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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110311
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】草地の管理方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 20/00 20180101AFI20240807BHJP
【FI】
A01G20/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014835
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】篠田 萌子
(72)【発明者】
【氏名】北島 信行
【テーマコード(参考)】
2B022
【Fターム(参考)】
2B022AA01
2B022AB01
2B022AB02
(57)【要約】
【課題】雑草の防除に特段の処置を必要としない草地の管理方法を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態における管理方法は、草地において、草刈り機の刈り歯の高さを地表面から40~100mmに保持し、少なくとも2日に1回草刈りを行うことで、前記草地に生育する植物を選択的に地被化させ、前記草地を前記地被化させた植物により水平方向に被覆することを含む。地被化は、草刈り機を用いた草刈りにより、草地に生育する植物を矮性化すること及び水平方向への成長を促進させることを含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
草地において、草刈り機の刈り歯の高さを地表面から40~100mmに保持し、少なくとも2日に1回草刈りを行うことで、前記草地に生育する植物を選択的に地被化させ、前記草地を地被化させた前記植物により水平方向に被覆する、草地の管理法。
【請求項2】
前記地被化は、前記草刈り機を用いた草刈りにより、前記草地に生育する植物を矮性化すること及び水平方向への成長を促進させることを含む、請求項1の管理方法。
【請求項3】
前記草地に生育する前記植物は匍匐型の植物を含む、請求項1の管理方法。
【請求項4】
さらに前記草地に生育する前記植物を、押圧することにより地被化することを含む、請求項2の管理方法。
【請求項5】
前記草地に生育する前記植物は、コメツブツメクサ及びオオイヌノフグリである、請求項1の管理方法。
【請求項6】
前記草地に生育する前記植物が、芝草を含む、請求項1の管理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、草地において、所定の頻度かつ所定の高さで草刈りを行うことにより、植物を選択的に矮性化させ、矮性化させた植物を水平方向へ広がるように育成させ、草地を管理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、芝草を含む草地における草刈りは、概ね1~2ヶ月に1回程度の頻度で行われることが多い。
【0003】
特許文献1には、20mm以上100mm以下の刈り高で1週間に1回以上7回以下の頻度で実施されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-114275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
芝生には芝草以外の雑草が侵入し成長する場合があり、それらは刈り取り、抜き取り、又は除草剤の使用などにより防除しなければならず、管理者の負担となっていた。また、これらの雑草を草刈り機を用いて刈る場合、芝草の刈り高よりも低いものは、芝草の刈取り時に一緒に刈ることができない。芝生の刈取り時に一緒に刈ることができない雑草は、芝草とは異なる植物であるため、地面を芝生一面で覆うようなきれいな外観を提供することができなかった。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するために、草地に芝草以外の植物が侵入した場合であっても、芝草と芝草以外の植物を共存させ、或いは芝草以外の植物で地表を覆い、きれいな外観を提供する草地の管理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態における管理方法は、草地において、草刈り機の刈り歯の高さを地表面から40~100mmに保持し、少なくとも2日に1回草刈りを行うことで、草地に生育する植物を選択的に地被化させ、草地を地被化させた植物により水平方向に被覆することを含む。
【0008】
本発明の一実施形態における管理方法において、地被化は、草刈り機を用いた草刈りにより、草地に生育する植物を矮性化すること及び水平方向への成長を促進させることを含む。
【0009】
本発明の一実施形態における管理方法は、草地に生育する植物が匍匐型の植物を含む。
【0010】
本発明の一実施形態における管理方法は、さらに草地に生育する植物を、押圧することにより地被化することを含む。
【0011】
本発明の一実施形態における管理方法は、草地に生育する植物が、コメツブツメクサ及びオオイヌノフグリである。
【0012】
本発明の一実施形態における管理方法は、草地に生育する植物が、芝草を含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る草地における草刈り前の状態を示す模式図である。
図2】本発明の一実施形態に係る草地における草刈り直後の状態を示す模式図である。
図3】本発明の一実施形態に係る草地における草刈り後、所定の期間が経過した後の状態を示す模式図である。
図4A】草刈りを行わずに生育させた草地におけるコメツブツメクサの様子を表す画像である。
図4B】1.5カ月間草刈りを継続した場合のコメツブツメクサの様子を表す画像である。
図4C】1.5カ月間草刈りを継続した場合のコメツブツメクサの様子を表す画像である。
図4D】3カ月間草刈りを継続した場合のコメツブツメクサの様子を表す画像である。
図5】実施例Aの条件で生育させたオオイヌノフグリの様子を表す画像である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明につき図面を参照しつつ説明する。なお、本発明を実施するための形態により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0015】
本明細書中において、芝生とは、芝草のみが生育する土地、及び芝草と芝草以外の植物の両方が生育する土地を意味する。
【0016】
本明細書中において、草地とは、上記定義した芝生を意味するとともに、芝草以外の植物のみが生育する土地を意味する。
【0017】
本明細書中において、匍匐型の植物とは、地表面付近に沿って生育する植物を意味し、地上匍匐茎及び/又は地下匍匐茎を有する植物並びに地上匍匐茎及び/又は地下匍匐茎を有さない植物の両方を含む。また、後述の矮性化により後天的に地表面付近に沿って生育する傾向を有することとなった植物をも含む。
【0018】
本発明の一実施形態に係る草地に生育する植物について説明する。
<芝草>
本発明において、草地に生育する芝草は、ゴルフ場や公園において栽培されている匍匐茎を有するイネ科の草を意味し、例えば、コウライシバ、ヒメコウライシバ、ノシバ、ビロードシバ、或いはティフトン419等などを含むバミューダグラス類、センチピードグラス、ベントグラス類を含む。また地下匍匐茎を含む品種としては、ブルーグラス類を含む。
【0019】
芝草における生育期及び休眠期若しくは生育衰退期の時期及びその割合は、芝草の種類及び地域により多少変化するが、例えば暖地型芝草であるコウライシバの生育期は本州以南において3月~12月の期間が生育期であり、寒地型芝草であるベントグラス及びブルーグラスは北海道や高冷地においては4月~11月の期間、本州以南においては3月~12月の期間が生育期である。
【0020】
芝草の匍匐茎としては、地上匍匐茎及び地下匍匐茎を含むもの、又は地下匍匐茎を含むものがある。ここで、地上匍匐茎は、地上において横方向に這って伸びる匍匐茎であり、地下匍匐茎は、地上付近の地下を横方向に伸びる匍匐茎である。
【0021】
芝草は上方に伸びると、光合成による生産能力は、根元付近に比べて上方に伸びた部分の方が大きくなり、地表面から所定の高さにある成長点を起点にして成長する。芝草は、過分に伸びると根元付近が老化してしまうため、過分に伸びた後に成長点よりも下側で刈られた場合、老化した生産能力が低い部分が残され、却って成長の妨げとなる。
【0022】
芝草の成長点は芝草全体の高さが高くなるほど地表面に対して上方に移動する。したがって、芝草は、芝草全体高さが高くなりすぎないうちに、成長点よりも上側の部分を刈り取ることによって、生産能力の高い部分を残しつつ上方への生長を抑制し、横に拡がって伸びる匍匐茎へ養分を行き渡らせ、横方向への生長を促進させることができる。
【0023】
また、芝草がバミューダグラス類のような地上匍匐茎及び地下匍匐茎を含む品種である場合、横方向に地上で伸びる匍匐茎は、地面から浮き上がる傾向にある。したがって、芝刈り工程において、刈り高さは、地面から浮き上がった匍匐茎を刈ってしまう高さより高いことが好ましく、かつ刈り取ることによって芝草の根元付近の老化が抑制可能な高さより低いことが好ましい。
<芝草以外の植物>
芝生において、芝草とともに生える代表的な雑草は、その生育態様により分別することができる。例えば、一本の茎の根元から複数の茎が分かれて立ち上がって成長する株立ち型、地表面付近から茎が分かれて成長する分岐型、地面に張り付くようにして根際から出た葉(根生葉)を円形に拡げているロゼット型、地表面付近又は地下の匍匐茎が放射状に広がって行き、匍匐茎における節から根を出し地面に張り付きながら成長する匍匐型など多岐にわたる。
【0024】
直立型の雑草の例としては、スベリヒユ、ハコベ、ツメクサなどが挙げられる。
【0025】
分岐型の雑草の例としては、シロザ、アオゲイトウなどが挙げられる。
【0026】
ロゼット型の雑草の例としては、タンポポ類、オオバコ類などが挙げられる。
【0027】
匍匐型の雑草の例としてはコメツブツメクサ、オオイヌノフグリ、シロツメクサ、メヒシバ類などが挙げられる。
<地被化植物の選択>
上述のような多種の雑草が芝草とともに芝生に生育する場合、芝草の刈り取り時に一緒に刈られることで枯れてしまう種類の雑草もある。上述のとおり、芝草はその成長点よりも高い位置で刈られることが一般的であり、通常は地表面から20mm~50mm以上の高さで刈られる。その際、例えば直立型の雑草が刈られると、刈られた部分よりも下側に成長点がない雑草は、刈り取られた後に成長が抑制され枯れてしまう場合がある。又は雑草の上方にある葉を刈り取られることで、光合成が困難となり、枯れてしまう場合もある。以上により、芝草以外の雑草は、芝草を刈り込む工程において淘汰される場合がある。
【0028】
他方、地表面付近や地下に成長の拠点となる芽があるような匍匐型の雑草については、芝草の刈取り時に一緒に刈られない芽が残存し、そこから新しい茎葉が出ることにより再生する場合がある。
【0029】
さらに、出願人は、後述する実施例において、匍匐型の雑草の場合、上方の芽が刈られ、さらに刈られた後の草刈り機による押圧などされるにより、却って地表面上に残存する下部の芽からの成長が促進され、これらから出た茎葉は上方に成長せず、地表面付近を這うように成長する種があることを見出した。また、地下匍匐茎を有するものには、地下で横方向に広がっていき、個々から発生した茎葉が地表面を覆う傾向が強い種があることを見出した。
【0030】
本明細書中において、草地に生育する雑草などの植物の上方を刈り続け、加えて草刈り機による押圧により、葉の形態が元の形態よりも小さくなる傾向を有する種があることを見出した。本明細書においては、このように植物の形体を人為的に小さくすることを矮性化と呼ぶ。
【0031】
本発明者は、上述のように草地に生育する雑草などの植物の上方を刈り続け、加えて草刈り機による押圧により、後天的に地表面付近で水平方向へ成長する傾向が強まる種があることを見出した。
【0032】
本明細書中において、上述の植物の矮性化とともに、又は矮性化とは別に、匍匐型の雑草などにおいて、先天的に地表面付近で水平方向へ成長する傾向を有する種を残すとともに、後天的に地表面付近で水平方向へ成長する傾向を強めた種を残し、結果としてこれらの雑草で草地表面の一部を覆うことができるようにすることを地被化と呼ぶ。
【0033】
本発明の草地の管理方法は、こうした人為的に地被化する傾向を有する(芝草以外の)雑草を利用することで草地の表面を覆い、結果として草地の美観を維持できるようにしたものである。
【0034】
以下、出願人が実際に実験、観察し、一定の刈り高さ及び一定の刈頻度で草刈り機を利用することで、匍匐型の植物の生育状態を変化させ地被化を促進させ得ることが分かった。その植物の生育の変化について、具体的に説明する。
【0035】
図1は芝草100、匍匐型の雑草200、及び分岐型の雑草300が共生している草地の模式図である。図1において破線で表される芝草100は、地表面からの高さがHより低い位置に成長点110を有する。なお、上述のように芝草100は、通常は地上匍匐茎及び地下匍匐茎を含む品種を使用するが、図1では図面を簡略化するために、これら芝草100の匍匐茎や根は図示を省略する。図1における刈取り位置(破線)は、芝草100の成長点110よりも上の位置で、地表面からHの高さにある刈り取り予定の位置を示す。
【0036】
匍匐型の雑草200は、地表面上に水平方向に広がる匍匐茎210を有し、匍匐茎210は複数の節220を有する。匍匐型の雑草200は、節220のそれぞれから根230を発根することができ、この根230を介して地面からの養分を吸収する。また、匍匐型の雑草200はこの節220から発芽することができ、この節220を拠点として成長が促進される。なお、図1では上方向に3本の茎が伸びており、3本の茎のうち2本の上端は、芝の刈取り位置よりも高くなっている。
【0037】
分岐型の雑草300は、匍匐茎を有さず、地表面上の1カ所から3本の茎が伸び、茎はさらに上方で複数に分岐し葉が成長している。また茎の一部の上端は刈取り位置よりも上側に位置している。
【0038】
図2は、地表面から高さHの位置で刈り取った直後の状態を示す。芝草100は成長点110よりも上側の位置(地表面よりHの高さ)で刈られ、芝草100の刈り取りと一緒に、匍匐型の雑草200及び分岐型の雑草300は、地表面から高さH以上にある茎や葉の部分は全て刈り取られている。その後、図示はしないが、草刈り機により、芝草100、匍匐型の雑草200及び分岐型の雑草300は押圧されてもよい。
【0039】
すなわち、雑草200の一部が地表に沿って成長しやすくなるように、草地を適宜押圧してもよい。芝草100や匍匐茎を有する雑草200は、節220のそれぞれから根230が発根するため、これらを地面に活着させることによって、地中からの養分を吸収できるようにし、地表面に水平な方向への成長を促進させることができる。これにより草地全体の水平性を維持することが容易になる。押圧は、例えば草刈りを自走式の草刈り機などで行う場合、その車輪やクローラなどの走行手段に突起をつけ、草地を走行させることにより行ってもよい。
【0040】
図3は、少なくとも2日に1回の頻度で、刈取りとその後の草刈り機による押圧を続け、所定の期間が経過した後の状態を示す。ここで所定の期間とは、上述の刈取りの開始日から3か月以降を意味している。上部を刈り取られた芝草100は、依然として成長点110を残している。したがって、上部を刈り取られた後でも、刈取り位置から上方側に新たな茎を成長させることができる。
【0041】
匍匐型の雑草200は、葉が刈り取られた茎は光合成ができなくなるため成長できず、部分的に枯れてしまう。しかし、匍匐型の雑草200においては地表面付近の節220が残存するため、節220から新しい茎葉が出て再生することができる。しかし、高さHで少なくとも2日1回の頻度で一定期間続けることで、再生した新しい茎葉は、草刈り前とは異なる生育をする。草刈り前は図1のように、茎が地表面から垂直方向に成長しているが、草刈りと押圧を繰り返すことで、図3のように、節220から再生した新しい茎葉は、草刈り前よりも水平方向に成長し、また葉の大きさも小さくなる(矮性化)。加えて、図1のように、草刈り前は節220から長い1本の茎が成長していたが、図3では、節220より短い2本以上の茎が新たに成長することがあり、このような刈取り前後の生育の変化により、地面の面積に対する匍匐型の雑草200の草量密度が増す。この場合、刈取り前よりも、匍匐型の雑草200が草地を覆う密度が増すこととなる。すなわち、草刈りを一定の高さ及び一定の頻度で行うことで、匍匐型の雑草200は、葉の形態が小さくなるように矮性化するだけでなく、水平方向に広がるように生育することで、地面に対するその草の密度(草量)が増える。これは刈取りにより、刈取り前よりも芽が増えて繁茂することによる。
【0042】
すなわち匍匐型の雑草200においては、上部を頻繁に刈り込み、場合によっては押圧を続けることにより、新たな芽の成長方向が上方から地表面に平行な方向へ変化していく場合がある。このように、地表面から所定の高さに刈り込み、場合によっては押圧を続けることにより、地表面に水平な方向へ草量を増していく品種を選択的に残すことができるようになり、草地表面を水平に維持できるようになる(地被化)。
【0043】
分岐型の雑草300は、上部が刈られた茎は、葉が無くなったことで光合成ができなくなるため、成長できなくなり枯れてしまう。一方、芝草100とともに刈られなかった部分については引き続き成長を続けることもある。しかし、次に芝草が刈られた段階で、成長した分岐型の雑草300の茎葉の部分が刈られてしまうと、光合成ができなくなるため枯れてしまう。
【0044】
なお図1~3の例では、匍匐型の雑草200は選択的に地被化され、水平方向への生育が助長されることで草地に生育し続け、分岐型の雑草300は、刈取りにより淘汰されてしまう。しかし、雑草の種別と地被化による選択可否は必ずしも一致しない。例えば匍匐型の雑草200でも刈取りによる地被化がされない場合もあり、分岐型の雑草300でも上部の刈取りにより地被化する場合がある。また、匍匐茎の形状や共存する雑草の種類などにより、選択される雑草が変動することもあり、地上匍匐茎及び/又は地下匍匐茎を有していない雑草で、匍匐型の雑草200でないものが選択的に残存する場合もある。
【0045】
このように、芝草100の草刈りを継続して行うことにより、芝草100とともに生育している草地内の雑草の選択的地被化が行われることとなり、結果として芝草100と図1~3の匍匐型の雑草200により地表がきれいに覆われた草地に整備することができる。
【0046】
このように、芝草と共存する雑草において、草刈り機を用いて芝草を一定の頻度で刈りとることで、多種の雑草の中から選択的に地被化させ、芝草とともに地表面を一定の密度で覆うことができるようになる。
【0047】
本発明の一実施形態において、芝草の刈り高は芝草の成長点により適宜設定することができる。しかし芝草の成長点よりも低く刈ると芝草の褐色部分が露出し、成長が遅くなる。また、成長点よりも高すぎる位置で刈ると、芝草の成長点が上方に移動しまうため芝草の成長点以下で刈らないように刈り高の設定が難しくなる。また、芝草の刈込による共存させる雑草の選択も困難になる。したがって、芝草の刈り高さは、例えば、20mm以上100mm以下、好ましくは、40mm以上50mm以下である。なお、芝草が100mmより伸びてしまった場合は、成長点を切断してしまわないように、刈り高さを50mm以上100mm以下とすることが好ましい。
【0048】
本発明の一実施形態において、芝草を刈る頻度は草地の土壌や気候などにより適宜設定することができる。しかし、頻度が少なすぎると芝草の高さが高くなりすぎ、成長点が上方に移動しまうため芝草を短く刈ることができなくなり、芝草の刈込による共存させる雑草の選択が困難になる。また、必要以上に頻度を高くしても、意味はない。したがって、概ね3日に一回以上の頻度で刈り取ることが好ましく、2日に1回以上の頻度で刈り取ることがより好ましく、1日に1回の頻度で刈り取ることが最も好ましい。
【0049】
本発明の一実施形態において、茎の上方を継続的に刈ることにより地被化し、地表面付近で草量が増す雑草としてはメヒシバなどのイネ科の植物、コメツブツメクサなどのマメ科の植物、オオイヌノフグリなどのオオバコ科の植物が挙げられる。これらの雑草は、芝草を含む草地において芝草の刈り高に合わせることで地表面に沿って成長し、草地全体を水平に維持できる。
【0050】
本発明の一実施形態において、草地には芝草を含まず、雑草のみで構成されていてもよい。例えば匍匐型の雑草200を含む多種の雑草のみからなる草地において、これら雑草を所定の刈り高で頻度草刈りを行うことにより、地被化可能な雑草を選択し、芝草を含まない雑草のみで草地の水平を維持し、美しい美観を有する草地とすることもできる。
【実施例0051】
以下、本発明の実施形態における一態様につき、実施例を用いて具体的に説明する。しかし、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
<実施例1>
草刈りの頻度を変えることによる、コウライシバ芝生地におけるコメツブツメクサの生育の様子を観察した。草刈り機はハスクバーナ社製ロボット草刈り機AUTOMOWER(登録商標)435AWDを使用し、草刈り時に草刈り機の突起付きの車輪により植物を押圧させた。
【0052】
図4Aは草刈りを全くしなかった場合のコメツブツメクサの生育の様子を表す画像である。図4A破線内に示すように、コメツブツメクサは、もともと上方向に成長しやすい植物であることが分かる。
【0053】
図4B及び図4Cは、地表から4cmの刈り高さ、1日に1回の頻度で、1.5カ月間草刈りを継続した場合のコメツブツメクサの様子を表す画像である。図4B及び図4C破線内に示すように、草刈りを1.5カ月継続すると、コメツブツメクサの葉が小さくなり、さらに地表面付近にて葉の密度が増加し、色味も濃くなることが観察された。
【0054】
図4Dは、地表から4cmの刈り高さ、1日に1回の頻度で、3カ月間草刈りを継続した場合のコメツブツメクサの様子を表す画像である。図4D破線内に示すように、草刈りを3カ月継続すると、地表面付近の葉の密集度がさらに高まり、色味もさらに濃くなることが観察された。すなわち、頻繁な草刈りによりコメツブツメクサが地被化されることが観察された。
<実施例2>
カラスノエンドウ、ヒメスミレ、オオニシキソウ、シロツメクサ及びコメツブツメクサを含む雑草が生息するコウライシバ芝生地において、下記表1の条件において、定期的に草刈り機を用いて草刈りを行うことにより、植物の生育状況を観察する試験を行った。また、草刈り機はハスクバーナ社製ロボット草刈り機AUTOMOWER(登録商標)435AWDを使用し、草刈り時に草刈り機の突起付きの車輪により植物を押圧させた。なお下表の実施例Aと比較例Aの土地は隣接している。
【0055】
【表1】
【0056】
実施例Aでは、コウライシバに加え、コメツブツメクサ及びオオイヌノフグリのみが生育し、それ以外の植物の生育は確認できなかった。
【0057】
コメツブツメクサ及びオオイヌノフグリは、草刈り機による草刈りを約1カ月継続した時点で、葉が小さくなり矮性化していることを確認した。その後、草刈りを始めて約3カ月過ぎた時点で、矮性化に加え、生育が水平方向に広がり、地被化したことを確認した。図5は、実施例Aの条件にて草刈りをした場合のオオイヌノフグリの状態を表す画像である。図5破線内に示すように、頻繁な草刈りによりオオイヌノフグリは矮性化され、さらに地表面に沿って密集して生育していることが観察された。
【0058】
以上より、実施例Aの草地は、コメツブツメクサ、オオイヌノフグリ及び芝草により地表が覆うことができることがわかった。すなわち、芝草だけでなく地被化したコメツブツメクサやオオイヌノフグリなどの雑草により、草地表面をまんべんなく覆うことができ、良好な美観を維持することができることが分かった。
【0059】
比較例Aの草地では、カラスノエンドウやヒメスミレ、オオニシキソウ、シロツメクサ、コメツブツメクサが生育し、コウライシバよりも草丈が高く伸長した。そのため草地を水平に維持することができなかった。このことから、毎日芝刈りを実施することでコウライシバ以外の特定の種は、それらも矮性化し且つ水平方向に広がり成長することから、芝草とともに、地面の被覆を補完する植物として利用できることが明らかとなった。
<実施例3>
コウライシバを剥ぎ取り客土した土地において、自然移入する芝草及び雑草について、下記表2の条件において、定期的に草刈り機を用いて刈取りを行うことにより、植物の生育状況を観察する試験を行った。また、草刈り機はハスクバーナ社製ロボット草刈り機AUTOMOWER(登録商標)305を使用し、草刈り時に草刈り機の突起付きの車輪により植物を押圧させた。下表の実施例Bと比較例Bの土地は隣接している。
【0060】
【表2】
【0061】
実施例Bの土地においては、自然移入したメヒシバが優占的に生育し草地の水平が維持され、芝生地として利用できるものとなった。一方、比較例Bの土地では、エノコログサ及びシロツメクサが優占的に生育したため草地の水平が維持できず、芝生地として利用できないものであった。
【0062】
上述した各実施形態によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと理解される。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5