7mm以上であってもよい。
【0103】
いくつかの態様において、粘着シートは、後述の実施例に記載の方法で行われる定荷重剥離試験において、初期および老化試験後の剥離距離がいずれも5mm以下であることが好ましく、3mm以下(例えば2.5mm以下)であることがより好ましく、2mm以下(例えば1.5mm以下)であることがさらに好ましい。かかる特性を満足する粘着シートは、長期にわたって保存された場合であっても、継続的な剥離負荷に対して十分な耐性を有するので、接着信頼性の高い接合固定を実現し得る。
【0104】
また、ここに開示される粘着シートは、後述の実施例に記載の方法から求められる老化試験後の定荷重剥離特性の低下率(老化試験による剥離距離の増加率)が50%以下であることが好ましい。定荷重剥離特性低下率が50%以下であれば、十分な保存性を有すると判断される。いくつかの態様において、上記低下率は、45%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましく、35%以下でもよく、30%以下でもよい。上記低下率の下限は0(ゼロ)であり、上記低下率が0に近いほど保存性に優れるといえる。一方、いくつかの態様に係る粘着シートでは、軟質粗面接着性とのバランスを考慮して、上記低下率は、例えば10%以上であってもよく、20%以上であってもよく、30%以上であってもよい。
【0105】
<用途>
ここに開示される粘着剤組成物または粘着シートは、各種のOA機器(例えばPC)、家電製品(例えば炊飯器、冷蔵庫)、自動車、建築材料(例えば住宅建材)等における部材間の接合(例えば、かかる製品における各種部品の固定用途)に有用である。
【0106】
この明細書により開示される事項には、以下のものが含まれる。
〔1〕 モノビニル置換芳香族化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体と、粘着付与樹脂と、軟化剤と、充填剤と、を含有し、
上記粘着付与樹脂の含有量は、上記ブロック共重合体100重量部に対して45重量部以上150重量部以下であり、
上記軟化剤の含有量は、上記ブロック共重合体100重量部に対して3重量部以上45重量部以下であり、
上記充填剤の含有量は、上記ブロック共重合体100重量部に対して3重量部以上70重量部以下である、粘着剤組成物。
〔2〕 上記粘着付与樹脂は、
芳香環を含まない天然物系粘着付与樹脂(A)と、
芳香環を含む石油系粘着付与樹脂(B)と、
を含む、上記〔1〕に記載の粘着剤組成物。
〔3〕 上記粘着付与樹脂(A)は、粘着付与樹脂(A1)としてのテルペン樹脂と、粘着付与樹脂(A2)としてのロジン系樹脂と、を含む、上記〔2〕に記載の粘着剤組成物。
〔4〕 フェノール系粘着付与樹脂の含有量が、上記ブロック共重合体100重量部に対して30重量部未満である、上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の粘着剤組成物。
〔5〕 上記ブロック共重合体はスチレン系ブロック共重合体である、上記〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
〔6〕 上記スチレン系ブロック共重合体のスチレン含有量は10~22重量%である、上記〔5〕に記載の粘着剤組成物。
〔7〕 上記スチレン系ブロック共重合体に占めるジブロック体の割合は60重量%超である、上記〔5〕または〔6〕に記載の粘着剤組成物。
〔8〕 有機溶剤の含有量が1重量%未満である、上記〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の粘着剤組成物。
〔9〕 上記〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有する、粘着シート。
〔10〕 23℃、50%RHの環境下にて、引張速度300mm/分、剥離角度180度の条件で測定される軟質ウレタンフォームに対する粘着力が3N/10mm以上である、上記〔9〕に記載の粘着シート。
【実施例0107】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明において「部」および「%」は、特に断りがない限り重量基準である。また、各材料の使用量等の記載は、特に断りがない限り、溶媒を考慮しない量を基準とする。
【0108】
<実施例1>
スチレン-イソプレンブロック共重合体(日本ゼオン社製、製品名「クインタック(Quintac)3520」、スチレン含有量15%、ジブロック体比率78%)100部と、 粘着付与樹脂として、テルペン樹脂(ヤスハラケミカル社製の製品名「YSレジンPX1150N」)30部と、ロジン系樹脂(荒川化学工業社製の製品名「ペンセルD160」)25部と、スチレン系樹脂(クレイトン社製の製品名「SA140」)5部と、軟化剤としての液状テルペン樹脂(ヤスハラケミカル社製の製品名「YSレジンPX300N」)5部と、充填剤としての平均粒子径1.7μmの炭酸カルシウム(丸尾カルシウム社製、製品名「スーパー#2000」)50部と、老化防止剤3部(BASF社製の製品名「IRGANOX CB612」(BASF社製の製品名「IRGAFOS 168」と同社製の製品名「IRGANOX 565」との比2:1のブレンド配合物))との混合物である粘着剤組成物を、二軸押出機にて加熱溶融させて粘着剤を作製し、厚さ75μmのシリコーン系剥離剤処理されたPETフィルムの剥離処理面にホットメルト型塗工方式により塗工して粘着剤層を形成した。粘着剤組成物の塗工量は、上記粘着剤層の厚さが130μmとなるように調整した。得られた粘着剤層表面に、シリコーン系剥離剤により剥離処理された剥離ライナーを貼り合わせた。このようにして、本例に係る粘着シート(剥離ライナー付き基材レス両面粘着シート)を作製した。
【0109】
<実施例2~9および比較例1~4>
粘着付与樹脂の種類と使用量、軟化剤の種類と使用量、充填剤の種類と使用量をそれぞれ表1に示すとおりとした他は実施例1と同様にして各例に係る粘着剤組成物を調製し、該粘着剤組成物を用いた他は実施例1と同様にして各例に係る粘着シートを作製した。
なお、比較例1は、充填剤不使用の粘着剤組成物を用いた例であり、比較例2は、実施例2の粘着剤組成物における充填剤の含有量(ブロック共重合体100部当たり)を75部に変更した例である。また、比較例3は、実施例6の粘着剤組成物における軟化剤の含有量(ブロック共重合体100部当たり)を50部に変更した例であり、比較例4は、ブロック共重合体100部に対する粘着付与樹脂の含有量(総量)が150部を超える例である。
【0110】
表1中に示す使用材料は、以下のとおりである。
(芳香環を含まない天然物系粘着付与樹脂)
「PX1150N」:ヤスハラケミカル社製の製品名「YSレジンPX1150N」、軟化点115℃のテルペン樹脂
「PX1000」:ヤスハラケミカル社製の製品名「YSレジンPX1000」、軟化点100℃のテルペン樹脂
「D160」:荒川化学工業社製の製品名「ペンセルD160」、軟化点157℃のロジン系樹脂
「A115」:荒川化学工業社製の製品名「スーパーエステルA115」、軟化点120℃のロジン系樹脂
(芳香環を含む石油系粘着付与樹脂)
「SA140」:クレイトン社製の製品名「SA140」、軟化点137℃のスチレン系樹脂
「Kristalex5140」:イーストマンケミカル社製の製品名「Kristalex5140」、軟化点140℃の芳香族系石油樹脂
「ネオポリマー150」:JXTGエネルギー社製の製品名「日石ネオポリマー150」、軟化点155℃の芳香族系石油樹脂
「FTR2120」:三井化学社製の製品名「FTR2120」、軟化点125℃の芳香族系石油樹脂
(芳香環を含む天然物系粘着付与樹脂)
「T145」:ヤスハラケミカル社製の製品名「YSポリスターT145」、軟化点145℃のテルペンフェノール樹脂
(軟化剤)
「PX300N」:ヤスハラケミカル社製の製品名「YSレジンPX300N」、軟化点30℃の液状テルペン樹脂
「PW-90」:出光興産社製の製品名「ダイアナプロセスオイルPW-90」、パラフィン系オイル
(充填剤)
平均粒子径1.7μmの炭酸カルシウム:丸尾カルシウム社製の製品名「スーパー#2000」
平均粒子径12μmの炭酸カルシウム:丸尾カルシウム社製の製品名「重質炭酸カルシウム」
平均粒子径20μmの炭酸カルシウム:丸尾カルシウム社製の製品名「R重炭」
【0111】
<評価方法>
(対フォーム粘着力)
粘着シート(両面粘着シート)の一方の粘着面を覆う剥離ライナーを剥がし、厚さ50μmのPETフィルムに貼り付けて裏打ちした。この裏打ちされた粘着シートを幅10mm、長さ100mmのサイズにカットして試験片を作製した。被着体として、厚さ10mmの軟質ウレタンフォーム(イノアックコーポレーション社製のカラーフォーム(商品名「ECS」(灰色))を幅30mm、長さ100mmにサイズにカットしたものを用意した。23℃、50%RHの環境下にて、上記試験片の他方の粘着面(測定対象面)を露出させ、該試験片の露出粘着面を、被着体の表面に2kgのローラを1往復させて圧着した。これを同環境下に30分間放置した後、JIS Z 0237に準じて、引張試験機を使用して引張速度300mm/分の条件で180°引き剥がし粘着力(対フォーム粘着力)[N/10mm]を測定した。対フォーム粘着力が3.0N/10mm以上であれば、十分な粗面接着性を有すると判断される。
なお、片面粘着シートを試験片として測定を実施する場合には、上記PETフィルムによる裏打ちは必須ではない。
【0112】
(ブロッキング防止性試験)
粘着シート(両面粘着シート)の一方の粘着面を覆う剥離ライナーを剥がして厚さ50μmのPETフィルムを貼り付け、次いで他方の粘着面を覆う剥離ライナーを剥がして厚さ50μmのPETフィルムを貼り付けることにより、PETフィルム/粘着剤層(両面粘着シート)/PETフィルムの構成を有する積層体を形成した。この積層体を10mm角の正方形状にカットして試験片を作製した。
図5に模式的に示すように、この試験片4を厚さ2mmの2枚のポリプロピレン板42,42で上下から挟み、上側のポリプロピレン板42の上に2kgの荷重46を付与し、該荷重が付与された状態で23℃、50%RHの環境下に14日間放置した。当該放置後の試験片の各辺について、PETフィルムから外方にはみ出している粘着剤の長さをデジタルマイクロスコープにより任意の適切な倍率(今回の実験では50倍)で観察して平均はみだし長さを測定し、4辺の平均はみだし長さの算術平均値を上記試験片の「ブロッキング防止性」の評価結果とした。ブロッキング防止性が550μm未満であれば、十分なブロッキング防止性を有すると判断される。
なお、上記電子顕微鏡による観察は、上記荷重を解除して上記2枚のポリプロピレン板の間から試験片を取り出した後、凡そ60分以内に行った。また、荷重解除から観察までの時間は、各試験片間で概ね一定になるように調整した。
【0113】
(定荷重剥離試験)
下記老化試験の前(初期)の粘着シートおよび下記老化試験後の粘着シート(サンプル)からそれぞれ調製した試験片を用いて定荷重剥離試験を行った。
図6を参照して、定荷重剥離試験の方法を説明する。粘着シート(両面粘着シート)5の一方の粘着面5Aを、厚さ75μmのPETフィルム52に貼り付けて裏打ちした。この裏打ちされた粘着シート5を幅10mm、長さ100mmのサイズにカットして試験片54を作製した。23℃、50%RHの環境下にて、試験片54の他方の粘着面5Bを被着体56(ステンレス鋼板(SUS304)を使用した。)の表面に、2kgのローラを1往復させて圧着した。これを同環境下に30分間放置した後、引き続き同環境下において、
図6に示すように、試験片54が貼り付けられた面が下方になるようにして被着体56を水平に保持し、その試験片54の一端に、剥離角度が90度となるように100g(1.0N)の荷重58を掛け、24時間後の剥離距離[mm]を測定した。測定は、各例に係る初期および老化試験後の粘着シートにつき、それぞれ2つの試験片を用いて行い(すなわちn=2)、それら2つの試験片の剥離距離[mm]の算術平均値を「定荷重剥離」の評価結果とした。一つでも試験片が落下した場合には「落下」と表記した。
なお、片面粘着シートを試験片として測定を実施する場合には、上記PETフィルムの裏打ちは必須ではない。
【0114】
(老化試験)
粘着シートを、粘着面を覆う剥離ライナーごと縦30cm、横20cmの長方形状に裁断して、老化試験用のサンプルを作製した。85℃に保持された大気雰囲気の乾燥機中に上記サンプルを10日間保管した。サンプルは、上記乾燥機中に吊り下げた状態で、互いに重ならないように保管した。
【0115】
(保存性)
上記初期の剥離距離[mm]および老化試験後の剥離距離[mm]に基づいて、上記老化試験による定荷重剥離特性の低下率を下記式:
定荷重剥離特性低下率[%]=(老化試験後の剥離距離-老化試験前の剥離距離)/老化試験前の剥離距離×100;
により算出した。上記老化試験による定荷重剥離特性の低下率(剥離距離の増加率)が50%以下であれば、十分な保存性を有すると判断される。
【0116】
各例の概要および評価結果を表1に示す。なお、表中の「-」は不使用を表す。
【0117】
【0118】
表1に示されるように、実施例1~9に係る粘着シートは、対フォーム粘着力が3.0N/10mm以上であり、かつブロッキング防止性が550μm未満であり、いずれも十分な軟質粗面接着性およびブロッキング防止性を有していた。一方、比較例1~4に係る粘着シートは、軟質粗面接着性とブロッキング防止性との両立が不十分であった。
【0119】
また、実施例1~9に係る粘着シートは、いずれも初期において1.5mm以下の良好な定荷重剥離特性を示した。そのうち実施例1~7,9に係る粘着シートは、老化試験後にも十分な定荷重剥離特性を維持し(落下せず)、保存性が良好であった。なお、実施例9の粘着シートでは、上記ホットメルト型塗工方式において粘着剤層に部分的な塗工スジが発生したため、塗工スジのない部分を用いて各評価を行った。
【0120】
また、実施例1~9の粘着剤(層)中の残留溶剤について、JIS A 1901:2015に準拠し、ガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS)法により定性定量分析を行ったところ、いずれも1000ppm未満(より詳しくは500ppm以下)であることが確認された。残存量を評価した有機溶剤は、表2に示す54種類とした(https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/120815-01.pdf参照)。GC/MSの具体的な測定条件は下記のとおりとした。
【0121】
[GC]
試料5cm2を採取して、ヘッドスペースバイアルに封入した。その後、ヘッドスペースサンプラー(HSS)にて80℃で30分間加熱し、加熱後の気相部分1mLをGCに注入した。
(装置)
HSS:Agilent Technologies, G1888
GC:Agilent Technologies, 6890N
(測定条件)
1.HSS条件
加熱温度:80℃
加熱時間:30min
サンプルループ温度:160℃
トランスファーライン温度:200℃
加圧時間:0.20min
ループ充填時間:0.20min
ループ平衡時間:0.05min
注入時間:0.50min
2.GC条件
カラム:HP-1(0.250mmφ×30m, df=1.0μm)
カラム温度:40℃(3min)→10℃/min→120℃→20℃/min→300℃(10min)
カラム流量(He):1mL/min
カラム圧力:定流量モード(81kPa)
注入口温度:250℃
注入量:1mL
注入方式:スプリット(20:1)
検出器:FID
検出器温度:250℃
【0122】
[GC/MS]
試料約150mgを20mLのバイアル瓶に入れて秤量した後、密栓し、ヘッドスペースサンプラーにて加熱した。その後、発生ガス1mLについてGC/MS測定を行った。
(装置)
HSS:島津製作所製HS-20
GC/MS:島津製作所製GCMS-QP2020
(HSS)
加熱条件:200℃×30分、150℃×10分(標品)
サンプルライン:210℃
トランスファーライン:220℃
(GC)
カラム:HP-5MS UI,30m×0.25mm id×0.25μm film thickness
カラム温度:40℃(3min)→+20℃/min →300℃(Hold)
スプリットモードスプリット(20:1)
カラム圧力:49.5kPa(定線速度モード)
キャリアガス:He(1.0mL/min)
注入口温度:250℃
検出器:MS
(MS)
イオン化法EI
電子エネルギー:70eV
E.M.電圧:1.36V
ソース温度:230℃
インターフェイス温度:300℃
質量範囲(m/z):10~800
【0123】
【0124】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。