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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110267
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】ダイカスト金型
(51)【国際特許分類】
   B22D 17/22 20060101AFI20240807BHJP
   B22C 9/06 20060101ALI20240807BHJP
   B29C 33/10 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
B22D17/22 G
B22D17/22 C
B22C9/06 P
B29C33/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014765
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000128175
【氏名又は名称】株式会社エフ・シー・シー
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】塩▲崎▼ 雅俊
【テーマコード(参考)】
4E093
4F202
【Fターム(参考)】
4E093NA01
4E093NB01
4F202AJ08
4F202AR12
4F202CA11
4F202CB01
4F202CK42
4F202CN05
4F202CP01
(57)【要約】
【課題】ガス抜き用の専用部品を用いることなく複数の放熱用のピンを有する成形品を容易に成形すること。
【解決手段】ダイカスト金型10は、固定型20側に位置する第1入れ子50と、第1入れ子50に着脱可能に設けられ、かつ、可動型30側に位置する第2入れ子70と、を有し、第1入れ子50は、溶融した金属材料が充填されることによって複数の放熱用のピン105を成形する第1貫通孔56を有し、第2入れ子70は、成形空間15内の気体を排出する第2貫通孔76を有し、第1対向面53または第2対向面73には、第1入れ子50に第2入れ子70が取り付けられたときに第1貫通孔56および第2貫通孔76と連通し、かつ、溶融した金属材料が通過不能かつ気体が通過可能な凹溝80が形成され、型移動方向Pから見て、複数の第1貫通孔56は、複数の第2貫通孔76の少なくとも一部とは重ならない。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の放熱用のピンを有する成形品を成形するダイカスト金型であって、
固定型と、
前記固定型に接近または離隔可能な可動型と、
複数の前記放熱用のピンを成形する入れ子と、
前記固定型および前記可動型および前記入れ子によって区画され、溶融した金属材料が充填される成形空間と、を備え、
前記可動型が前記固定型に対して移動する方向を型移動方向としたとき、
前記入れ子は、
前記型移動方向に関して前記固定型側に位置する第1入れ子と、
前記第1入れ子に着脱可能に設けられ、かつ、前記型移動方向に関して前記可動型側に位置する第2入れ子と、を有し、
前記第1入れ子は、
前記第2入れ子に対向する第1対向面を有する第1本体部と、
前記型移動方向に延び、かつ、前記第1本体部に貫通形成され、かつ、前記溶融した金属材料が充填されることによって複数の前記放熱用のピンをそれぞれ成形する複数の第1貫通孔と、を有し、
前記第2入れ子は、
前記第1対向面に対向する第2対向面を有する第2本体部と、
前記型移動方向に延び、かつ、前記第2本体部に貫通形成され、かつ、前記成形空間内の気体を排出する複数の第2貫通孔と、を有し、
前記第1対向面または前記第2対向面には、前記第1入れ子に前記第2入れ子が取り付けられたときに前記第1貫通孔および前記第2貫通孔と連通し、かつ、前記溶融した金属材料が通過不能かつ気体が通過可能な凹溝が形成され、
前記型移動方向から見て、複数の前記第1貫通孔は、複数の前記第2貫通孔の少なくとも一部とは重ならない、ダイカスト金型。
【請求項2】
前記型移動方向から見て、複数の前記第1貫通孔と複数の前記第2貫通孔とは重ならない、請求項1に記載のダイカスト金型。
【請求項3】
1つの前記凹溝において、前記凹溝に連通する前記第2貫通孔の数は、前記凹溝に連通する前記第1貫通孔の数よりも少ない、請求項1または2に記載のダイカスト金型。
【請求項4】
前記凹溝は、前記第2対向面に形成されている、請求項1または2に記載のダイカスト金型。
【請求項5】
前記第2本体部は、
前記型移動方向に関して前記第2対向面の反対側に位置する裏面と、
前記裏面から前記第2対向面に向けて凹み、かつ、冷却用の水が流通するパイプが挿入される挿入孔と、
前記裏面に形成され、かつ、前記第2貫通孔と前記挿入孔とを接続する接続溝と、を備えている、請求項1または2に記載のダイカスト金型。
【請求項6】
1つの前記挿入孔には、少なくとも1つの前記接続溝を介して複数の前記第2貫通孔が接続されている、請求項5に記載のダイカスト金型。
【請求項7】
前記挿入孔の内径は、前記第2貫通孔の内径よりも大きい、請求項6に記載のダイカスト金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイカスト金型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から複数の放熱ピンを有する放熱板が種々の分野で用いられている。放熱板は、例えば、ダイカスト金型を用いて成形される。例えば、特許文献1には、入れ子金型を有する可動金型と、固定金型と、を備えたダイカスト成形金型が開示されている。特許文献1では、放熱板用キャビティの複数の放熱ピン部に、アルミニウム系材料の溶湯は通過しないが、ガスを通過させる多孔質部材がそれぞれ配置されている。これにより、各放熱ピン部の先端部まで溶湯を容易に流入させることができ、放熱板を製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3306376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のように特許文献1に記載の技術では、放熱ピンを成形するためにガス抜き用の専用部品である多孔質部材が必要である。さらに、1つの放熱ピンを成形するために1つ多孔質部材が必要となるため、放熱板が備える放熱ピンの数が多くなるほど、放熱ピンを成形するために必要な多孔質部材の数も多くなり、放熱板を製造するコストが増大する虞がある。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ガス抜き用の専用部品を用いることなく複数の放熱用のピンを有する成形品を容易に成形することができるダイカスト金型を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るダイカスト金型は、複数の放熱用のピンを有する成形品を成形するダイカスト金型であって、固定型と、前記固定型に接近または離隔可能な可動型と、複数の前記放熱用のピンを成形する入れ子と、前記固定型および前記可動型および前記入れ子によって区画され、溶融した金属材料が充填される成形空間と、を備え、前記可動型が前記固定型に対して移動する方向を型移動方向としたとき、前記入れ子は、前記型移動方向に関して前記固定型側に位置する第1入れ子と、前記第1入れ子に着脱可能に設けられ、かつ、前記型移動方向に関して前記可動型側に位置する第2入れ子と、を有し、前記第1入れ子は、前記第2入れ子に対向する第1対向面を有する第1本体部と、前記型移動方向に延び、かつ、前記第1本体部に貫通形成され、かつ、前記溶融した金属材料が充填されることによって複数の前記放熱用のピンをそれぞれ成形する複数の第1貫通孔と、を有し、前記第2入れ子は、前記第1対向面に対向する第2対向面を有する第2本体部と、前記型移動方向に延び、かつ、前記第2本体部に貫通形成され、かつ、前記成形空間内の気体を排出する複数の第2貫通孔と、を有し、前記第1対向面または前記第2対向面には、前記第1入れ子に前記第2入れ子が取り付けられたときに前記第1貫通孔および前記第2貫通孔と連通し、かつ、前記溶融した金属材料が通過不能かつ気体が通過可能な凹溝が形成され、前記型移動方向から見て、複数の前記第1貫通孔は、複数の前記第2貫通孔の少なくとも一部とは重ならない。
【0007】
本発明に係るダイカスト金型によると、第1対向面または第2対向面には、第1入れ子に第2入れ子が取り付けられたときに第1貫通孔および第2貫通孔と連通する凹溝が形成されている。ここで、凹溝は、溶融した金属材料が通過不能かつ気体が通過可能に構成され、かつ、型移動方向から見て、複数の第1貫通孔は複数の第2貫通孔の少なくとも一部とは重ならないため、第1貫通孔と第2貫通孔とが重ならない部分では、第1貫通孔に溶融した金属材料が充填されても、溶融した金属材料は第2貫通孔には流れない。さらに、成形空間内の気体は、第1貫通孔および凹溝を通過して第2貫通孔に流れるため、溶融した金属材料を第1貫通孔に充填したときには、凹溝を介して第1貫通孔内の気体を第2貫通孔に流すことができる。これにより、第1貫通孔の先端まで溶融した金属材料を充填することができる。このように、第1貫通孔と第2貫通孔とが重ならない部分では第1貫通孔にガス抜き用の専用部品である多孔質部材を設けなくても、放熱用のピンを有する成形品を容易に成形することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ガス抜き用の専用部品を用いることなく複数の放熱用のピンを有する成形品を容易に成形することができるダイカスト金型を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施形態に係るダイカスト金型の斜視図である。
図2図2は、一実施形態に係るダイカスト金型によって成形された成形品の斜視図である。
図3図3は、一実施形態に係るダイカスト金型の一部の断面図である。
図4図4は、一実施形態に係る入れ子の斜視図である。
図5図5は、一実施形態に係る第1入れ子の斜視図である。
図6図6は、一実施形態に係る第1入れ子の平面図である。
図7図7は、一実施形態に係る第1入れ子の斜視図である。
図8図8は、一実施形態に係る第1入れ子の底面図である。
図9図9は、一実施形態に係る第2入れ子の斜視図である。
図10図10は、一実施形態に係る第2入れ子の平面図である。
図11図11は、一実施形態に係る第2入れ子の斜視図である。
図12図12は、一実施形態に係る第2入れ子の底面図である。
図13図13は、一実施形態に係る第2入れ子の平面図であり、第1貫通孔と第2貫通孔と凹溝との位置関係を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明に係るダイカスト金型の実施形態について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0011】
図1は、本実施形態に係るダイカスト金型10の斜視図である。ダイカスト金型10は、ダイカスト法、即ち高速高圧での鋳造方法を用いる装置である。ここで、高圧とは、例えば、20MPa~100MPaである。ダイカスト金型10は、複数の放熱用のピン105(図2参照)を有する成形品100(図2参照)を成形する装置である。ダイカスト金型10は、固定型20と、可動型30と、入れ子40(図3参照)とを備えている。
【0012】
図2に示すように、成形品100は、熱伝導率の高い金属(例えばアルミニウム合金)から成形されている。成形品100は、上面が開口した箱状の本体部102と、本体部102の内部に設けられた複数の放熱用のピン105を有する。本体部102と放熱用のピン105とは一体的に成形されている。成形品100は、例えば、ヒートシンク等として利用され得る。
【0013】
図3に示すように、固定型20は、成形品100(図2参照)の一部を成形するために用いられるキャビティ部21を備えている。
【0014】
図3に示すように、可動型30は、固定型20に接近または離隔可能に設けられている。ここでは、可動型30が固定型20に対して移動する方向を型移動方向Pとし、可動型30が固定型20に接近する方向をP1とし、可動型30が固定型20から離隔する方向をP2とする。可動型30は、成形品100(図2参照)の他の一部を成形するために用いられるコア部31を備えている。可動型30は、入れ子40が装着される装着孔32を備えている。
【0015】
図3に示すように、入れ子40は、固定型20および可動型30内に配置される。入れ子40は、可動型30の装着孔32に着脱可能に設けられている。入れ子40は、成形品100(図2参照)における複数の放熱用のピン105(図2参照)を成形する。入れ子40は、成形品100の本体部102(図2参照)の一部を成形する。入れ子40は、複数の放熱用のピン105および本体部102の一部を成形するために用いられる。入れ子40が装着孔32に取り付けられた状態で可動型30を方向P1に移動させて(可動型30を固定型20に接近させて)ダイカスト金型10を閉じたときに、固定型20および可動型30および入れ子40によって成形空間15が形成される。成形空間15は、キャビティ部21およびコア部31および入れ子40の後述する第1貫通孔56によって区画される。成形空間15には、溶融した金属材料(溶湯)が充填される。金属材料としては、例えば、アルミニウム合金が挙げられる。なお、溶融した金属材料は、固定型20に設けられた射出入口12(図1参照)から成形空間15内に充填される。
【0016】
図3および図4に示すように、入れ子40は、第1入れ子50と、第2入れ子70とを有している。第1入れ子50は、型移動方向Pに関して固定型20側に位置する。入れ子40が装着孔32に取り付けられた状態において、第1入れ子50は、キャビティ部21内に収容される。第2入れ子70は、型移動方向Pに関して可動型30側に位置する。第2入れ子70は、第1入れ子50に着脱可能に設けられている。入れ子40が装着孔32に取り付けられた状態において、第2入れ子70は、装着孔32内に収容される。
【0017】
図5および図7に示すように、第1入れ子50は、第1本体部52と、第1本体部52に貫通形成された複数の第1貫通孔56と、第1本体部52から突出する係合突起60とを有している。
【0018】
図7および図8に示すように、第1本体部52は、第2入れ子70(より詳細には後述する第2対向面73)に対向する第1対向面53を有する。図5および図6に示すように、第1本体部52は、型移動方向Pに関して第1対向面53の反対側に位置する表面54を有する。入れ子40が装着孔32に取り付けた状態において、表面54は固定型20側に位置し、かつ、第1対向面53は可動型30側に位置する。
【0019】
図5および図6に示すように、第1貫通孔56は、型移動方向Pに延びる。第1貫通孔56は、表面54から第1対向面53に亘って第1本体部52を貫通している。第1貫通孔56は、溶融した金属材料が充填されることによって複数の放熱用のピン105(図2参照)をそれぞれ成形する。即ち、第1貫通孔56は、放熱用のピン105を成形するために用いられる部位である。
【0020】
図7および図8に示すように、第1入れ子50は、4つの係合突起60を有している。係合突起60は、第1本体部52の四隅にそれぞれ設けられている。係合突起60は、第1本体部52から方向P2に向けて突出する。係合突起60は、第2入れ子70の後述する係合凹部90(図9参照)に係合するように構成されている。
【0021】
図9および図11に示すように、第2入れ子70は、第2本体部72と、第2本体部72に貫通形成された複数の第2貫通孔76と、第2本体部72に形成された係合凹部90と、を有している。
【0022】
図9および図10に示すように、第2本体部72は、第1入れ子50(より詳細には第1対向面53)に対向する第2対向面73を有する。図11および図12に示すように、第2本体部72は、型移動方向Pに関して第2対向面73の反対側に位置する裏面74を有する。入れ子40が装着孔32に取り付けた状態において、第2対向面73は固定型20側に位置し、かつ、裏面74は可動型30側に位置する。第1入れ子50に第2入れ子70が取り付けられた状態では第2対向面73と第1対向面53とは接触する。
【0023】
図9および図10に示すように、第2貫通孔76は、型移動方向Pに延びる。第2貫通孔76は、第2対向面73から裏面74に亘って第2本体部72を貫通している。第2貫通孔76は、成形空間15(図3参照)内の気体を排出する。即ち、第2貫通孔76は、成形空間15の第1貫通孔56に溶融した金属材料が充填されたときに、第1貫通孔56内の気体を排出するために用いられる部位である。本実施形態では、裏面74には他の部材(図示せず)が配置され、第2貫通孔76は塞がれているが、第2貫通孔76は大気開放されていてもよい。第2本体部72に貫通形成された第2貫通孔76の数は、第1本体部52に貫通形成された第1貫通孔56の数よりも少ない。図13に示すように、型移動方向Pから見て、複数の第1貫通孔56と複数の第2貫通孔76とは重ならない。ここでは、型移動方向Pから見て、全ての第1貫通孔56と全ての第2貫通孔76とは重ならない。なお、図13では、第1貫通孔56を二点鎖線で表し、第2貫通孔76を実線で表している。
【0024】
図11および図12に示すように、第2入れ子70は、4つの係合凹部90を有している。係合凹部90は、第2本体部72の四隅にそれぞれ設けられている。係合凹部90は、第2対向面73から裏面74に向けて凹む。係合凹部90は、方向P2に向けて凹む。係合突起60(図7参照)が係合凹部90に係合することによって、第1入れ子50および第2入れ子70が相互に組み付けられる。
【0025】
図9および図10に示すように、第2入れ子70は、複数の凹溝80を有している。凹溝80は、第2対向面73に形成されている。凹溝80は、第2対向面73から裏面74に向けて凹む。凹溝80は、方向P2に向けて凹む。凹溝80の深さは、例えば、10μm~50μm(例えば30μm)である。凹溝80は、第2本体部72の長手方向、即ち第1貫通孔56および第2貫通孔76が延びる方向と直交する方向に延びる。なお、凹溝80は、第2本体部72の短手方向に延びていてもよい。第2貫通孔76は、凹溝80に形成されている。即ち、図10に示すように、型移動方向Pから見て、第2貫通孔76と凹溝80とは重なる。凹溝80は、第2貫通孔76と連通する。凹溝80は、第1入れ子50に第2入れ子70が取り付けられたときに第1貫通孔56と連通する。図13に示すように、型移動方向Pから見て、第1貫通孔56と凹溝80とは重なる。1つの凹溝80において、凹溝80に連通する第2貫通孔76の数は、凹溝80に連通する第1貫通孔56の数よりも少ない。例えば、凹溝80Aに連通する第2貫通孔76の数は2であり、凹溝80Aに連通する第1貫通孔56の数は6である。凹溝80は、第1入れ子50に第2入れ子70が取り付けられた状態において、溶融した金属材料が通過不能かつ気体が通過可能に形成されている。即ち、第1入れ子50に第2入れ子70が取り付けられた状態において、第1貫通孔56に溶融した金属材料が充填されると、第1貫通孔56内の気体は凹溝80を介して第2貫通孔76に流れるが、溶融した金属材料は凹溝80を通過せず、凹溝80で堰き止められる。
【0026】
図11および図12に示すように、第2入れ子70の第2本体部72は、裏面74から第2対向面73に向けて凹む複数の挿入孔82を有する。挿入孔82は、大気開放されている。挿入孔82は、方向P1に向けて凹む。挿入孔82の数は、第2貫通孔76の数よりも少ない。図3に示すように、挿入孔82には冷却用の水が流通するパイプ95が挿入される。パイプ95が挿入孔82に挿入されたときには、挿入孔82とパイプ95との間には気体が通過可能な隙間が形成される。パイプ95と挿入孔82との間にはOリング等からなる封止部材97が設けられているため、パイプ95内を流通する水は挿入孔82から外部に漏れ出さない。挿入孔82の内径は、第2貫通孔76の内径よりも大きい。
【0027】
図11および図12に示すように、第2入れ子70の第2本体部72は、裏面74に形成された複数の接続溝84を備えている。接続溝84は、裏面74から第2対向面73に向けて凹む。接続溝84は、方向P1に向けて凹む。接続溝84は、第2貫通孔76と挿入孔82とを接続する溝である。接続溝84は、第2貫通孔76を流れる気体を挿入孔82に流すための溝である。接続溝84は、第2本体部72の長手方向に延びる。接続溝84は、第2本体部72の短手方向に延びていてもよい。1つの挿入孔82には、少なくとも1つの接続溝84を介して複数の第2貫通孔76が接続されている。例えば、挿入孔82Aには、2つの接続溝84を介して4つの第2貫通孔76が接続されている。
【0028】
以上のように、本実施形態のダイカスト金型10によると、第1対向面53または第2対向面73には、第1入れ子50に第2入れ子70が取り付けられたときに第1貫通孔56および第2貫通孔76と連通する凹溝80が形成されている。ここで、凹溝80は、溶融した金属材料が通過不能かつ気体が通過可能に構成され、かつ、型移動方向Pから見て、複数の第1貫通孔56は複数の第2貫通孔76の少なくとも一部とは重ならないため、第1貫通孔56と第2貫通孔76とが重ならない部分では第1貫通孔56に溶融した金属材料が充填されても、溶融した金属材料は第2貫通孔76には流れない。さらに、成形空間15内の気体は、第1貫通孔56および凹溝80を通過して第2貫通孔76に流れるため、溶融した金属材料を第1貫通孔56に充填したときには、凹溝80を介して第1貫通孔56内の気体を第2貫通孔76に流すことができる。これにより、第1貫通孔56の先端(第2入れ子70側の端部)まで溶融した金属材料を充填することができる。このように、第1貫通孔56と第2貫通孔76とが重ならない部分では第1貫通孔56にガス抜き用の専用部品である多孔質部材を設けなくても、放熱用のピン105を有する成形品100を容易に成形することができる。
【0029】
本実施形態のダイカスト金型10では、型移動方向Pから見て、複数の第1貫通孔56と複数の第2貫通孔76とは重ならない。上記態様によれば、全ての第2貫通孔76には溶融した金属材料が流れないため、放熱用のピン105を形成するに際して全ての第1貫通孔56にガス抜き用の専用部品である多孔質部材を設けなくてもよい。
【0030】
本実施形態のダイカスト金型10では、1つの凹溝80において、凹溝80に連通する第2貫通孔76の数は、凹溝80に連通する第1貫通孔56の数よりも少ない。上記態様によれば、第1貫通孔56ごとに第2貫通孔76を設ける必要がない。即ち、複数の第1貫通孔56を流れる気体を一度凹溝80に集約し、その後により少ない数の第2貫通孔76に気体を流すことができるため、第2入れ子70の構造がより簡素化し、コストの低減を図ることができる。
【0031】
本実施形態のダイカスト金型10では、凹溝80は、第2対向面73に形成されている。上記態様によれば、第1入れ子50において放熱用のピン105を成形する第1貫通孔56の形成を容易にすることができる。
【0032】
本実施形態のダイカスト金型10では、第2本体部72は、型移動方向Pに関して第2対向面73の反対側に位置する裏面74と、裏面74から第2対向面73に向けて凹み、かつ、冷却用の水が流通するパイプ95が挿入される挿入孔82と、裏面74に形成され、かつ、第2貫通孔76と挿入孔82とを接続する接続溝84と、を備えている。上記態様によれば、第2貫通孔76を流れる気体を挿入孔82(より詳細には挿入孔82とパイプ95との隙間)から外部に排出することができる。
【0033】
本実施形態のダイカスト金型10では、1つの挿入孔82には、少なくとも1つの接続溝84を介して複数の第2貫通孔76が接続されている。上記態様によれば、複数の第2貫通孔76を流れる気体を1つの挿入孔82に一度集約してから挿入孔82を介して外部に排出することができる。即ち、挿入孔82をたくさん作る必要がないため、第2入れ子70の構造が簡素化する。
【0034】
本実施形態のダイカスト金型10では、挿入孔82の内径は、第2貫通孔76の内径よりも大きい。上記態様によれば、第2貫通孔76を流れる気体をより確実に挿入孔82から外部に排出することができる。
【0035】
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。しかし、上述の実施形態は例示に過ぎず、本発明は他の種々の形態で実施することができる。
【0036】
上述した実施形態では、型移動方向Pから見て、複数の第1貫通孔56と複数の第2貫通孔76とは重ならないように配置されていたが、これに限定されない。例えば、型移動方向Pから見て、複数の第1貫通孔56は、複数の第2貫通孔76の少なくとも一部とは重ならないように配置されていてもよい。即ち、型移動方向Pから見て、複数の第1貫通孔56の一部が複数の第2貫通孔76の一部と重なっていてもよい。
【0037】
上述した実施形態では、凹溝80は第2入れ子70の第2対向面73に形成されていたが、これに限定されない。凹溝80は、例えば、第1入れ子50の第1対向面53に形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0038】
10 ダイカスト金型
15 成形空間
20 固定型
30 可動型
40 入れ子
50 第1入れ子
52 第1本体部
53 第1対向面
56 第1貫通孔
70 第2入れ子
72 第2本体部
73 第2対向面
74 裏面
76 第2貫通孔
80 凹溝
82 挿入孔
84 接続溝
100 成形品
105 放熱用のピン
図1
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