(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110288
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】車椅子動力装置
(51)【国際特許分類】
A61G 5/04 20130101AFI20240807BHJP
A61G 5/02 20060101ALI20240807BHJP
B62B 3/00 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
A61G5/04 711
A61G5/02 707
B62B3/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014806
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】394021638
【氏名又は名称】トリックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177921
【弁理士】
【氏名又は名称】坂岡 範穗
(74)【代理人】
【識別番号】100228038
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 めぐみ
(72)【発明者】
【氏名】五家 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】大角 良輔
(72)【発明者】
【氏名】松▲崎▼ 慎吾
【テーマコード(参考)】
3D050
【Fターム(参考)】
3D050AA04
3D050DD01
3D050EE08
3D050EE15
3D050KK14
(57)【要約】
【課題】力の弱い人であっても容易にバッテリーを交換でき、さらに車椅子に座ったままでもバッテリーを交換することができる車椅子動力装置を提供する。
【解決手段】車椅子100の車体フレーム101の外側かつ車椅子の後輪103より前に設けられるベースフレーム10と、ベースフレームに設けられるハンドル機構40と、ハンドル機構に設けられる駆動輪51と、駆動輪を駆動するモーター54と、車椅子の前輪を上昇させることができる前輪上昇機構60と、その内部にバッテリー79を備えるバッテリーユニット70と、ベースフレームの外側面に設けられてバッテリーユニットを着脱可能に載置させる載置板81、及び載置板から立設されてバッテリーユニットの水平方向への動きを規制する位置決め板82を備えるバッテリー収納部80と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手動式の車椅子に装着されることによって前記車椅子の走行を補助する車椅子動力装置であって、
前記車椅子のうち左右どちらか一方の車体フレームの外側かつ前記車椅子の後輪より前に設けられるベースフレームと、
前記ベースフレームに設けられるハンドル機構と、
前記ハンドル機構に設けられる駆動輪と、
前記駆動輪を駆動するモーターと、
その内部にバッテリーを備えるバッテリーユニットと、
前記ベースフレームの外側面に設けられて前記バッテリーユニットを着脱可能に載置させる載置板、及び前記載置板から立設されて前記バッテリーユニットの水平方向への動きを規制する位置決め板を備えるバッテリー収納部と、
を備えることを特徴とする車椅子動力装置。
【請求項2】
前記ベースフレーム側にある前記車椅子の前輪を上昇させることができる前輪上昇機構を備える請求項1に記載の車椅子動力装置。
【請求項3】
前記位置決め板の高さが前記載置板から10mm~50mmであり、
前記ベースフレームと、前記載置板に載置させた前記バッテリーユニットとを係止させる係止具を備える請求項1に記載の車椅子動力装置。
【請求項4】
前記位置決め板のうち、前後方向に設けられる前記位置決め板の高さが載置板から10mm~30mmとなっており、前記ベースフレームと反対側に設けられる前記位置決め板の高さが前後方向に設けられる前記位置決め板の高さより高く構成されかつ載置板から25mm~50mmとなっている請求項3に記載の車椅子動力装置。
【請求項5】
前記ベースフレームと反対側の前記位置決め板が、前後方向に設けられる前記位置決め板と同じ高さまでは垂直に設けられ、それより高い部分は外側方向に傾斜している請求項4に記載の車椅子動力装置。
【請求項6】
前記係止具が、スライドラッチであり、前記スライドラッチのボルトが前記ベースフレームの広い面と直交する方向にスライドするように取付けてあり、前記ベースフレームに対する前記バッテリーユニットの左右方向の動きを妨げない請求項3に記載の車椅子動力装置。
【請求項7】
前記載置板の上面と前記バッテリーユニットの底面とにそれぞれ対応する電気コネクターが設けられており、前記バッテリー収納部に前記バッテリーユニットを着脱することで前記電気コネクターも着脱される請求項1ないし6のいずれか1項に記載の車椅子動力装置。
【請求項8】
前記バッテリーユニットが、
外面を構成する外箱部、前記外箱部の中の前部又は後部に設けられる基板室、及び前記基板室に隣接して前記バッテリーを格納するバッテリー室を備える筐体と、
前記バッテリー室に格納される上下2段のバッテリーと、
前記基板室に格納される制御基板と、を備える請求項1ないし6のいずれか1項に記載の車椅子動力装置。
【請求項9】
前記バッテリーユニットが、
外面を構成する外箱部、前記外箱部の中の前部又は後部に設けられる基板室、及び前記基板室に隣接して前記バッテリーを格納するバッテリー室を備える筐体と、
前記バッテリー室に格納される上下2段のバッテリーと、
前記基板室に格納される制御基板と、
前記基板室の底部から前記外箱部の外面に向かって設けられる前記電気コネクターと、を備える請求項7に記載の車椅子動力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手動式の車椅子に装着されて車椅子の走行を補助する車椅子動力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、今ある車椅子に電動の伝動装置を取付けるものとして、登録実用新案第3092374号公報に、操縦部、枢軸部、電池部、及び伝動装置で構成され、電池部の底部に設けられた軸管に支え軸を通して、ノブを取付けて固定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示されている技術では、電池部が座面の下に位置して、さらに着脱する際に電池部の重さを手で支えつつ横方向に移動させなければならない。このため、特に高齢者や障害者等の力の弱い人にとっては、電池部の着脱が困難であった。また、車椅子に座ったままで電池部を交換することも困難であった。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みなされたもので、高齢者や障害者等の力の弱い人であっても容易にバッテリーを交換でき、さらに車椅子に座ったままでもバッテリーを交換することができる車椅子動力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車椅子動力装置は、
手動式の車椅子に装着されることによって前記車椅子の走行を補助する車椅子動力装置であって、
前記車椅子のうち左右どちらか一方の車体フレームの外側かつ前記車椅子の後輪より前に設けられるベースフレームと、
前記ベースフレームに設けられるハンドル機構と、
前記ハンドル機構に設けられる駆動輪と、
前記駆動輪を駆動するモーターと、
その内部にバッテリーを備えるバッテリーユニットと、
前記ベースフレームの外側面に設けられて前記バッテリーユニットを着脱可能に載置させる載置板、及び前記載置板から立設されて前記バッテリーユニットの水平方向への動きを規制する位置決め板を備えるバッテリー収納部と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の車椅子動力装置によれば、バッテリー収納部がベースフレームの外側面に設けられる。これにより、車椅子の座面に座った状態でバッテリーユニットを着脱することができ、バッテリーの交換が容易となる。また、力の弱い人でもバッテリーユニットの交換をすることができる。
【0008】
本発明の車椅子動力装置の好ましい例は、
前記ベースフレーム側にある前記車椅子の前輪を上昇させることができる前輪上昇機構を備える。
【0009】
本発明の車椅子動力装置の好ましい例によれば、駆動輪の側にある車椅子の前輪を上昇させ浮かせることができる。これにより、駆動輪が路面又は床面に強く押し付けられて空転を防止できる。
【0010】
本発明の車椅子動力装置の好ましい例は、
前記位置決め板の高さが前記載置板から10mm~50mmであり、
前記ベースフレームと、前記載置板に載置させた前記バッテリーユニットとを係止させる係止具を備える。
【0011】
本発明の車椅子動力装置の好ましい例によれば、バッテリーユニットを着脱する際に、バッテリーユニットを位置決め板の高さである10mm~50mmほど持ち上げればよく、バッテリーの交換がより容易となる。また、位置決め板の高さが低くても、係止具によりバッテリーユニットの転倒による脱落を防止することができる。
【0012】
本発明の車椅子動力装置の好ましい例は、
前記位置決め板のうち、前後方向に設けられる前記位置決め板の高さが載置板から10mm~30mmとなっており、前記ベースフレームと反対側に設けられる前記位置決め板の高さが前後方向に設けられる前記位置決め板の高さより高く構成されかつ載置板から25mm~50mmとなっている。
【0013】
本発明の車椅子動力装置の好ましい例によれば、前後方向に設けられる位置決め板の高さが低く構成されており、バッテリーユニットの着脱操作がより容易となる。
【0014】
本発明の車椅子動力装置の好ましい例は、
ベースフレームと反対側の前記位置決め板が、前後方向に設けられる前記位置決め板と同じ高さまでは垂直に設けられ、それより高い部分は外側方向に傾斜している。
【0015】
本発明の車椅子動力装置の好ましい例によれば、ベースフレームと反対側の位置決め板の上部が外側に傾斜しており、バッテリーユニットの装着が容易となる。一方で、下部は垂直になっており、正しい位置にバッテリーユニットを案内することができる。
【0016】
本発明の車椅子動力装置の好ましい例は、
前記係止具が、スライドラッチであり、前記スライドラッチのボルトが前記ベースフレームの広い面と直交する方向にスライドするように取付けてあり、前記ベースフレームに対する前記バッテリーユニットの左右方向の動きを妨げない。
【0017】
本発明の車椅子動力装置の好ましい例によれば、係止具がスライドラッチであるため、係止具の操作が容易である。また、ボルトがベースフレームの広い面と直交する方向にスライドして、バッテリーユニットにおけるボルトのスライド方向の動きを規制しない。このため、仮にベースフレームの外側面とバッテリーユニットとの間に隙間があっても問題とならない。
【0018】
本発明の車椅子動力装置の好ましい例は、
前記載置板の上面と前記バッテリーユニットの底面とにそれぞれ対応する電気コネクターが設けられており、前記バッテリー収納部に前記バッテリーユニットを着脱することで前記電気コネクターも着脱される。
【0019】
本発明の車椅子動力装置の好ましい例によれば、バッテリーユニットの着脱と同時に電気コネクターの着脱も行えるため、バッテリーユニットの着脱操作を簡素化することができる。
【0020】
本発明の車椅子動力装置の好ましい例は、
前記バッテリーユニットが、
外面を構成する外箱部、前記外箱部の中の前部又は後部に設けられる基板室、及び前記基板室に隣接して前記バッテリーを格納するバッテリー室を備える筐体と、
前記バッテリー室に格納される上下2段のバッテリーと、
前記基板室に格納される制御基板と、を備える。
【0021】
本発明の車椅子動力装置の好ましい例によれば、バッテリーと制御基板とを効率よく格納することができる。また、バッテリーの重さを利用して駆動輪を地面又は床面に押し付けることができる。
【0022】
本発明の車椅子動力装置の好ましい例は、
前記バッテリーユニットが、
外面を構成する外箱部、前記外箱部の中の前部又は後部に設けられる基板室、及び前記基板室に隣接して前記バッテリーを格納するバッテリー室を備える筐体と、
前記バッテリー室に格納される上下2段のバッテリーと、
前記基板室に格納される制御基板と、
前記基板室の底部から前記外箱部の外面に向かって設けられる前記電気コネクターと、を備える。
【0023】
本発明の車椅子動力装置の好ましい例によれば、上記の発明の作用効果に加えて、電気コネクターを効率よく配置することができる。
【発明の効果】
【0024】
上述したように、本発明の車椅子動力装置によれば、高齢者や障害者等の力の弱い人であっても容易にバッテリーを交換することができる。また、車椅子に座ったままでバッテリーの交換をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車椅子動力装置が取付けられた車椅子を右から見た側面図である。
【
図3】車椅子動力装置が取付けられた車椅子の平面図である。
【
図4】車椅子動力装置が取付けられた車椅子の正面図である。
【
図5】車椅子動力装置が取付けられた車椅子を左から見た側面図である。
【
図6】連結機構を説明するための平面図、側面図、底面図である。
【
図7】連結機構を説明するための平面図、側面図、底面図である。
【
図10】車椅子動力装置からバッテリーユニットを取外した状態の車椅子の平面図である。
【
図11】車椅子動力装置からバッテリーユニットを取外した状態の車椅子の斜視図である。
【
図12】バッテリーユニットの内部構造を説明する断面図である。
【
図13】バッテリーユニットとバッテリー収納部を説明する図である。
【
図14】バッテリー収納部を前方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の車椅子動力装置1の実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明の車椅子動力装置1は、既存の車椅子100に取付けられて使用するものである。
【0027】
図1ないし
図5に示すように、本実施形態の車椅子動力装置1は、ベースフレーム10と、連結機構20と、ハンドル機構40と、駆動輪51と、モーター54と、前輪上昇機構60(
図11参照)と、バッテリーユニット70と、バッテリー収納部80と、係止具90とを備える。なお、
図1はハンドル機構40のフォーク47周りのカバー55を取外した図であり、その他の図はカバー55を取付けてフォーク47の記載を省略した図である。
【0028】
ベースフレーム10は、車椅子100を構成する車体フレーム101のうち左右どちらか一方の外側かつ車椅子100の後輪103より前に設けられるもので、本実施形態では板状のプレート部材を採用している。このベースフレーム10は、車体フレーム101の一部を抱え込むような金具11とボルトによって、車体フレーム101に取り付けられる。また、ベースフレーム10には、複数のボルト用穴12(
図6,
図7参照)が設けられており、様々な車椅子100の車体フレーム101に対応できるように構成される。
【0029】
また、ベースフレーム10の外側、すなわちベースフレーム10のうち車体フレーム101と反対側の面には、連結機構20を取り付けるためのフレームホルダー13が設けられる。このフレームホルダー13は、本実施形態では支柱クランプといわれる、支柱を略C字状部材の穴に挟み込んで、ボルト等で締めて支柱を固定する部材を用いている。このフレームホルダー13によって、連結機構20を車椅子100の車体フレーム101の左右方向のさらに外側に配置させることができ、駆動輪51と車椅子100のステップ102との干渉を防止することができる。また、フレームホルダー13のボルトを緩めてベースフレーム10と連結機構20とを切り離すことができる。なお、本実施形態の車椅子100用動力装置は、
図6に示すように、連結機構20の連結部21と被連結部24によって、ベースフレーム10側とハンドル機構40側とに切り離して着脱自在とすることもできる。
【0030】
連結機構20は、
図6及び
図7に示すように、ベースフレーム10のフレームホルダー13に取り付けられる連結部21、及び連結部21に着脱可能に連結される被連結部24を備える。なお、
図6は連結部21と被連結部24とを外した状態、
図7は連結部21と被連結部24とを連結させた状態を示す図である。また、
図6及び
図7のそれぞれの(A)は連結機構20の平面図、(B)は車椅子100の左から見た側面図、(C)は底面図である。なお、
図6及び
図7において、ベースフレーム10、フレームホルダー13等の形状が他の図と比較して若干相違するが、基本的な構成は同じである。
【0031】
連結部21は、フレームホルダー13の穴に差し込まれる断面円形の第1フレーム22、及び第1フレーム22の前方に設けられる平面視略コ字状の第1ヘッドジョイント23を備える。被連結部24は、第1ヘッドジョイント23に対応する平面視略L字状の第2ヘッドジョイント25、第2ヘッドジョイント25の前方に設けられる第2フレーム26、及び第2フレーム26の前方に設けられるとともにハンドル機構40が取り付けられるヘッドパイプ27を備える。
【0032】
また、連結機構20は、連結部21と被連結部24とを着脱させるための上側連結部材30、下側連結部材33、及び締結部材37を備える。上側連結部材30は、水平軸31と当接部32とを備える。水平軸31は、連結部21の第1ヘッドジョイント23又は被連結部24の第2ヘッドジョイント25の一方に、水平方向かつ車椅子100の左右方向に渡される棒状部材である。当接部32は、連結部21の第1ヘッドジョイント23又は被連結部24の第2ヘッドジョイント25の他方に設けられ、水平軸31に当接されて連結部21側の重さを支持するものである。本実施形態ではこの当接部32に、側面視で略J字状に曲げられた板材を採用している。
【0033】
下側連結部材33は、プランジャー34と嵌合体36とを備える。プランジャー34は、連結部21の第1ヘッドジョイント23又は被連結部24の第2ヘッドジョイント25の一方の側面の外側から内側に向かって、そのピン35が出し入れ可能に設けられる。嵌合体36は、連結部21の第1ヘッドジョイント23又は被連結部24の第2ヘッドジョイント25の他方の側面に設けられた、プランジャー34のピン35が嵌められる穴である。本実施形態では、プランジャー34として、手でツマミを操作してピン35の出し入れが可能な、インデックスプランジャー34を採用している。
【0034】
締結部材37は、水平軸31と当接部32とが当接され、かつプランジャー34と嵌合体36とが嵌め合わされた状態で、連結部21と被連結部24とを締結するものである。本実施形態の締結部材37は、パッチン錠と呼ばれるものを採用している。また、締結部材37としては、第1ヘッドジョイント23と第2ヘッドジョイント25とが近接又は当接された状態で、両者を互いに固定するものであればよく、上記の例以外に、ねじ、バネ、トグル機構等を用いることができる。
【0035】
図1から
図5に戻り、ハンドル機構40は上記の連結機構20を介してベースフレーム10に取付けられており、ハンドルステム41、ハンドル軸42、及びフォーク47を備える。ハンドルステム41は、被連結部24に設けられたヘッドパイプ27に回動自在に嵌挿されるパイプ状部材である。そして、ハンドルステム41の上端にはハンドル軸42が設けられ、下端にはブラケット48を介してフォーク47が設けられる。ハンドル軸42は、オフセット部43、ハンドルバー44、グリップ45、及びアクセルボタン46を備える。オフセット部43は、ハンドルステム41から車椅子100の内側にハンドルバー44をオフセットさせる部材である。ハンドルバー44は、オフセット部43から上方に延伸された後、後方に向かって伸びるパイプ状の部材である。グリップ45は、ハンドルバー44の端部に設けられるもので、水平方向に円を描くように回動可能である。アクセルボタン46は、グリップ45の上面に設けられるスイッチで、モーター54への給電の入り切りを操作するものである。
【0036】
また、アクセルボタン46とは別に、車椅子100の車体フレーム101のうちベースフレーム10が取付けられた側と反対の側である左側に、車椅子動力装置1の電源の入り切りスイッチ、駆動輪51の回転速度調整スイッチ、及び駆動輪51の正逆転切替スイッチを備えるコントローラー50が設けられる。
【0037】
駆動輪51は、フォーク47に車軸56を介して取付けられるものである。この駆動輪51は、ベルト52等の伝達手段を介して減速機構53に接続され、さらに減速機構53から別のベルトやギヤで、モーター54に接続される。これらの減速機構53とモーター54とは、ハンドルステム41の下端に設けられるブラケット48又はフォーク47に取付けられるステー等(図示せず)によって支持される。また、モーター54への給電やアクセルボタン46用の電気配線ew1の接続のために、電気コネクターec1が被連結部24に設けられる。この電気コネクターec1には、バッテリーユニット70から電気配線ew2によって延伸される電気コネクターec2が差し込まれる(
図2参照)。
【0038】
前輪上昇機構60は、
図8、
図9及び
図11に示すように、車椅子100の前輪104を上昇及び下降させることができるものである。
図8は前輪104を下降させたときの状態、
図9は上昇させたときの状態を示す。本実施形態の前輪上昇機構60は、車椅子100の左右の前輪104のうち、駆動輪51側に設けられ、アウターパイプ61、インナーパイプ62、上下軸63、及びトグル機構64を備える。アウターパイプ61は、車椅子100の車体フレーム101に元々設けられている前輪取付パイプ105を延長するものである。このアウターパイプ61によって、前輪取付パイプ105が上方向に延長され、トグル機構64を手の届きやすい高さに配置することができる。インナーパイプ62は、前輪取付パイプ105とアウターパイプ61の中に嵌挿されるものであり、上下軸63との摺動面を構成する。上下軸63は、インナーパイプ62に上下方向に移動可能に嵌挿されるものである。上下軸63の下端には、車椅子100の前輪104が取付けられ、この上下軸63が前輪104の取付軸となる。また、上下軸63の上端には、トグル機構64であるトグルクランプが設けられ、このトグルクランプによって上下軸63と前輪104を約20mm上昇させて浮かせ、駆動輪51を地面又は床面に強く押し付けることができる。
なお、上述した連結機構20と前輪上昇機構60の詳細は、本願と同じ出願人による特開2021-142197号公報を参照されたい。
【0039】
次に、
図10ないし
図15を参照して、バッテリーユニット70、バッテリー収納部80、及び係止具90を説明する。前提として、バッテリーユニット70はバッテリー収納部80に着脱可能とされている。
図10及び
図11が、車椅子動力装置1からバッテリーユニット70を取外した状態を示す図である。
【0040】
バッテリーユニット70は、
図12及び
図13に示すように筐体71、制御基板78、バッテリー79、及び電気コネクターec2(
図2参照),ec4,ec5を備える。筐体71は、外箱部72、基板室73、及びバッテリー室74を備える。外箱部72は、バッテリーユニット70の外面を構成する箱状の部材であり、その上面に取っ手76、電圧計vm(
図3参照)、及び係止具90の一部を備える。また、前面には配線ホルダーwhが設けられる。基板室73は、外箱部72の中の前部又は後部において、上下方向に内部を略貫通するように設けられる部屋である。本実施形態では、基盤室73を後部に配置して、バッテリー室74を前部に配置し、重さのあるバッテリー79が少しでも前方に配置されるようにしている。ている。基板室73の内部には、バッテリー79への充電電流の制御や、アクセルボタン46及びコントローラー50からの入力によってモーター54への出力を制御する制御基板78が格納される。
【0041】
バッテリー室74は、基板室73に隣接してバッテリー79を格納する部屋である。バッテリー79には、本実施形態では鉛バッテリー79を用いており、この鉛バッテリー79を上下2段にしてバッテリー室74に格納してある。それぞれのバッテリー79の上には中段インナーカバー75a、上段インナーカバー75bが設けられる。バッテリー79に鉛バッテリー79を用いること、及びバッテリーユニット70の位置をなるべく前方に配置することで、鉛バッテリー79の重さで駆動輪51を地面又は床面に強く押し付けることができ、駆動輪51の空転を防止することができる。本実施形態では、バッテリーユニット70の前後方向の中心cが、車椅子100の前輪取付パイプ105より前になるように配置してある。なお、バッテリーユニット70の位置は、駆動輪51に近いほど好ましい。また、バッテリーを鉛バッテリー79とすることで、コストを下げることも可能となる。もっとも、バッテリー79は鉛バッテリー79に限定されず、リチウムイオンバッテリー等の公知のバッテリーを採用することも可能であるが、係る場合、上り坂等で駆動輪51の地面に対するグリップを確保するためにダミーウエイトを用いることが好ましい。これは、例えば体重が約80kgの人が車椅子100に座って5%の上り勾配を登ろうとするとき、バッテリーユニット70の重さが7kg~10kg程度ないと駆動輪51が空転してしまうおそれがあるからである。但し、あまりにもバッテリーユニット70を重くしても、バッテリーユニット70の着脱が困難になるため、上限として12kgまでの重さにすることが好ましい。本実施形態では、2つの鉛バッテリー79の重さが合わせて約7kgであり、筐体71等を含めたバッテリーユニット70全体の重さを約10kgとしている。
【0042】
バッテリーユニット70における電気コネクターec2,ec4,ec5は、本実施形態では3つ設けられる。1つ目は、筐体71の背面に設けられるバッテリー充電用の給電コネクターec5である。ここには、図示しない充電用の電気コネクターが接続される。2つ目は、筐体71の前面に設けられる配線取り出し穴77と配線ホルダーwhから電気配線ew2によって延伸される電気コネクターec2であり、被連結部24に設けられる電気コネクターec1と対をなすものである(
図2参照)。この電気コネクターec1,ec2は、モーター54への給電とアクセルボタン46用である。3つ目は、筐体71の底面に設けられる電気コネクターec4であり、基板室73の底部から外箱部72の外に向かって取付けられる。この電気コネクターec4は、バッテリー収納部80に設けられる電気コネクターec3と対をなすものである。この電気コネクターec3,ec4は、車椅子100の左側に設けられるコントローラー50用である。なお、上記の電気コネクターec2,ec4,ec5のうち2つ又は3つ全ての電気コネクターを筐体71の底面に集約させてもよい。係る場合、バッテリー収納部80から充電用の電気配線やアクセルボタン46とモーター54への電気配線を引き出して接続することになる。
【0043】
バッテリー収納部80は、
図13及び
図14に示すように、バッテリーユニット70を着脱可能に収納するものである。バッテリー収納部80は、載置板81、位置決め板82、及び電気コネクターec3を備える。載置板81は、ベースフレーム10の外側面に設けられてバッテリーユニット70を着脱可能に載置させるものである。位置決め板82は、載置板81から立設されてバッテリーユニット70の水平方向への動きを規制するものである。この位置決め板82の載置板81からの高さであるが、100mm程度あればバッテリーユニット70が転倒することはない。しかし、バッテリーユニット70の着脱時に100mmを超える高さまで持ち上げる必要があり、特に高齢者や障害者にとっては作業自体が困難になるおそれがある。そこで、本実施形態では係止具90を併用することで位置決め板82の高さを低く抑えている。具体的には載置板81からの位置決め板82の高さを10mm~50mmにすることが好ましく、10mm~40mmにすることがより好ましい。これは、位置決め板82の高さが低すぎると車椅子100の移動中にバッテリーユニット70の位置がずれるおそれがあるためであり、高すぎるとバッテリーユニット70の着脱が困難になるからである。
【0044】
また、本実施形態では、載置板81の前後方向に設けられる位置決め板83の高さh1より、ベースフレーム10と反対側に設けられる位置決め板84の高さh2を高くしている。これは、前後方向に設けられる位置決め板83の高さh1と、ベースフレーム10と反対側に設けられる位置決め板84の高さh2を同じにすると、バッテリーユニット70を取外すときに、急に前後方向にも左右方向(実際にはベースフレーム10があるため右方向のみ)にもバッテリーユニット70が移動可能になり、操作者がバランスを崩すおそれがあるからである。このため、バッテリーユニット70を取外すときに、先ずは前後方向のみを自由に動かせるようにして、次に左右方向も自由に動かせるようにしている。また、バッテリーユニット70を取付けるときにも、同時に前後左右方向の位置を決めるより、先に左右方向のみの位置を決めて、次に前後方向の位置を決める方が作業しやすくなる。
【0045】
具体的には、前後方向に設けられる位置決め板83の高さh1が載置板81から10mm~30mmが好ましく、10mm~20mmとすることがより好ましい。なお、位置決め板84の高さh1が最低10mmあれば位置決め板83としての機能は果たせるのだが、高さh1が電気コネクターec3の高さ以下であると、バッテリーユニット70の着脱時に電気コネクターec3,ec4を破損させてしまうおそれがある。よって、電気コネクターec3の高さより1mm以上、位置決め板83の高さh1を高くしている。
【0046】
また、ベースフレーム10と反対側に設けられる位置決め板84の高さh2を、載置板81から25mm~50mmとすることが好ましく、30~40mmとすることがより好ましい。これは、位置決め板84の高さh2と位置決め板83の高さh1との差が少ないと、バッテリーユニット70を取外すときに前後方向が自由になったあとすぐに左右方向も自由になり、実質的に前後左右方向が同時に自由になってしまうからである。同様に、バッテリーユニット70を取付けるときにも、実質的に前後左右方向を同時に位置決めしなくてはならず、作業がやりづらくなる。これらのことから、位置決め板84の高さh2と位置決め板83の高さh1との差を15mm以上つけることが好ましい。
【0047】
また、ベースフレーム10と反対側の位置決め板84が、前後方向に設けられる位置決め板83と同じ高さh3までは垂直に設けられ、それより高い部分は外側方向に開くように傾斜されている(
図14矢印a)。これにより、バッテリーユニット70の着脱がより容易となる。なお、ベースフレーム10側にも位置決め板85が設けられているが、この位置決め板85も、バッテリーユニット70から見て外側(ベースフレーム10側)に傾斜させることができるし、ベースフレーム10同様に垂直にすることもできる。本実施形態では、この位置決め板85の高さを、前後方向の位置決め板83の高さh1と同じにしている。なお、これらの位置決め板84,85の傾斜具合は、図で分かりやすいようにある程度強調してある。
【0048】
電気コネクターec3は、載置板81の上面に設けられ、バッテリーユニット70の底面に設けられる電気コネクターec4と対をなすものである。この電気コネクターec3の載置板81からの高さは、既に述べたように前後方向に設けられる位置決め板83より低くすることが好ましい。このようにすることで、バッテリーユニット70の電気コネクターec4と載置板81の電気コネクターec3とが外れるまではバッテリーユニット70が水平方向に動かず、電気コネクターec3,ec4の破損を防止することができる。
【0049】
次に、
図13及び
図14に加え
図15(A)(B)を参照して係止具90を説明する。係止具90は、ベースフレーム10と、載置板81に載置させたバッテリーユニット70の本体上面とを係止させるものであり、本実施形態ではスライドラッチといわれるものを採用している。これは、本体側91に差し込まれたボルト92がスライド可能となっており、受け側94に差し込まれることで受け側94を係止するものである。そして、ボルト92がそのスライドした動作端で一時的に固定される。ボルト92を元の位置に戻すには、本体側91の上面のボタン93を押せば、内蔵されたバネによってボルト92が元の位置に戻り、受け側94との係止が解除される。本実施形態では、バッテリーユニット70の上面に本体側91を設け、ベースフレーム10側に受け側94を設けている。
【0050】
また、スライドラッチのボルト92がベースフレーム10の広い面と直交する方向にスライドするように取付けてある。このため、スライドラッチによってバッテリーユニット70とベースフレーム10とを係止させても、上下方向と前後方向は固定されるが、左右方向の動きは妨げることがない。これにより、位置決め板85がベースフレーム10に沿って立設される、又は載置板81とベースフレーム10とが離れている等の事情により、バッテリーユニット70とベースフレーム10との間に隙間s(
図14参照)ができる構成になっていても、特に問題とならない。もっとも、当該隙間sが生じないような場合は、例えばパッチン錠といわれるような他の係止具を用いることもできる。
【0051】
以上、説明したように、本実施形態の車椅子動力装置1によれば、バッテリーユニット70がベースフレーム10の外側に装着されており、位置決め板82の高さを低くしているため、例えば操作者が車椅子100に座ったまま手を伸ばしてバッテリーユニット70を着脱することができる。また、前後方向の位置決め板83の高さh1とベースフレーム10と反対側の位置決め板84の高さh2とを変えているため、バッテリーユニット70の脱着時に前後左右方向が同時に自由になることがなく、また同時に位置決めする必要もなくなるため、バッテリーユニット70の脱着がより容易となる。さらにベースフレーム10と反対側の位置決め板84を外側に傾斜させているため、バッテリーユニット70の装着時に位置決め板84が案内の役割を果たし、バッテリーユニット70の着脱が容易である。
【0052】
また、電気コネクターの少なくとも一部がバッテリーユニット70の底面と載置板81の上面に対になって設けられている。これにより、電気コネクターec3,ec4の接続の手間を減らすことができる。また、載置板81の上面の電気コネクターec3の高さは、前後方向設けられる位置決め板83の高さh1より低く構成されており、バッテリーユニット70の着脱時にバッテリーユニット70が水平方向に動いて電気コネクターec3,ec4を破損させることもない。
【0053】
また、係止具90によって、位置決め板82の高さが低くてもバッテリーユニット70が転倒することがない。さらに、係止具90にスライドラッチを用いて、そのボルト92がベースフレーム10の広い面と直交しているため、バッテリーユニット70を左右方向には拘束せず、取付の自由度が向上する。
【0054】
また、バッテリー79に鉛バッテリー79を採用することで、その重さによって駆動輪51を地面又は床面に押し付けており、コストダウンとグリップ力の向上を両立させている。
【0055】
なお、上述した車椅子動力装置は本発明の例示であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲においてその構成を適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0056】
1・・車椅子動力装置、
10・・ベースフレーム、11・・金具、12・・ボルト用穴、13・・フレームホルダー、
20・・連結機構、21・・連結部、22・・第1フレーム、23・・第1ヘッドジョイント、24・・被連結部、25・・第2ヘッドジョイント、26・・第2フレーム、27・・ヘッドパイプ、
30・・上側連結部材、31・・水平軸、32・・当接部、33・・下側連結部材、34・・プランジャー、35・・ピン、36・・嵌合体、37・・締結部材、
40・・ハンドル機構、41・・ハンドルステム、42・・ハンドル軸、43・・オフセット部、44・・ハンドルバー、45・・グリップ、46・・アクセルボタン、47・・フォーク、
50・・コントローラー、51・・駆動輪、52・・ベルト、53・・減速機構、54・・モーター、55・・カバー、56・・車軸、
60・・前輪上昇機構、61・・アウターパイプ、62・・インナーパイプ、63・・上下軸、64・・トグル機構、
70・・バッテリーユニット、71・・筐体、72・・外箱部、73・・基板室、74・・バッテリー室、75a・・中段インナーカバー、75b・・上段インナーカバー、76・・取っ手、77・・配線取り出し穴、78・・制御基板、79・・バッテリー、
80・・バッテリー収納部、81・・載置板、82・・位置決め板、83・・位置決め板(前後方向)、84・・位置決め板(ベースフレームと反対側)、85・・位置決め板(ベースフレーム側)、
90・・係止具、91・・本体側、92・・ボルト、93・・ボタン、94・・受け側、
ec1,ec2,ec3,ec4,ec5・・電気コネクター、
wh・・配線ホルダー、ew1,ew2・・電気配線、vm・・電圧計、
h1,h2,h3・・高さ、s・・隙間、
100・・車椅子、101・・車体フレーム、102・・ステップ、103・・後輪、104・・前輪、105・・前輪取付パイプ、