(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110252
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】粉粒体用容器及び包装体
(51)【国際特許分類】
B65D 77/20 20060101AFI20240807BHJP
B65D 77/00 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
B65D77/20 A
B65D77/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014736
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梶 夏子
(72)【発明者】
【氏名】井上 敦
【テーマコード(参考)】
3E067
【Fターム(参考)】
3E067AA05
3E067AB99
3E067BA02A
3E067BB08A
3E067BB11A
3E067BB14A
3E067BB15A
3E067BB16A
3E067BC07A
3E067CA04
3E067EA17
3E067EA22
3E067EA32
3E067FA01
3E067FC01
(57)【要約】
【課題】内容物がこぼれることをより確実に防止できる粉粒体用容器100及び包装体200を提供する。
【解決手段】粉粒体を収容する容器本体部10と、蓋体50と、を備え、容器本体部10は、底部20と、底部20の外縁から立ち上がる周壁部30と、を備え、周壁部30は、周壁部30の内周側において底部20から立ち上がり、かつ、蓋体50よりも小径の第一内周壁部31と、蓋体50よりも大径であり、かつ、第一内周壁部31と段差33を有して接続する第二内周壁部35と、底部20と反対側の端部に配置され、かつ、容器本体部10の内周側に折り曲げられる加締め部37と、を備え、容器本体部10及び蓋体50が、通気性及び通気孔を有さず、さらに、蓋体50が、容器本体部10との間に隙間G(G1,G2,G3)を有しながら、段差33及び加締め部37の間に配置される粉粒体用容器100。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉粒体を収容する容器本体部と、蓋体と、を備える粉粒体用容器であって、
前記容器本体部は、
底部と、
前記底部の外縁から立ち上がる周壁部と、
を備え、
前記周壁部は、
前記周壁部の内周側において前記底部から立ち上がり、かつ、前記蓋体よりも小径の第一内周壁部と、
前記蓋体よりも大径であり、かつ、前記第一内周壁部と段差を有して接続する第二内周壁部と、
前記底部と反対側の端部に配置され、かつ、前記容器本体部の内周側に折り曲げられる加締め部と、
を備え、
前記容器本体部及び前記蓋体が、通気性及び通気孔を有さず、さらに、
前記蓋体が、前記容器本体部との間に隙間を有しながら、前記段差及び前記加締め部の間に配置される、粉粒体用容器。
【請求項2】
前記加締め部の折り曲げられた端部の延長線が、前記第二内周壁部と交差する、請求項1に記載の粉粒体用容器。
【請求項3】
前記蓋体が平板状である、請求項1又は2に記載の粉粒体用容器。
【請求項4】
前記周壁部は、前記底部の反対側に向かって径が大きくなる、請求項1~3のいずれか1項に記載の粉粒体用容器。
【請求項5】
断面視において、前記段差の内径側端点と前記底部の内径の最外点と結んだ対角線が交差する交差点を、径方向に延長した延長線が、軸方向において、前記第一内周壁部の中央から底部側に位置する、請求項1~4のいずれか1項に記載の粉粒体用容器。
【請求項6】
前記蓋体に前記底部と反対側の方向から力をかけたときに、前記蓋体が抜け落ちる又は変形するときの力が2.5MPa以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載の粉粒体用容器。
【請求項7】
前記粉粒体が、乾燥剤及び/又は酸素吸収剤である、請求項1~6のいずれか1項に記載の粉粒体用容器。
【請求項8】
粉粒体が容器に収容された包装体であって、
前記容器が、粉粒体を収容する容器本体部と、蓋体と、を備え、
前記容器本体部は、
底部と、
前記底部の外縁から立ち上がる周壁部と、
を備え、
前記周壁部は、
前記周壁部の内周側において前記底部から立ち上がり、かつ、前記蓋体よりも小径の第一内周壁部と、
前記蓋体よりも大径であり、かつ、前記第一内周壁部と段差を有して接続する第二内周壁部と、
前記底部と反対側の端部に配置され、かつ、前記容器本体部の内周側に折り曲げられる加締め部と、
を備え、
前記容器本体部及び前記蓋体が、通気性及び通気孔を有さず、さらに、
前記蓋体が、前記容器本体部との間に隙間を有しながら、前記段差及び前記加締め部の間に配置される、包装体。
【請求項9】
前記粉粒体の充填率が85%以下である、請求項8に記載の包装体。
【請求項10】
前記粉粒体が、乾燥剤及び/又は酸素吸収剤である、請求項8又は9に記載の包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉粒体用容器及び包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、容器の内容物がこぼれないように、容器の開口部と加締める蓋が知られている。例えば、特許文献1には、酸素吸収剤を通気性容器に収納して成る酸素吸収剤包装体において、当該通気性容器が、形状を保持し得る有底筒及び25℃における透気度が20~4000秒である通気性隔離膜からなる蓋により構成される、粉体バリア性を有する通気性キャニスター容器である、酸素吸収剤包装体が記載されている。特許文献1に記載された酸素吸収剤包装体によれば、酸素吸収剤を形状が一定に保持されるキャニスター容器に入れることにより、誤食や誤飲が防止される。
【0003】
また、例えば、特許文献2には、気体を吸収する吸収剤を収容した吸収剤含有容器であって、蓋体と、上面の開口が前記蓋体により塞がれ、有底円筒状の容器本体と、を有し、前記蓋体は、外周部を上側に曲げ前記容器本体の内周層に接触させた状態で前記開口に嵌め込まれており、前記容器本体の上端部は、前記蓋体の上から前記蓋体側に曲げられ前記蓋体の外周部を把持し、前記容器本体の内周層又は前記蓋体の内層の少なくともいずれかに紙層が用いられている、吸収剤含有容器が記載されている。特許文献2に記載された吸収剤含有容器によれば、外部との間の通気性を確保しつつ、気体と反応して膨張するような吸収剤を収容でき、なおかつ径の小さい或いは径が小さくなるような吸収剤を漏れないように収容できる低コストの吸収剤含有容器を実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-312729号公報
【特許文献2】国際公開第2014/203770号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び2に記載された容器は、外部との間の通気性を確保するために、通気性隔離膜からなる蓋を用いたり、容器本体の内周層又は蓋体の内層の少なくともいずれかに紙層が用いられている。
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2に記載された容器では、蓋等の強度について検討されておらず、容器の輸送中などの振動により、容器同士や容器の内容物と蓋又は容器の内周層とがぶつかることで、蓋又は容器の内周層に変形が生じたり、蓋が外れたりして、その結果として内容物がこぼれてしまう可能性があった。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、内容物がこぼれることをより確実に防止できる粉粒体用容器及び包装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、容器本体部及び蓋体が通気性及び通気孔を有さず、蓋体が容器本体部との間に隙間を有して配置されることにより、上記課題を解決できることを見出し、発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
<1> 粉粒体を収容する容器本体部と、蓋体と、を備える粉粒体用容器であって、前記容器本体部は、底部と、前記底部の外縁から立ち上がる周壁部と、を備え、前記周壁部は、前記周壁部の内周側において前記底部から立ち上がり、かつ、前記蓋体よりも小径の第一内周壁部と、前記蓋体よりも大径であり、かつ、前記第一内周壁部と段差を有して接続する第二内周壁部と、前記底部と反対側の端部に配置され、かつ、前記容器本体部の内周側に折り曲げられる加締め部と、を備え、前記容器本体部及び前記蓋体が、通気性及び通気孔を有さず、さらに、前記蓋体が、前記容器本体部との間に隙間を有しながら、前記段差及び前記加締め部の間に配置される、粉粒体用容器。
<2> 前記加締め部の折り曲げられた端部の延長線が、前記第二内周壁部と交差する、上記<1>に記載の粉粒体用容器。
<3> 前記蓋体が平板状である、上記<1>又は<2>に記載の粉粒体用容器。
<4> 前記周壁部は、前記底部の反対側に向かって径が大きくなる、上記<1>~<3>のいずれか1つに記載の粉粒体用容器。
<5> 断面視において、前記段差の内径側端点と前記底部の内径の最外点と結んだ対角線が交差する交差点を、径方向に延長した延長線が、軸方向において、前記第一内周壁部の中央から底部側に位置する、上記<1>~<4>のいずれか1つに記載の粉粒体用容器。
<6> 前記蓋体に前記底部と反対側の方向から力をかけたときに、前記蓋体が抜け落ちる又は変形するときの力が2.5MPa以上である、上記<1>~<5>のいずれか1つに記載の粉粒体用容器。
<7> 前記粉粒体が、乾燥剤及び/又は酸素吸収剤である、上記<1>~<6>のいずれか1つに記載の粉粒体用容器。
<8> 粉粒体が容器に収容された包装体であって、前記容器が、粉粒体を収容する容器本体部と、蓋体と、を備え、前記容器本体部は、底部と、前記底部の外縁から立ち上がる周壁部と、を備え、前記周壁部は、前記周壁部の内周側において前記底部から立ち上がり、かつ、前記蓋体よりも小径の第一内周壁部と、前記蓋体よりも大径であり、かつ、前記第一内周壁部と段差を有して接続する第二内周壁部と、前記底部と反対側の端部に配置され、かつ、前記容器本体部の内周側に折り曲げられる加締め部と、を備え、前記容器本体部及び前記蓋体が、通気性及び通気孔を有さず、さらに、前記蓋体が、前記容器本体部との間に隙間を有しながら、前記段差及び前記加締め部の間に配置される、包装体。
<9> 前記粉粒体の充填率が85%以下である、上記<8>に記載の包装体。
<10> 前記粉粒体が、乾燥剤及び/又は酸素吸収剤である、上記<8>又は<9>に記載の包装体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、内容物がこぼれることをより確実に防止できる粉粒体用容器及び包装体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係る粉粒体用容器の構成を例示する縦断面図である。
【
図2】本実施形態に係る粉粒体用容器の構成を例示する底面図である。
【
図3】本実施形態に係る粉粒体用容器の隙間を説明するための部分断面拡大図である。
【
図4】本実施形態に係る包装体の構成を例示する縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるものではない。
【0013】
まず、本実施形態に係る粉粒体用容器100の構成について、
図1乃至
図3を用いて説明する。ここで、
図1は、本実施形態に係る粉粒体用容器の構成を例示する縦断面図であり、
図2は、本実施形態に係る粉粒体用容器の構成を例示する底面図であり、また、
図3は、本実施形態に係る粉粒体用容器の隙間を説明するための部分断面拡大図である。
【0014】
[粉粒体用容器100]
図1及び
図3に示すように、本実施形態に係る粉粒体用容器100は、粉粒体を収容する容器本体部10と、蓋体50と、を備え、容器本体部10は、底部20と、底部20の外縁から立ち上がる周壁部30と、を備え、周壁部30は、周壁部30の内周側において底部20から立ち上がり、かつ、蓋体50よりも小径の第一内周壁部31と、蓋体50よりも大径であり、かつ、第一内周壁部31と段差33を有して接続する第二内周壁部35と、底部20と反対側の端部に配置され、かつ、容器本体部10の内周側に折り曲げられる加締め部37と、を備え、容器本体部10及び蓋体50が、通気性及び通気孔を有さず、さらに、蓋体50が、容器本体部10との間に隙間G(G1,G2,G3)を有しながら、段差33及び加締め部37の間に配置される。
【0015】
図1及び
図3に示すように、容器本体部10は、粉粒体を収容する容器の本体部分である。容器本体部10は、通気性及び通気孔を有していない。ここで、通気性を有さないとは、より詳しくは、JIS L 1096:2010に準拠して測定される試験片を通過する空気量が測定限界値以下であること、又は酸素透過率測定装置(例えば、MOCON製の商品名「OX―TRAN2/22L」)を使用し、25℃、N
2 90%RH、O
2 60%RHの条件で測定される酸素透過度が200mL/(m
2・day・atm)以下であることを意味する。
【0016】
図1及び
図3に示すように、蓋体50は、粉粒体用容器100の蓋となる部分であり、容器本体部10と同様に通気性及び通気孔を有していない。本実施形態に係る蓋体50は、特に限定されないが、平板状の円形状板状の部材として構成されている。このような構成により、容器本体部10との間に隙間G(G1,G2,G3)を有しながら、段差33及び加締め部37の間に、蓋体50をより容易に配置することができる。
【0017】
粉粒体用容器100には、特に限定されないが、蓋体50に底部20と反対側の方向(通常の使用状態における上側)から力をかけたときに、蓋体50が抜け落ちる又は変形するときの力(蓋体の応力)が、2.5MPa以上である蓋体50を用いることができる。このような蓋体50は、粉粒体用容器100の輸送中などの振動に起因する衝撃などに耐え得るため有用である。蓋体の応力は、実施例に記載される方法により測定できる。
【0018】
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係る底部20は、円形状を有し、かつ、粉粒体用容器100と同心円状に配置される。本実施形態に係る底部20は、その中央に、加締め部37(蓋体50)方向に突出するとともに平面視円形状を有する凸部21と、加締め部37(蓋体50)方向に窪んで底面視円形状を有する凹部23と、を有している。本実施形態に係る凸部21及び凹部23も、底部20及び粉粒体用容器100と同心円状に配置されている。すなわち、本実施形態では、凸部21、凹部23、底部20、及び粉粒体用容器100は、同心円状に配置されている。
【0019】
底部20が凸部21及び凹部23を有することにより、粉粒体用容器100を成形するときに、成形しやすいという利点を有する。
【0020】
図1に示すように、凸部21は、その円の中心が加締め部37(蓋体50)方向に最も高く突出するように構成されている。一方、凹部23は、その円の中心が加締め部37(蓋体50)方向に最も深く窪むように構成されている。本実施形態では、凸部21の円形状の直径の方が、凹部23の円形状の直径よりも、大きくなるよう構成されている。このような構成により、より容器成形性を向上できる。
【0021】
図1に示すように、本実施形態に係る底部20は、加締め部37(蓋体50)と反対の方向に直立配置される脚部25を有する。
図2に示すように、本実施形態に係る脚部25は、底面視円形状を有するように、加締め部37(蓋体50)と反対の方向に突出して底部20に配置される。脚部25を有することにより、粉粒体用容器100は安定性に優れ、後述する包装体200を製造する際の作業効率を向上できる。
【0022】
周壁部30は、底部20の外縁から立ち上がるように構成される。
図1に示すように、底部20と周壁部30とは、曲線を有して接続してもよい。このような構成により、後述するように、加締め部37を加締めるときに生じる押圧力に、より耐えることができる。なお、底部20と周壁部30とが曲線を有して接続される場合、粉粒体用容器100の内側の曲線の最大角度の部分を、後述する底部20の内径の最外点20Aとする。
【0023】
図1に示すように、本実施形態に係る周壁部30は、底部20の反対側に向かって径が大きくなるように構成されている。このような構成により、粉粒体用容器100に粉粒体を入れやすく、かつ、安定性に優れるという利点を有する。
【0024】
周壁部30は、蓋体50よりも小径の第一内周壁部31と、蓋体50よりも大径である第二内周壁部35と、底部20と反対側の端部に配置されるとともに容器本体部10の内周側に折り曲げられる加締め部37と、を備えて構成される。
【0025】
図1に示すように、本実施形態に係る第一内周壁部31は、周壁部30の内周側において底部20の最外点20Aから立ち上がり、蓋体50の径よりも小径となるように構成される。このような構成により、蓋体50が容器本体部10内に落ちることを防ぐことができる。
【0026】
第二内周壁部35は、第一内周壁部31と段差33を有して接続され、蓋体50の径よりも大径となるように構成される。このような構成により、
図3に示すように、蓋体50の外端部が、第二内周壁部35と隙間G2を有して配置されやすい。
【0027】
第二内周壁部35の内径は、底部20の外径が同一となるように構成することができる。このような構成により、取り扱い性に優れた容器を成形できる。
【0028】
段差33は、蓋体50が容器本体部10内に落ちないように所定の長さを有して構成される。本実施形態に係る段差33は、
図1に示すように、底部20と略平行となるように配置されている。このような構成により、蓋体50が平板状である場合、
図3に示すように、隙間G1を有して蓋体50を配置しやすい。
【0029】
加締め部37は、底部20と反対側の端部に配置されるとともに容器本体部10の内周側に折り曲げられる部分である。本実施形態に係る加締め部37は、第二内周壁部35と同じ厚さ(径)を有して構成されているが、蓋体50と隙間G3を有して蓋体50を配置できれば特に限定されず、加締め部37の径(厚さ)は、第二内周壁部35の径(厚さ)よりも小さくてもよいし、大きくてもよい。
【0030】
本実施形態では、
図3に示すように、加締め部37の折り曲げられた端部37Aの延長線E2が、第二内周壁部35と交差するように構成される。このような構成により、蓋体50を段差33との間で隙間G(G1,G2,G3)を有しながら、配置しやすい。
【0031】
図1に示すように、断面視において、段差33の内径側端点33Aと底部20の内径の最外点20Aと結んだ対角線Dが交差する交差点を、径方向に延長した延長線E1が、軸方向において、第一内周壁部31の中央から底部20側に位置するように構成することができる。このような構成により、加締め部37を加締めるときに、加締め部37にしわができにくく、よれを抑制でき、粉粒体用容器100は外観性に優れる。
【0032】
通常の製造時の方向において垂直方向を指す、第二内周壁部35及び加締め部37の合計長さは、特に限定されないが、周壁部30の長さの1/7以上とすることができ、29/200以上であってもよく、59/400以上であってもよく、3/20以上であってもよい。また、第二内周壁部35及び加締め部37の合計長さは、特に限定されないが、底部20の外径の1/8以上とすることができ、1/7以上であってもよく、1/6以上であってもよく、1/5以上であってもよい。このような構成により、加締め部37を加締めるときに、加締め部37にしわができにくく、よれを抑制でき、粉粒体用容器100は外観性に優れる。
【0033】
第二内周壁部35及び加締め部37の合計長さは、特に限定されないが、3mm以上6mm以下とすることができる。第二内周壁部35及び加締め部37の厚さは、特に限定されないが、0.1mm以上0.8mm以下とすることができる。
【0034】
隙間G(G1,G2,G3)の大きさは、粉粒体がこぼれず、かつ、粉粒体の機能を損なわなければ特に限定されず、粉粒体の大きさ、種類等に応じて適宜変更される。隙間G(G1,G2,G3)の大きさは、特に限定されないが、例えば、10μm以上、20μm以上、そして、100μm以下、80μm以下とすることができる。
【0035】
容器本体部10及び蓋体50の材質は、通気性及び通気孔を有さないものであれば特に限定されないが、金属、合金、ガラス、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂、塩素系樹脂等とすることができる。
【0036】
ポリオレフィン樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、メタロセン触媒によるポリエチレン等の各種ポリエチレン類、ポリスチレン、ポリメチルペンテン、プロピレンホモポリマー、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-エチレンランダム共重合体等のポリプロピレン類等が挙げられ、これらは単独で、または組み合わせて用いることができる。また、これらポリオレフィン樹脂には、必要に応じて、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、熱可塑性エラストマー等が添加されていてもよい。
【0037】
ポリエステル樹脂としては、例えば、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステル等が挙げられる。ポリアミド樹脂としては、例えば、芳香族ポリアミド、脂肪族ポリアミド等が挙げられる。これらの具体例としては、ポリメタキシリレンアジパミド(例えば、三菱ガス化学株式会社製、MXナイロン)、ナイロン-6、ナイロン-6,6、ナイロン-6,12等を挙げることができる。
【0038】
ポリビニルアルコール樹脂としては、例えば、ビニルエステル重合体、またはビニルエステルと他の単量体との共重合体をアルカリ触媒を用いてケン化して得られる樹脂が挙げられる。ポリビニルアルコール樹脂のビニルエステル成分のケン化度は、特に限定されないが、好ましくは90%以上であり、より好ましくは95%以上であり、さらに好ましくは99%以上である。ポリビニルアルコール樹脂は、ケン化度の異なる2種類以上のポリビニルアルコール樹脂の配合物(混合物)であってもよい。エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂としては、例えば、エチレン-ビニルエステル共重合体をケン化して得られる樹脂が挙げられる。その中でも、エチレン含量5~60モル%、ケン化度85%以上のエチレン-ビニルアルコール共重合体が好ましい。エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂のエチレン含量は、特に限定されないが、その下限は20モル%以上であることが好ましく、より好ましくは25モル%以上である。また、エチレン含量の上限は、55モル%以下が好ましく、より好ましくは50モル%以下である。さらに、ビニルエステル成分のケン化度も特に限定されないが、85%以上が好ましく、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは99%以上である。
【0039】
塩素系樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニルを主体とするブロック共重合体、グラフト共重合体、更には塩化ビニル樹脂を主体とするポリマーブレンド等が挙げられる。塩化ビニルと共重合されるコモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、塩化ビニリデン、アクリル酸、メタアクリル酸及びそのエステル類、アクリロニトリル類、エチレン、プロピレン等のオレフィン類、マレイン酸及びその無水物等が例示される。
【0040】
容器本体部10に収容される粉粒体は、乾燥剤及び/又は酸素吸収剤であってもよく、乾燥剤及び酸素吸収剤は、従来公知のものを用いることができ、気体と反応して膨張するものであってもよい。乾燥剤は、水分を吸収するものであれば特に限定されないが、例えば、シリカゲル、生石灰(酸化カルシウム)、塩化カルシウム、五酸化二リン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化バリウム等が例示される。酸素吸収剤は酸素を吸収するものであれば特に限定されないが、例えば、鉄粉等の金属粉、鉄化合物等の還元性無機物質、多価フェノール類、多価アルコール類、不飽和脂肪酸化合物、アスコルビン酸又はその塩等の還元性有機物質、炭素-炭素不飽和結合を有する樹脂及び/又はオリゴマーと遷移金属触媒を含有する樹脂組成物、又は金属錯体等を酸素吸収反応の主剤とする酸素吸収剤組成物等が例示され、鉄粉を主剤とする鉄系脱酸素剤であってもよい。乾燥剤及び酸素吸収剤のいずれか一方のみを用いてもよく、乾燥剤及び酸素吸収剤の両方を用いてもよい。乾燥剤及び酸素吸収剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0041】
本実施形態に係る粉粒体用容器100は、蓋体50が、容器本体部10との間に隙間G(G1,G2,G3)を有しながら、段差33及び加締め部37の間に配置されることで、粉粒体用容器100外との通気性を確保しつつ、内容物がこぼれることをより確実に防止できる。従来、複数層からなる容器本体部の内側の層を紙層にしたり、通気性を有する材質からなる蓋体を用いることで通気性を確保し、内容物である乾燥剤や酸素吸収剤が容器外の雰囲気と接触する通気性を確保していた。一方、本発明に係る粉粒体用容器100は、容器本体部10や蓋体50を、通気性を有さず、かつ強度を有する材質とし、また、容器本体部10と蓋体50との間に、粉粒体Aがこぼれず、かつ粉粒体Aの機能を損なわない僅かな隙間を設けることで、十分な通気性を確保することができ、容器の輸送中などの振動により生じ得る衝撃に対する強度に優れ、さらに、内容物としての粉粒体Aがこぼれることを防止できるという、優れた効果を発揮するものである。
【0042】
以上、本実施形態に係る粉粒体用容器100の構成について説明した。次に、包装体200について、
図4を用いて説明する。ここで、
図4は、本実施形態に係る包装体の構成を例示する縦断面図である。なお、上述した実施形態と同一又は類似する構成については、同一の符号を付して説明を省略する場合がある。また、本実施形態に係る包装体200は、上述した粉粒体用容器100を用いてなるものであってもよい。
【0043】
[包装体200]
図4に示すように、本実施形態に係る包装体200は、粉粒体Aが容器110に収容されたものであって、容器110が、粉粒体Aを収容する容器本体部10と、蓋体50と、を備え、容器本体部10は、底部20と、底部20の外縁から立ち上がる周壁部30と、を備え、周壁部30は、周壁部30の内周側において底部20から立ち上がり、かつ、蓋体50よりも小径の第一内周壁部31と、蓋体50よりも大径であり、かつ、第一内周壁部31と段差33を有して接続する第二内周壁部35と、底部20と反対側の端部に配置され、かつ、容器本体部10の内周側に折り曲げられる加締め部37と、を備え、容器本体部10及び蓋体50が、通気性及び通気孔を有さず、さらに、蓋体50が、容器本体部10との間に隙間(
図3参照)を有しながら、段差33及び加締め部37の間に配置される。
【0044】
本実施形態に係る包装体200では、容器本体部10に収容される粉粒体Aは、上述した粉粒体用容器100の粉粒体として例示したものを使用することができ、鉄粉を主剤とする鉄系脱酸素剤であってもよい。乾燥剤及び酸素吸収剤のいずれか一方のみを用いてもよく、乾燥剤及び酸素吸収剤の両方を用いてもよい。乾燥剤及び酸素吸収剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0045】
本実施形態に係る包装体200では、粉粒体Aの充填率を85%以下とすることができる。従来の包装体では、粉粒体を密に充填することで、粉粒体により蓋体を支持することで、粉粒体がこぼれてしまうことを防止していた。本実施形態に係る包装体200は、容器110の輸送中などの振動により、容器110同士や容器110の内容物である粉粒体Aと蓋体50とがぶつかることで、容器本体部10及び蓋体50に変形が生じたり、蓋が外れたりすることを防ぐことができるため、粉粒体Aにより蓋体50を支持する必要がない。したがって、包装体200は、容器本体部10に粉粒体Aを密に充填しなくても、粉粒体Aがこぼれてしまうことを防ぐことができる。換言すれば、包装体200は、密に充填可能な量から少量の充填量まで様々な量の粉粒体Aを充填可能であり、粉粒体Aの充填量に応じて包装体200を製造する必要がなく、経済性に優れる。
【0046】
本実施形態に係る包装体200では、粉粒体Aとして特に鉄系脱酸素剤を好適に使用できる。鉄系脱酸素剤は酸素吸収時に膨張するため、包装体内に一定の空間を設ける必要がある。しかし、包装体内に空間を設けた場合、包装体の輸送中などの振動により容器同士や容器の内容物である粉粒体Aと蓋体とがぶつかることで、容器本体部及び蓋体に変形が生じたり、蓋が外れたりして、内容物の鉄系脱酸素剤の粉体がこぼれやすいという傾向が特に顕著であった。この課題に対して、本発明の包装体200の構成とすることで、粉粒体Aとして鉄系脱酸素剤を収納した場合にも、鉄系脱酸素剤粉体がこぼれることを防ぐことができる。
【0047】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載された範囲には限定されない。上記実施形態には、多様な変更または改良を加えることが可能である。
【0048】
例えば、上述した実施形態では、粉粒体用容器100の底部20は、凸部21、凹部23、及び脚部25を有して構成されているが、凸部21、凹部23、及び脚部25を有していなくてもよいし、凸部21、凹部23、及び脚部25の形状等は上述した実施形態に限定されない。
【0049】
また、例えば、上述した実施形態では、粉粒体用容器100は、底部20と周壁部30とは、曲線を有して接続されているが、曲線を有して接続されていなくてもよい。
【0050】
さらに、例えば、上述した実施形態では、周壁部30が底部20の反対側に向かって径が大きくなるように構成されているが、周壁部30の径は一定であってもよい。
【0051】
また、例えば、上述した実施形態では、蓋体50の抜け落ちにくさの観点から、粉粒体用容器100が円筒形状を有して構成されているが、蓋体50が抜け落ちなければ、中空四角形状等の中空多角形状を有するように構成されてもよい。
【実施例0052】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
【0053】
[測定方法]
(蓋体の応力)
図1のように容器に加締められた状態の蓋体に底部と反対側の方向(
図1の紙面上側)から5mm/minの速度で断面積C[mm
2]の治具にて力をかけ、蓋体が抜け落ちた又は変形したときの荷重P[N]を3回測定し、下記式により蓋体の応力σ[MPa]を算出し、その平均値を蓋体の応力とした。
蓋体の応力σ=P/C
【0054】
(酸素吸収量)
本実施形態の脱酸素剤の酸素吸収性能は、酸素吸収量により評価される。酸素吸収量は過剰量の空気と脱酸素剤を酸素バリア袋内に共封し、ある一定の期間保存した後に測定した袋内の酸素濃度より導かれる袋内酸素減少量を言う。実施例及び比較例の包装体を作製した後、空気1500mLと共に、アルミニウム蒸着酸素非透過性袋に入れて密封し、40℃で7日間保管した。袋内の酸素濃度を測定し、酸素吸収量(単位:mL)を算出した。
【0055】
実施例1
周壁部の長さを20mm、周壁部の厚さを1.0mm、第二内周壁部及び加締め部の合計長さを4.0mm、第二内周壁部及び加締め部の厚さを0.5mm、底部の外径を14mmとした、ポリプロピレン製の粉粒体用容器(
図1参照)に、鉄系脱酸素剤1.72gを充填率が80%となるように充填した。鉄系脱酸素剤は次の方法にて調製した。20gの水に20gの塩化カルシウム二水和物を溶解させた水溶液を、48gの珪藻土(イソライト工業株式会社製「CG-1C」)に混合しながら滴下して均一に含浸させた。次に活性炭1.1gと石膏1.4gを加えて混合し、91gの水分供与物(A)を得た。54質量部の鉄粉(平均粒子径100μm)と46質量部の前記水分供与物(A)を混合し、粉体混合物である脱酸素剤組成物として鉄系脱酸素剤を得た。鉄系脱酸素剤の充填率を約85%とし、容器本体部の段差上に蓋体として厚さ600μmの平板状のポリプロピレン製シートを配置し、加熱治具を用いて、加熱温度100℃、加締め時間1秒間、加締め圧力9.1×10
5Pa±0.6×10
5Paの条件で加締め部を加締めて包装体を作製した(
図4参照)。なお、加締め部の折り曲げられた端部の延長線は、第二内周壁部と交差した構造となっていた(
図1及び
図2参照)。蓋体の応力σは、3.67MPaであり、酸素吸収量は167mLであった。
【0056】
比較例1
蓋体の加熱温度を180℃、加締め時間を5秒間に変更した以外は、実施例1と同様に包装体を作製した。蓋体の応力σは、5.23MPaであり、酸素吸収量は9mLであった。
【0057】
比較例2
蓋体を厚さ533μm、坪量382g/m2の紙に変更した以外は、実施例1と同様に包装体を作製した。蓋体の応力σは、1.44MPaであり、酸素吸収量は163mLであった。
【0058】
本発明によれば、粉粒体用容器100外と隙間G(G1,G2,G3)を通じて通気性を確保しつつ、内容物がこぼれることをより確実に防止できる。比較例1では、容器本体部と蓋体が熱溶着され、容器本体部と蓋体との間に隙間G(G1,G2,G3)がないため、酸素吸収量が少なく、通気性を有していなかった。比較例2では、蓋体が紙であるため、蓋体の応力が劣っていた。そのため、容器の輸送中などの衝撃に対する強度に劣り、特に、粉粒体の充填率が少ない場合に、蓋体に変形が生じたり、蓋体が外れて粉粒体がこぼれてしまう可能性がある。
本発明の粉粒体用容器は、粉粒体用容器100外との通気性を確保しつつ、内容物としての粉粒体を密に充填しなくても粉粒体がこぼれることをより確実に防止できるため、乾燥剤及び/又は酸素吸収剤の包装体に好適に用いられる。