(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110314
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】真空断熱容器及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A47J 41/02 20060101AFI20240807BHJP
B65D 81/38 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
A47J41/02 102D
B65D81/38 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014838
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000175766
【氏名又は名称】三恵技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109243
【弁理士】
【氏名又は名称】元井 成幸
(72)【発明者】
【氏名】元岡 新也
(72)【発明者】
【氏名】小泉 誠一
【テーマコード(参考)】
3E067
4B002
【Fターム(参考)】
3E067AA03
3E067AA11
3E067AB01
3E067AB26
3E067AC01
3E067BA07B
3E067BA07C
3E067BB11B
3E067BB11C
3E067BC03B
3E067BC03C
3E067CA18
3E067FA04
3E067FC03
3E067GA11
3E067GA13
4B002AA01
4B002BA31
4B002CA32
4B002CA43
(57)【要約】
【課題】高温環境での使用時や表面処理槽への浸漬時に封止材を保護する金属製保護板が脱落することを防止できると共に、容器外周面の美的外観を非常に高めることができる。
【解決手段】略有底筒状で金属製の内容器2と略有底筒状で金属製の外容器3との間に減圧空間4が設けられる真空断熱容器1であり、外容器3の底部に、外容器3の口側に向かって突出するように平板形にへこんだ嵌合凹部322が形成され、嵌合凹部322の上板323に封止用凹部325が形成され、封止用凹部325に形成された真空排気用の排気孔326が封止材327で封止され、封止材327を保護する金属製保護板6が嵌合凹部322に嵌合され、嵌合凹部322の内側に配置されている金属製保護板6の外周面61の下部と嵌合凹部322の内周面とが周状に溶接される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略有底筒状で金属製の内容器と略有底筒状で金属製の外容器との間に減圧空間が設けられる真空断熱容器であって、
前記外容器の底部に、前記外容器の口側に向かって突出するように平板形にへこんだ嵌合凹部が形成され、
前記嵌合凹部の上板に、前記外容器の口側に向かって突出するようにへこんだ封止用凹部が形成され、
前記封止用凹部に形成された真空排気用の排気孔が前記封止用凹部に設けられる封止材で封止され、
前記封止材を保護する金属製保護板が前記嵌合凹部に嵌合され、
前記嵌合凹部の内側に配置されている前記金属製保護板の外周面の下部と前記嵌合凹部の内周面とが周状に溶接されていることを特徴とする真空断熱容器。
【請求項2】
前記金属製保護板の外周面に対する前記嵌合凹部の内周面の下方に向かって広がる傾斜角度が0°~3°であると共に、
前記金属製保護板の板厚が0.2mm~1.0mmであることを特徴とする請求項1記載の真空断熱容器。
【請求項3】
略有底筒状で金属製の内容器と略有底筒状で金属製の外容器との間に減圧空間が設けられ、前記外容器の底部に前記外容器の口側に向かって突出するように平板形にへこんだ嵌合凹部が形成され、前記嵌合凹部の上板に前記外容器の口側に向かって突出するようにへこんだ封止用凹部が形成され、前記封止用凹部に形成された真空排気用の排気孔が前記封止用凹部に設けられる封止材で封止される真空断熱容器の製造方法であって、
前記封止材を保護する金属製保護板を前記嵌合凹部に嵌合する第1工程と、
前記嵌合凹部の内側に配置されている前記金属製保護板の外周面の下端と前記嵌合凹部の内周面との近接箇所に断続的にレーザー光を照射してレーザー溶接の溶接部を形成する第2工程と、
前記金属製保護板の外周面の下部に前記溶接部を周状に形成する第3工程と、を備えることを特徴とする真空断熱容器の製造方法。
【請求項4】
前記溶接部を形成する前の、前記金属製保護板の下面の延長面と前記嵌合凹部の内周面との交差箇所と、前記金属製保護板の外周面の下端との距離が0mm~0.2mmであり、
前記第2工程において、前記交差箇所と前記金属製保護板の外周面の下端とに断続的にレーザー光を照射して溶接部を形成することを特徴とする請求項3記載の真空断熱容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば二重構造のマグカップ、スープカップ、ランチジャー、携帯用魔法瓶、卓上魔法瓶等、内容器と外容器との間に減圧空間が設けられる真空断熱容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内容器と外容器との間に減圧空間が設けられる真空断熱容器として、外容器の底部に設けられた真空排気用の排気孔を、ガラス製若しくは金属製のろう材又は接着剤のような封止材で封止し、ステンレス製保護板を封止材を保護するように外容器の底部に接着剤で接着するものがある(特許文献1、2参照)。この真空断熱容器は、外容器の底部に接着されたステンレス製の保護板により、落下時等の衝撃で容器が変形しにくくすることが可能である。
【0003】
しかし、ステンレス製保護板を接着剤で接着する構造では、接着剤の耐熱性の不足により、高温環境での使用時にステンレス製保護板が外れてしまう虞がある。また、真空断熱容器の外観性を高めるため、製造時に発色処理槽やめっき処理槽のような表面処理槽に真空断熱容器を浸漬した際に、ステンレス製保護板を接着している接着剤が外れて、表面処理を行うことが困難になるという問題もある。
【0004】
このような問題点をある程度解消できるものとして特許文献3の真空断熱容器がある。特許文献3の真空断熱容器は、封止材を保護する金属製保護板の外容器底部への溶接の困難性に対処するため、外容器の外筒の下部に胴部よりも小さい段部を設け、外筒の胴部と底カバーの胴部とを嵌合して当接し、外筒の胴部と底カバーの胴部との当接部で溶接したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-219125号公報
【特許文献2】特開2001-87144号公報
【特許文献3】特開2015-131039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献3の真空断熱容器は、封止材を保護する金属製保護板に相当する金属製の底カバーの胴部と外筒の胴部を溶接するものであるから、外容器底部に金属製保護板を接着する接着剤を用いる必要がなく、高温環境での使用時や表面処理槽への浸漬時に金属製保護板が外れることを防止することができる。しかしながら、この真空断熱容器は、使用者の目を引きやすい外容器周側壁の外周面に溶接部が形成される構造であるため、真空断熱容器の美的外観が損なわれるという別の問題を生ずる。
【0007】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであって、高温環境での使用時や表面処理槽への浸漬時に封止材を保護する金属製保護板が脱落することを防止できると共に、容器外周面の美的外観を非常に高めることができる真空断熱容器及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の真空断熱容器は、略有底筒状で金属製の内容器と略有底筒状で金属製の外容器との間に減圧空間が設けられる真空断熱容器であって、前記外容器の底部に、前記外容器の口側に向かって突出するように平板形にへこんだ嵌合凹部が形成され、前記嵌合凹部の上板に、前記外容器の口側に向かって突出するようにへこんだ封止用凹部が形成され、前記封止用凹部に形成された真空排気用の排気孔が前記封止用凹部に設けられる封止材で封止され、前記封止材を保護する金属製保護板が前記嵌合凹部に嵌合され、前記嵌合凹部の内側に配置されている前記金属製保護板の外周面の下部と前記嵌合凹部の内周面とが周状に溶接されていることを特徴とする。
これによれば、封止材を保護する金属製保護板を外容器の底部の嵌合凹部に周状に溶接することにより、金属製保護板を外容器の底部に固定する接着剤が不要となり、高温環境での使用時や表面処理槽への浸漬時に封止材を保護する金属製保護板が脱落することを防止できる。また、金属製保護板の外周面の下部と嵌合凹部の内周面とを周状に溶接する溶接部は、使用者の目を引きやすい真空断熱容器の外周面ではなく底側に設けられることから、真空断熱容器の外周面の美的外観を非常に高めることができる。また、外容器の底部は嵌合凹部の形成により剛性が高められていることから、真空排気による外容器の底部の変形を防止し、溶接する金属製保護板の外周面の下部と嵌合凹部の内周面との位置関係に許容範囲を超える誤差が発生することを防止することができ、金属製保護板の外周面の下部と嵌合凹部の内周面とを確実に溶接することができる。また、溶接する金属製保護板の外周面の下部を嵌合凹部の内側に配置することにより、溶接時に加熱する領域を狭い範囲に絞り、余分な熱が外容器の底部に入熱することを防止することができ、外容器の底部に穴開きが発生することを防止することができる。
【0009】
本発明の真空断熱容器は、前記金属製保護板の外周面に対する前記嵌合凹部の内周面の下方に向かって広がる傾斜角度が0°~3°であると共に、前記金属製保護板の板厚が0.2mm~1.0mm、より好ましくは0.2mm~0.6mmであることを特徴とする。
これによれば、板厚が0.2mm~1.0mm、より好ましくは0.2mm~0.6mmの金属製保護板の外周面に対する嵌合凹部の内周面の傾斜角度を0°~3°とすることにより、溶接される前の金属製保護板の外周面の下端と嵌合凹部の内周面とを確実に溶接できる距離に近接させ、金属製保護板の外周面の下部と嵌合凹部の内周面とをより確実に溶接、接合することができると共に、溶接時の入熱を金属製保護板と外容器の底部に分散させることができる。更に、金属製保護板の外周面と外容器の嵌合凹部の内周面とが近接することになるから、溶接時に外容器への入熱が大きくなった場合にも、外容器から金属製保護板への直接又は空気を介した熱伝導、外容器から金属製保護板への熱輻射により、外容器への入熱を金属製保護板の方へ伝熱で逃がすことができ、外容器の底部に穴開きが発生することをより確実に防止することができる。
【0010】
本発明の真空断熱容器の製造方法は、略有底筒状で金属製の内容器と略有底筒状で金属製の外容器との間に減圧空間が設けられ、前記外容器の底部に前記外容器の口側に向かって突出するように平板形にへこんだ嵌合凹部が形成され、前記嵌合凹部の上板に前記外容器の口側に向かって突出するようにへこんだ封止用凹部が形成され、前記封止用凹部に形成された真空排気用の排気孔が前記封止用凹部に設けられる封止材で封止される真空断熱容器の製造方法であって、前記封止材を保護する金属製保護板を前記嵌合凹部に嵌合する第1工程と、前記嵌合凹部の内側に配置されている前記金属製保護板の外周面の下端と前記嵌合凹部の内周面との近接箇所に断続的にレーザー光を照射してレーザー溶接の溶接部を形成する第2工程と、前記金属製保護板の外周面の下部に前記溶接部を周状に形成する第3工程とを備えることを特徴とする。
これによれば、封止材を保護する金属製保護板を外容器の底部の嵌合凹部に周状に溶接することにより、金属製保護板を外容器の底部に固定する接着剤が不要となり、高温環境での使用時や表面処理槽への浸漬時に封止材を保護する金属製保護板が脱落することを防止できる。また、金属製保護板の外周面の下部と嵌合凹部の内周面とを周状に溶接する溶接部は、使用者の目を引きやすい真空断熱容器の外周面ではなく底側に設けられることから、真空断熱容器の外周面の美的外観を非常に高めることができる。また、外容器の底部は嵌合凹部の形成により剛性が高められていることから、真空排気による外容器の底部の変形を防止し、溶接する金属製保護板の外周面の下部と嵌合凹部の内周面との位置関係に許容範囲を超える誤差が発生することを防止することができ、金属製保護板の外周面の下部と嵌合凹部の内周面とを確実に溶接することができる。また、溶接する金属製保護板の外周面の下部を嵌合凹部の内側に配置することにより、溶接時に加熱する領域を狭い範囲に絞り、余分な熱が外容器の底部に入熱することを防止することができ、外容器の底部に穴開きが発生することを防止することができる。更に、金属製保護板の外周面の下端と嵌合凹部の内周面との近接箇所に断続的にレーザー光を照射してレーザー溶接することにより、外容器の嵌合凹部の周辺箇所に熱が大量に蓄積されることを確実に防止することができ、外容器の底部に穴開きが発生することをより確実に防止することができる。
【0011】
本発明の真空断熱容器の製造方法は、前記溶接部を形成する前の、前記金属製保護板の下面の延長面と前記嵌合凹部の内周面との交差箇所と、前記金属製保護板の外周面の下端との距離が0mm~0.2mmであり、前記第2工程において、前記交差箇所と前記金属製保護板の外周面の下端とに断続的にレーザー光を照射して溶接部を形成することを特徴とする。
これによれば、断続的なレーザー溶接で外容器の底部に穴開きが発生することをより確実に防止しつつ、0mm~0.2mmの距離で近接する嵌合凹部の内周面と金属製保護板の外周面とをより確実に溶接することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の真空断熱容器によれば、高温環境での使用時や表面処理槽への浸漬時に封止材を保護する金属製保護板が脱落することを防止できると共に、容器外周面の美的外観を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明による実施形態の真空断熱容器を示す正面図。
【
図4】実施形態の真空断熱容器における底部付近の拡大縦断面図。
【
図5】実施形態の真空断熱容器における金属製保護板と嵌合凹部との溶接部付近の拡大縦断面図。
【
図7】実施形態の真空断熱容器の製造工程例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔実施形態の真空断熱容器〕
本発明による実施形態の真空断熱容器1は、
図1~
図5に示すように、略有底筒状でステンレス等の金属製の内容器2と、略有底筒状でステンレス等の金属製の外容器3を有する二重壁構造であり、内容器2と外容器3との間に断熱層を構成する減圧空間4が設けられている。図示例の真空断熱容器1はマグカップであるが、例えば缶クーラー、スープカップ、ランチジャー、携帯用魔法瓶、又は卓上魔法瓶等の真空断熱容器1としても好適である。
【0015】
内容器2は、周側壁21と底部22とから構成され、底部22の略中央に内容器2の口側に向かってドーム状に突出するように形成された凹部221が設けられている。凹部221は、後述する封止用凹部325と対応する位置で凹むように設けられており、落下の衝撃等で外容器3が変形した際に、封止用凹部325と内容器2の底部22とが接触して断熱機能が損なわれることが防止されている。図示例の内容器2は金属板を絞りプレス成形して一体的に形成されているが、内容器2の構成は本発明の趣旨の範囲内で適宜である。
【0016】
外容器3は、略円筒状の胴部31と、外容器3の底部を構成する略円盤状の底板32とから構成される。胴部31の外容器3の口側には、内側に略弧状に折り返された折返部311が設けられており、折返部311の先端部が内容器2の周側壁21の口側の先端部の外側に重なるように配置され、周側壁21の口側の先端縁と折返部311の先端部とが周状に溶接されている。
【0017】
胴部31の外容器3の底側には、内側に弧状に湾曲する湾曲部312が設けられており、更に、湾曲部312の先端から外容器3の口側に起立する起立部313が形成され、起立部313の先端から内側に延びる突出部314が形成されている。底板32は、胴部31の起立部313の内側に嵌合され、突出部314に略密接するように設けられる。底板32は、その外周面321の下部に設けられるレーザー溶接部等の溶接部5で起立部313と接合され、胴部31に固定されている。
【0018】
底板32には、外容器3の口側に向かって突出するように平板形にへこんだ嵌合凹部322が形成されており、嵌合凹部322は外容器3の底部に形成されている。嵌合凹部322は、上板323と、上板323の周縁から屈曲するように形成された立壁324とから構成される。本実施形態では円板形にへこんだ嵌合凹部322が、底板32の内寄りの位置に、底板32の外周面321と同心円状になるようにして形成されている。
【0019】
嵌合凹部322の上板323には、外容器3の口側に向かってお椀形状で突出するようにへこんだ封止用凹部325が形成されており、図示例の封止用凹部325は、上板323の略中央領域、換言すれば真空断熱容器1の径方向の略中央領域に形成されている。封止用凹部325の頂部には真空排気用の排気孔326が形成されており、排気孔326は、封止用凹部325に充填するように設けられたガラス材等の封止材327で封止され、閉塞されている。
【0020】
外容器3の嵌合凹部322には、封止材327を保護するステンレス板等の金属製保護板6が嵌合されている。そして、
図5及び
図6に示すように、嵌合凹部322の凹んだ領域の内側に配置されている金属製保護板6の外周面61の下部と、嵌合凹部322の立壁324の内周面3241とが、レーザー溶接等による溶接部7で周状に溶接されている。尚、
図5及び
図6における符号611は、溶接部7が形成される前の金属製保護板6の外周面61の下端611である。
【0021】
嵌合凹部322の立壁324の内周面3241の径の最小径は、金属製保護板6の外周面61の外径よりも僅かに小さくなっており、金属製保護板6が嵌合凹部322の奥側にしっかりと嵌合されて定置されるようになっている。また、溶接部7による溶接の確実性向上と、溶接部7の溶接時における入熱の分散の観点から、金属製保護板6の外周面61に対する嵌合凹部322の立壁324の内周面3241の下方に向かって広がる傾斜角度αは、例えば0°~10°とすることが可能であるが、0°~3°とすると好適であり、又、金属製保護板の板厚Tは、母材との溶接性確保のため、母材である底板24の板厚或いは立壁324の板厚以下又は未満であれば適宜であるが、0.2mm~1.0mmとすると好適である。更に、溶接部7による溶接の確実性向上と真空断熱容器1の軽量化の観点から、金属製保護板の板厚Tは0.2mm~0.6mmとするとより一層好適である。
【0022】
本実施形態の真空断熱容器1を製造する好適な製造工程としては、
図7に示すように、内容器2と外容器3との間に減圧空間4が設けられ、封止用凹部325に封止材327が設けられた真空断熱容器1の中間品に対し、封止材327を保護する金属製保護板6を外容器3の嵌合凹部322に嵌合する(S1)。
【0023】
その後、嵌合凹部322の内側に配置されている金属製保護板6の外周面61の下端611と嵌合凹部322の立壁324の内周面3241との近接箇所にレーザー光を照射してレーザー溶接の溶接部7を形成し、より好ましくは金属製保護板6の外周面61の下端611と嵌合凹部322の立壁324の内周面3241との近接箇所に断続的にレーザー光を照射してレーザー溶接の溶接部7を形成する(S2)。
【0024】
この際、溶接部7を形成する前の、金属製保護板6の下面62の延長面と嵌合凹部322の内周面3241との交差箇所Cと、金属製保護板6の外周面61の下端611との距離Sを0mm~0.2mmとし(
図6参照)、交差箇所Cと金属製保護板6の外周面61の下端611とに断続的にレーザー光を照射して溶接部7を形成すると、近接する嵌合凹部322の内周面3241と金属製保護板6の外周面61とをより確実に溶接することができてより一層好適である。
【0025】
そして、金属製保護板6の下面62の外周縁に沿って上記溶接工程により順次溶接部7を形成していき、金属製保護板6の外周面61の下部に嵌合凹部322の立壁324の内周面3241と接合する溶接部7を周状に形成する(S3)。更に、溶接部7が周状に形成された真空断熱容器1の中間品に対し、表面処理槽への浸漬等の必要な表面処理を行って本実施形態の真空断熱容器1を得る(S4)。
【0026】
本実施形態によれば、封止材327を保護する金属製保護板6を外容器3の底部の嵌合凹部322に周状に溶接することにより、金属製保護板6を外容器3の底部に固定する接着剤が不要となり、高温環境での使用時や表面処理槽への浸漬時に封止材327を保護する金属製保護板6が脱落することを防止できる。また、金属製保護板6の外周面61の下部と嵌合凹部322の立壁324の内周面3241とを周状に溶接する溶接部7は、使用者の目を引きやすい真空断熱容器1の外周面ではなく底側に設けられることから、真空断熱容器1の外周面の美的外観を非常に高めることができる。
【0027】
また、外容器3の底部は嵌合凹部322の形成により剛性が高められていることから、真空排気による外容器3の底部の変形を防止し、溶接する金属製保護板6の外周面61の下部と嵌合凹部322の立壁324の内周面3241との位置関係に許容範囲を超える誤差が発生することを防止することができ、金属製保護板6の外周面61の下部と嵌合凹部322の内周面3241とを確実に溶接することができる。また、溶接する金属製保護板6の外周面61の下部を嵌合凹部322の内側に配置することにより、溶接時に加熱する領域を狭い範囲に絞り、余分な熱が外容器3の底部に入熱することを防止することができ、外容器3の底部に穴開きが発生することを防止することができる。
【0028】
また、板厚Tが0.2mm~1.0mm、より好ましくは0.2mm~0.6mmの金属製保護板6の外周面61に対する嵌合凹部322の立壁324の内周面3241の傾斜角度αを0°~3°とすることにより、溶接される前の金属製保護板6の外周面61の下端611と嵌合凹部322の立壁324の内周面3241とを確実に溶接できる距離に近接させ、金属製保護板6の外周面61の下部と嵌合凹部322の立壁324の内周面3241とをより確実に溶接、接合することができると共に、溶接時の入熱を金属製保護板6と外容器3の底部に分散させることができる。更に、金属製保護板6の外周面61と外容器3の嵌合凹部322の立壁324の内周面3241とが近接することになるから、溶接時に外容器3への入熱が大きくなった場合にも、外容器3から金属製保護板6への直接又は空気を介した熱伝導、外容器3から金属製保護板6への熱輻射により、外容器3への入熱を金属製保護板6の方へ伝熱で逃がすことができ、外容器3の底部に穴開きが発生することをより確実に防止することができる。
【0029】
また、金属製保護板6の外周面61の下端611と、外容器3の嵌合凹部322の立壁324の内周面3241との近接箇所に、断続的にレーザー光を照射してレーザー溶接の溶接部7を形成する場合には、外容器3の嵌合凹部322の立壁324等の周辺箇所に、熱が大量に蓄積されることを確実に防止することができ、外容器3の底部に穴開きが発生することをより確実に防止することができる。
【0030】
〔本明細書開示発明の包含範囲〕
本明細書開示の発明は、発明として列記した各発明、実施形態及びその変形例の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な内容を本明細書開示の他の内容に変更して特定したもの、或いはこれらの内容に本明細書開示の他の内容を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な内容を部分的な作用効果が得られる限度で削除して上位概念化して特定したものを包含する。そして、本明細書開示の発明には下記変形例や追記した内容も含まれる。
【0031】
例えば上記実施形態の真空断熱容器1における減圧空間4は中空としたが、本発明の真空断熱容器における内容器と外容器との間に設けられる減圧空間の構成は適宜であり、例えば減圧空間に断熱材が充填される構成としてもよい。また、本発明の真空断熱容器における、金属製保護板の外周面の下部と嵌合凹部の内周面との溶接部は、レーザー溶接による溶接部とすると好適であるが、他の溶接方法による溶接部とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、例えば二重構造のマグカップ、缶クーラー、スープカップ、ランチジャー、携帯用魔法瓶、卓上魔法瓶等の真空断熱容器に利用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1…真空断熱容器 2…内容器 21…周側壁 22…底部 221…凹部 3…外容器 31…胴部 311…折返部 312…湾曲部 313…起立部 314…突出部 32…底板 321…外周面 322…嵌合凹部 323…上板 324…立壁 3241…内周面 325…封止用凹部 326…排気孔 327…封止材 4…減圧空間 5…溶接部 6…金属製保護板 61…外周面 611…下端 62…下面 7…溶接部 α…金属製保護板の外周面に対する嵌合凹部の内周面の傾斜角度 T…金属製保護板の板厚 C…金属製保護板の下面の延長面と嵌合凹部の内周面との交差箇所 S…交差箇所Cと金属製保護板の外周面の下端との距離