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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110294
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】樹脂成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/475 20190101AFI20240807BHJP
   B29C 48/05 20190101ALI20240807BHJP
   B29C 48/21 20190101ALI20240807BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
B29C48/475
B29C48/05
B29C48/21
G02B6/02 391
G02B6/02 366
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014815
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100143236
【弁理士】
【氏名又は名称】間中 恵子
(72)【発明者】
【氏名】永谷 勇人
【テーマコード(参考)】
2H250
4F207
【Fターム(参考)】
2H250AA30
2H250AB34
2H250BA02
2H250BA34
2H250BB02
2H250BB35
4F207AA16
4F207AG03
4F207AG14
4F207AH77
4F207AR02
4F207AR12
4F207KA01
4F207KA17
4F207KK37
4F207KK38
4F207KL94
4F207KL99
(57)【要約】
【課題】気泡の発生を低減することができる樹脂成形体の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の樹脂成形体の製造方法は、(A)樹脂組成物1を収容する収容部102を有し、かつ収容部102にガスを導入することによって樹脂組成物1を収容部102から前記ガスによって押し出す押出装置101を用いて、収容部102に収容された樹脂組成物1を押出装置101から押し出すことと、(B)押出装置101から押し出された樹脂組成物1を、ファイバー状に成形することと、を含む。押出装置101から樹脂組成物1を押し出す前記ガスの押出圧力は、0.02MPa以上かつ0.6MPa以下である。収容部102において、樹脂組成物1の表面上に、樹脂組成物1とガスとの接触面積を低減するカバー部材114が配置される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)樹脂組成物を収容する収容部を有し、かつ前記収容部にガスを導入することによって前記樹脂組成物を前記収容部から前記ガスによって押し出す押出装置を用いて、前記収容部に収容された前記樹脂組成物を前記押出装置から押し出すことと、
(B)前記押出装置から押し出された前記樹脂組成物を、ファイバー状に成形することと、
を含み、
前記押出装置から前記樹脂組成物を押し出す前記ガスの押出圧力が、0.02MPa以上かつ0.6MPa以下であり、
前記収容部において、前記樹脂組成物の表面上に、前記樹脂組成物と前記ガスとの接触面積を低減するカバー部材が配置される、
樹脂成形体の製造方法。
【請求項2】
(C)前記押出装置から押し出された前記樹脂組成物をギヤポンプに通過させること、をさらに含み、
前記ギヤポンプを通過した前記樹脂組成物を、前記(B)においてファイバー状に成形する、
請求項1に記載の樹脂成形体の製造方法。
【請求項3】
前記樹脂組成物と前記ガスとの前記接触面積は、10mm2以上800mm2以下である、
請求項1に記載の樹脂成形体の製造方法。
【請求項4】
前記カバー部材は、前記収容部における前記樹脂組成物の前記表面の面積の70%以上98%以下をカバーする、
請求項1に記載の樹脂成形体の製造方法。
【請求項5】
前記カバー部材は、球状または半球状である、
請求項1に記載の樹脂成形体の製造方法。
【請求項6】
前記ガスの前記押出圧力が、0.25MPa未満である、
請求項1に記載の樹脂成形体の製造方法。
【請求項7】
前記樹脂組成物は光学用樹脂材料である、
請求項1に記載の樹脂成形体の製造方法。
【請求項8】
前記光学用樹脂材料は含フッ素重合体を含む、
請求項7に記載の樹脂成形体の製造方法。
【請求項9】
前記樹脂成形体が、プラスチック光ファイバーを構成する、
請求項8に記載の樹脂成形体の製造方法。
【請求項10】
前記樹脂成形体が、前記プラスチック光ファイバーのコア及びクラッドからなる群より選択される少なくとも1つである、
請求項9に記載の樹脂成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック光ファイバー(以下、「POF」と記載する。)などのファイバー状の樹脂成形体を製造する方法の一例として、溶融紡糸法が知られている。溶融紡糸法では、例えば、加熱溶融された樹脂材料を押出装置から押し出し、押し出された樹脂材料を所定の形状を有するノズルに通過させる等することによって、ファイバー状に成形する。
【0003】
樹脂材料の押出装置として、一般に、スクリューを備えた押出装置が用いられる。しかし、スクリューを備えた押出装置では、樹脂材料を押し出すときに、スクリューを形成している材料の成分、例えば金属成分が、異物として樹脂材料に混入する。このような異物の混入は、その樹脂材料から形成された樹脂成形体の品質を低下させる。特に、樹脂材料が光学用途に用いられる場合、そのような異物が製品の品質に及ぼす影響は大きい。一方、スクリューを用いずに、押出装置にガスを導入し、当該ガスにより樹脂材料を押圧して押し出す方法も提案されている。例えば特許文献1には、押出装置にガスを導入し、当該ガスにより樹脂組成物を押圧して、樹脂組成物を押出装置から押し出すことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6527986号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガスによって樹脂材料を押し出す場合、押し出された樹脂材料を成形することで、成形体に気泡が発生する場合がある。
【0006】
そこで、本発明は、気泡の発生を低減することができる樹脂成形体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の樹脂成形体の製造方法は、
(A)樹脂組成物を収容する収容部を有し、かつ前記収容部にガスを導入することによって前記樹脂組成物を前記収容部から前記ガスによって押し出す押出装置を用いて、前記収容部に収容された前記樹脂組成物を前記押出装置から押し出すことと、
(B)前記押出装置から押し出された前記樹脂組成物を、ファイバー状に成形することと、
を含み、
前記押出装置から前記樹脂組成物を押し出す前記ガスの押出圧力が、0.02MPa以上かつ0.6MPa以下であり、
前記収容部において、前記樹脂組成物の表面上に、前記樹脂組成物と前記ガスとの接触面積を低減するカバー部材が配置される。
【0008】
また、本発明の樹脂成形体の製造方法において、上述される(B)は、前記押出装置から押し出された前記樹脂組成物を、成形体とすることであってもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法によれば、気泡の発生が低減された樹脂成形体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施形態による樹脂成形体の製造方法を実施しうる装置の一例である、樹脂成形体の製造装置の概略断面図である。
図2図2は、樹脂組成物とガスとの接触面積を低減するカバー部材の別の例を示す、樹脂成形体の製造装置の概略断面図である。
図3図3は、本発明の実施形態による樹脂成形体の製造方法を利用してPOFを製造できるPOFの製造装置の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の樹脂成形体の製造方法の実施形態について説明する。
【0012】
本実施形態の樹脂成形体の製造方法は、
(A)樹脂組成物を収容する収容部を有し、かつ収容部にガスを導入することによって樹脂組成物を収容部からガスによって押し出す押出装置を用いて、収容部に収容された樹脂組成物を前記押出装置から押し出すことと、
(B)押出装置から押し出された樹脂組成物を、ファイバー状に成形することと、
を含む。押出装置から樹脂組成物を押し出すガスの押出圧力は、0.02MPa以上かつ0.6MPa以下である。収容部において、樹脂組成物の表面上に、樹脂組成物とガスとの接触面積を低減するカバー部材が配置される。
【0013】
本実施形態の製造方法は、押出装置におけるガスの押出圧力(以下、「ガス押出圧力」と記載する。)を0.02MPa以上かつ0.6MPa以下とすることにより、当該樹脂組成物によって形成された樹脂成形体における気泡の発生を抑制することができる。したがって、本実施形態の製造方法によれば、気泡の発生が低減された樹脂成形体を製造することができる。
【0014】
樹脂成形体における気泡の発生をさらに抑制するために、押出装置におけるガス押出圧力は、0.5MPa以下であることが望ましく、0.2MPa以下であることがより望ましい。
【0015】
さらに、押出装置におけるガス押出圧力は、樹脂成形体における気泡の発生を抑制するために、以下のような範囲であってもよい。
【0016】
押出装置におけるガス押出圧力の例:
0.02MPa以上0.6MPa未満、02MPa以上0.55MPa以下、0.02MPa以上0.5MPa以下、0.02MPa以上0.45MPa以下、0.1MPa以上0.5MPa以下、0.1MPa以上0.45MPa以下、0.15MPa以上0.5MPa以下、0.15MPa以上0.55MPa以下、0.2MPa以上0.5MPa以下、0.2MPa以上0.3MPa以下
【0017】
本実施形態の製造方法は、押出装置から押し出された樹脂組成物をギヤポンプ(一般的に、歯車ポンプということもある。)に通過させることをさらに含むことが望ましい。この場合、ギヤポンプを通過した樹脂組成物が、上記(B)においてファイバー状に成形される。
【0018】
ギヤポンプは、押出装置から押し出された樹脂組成物の流量を調整する。したがって、本実施形態の製造方法において押出装置から押し出された樹脂組成物をギヤポンプに通過させることによって、樹脂組成物を安定的に供給することができる。すなわち、本実施形態の製造方法において、ガスによって樹脂組成物を押し出す押出装置と、ギヤポンプとを組み合わせることによって、ガス押出圧力を相対的に低い範囲(例えば、ギヤポンプの出口側の安定性と樹脂成形体の気泡の発生防止との両方を考慮して、0.1MPa以上0.6MPa以下)に設定しても、樹脂組成物を十分に安定的に供給することができる。
【0019】
図1は、本実施形態による樹脂成形体の製造方法を実施しうる装置の一例である、樹脂成形体の製造装置100の概略断面図である。なお、図1には、ガスによって樹脂組成物を押し出す押出装置と、ギヤポンプとが組み合わされた製造装置の例が示されている。
【0020】
図1に示された製造装置100は、押出装置101及びギヤポンプ110を備える。
【0021】
押出装置101は、樹脂組成物1を収容する収容部102を有し、かつ収容部102にガスを導入することによって樹脂組成物1を収容部102からガスによって押し出す。収容部102は、上方の第1開口部103と下方の第2開口部104とにおいてその内部空間が外部と連通する筒状の部材である。収容部102は、例えば、第1筒状部105、第2筒状部106、及び第1筒状部105と第2筒状部106とを接続する筒状の縮径部107を有する。第1筒状部105、第2筒状部106、及び縮径部107のそれぞれの形状は、例えば、円筒状である。第1筒状部105の内径は、縮径部107の内径よりも大きい。縮径部107の内径は、第2筒状部106の内径よりも大きい。縮径部107は、第1筒状部105から第2筒状部106に向かって縮径する円錐台の形状を有していてもよい。収容部102において、第1開口部103が第1筒状部105の端部に形成され、第2開口部104が第2筒状部106の端部に形成されている。収容部102の第2開口部104は、後述するギヤポンプ110の入口111に接続されている。
【0022】
押出装置101は、蓋108をさらに備えている。収容部102が樹脂組成物1を収容している状態で、収容部102の第1開口部103は、蓋108によって閉じられている。蓋108には、配管109が接続されている。配管109を通じて、収容部102にガスを送ることができる。収容部102に送られるガスは、窒素ガスなどの不活性ガスであることが好ましい。配管109は、例えば、高圧ガスボンベに接続され、減圧弁を操作する事でガス圧を調整することができる。
【0023】
押出装置101は、収容部102に収容された樹脂組成物1を加熱するヒーター(図示せず)をさらに備えていてもよい。ヒーターの種類、設置場所などは、特に限定されない。一例として、ヒーターは、収容部102の縮径部107付近に設置されていてもよい。
【0024】
収容部102の第1筒状部105には、例えば、第1開口部103を通じて、ロッド状の樹脂組成物(言い換えると、プリフォーム)1が挿入される。ロッド状の樹脂組成物1は、例えば、加熱されることによって軟化して流動可能となる。軟化した樹脂組成物1は、例えば、第1開口部103と第2開口部104との間の圧力差を利用して、収容部102から押し出される。具体的には、第1開口部103から収容部102内にガスを導入して樹脂組成物1の上面を押圧することにより、軟化した樹脂組成物1が縮径部107及び第2筒状部106に移動し、第2開口部104から押し出される。第2開口部104から押し出された樹脂組成物1は、ギヤポンプ110に送られる。
【0025】
ギヤポンプ110は、ハウジング111及び一対以上のギヤ(例えば、一対のギヤ112)を有する。ハウジング111の内部には、樹脂組成物1が通過する流路113が形成されている。一対のギヤ112は、ハウジング111に収容されており、詳細には、ハウジング111内の流路113に配置されている。言い換えると、ハウジング111内に、一対のギヤ112が配置される空間が設けられている。
【0026】
一対のギヤ112によって流量が調整された樹脂組成物1は、流路113を通過し、ギヤポンプ110から送り出される。ギヤポンプ110を通過した樹脂組成物1は、例えば、鉛直方向下方に移動し、ファイバー状に成形される。
【0027】
押出装置101の収容部102において、収容部102内の樹脂組成物1の表面上に、樹脂組成物1とガスとの接触面積を低減するカバー部材114が配置される。カバー部材114によって樹脂組成物1とガスとの接触面積が低減されることにより、当該樹脂組成物1によって形成された樹脂成形体における気泡の発生をさらに抑制することができる。
【0028】
カバー部材114の形状は、特には限定されない。樹脂成形体における気泡の発生をさらに抑制するために、カバー部材は、例えば、樹脂組成物1とガスとの接触面積が10mm2以上800mm2以下である。さらに、樹脂組成物1とガスとの接触面積は、以下のように例示される。
【0029】
樹脂組成物1とガスとの接触面積の例:
10mm2以上700mm2以下、100mm2以上700mm2以下、200mm2以上700mm2以下、300mm2以上700mm2以下、400mm2以上700mm2以下、500mm2以上750mm2以下、10mm2以上1000mm2以下
【0030】
また、樹脂成形体における気泡の発生をさらに抑制するために、収容部102内の樹脂組成物1の表面の面積(つまり、ガスと接触できる面積)の70%以上98%以下をカバーすることが好ましく、75%以上95%以下をカバーすることがより好ましく、80%以上90%以下をカバーすることがさらに好ましい。樹脂組成物1の気泡を抑制する観点から、カバー部材は、高い面積割合で樹脂組成物1の表面をカバーすることが望ましい。さらに、カバーが収容部102の内壁に引っかかる観点を考慮すると、低い範囲をカバーすることが望ましい。
【0031】
例えば、図1に示すような円柱状のカバー部材114が樹脂組成物1の表面上に配置されてもよいし、図2に示すような球状のカバー部材115が樹脂組成物1の表面上に配置されていてもよい。溶融した状態の樹脂組成物1上で常に安定的に配置されるために、カバー部材は、カバー部材115のような球状、または半球状であることが望ましい。半球状とは、半球の形状を意味する。
【0032】
カバー部材は、沈降することなく、溶融した状態の樹脂組成物1の表面に位置し続けられるように、比重が適切な範囲に設計されることが望ましい。例えば、カバー部材は、中空状であってもよい。カバー部材の材料は、特には限定されないが、比重、溶融した樹脂組成物1への成分の溶出等を考慮して、適切な材料が選択される。
【0033】
本実施形態の樹脂成形体の製造方法において、樹脂組成物は光学用樹脂材料であってもよい。この場合、本実施形態の樹脂成形体の製造方法によれば、気泡の発生が抑制された、高品質な光学部品(例えば、POF)を製造することができる。
【0034】
本実施形態の樹脂成形体の製造方法において製造される樹脂成形体は、POFを構成してもよい。POFは、例えば、コアと、コアの外周に配置されたクラッドとを含む。したがって、本実施形態の樹脂成形体の製造方法において製造される樹脂成形体は、例えば、POFのコア及びクラッドからなる群より選択される少なくとも1つであってもよい。
【0035】
本実施形態による樹脂成形体の製造方法は、POFの製造方法であってもよい。
【0036】
図3は、本実施形態による樹脂成形体の製造方法を利用してPOFを製造できるPOFの製造装置の一例を示す概略断面図である。図3に示された製造装置200は、本実施形態の樹脂成形体の製造方法を利用してPOFのコア及びクラッドを製造することができる装置である。製造装置200には、コア形成用の押出装置及びクラッド形成用の押出装置として、それぞれ、図1に示されている押出装置101と同様の構成を有する装置が適用されている。また、製造装置200には、図1に示された製造装置100と同様に、コア形成用の押出装置から押し出された樹脂組成物が流入するギヤポンプ、及び、クラッド形成用の押出装置から押し出された樹脂組成物が流入するギヤポンプも設けられている。なお、図3において、図1に示された構成と同様の機能を有する構成については、同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。なお、図3に示された製造装置200においては、コア形成用の押出装置及びクラッド形成用の押出装置が共に図1に示されている押出装置101と同様の構成を有しているが、製造装置200は、図1に示されている押出装置101と同様の構成を有する押出装置を少なくとも1つ備えていればよい。すなわち、製造装置200において、コア形成用の押出装置及びクラッド形成用の押出装置からなる群より選択される少なくとも1つが、図1に示されている押出装置101と同様の構成を有していればよい。カバー部材としては、図1に示されたカバー部材114に限定されず、図2に示されたカバー部材115が用いられてもよい。
【0037】
図3に示された製造装置200は、コア形成用の押出装置101a、クラッド形成用の押出装置101b、及び被覆層形成用の押出装置201を備える。製造装置200は、コア形成用の押出装置101aから押し出された樹脂組成物が流入するギヤポンプ110a、及び、クラッド形成用の押出装置101bから押し出された樹脂組成物が流入するギヤポンプ110bをさらに備えている。
【0038】
製造装置200は、第1室120及び第2室130をさらに備えている。第1室120及び第2室130は、鉛直方向下方にこの順で並んでいる。
【0039】
コア形成用の押出装置101aは、図1に示された押出装置101と同様の構成を有する。ここで、樹脂組成物1aは、コア形成用材料である。押出装置101aは、図1に示された押出装置101と同様の構成を有するので、樹脂組成物1aによって形成される樹脂成形体である、コアにおける気泡の発生を抑制することができる。さらに、コア形成用の押出装置101aから押し出された樹脂組成物1aが流入するギヤポンプ110aも設けられているので、ガス押出圧力を低い範囲に設定しても、樹脂組成物1aを十分に安定的に供給することができる。なお、ギヤポンプ110aは、図1に示されたギヤポンプ110と同じ構成を有する。
【0040】
押出装置101aによって押し出された樹脂組成物1aは、ギヤポンプ110aを通過し、その後鉛直方向下方に移動し、コア2を形成するようにファイバー状に成形される。ギヤポンプ110aから送り出され、コア2を形成するようにファイバー状に成形された樹脂組成物1aは、第1室120及び第2室130のそれぞれに、この順で供給される。
【0041】
クラッド形成用の押出装置101bは、図1に示された押出装置101と同様の構成を有する。ここで、樹脂組成物1bは、クラッド形成用材料である。押出装置101bは、図1に示された押出装置101と同様の構成を有するので、樹脂組成物1bによって形成される樹脂成形体である、クラッドにおける気泡の発生を抑制することができる。さらに、クラッド形成用の押出装置101bから押し出された樹脂組成物1bが流入するギヤポンプ110bも設けられているので、ガス押出圧力を低い範囲に設定しても、樹脂組成物1bを十分に安定的に供給することができる。なお、ギヤポンプ110bは、図1に示されたギヤポンプ110と同じ構成を有する。
【0042】
押出装置101bによって押し出された樹脂組成物1bは、ギヤポンプ110bを通過し、第1室120に供給される。第1室120内において、樹脂組成物1aによって形成されるコア2を樹脂組成物1bで被覆することによって、コア2の外周を覆うクラッド3を形成することができる。コア2と、コア2の外周を被覆するクラッド3とで形成された積層体は、第1室120から第2室130に移動する。
【0043】
被覆層形成用の押出装置201は、例えば、被覆層材料1cを収容する収容部202、収容部202内に配置されたスクリュー203、及び、収容部202に接続されたホッパー204を備えている。押出装置201では、例えばペレット状の被覆層材料1cが、ホッパー204を通じて、収容部202に供給される。収容部202に供給された被覆層材料1cは、例えば、加熱されながらスクリュー203によって混錬されることによって、軟化して流動可能となる。軟化した被覆層材料1cは、スクリュー203によって収容部202から押し出される。
【0044】
押出装置201から押し出された被覆層材料1cは、ギヤポンプ205に送られる。ギヤポンプ205は、押出装置201から押し出された被覆層材料1cの流量を調整する。
【0045】
ギヤポンプ205から送り出された被覆層材料1cは、第2室130に供給される。第2室130内において、コア2及びクラッド3で形成された積層体の表面を被覆層材料1cで被覆することによって、クラッド3の外周を覆う被覆層4を形成することができる。
【0046】
コア2、クラッド3、及び被覆層4が同心円状に積層された積層体5は、第2室130から、第2室130の鉛直方向下方に配置された拡散管140に移動する。拡散管140には、例えば、この積層体を加熱するためのヒーター(図示せず)が配置されていてもよい。拡散管140において、例えば、内部を通過する積層体5の温度及び粘度が適切に調整される。すなわち、積層体5は、例えば拡散管140において、所定の温度に加熱されながら引き落とされる。拡散管140は、拡散管140の内部を通過する積層体5に含まれる屈折率調整剤等のドーパントを、積層体5において拡散させることができる。
【0047】
拡散管140は、ノズル150の内部流路に連結している。すなわち、拡散管140の下方の開口部は、ノズル150の流入口と連結しており、拡散管140を通過した積層体5が、ノズル150の流入口を介して内部流路に流入する。積層体5は、内部流路を通過して縮径されて、ノズル150の吐出口からファイバー状に吐出される。
【0048】
第2室130と拡散管140の位置関係は、入れ替わっていてもよい。すなわち。第1室120の下に拡散管140が配置され、その下方に第2室130が配置され、第2室のさらに下方にノズル150が設置される装置構成であってもよい。
【0049】
ノズル150の吐出口からファイバー状に吐出された積層体5は、例えば、冷却管160の内部空間161内に流入し、内部空間161内を通過しながら冷却されて、開口部(すなわち、冷却管160の排出口)から冷却管160の外へ放出される。
【0050】
冷却管160から放出された積層体5は、紡糸される。積層体5は、例えば、ニップロール170が有する2つのロール171及び172の間を通過し、さらにガイドロール173~175を経由して、POF6として巻き取りロール176に巻き取られる。巻き取りロール176の近傍、例えばガイドロール175と巻き取りロール176との間、においてPOF6の外径を測定する変位計180をさらに備えていてもよい。
【0051】
なお、図3に示された装置200は、クラッドが1層設けられたPOFを製造する装置であるが、クラッド層が複数設けられたPOFを製造する場合は、例えば、クラッド層形成用の押出装置がさらに設けられた構成を有する装置を用いればよい。
【0052】
コア形成用材料及びクラッド形成用材料として用いられる樹脂組成物には、例えば含フッ素重合体が用いられる。含フッ素重合体は、例えば含フッ素脂肪族環構造を有していてもよい。含フッ素脂肪族環構造は、含フッ素重合体の主鎖に含まれていてもよく、含フッ素重合体の側鎖に含まれていてもよい。含フッ素重合体は、例えば、下記構造式(1)で表される構成単位(A)を有する。
【化1】
【0053】
式(1)中、Rff 1~Rff 4は各々独立に、フッ素原子、炭素数1~7のパーフルオロアルキル基、又は炭素数1~7のパーフルオロアルキルエーテル基を表す。Rff 1及びRff 2は、連結して環を形成してもよい。「パーフルオロ」は、炭素原子に結合している全ての水素原子がフッ素原子に置換されていることを意味する。式(1)において、パーフルオロアルキル基の炭素数は、1~5が好ましく、1~3がより好ましく、1であることがさらに好ましい。パーフルオロアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。パーフルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基などが挙げられる。
【0054】
式(1)において、パーフルオロアルキルエーテル基の炭素数は、1~5が好ましく、1~3がより好ましい。パーフルオロアルキルエーテル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。パーフルオロアルキルエーテル基としては、パーフルオロメトキシメチル基などが挙げられる。
【0055】
ff 1及びRff 2が連結して環を形成している場合、当該環は、5員環であってもよく、6員環であってもよい。この環としては、パーフルオロテトラヒドロフラン環、パーフルオロシクロペンタン環、パーフルオロシクロヘキサン環などが挙げられる。
【0056】
構成単位(A)の具体例としては、例えば、下記式(A1)~(A8)で表される構成単位が挙げられる。
【化2】
【0057】
構成単位(A)は、上記式(A1)~(A8)で表される構成単位のうち、構成単位(A2)、すなわち下記式(2)で表される構成単位であってもよい。
【化3】
【0058】
含フッ素重合体は、構成単位(A)を1種又は2種以上含んでいてもよい。含フッ素重合体において、構成単位(A)の含有量は、全構成単位の合計に対し、20モル%以上であってもよく、40モル%以上であってもよい。構成単位(A)が20モル%以上含まれることにより、含フッ素重合体は、より高い耐熱性を有する傾向がある。構成単位(A)が40モル%以上含まれる場合、含フッ素重合体は、高い耐熱性に加えて、より高い透明性及び高い機械的強度も有する傾向がある。含フッ素重合体において、構成単位(A)の含有量は、全構成単位の合計に対し、95モル%以下であってもよいし、70モル%以下であってもよい。
【0059】
構成単位(A)は、例えば、下記式(3)で表される化合物に由来する。式(3)において、Rff 1~Rff 4は、式(1)と同じである。なお、式(3)で表される化合物は、例えば特表2007-504125号公報に開示された製造方法をはじめ、すでに公知である製造方法によって得ることができる。
【化4】
【0060】
上記式(3)で表される化合物の具体例としては、例えば、下記式(M1)~(M8)で表される化合物が挙げられる。
【化5】
【0061】
含フッ素重合体は、構成単位(A)以外に、他の構成単位をさらに含んでいてもよい。
【0062】
含フッ素重合体は、下記式(4)で表される構成単位(B)を含有する含フッ素重合体であってもよい。
【化6】
【0063】
コア形成用材料及びクラッド形成用材料は、上記の含フッ素重合体の他に、添加物をさらに含んでいてもよい。コア形成用材料は、添加物として、例えば屈折率調整剤を含む。
【実施例0064】
[樹脂成形体の作製]
(実施例1)
樹脂成形体として、POFを作製した。本実施例で作製されたPOFは、コアと、コアの外周に配置されたクラッドと、クラッドの外周に配置された被覆層とで構成されたものであった。すなわち、コア、クラッド層、及び被覆層で構成されたPOFが作製された。
【0065】
コア形成用材料として、パーフルオロ-4-メチル-2-メチレン-1,3-ジオキソラン(上記式(M2)の化合物、「PFMMD」)の重合体を準備した。
【0066】
クラッド形成用材料として、テフロン(登録商標)AF1600(三井・ケマーズフロロプロダクツ株式会社製)とフォンブリン(YRグレード、SOLVAY社製)との混合物とを用いた。混合物において、テフロン(登録商標)AF1600は70質量%であり、フォンブリンは30質量%であった。
【0067】
被覆層材料として、Xylex7200(Sabic社製)を用いた。
【0068】
上記のコア形成用材料、クラッド形成用材料、及び被覆層材料を用い、溶融紡糸法によってPOFを作製した。コア、クラッド、及び被覆層からなるPOFの作製には、図3に示された装置200と同様の装置が用いられた。押出装置101a及び101bにおける収容部102は、ハステロイによって形成された円筒状容器であり、当該容器のサイズは内径72.3mm、長さ180mmであった。押出装置101a及び101bにおける収容部102に送られるガスとして、空気が用いられた。
【0069】
本実施例では、上述のとおり、図3に示された装置200と同様の装置が用いられたが、カバー部材は、クラッド形成用の押出装置101bのみに用いられ、コア形成用の押出装置101aには用いられなかった。また、本実施例では、カバー部材として、クラッド形成用の押出装置101bにおいて、クラッド形成用材料の表面上に、図2に示すような球状のカバー部材115が配置された。本実施例で用いられた球状のカバー部材115は、中空の球体であり、直径は66mmで、厚みは1.6mmであった。本実施例で用いられた球状のカバー部材115は、Niを主とした合金C276相当の材質によって形成されていた。実施例1では、クラッド形成用材料とガスとの接触面積が684.3mm2であり、カバー部材115は収容部102におけるクラッド形成用材料の表面の面積の83.3%をカバーしていた。
【0070】
コア形成用材料を250℃で溶融し、押出圧力が0.5MPaとなるように収容部102に空気を供給して、コア形成用材料を押出装置101aから押し出した。押し出されたコア形成用材料はギヤポンプ110aを通過し、その後鉛直方向下方に移動し、コアを形成するようにファイバー状に成形された。なお、コア形成用材料の吐出量は、0.1cc/minであった。
【0071】
クラッド形成用材料を270℃で溶融し、押出圧力が0.5MPaとなるように収容部102内に空気を供給して、クラッド形成用材料を押出装置101bから押し出した。押し出されたクラッド形成用材料はギヤポンプ110bを通過し、ファイバー状に成形されたコアの外周を被覆した。これにより、コアの外周を覆うクラッドが形成された。なお、クラッド形成用材料の吐出量は、0.06cc/minであった。
【0072】
被覆層材料を250℃に加熱して流動可能に軟化させ、スクリュー203によって収容部202から押し出した。押し出された被覆層材料はギヤポンプ205を通過し、コア及びクラッドで形成された積層体の表面を被覆した。これにより、クラッドの外周を覆う被覆層が形成された。なお、被覆層材料の吐出量は、3.2cc/minであった。
【0073】
コア、クラッド、及び被覆層が同心円状に積層された積層体は、その後、260℃に設定された拡散管140を通過してノズル150に流入し、ノズル150の吐出口からファイバー状に吐出されて紡糸され、POFが得られた。得られたPOFについて、コア径は40μm、クラッド径は50μm、被覆層径は230μmであった。
【0074】
(実施例2)
クラッド形成用材料の押出圧力を0.5MPaから0.2MPaに変更した点以外は、実施例1と同様の方法でPOFを作製した。得られたPOFについて、コア径は40μm、クラッド径は50μm、被覆層径は230μmであった。
【0075】
(比較例1)
クラッド形成用の押出装置101bにおいて、クラッド形成用材料の表面上にカバー部材115を配置しなかった点以外は、実施例1と同様の方法でPOFを作製した。得られたPOFについて、コア径は40μm、クラッド径は50μm、被覆層径は230μmであった。
【0076】
[コア径、クラッド径および被覆層径の測定方法]
コア径、クラッド径および被覆層径の測定方法は、(1)POFを切断、(2)切断面を研磨フィルム(NTT AT社、型番:AAS―GC.5A―R140―12)を用いて研磨、(3)顕微鏡(キーエンス社、型番:VHX-8000)を用いて、POFの透過光を測定、に基づいて計測された。なお、測定結果は、上述される通りであった。
【0077】
[樹脂成形体の評価]
実施例1、実施例2、及び比較例1において樹脂成形体としてされたPOFについて、5時間ごとに100mのサンプルを採取し、そのサンプルに含まれる気泡の数を目視にて検出した。なお、検出した気泡は、クラッドに含まれる気泡のみである。なお、クラッドに含まれる気泡のみを検出し、その数を求めた。表1は、実施例1、実施例2、及び比較例1のPOFについて、紡糸時間(装置稼働時間)と単位長さ(m)当たりの気泡検出数との関係を示す。表1に示すように、本発明の製造方法、すなわち押出装置から樹脂組成物を押し出すガスの押出圧力を0.02MPa以上かつ0.6MPa以下とし、かつ樹脂組成物の表面上にカバー部材を配置する方法が用いられた実施例1及び2のPOFについては、紡糸時間が経過しても気泡数が増加せず、5時間経過時の気泡数よりも、10時間、15時間、及び20時間経過時の気泡数の方が少なかった。これに対し、本発明の製造方法が用いられなかった比較例1のPOFは、5時間経過時の気泡数は実施例1と同程度であったが、10時間、15時間、及び20時間経過時の気泡数は増加した。このように、本発明の製造方法によれば、樹脂成形体の気泡の発生を低減できることが確認された。
【0078】
【表1】
【0079】
[付記]
以上をまとめると、本開示の発明の一形態は、下記である。
【0080】
(1)
(A)樹脂組成物を収容する収容部を有し、かつ前記収容部にガスを導入することによって前記樹脂組成物を前記収容部から前記ガスによって押し出す押出装置を用いて、前記収容部に収容された前記樹脂組成物を前記押出装置から押し出すことと、
(B)前記押出装置から押し出された前記樹脂組成物を、ファイバー状に成形することと、
を含み、
前記押出装置から前記樹脂組成物を押し出す前記ガスの押出圧力が、0.02MPa以上かつ0.6MPa以下であり、
前記収容部において、前記樹脂組成物の表面上に、前記樹脂組成物と前記ガスとの接触面積を低減するカバー部材が配置される、
樹脂成形体の製造方法。
【0081】
(2)
(C)前記押出装置から押し出された前記樹脂組成物をギヤポンプに通過させること、をさらに含み、
前記ギヤポンプを通過した前記樹脂組成物を、前記(B)においてファイバー状に成形する、
上記(1)に記載の樹脂成形体の製造方法。
【0082】
(3)
前記樹脂組成物と前記ガスとの前記接触面積は、10mm2以上800mm2以下である、
上記(1)又は(2)に記載の樹脂成形体の製造方法。
【0083】
(4)
前記カバー部材は、前記収容部における前記樹脂組成物の前記表面の面積の70%以上98%以下をカバーする、
上記(1)から(3)のいずれかに記載の樹脂成形体の製造方法。
【0084】
(5)
前記カバー部材は、球状または半球状である、
上記(1)から(4)のいずれかに記載の樹脂成形体の製造方法。
【0085】
(6)
前記ガスの前記押出圧力が、0.25MPa未満である、
上記(1)から(5)のいずれかに記載の樹脂成形体の製造方法。
【0086】
(7)
前記樹脂組成物は光学用樹脂材料である、
上記(1)から(6)のいずれかに記載の樹脂成形体の製造方法。
【0087】
(8)
前記光学用樹脂材料は含フッ素重合体を含む、
上記(7)に記載の樹脂成形体の製造方法。
【0088】
(9)
前記樹脂成形体が、プラスチック光ファイバーを構成する、
上記(8)に記載の樹脂成形体の製造方法。
【0089】
(10)
前記樹脂成形体が、前記プラスチック光ファイバーのコア及びクラッドからなる群より選択される少なくとも1つである、
上記(9)に記載の樹脂成形体の製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の樹脂成形体の製造方法は、気泡の発生が抑制された高品質な樹脂成形体を製造できるので、例えばPOF等の光学用途に用いられる部品の製造に有用である。
【符号の説明】
【0091】
1,1a,1b 樹脂組成物
100 樹脂成形体の製造装置
101,101a,101b 押出装置
102 収容部
110,110a,110b ギヤポンプ
114,115 カバー部材
200 POFの製造装置
図1
図2
図3