(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110285
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】二酸化炭素回収装置
(51)【国際特許分類】
B01D 53/14 20060101AFI20240807BHJP
B01D 53/62 20060101ALI20240807BHJP
B01D 53/78 20060101ALI20240807BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20240807BHJP
【FI】
B01D53/14 220
B01D53/62 ZAB
B01D53/78
C01B32/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014801
(22)【出願日】2023-02-02
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「ムーンショット型研究開発事業/地球環境再生に向けた持続可能な資源循環を実現/冷熱を利用した大気中二酸化炭素直接回収の研究開発」委託事業(事業期間:2020年度~2022年度)、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000221834
【氏名又は名称】東邦瓦斯株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 宗一郎
(72)【発明者】
【氏名】中山 勇輝
(72)【発明者】
【氏名】田中 洋一
(72)【発明者】
【氏名】薮下 雅崇
(72)【発明者】
【氏名】水上 忠雄
(72)【発明者】
【氏名】向江 友佑
(72)【発明者】
【氏名】神谷 健司
(72)【発明者】
【氏名】則永 行庸
(72)【発明者】
【氏名】町田 洋
(72)【発明者】
【氏名】梅田 良人
(72)【発明者】
【氏名】平山 幹朗
【テーマコード(参考)】
4D002
4D020
4G146
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002BA02
4D002CA07
4D002DA32
4D002DA34
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4D020CC09
4D020CC30
4G146JA02
4G146JA03
4G146JA04
4G146JB09
4G146JC07
4G146JC10
4G146JC18
4G146JC19
4G146JC20
4G146JC28
4G146JC29
4G146JC35
4G146JC36
4G146JC37
4G146JC39
4G146LA10
(57)【要約】
【課題】投与するエネルギー負荷を抑制すると共に、水蒸気の混在を抑えて、被分離ガスから二酸化炭素を、より高い純度で回収することができる二酸化炭素回収装置を提供する。
【解決手段】二酸化炭素回収装置1は、被分離ガスとの気液接触により、被分離ガスに含む二酸化炭素を吸収液に吸収させる吸収塔10と、吸収液に吸収した該二酸化炭素を放散させる再生塔20と、を備え、放散した該二酸化炭素を回収する。二酸化炭素回収装置1では、吸収塔10と再生塔20とを繋ぐ第1管路L81に、二酸化炭素を吸収した状態にある吸収処理後の吸収液(リッチ液)から、混在する水分を取り除く脱水手段30を備え、吸収液(リッチ液)は、脱水手段30により、水分を除去した状態で、第1管路L81を通じて再生塔に供給される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被分離ガスとの気液接触により、該被分離ガスに含む二酸化炭素を吸収液に吸収させる吸収塔と、該吸収液に吸収した該二酸化炭素を放散させる再生塔と、を備え、放散した該二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収装置において、
前記吸収塔と前記再生塔とを連通可能に繋ぐ第1管路に、前記二酸化炭素を吸収した状態にある吸収処理後の前記吸収液から、混在する水分を取り除く脱水手段を備え、
前記吸収処理後の吸収液は、前記脱水手段により、前記水分を除去した状態で、前記第1管路を通じて前記再生塔に供給されること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項2】
請求項1に記載する二酸化炭素回収装置において、
前記再生塔から放散した再生処理後の前記二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収手段を、前記再生塔と連通可能に繋ぐ第2管路に備え、前記二酸化炭素回収手段は、前記再生処理後の二酸化炭素を気相から固相に昇華させる固化槽を有し、
前記固化槽では、冷媒回路を流通する冷媒により、前記再生処理後の二酸化炭素との間で熱交換が可能であり、前記再生処理後の二酸化炭素は、前記冷媒により固化した状態で、前記固化槽から回収可能であること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項3】
請求項2に記載する二酸化炭素回収装置において、
前記冷媒は、二酸化炭素の凝固点より低い温度で沸点を有した物性をなす熱媒体であること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載する二酸化炭素回収装置において、
前記二酸化炭素回収手段は、前記再生処理後の二酸化炭素を気相状態で収容可能な気化槽を有し、
前記気化槽には、固化した状態にある前記再生処理後の二酸化炭素を、その臨界点より低い温度で昇温可能な第1の熱源が配設され、前記再生処理後の二酸化炭素は、前記第1の熱源により、常温に温度調節された気相状態で、前記気化槽から回収可能であること、
前記二酸化炭素回収手段では、前記固化槽の役割と前記気化槽の役割のいずれか一方を、互いに異なった役割で選択的に果たすことを可能に構成された一双の回収槽が、前記第2管路に対し、並列に接続されていること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項5】
請求項2または請求項3に記載する二酸化炭素回収装置において、
前記脱水手段は、前記吸収処理後の吸収液を収容可能な第1の内部空間を設けた第1の脱水ユニットを有し、前記冷媒回路は、前記固化槽から前記脱水手段を経由して配設されていること、
前記冷媒は、前記脱水手段では、前記水分の凝固を可能とすると共に、前記固化槽では、前記再生処理後の二酸化炭素の固化を可能とした温度であること、
前記水分は、前記冷媒により、前記第1の内部空間で凝固した氷単体の状態で、前記第1の脱水ユニットから回収可能であること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載する二酸化炭素回収装置において、
前記脱水手段は、前記吸収処理後の吸収液を収容可能な第2の内部空間を設けた第2の脱水ユニットと、水を捕捉可能な分離材とを、有し、
前記第2の内部空間に配した前記分離材が、前記第2の内部空間を通過する前記吸収処理後の吸収液から、前記水分を捕捉して除去すること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項7】
請求項6に記載する二酸化炭素回収装置において、
前記吸収塔と前記第2の脱水ユニットとを、前記第1管路と独立した系統で並列に接続した第3管路が配設されていると共に、
前記第2の内部空間からの排気を行う排気管と、前記排気管の開路または閉路が可能な開閉弁とを、前記第2の脱水ユニットに有し、
前記吸収塔で前記吸収処理後の吸収液から放たれた不要ガスは、前記第3管路を通じて前記第2の内部空間を流通し、前記排気管から排気されること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項8】
請求項7に記載する二酸化炭素回収装置において、
前記第2の脱水ユニットには、前記第2の内部空間の雰囲気を昇温可能な第2の熱源が設けられ、
前記第2の脱水ユニットでは、前記不要ガスが前記第2の内部空間に供給される場合には、前記第2の熱源は、前記第2の内部空間を加熱するON状態である一方、
前記吸収処理後の吸収液が前記第2の内部空間に供給される場合には、前記第2の熱源は、前記第2の内部空間を加熱しないOFF状態であること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項9】
請求項7に記載する二酸化炭素回収装置において、
前記第2の脱水ユニットを複数有し、
各前記第2の脱水ユニットは、前記第1管路と並列に接続されていると共に、前記第3管路とも並列に接続されていること、
前記第1管路には、前記第2の脱水ユニットに向けた前記吸収処理後の吸収液の流れを選択的に制御する第1の流通制御弁を、
前記第3管路には、前記第2の脱水ユニットに向けた前記不要ガスの流通を選択的に制御する第2の流通制御弁を、それぞれ有し、
前記各第2の脱水ユニットでは、前記第1の流通制御弁と前記第2の流通制御弁により、前記吸収処理後の吸収液または前記不要ガスのいずれか一方の流体だけが、前記第2の内部空間に供給されること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項10】
請求項8に記載する二酸化炭素回収装置において、
前記第2の脱水ユニットを複数有し、
各前記第2の脱水ユニットは、前記第1管路と並列に接続されていると共に、前記第3管路とも並列に接続されていること、
前記第1管路には、前記第2の脱水ユニットに向けた前記吸収処理後の吸収液の流れを選択的に制御する第1の流通制御弁を、
前記第3管路には、前記第2の脱水ユニットに向けた前記不要ガスの流通を選択的に制御する第2の流通制御弁を、それぞれ有し、
前記各第2の脱水ユニットでは、前記第1の流通制御弁と前記第2の流通制御弁により、前記吸収処理後の吸収液または前記不要ガスのいずれか一方の流体だけが、前記第2の内部空間に供給されること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項11】
請求項7に記載する二酸化炭素回収装置において、
前記第2の脱水ユニットでは、前記不要ガスが前記第2の内部空間に供給される場合、前記第2の内部空間の雰囲気を昇温可能な第2の熱源で加熱した昇温後の前記不要ガスにより、前記水分を捕捉した状態にある前記分離材を、前記第2の内部空間で乾燥させる乾燥機能を有すること、
前記脱水手段では、前記第2の内部空間に供給された前記吸収処理後の吸収液に対し、前記分離材により前記水分の脱水処理を行う脱水機能と、前記乾燥機能とを、相互に選択的な切り替えを伴って、当該二酸化炭素回収装置は運転されること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項12】
請求項8に記載する二酸化炭素回収装置において、
前記第2の脱水ユニットでは、前記不要ガスが前記第2の内部空間に供給される場合、前記第2の熱源で加熱した昇温後の前記不要ガスにより、前記水分を捕捉した状態にある前記分離材を、前記第2の内部空間で乾燥させる乾燥機能を有すること、
前記脱水手段では、前記第2の内部空間に供給された前記吸収処理後の吸収液に対し、前記分離材により前記水分の脱水処理を行う脱水機能と、前記乾燥機能とを、相互に選択的な切り替えを伴って、当該二酸化炭素回収装置は運転されること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項13】
請求項9に記載する二酸化炭素回収装置において、
前記第2の脱水ユニットでは、前記不要ガスが前記第2の内部空間に供給される場合、前記第2の熱源で加熱した昇温後の前記不要ガスにより、前記水分を捕捉した状態にある前記分離材を、前記第2の内部空間で乾燥させる乾燥機能を有すること、
前記脱水手段では、前記第2の内部空間に供給された前記吸収処理後の吸収液に対し、前記分離材により前記水分の脱水処理を行う脱水機能と、前記乾燥機能とを、相互に選択的な切り替えを伴って、当該二酸化炭素回収装置は運転されること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項14】
請求項10に記載する二酸化炭素回収装置において、
前記第2の脱水ユニットでは、前記不要ガスが前記第2の内部空間に供給される場合、前記第2の熱源で加熱した昇温後の前記不要ガスにより、前記水分を捕捉した状態にある前記分離材を、前記第2の内部空間で乾燥させる乾燥機能を有すること、
前記脱水手段では、前記第2の内部空間に供給された前記吸収処理後の吸収液に対し、前記分離材により前記水分の脱水処理を行う脱水機能と、前記乾燥機能とを、相互に選択的な切り替えを伴って、当該二酸化炭素回収装置は運転されること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項15】
請求項1または請求項2に記載する二酸化炭素回収装置において、
前記脱水手段は、疎水性をなす前記吸収液を対象に用いる第3の脱水ユニットを有し、
前記第3の脱水ユニットは、前記吸収処理後の吸収液を静置状態で貯留可能な第3の内部空間と、前記第3の内部空間と連通したドレンと、を有していること、
前記ドレンは、前記第3の内部空間に貯留した前記吸収処理後の吸収液から相分離した前記水分を排水すること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【請求項16】
請求項15に記載する二酸化炭素回収装置において、
前記第1管路のうち、前記第3の内部空間への流入側、または前記第3の内部空間からの流出側の少なくとも片側に、前記第1管路内の開路または閉路を可能とした第3の流通制御弁を有していること、
を特徴とする二酸化炭素回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、燃焼排ガス、大気等、被分離ガスに混在する二酸化炭素を取り除いて回収する二酸化炭素回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、気候変動問題は、解決すべき喫緊の課題となっている。この問題の主因となる二酸化炭素の大気放散を回避するため、燃焼排ガス等(被分離ガス)に混在した二酸化炭素を被分離ガスから取り除いて、二酸化炭素だけを回収する技術の開発が求められている。このような実情の下、国内では、発電所の燃焼排ガス等、被分離ガスに混在した二酸化炭素を分離して活用しようと、高純度の二酸化炭素として回収可能な装置が開発されており、その一例である二酸化炭素回収装置が、特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1は、被分離ガスを吸収液と気液接触させて、被分離ガスに含有した二酸化炭素を吸収液に吸収させる吸収塔と、この状態の吸収液を加熱することにより、水蒸気と共に、二酸化炭素を放散する再生塔とを備えるガス分離方法及び装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、燃焼排ガス、大気等の被分離ガスは、その構成成分に水蒸気を含んでおり、特許文献1のような技術では、吸収塔内において、被分離ガスが、親水性を有した吸収液に、気液接触によって吸収されると、被分離ガス中の水蒸気が吸収液に溶解してしまう。そのため、被分離ガスを吸収した吸収液が、溶解した水蒸気を含んだままの状態で、再生塔内で加熱されると、吸収液から、吸収していた二酸化炭素の蒸発のほかに、溶解していた水分の蒸発も生じる。
【0006】
このとき、水蒸気は、再生塔内の加熱により、吸収液中に液体の状態で存在していた水が、気体の状態で吸収液から放出される際に、蒸気と共存して飽和水を含む状態(湿り飽和蒸気)から、この飽和水の蒸発を完全に終えた状態(過熱蒸気)への相変化に伴い、飽和水の蒸発に必要な潜熱(蒸発熱)分の熱が、再生塔内の雰囲気から吸熱されて奪われる。その結果、再生塔内の雰囲気は冷却されて、再生塔内にある吸収液は、溶解した水分の蒸発によって冷やされ、二酸化炭素を放散するのに必要な放散温度よりも低くなってしまう。それ故に、再生塔では、沸騰温度まで吸収液を昇温させる分の熱を補う必要がある。従って、被分離ガス中の水蒸気が吸収液と溶解したことに起因して、再生塔では、外部から付与するエネルギー負荷が増大して、問題となっていた。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、再生塔内において、投与するエネルギー負荷を抑制すると共に、水蒸気の混在を抑えて、被分離ガスから二酸化炭素を、より高い純度で回収することができる二酸化炭素回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた本発明の一態様における二酸化炭素回収装置は、以下のような構成を有している。
【0009】
(1)被分離ガスとの気液接触により、該被分離ガスに含む二酸化炭素を吸収液に吸収させる吸収塔と、該吸収液に吸収した該二酸化炭素を放散させる再生塔と、を備え、放散した該二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収装置において、前記吸収塔と前記再生塔とを連通可能に繋ぐ第1管路に、前記二酸化炭素を吸収した状態にある吸収処理後の前記吸収液から、混在する水分を取り除く脱水手段を備え、前記吸収処理後の吸収液は、前記脱水手段により、前記水分を除去した状態で、前記第1管路を通じて前記再生塔に供給されること、を特徴とする。
【0010】
この態様によれば、再生塔では、二酸化炭素の放散にあたり、吸収処理後の吸収液が、予め脱水された状態となる。これにより、再生塔では、吸収処理後の吸収液に混在していた水分の気化は、ほとんど生じず、酸素、窒素等の不要ガスも前もって排気されていれば、放散(または気化)するガスの大半は、二酸化炭素となる。そのため、放散した気体に占める二酸化炭素の分圧はより高くなり、ひいては、より純度の高い二酸化炭素の回収が可能となる。また、再生塔内では、予め脱水された状態にある吸収処理後の吸収液が導入されるため、被分離ガスの混在していた水分の影響を受けて、雰囲気温度が低下するのを抑止できるようになり、水分の蒸発に依拠した雰囲気温度の低下を補う昇温の必要性はほとんどない。それ故に、再生塔で沸騰温度になるまで吸収処理後の吸収液を加熱する時に、加熱手段により投与するエネルギー負荷は抑制することができる。
【0011】
(2)(1)に記載する二酸化炭素回収装置の態様において、前記再生塔から放散した再生処理後の前記二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収手段を、前記再生塔と連通可能に繋ぐ第2管路に備え、前記二酸化炭素回収手段は、前記再生処理後の二酸化炭素を気相から固相に昇華させる固化槽を有し、前記固化槽では、冷媒回路を流通する冷媒により、前記再生処理後の二酸化炭素との間で熱交換が可能であり、前記再生処理後の二酸化炭素は、前記冷媒により固化した状態で、前記固化槽から回収可能であること、が好ましい。
【0012】
この態様によれば、固化槽内に導入される二酸化炭素(CO2ガス)は、吸収処理後の吸収液に含有していた水分(水蒸気)を脱水手段で除去した状態にある吸収液を基に、再生塔で放散され、冷媒により、この状態にある二酸化炭素(CO2ガス)が、その混在元であった被分離ガスの種別に応じて、その特有の凝固点以下に冷却されて固化される。これにより、固化槽で固化した二酸化炭素は、より純度の高いドライアイスの態様で回収することができる。
【0013】
(3)(2)に記載する二酸化炭素回収装置の態様において、前記冷媒は、二酸化炭素の凝固点より低い温度で沸点を有した物性をなす熱媒体であること、が好ましい。
【0014】
この態様によれば、例えば、液化天然ガスをガス化することに伴って大量に生じ、これまで利用されずに廃棄されてきた冷熱エネルギー等が、冷媒の冷熱として有効に活用することできる。
【0015】
なお、上記の態様において、液化ガスとは、二酸化炭素の凝固点(1.013×10-1MPaの下、-78.5℃)より低い温度の沸点を有した物質として、例えば、液化天然ガス(LNG:Liquefied Natural Gas)(沸点-162℃)、液体水素(liquid hydrogen)(沸点-252.6℃)、液化メタン(liquefied methane)(沸点-161.6℃)、液体窒素(liquid nitrogen)(1.013×10-1MPaの下、沸点-196℃)、液体酸素(liquid oxygen)(沸点-183℃)等である。そして、このような液化ガスに基づいた熱媒体とは、液化ガスの冷熱を、本発明に係る二酸化炭素回収装置の固化槽に供給するにあたり、液化ガスを液相状態にして冷媒回路内を流通させるため、流通時では、液化ガスの温度を、沸点より高く、二酸化炭素の凝固点より低くした状態にある熱媒体を意味する。
【0016】
特に、公的なインフラストラクチャー(通称「インフラ」)で供給されるLNGや液体水素等を整圧する施設をはじめ、液体窒素や液体酸素、液化メタンを製造・精製する施設等で、これらの液化ガスの流通を図るために敷設されている既存の冷媒回路を用いて、本発明に係る二酸化炭素回収装置の固化槽に液化ガスを供給する場合、冷媒回路を流れる上述の液化ガスは、概ね液相状態になっているからである。勿論、本発明に係る二酸化炭素回収装置の固化槽に供給する冷媒回路内の冷媒は、前述した液化ガスを、その沸点より低温の液相状態であって良い。また、冷熱を有する流体の状態は、液相、気相、気液混相、スラリーのいずれであっても良い。
【0017】
(4)(2)または(3)に記載する二酸化炭素回収装置の態様において、前記二酸化炭素回収手段は、前記再生処理後の二酸化炭素を気相状態で収容可能な気化槽を有し、前記気化槽には、固化した状態にある前記再生処理後の二酸化炭素を、その臨界点より低い温度で昇温可能な第1の熱源が配設され、前記再生処理後の二酸化炭素は、前記第1の熱源により、常温に温度調節された気相状態で、前記気化槽から回収可能であること、前記二酸化炭素回収手段では、前記固化槽の役割と前記気化槽の役割のいずれか一方を、互いに異なった役割で選択的に果たすことを可能に構成された一双の回収槽が、前記第2管路に対し、並列に接続されていること、が好ましい。
【0018】
この態様によれば、気化槽内に導入される二酸化炭素(CO2ガス)は、吸収処理後の吸収液に含有していた水分(水蒸気)を脱水手段で除去した状態にある吸収液を基に、再生塔から、より高純度な状態で放散され、例えば、一旦、固化槽での固化等を経て、気化槽内で常温に調節して回収される。これにより、気化槽で回収する二酸化炭素(CO2ガス)は、より高純度な状態となっており、例えば、メタノール、メタン等の化学物質や、炭素素材への変換、工業向けの高圧CO2ガス、飲食向けの炭酸ガス等、市販に適す品質を担保して活用することができるほか、地中に貯留(CCS)することにより、大気放散の抑制を図ることができる。
【0019】
(5)(2)乃至(4)のいずれか1つに記載する二酸化炭素回収装置の態様において、前記脱水手段は、前記吸収処理後の吸収液を収容可能な第1の内部空間を設けた第1の脱水ユニットを有し、前記冷媒回路は、前記固化槽から前記脱水手段を経由して配設されていること、前記冷媒は、前記脱水手段では、前記水分の凝固を可能とすると共に、前記固化槽では、前記再生処理後の二酸化炭素の固化を可能とした温度であること、前記水分は、前記冷媒により、前記第1の内部空間で凝固した氷単体の状態で、前記第1の脱水ユニットから回収可能であること、が好ましい。
【0020】
この態様によれば、脱水手段は、第1の脱水ユニットを、少なくとも1基構成するだけで、水分を含んだ吸収処理後の吸収液を、乾いた状態の吸収処理後の吸収液に簡単に変換することができる。
【0021】
(6)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載する二酸化炭素回収装置の態様において、前記脱水手段は、前記吸収処理後の吸収液を収容可能な第2の内部空間を設けた第2の脱水ユニットと、水を捕捉可能な分離材とを、有し、前記第2の内部空間に配した前記分離材が、前記第2の内部空間を通過する前記吸収処理後の吸収液から、前記水分を捕捉して除去すること、が好ましい。
【0022】
この態様によれば、分離材は、吸収処理後の吸収液に含む水分をなす微細な水分子群を、精度良く捕捉漏れを抑えて取り除くことが可能になるため、脱水処理を終えた吸収処理後の吸収液は、ほとんど水分を残存していない、乾いた状態となる。
【0023】
(7)(6)に記載する二酸化炭素回収装置の態様において、前記吸収塔と前記第2の脱水ユニットとを、前記第1管路と独立した系統で並列に接続した第3管路が配設されていると共に、前記第2の内部空間からの排気を行う排気管と、前記排気管の開路または閉路が可能な開閉弁とを、前記第2の脱水ユニットに有し、前記吸収塔で前記吸収処理後の吸収液から放たれた不要ガスは、前記第3管路を通じて前記第2の内部空間を流通し、前記排気管から排気されること、が好ましい。
【0024】
この態様によれば、分離材が、捕捉した水分の受容限界に近づき、捕捉能力の低下を招いた場合、分離材は、第2の脱水ユニット内に対し、水分を含んだ吸収処理後の吸収液の流入を阻止した状態の下、第2の脱水ユニット内に晒された酸素、窒素等による不要ガスにより、乾燥することができる。
【0025】
(8)(7)に記載する二酸化炭素回収装置の態様において、前記第2の脱水ユニットには、前記第2の内部空間の雰囲気を昇温可能な第2の熱源が設けられ、前記第2の脱水ユニットでは、前記不要ガスが前記第2の内部空間に供給される場合には、前記第2の熱源は、前記第2の内部空間を加熱するON状態である一方、前記吸収処理後の吸収液が前記第2の内部空間に供給される場合には、前記第2の熱源は、前記第2の内部空間を加熱しないOFF状態であること、が好ましい。
【0026】
この態様によれば、第2の熱源がOFF状態の場合、水分を含んだ吸収処理後の吸収液が、比較的低温状態にあることから、この吸収液自体は、気化を抑えて、より安定した液相状態に維持できているため、分離材は、吸収処理後の吸収液に含んだ水分を、効果的に捕捉することができる。それ故に、分離材の捕捉能力を十分に発揮することができるほか、無駄な熱エネルギー消費も抑えることができる。また、第2の熱源がON状態の場合には、乾燥機能の役割を果たす第2の脱水ユニット内では、第2の熱源による加熱で昇温した不要ガスにより、捕捉した水分を含む分離材を乾燥させることができる。
【0027】
(9)(7)または(8)に記載する二酸化炭素回収装置の態様において、前記第2の脱水ユニットを複数有し、各前記第2の脱水ユニットは、前記第1管路と並列に接続されていると共に、前記第3管路とも並列に接続されていること、前記第1管路には、前記第2の脱水ユニットに向けた前記吸収処理後の吸収液の流れを選択的に制御する第1の流通制御弁を、前記第3管路には、前記第2の脱水ユニットに向けた前記不要ガスの流通を選択的に制御する第2の流通制御弁を、それぞれ有し、前記各第2の脱水ユニットでは、前記第1の流通制御弁と前記第2の流通制御弁により、前記吸収処理後の吸収液または前記不要ガスのいずれか一方の流体だけが、前記第2の内部空間に供給されること、が好ましい。
【0028】
この態様によれば、第1の流通制御弁と第2の流通制御弁との協働の下で、分離材により、水分を含んだ吸収処理後の吸収液から脱水した、乾いた状態の吸収処理後の吸収液を収容した第2の脱水ユニット内に、吸収塔から流通する不要ガスが混入するのを防止できる。
【0029】
(10)(7)乃至(9)のいずれか1つに記載する二酸化炭素回収装置の態様において、前記第2の脱水ユニットでは、前記不要ガスが前記第2の内部空間に供給される場合、前記第2の熱源で加熱した昇温後の前記不要ガスにより、前記水分を捕捉した状態にある前記分離材を、前記第2の内部空間で乾燥させる乾燥機能を有すること、前記脱水手段では、前記第2の内部空間に供給された前記吸収処理後の吸収液に対し、前記分離材により前記水分の脱水処理を行う脱水機能と、前記乾燥機能とを、相互に選択的な切り替えを伴って、当該二酸化炭素回収装置は運転されること、が好ましい。
【0030】
この態様によれば、脱水手段では、脱水機能と乾燥機能を、選択的な切り替えて運転できているため、水分を含んだ吸収処理後の吸収液を、持続的に効率良く脱水して、乾いた状態の吸収処理後の吸収液を生成することができる。
【0031】
(11)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載する二酸化炭素回収装置の態様において、前記脱水手段は、疎水性をなす前記吸収液を対象に用いる第3の脱水ユニットを有し、前記第3の脱水ユニットは、前記吸収処理後の吸収液を静置状態で貯留可能な第3の内部空間と、前記第3の内部空間と連通したドレンと、を有していること、前記ドレンは、前記第3の内部空間に貯留した前記吸収処理後の吸収液から相分離した前記水分を排水すること、が好ましい。
【0032】
この態様によれば、簡単な構造で構成される第3の脱水ユニットで、水分を含んだ吸収処理後の吸収液から、非水相の液である、乾いた状態の吸収処理後の吸収液を生成することができ、分離した水は、そのままドレンを通じて排水することができる。また、第3の脱水ユニットの構成が簡単であるため、本発明の一態様における二酸化炭素回収装置に対し、例えば、メンテナンス等、運用上の管理を行い易いメリットがある。
【0033】
(12)(11)に記載する二酸化炭素回収装置の態様において、前記第1管路のうち、前記第3の内部空間への流入側、または前記第3の内部空間からの流出側の少なくとも片側に、前記第1管路内の開路または閉路を可能とした第3の流通制御弁を有していること、が好ましい。
【0034】
この態様によれば、内部空間に貯留した吸収処理後の吸収液の相分離を行う間、第3の流通制御弁で第1管路内を閉路することにより、吸収処理後の吸収液が内部空間で安置し易くなる。これにより、相分離後、水は排水され、非水相の液である、乾いた状態の吸収処理後の吸収液は、水分を含んだ吸収処理後の吸収液から効率良く得られ、しかも水の混在を抑えたより純度の高い状態で、得ることができる。
【発明の効果】
【0035】
従って、本発明に係る二酸化炭素回収装置によれば、再生塔内において、投与するエネルギー負荷を抑制すると共に、水蒸気等の水分の混在を抑えて、被分離ガスから二酸化炭素を、より高い純度で回収することができる、という優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】第1の実施形態に係る二酸化炭素回収装置の要部を示す配管系統図である。
【
図2】
図1に示す二酸化炭素回収装置の機能を説明する図である。
【
図3】第2の実施形態に係る二酸化炭素回収装置の要部を示す配管系統図である。
【
図4】
図3に示す二酸化炭素回収装置の機能を説明する図である。
【
図5】第3,第4の実施形態に係る二酸化炭素回収装置の要部を示す配管系統図であり、脱水器だけを略図で示した図である。
【
図6】第3の実施形態に係る二酸化炭素回収装置の脱水器の機能に関する説明図であり、
図5に示す脱水器に相当する図である。
【
図7】第4の実施形態に係る二酸化炭素回収装置の脱水器を示す説明図であり、
図5に示す脱水器に相当する図である。
【
図8】第1~第4の実施形態に係る二酸化炭素回収装置の効果を検証する調査で、リッチ液からの水分除去と、リッチ液での残存水分と、再生塔での熱負荷と、回収される二酸化炭素の純度との関係について、シミュレーション結果をまとめて示すグラフである。
【
図9】アミン溶液における二酸化炭素の溶解度について、雰囲気40℃の条件下、溶解度と二酸化炭素の分圧との関係を示すグラフである。
【
図10】被分離ガスの種類毎に、被分離ガスに混在する二酸化炭素の分圧を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
<第1の実施形態>
以下、本発明に係る二酸化炭素回収装置について、第1~第4の実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。本発明に係る二酸化炭素回収装置は、例えば、燃焼排ガス、大気等、被分離ガスから、混在する二酸化炭素を分離して回収する目的で用いられる。以下、本実施形態に係る二酸化炭素回収装置の説明にあたり、第1~第4の実施形態で共通する内容を、最初に第1の実施形態で説明した後、異なる内容の説明については、第1の実施形態から順に、実施形態毎に行う。第2の実施形態以降では、実施形態1とは異なる部分を中心に説明し、実施形態1と共通する部分の説明は、同じ符号を用いて簡略、または省略する。
【0038】
本発明に係る二酸化炭素回収装置は、吸収塔及び再生塔を構成した装置である。吸収塔は、被分離ガスに含む二酸化炭素を、被分離ガスとの気液接触により、吸収液に吸収させる機能を有する。再生塔は、吸収塔で吸収液に吸収された二酸化炭素を、吸収液から放散させる機能を有する。被分離ガスからの二酸化炭素の分離処理(ガス分離処理)は、吸収塔と再生塔で担う。ガス分離処理後、再生塔で放散された二酸化炭素は、二酸化炭素回収手段により、そのままガス状で回収することや、固化させた状態(ドライアイス)で回収することを可能としているほか、一旦、固化(ドライアイス)させた後、ドライアイスを気化させた気相状態(炭酸ガス)、または液化させた状態(液化炭酸ガス)に処理されて回収することも可能である。
【0039】
<被分離ガスについて>
はじめに、被分離ガスと吸収液について、説明する。被分離ガスは、二酸化炭素をはじめ、不要ガスとして、酸素、窒素等を主に混在した状態で含んだ混合ガスであり、具体的には、本発明では、燃焼排ガスや大気等を総称したガスである。燃焼排ガスは、例えば、発電所や製鉄工場、セメント工場等、種々の工業施設で、燃焼により生じた排気ガス、浸炭焼入れ炉に代表される熱処理炉、メッキ等を行う化学反応装置等、工業設備から発生するオフガス、バイオガス等とした工業用ガスを主な対象としている。
【0040】
燃焼排ガスがこのような工業用ガスである場合、燃焼排ガスは、当該燃焼排ガスに占める二酸化炭素の含有割合の一例として、10~20wt%程の二酸化炭素を構成成分に含み、それ以外にも窒素や酸素等を構成成分に含んだ混合物である。また、被分離ガスは、このような工業用のガスに限らず、二酸化炭素の含有濃度は1wt%未満であるものの、大気も被分離ガスの対象とすることができる。
【0041】
<吸収液について>
吸収液は、前述したガス分離処理で用いられる。吸収液は、気相の状態にある二酸化炭素と接触状態の下で、二酸化炭素を吸収可能とする一方、当該吸収液の昇温を伴って、吸収した二酸化炭素を放散可能な物性を有する液状物質である。具体的には、吸収液は、例えば、アミン系物質の溶液、物理吸収液等である。
【0042】
アミン系物質の一例として、モノエタノールアミン(MEA:Monoethanolamine)(C2H7NO)、ジエタノールアミン(DEA:Diethanolamine)(C4H11NO2)、トリエタノールアミン(TEA:Triethanolamine)(C6H15NO3)、ジエチルエタノールアミン(DEEA:Diethylethanolamine)(C6H15NO)、ジイソプロピルアミン(DIPA:Diisopropylamine)(C6H15N)、アミノエトキシエタノール(AEE:2-(2-Aminoethoxy)ethanol)(C4H11NO2)、メチルジエタノールアミン(MDEA:Methyldiethanolamine)(C5H13NO2)等が挙げられる。
【0043】
また、物理吸収液の一例として、シクロテトラメチレンスルホン(スルホラン)(Cyclotetramethylene sulfone)(Sulfolane)(分子式C4H8O2S)及びその化合物の誘導体、脂肪酸とアミンから形成される脂肪族酸アミド(Fatty acid amide)、N-メチルピロリドン(NMP:N-methylpyrrolidone)(C5H9NO)、N-アルキル化ピロリドン及び相応するピペリドン(Piperidone)、メタノール(Methanol)及びポリエチレングリコール(Polyethylene glycol)のジアルキルエーテル類の混合物等が挙げられる。
【0044】
このような吸収液群の中で、最も好ましい吸収液は、2-(エチルアミノ)エタノール(2-(Ethylamino)ethanol)(C4H11NO)と、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(Ethylene glycol monoethyl ether)(C6H14O3)により、アミン濃度を30wt%程度に混合してなるアミン溶液(以下、本実施形態に係るアミン溶液、または特に断りが限り単にアミン溶液と称す)である。第1~第3の実施形態に係る二酸化炭素回収装置では、アミン溶液が吸収液に用いられる。
【0045】
図9は、アミン溶液における二酸化炭素の溶解度について、雰囲気40℃の条件の下、溶解度と二酸化炭素の分圧との関係を示すグラフである。
図9に示すように、燃焼排ガスに含む二酸化炭素の分圧が、例えば、アミン溶液への吸収前に10kPaで、アミン溶液に吸収後で1kPaであった場合、アミン溶液に対し、吸収前後での二酸化炭素の溶解度差D11は、約0.25(mol-CO
2/mol-amine)である。また、アミン溶液は、周知の吸収液として、モノエタノールアミン(MEA)により、アミン濃度を30wt%程に調整してなるMEA溶液と、同じ分圧条件の下で、吸収前後の二酸化炭素の溶解度を対比した場合でも、この溶解度差D11は、MEA溶液を用いた場合の一例となる溶解度差0.08(mol-CO
2/mol-amine)の概ね3倍である。
【0046】
このように、二酸化炭素の溶解度差がより大きい吸収液では、吸収液に吸収された二酸化炭素の再生量が、より多くなるため、本実施形態で用いるアミン溶液は、吸収した二酸化炭素を、より効率良く放散して再生することができる。
【0047】
次に、第1の実施形態に係る二酸化炭素回収装置について、
図1及び
図2を用いて説明する。
図1は、第1の実施形態に係る二酸化炭素回収装置の要部を示す配管系統図である。
【0048】
図1に示すように、第1の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1(1A)では、大別して、前述したガス分離処理を担う分離部2と、ガス分離処理の実施により、より高純度に精製された状態で放散した二酸化炭素を、固相または液相の態様で回収を担う再生部3とからなる。分離部2には、吸収塔10、再生塔20、及び脱水手段30が設けられている。再生部3には、二酸化炭素回収ライン50(二酸化炭素回収手段)が設けられている。
【0049】
<吸収塔について>
はじめに、分離部2の構成について、説明する。吸収塔10は、前述したように、燃焼排ガス(被分離ガス)に含む二酸化炭素を、被分離ガスとの気液接触により、吸収液に吸収させる機能を有する。吸収塔10は、一例として、ラシヒリング等の充填材11を内部空間10Sに装填した向流型気液接触装置である。吸収塔10は、内部空間10Sの下方部にガス導入口12と第1流出口14とを有すると共に、充填材11を挟み、内部空間10Sの上方部に第1流入口13と第2流出口15とを有する。ガス導入口12は、燃焼排ガスを供給するガス供給路L1と接続され、燃焼排ガスが、ガス導入口12から吸収塔10の内部空間10Sの下方部に流入可能となっている。
【0050】
なお、硫黄酸化物が燃焼排ガス中に混在する場合には、ガス供給路L1上に設けた脱硫装置により、硫黄酸化物を除去し、脱硫した状態の燃焼排ガスが、吸収塔10に供給されても良い。
【0051】
吸収塔10では、燃焼排ガスが、ガス供給路L1からガス導入口12を通じて内部空間10Sの下方部に供給されると、燃焼排ガスは、内部空間10Sで充填材11に向けて上昇する。その一方で、吸収液が、二酸化炭素を吸収する前に、乾いた状態にあるリーン液として、第4管路L84から第1流入口13を通じて内部空間10Sの上方部に導入されると、吸収液(リーン液)は、充填材11に向けて落下する。そのため、吸収液(リーン液)は、滴下した充填材21の表面を流れるときに生じる燃焼排ガスとの気液接触によって、燃焼排ガス中の二酸化炭素を選択的に吸収する。
【0052】
この気液接触に伴い、吸収液は、内部空間10Sの下方部で、リーン液に二酸化炭素を吸収した状態にある吸収処理後の吸収液(以下、「リッチ液」と称する場合もある)となり、この吸収液(リッチ液)は、内部空間10Sの下方部から第1流出口14を通じて排出される。また、二酸化炭素が燃焼排ガスから吸収液(リーン液)に吸収されると、燃焼排ガスのうち、二酸化炭素の除去後に残存する不要ガスは、主として酸素、窒素等となり、内部空間10Sの上方部から第2流出口15を通じて排出される。
【0053】
<再生塔について>
再生塔20は、前述したように、吸収塔10で吸収液に吸収された二酸化炭素を、吸収液から放散させる機能を有する。再生塔20は、一例として、ラシヒリング等の充填材21を内部空間20Sに装填した向流型気液接触装置である。再生塔20は、内部空間20Sの上方部に第1流入口22と第1流出口24を有すると共に、充填材21を挟み、内部空間20Sの下方部に第2流入口23を有する。再生塔20の第2流入口23は、吸収塔10の第1流入口13と、第4管路L84により、熱交換器94を経由して接続されている。
【0054】
また、再生塔20の内部空間20Sの下方部には、ヒートポンプ25とヒートポンプ95が配設されている。ヒートポンプ25とヒートポンプ95は、例えば、廃温熱や環境熱等で加温された熱媒体を利用した装置であり、再生塔20では、内部空間20Sの下方部に収容された二酸化炭素吸収後の吸収液(リッチ液)を加熱する。また、このヒートポンプ95は、吸収塔10の内部空間10Sの下方部に供給された燃焼排ガスも加熱可能に配管されている。
【0055】
<脱水手段について>
脱水手段30は、吸収塔10で、二酸化炭素を吸収した状態にある吸収処理後の吸収液(リッチ液)から、混在する水分を取り除く機能を有する。脱水手段30は、吸収塔10と再生塔20とを連通可能に繋ぐ第1管路L81(第1管路)で、吸収塔10と再生塔20との間に設けられている。リッチ液(吸収処理後の吸収液)は、脱水手段30により、水分を除去した状態で、第1管路L81を通じて再生塔20に供給される。
【0056】
具体的に説明する。脱水手段30は、第1の実施形態では、吸収処理後の吸収液を収容可能な内部空間31S(第2の内部空間)を設けた脱水ユニット31と、水を吸着して捕捉可能な吸水材32(分離材)とを有する。脱水手段30は、何れも同じ仕様の脱水ユニット31を複数セット(本実施形態では、2セット)有し、2つの脱水ユニット31(31A、31B)は、第1管路L81と並列に接続されている。脱水ユニット31は、吸水材32を内部空間31Sに装填してなる。脱水ユニット31では、吸水材32は、内部空間31Sを通過する吸収処理後の吸収液から、吸着により水分子を捕捉して除去する機能を有する。
【0057】
吸水材32は、本実施形態では、細孔径0.3~1nmでミクロ多孔性を呈した結晶性アルミノケイ酸塩(組成式:Mn+
1/n(AlO2)-(SiO2)x・yH2O)であるゼオライト(zeolite)等、主成分として多孔質からなる物質、またはこのような物質を構成成分の一部に含んだ混合物である。吸水材32の一例として、市販品の「モレキュラーシーブ13X(ユニオン昭和社製)」、「ゼオラム(登録商標)NSA-700(東ソー社製)」のほか、アミン含浸固体吸着剤(アミン化合物を担持させた多孔性物質)や、ゲート型吸着剤(ELM-11[Cu(bpy)2(BF4)2]) 等が挙げられる。
【0058】
脱水ユニット31は、内部空間31Sの上方部に第1流入口33と第2流出口36とを有すると共に、吸水材32を挟み、内部空間31Sの下方部には、第1流出口34と第2流入口35とを有する。また、脱水ユニット31の内部空間31Sの下方部には、熱源39(第2の熱源)が配設されている。熱源39は、内部空間31Sの下方部の雰囲気を、例えば、数十~百十℃程度に昇温可能で、内部空間31Sの加熱を実行するON状態と、内部空間31Sの加熱を停止するOFF状態とを自在に切替え可能な加熱装置である。
【0059】
第2流出口36は、内部空間31Sからの排気を行う排気管37と接続されている。排気管37には、その開路または閉路を可能とした開閉弁38が配管されている。すなわち、後述するように、吸収塔10で吸収処理後の吸収液から放たれた不要ガスは、第3管路L83を通じて、脱水ユニット31の内部空間31Sに供給され、排気管37から排気できるようになっている。
【0060】
脱水手段30は、前述したように、第1管路L81上で、吸収塔10と再生塔20との間に配管されている。第1管路L81のうち、脱水ユニット31よりも上流側の管路は、吸収塔10の第1流出口14と接続すると共に、三方弁である第1切替弁41(第1の流通制御弁)で分岐して、各脱水ユニット31(31A、31B)の第1流入口33と、それぞれ並列に接続されている。
【0061】
第1切替弁41は、吸収塔10から脱水手段30に吸収処理後の吸収液を供給するにあたり、脱水ユニット31Aまたは脱水ユニット31Bのいずれか一方に、吸収処理後の吸収液の流れを選択的に制御するために設けられている。第1管路L81のうち、脱水ユニット31の下流側となる管路は、各脱水ユニット31(31A、31B)の第1流出口34と、それぞれ並列に接続されていると共に、熱交換器94を経由して、再生塔20の第1流入口22と接続されている。
【0062】
また、第3管路L83(第3管路)が、脱水ユニット31よりも上流側の管路として、吸収塔10と脱水ユニット31との間に配管されている。第3管路L83は、第1管路L81と独立した系統で並列に接続されている。第3管路L83は、吸収塔10の第2流出口15と接続すると共に、三方弁である第2切替弁42(第2の流通制御弁)で分岐して、各脱水ユニット31(31A、31B)の第2流入口35と、それぞれ並列に接続している。
【0063】
前述したように、燃焼排ガスに混在する二酸化炭素が、吸収塔10で吸収液に吸収された後、二酸化炭素を除去した状態にある燃焼排ガスには、主に酸素、窒素等の不要ガスが残存する。第2切替弁42は、このような酸素、窒素等による不要ガスを、吸収塔10から脱水手段30に供給するにあたり、脱水ユニット31Aまたは脱水ユニット31Bのうち、吸収処理後の吸収液を流す脱水ユニット31と反対側の脱水ユニット31に、不要ガスの流れを選択的に制御するために設けられている。すなわち、各脱水ユニット31(31A、31B)では、第1切替弁41と第2切替弁42との協働により、吸収処理後の吸収液または不要ガスのいずれか一方の流体だけが、脱水ユニット31の内部空間31Sに供給される。
【0064】
具体的に説明する。
図2は、
図1に示す二酸化炭素回収装置の機能を説明する図である。
図2に例示するように、第1切替弁41が、吸収塔10で生成した吸収処理後の吸収液として、水分を含んだリッチ液(
図2でwetと表示)を、吸収塔10から脱水ユニット31A(31)の内部空間31Sに向けた流れに制御した場合(第1の流れ態様)には、第2切替弁42は、吸収塔10で生成した不要ガスとして、乾いた吸収塔頂ガス(
図2でdryと表示)を、吸収塔10から脱水ユニット31B(31)の内部空間31Sに向けた流れに制御する。
【0065】
その反対に、第1切替弁41が、水分を含んだリッチ液を、吸収塔10から脱水ユニット31B(31)の内部空間31Sに向けた流れに制御した場合(第2の流れ態様)には、第2切替弁42は、乾いた吸収塔頂ガスを、吸収塔10から脱水ユニット31A(31)の内部空間31Sに向けた流れに制御する。
【0066】
リッチ液は、脱水ユニット31Aの内部空間31Sに供給される段階では、吸収塔10で、燃焼排ガスに含む二酸化炭素をリーン液に吸収させたことにより、燃焼排ガスに混在していた水分(水蒸気の飽和水等)も吸収してしまっている。吸水材32は、リッチ液に含んだ水分、特に飽和水の状態にある水蒸気を、空孔内に吸着させてリッチ液から除去する。
【0067】
脱水手段30では、水分を含んだリッチ液が内部空間31Sに供給される場合(第1の流れ態様で脱水ユニット31Aが該当、第2の流れ態様で脱水ユニット31Bが該当)には、熱源39は、吸水材32の吸着能力を十分に発揮すると共に、無駄な熱エネルギー消費を抑えるため、内部空間31Sを加熱しないOFF状態にする。この場合、水分を含んだリッチ液が、第1流入口33から内部空間31Sの上方部に供給されると、内部空間31Sを自然流下して吸水材32と接触する。
【0068】
このとき、リッチ液に含んだ水分を吸水材32の空孔内に吸着させるにあたり、熱源39は、加熱を行わないOFF状態としている。そのため、比較的低温状態にあるリッチ液自体の気化が抑制され、リッチ液は、より安定した液相状態に維持できているため、吸水材32は、リッチ液に含んだ水分に対し、吸水材32の空孔内への吸着を促進することができる。それ故に、水分を含んだリッチ液は、内部空間31Sの下方部に向けて吸水材32を通過するまでの間に脱水されるため、内部空間31Sの下方部では、リッチ液は、乾いた状態(
図2でdryと表示)となる。
【0069】
その一方、不要ガスが脱水ユニット31の内部空間31Sに供給される場合(第1の流れ態様で脱水ユニット31Bが該当、第2の流れ態様で脱水ユニット31Aが該当)には、熱源39は、内部空間31Sを加熱するON状態にして、内部空間31Sに収容された不要ガスの加熱を行う。これにより、不要ガスが充満した内部空間31Sでは、その雰囲気温度は、熱源39により昇温し、内部空間31Sにある吸水材32も加熱される。このとき、内部空間31Sの雰囲気温度は、例えば、数十~100℃前後までの温度帯域で、吸水材32に吸着された水分の乾燥に適す温度に設定されることが好ましい。
【0070】
このように、第1の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1A(1)では、水分を含んだリッチ液が内部空間31Sに供給される場合、脱水手段30は、内部空間31Sに供給された、水分を含んだリッチ液(吸収処理後の吸収液)に対し、吸水材32により、水分の脱水処理を行う脱水機能を有する(
図2で脱水器と表示)。また、不要ガスが脱水ユニット31の内部空間31Sに供給される場合、脱水手段30は、熱源39で加熱した昇温後の不要ガスにより、水分を吸着した状態にある吸水材32を、脱水ユニット31の内部空間31Sで乾燥させる乾燥機能を有する(
図2で乾燥器と表示)。二酸化炭素回収装置1A(1)は、脱水手段30に具備した脱水機能と乾燥機能とを、選択的に相互の切り替え(スイッチ操作)を伴って、運転することができる。
【0071】
従って、脱水手段30では、水分を含んだリッチ液(
図2でwetと表示)は、脱水ユニット31の内部空間31Sの上方部に供給され、吸水材32を通過すると、このリッチ液に含まれる水蒸気等の水分が、吸水材32に吸着される。かくして、吸水材32を通過したリッチ液は、水分を含んだ状態から脱水されて、乾いた状態のリッチ液(
図2でdryと表示)となる。乾いた状態のリッチ液は、第1流出口34から第1管路L81を通じて再生塔20の内部空間20Sに移送される。一方、酸素、窒素等の不要ガスは、第3管路L83を通じて、脱水ユニット31の内部空間31Sに流入し、吸水材32の乾燥を遂行した後に、排気管37から排気される。
【0072】
<再生塔で行う二酸化炭素の放散について>
乾いた状態のリッチ液は、脱水ユニット31の内部空間31Sの第1流出口34から再生塔20の内部空間20Sに向けて移送される。再生塔20では、乾いた状態のリッチ液が、第1流入口22を通じて内部空間20Sの上方部に供給されると、乾いた状態のリッチ液は、充填材21に向けて落下する。内部空間20Sでは、乾いた状態のリッチ液が、落下する間、ヒートポンプ25とヒートポンプ95により、沸騰温度に加熱されると、リッチ液に吸収していた二酸化炭素は放散する。再生塔20から放散した再生処理後の二酸化炭素は、第1流出口24から第2管路L82(第2管路)を通じて、二酸化炭素回収ライン50に向けて移送される。
【0073】
ところで、詳細は後述するが、二酸化炭素の放散にあたり、特に再生塔20の内部空間20Sは、一例として、4KPa程に減圧されていると良い。その理由として、4KPa程の条件下にある内部空間では、参考とする水の場合、その沸騰温度は約29℃である。このように、再生塔20において、4KPa程に減圧された内部空間20Sでは、リッチ液の沸騰温度をより低く抑えることができるため、ひいては、吸収液(リッチ液)の加熱に必要な熱エネルギーの投与を抑制することが可能になる。
【0074】
吸収液(リッチ液)から二酸化炭素を放散後、二酸化炭素を脱ガス化した吸収液(リーン液)は、再生塔20の内部空間20Sから第2流入口23を通じて排出される。この吸収液(リーン液)は、第4管路L84に供給され、熱交換器94を経て、第1流入口13より、吸収塔10の内部空間10Sの上方部に還流される。還流した吸収液(リーン液)は、吸収塔10の内部空間10Sで、後続で供給される燃焼排ガスに二酸化炭素を吸収するのに再利用される。
【0075】
<二酸化炭素回収ラインについて>
次に、再生部3の構成について、説明する。
図1に示すように、再生部3には、二酸化炭素回収ライン50が設けられている。二酸化炭素回収ライン50は、第2管路L82により、減圧弁93を介して、再生塔20と連通可能に接続され、再生塔20から放散した再生処理後の二酸化炭素を回収する処理を担う。二酸化炭素回収ライン50は、互いに組をなした一双の回収槽60(第1回収槽51、第2回収槽61)を備えている。第1回収槽51と第2回収槽61は、第2管路L82に対し、並列に接続されており、固化槽の役割と気化槽の役割とのいずれか一方を、互いに異なった役割で選択的に果たすことを可能に構成されている。
【0076】
具体的に説明する。固化槽は、再生塔20の内部空間20Sに移送された再生処理後の二酸化炭素を気相から固相に昇華させる役割を果たすユニットである。回収槽60(第1回収槽51、第2回収槽61)の内部空間51S、61Sには、固化槽で必要なユニット構成として、外部に敷設された冷媒回路L2が、第1回収槽51、第2回収槽61に経由され、冷媒回路L2の熱交換器54、64が、内部空間51S、61Sに配管されている。熱交換器54、64は、冷媒回路L2内の冷媒と内部空間20Sに収容された再生処理後の二酸化炭素との間で熱交換を行う。加えて、
図1及び
図2に示すように、本実施形態では、一例として、熱媒体給管路L4が、三方弁である切替弁97で、冷媒回路L2と並列に接続されている。熱交換器54には、切替弁97により、冷媒回路L2内の冷媒、または熱媒体給管路L4内の熱媒体のいずれか一方が、選択的に供給されるようになっており、回収槽60が固化槽の役割を果たす場合、冷媒回路L2内の冷媒が、熱交換器54に供給される。
【0077】
冷媒回路L2は、その支管として分岐して、吸収塔10の内部空間10Sに配管された冷媒供給管路L3を有している。吸収塔10では、吸収液が燃焼排ガス中の二酸化炭素を吸収する際に発熱反応を呈し、吸収塔10の内部空間10Sでは、冷媒供給管路L3を流通する冷媒の冷熱により、この発熱に起因した温度上昇が抑制されている。
【0078】
冷媒回路L2を流通する冷媒は、本実施形態では、液化天然ガス(LNG:Liquefied Natural Gas)である。LNGは、天然ガス(NG:Natural Gas)を、大気圧に近い圧力下で、約-162℃まで冷却して液化させたものであり、無臭、無色、無毒、及び無腐食の物性である。固化槽では、冷媒回路L2を流通するLNGにより、再生処理後の二酸化炭素との間で熱交換が可能である。
【0079】
具体的には、-162℃(沸点)以下にあるLNGをガス化した状態の冷熱、すなわちLNGの沸点よりやや高い温度、例えば、-150℃程度の天然ガスを冷媒としたその冷熱により、再生処理後の二酸化炭素(CO2ガス)は、固化した状態で、固化槽から回収可能となっている。
【0080】
なお、冷媒を、本実施形態では、LNGとしたが、冷媒は、LNG以外にも、例えば、液体水素や液化メタン等に挙げられる液化燃料のほか、例えば、液化窒素や液化酸素等に挙げられる液化ガスであっても良い。但し、液化燃料、液化ガスとも、本実施形態のように、ガス化した状態での流体の冷熱が、冷媒回路の熱媒体に用いられる。
【0081】
気化槽は、再生処理後の二酸化炭素を気相状態で収容可能なユニットであり、再生処理後の二酸化炭素を一旦、固化槽で固化した後、固相から再び気相に昇華させる役割を果たす。
図1及び
図2に示すように、本実施形態では、回収槽60は、前述した固化槽の役割と共に、気化槽の役割を果たす。回収槽60(第1回収槽51、第2回収槽61)の内部空間51S、61Sには、気化槽で必要なユニット構成として、ヒートポンプ55、65が配設されている。ヒートポンプ55、65は、固化した状態にある再生処理後の二酸化炭素を、その臨界点(約31℃)より低い温度で昇温可能な熱源となっている。回収槽60が気化槽の役割を果たす場合には、熱媒体給管路L4内の熱媒体が、熱交換器54に供給される。熱媒体給管路L4を流通する媒体は、例えば、環境熱や廃温熱等を利用して加温された熱媒体である。再生処理後の二酸化炭素は、ヒートポンプ55、65と熱媒体給管路L4の熱媒体により、固化槽で固化した状態から、常温に温度調節された気相状態で、気化槽から回収可能となっている。
【0082】
第2管路L82は、再生塔20の第1流出口24と接続すると共に、三方弁である上流側切替弁91で分岐して、第1回収槽51の内部空間51Sの第1流入口52、及び第2回収槽61の内部空間61Sの第1流入口62と、それぞれ並列で接続されている。また、第1回収槽51の内部空間51Sの第1流出口53と、第2回収槽61の内部空間61Sの第1流出口63とが、第5管路L85で接続されている。第5管路L85には、三方弁である下流側切替弁92が配管され、下流側切替弁92で分岐した回収管路66が接続されている。気化した状態にある再生処理後の二酸化炭素は、回収管路66を通じて回収可能である。
【0083】
但し、第1回収槽51の内部空間51Sで固化槽の役割を果たす第1操作と、第1回収槽51で第1操作の実行中に、第2回収槽61の内部空間61Sで気化槽の役割を果たす第2操作は、上流側切替弁91と下流側切替弁92との協働で制御することにより、第1回収槽51と第2回収槽61との間で選択的に切り替えられる。
【0084】
次に、二酸化炭素回収ライン50により、再生塔20で放散した二酸化炭素を回収するまでの一連の処理について、
図2を用いて説明する。なお、
図2では、説明の都合上、固化槽を第1回収槽51(固化槽51)とし、気化槽を第2回収槽61(気化槽61)とした場合を挙げて、以下の説明を行う。
図2に示すように、再生塔20から放散した再生処理後の二酸化炭素(
図2でCO
2ガスと表示)は、二酸化炭素回収ライン50に向けて第2管路L82を流通する。回収するこのCO
2ガスを固化させる場合には、再生処理後の二酸化炭素(CO
2ガス)は、上流側切替弁91を経て固化槽51の内部空間51Sに収容される。内部空間51Sでは、冷媒回路L2の冷媒の冷熱CHにより、再生処理後の二酸化炭素(CO
2ガス)は、昇華する温度以下に冷却されて固化する。
【0085】
ここで、被分離ガスに該当するガスの種類と、冷媒の冷熱により、内部空間51Sで再生処理後の二酸化炭素(CO2ガス)を冷却する温度との関係について、説明する。本実施形態のように、冷媒がLNGの場合、冷媒の沸点は-162℃であり、冷媒が液化水素の場合には、冷媒の沸点は-253℃である。
【0086】
他方、被分離ガスを、例えば、製鉄工場、セメント工場から出される燃焼排ガス(
図10では、第1燃焼排ガスと表記)とした場合、冷媒の冷熱により、内部空間51Sで冷却する再生処理後の二酸化炭素(CO
2ガス)の温度は、約-85℃以下であることが好ましい。また、被分離ガスを、例えば、発電所から出される燃焼排ガス(
図10では、第2燃焼排ガスと表記)とした場合、冷媒の冷熱により、内部空間51Sで冷却する再生処理後の二酸化炭素(CO
2ガス)の温度は、約-96℃以下であることが好ましい。また、被分離ガスを大気とした場合、冷媒の冷熱により、内部空間51Sで冷却する再生処理後の二酸化炭素(CO
2ガス)の温度は、約-140℃以下であることが好ましい。
【0087】
再生処理後の二酸化炭素(CO
2ガス)の冷却温度が、被分離ガスの種類毎に異なる理由について、
図10を用いて説明する。
図10は、被分離ガスの種類毎に、被分離ガスに混在する二酸化炭素の分圧を示すグラフである。まず、製鉄工場、セメント工場等に由来する燃焼排ガスの場合、
図10に示すように、被分離ガスに占める二酸化炭素の分圧の最大値P11は、概ね60kPaであり、最大値P11の分圧下では、二酸化炭素は、-85℃で気相と固相との間で平衡状態となる。このことから、二酸化炭素が、-85℃以下で冷却されると、気相から固相に昇華して固化するため、固化槽51の内部空間51Sでは、再生処理後の二酸化炭素(CO
2ガス)の冷却温度は、約-85℃以下としている。
【0088】
続いて、発電所等に由来する燃焼排ガスの場合、
図10に示すように、被分離ガスに占める二酸化炭素の分圧の最大値P12は、概ね21kPaであり、最大値P12の分圧下では、二酸化炭素は、-96℃で気相と固相との間で平衡状態となる。このことから、二酸化炭素が、-96℃以下で冷却されると、気相から固相に昇華して固化するため、固化槽51の内部空間51Sでは、再生処理後の二酸化炭素(CO
2ガス)の冷却温度は、約-96℃以下としている。
【0089】
続いて、大気の場合、
図10に示すように、大気に占める二酸化炭素の分圧の最大値P13は、概ね0.045kPaであり、最大値P12の分圧下では、二酸化炭素は、-140℃で気相と固相との間で平衡状態となる。このことから、二酸化炭素が、-140℃以下で冷却されると、気相から固相に昇華して固化するため、固化槽51の内部空間51Sでは、再生処理後の二酸化炭素(CO
2ガス)の冷却温度は、約-140℃以下としている。
【0090】
ところで、再生処理後の二酸化炭素(CO2ガス)を、冷媒の冷熱を利用して冷却するにあたり、運用する冷媒の温度が、再生処理後の二酸化炭素(CO2ガス)の固化に要する冷却温度と大きく乖離して、CO2ガスの冷却温度との温度差を小さく抑えることが必要となる場合がある。この場合には、ヒートポンプ55の利用や、冷媒回路L2の冷媒とは別の冷媒を用いることで、内部空間51Sの雰囲気温度を制御して、再生処理後の二酸化炭素(CO2ガス)の固化に適す温度に調節する。
【0091】
また、再生処理後の二酸化炭素(CO2ガス)を昇華すると、固化槽51の内部空間51Sは、負圧下になり、昇華前の状態から減圧される。再生塔20で放散した再生処理後の二酸化炭素(CO2ガス)は、この負圧を利用した固化槽51側への吸引により、内部空間51Sに移送して収容される。換言すれば、固化槽51において、再生処理後の二酸化炭素(CO2ガス)の昇華に伴う負圧の発現により、再生処理後の二酸化炭素(CO2ガス)が、再生塔20から二酸化炭素回収ライン50(固化槽51、気化槽61)に向けた流れで移送される。
【0092】
加えて、再生処理後の二酸化炭素(CO2ガス)の昇華に伴う負圧の発現により、固化槽51の内部空間51Sが減圧されるのに伴って、固化槽51と直列に接続する再生塔20でも、内部空間20Sの圧力も減圧される。それ故に、再生塔20の内部空間20Sで加熱を伴って、乾いた状態のリッチ液から、吸収していた二酸化炭素を放散させるにあたり、内部空間20Sがより低い圧力下になっているため、この吸収液(リッチ液)の沸騰温度を、より低く抑えることができる。従って、前述した通り、二酸化炭素を放散する際、再生塔20の内部空間20Sは、必要に応じて減圧弁93で圧力調整を行うことで、一例とする4KPa程まで減圧することが可能になっている。
【0093】
かくして、固化した再生処理後の二酸化炭素は、本実施形態では、次述するように、固化した再生処理後の二酸化炭素を気化させて、気相状態または液相状態にして回収される。
【0094】
すなわち、再生塔20から放散した再生処理後の二酸化炭素(
図2でCO
2ガスと表示)CO
2ガスを、気相状態で回収する場合には、
図1及び
図2に示すように、再生処理後の二酸化炭素(CO
2ガス)は、上流側切替弁91を経て、一旦、第2回収槽61の内部空間61Sに収容される。次に、第2回収槽61の内部空間61Sでは、第1回収槽51側と同じ要領で、冷媒回路L2内の冷媒を熱交換器64に流通させ、冷媒の冷熱CHにより、再生処理後の二酸化炭素(CO
2ガス)が固化される。固化後、熱交換器64を流通させる媒体は、切替弁97により、冷媒回路L2の冷媒から熱媒体給管路L4の熱媒体に切り替えられる。これにより、内部空間61Sでは、ヒートポンプ65と熱媒体給管路L4の熱媒体の熱(
図2で環境熱HHと表示)により、固化した再生処理後の二酸化炭素は、常温に温度調節して気化され、第5管路L85を介して、気相状態で回収管路66に排出され、炭酸ガスとして回収される。また、あるいは、ヒートポンプ65と熱媒体給管路L4の熱媒体の熱(
図2で環境熱HHと表示)により、固化した再生処理後の二酸化炭素は、加圧(5.18×10
-1MPa以上)の下、-56.4℃より高い温度に調節して液化させた液相状態で、第5管路L85を介して、気化槽61から回収管路66に排出され、液化炭酸ガスとして回収される。
【0095】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態に係る二酸化炭素回収装置について、
図3及び
図4を用いて説明する。
図3は、第2の実施形態に係る二酸化炭素回収装置の要部を示す配管系統図であり、
図3に示す二酸化炭素回収装置の機能を説明する図を、
図4に示す。
【0096】
図3に示すように、二酸化炭素回収装置1B(1)では、脱水手段30は、リッチ液(吸収処理後の吸収液)を収容可能な内部空間131S(第1の内部空間)を設けた脱水ユニット131(第1の脱水ユニット)を有する。第1の実施形態に係る脱水手段30では、吸水材32が、脱水ユニット31の内部空間31Sに装填されていたが、本実施形態に係る脱水手段30では、吸水材32に代えて、熱源136を有した冷媒回路L2が、脱水ユニット131の内部空間131Sに配設されている。脱水ユニット131の内部空間131Sは、第1流入口133で第1管路L81の上流側管路と接続すると共に、第1流出口134で第1管路L81の下流側管路と接続する。また、脱水ユニット131には、内部空間131Sと接続したドレン135が配管されている。
【0097】
冷媒回路L2は、
図3に示すように、回収槽60から脱水手段30を経由して配設され、冷媒回路L2のうち、回収槽60と脱水手段30との間には、熱源136が配管されている。冷媒回路L2を流通する冷媒は、脱水手段30では、脱水ユニット131の内部空間131Sで水分の凝固を可能とすると共に、回収槽60の内部空間51S、61Sでは、再生処理後の二酸化炭素(CO
2ガス)の固化を可能とした温度となっている。
【0098】
具体的に説明する。回収槽60が固化槽(一例として第1回収槽51)の場合、冷媒は、第1の実施形態で説明したように、-162℃(沸点)以下にあるLNGをガス化した状態の冷熱、すなわちLNGの沸点よりやや高い温度として、例えば、固化槽51(第1回収槽51)の通過で-150℃程度となった天然ガスの態様で冷媒回路L2内を流通する。固化槽51の内部空間51Sでは、
図4に示すように、再生処理後の二酸化炭素(CO
2ガス)は、この冷媒の冷熱CHで冷却されることにより、固相へと昇華して、固化した状態(ドライアイス)になる。
【0099】
また、吸収塔10で生成した吸収処理後の吸収液として、水分を含んだリッチ液を収容した状態にある脱水ユニット131の内部空間131Sでは、水分を含んだリッチ液が、冷媒回路L2内を流通する冷媒の冷熱CHにより、冷却される。このとき、水分を含んだリッチ液は、例示した-150℃程度の冷熱下に晒されるため、リッチ液に含む水分は、冷媒の冷熱CHにより、確実に凝固して氷となる。そのため、水分を含んだリッチ液のうち、氷を除去したその残部は、乾いた状態のリッチ液となる。
【0100】
ところで、水分を含んだリッチ液が、前述した温度帯域内の冷熱温度下にある冷媒に晒されたとき、吸収液の物性に起因して、水分以外の残部である成分(乾いた状態のリッチ液)も、水分と同様に、冷媒の冷熱CHで凝固してしまうこともあり得る。このような場合には、熱源136が、固化槽51と脱水ユニット131との間で、冷媒回路L2内を脱水ユニット131に向けて流通する冷媒を、許容範囲内にある温度まで加熱する。熱源136は、例えば、海水を熱媒体に熱交換可能な装置等である。
【0101】
熱源136により加熱する許容範囲の温度は、水分を含んだリッチ液に含む水分を確実に凝固させる温度を担保すると共に、乾いた状態にあるリッチ液を液相状態に維持できている温度条件を満たす範囲内である。換言すれば、乾いた状態のリッチ液に対する加熱条件は、冷媒であるLNGの沸点と、乾いた状態のリッチ液の沸点のうち、いずれか高い方の沸点を温度下限とし、かつ水の凝固点を温度上限とした上で、温度下限と温度上限との範囲内にある温度帯域を、熱源136による加熱の許容温度範囲内とする。
【0102】
従って、冷媒の冷熱温度が、例示した-150℃程度のように、LNGの沸点より高く、かつ再生処理後の二酸化炭素(CO2ガス)の凝固温度(1.013×10-1MPaの下、-78.5℃)以下の温度帯域内であれば、固化槽51の内部空間51Sでは、再生処理後の二酸化炭素(CO2ガス)は固化する。また、脱水ユニット131の内部空間131Sでは、リッチ液に含んでいた水分は、氷となる。
【0103】
その一方で、乾いた状態のリッチ液が、このような帯域下の温度でも、必要に応じて、熱源136による加熱で温度調節を行って、液相状態を維持することにより、脱水手段30では、乾いた状態のリッチ液と氷とが、周知技術によるフィルタ等を介して、分別して得ることができる。かくして、リッチ液に含んでいた水分は、
図3及び
図4に示すように、内部空間131Sで凝固した氷単体の状態で、脱水ユニット131からドレン135を通じて回収可能である。
【0104】
<第3の実施形態>
次に、第3の実施形態に係る二酸化炭素回収装置について、
図5及び
図6を用いて説明する。
図5は、第3,第4の実施形態に係る二酸化炭素回収装置の要部を示す配管系統図であり、脱水器だけを略図で示した図である。
図6は、第3の実施形態に係る二酸化炭素回収装置の脱水器の機能に関する説明図であり、
図5に示す脱水器に相当する図である。
【0105】
図5に示すように、第3,第4の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1C、1D(1)では、二酸化炭素回収ライン50が、再生部3に設けられている。二酸化炭素回収ライン50は、第2管路L82により、減圧弁93を介して、再生塔20と連通可能に接続され、再生塔20から放散した再生処理後の二酸化炭素を回収する処理を担う。二酸化炭素回収ライン50は、並列に接続された2組の固化槽51(51A,51B)を有している。
【0106】
固化槽51A,51Bは、第1の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1A(1)に構成した固化槽と、実質的に同じ仕様である。各固化槽51の内部空間51Sには、ヒートポンプ55(55A,55B)と、冷媒回路L2の支管である冷媒回路L2A,L2Bと、冷媒回路L2A,L2Bに設けた熱交換器54(54A,54B)が、それぞれ設けられている。
【0107】
図5に示すように、脱水手段30(
図5で脱水器と表示)は、吸収塔10と再生塔20とを連通可能に繋ぐ第1管路L81で、吸収塔10と再生塔20との間に設けられている。第3の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1C(1)では、
図6に示すように、脱水手段30は、リッチ液(吸収処理後の吸収液)を収容可能な内部空間231S(第2の内部空間)を設けた脱水ユニット231(第2の脱水ユニット)と、内部空間231Sに配した分離膜材232(分離材)を有する。
【0108】
分離膜材232は、例えば、逆浸透膜材のように、膜により、水分を含んだリッチ液(吸収処理後の吸収液)に含む水分を捕捉可能な分離材である。吸収塔10から供給される、水分を含んだリッチ液(吸収処理後の吸収液)(
図6でwetと表示)は、分離膜材232で捕捉した水分を除去後、乾いた状態のリッチ液(
図6でdryと表示)となり、第1管路L81の下流側管路を通じて、再生塔20に供給される。
【0109】
<第4の実施形態>
次に、第4の実施形態に係る二酸化炭素回収装置について、
図5及び
図7を用いて説明する。
図7は、第4の実施形態に係る二酸化炭素回収装置の脱水器を示す説明図であり、
図5に示す脱水器に相当する図である。
【0110】
第4の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1D(1)は、親水性をなす物性の吸収液を用いた場合の第1~第3の実施形態とは異なり、疎水性をなす物性の吸収液を用いる場合の装置である。吸収液は、主成分に有機溶媒を含む疎水性の液剤である。
図5に示すように、脱水手段30(
図5で脱水器と表示)は、吸収塔10と再生塔20とを連通可能に繋ぐ第1管路L81で、吸収塔10と再生塔20との間に設けられている。
【0111】
脱水手段30は、疎水性をなす吸収液を対象に用いる脱水ユニット331(第3の脱水ユニット)を有する。脱水ユニット331は、水分を含んだリッチ液(吸収処理後の吸収液)を静置状態で貯留可能な内部空間331S(第3の内部空間)を有する。第1管路L81のうち、吸収塔10から延びる上流側管路(
図7中、左側にある第1管路L81の一部分)が、内部空間331Sの流入口333(第3の内部空間への流入側)と接続している。この上流側管路には、第1開閉弁335(第3の流通制御弁)が配管されており、第1開閉弁335は、上流側管路内の開路または閉路を可能とした弁となっている。
【0112】
また、第1管路L81のうち、再生塔20へと延びる下流側管路(
図7中、右側にある第1管路L81の一部分)が、内部空間331Sの流出口334(第3の内部空間からの流出側)と接続している。この下側管路にも、第1開閉弁335(第3の流通制御弁)が配管されており、第1開閉弁335は、下流側管路内の開路または閉路を可能としている。脱水ユニット331は、内部空間331Sと連通したドレン332を有しており、ドレン332には、第2開閉弁336が配管されており、第2開閉弁336は、ドレン332内の開路または閉路を可能とした弁となっている。
【0113】
第4の実施形態に係る二酸化炭素回収装置1D(1)では、水分を含んだリッチ液(吸収処理後の吸収液)(
図7でwetと表示)が、吸収塔10から第1管路L81を通じて、流入口333より供給され、内部空間331Sに貯留されると、流入口333と流出口334の双方で、第1開閉弁335が閉弁される。脱水ユニット331の内部空間331Sでは、水分を含んだリッチ液(吸収処理後の吸収液)が、所定時間の間、静置状態で放置される。
【0114】
これにより、リッチ液(吸収処理後の吸収液)は、
図7に示すように、吸収液の主成分の相である有機溶媒相と、水分を含んだリッチ液に混在していた水分、特に飽和水の状態にある水蒸気で、被分離ガスに由来した水分による水相に分離する。相分離後、有機溶媒相にある液は、乾いた状態のリッチ液(
図7でdryと表示)として、再生塔20に移送される。ドレン332は、脱水ユニット331の内部空間331Sに貯留した、水分を含んだリッチ液(吸収処理後の吸収液)から相分離した水相の水を排水する。
【0115】
なお、
図7に示す脱水手段30では、第1管路L81に接続する脱水ユニット331は、1つとなっているが、相分離を実行している脱水ユニット331のバイパスとして、例えば、複数の脱水ユニット331が、第1管路L81に並列に接続されていることが好ましい。その理由として、複数の脱水ユニット331のうち、一の脱水ユニット331では、
図7に示すように、水分を含んだリッチ液(
図7でwetと表示)の相分離は、静置状態下にある内部空間331Sで実行できる。その一方、他の脱水ユニット331では、この相分離が完了するまでの間、水分を含んだリッチ液(吸収処理後の吸収液)を吸収塔10から内部空間331Sへの流入や、相分離完了後、乾いた状態のリッチ液(
図7でdryと表示)を内部空間331Sから再生塔20への移送が実行できる。従って、二酸化炭素回収装置1D(1)は、第1管路L81に対し、水分を含んだリッチ液の流れや、乾いた状態のリッチ液の流れを、一時的に停止させることなく、連続運転で、乾いた状態のリッチ液と水との相分離を行うことが可能になるからである。
【0116】
<シミュレーションによる検証の実施について>
本出願人は、第1~第4に係る実施形態に係る二酸化炭素回収装置1の効果を検証する目的で、被分離ガスに混在する水分を再生塔導入前に除去することへの有意性について、専用のソフトにより、シミュレーションを行った。シミュレーションでは、被分離ガスから水分を再生塔導入前に除去した水分の除去割合に応じて、二酸化炭素吸収処理後の吸収液(リッチ液)に占める水の残存割合と、再生塔に掛かる熱負荷と、回収される二酸化炭素の純度に、それぞれ与える影響を調査するために、解析を行った。
【0117】
<シミュレーション条件>
・被分離ガス:空気
・CO2ガスの回収量(再生塔気相出口流量):2500kg/h
・吸収塔フィード空気の相対湿度:60%
・吸収塔におけるフィード液・ガスの流量比:0.05t/t
・再生塔温度:25℃
・再生塔でのCO2の分圧:10Pa
【0118】
・回収される二酸化炭素(CO
2ガス)の純度P[%]:二酸化炭素回収手段に向けた管路(
図1中、第2管路L82に相当)内を流通するガス1mol当たりのうち、再生処理後の二酸化炭素1molが占める割合を百分率で示す。
・循環液中残存水分(H
2O)の割合W[%]:二酸化炭素回収手段に向けた再生塔の流出口(
図1中、再生塔20の内部空間20Sの第1流出口24に相当)で、二酸化炭素放散前の状態として、水分を含んだ状態にある二酸化炭素吸収処理後の吸収液(リッチ液)1mol当たり、混在している水分(H
2O)1molが占める割合
・再生塔に掛かる熱負荷[GJ/t]:二酸化炭素吸収処理後の吸収液(リッチ液)を再生塔で加熱して放散させるのにあたり、二酸化炭素(CO
2ガス)1tonを放散させるのに必要な熱量
【0119】
<シミュレーション結果>
図8は、第1~第4の実施形態に係る二酸化炭素回収装置の効果を検証する調査で、リッチ液からの水分除去と、リッチ液での残存水分と、再生塔での熱負荷と、回収される二酸化炭素の純度との関係について、シミュレーション結果をまとめて示すグラフである。
【0120】
シミュレーション結果を
図8に示す。再生塔に導入されたリッチ液で、混在していた水分を除去した割合が増大するにつれ、回収された二酸化炭素の純度は高くなった一方で、再生塔に掛かる熱負荷は低くなった。
【0121】
<考察>
リッチ液は、空気に含む二酸化炭素をリッチ液に吸収させたことにより、空気(被分離ガス)に包含していた水分(水蒸気の飽和水等)も含有してしまっている。シミュレーション結果より、水分の脱水処理を行っていないリッチ液では、水分は元々、6wt%程混在していたが、再生塔に導入される前の段階で、水分の脱水処理を行うことにより、被分離ガスに由来したこの水分が、ほとんど除去されている。再生塔での熱負荷が減少傾向になった理由として、再生塔では、予め脱水した状態のリッチ液に基づいて、加熱を伴って、二酸化炭素の放散が行われている。このとき、この状態のリッチ液を加熱するにあたり、水分が前もって除去されていることから、水分の気化に必要な熱負荷はほとんど生じない。これにより、水分の除去割合が増大するにつれ、再生塔では、二酸化炭素の放散に伴った熱負荷が減少する傾向になったものと考えられる。
【0122】
また、純度を高くして二酸化炭素が回収できる理由として、再生塔では、予め脱水した状態のリッチ液を加熱して、この液中から脱気した二酸化炭素を放散しているため、リッチ液中に混在していた水分の気化が、ほとんど生じない。そのため、リッチ液の特性も鑑み、リッチ液の加熱に伴って放散(または気化)するガスの大半が、二酸化炭素(CO2ガス)に絞られることに起因して、回収される二酸化炭素の純度が高くなったものと推察される。
【0123】
次に、本実施形態に係る二酸化炭素回収装置の作用・効果について説明する。
【0124】
本実施形態に係る二酸化炭素回収装置1(1A、1B、1C、1D)では、被分離ガスとの気液接触により、該被分離ガスに含む二酸化炭素を吸収液に吸収させる吸収塔10と、該吸収液に吸収した該二酸化炭素を放散させる再生塔20と、を備え、放散した該二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収装置において、吸収塔10と再生塔20とを連通可能に繋ぐ第1管路L81に、二酸化炭素を吸収した状態にある吸収処理後の吸収液(リッチ液)から、混在する水分を取り除く脱水手段30を備え、吸収液(リッチ液)は、脱水手段30により、水分を除去した状態で、第1管路L81を通じて再生塔に供給されること、を特徴とする。
【0125】
本実施形態に係る二酸化炭素回収装置1によれば、再生塔20では、再生処理後の二酸化炭素(CO2ガス)の放散にあたり、加熱するリッチ液が、予め脱水された状態になっている。これにより、再生塔20では、リッチ液中に混在していた水分の気化は、ほとんど生じず、酸素、窒素等の不要ガスも脱水手段30で排気されているため、リッチ液の加熱に伴って放散(または気化)するガスの大半は、二酸化炭素(CO2ガス)となる。そのため、放散した気体に占める二酸化炭素(CO2ガス)の分圧はより高くなり、ひいては、より純度の高い二酸化炭素の回収が可能となる。
【0126】
また、再生塔20では、加熱するリッチ液が、予め脱水された状態になっているため、被分離ガスに由来した水分(主として飽和水の状態となった水蒸気)による蒸発を排除することができている。これにより、二酸化炭素を放散するのに必要な沸騰温度にリッチ液を加熱するとき、従来、再生塔内での雰囲気温度の低下が、混在していた水分の蒸発に起因して生じていたが、本実施形態に係る二酸化炭素回収装置1では、このような水分の蒸発がほとんど発現しない。そのため、再生塔20の内部空間20Sでは、水分の蒸発に依拠した雰囲気温度の低下が抑制できている。ひいては、再生塔20では、予め脱水された状態にある吸収処理後の吸収液が内部空間20Sに導入されるため、被分離ガスの混在していた水分の影響を受けて、雰囲気温度が低下するのを抑止できるようになり、水分の蒸発に依拠した雰囲気温度の低下を補う昇温の必要性はほとんどない。それ故に、再生塔20で沸騰温度になるまで吸収処理後の吸収液を加熱する時に、ヒートポンプ25で投与するエネルギー負荷を抑制することができている。
【0127】
従って、本実施形態に係る二酸化炭素回収装置1によれば、再生塔20において、投与するエネルギー負荷を抑制すると共に、水蒸気等の水分の混在を抑えて、被分離ガスから二酸化炭素を、より高い純度で回収することができる、という優れた効果を奏する。
【0128】
また、本実施形態に係る二酸化炭素回収装置1A、1B(1)では、再生塔20から放散した再生処理後の二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収ライン50を、再生塔20と連通可能に繋ぐ第2管路L82に備え、二酸化炭素回収ライン50は、再生処理後の二酸化炭素を気相から固相に昇華させる固化槽(例えば、第1回収槽51を固化槽とした
図2に示す固化槽51)を有し、例示する固化槽51等では、冷媒回路L2を流通する冷媒により、再生処理後の二酸化炭素との間で熱交換が可能であり、再生処理後の二酸化炭素は、冷媒により固化した状態で、固化槽から回収可能であること、を特徴とする。
【0129】
この特徴により、この固化槽51の内部空間51S等に導入する二酸化炭素(CO2ガス)は、リッチ液に混在していた水分(水蒸気)を脱水手段30で除去した、乾いた状態のリッチ液を基に、再生塔20で放散され、冷媒により、この状態にある二酸化炭素(CO2ガス)が、その混在元であった被分離ガスの種別に応じた特有の凝固点以下に冷却されて固化される。これにより、固化槽51等で固化した二酸化炭素は、より純度の高いドライアイスの態様で回収することができる。
【0130】
また、本実施形態に係る二酸化炭素回収装置1(1A、1B、1C、1D)では、冷媒は、液化天然ガス(LNG:Liquefied Natural Gas)をガス化した熱媒体であること、を特徴とする。
【0131】
この特徴により、液化天然ガスをガス化することに伴って大量に生じ、これまで利用されずに廃棄されてきた冷熱エネルギーが、冷媒の冷熱として有効に活用することできる。特に、都市ガスの主原料となる天然ガスは、LNGの状態で輸入され、LNGの受入基地でガス化されて、パイプラインを通じて需要先に向けて送出される。LNGをガス化するときには、冷熱エネルギーが、大量に放出されて未利用のまま廃棄される。このようなLNGの実情に鑑みて、二酸化炭素回収装置1は、液化天然ガスをガス化した冷媒を用いることで、世界的な課題となっている環境問題の解決に向けて寄与することができる。ひいては、二酸化炭素回収装置1は、放出し廃棄していたエネルギーの有効利用を図り、持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)の達成の一助として、大いに貢献できる。
【0132】
また、本実施形態に係る二酸化炭素回収装置1A、1B(1)では、二酸化炭素回収ライン50は、再生処理後の二酸化炭素を気相状態で収容可能な気化槽(例えば、第2回収槽61を固化槽とした
図2に示す気化槽61)を有し、例示する気化槽61等には、固化した状態にある再生処理後の二酸化炭素を、その臨界点より低い温度で昇温可能な熱交換器64が配設され、再生処理後の二酸化炭素は、熱交換器64により、常温に温度調節された気相状態で、気化槽61から回収可能であること、二酸化炭素回収ライン50では、固化槽51の役割りと気化槽61の役割りとのいずれか一方を、互いに異なった役割りで選択的に果たすことを可能に構成された一双の回収槽60が、第2管路L82に対し、並列に接続されていること、を特徴とする。
【0133】
この特徴により、例示した固化槽51の内部空間51Sと同様、例示した気化槽61の内部空間61Sに導入する二酸化炭素(CO2ガス)は、リッチ液に混在していた水分(水蒸気)を脱水手段30で除去した、乾いた状態のリッチ液を基に、再生塔20から、より高純度な状態で放散され、固化槽51での固化を経て、気化槽61で常温に調節して回収される。これにより、気化槽61等で回収する二酸化炭素(CO2ガス)は、より高純度な状態となっており、例えば、メタノール、メタン等の化学物質や、炭素素材への変換、工業向けの高圧CO2ガス、飲食向けの炭酸ガス等、市販に適す品質を担保して活用することができるほか、地中に貯留(CCS)することにより、大気放散の抑制を図ることができる。
【0134】
また、本実施形態に係る二酸化炭素回収装置1B(1)では、脱水手段30は、水分を含んだ吸収液(リッチ液)を収容可能な内部空間131Sを設けた脱水ユニット131を有し、冷媒回路L2は、固化槽51から脱水手段30を経由して配設されていること、冷媒は、脱水手段30では、リッチ液に混在する水分の凝固を可能とすると共に、固化槽51では、再生処理後の二酸化炭素(CO2ガス)の固化を可能とした温度であること、水分は、冷媒により、内部空間131Sで凝固した氷単体の状態で、脱水ユニット131から回収可能であること、が好ましい。
【0135】
この特徴により、脱水手段30は、脱水ユニット131を、少なくとも1基構成するだけで、水分を含んだリッチ液を、乾いた状態のリッチ液に簡単に生成することができる。しかも、内部空間131Sでは、水分を含んだリッチ液が、冷媒との熱交換により冷却され、この冷媒を流通する冷媒回路L2が、固化槽と共用できていることから、冷媒回路L2の系統を脱水ユニット131に経由させるだけとなり、二酸化炭素回収装置1B(1)の構造が簡素化できている。
【0136】
また、本実施形態に係る二酸化炭素回収装置1A(1)では、脱水手段30は、水分を含んだリッチ液を収容可能な内部空間31Sを設けた脱水ユニット31と、水を吸着可能な吸水材32とを、有し、内部空間31Sに配した吸水材32が、内部空間31Sを通過する、水分を含んだリッチ液から、水分を吸着して除去すること、を特徴とする。また、本実施形態に係る二酸化炭素回収装置1C(1)では、脱水手段30は、水分を含んだリッチ液を収容可能な内部空間231Sを設けた脱水ユニット231と、内部空間231Sに配した分離膜材232とを有し、分離膜材232は、膜により、液体中に含む水を分離可能な捕捉部材であり、吸収塔10から供給される、水分を含んだリッチ液から、水分を捕捉して除去すること、を特徴とする。
【0137】
これらの特徴により、吸水材32、分離膜材232は、水分を含んだリッチ液に含む水分をなす微細な水分子群を、精度良く捕捉漏れを抑えて取り除くことが可能になるため、脱水処理後のリッチ液(乾いた状態のリッチ液)は、ほとんど水分を残存していない、乾いた状態となる。
【0138】
また、本実施形態に係る二酸化炭素回収装置1A(1)では、吸収塔10と脱水ユニット31とを、第1管路L81と独立した系統で並列に接続した第3管路L83が配設されていると共に、内部空間31Sからの排気を行う排気管37と、排気管37の開路または閉路が可能な開閉弁38とを、脱水ユニット31に有し、吸収塔10で、水分を含んだリッチ液から放たれた不要ガスは、第3管路L83を通じて内部空間31Sを流通し、排気管37から排気されること、を特徴とする。
【0139】
この特徴により、吸水材32が、捕捉した水分の受容限界に近づき、捕捉能力の低下を招いた場合、吸水材32は、水分を含んだリッチ液の内部空間31Sへの流入を阻止した状態の下、内部空間31Sに晒された昇温後の不要ガスにより、捕捉した水分を蒸発させて、乾燥することができる。特に、水分を含んだリッチ液の内部空間31Sへの流入を阻止した状態の下で、この水分の蒸気は、昇温後の不要ガスと共に、排気管37から排気されるため、脱水処理後のリッチ液(乾いた状態のリッチ液)に再混入しない。
【0140】
また、本実施形態に係る二酸化炭素回収装置1A(1)では、脱水ユニット31には、内部空間31Sの雰囲気を昇温可能な熱源39が設けられ、脱水ユニット31では、不要ガスが内部空間31Sに供給される場合には、熱源39は、内部空間31Sを加熱するON状態である一方、水分を含んだリッチ液が内部空間31Sに供給される場合には、熱源39は、内部空間31Sを加熱しないOFF状態であること、を特徴とする。
【0141】
この特徴により、熱源39がOFF状態の場合、リッチ液が、比較的低温状態にあることから、リッチ液自体は、気化を抑えて、より安定した液相状態に維持できているため、吸水材32は、リッチ液に含んだ水分に対し、吸水材32の空孔内への吸着を促進することができる。それ故に、吸水材32の吸着能力を十分に発揮することができるほか、無駄な熱エネルギー消費も抑えることができる。また、熱源39がON状態の場合には、乾燥機能の役割を果たす脱水ユニット31側の内部空間31Sでは、熱源39による加熱で昇温した不要ガスにより、捕捉した水分を含む吸水材32を乾燥させることができる。
【0142】
また、本実施形態に係る二酸化炭素回収装置1A(1)では、脱水ユニット31(31A、31B)を複数有し、各脱水ユニット31は、第1管路L81と並列に接続されていると共に、第3管路L83とも並列に接続されていること、第1管路L81には、脱水ユニット31に向けた、水分を含んだリッチ液の流れを選択的に制御する第1切替弁41を、第3管路L83には、脱水ユニット31に向けた不要ガスの流通を選択的に制御する第2切替弁42を、それぞれ有し、各脱水ユニット31では、第1切替弁41と第2切替弁42により、水分を含んだリッチ液、または不要ガスのいずれか一方の流体だけが、内部空間31Sに供給されること、を特徴とする。
【0143】
この特徴により、第1切替弁41と第2切替弁42との協働の下で、吸水材32により、水分を含んだリッチ液から脱水した、乾いた状態のリッチ液を収容した脱水ユニット31の内部空間31Sに、吸収塔10から流通する不要ガスが混入するのを防止できる。
【0144】
また、本実施形態に係る二酸化炭素回収装置1A(1)では、脱水ユニット31では、不要ガスが内部空間31Sに供給される場合、熱源39で加熱した昇温後の不要ガスにより、水分を吸着した状態にある吸水材32を、内部空間31Sで乾燥させる乾燥機能を有すること、脱水手段30では、内部空間31Sに供給された、水分を含んだリッチ液に対し、吸水材32により水分の脱水処理を行う脱水機能と、乾燥機能とを、相互に選択的な切り替えを伴って、当該二酸化炭素回収装置1A(1)は運転されること、を特徴とする。
【0145】
この特徴により、一の脱水ユニット31(例示する
図2で、脱水ユニット31B)が、脱水機能の役割を果たしている間、同時に他の脱水ユニット31(例示する
図2で、脱水ユニット31A)が、乾燥機能の役割を果たすことができる。そのため、脱水機能をなす一の脱水ユニット31の吸水材32で、捕捉した水分の受容限界に近づいて捕捉能力の低下を招いた場合には、一の脱水ユニット31を乾燥機能の役割に、他の脱水ユニット31を乾燥機能の役割に、双方で切り替えて、二酸化炭素回収装置1Aを継続して運転することができる。同様に、他の脱水ユニット31(例示する
図2で、脱水ユニット31A)が、脱水機能の役割を果たしている間、同時に一の脱水ユニット31(例示する
図2で、脱水ユニット31B)が、乾燥機能の役割を果たすことができる。従って、二酸化炭素回収装置1Aは、脱水手段30では、脱水機能と乾燥機能を、選択的に切り替えて運転できているため、水分を含んだリッチ液を、持続的に効率良く脱水して、乾いた状態のリッチ液を生成することができる。
【0146】
また、本実施形態に係る二酸化炭素回収装置1D(1)では、脱水手段30は、疎水性をなす吸収液を対象に用いる脱水ユニット331を有し、脱水ユニット331は、水分を含んだリッチ液を静置状態で貯留可能な内部空間331Sと、内部空間331Sと連通したドレン332と、を有していること、ドレン332は、内部空間331Sに貯留した、水分を含んだリッチ液から相分離した水分を排水すること、を特徴とする。
【0147】
この特徴により、簡単な構造の脱水ユニット331で、水分を含んだリッチ液から、有機溶媒相の液である、乾いた状態のリッチ液を生成することができ、分離した水は、そのままドレン332を通じて排水することができる。また、脱水ユニット331の構成が簡単であるため、二酸化炭素回収装置1D(1)に対し、例えば、メンテナンス等、運用上の管理を行い易いメリットがある。
【0148】
また、本実施形態に係る二酸化炭素回収装置1D(1)では、第1管路L81のうち、内部空間331Sへの流入側にある流入口333、または内部空間331Sからの流出側にある流出口334の少なくとも片側に、第1管路L81内の開路または閉路を可能とした第1開閉弁335を有していること、を特徴とする。
【0149】
この特徴により、内部空間331Sに貯留したリッチ液の相分離を行う間、第1開閉弁335により、流入口333側と流出口334側の双方で、第1管路L81内を閉路することで、リッチ液が内部空間331Sで安置し易くなる。これにより、相分離後、水は排水され、有機溶媒相の液である、乾いた状態のリッチ液は、水分を含んだリッチ液から、効率良く得られ、しかも水の混在を抑えたより純度の高い状態で、得ることができる。
【0150】
以上において、本発明を第1~第4の実施形態に即して説明したが、本発明は上記第1~第4の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できる。
【0151】
例えば、第1~第4の実施形態では、冷媒回路L2に流通する冷媒を、液化天然ガス(LNG)としたが、再生処理後の二酸化炭素(CO2ガス)を冷却するのに要する冷熱は、LNG以外にも、例えば、液体水素や液化メタン等に挙げられる液化燃料のほか、例えば、液化窒素や液化酸素等に挙げられる液化ガスであっても良い。
【0152】
また、第1の実施形態では、同じ仕様の脱水ユニット31を2セット並列に接続した脱水手段30を挙げたが、接続する脱水ユニットの数は、複数であれば良く、2に限らず、適宜変更可能である。但し、第1の実施形態のように、1つの脱水ユニット31に対し、脱水機能と乾燥機能との役割を交互に可逆的に果たすため、複数の脱水ユニットのうち、一部をなすいくつかの脱水ユニットの集まりをなす第1の脱水ユニット群と、複数の脱水ユニットのうち、その残部をなすいくつかの脱水ユニットの集まりをなす第2の脱水ユニット群とが、互いに並列接続関係にあることが重要である。例えば、第1の脱水ユニット群が脱水機能の役割を果たしている時に、第2の脱水ユニット群が乾燥機能の役割を果たすことができるからである。
【0153】
また、第4の実施形態では、
図7に示すように、主成分に有機溶媒を含む疎水性の吸収液として、水より大きい比重をなす有機溶媒を含んだ吸収液を用いた。しかしながら、本発明に係る二酸化炭素回収装置では、用いる吸収液が、主成分に有機溶媒を含む疎水性の液剤である場合、この吸収液に含有する有機溶媒は、水より小さい比重をなす物性であっても良い。
【0154】
但し、水より小さい比重の有機溶媒を含有した吸収液を使用する場合、
図7に相当した脱水ユニットの内部空間に貯留された吸収処理後の吸収液では、吸収液の主成分の相である有機溶媒相が、混在していた水分の相である水相より上になって相分離する。そのため、本発明に係る二酸化炭素回収装置では、吸収塔から供給される吸収処理後の吸収液を、この脱水ユニットの内部空間に貯留できると共に、この内部空間で相分離後、乾いた状態となった吸収処理後の吸収液を再生塔に向けて送出できるよう、本発明に係る第1管路が、この脱水ユニットの内部空間に接続されて連通していることが重要である。
【符号の説明】
【0155】
1、1A、1B、1C、1D 二酸化炭素回収装置
10 吸収塔
20 再生塔
30 脱水手段
31、31A、31B 脱水ユニット(第2の脱水ユニット)
31S 内部空間(第2の内部空間)
32 吸水材(分離材)
37 排気管
38 開閉弁
39 熱源(第2の熱源)
41 第1切替弁(第1の流通制御弁)
42 第2切替弁(第2の流通制御弁)
50 二酸化炭素回収ライン(二酸化炭素回収手段)
51 第1回収槽(回収槽)
60 回収槽
61 第2回収槽(回収槽)
64 熱交換器(第1の熱源)
131 脱水ユニット(第1の脱水ユニット)
131S 内部空間(第1の内部空間)
135 ドレン
231 脱水ユニット(第2の脱水ユニット)
231S 内部空間(第2の内部空間)
232 分離膜材(分離材)
331 脱水ユニット(第3の脱水ユニット)
331S 内部空間(第3の内部空間)
333 流入口(第3の内部空間への流入側)
334 流出口(第3の内部空間からの流出側)
335 第1開閉弁(第3の流通制御弁)
L2 冷媒回路
L81 第1管路
L82 第2管路
L83 第3管路