(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011030
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】測定システム、検査方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G01B 5/00 20060101AFI20240118BHJP
G01B 5/28 20060101ALI20240118BHJP
B25J 13/08 20060101ALI20240118BHJP
G01B 5/20 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
G01B5/00 A
G01B5/28 102
B25J13/08 Z
G01B5/20 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112695
(22)【出願日】2022-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】田名網 克周
(72)【発明者】
【氏名】林 美由希
【テーマコード(参考)】
2F062
3C707
【Fターム(参考)】
2F062AA21
2F062AA51
2F062AA66
2F062CC27
2F062EE01
2F062EE63
2F062FF02
2F062GG90
3C707AS14
3C707BS12
3C707KS07
3C707KS33
3C707KX06
3C707LT07
(57)【要約】
【課題】被測定物の寸法と、表面粗さとを同一の接触子を用いて同時に測定する。
【解決手段】測定システム(1)において、プロセッサ(11)は、経路設定処理と、第1取得処理と、第2取得処理と、寸法測定処理と、を実行する。経路設定処理は、三次元データ(202)に基づいて、力覚センサ(50)により検出される反力(F)が所定値となるように接触子(60)を被測定物(A)の表面(A1等)に沿って倣わせるハンド部(40)の移動経路を設定する。第1取得処理は、力覚センサにより検出された反力が所定値となるように調整しながら接触子を被測定物の表面に沿って倣わせ、ハンド部が動いた軌跡を取得する。第2取得処理は、第1取得処理により接触子を被測定物の表面に沿って倣わせている期間に、その表面の粗さを接触子から取得する。寸法測定処理は、軌跡と、移動経路および三次元データの少なくとも一方とに基づいて、被測定物の寸法を測定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物の表面の粗さを検出する接触子と、
前記接触子が装着されるハンド部と、
前記ハンド部を、当該ハンド部の位置および姿勢を変更可能に支持するロボットアームと、
前記被測定物の表面に前記接触子を押接させたときに、前記被測定物の表面から前記接触子への反力を検出する力覚センサと、
前記被測定物の三次元形状に関する三次元データを記憶する記憶部及び、1または複数のプロセッサを有する制御装置と、を備え、
前記1または複数のプロセッサは、
前記三次元データに基づいて、前記力覚センサにより検出される前記反力が所定値となるように前記接触子を前記被測定物の表面に沿って倣わせる前記ハンド部の移動経路を設定する経路設定処理と、
前記力覚センサにより検出された前記反力が前記所定値となるように調整しながら実際に前記接触子を前記被測定物の表面に沿って倣わせ、前記ハンド部が実際に動いた軌跡を取得する第1取得処理と、
前記第1取得処理にて実際に前記接触子を前記被測定物の表面に沿って倣わせている期間に、前記被測定物の表面の粗さを前記接触子から取得する第2取得処理と、
前記軌跡と、前記移動経路および前記三次元データの少なくとも一方と、に基づいて、前記被測定物の寸法を測定する寸法測定処理と、を実行する測定システム。
【請求項2】
前記力覚センサは、互いに直交する3方向の各成分について、前記反力を検出可能であり、
前記1または複数のプロセッサは、前記第1取得処理において、
前記接触子を前記被測定物の表面に沿って倣わせながら、
前記被測定物の表面の法線方向が前記3方向のうちの1方向と平行となるように前記ハンド部の姿勢を調整させるとともに、
前記反力の前記1方向の成分が前記所定値となるように前記ハンド部の位置を調整させ、
前記ハンド部が実際に動いた軌跡を取得する請求項1に記載の測定システム。
【請求項3】
前記接触子は、
前記被測定物の表面の粗さを検出する検出部と、
前記被測定物の表面に前記接触子を押接させていないときは前記検出部の少なくとも一部を外部に突出させ、前記被測定物の表面に前記接触子を押接させているときは前記検出部を内部に収容するハウジング部と、
を有し、
前記力覚センサは、前記被測定物の表面に前記接触子を押接させたときに、前記被測定物の表面から前記ハウジング部への前記反力を検出する請求項1に記載の測定システム。
【請求項4】
前記寸法測定処理は、前記移動経路と前記軌跡との間のずれ量と、前記三次元データと、に基づいて、前記被測定物の寸法を測定する請求項1に記載の測定システム。
【請求項5】
前記三次元データには、前記被測定物の表面の粗さに関する情報を更に含み、
前記1または複数のプロセッサは、
前記第1取得処理にて前記軌跡を取得している間に前記第2取得処理にて取得された前記被測定物の表面の粗さと、前記三次元データに基づく前記被測定物の表面の粗さとの差が所定範囲内か否か検査する第1検査処理と、
前記寸法測定処理にて測定された前記被測定物の寸法と、前記三次元データに基づく寸法との差が所定範囲内か否か検査する第2検査処理と、を更に実行する請求項1から4のいずれか1項に記載の測定システム。
【請求項6】
前記被測定物は、薄膜の製造プロセスで使用されるターゲット材、もしくはプラスチック成型品である、請求項1から4のいずれか1項に記載の測定システム。
【請求項7】
請求項5に記載の測定システムを用いて、前記被測定物の表面の粗さと、前記被測定物の寸法とを検査する検査方法。
【請求項8】
請求項1から4のいずれか1項に記載の測定システムに備わる制御装置を動作させるためのプログラムであって、前記1または複数のプロセッサに前記各処理を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定システム、検査方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ワークの三次元測定を行うプローブと、先端に表面粗さ計を有するロボットアームとを備える測定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている測定装置では、三次元座標測定機と表面粗さ計を支持するロボットアームとの衝突を避けるため、片方の測定機にて測定を行うときに他方を退避させている。そのため、三次元形状と表面粗さとを同時に測定することができなかった。
【0005】
本発明の一態様は、被測定物の寸法と、表面粗さとを同一の接触子を用いて同時に測定する測定システムを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る測定システムは、接触子と、ハンド部と、ロボットアームと、力覚センサと、記憶部と、制御装置と、を備える。接触子は、被測定物の表面の粗さを検出する。ハンド部は、接触子が装着される。ロボットアームは、ハンド部を、当該ハンド部の位置および姿勢を変更可能に支持する。力覚センサは、被測定物の表面に接触子を押接させたときに、被測定物の表面から接触子への反力を検出する。記憶部は、被測定物の三次元形状に関する三次元データを記憶する。制御装置は、1または複数のプロセッサを有する。1または複数のプロセッサは、経路設定処理と、第1取得処理と、第2取得処理と、寸法測定処理と、を実行する。経路設定処理は、接触子を被測定物の表面に沿って倣わせるハンド部の移動経路を設定する。この設定は、三次元データに基づいて、力覚センサにより検出される反力が所定値となるようにする。第1取得処理は、ハンド部が実際に動いた軌跡を取得する。この取得は、力覚センサにより検出された反力が所定値となるように調整しながら実際に接触子を被測定物の表面に沿って倣わせて行う。第2取得処理は、被測定物の表面の粗さを接触子から取得する。この取得は、第1取得処理にて実際に接触子を被測定物の表面に沿って倣わせている期間に行う。寸法測定処理は、被測定物の寸法を測定する。この測定は、軌跡と、移動経路および三次元データの少なくとも一方と、に基づいて行う。
【0007】
本発明の各態様に係る制御装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記制御装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記制御装置をコンピュータにて実現させる制御装置のプログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、被測定物の寸法と、表面粗さとを同一の接触子を用いて同時に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る測定システムの一構成例を示す図である。
【
図2】上記の測定システムにて用いられる接触子の一例を示す図である。
【
図4】被測定物の表面に接触子が押接した状況を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る測定システムによる被測定物の検査の工程を示すフローチャートである。
【
図6】上記の測定システムにて用いられるハンド部に対して設定された移動経路と実際の軌跡の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔本開示の実施形態の概要〕
最初に、本開示の実施形態の概要を説明する。
【0011】
(条項1)被測定物の表面の粗さを検出する接触子と、前記接触子が装着されるハンド部と、前記ハンド部を、当該ハンド部の位置および姿勢を変更可能に支持するロボットアームと、前記被測定物の表面に前記接触子を押接させたときに、前記被測定物の表面から前記接触子への反力を検出する力覚センサと、前記被測定物の三次元形状に関する三次元データを記憶する記憶部及び、1または複数のプロセッサを有する制御装置と、を備え、前記1または複数のプロセッサは、前記三次元データに基づいて、前記力覚センサにより検出される前記反力が所定値となるように前記接触子を前記被測定物の表面に沿って倣わせる前記ハンド部の移動経路を設定する経路設定処理と、前記力覚センサにより検出された前記反力が前記所定値となるように調整しながら実際に前記接触子を前記被測定物の表面に沿って倣わせ、前記ハンド部が実際に動いた軌跡を取得する第1取得処理と、前記第1取得処理にて実際に前記接触子を前記被測定物の表面に沿って倣わせている期間に、前記被測定物の表面の粗さを前記接触子から取得する第2取得処理と、前記軌跡と、前記移動経路および前記三次元データの少なくとも一方と、に基づいて、前記被測定物の寸法を測定する寸法測定処理と、を実行する測定システム。
【0012】
上記の構成によれば、被測定物の寸法と、表面粗さとを同一の接触子を用いて同時に測定することができるため、三次元形状と表面粗さとの検査の作業効率を向上させることができる。
【0013】
(条項2)前記力覚センサは、互いに直交する3方向の各成分について、前記反力を検出可能であり、前記1または複数のプロセッサは、前記第1取得処理において、前記接触子を前記被測定物の表面に沿って倣わせながら、前記被測定物の表面の法線方向が前記3方向のうちの1方向と平行となるように前記ハンド部の姿勢を調整させるとともに、前記反力の前記1方向の成分が前記所定値となるように前記ハンド部の位置を調整させ、前記ハンド部が実際に動いた軌跡を取得する条項1に記載の測定システム。
【0014】
上記の構成によれば、力覚センサが互いに直交する3方向の反力を検出可能であるため、被測定対象の表面が湾曲していたとしても適正に三次元形状と表面粗さとを測定することができる。
【0015】
(条項3)前記接触子は、前記被測定物の表面の粗さを検出する検出部と、前記被測定物の表面に前記接触子を押接させていないときは前記検出部の少なくとも一部を外部に突出させ、前記被測定物の表面に前記接触子を押接させているときは前記検出部を内部に収容するハウジング部と、を有し、前記力覚センサは、前記被測定物の表面に前記接触子を押接させたときに、前記被測定物の表面から前記ハウジング部への前記反力を検出する条項1または2に記載の測定システム。
【0016】
上記の構成によれば、被測定物の表面に接触子を押接させているときは検出部をハウジング部の内部に収容させることにしたため、過大な反力による検出部の破損を防ぐことができる。
【0017】
(条項4)前記寸法測定処理は、前記移動経路と前記軌跡との間のずれ量と、前記三次元データと、に基づいて、前記被測定物の寸法を測定する条項1から3のいずれか1項に記載の測定システム。
【0018】
上記の構成によれば、ハンド部に接触子を装着する際に、ハンド部から接触子の先端部までの距離等を較正することなく、被測定物の寸法を測定することができる。
【0019】
(条項5)前記三次元データには、前記被測定物の表面の粗さに関する情報を更に含み、前記1または複数のプロセッサは、前記第1取得処理にて前記軌跡を取得している間に前記第2取得処理にて取得された前記被測定物の表面の粗さと、前記三次元データに基づく前記被測定物の表面の粗さとの差が所定範囲内か否か検査する第1検査処理と、前記寸法測定処理にて測定された前記被測定物の寸法と、前記三次元データに基づく寸法との差が所定範囲内か否か検査する第2検査処理と、を更に実行する条項1から4のいずれか1項に記載の測定システム。
【0020】
上記の構成によれば、被測定物の寸法と、表面粗さとを同時に検査することができるため、被測定物を効率的に検査することができる。
【0021】
(条項6)前記被測定物は、薄膜の製造プロセスで使用されるターゲット材、もしくはプラスチック成型品である、条項1から5のいずれか1項に記載の測定システム。
【0022】
プラスチック成型品の仕上がり検査は、従来、検査員による目視にて実施されることが多く、プラスチック成型品の表面の傷が見落とされることがあった。また、プラスチック成型品は、射出成型により生産されることが多く、寸法誤差が大きい。上記の測定システムを用いることにより、プラスチック成型品の表面粗さと寸法とを同時に測定することができるため、効率的である。
【0023】
また、従来、ターゲット材の表面粗さは段差計で測定されていたが、一度に測定可能な範囲が狭く、ターゲット材全体の表面粗さを測定することが困難であった。測定システム1を用いることにより、段差計を用いた測定よりも広範囲の測定を行うことが可能となり、更にはターゲット材の厚み寸法を同時に測定することができる。
【0024】
(条項7)条項1から6のいずれか1項に記載の測定システムを用いて、前記被測定物の表面の粗さと、前記被測定物の寸法とを検査する検査方法。
【0025】
上記の構成によれば、被測定物の寸法と、表面粗さとを同時に測定することができる。
【0026】
(条項8)条項1から6のいずれか1項に記載の測定システムに備わる制御装置を動作させるためのプログラムであって、前記1または複数のプロセッサに前記各処理を実行させるプログラム。
【0027】
上記の構成によれば、1または複数のプロセッサに測定システムの各処理を実行させることにより、被測定物の寸法と、表面粗さとを同時に測定することができる。
【0028】
〔本開示の実施形態の例示〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0029】
(測定システム1の構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る測定システム1の一構成例を示す図である。測定システム1は、制御装置10と、ロボットアーム30と、ハンド部40と、力覚センサ50と、接触子60とを備える。
【0030】
制御装置10は、プロセッサ11と、一次メモリ12と、二次メモリ13とを有する。プロセッサ11は、例えば、CPU(Central Processing Unit)で構成される。プロセッサ11は、GPU(Graphic Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、MPU(Micro Processing Unit)、FPU(Floating point number Processing Unit)、PPU(Physics Processing Unit)、マイクロコントローラ、又は、これらの組み合わせで構成してもよい。
【0031】
一次メモリ12は、例えば、半導体RAM(Random Access Memory)で構成される。二次メモリ13は、記憶部の一例であり、プログラム201と、三次元データ202とが記憶されている。二次メモリ13は、例えば、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、ODD(Optical Disk Drive)、又は、これらの組み合わせで構成される。三次元データ202には、被測定物Aの三次元形状の寸法と、表面粗さとが記憶されている。
【0032】
プロセッサ11は、二次メモリ13に格納されているプログラム201を一次メモリ12上に展開する。そして、プロセッサ11は、一次メモリ12上に展開されたプログラム201に含まれる命令に従って、測定システム1の各部を制御する。
【0033】
なお、本実施形態においては、単一のプロセッサ(プロセッサ11)を用いて測定システム1の各部を制御する構成を採用しているが、本発明は、これに限定されない。すなわち、複数のプロセッサを用いて測定システム1の各部を制御する構成を採用してもよい。この場合、連携して測定システム1の各部を制御する複数のプロセッサは、単一のコンピュータに設けられ、相互に通信可能に構成されていてもよいし、複数のコンピュータに分散して設けられ、ネットワークを介して相互に通信可能に構成されていてもよい。一例として、クラウドサーバを構成するコンピュータに内蔵されたプロセッサと、そのクラウドサーバの利用者が所有するコンピュータに内蔵されたプロセッサとが、連携してプログラム201を実行する態様などが考えられる。
【0034】
ロボットアーム30は、複数のアーム31を含む多関節アームである。ロボットアーム30は、4本のアーム31が3つの関節32で連結されている。但し、ロボットアーム30に含まれるアーム31の数は4本だけに限定されず、アーム31を連結する関節32の数も3つだけに限定されない。
【0035】
ハンド部40は、力覚センサ50を介してロボットアーム30に装着されている。ハンド部40には、接触子60が装着されている。ロボットアーム30は、6自由度を有し、ハンド部40の位置および姿勢を変更可能に支持している。
【0036】
力覚センサ50は、自身に作用する力およびモーメントの方向および大きさを検出する。力覚センサ50は、互いに直交する3軸(X軸,Y軸,Z軸)の各方向に作用する力の大きさ(FX,FY,FZ)と、各軸回りのモーメントの大きさ(MX,MY,MZ)とを検出する6軸力覚センサである。以降、FX、FY、FZ、MX、MY、MZを、力の成分、または、単に検出値とも記載する。力覚センサ50は、検出値に関する信号を制御装置10へ出力する。
【0037】
接触子60は、被測定物Aの表面A1に押接しているとき、表面A1の接点P1の粗さを検出する。接触子60は、表面A1の接点P1の粗さに関する検出信号を制御装置10へ出力する。接触子60は、ロボットアーム30により、ハンド部40の位置および姿勢が変更されると、ハンド部40と共に位置および姿勢が変更される。測定システム1は、接触子60を被測定物Aの表面A1等を倣うように移動させることにより、被測定物Aの表面A1等の粗さを検出することができる。被測定物Aは、例えば、スパッタリング等の気相成長法による薄膜の製造プロセスで使用されるターゲット材、射出成型等により製造されるプラスチック成型品等である。
【0038】
図2は、ハンド部40に装着された接触子60の拡大図である。接触子60は、検出部61と、ハウジング部62とを備える。ハウジング部62の先端部63には、検出部61を内部に収容可能な収容部64を有する。検出部61は、その一部が収容部64から先端部63の外部に突出するように付勢されている。
【0039】
図1に示すように接触子60が被測定物Aの表面A1に押接されている場合は、
図3に示すように接触子60の検出部61は、ハウジング部62の収容部64の内部に収容される。
図3は、接触子60の検出部61が、ハウジング部62の収容部64の内部に収容された状態を示す。検出部61は、収容部64から突出するように付勢されているため、収容部64に収容された状態であっても被測定物Aの表面A1に接触する。検出部61は、接触している表面A1の粗さをnm単位で検出する。また、ハウジング部62の先端部63も表面A1に接触しており、
図1の力覚センサ50は、表面A1に接触したハウジング部62に加わる反力F(FX,FY,FZ)=(0,0,F0)を検出する。
【0040】
図4は、被測定物Aの表面A2に接触子60が接点P2で接触している状態を示す。表面A2は曲面である。
図4には、接点P2における表面A2の接線方向70と、その接線方向70に直交する表面A2の法線方向71とが図示されている。
図4に示すように、接触子60は、表面A2の法線方向71から表面A2に接触する。
【0041】
図4に示すように接触子60が表面A2に押接されているときも、
図2に示した接触子60の検出部61は、ハウジング部62の収容部64の内部に収容されると共に、表面A2の粗さを検出する。また、力覚センサ50は、表面A1に接触したハウジング部62に加わる反力F(FX,FY,FZ)=(0,0,F0)を検出する。
【0042】
図5は、測定システム1によるプラスチック成型品の仕上がり検査に関するフローチャートである。従来、プラスチック成型品の仕上がり検査は、検査員による目視にて実施されることが多く、プラスチック成型品の表面の傷が見落とされることがあった。また、プラスチック成型品は、射出成型により生産されることが多く、寸法誤差が大きい。測定システム1を用いてプラスチック成型品の仕上がり検査を行うと、プラスチック成型品の表面粗さと寸法とをその生産ライン中にて同時に検査することができるため、効率的である。
【0043】
(ステップS500)
図5のS500において、プロセッサ11は、検査員の指示等により、被測定物Aであるプラスチック成型品の三次元データ202を二次メモリ13から読み出す(S500)。
【0044】
(ステップS501)
ステップS501において、プロセッサ11は、経路設定処理を実行する。経路設定処理では、プロセッサ11は、S500にて読み出した三次元データ202に基づくオフラインティーチングに基づいて、ハンド部40の移動経路を設定する。経路設定処理で設定される移動経路は、力覚センサ50により検出される反力F(FX,FY,FZ)が所定値(0,0,F1)となるように被測定物Aの表面A1およびA2等に沿って接触子60を倣わせるものである。ここで、F1は、接触子60の検出部61が破損等無く耐えられる力であって、例えば、5Nである。
【0045】
より具体的には、経路設定処理(S501)では、プロセッサ11は、三次元データ202に基づいて、接触子60を押接させる被測定物Aの表面A1およびA2等の面上の位置ごとに、
図4に示すような法線方向71を決定する。そして、プロセッサ11は、その法線方向71に接触子60が向くように、ハンド部40の姿勢を設定する。制御装置10は、設定されたハンド部40の姿勢と、三次元データ202とに基づいて、ハンド部40の位置を設定する。設定されるハンド部40の位置は、被測定物Aの表面A2等から法線方向71に沿って離れた位置であって、力覚センサ50により検出される反力F(FX,FY,FZ)が所定値(0,0,F1)となる位置である。
【0046】
図6は、経路設定処理において設定される移動経路の一例を示す。
図6に示される移動経路80は、力覚センサ50により検出される反力F(FX,FY,FZ)が所定値(0,0,F1)となるように、被測定物Aの表面A1に沿って接触子60を倣わせた場合の移動経路である。
【0047】
(ステップS502)
S502において、プロセッサ11は、第1取得処理および第2取得処理を実行する。第1取得処理では、プロセッサ11は、ロボットアーム30を制御して、力覚センサ50により検出された反力F(FX,FY,FZ)が所定値(0,0,F1)となるように調整しながら、実際に接触子60を被測定物Aの表面A1およびA2等に沿って倣わせ、ハンド部40が実際に動いた軌跡を取得する。
【0048】
図6に示す軌跡81は、力覚センサ50により検出される反力F(FX,FY,FZ)が所定値(0,0,F1)となるように、被測定物Aの表面A1に沿って接触子60を倣わせた場合に、ハンド部40が実際に動いた軌跡である。この軌跡81は、被測定物Aの表面A1に見られるうねりの稜線と一致する。すなわち、測定システム1では、力覚センサ50を用いて、被測定物Aの表面A1のうねりを測定することができる。
【0049】
より具体的には、第1取得処理では、プロセッサ11は、経路設定処理(S501)により設定された
図6の移動経路80に基づいてロボットアーム30を制御して、接触子60が
図4の被測定物Aの表面A1に沿って倣うようにハンド部40を動かす。プロセッサ11は、ハンド部40の移動中に、力覚センサ50から反力F(FX,FY,FZ)の測定値を取得し、その測定値が所定値(0,0,F1)となっているか否かを判定する。プロセッサ11は、反力F(FX,FY,FZ)の測定値が所定値(0,0,F1)となっていないと判定された場合は、反力F(FX,FY,FZ)の測定値が所定値(0,0,F1)となるようにハンド部40の位置および姿勢を調整する。プロセッサ11は、反力FのX軸方向成分FXおよびY軸方向成分FYが0となるようにハンド部40の姿勢を調整することにより、接触子60が法線方向(Z軸方向)から表面A1を押接するように調整する。また、第1取得処理では、プロセッサ11は、反力FのZ軸方向FZが所定値F1となるようにハンド部40の位置を調整する。
【0050】
また、第2取得処理では、プロセッサ11は、第1取得処理により実際に接触子60を被測定物Aの表面A1等に沿って倣わせている期間に、被測定物Aの表面A1等の粗さに関する測定値を接触子60の検出部61から取得する。例えば、被測定物Aの表面A1に沿って接触子60を倣わせた場合には、プロセッサ11は、接触子60の検出部61から表面A1の粗さを検出する。
【0051】
(ステップS503)
図5のS503において、プロセッサ11は、寸法測定処理を実行する。寸法測定処理では、プロセッサ11は、移動経路処理(S501)において設定された移動経路80と、第1取得処理(S502)において取得された軌跡81との間のずれ量と、三次元データ202とに基づいて、被測定物Aの寸法を測定する。例えば、移動経路80と軌跡81との間のZ軸方向のずれ量が-0.3mmであり、三次元データ202における被測定物Aの厚みの寸法が50mmである場合、被測定物Aの厚みの実寸を49.7mmと測定する。
【0052】
(ステップS504)
S504において、プロセッサ11は、第1検査処理および第2検査処理を実行する。第1検査処理では、プロセッサ11は、第1取得処理により軌跡81を取得している間に第2取得処理により取得された被測定物Aの表面A1等の粗さと、三次元データ202に基づく被測定物Aの表面A1等の粗さとの差が所定範囲内か否か検査する。
【0053】
第2検査処理では、プロセッサ11は、寸法測定処理(S503)により測定された被測定物Aの寸法と、三次元データ202に基づく寸法との差が所定範囲内か否か検査する。換言すると、第2検査処理は、経路設定処理(S501)により設定された移動経路80と、第1取得処理(S502)により取得された軌跡81との間のずれ量が所定範囲内か否か検査する。
【0054】
〔変形例〕
上記実施形態に係る測定システム1では、プログラム201および三次元データ202は、制御装置10の二次メモリ13に記憶されているものとしたが、これだけに限定されない。例えば、プログラム201および三次元データ202を制御装置10の外部の記憶部に記憶することにしてもよい。
【0055】
上記実施形態に係る測定システム1では、S503の寸法測定処理において、プロセッサ11は、移動経路処理において設定された移動経路80と、第1取得処理において取得された軌跡81と、三次元データ202とに基づいて、被測定物Aの寸法を測定することにした。しかし、寸法測定処理においては、少なくとも移動経路80と軌跡81との間のずれ量を測定すればよく、ずれ量と三次元データ202とに基づいて被測定物Aの寸法を測定しなくてもよい。寸法測定処理において、ずれ量と三次元データ202とに基づいて被測定物Aの寸法を測定しない場合は、寸法測定処理において三次元データ202を要さず、第2検査処理においては移動経路80と軌跡81との間のずれ量が所定範囲内か否かを判定することにすればよい。
【0056】
また、S503の寸法測定処理において、第1取得処理において取得された軌跡81と、三次元データ202とに基づいて、被測定物Aの寸法を測定することにしてもよい。例えば、寸法測定処理において、軌跡81と、三次元データ202に含まれる三次元形状の寸法との間のずれ量とを測定することにしてもよい。第2検査処理においては、ハンド部40から接触子60の先端部63までの距離が所定値Lとなるように測定システム1が較正されていることを条件として、軌跡81と三次元データ202に含まれる三次元形状の寸法との間のずれ量が所定値Lを含む所定範囲内か否かを判定することにすればよい。
【0057】
上記実施形態では、測定システム1による被測定物Aの検査工程の一例として、プラスチック成型品の仕上がり検査について説明した。しかし、測定システム1による検査の対象となる被測定物Aは、プラスチック成型品のみに限られない。例えば、測定システム1を利用して、スパッタリング等の気相成長法による薄膜の製造プロセスで使用されるターゲット材の表面粗さと、厚み寸法とを同時に検査することにも利用することができる。測定システム1を利用して、ターゲット材について検査を行う場合は、S500において、二次メモリ13から読み出すターゲット材の三次元データ202を読み出すものとする。気相成長法により膜厚を均一に成膜させるため、従来はターゲット材の表面粗さは段差計で測定されていたが、一度に測定可能な範囲が狭く、ターゲット材全体の表面粗さを測定することが困難であった。測定システム1では、接触子60を装着したハンド部40を用いて測定を行うため、段差計を用いた測定よりも広範囲の測定を行うことが可能となり、更にはターゲット材の厚み寸法を同時に測定することができる。
【0058】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
1 測定システム
10 制御装置
11 プロセッサ
12 一次メモリ
13 二次メモリ
30 ロボットアーム
40 ハンド部
50 力覚センサ
60 接触子
61 検出部
62 ハウジング部
64 収容部
71 法線方向
80 移動経路
81 軌跡
201 プログラム
202 三次元データ
A 被測定物
A1、A2 表面