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特開2024-11031測定システム、プログラムおよび検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011031
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】測定システム、プログラムおよび検査方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/08 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
B25J13/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112696
(22)【出願日】2022-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】田名網 克周
(72)【発明者】
【氏名】林 美由希
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS14
3C707BS10
3C707BS12
3C707KS34
3C707KW03
3C707KX10
3C707LU08
(57)【要約】
【課題】被測定物の表面を傷つけることなく当該表面の粗さを検出する。
【解決手段】測定システム(1)において、プロセッサ(11)は、測定処理と、判定処理と、を実行する。測定処理は、力覚センサ(50)により検出された反力(F)が所定値となるようにハンド部(40)の姿勢と位置を調整しながら接触子(60)を被測定物(A)の表面(A1およびA2)に沿って倣わせることにより、被測定物の表面の粗さを接触子から取得する。判定処理は、測定処理により取得された被測定物の表面の粗さが所定範囲内か否か判定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物の表面の粗さを検出する接触子と、
前記接触子が装着されるハンド部と、
前記ハンド部を、当該ハンド部の位置および姿勢を変更可能に支持するロボットアームと、
前記被測定物の表面に前記接触子を押接させたときに、前記被測定物の表面から前記接触子への反力を検出する力覚センサと、
1または複数のプロセッサを有する制御装置と、を備え、
前記1または複数のプロセッサは、
前記力覚センサにより検出された前記反力が前記所定値となるように前記ハンド部の姿勢と位置を調整しながら前記接触子を前記被測定物の表面に沿って倣わせることにより、前記被測定物の表面の粗さを前記接触子から取得する測定処理と、
前記測定処理にて取得された前記被測定物の表面の粗さが所定範囲内か否か判定する判定処理と、を実行する測定システム。
【請求項2】
前記接触子は、
前記被測定物の表面の粗さを検出する検出部と、
前記被測定物の表面に前記接触子を押接させていないときは前記検出部の少なくとも一部を外部に突出させ、前記被測定物の表面に前記接触子を押接させているときは前記検出部を内部に収容するハウジング部と、
を有し、
前記力覚センサは、前記被測定物の表面に前記接触子を押接させたときに、前記被測定物の表面から前記ハウジング部への前記反力を検出する請求項1に記載の測定システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の測定システムに備わる制御装置を動作させるためのプログラムであって、前記1または複数のプロセッサに前記各処理を実行させるプログラム。
【請求項4】
請求項1または2に記載の測定システムを用いた検査方法であって、
前記被測定物の表面に表面処理を施す表面処理工程と、
前記1または複数のプロセッサが前記測定処理を実行することにより、前記表面処理工程にて前記表面処理が施された前記被測定物の表面の粗さを取得する測定工程と、
前記1または複数のプロセッサが前記判定処理を実行することにより、前記測定工程にて測定された前記被測定物の表面の粗さが所定範囲内にあるか否かを判定する判定工程と、を含む検査方法。
【請求項5】
前記表面処理工程であって、前記被測定物の表面に塗装を行う前に実施される前記表面処理として下地処理を前記被測定物の表面に施す下地処理工程と、
前記下地処理工程にて前記下地処理を施された前記被測定物に対して前記測定工程を実施し、当該被測定物の表面の粗さを取得する第1測定工程と、
前記第1測定工程にて測定された前記被測定物に対して前記判定工程を実施し、当該被測定物の表面の粗さが第1範囲内にあるか否かを判定する第1判定工程と、
前記表面処理工程であって、前記第1判定工程にて表面の粗さが前記第1範囲内にあると判定された前記被測定物に対して前記表面処理として前記塗装を行う塗装工程と、
前記塗装工程にて前記塗装が行われた前記被測定物に対して前記測定工程を実施し、当該被測定物の表面の粗さを取得する第2測定工程と、
前記第2測定工程にて測定された前記被測定物に対して前記判定工程を実施し、当該被測定物の表面の粗さが第2範囲内にあるか否かを判定する第2判定工程と、
を含む請求項4に記載の検査方法。
【請求項6】
前記第2測定工程では、前記第1測定工程において前記接触子を前記被測定物の表面に沿って倣わせた前記ハンド部の軌跡に基づいて、前記ハンド部の姿勢および位置を調整する請求項5に記載の検査方法。
【請求項7】
前記被測定物は、ディスプレイであり、
前記表面処理工程にて前記ディスプレイに前記表面処理を施した生産ライン上にて、前記測定工程と前記判定工程とを実施する請求項4の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定システム、プログラムおよび検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、表面粗さ計を先端に有するロボットアームを備えた測定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-092531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている方法では、表面粗さの測定時に被測定物の表面を傷つけてしまう虞がある。
本発明の一態様は、被測定物の表面を傷つけることなく表面の粗さを検出可能な測定システムを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る測定システムは、接触子と、ハンド部と、ロボットアームと、力覚センサと、制御装置と、を備える。接触子は、被測定物の表面の粗さを検出する。ハンド部は、接触子が装着される。ロボットアームは、ハンド部を、ハンド部の位置および姿勢を変更可能に支持する。力覚線センサは、被測定物の表面に接触子を押接させたときに、被測定物の表面から接触子への反力を検出する。制御装置は、1または複数のプロセッサを有する。1または複数のプロセッサは、測定処理と判定処理とを実行する。測定処理は、被測定物の表面の粗さを接触子から取得する。この取得は、力覚センサにより検出された反力が所定値となるようにハンド部の姿勢と位置を調整しながら接触子を被測定物の表面に沿って倣わせることにより行う。判定処理は、測定処理にて取得された被測定物の表面の粗さが所定範囲内か否か判定する。
【0006】
本発明の各態様に係る制御装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記制御装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記制御装置をコンピュータにて実現させる制御装置のプログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、被測定物の表面を傷つけることなく表面の粗さを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る測定システムの一構成例を示す図である。
図2】上記の測定システムにて用いられる接触子の一例を示す図である。
図3】上記の接触子の先端の拡大図である。
図4】被測定物の表面に接触子が押接した状況を示す図である。
図5】本発明の一実施形態に係る測定システムによる被測定物の検査工程の一例を示すフローチャートである。
図6】本発明の一実施形態に係る測定システムによる被測定物の検査工程の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔本開示の実施形態の概要〕
最初に、本開示の実施形態の概要を説明する。
【0010】
(条項1)被測定物の表面の粗さを検出する接触子と、前記接触子が装着されるハンド部と、前記ハンド部を、当該ハンド部の位置および姿勢を変更可能に支持するロボットアームと、前記被測定物の表面に前記接触子を押接させたときに、前記被測定物の表面から前記接触子への反力を検出する力覚センサと、1または複数のプロセッサを有する制御装置と、を備え、前記1または複数のプロセッサは、前記力覚センサにより検出された前記反力が前記所定値となるように前記ハンド部の姿勢と位置を調整しながら前記接触子を前記被測定物の表面に沿って倣わせることにより、前記被測定物の表面の粗さを前記接触子から取得する測定処理と、前記測定処理にて取得された前記被測定物の表面の粗さが所定範囲内か否か判定する判定処理と、を実行する測定システム。
【0011】
上記の構成によれば、力覚センサを用いて被測定物の表面から接触子への反力を検出するため、被測定物の表面を傷つけることなく当該表面の粗さを検出することができる。
【0012】
(条項2)前記接触子は、前記被測定物の表面の粗さを検出する検出部と、前記被測定物の表面に前記接触子を押接させていないときは前記検出部の少なくとも一部を外部に突出させ、前記被測定物の表面に前記接触子を押接させているときは前記検出部を内部に収容するハウジング部と、を有し、前記力覚センサは、前記被測定物の表面に前記接触子を押接させたときに、前記被測定物の表面から前記ハウジング部への前記反力を検出する条項1に記載の測定システム。
【0013】
上記の構成によれば、被測定物の表面に接触子を押接させているときは検出部をハウジング部の内部に収容させることにしたため、過大な反力による検出部の破損を防ぐことができる。
【0014】
(条項3)条項1または2に記載の測定システムに備わる制御装置を動作させるためのプログラムであって、前記1または複数のプロセッサに前記各処理を実行させるプログラム。
【0015】
上記の構成によれば、1または複数のプロセッサに測定システムの各処理を実行させることにより、被測定物の表面を傷つけることなく表面の粗さを検出することができる。
【0016】
(条項4)条項1または2に記載の測定システムを用いた検査方法であって、前記被測定物の表面に表面処理を施す表面処理工程と、前記1または複数のプロセッサが前記測定処理を実行することにより、前記表面処理工程にて前記表面処理が施された前記被測定物の表面の粗さを取得する測定工程と、前記1または複数のプロセッサが前記判定処理を実行することにより、前記測定工程にて測定された前記被測定物の表面の粗さが所定範囲内にあるか否かを判定する判定工程と、を含む検査方法。
【0017】
上記の構成によれば、表面処理後の被測定物に対して測定処理を実行するため、表面の粗さを検出する際、被測定物の表面から接触子への反力が所定値となるようにハンド部の姿勢と位置が調整され、表面処理後の被測定物の表面を傷つけることがない。
【0018】
(条項5)前記表面処理工程であって、前記被測定物の表面に塗装を行う前に実施される前記表面処理として下地処理を前記被測定物の表面に施す下地処理工程と、前記下地処理工程にて前記下地処理を施された前記被測定物に対して前記測定工程を実施し、当該被測定物の表面の粗さを取得する第1測定工程と、前記第1測定工程にて測定された前記被測定物に対して前記判定工程を実施し、当該被測定物の表面の粗さが第1範囲内にあるか否かを判定する第1判定工程と、前記表面処理工程であって、前記第1判定工程にて表面の粗さが前記第1範囲内にあると判定された前記被測定物に対して前記表面処理として前記塗装を行う塗装工程と、前記塗装工程にて前記塗装が行われた前記被測定物に対して前記測定工程を実施し、当該被測定物の表面の粗さを取得する第2測定工程と、前記第2測定工程にて測定された前記被測定物に対して前記判定工程を実施し、当該被測定物の表面の粗さが第2範囲内にあるか否かを判定する第2判定工程と、を含む条項4に記載の検査方法。
【0019】
上記の構成によれば、下地処理工程および塗装工程の仕上がりを検査員の目視で検査することがないため、検査員用の作業環境を整えることが容易となり、傷の見落とし等の発生を低減することができる。また、下地処理から第2判定工程までのすべて工程をインラインで行うことができるため、仕上がり検査の効率を向上させることができる。
【0020】
(条項6)前記第2測定工程では、前記第1測定工程において前記接触子を前記被測定物の表面に沿って倣わせた前記ハンド部の軌跡に基づいて、前記ハンド部の姿勢および位置を調整する条項5に記載の検査方法。
【0021】
上記の構成によれば、第1測定工程において接触子を被測定物の表面に沿って倣わせたハンド部の軌跡に基づいて、第2測定工程におけるハンド部の位置および姿勢を調整するため、塗装後の被測定物の表面への傷の発生を抑制することができる。
【0022】
(条項7)前記被測定物は、ディスプレイであり、前記表面処理工程にて前記ディスプレイに前記表面処理を施した生産ライン上にて、前記測定工程と前記判定工程とを実施する条項4の検査方法。
【0023】
上記の構成によれば、ディスプレイに表面処理を施した生産ライン上にて、測定工程と判定工程とを実施することができるため、効率的にディスプレイの生産と検査とを進めることができる。
【0024】
〔本開示の実施形態の例示〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0025】
(測定システム1の構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る測定システムの一構成例を示す図である。図1に例示される測定システム1は、制御装置10と、ロボットアーム30と、ハンド部40と、力覚センサ50と、接触子60とを備える。
【0026】
制御装置10は、プロセッサ11と、一次メモリ12と、二次メモリ13とを有する。プロセッサ11は、例えば、CPU(Central Processing Unit)で構成される。プロセッサ11は、GPU(Graphic Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、MPU(Micro Processing Unit)、FPU(Floating point number Processing Unit)、PPU(Physics Processing Unit)、マイクロコントローラ、又は、これらの組み合わせで構成してもよい。
【0027】
一次メモリ12は、例えば、半導体RAM(Random Access Memory)で構成される。二次メモリ13は、記憶部の一例であり、プログラム201が記憶されている。二次メモリ13は、例えば、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、ODD(Optical Disk Drive)、又は、これらの組み合わせで構成される。
【0028】
プロセッサ11は、二次メモリ13に格納されているプログラム201を一次メモリ12上に展開する。そして、プロセッサ11は、一次メモリ12上に展開されたプログラム201に含まれる命令に従って、測定システム1の各部を制御する。
【0029】
なお、本実施形態においては、単一のプロセッサ(プロセッサ11)を用いて測定システム1の各部を制御する構成を採用しているが、本発明は、これに限定されない。すなわち、複数のプロセッサを用いて測定システム1の各部を制御する構成を採用してもよい。この場合、連携して測定システム1の各部を制御する複数のプロセッサは、単一のコンピュータに設けられ、相互に通信可能に構成されていてもよいし、複数のコンピュータに分散して設けられ、ネットワークを介して相互に通信可能に構成されていてもよい。一例として、クラウドサーバを構成するコンピュータに内蔵されたプロセッサと、そのクラウドサーバの利用者が所有するコンピュータに内蔵されたプロセッサとが、連携してプログラム201を実行する態様などが考えられる。
【0030】
ロボットアーム30は、複数のアーム31を含む多関節アームである。ロボットアーム30は、4本のアーム31が3つの関節32で連結されている。但し、ロボットアーム30に含まれるアーム31の数は4本だけに限定されず、アーム31を連結する関節32の数も3つだけに限定されない。
【0031】
ハンド部40は、力覚センサ50を介してロボットアーム30に装着されている。ハンド部40には、接触子60が装着されている。ロボットアーム30は、6自由度を有し、ハンド部40の位置および姿勢を変更可能に支持している。
【0032】
力覚センサ50は、自身に作用する力およびモーメントの方向および大きさを検出する。力覚センサ50は、互いに直交する3軸(X軸,Y軸,Z軸)の各方向に作用する力の大きさ(FX,FY,FZ)と、各軸回りのモーメントの大きさ(MX,MY,MZ)とを検出する6軸力覚センサである。以降、FX、FY、FZ、MX、MY、MZを、力の成分、または、単に検出値とも記載する。力覚センサ50は、検出値に関する信号を制御装置10へ出力する。
【0033】
接触子60は、被測定物Aの表面A1に押接しているとき、表面A1の接点P1の粗さを検出する。接触子60は、表面A1の接点P1の粗さに関する検出信号を制御装置10へ出力する。接触子60は、ロボットアーム30により、ハンド部40の位置および姿勢が変更されると、ハンド部40と共に位置および姿勢が変更される。測定システム1は、接触子60を被測定物Aの表面A1等を倣うように移動させることにより、被測定物Aの表面A1等の粗さを検出することができる。
【0034】
図2は、ハンド部40に装着された接触子60の拡大図である。接触子60は、検出部61と、ハウジング部62とを備える。ハウジング部62の先端部63には、検出部61を内部に収容可能な収容部64を有する。検出部61は、その一部が収容部64から先端部63の外部に突出するように付勢されている。
【0035】
図1に示すように接触子60が被測定物Aの表面A1に押接されている場合は、図3に示すように接触子60の検出部61は、ハウジング部62の収容部64の内部に収容される。図3は、接触子60の検出部61が、ハウジング部62の収容部64の内部に収容された状態を示す。検出部61は、収容部64から突出するように付勢されているため、収容部64に収容された状態であっても被測定物Aの表面A1に接触する。検出部61は、接触している表面A1の粗さをnm単位で検出する。また、ハウジング部62の先端部63も表面A1に接触しており、図1の力覚センサ50は、表面A1に接触したハウジング部62に加わる反力F(FX,FY,FZ)=(0,0,F0)を検出する。
【0036】
図4は、被測定物Aの表面A2に接触子60が接点P2で接触している状態を示す。表面A2は曲面である。図4には、接点P2における表面A2の接線方向70と、その接線方向70に直交する表面A2の法線方向71とが図示されている。図4に示すように、接触子60は、表面A2の法線方向71から表面A2に接触する。
【0037】
図4に示すように接触子60が表面A2に押接されているときも、図2に示した接触子60の検出部61は、ハウジング部62の収容部64の内部に収容されると共に、表面A2の粗さを検出する。また、力覚センサ50は、表面A1に接触したハウジング部62に加わる反力F(FX,FY,FZ)を検出する。
【0038】
(測定システム1の各部を制御する処理)
制御装置10のプロセッサ11が測定システム1の各部を制御する処理には、測定処理と判定処置とを含む。測定処理は、力覚センサに50より検出された反力F(FX,FY,FZ)が所定値(0,0,F0)となるようにハンド部40の姿勢および位置を調整しながら接触子60を被測定物Aの表面A1等に沿って倣わせることにより、被測定物Aの表面A1等の粗さを接触子60の検出部61から取得する処理である。判定処理は、測定処理により取得された被測定物Aの表面A1等の粗さが所定範囲内か否か判定する処理である。
【0039】
図1に示す被測定物Aの表面A1の粗さを取得する方法を例に、測定処理についてより具体的に説明する。プロセッサ11は、ロボットアーム30を制御して、接触子60が法線方向(Z軸方向)から被測定物Aの表面A1を押接するように調整する。プロセッサ11は、反力FのX軸方向成分FXおよびY軸方向成分FYが0となるようにハンド部40の姿勢を調整し、Z軸方向FZが所定値F0となるようにハンド部40の位置を調整する。ここで、F0は、接触子60により被測定物Aの表面A1を傷つけない程度の力である。
【0040】
プロセッサ11は、ロボットアーム30を制御して、力覚センサに50より検出された反力F(FX,FY,FZ)が所定値となるようにハンド部40の姿勢および位置を調整しながら、被測定物Aの表面A1を倣うように接触子60を動かす。プロセッサ11は、力覚センサ50による反力F(FX,FY,FZ)の測定値が所定値となっているタイミングに、接触子60から表面A1等の粗さの測定値を取得する。
【0041】
図5および図6を参照して、測定システム1を用いた、被測定物Aに対する仕上がり検査方法について説明する。図5および図6は、測定システム1を用いた、被測定物Aに対する仕上がり検査方法に関するフローチャートの一例である。
【0042】
(仕上がり検査の検査方法1)
図5に例示される仕上がり検査方法では、スマートフォン等のディスプレイの表面に対する加工の仕上がりを検査する。被測定物Aであるディスプレイの表面には、外光の映り込み防止等を目的として、表面に微細な凹凸を付す防眩加工等の表面処理が施されることがある。従来、ディスプレイの表面に付された凹凸の仕上がり検査には、ヘーズメータが用いられている。しかし、ヘーズメータには一度に計測可能な範囲に制限があり、ディスプレイの表面全体を検査するために手作業で被測定物Aのセット位置を変更する必要があった。測定システム1では、ハンド部40の位置および姿勢を変更することにより、被測定物Aのセット位置を変更することなく、インラインで計測することができる。
【0043】
以下、図5を用いて、測定システム1を用いた被測定物Aであるディスプレイの表面の仕上がり検査方法について説明する。被測定物Aは、その表面A1等に防眩加工等の表面処理が施される(S400)。防眩加工等の表面処理は、仕上がり検査と同じベルトコンベア上で実施する方が効率的である。ベルトコンベア上で実施できない表面処理については、表面処理後に仕上がり検査用のベルトコンベア上にセットする。
【0044】
S401において、制御装置10のプロセッサ11は、仕上がり検査のベルトコンベア上の被測定物Aに対して測定処理を実行することにより、防眩加工等の表面処理が施された被測定物Aの表面A1等の粗さの測定値を取得する。
【0045】
S402において、プロセッサ11は、判定処理を実行することにより、S401にて取得された被測定物Aの表面A1等の粗さの測定値がすべて所定範囲内か否かを判定する。プロセッサ11は、被測定物Aの表面A1等の粗さの測定値がすべて所定範囲内である場合は(S402:YES)、被測定物Aを合格品とみなす(S403)。プロセッサ11は、被測定物Aの表面A1等の粗さの測定値が所定範囲外の部分が存在した場合は(S402:NO)、その被測定物Aを不合格品とみなし(S404)、図4の検査を終了する。合格品は次の製造工程に進み、不合格品は被測定物Aの表面A1等の粗さの測定値が所定範囲外となった原因の究明に用いられる。
【0046】
(仕上がり検査の検査方法2)
図6に例示される仕上がり検査方法では、被測定物Aである自動車部品等に対する塗装工程の仕上がりを検査する。塗装は、表面処理の一例であって、塗装膜による被測定物Aの表面A1等の保護、防カビ・抗菌等による被測定物Aの付加価値の向上、被測定物Aの見た目の改善等を目的として実施される。従来、塗装工程の仕上がり検査は、検査員による目視にて実施されることが多かった。しかし、照明の当て方等により被測定物Aの見え方が変化するため、傷等の見落とし等無く検査を実施することが困難であった。
【0047】
以下では、仕上がり検査の対象となる被測定物Aの個数が1つの場合について説明する。仕上がり検査の対象となる被測定物Aの個数が複数の場合は、複数の被測定物Aのそれぞれに対して、以下に例示する検査方法を実行することにすればよい。
【0048】
被測定物Aに塗装を行うのに先立って、被測定物Aの表面A1等に対して、付着している汚れの除去、塗料の密着性の向上等を目的とした表面処理を実施する。例えば、被測定物Aの表面A1等を粗面化する下地処理を施す下地処理工程を実施する(S500)。
【0049】
S501において、プロセッサ11は、S500の下地処理工程により下地処理を施された被測定物Aに対して測定処理を実行することにより、被測定物Aの表面A1等の粗さの測定値を取得する第1測定工程を実施する。
【0050】
S502において、プロセッサ11は、S501の第1測定工程において取得された被測定物Aの表面A1等の粗さの測定値がすべて塗装に適した粗面の第1範囲内か否かを判定する判定処理を実行する第1判定工程を実施する。プロセッサ11は、被測定物Aの表面A1等の粗さの測定値がすべて第1範囲内である場合は(S502:YES)、被測定物Aを塗装工程(S503)に進める。また、プロセッサ11は、被測定物Aの表面A1等の粗さの測定値が第1範囲の範囲外である部分が存在した場合には(S502:NO)、その被測定物Aを不合格品とみなし(S507)、その被測定物Aを生産ラインから除外し、その被測定物Aに対する図6の検査を終了する。
【0051】
S503の塗装工程では、S502の第1判定工程により表面A1およびA2等の粗さが塗装に適した粗さの範囲内にあると判定された被測定物Aに対して、表面処理の一例である塗装が施される(S503)。
【0052】
S504において、プロセッサ11は、S503の塗装工程により塗装された被測定物Aに対して測定処理を実行することにより、塗装後の被測定物Aの表面A1等の粗さの測定値を取得する第2測定工程を実施する。
【0053】
S504の第2測定工程では、S501の第1測定工程において接触子60を被測定物Aの表面A1等に沿って倣わせたハンド部40の軌跡に基づいて、ハンド部40の姿勢および位置を調整することにしてもよい。このようにすることで、接触子60の押接により被測定物Aの表面A1等を傷つけることを抑制することができる。
【0054】
S505において、プロセッサ11は、S504の第2測定工程において取得された被測定物Aの表面A1等の粗さの測定値がすべて塗装完了後の被測定物Aとして適正な第2範囲内か否かを判定する判定処理を実行する第2判定工程を実施する。プロセッサ11は、被測定物Aの表面A1等の粗さの測定値がすべて第2範囲内である場合は(S505:YES)、当該被測定物Aを塗装工程の合格品とみなす(S506)。また、プロセッサ11は、被測定物Aの表面A1等の粗さの測定値が第2範囲の範囲外である部分が存在した場合は(S505:NO)、その被測定物Aを不合格品とみなし(S507)、その被測定物Aを生産ラインから除外し、図6の検査を終了する。
【0055】
〔変形例〕
上記実施形態に係る測定システム1では、プログラム201は、制御装置10の二次メモリ13に記憶されているものとしたが、これだけに限定されない。例えば、プログラム201を制御装置10の外部の記憶部に記憶することにしてもよい。
【0056】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0057】
1 測定システム
10 制御装置
11 プロセッサ
12 一次メモリ
13 二次メモリ
30 ロボットアーム
40 ハンド部
50 力覚センサ
60 接触子
61 検出部
62 ハウジング部
64 収容部
71 法線方向
201 プログラム
A 被測定物
A1、A2 表面

図1
図2
図3
図4
図5
図6