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特開2024-110316反射防止フィルム、これを用いた偏光板及び表示装置
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  • 特開-反射防止フィルム、これを用いた偏光板及び表示装置 図1
  • 特開-反射防止フィルム、これを用いた偏光板及び表示装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110316
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】反射防止フィルム、これを用いた偏光板及び表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/115 20150101AFI20240807BHJP
   G02B 1/14 20150101ALI20240807BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20240807BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20240807BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20240807BHJP
   H10K 50/854 20230101ALI20240807BHJP
   H10K 50/856 20230101ALI20240807BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20240807BHJP
【FI】
G02B1/115
G02B1/14
G02B5/30
G09F9/00 313
B32B7/023
H10K50/854
H10K50/856
H10K59/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014843
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】314017635
【氏名又は名称】株式会社トッパンTOMOEGAWAオプティカルフィルム
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 塁
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 亮太
【テーマコード(参考)】
2H149
2K009
3K107
4F100
5G435
【Fターム(参考)】
2H149AA02
2H149AA18
2H149AB01
2H149BA02
2H149FC02
2H149FC03
2K009AA05
2K009AA15
2K009BB14
2K009CC03
2K009CC06
2K009CC09
2K009CC24
2K009DD02
2K009DD17
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC32
3K107CC33
3K107EE21
3K107EE26
3K107EE29
3K107EE63
3K107FF06
3K107FF15
4F100AA17C
4F100AA27D
4F100AK17B
4F100AK17C
4F100AK17D
4F100AK25A
4F100AK25B
4F100AK25C
4F100AK25D
4F100AR00A
4F100AR00B
4F100AR00C
4F100AR00D
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10D
4F100CA30B
4F100CA30C
4F100DE01C
4F100DE01D
4F100EH46
4F100EJ54
4F100EJ86
4F100GB41
4F100JB14B
4F100JB14C
4F100JB14D
4F100JK12B
4F100JN01A
4F100JN06
4F100JN10
4F100JN18C
4F100JN18D
4F100YY00C
4F100YY00D
5G435AA01
5G435BB05
5G435BB12
5G435FF06
5G435LL07
(57)【要約】
【課題】VRゴーグルにおけるゴーストの発生を抑制できる反射防止フィルム、並びに、これを用いた偏光板及び表示装置を提供する。
【解決手段】 入射角5°の正反射光の視感反射率が0.3%以下、かつ、入射角25°の正反射光の視感反射率が0.3%以下、かつ、入射角5°の正反射光と入射角25°の正反射光の色差ΔE*ab値が5以下であることを特徴とする、反射防止フィルム。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射角5°の正反射光の視感反射率が0.3%以下、かつ、入射角25°の正反射光の視感反射率が0.3%以下、かつ、入射角5°の正反射光と入射角25°の正反射光の色差ΔE*ab値が5以下であることを特徴とする、反射防止フィルム。
【請求項2】
透明フィルム基材と、
前記透明フィルム基材の一方の面に形成されたハードコート層と、
前記ハードコート層上に形成された高屈折率層と、
前記高屈折率層上に形成された低屈折率層とを備え、
前記高屈折率層の屈折率が1.76±0.02の範囲内であり、
前記低屈折率層の屈折率が1.29±0.02の範囲内であり、
前記高屈折率層の膜厚が132.5nm~157.5nmの範囲内であり、
前記低屈折率層の膜厚が92.5nm~112.5nmの範囲内であることを特徴する、請求項1記載の反射防止フィルム。
【請求項3】
前記高屈折率層が金属酸化物微粒子を含むことを特徴とする、請求項2記載の反射防止フィルム。
【請求項4】
前記低屈折率層が中空シリカ微粒子を含むことを特徴とする、請求項2記載の反射防止フィルム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の反射防止フィルムを備える、偏光板。
【請求項6】
ハウジングと、
前記ハウジング内に収容される表示パネルと、
前記ハウジング内に前記表示パネルと重ねて配置されるレンズと、
前記表示パネル及び前記レンズと重ねて配置される、請求項1~4のいずれかに記載の反射防止フィルムとを備える、表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に用いられる反射防止フィルム、並びに、これを用いた偏光板及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置や有機EL表示装置等の画像表示装置には、外光の反射を抑制するための反射防止フィルムが設けられる。例えば、特許文献1~3には、視認角度を変化させても色むらが視認されにくくできる光学積層体として、透明基材上に、ハードコート層と、低屈折率材料層及び高屈折率材料層が交互に積層されてなる反射防止層を設けた構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-2903号公報
【特許文献2】特許第6956909号公報
【特許文献3】国際公開第2021/193416号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、仮想現実を体験できるデバイスとして、VRゴーグルと呼ばれる表示装置が普及しつつある。VRゴーグルは、高精細な映像と、画面と使用者との近さとにより、従来の表示装置とは違った没入感を体感させることが可能である。テレビ等の従来の表示装置とは異なり、VRゴーグルは閉鎖された機構になっているため、外光の侵入はないが、装置内部の反射光が視認性に影響する。例えば、装置内部のレンズ等の光学部材表面で反射した光は、使用者にゴーストとして視認され、映像の視認性を悪化させたり、没入感を損なったりする。光学部材の表面に反射防止フィルムを設けることにより反射光によるゴーストを抑制することができるが、反射防止フィルムの光学特性によっては、反射光に色がつき、低反射であっても視認性を損なう可能性がある。しかしながら、VRゴーグルに適した反射防止フィルムの特性はこれまで十分に検討されていなかった。
【0005】
それ故に、本発明は、VRゴーグルにおけるゴーストの発生を抑制できる反射防止フィルム、並びに、これを用いた偏光板及び表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る反射防止フィルムは、入射角5°の正反射光の視感反射率が0.3%以下、かつ、入射角25°の正反射光の視感反射率が0.3%以下、かつ、入射角5°の正反射光と入射角25°の正反射光の色差ΔE*ab値が5以下であるものである。
【0007】
また、本発明に係る偏光板は、上記の反射防止フィルムを備える。
【0008】
本発明に係る表示装置は、ハウジングと、ハウジング内に収容される表示パネルと、ハウジング内に表示パネルと重ねて配置されるレンズと、表示パネル及びレンズと重ねて配置される、上記の反射防止フィルムとを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、VRゴーグルにおけるゴーストの発生を抑制できる反射防止フィルム、並びに、これを用いた偏光板及び表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る反射防止フィルムの層構成を示す断面図
図2】VRゴーグルの構成例を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、実施形態に係る反射防止フィルムの層構成を示す断面図である。
【0012】
反射防止フィルム10は、透明フィルム基材1と、透明フィルム基材の一方の面に形成されたハードコート層2と、ハードコート層2上に形成された高屈折率層3と、高屈折率層3上に形成された低屈折率層4とを備える。
【0013】
(透明基材)
透明フィルム基材1は、反射防止フィルム10の基体となるフィルムであり、可視光線の透過性に優れた材料により形成される。透明フィルム基材1の形成材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリメチルメタクリレート等のポリアクリレート、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド、ポリイミド、ポリアリレート、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、シクロオレフィンコポリマー、含ノルボルネン樹脂、ポリエーテルサルフォン、ポリサルフォン等の透明樹脂や無機ガラスを利用できる。透明フィルム基材1の厚みは、特に限定されないが、10~200μmとすることが好ましい。
【0014】
透明フィルム基材1の表面には、ハードコート層2との密着性を向上させるために、表面改質処理を施しても良い。表面改質処理としては、アルカリ処理、コロナ処理、プラズマ処理、スパッタ処理、界面活性剤やシランカップリング剤等の塗布、Si蒸着等を例示できる。
【0015】
(ハードコート層)
ハードコート層2は、反射防止フィルムに硬度を付与するための層であり、活性エネルギー線硬化性化合物、光重合開始剤、溶剤を少なくとも含有するハードコート層形成用組成物を透明フィルム基材の一方面に塗布し、硬化させることによって形成することができる。ハードコート層2の厚みは、特に限定されないが、2~10μmであることが好ましい。ハードコート層2の厚みが2μm未満の場合、ハードコート層2の硬度が不足する可能性がある。ハードコート層2の厚みが10μmを超える場合、反射防止フィルムの薄型化に不利となるため好ましくない。ただし、ハードコート層2の膜厚は、光学フィルムに求められる表面硬度及び全体の厚みに応じて適宜設定することができる。また、ハードコート層2は、屈折率調整や硬度付与を目的として、金属酸化物微粒子を含有しても良い。
【0016】
活性エネルギー線硬化性化合物は、紫外線、電子線等の活性エネルギー線の照射により重合して硬化する樹脂であり、例えば、単官能、2官能または3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーを使用できる。尚、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートの両方の総称であり、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルとメタクリロイルの両方の総称である。
【0017】
単官能の(メタ)アクリレート化合物の例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N-ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリールアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2-アダマンタン、アダマンタンジオールから誘導される1価のモノ(メタ)アクリレートを有するアダマンチルアクリレート等のアダマンタン誘導体モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0018】
2官能の(メタ)アクリレート化合物の例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコ-ルジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0019】
3官能以上の(メタ)アクリレート化合物の例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス2-ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の3官能の(メタ)アクリレート化合物や、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物や、これら(メタ)アクリレートの一部をアルキル基やε-カプロラクトンで置換した多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0020】
また、活性エネルギー線硬化性化合物として、ウレタン(メタ)アクリレートも使用できる。ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、もしくはプレポリマーを反応させて得られた生成物に水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーを反応させることによって得られるものを挙げることができる。
【0021】
ウレタン(メタ)アクリレートの例としては、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー等が挙げられる。
【0022】
上述した活性エネルギー線硬化性化合物は1種を用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。また、上述した活性エネルギー線硬化性化合物、ハードコート層形成用組成物中でモノマーであっても良いし、一部が重合したオリゴマーであっても良い。
【0023】
ハードコート層形成用組成物に用いる光重合開始剤としては、例えば、2,2-エトキシアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジベンゾイル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、p-クロロベンゾフェノン、p-メトキシベンゾフェノン、ミヒラーケトン、アセトフェノン、2-クロロチオキサントン等を使用できる。これらのうち1種類を単独で使用しても良いし、2種類以上を組み合わせて使用して良い。
【0024】
また、ハードコート層形成用組成物に用いる溶剤としては、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、1,3,5-トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトール等のエーテル類、またアセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、およびメチルシクロヘキサノン等のケトン類、また蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n-ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン醸エチル、酢酸n-ペンチル、およびγ-プチロラクトン等のエステル類、さらにメチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ類が挙げられる。これらを単独、もしくは2種類以上合わせて用いても良い。
【0025】
また、ハードコート層形成用組成物には、屈折率調整や硬度付与を目的として金属酸化物微粒子を含有してもいい。金属酸化物微粒子としては、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ニオブ、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化インジウムスズ、酸化亜鉛等が挙げられる。
【0026】
(高屈折率層)
高屈折率層3は、低屈折率層4と共に反射防止層を構成する機能層であり、活性エネルギー線硬化性化合物、高屈折率微粒子、光重合開始剤、溶剤を少なくとも含有する高屈折率層形成用組成物をハードコート層2上に塗布し、硬化させることによって形成することができる。高屈折率層形成用組成物に使用する活性エネルギー線硬化性化合物、光重合開始剤及び溶剤は、ハードコート層で説明した材料から適宜選択して使用することができる。
【0027】
高屈折率層3の屈折率は、1.65~1.90の範囲内であることが好ましい。高屈折率層3の屈折率は、高屈折率微粒子を添加することによって調整することができる。高屈折率微粒子としては、酸化亜鉛(ZnO)、過酸化亜鉛(ZnO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化チタン(TiO)、酸化インジウム(In)、酸化スズ(IV)(SnO)、酸化スズ(II)(SnO)、三酸化アンチモン(Sb)、酸化セリウム(CeO)、酸化アンチモン(SbO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、スズドープ酸化インジウム(ITO)、リンドープ酸化スズ(PTO)等の金属微粒子を用いることができる。高屈折率微粒子の平均粒子径は、例えば、1~100nmの範囲内とすることができる。高屈折率層3の膜厚は、2~1000nmの範囲内であることが好ましい。
【0028】
(低屈折率層)
低屈折率層4は、活性エネルギー線硬化性化合物、光重合開始剤、溶剤を少なくとも含有する低屈折率層形成用組成物を高屈折率層3上に塗布し、硬化させることによって形成することができる。低屈折率層形成用組成物に使用する活性エネルギー線硬化性化合物、光重合開始剤及び溶剤は、ハードコート層で説明した材料から適宜選択して使用することができる。
【0029】
低屈折率層4の屈折率は、1.20~1.51の範囲内であることが好ましい。低屈折率層4の屈折率は、低屈折率微粒子を添加することによって調整することができる。低屈折率微粒子としては、フッ化リチウム(LiF)、フッ化マグネシウム(MgF)、フッ化アルミニウム(AlF)、ヘキサフルオロアルミニウムナトリウム(NaAlF)、粒子内部に空隙を有するシリカ粒子等を使用することができる。空隙を有するシリカ粒子は、空隙の部分を空気の屈折率(約1)とすることができるので、低屈折率層4の低屈折率化に有利である。具体的には、空隙を有するシリカ粒子として、多孔質シリカ粒子、シェル(殻)構造の中空シリカ粒子等を用いることができる。低屈折率微粒子の平均粒子径は、例えば、1~100nmの範囲内とすることができる。低屈折率層4の膜厚は、2~1000nmの範囲内であることが好ましい。
【0030】
また、低屈折率層4は、撥水性及び/または撥油性を付与し、防汚性を高める珪素酸化物、フッ素含有シラン化合物、フルオロアルキルシラザン、フルオロアルキルシラン、フッ素含有珪素系化合物、パーフルオロポリエーテル基含有シランカップリング剤のいずれかを含有しても良い。
【0031】
その他の添加剤として、ハードコート層形成用組成物、高屈折率層形成用組成物及び低屈折率層形成用組成物に、いずれかまたは全部に、必要に応じて、レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤、光安定剤、光増感剤、導電材料等を加えても良い
【0032】
一例として、高屈折率微粒子として酸化ジルコニウム(屈折率:1.76±0.02)を使用し、低屈折率微粒子としてシェル構造を有する中空シリカ微粒子(屈折率:1.29±0.02)を使用した場合、高屈折率層3の膜厚が132.5nm~157.5nmの範囲内であり、かつ、低屈折率層4の膜厚が92.5nm~112.5nmの範囲内である反射防止層を構成すれば、後述する条件(入射角5°の光の正反射光の視感反射率と、入射角25°の光の正反射光の視感反射率とがいずれも0.3%以下、かつ、入射角5°の光の正反射光と、入射角25°の光の正反射光との色差ΔE*abが5以下)を満たす反射防止フィルム10を構成することができる。この場合、高屈折率層3の膜厚を140.0nm~157.5nmの範囲内、かつ、低屈折率層4の膜厚を95.0nm~112.5nmの範囲内とすることにより、色差ΔE*abを眼で識別することが困難な3以下とすることができ、更にゴーストを視認しにくくすることができる。
【0033】
図2は、VRゴーグルの構成例を示す模式図である。図2に示す構成は一例であり、機種によって使用する部材の組み合わせが異なり、例えば、図2に示す液晶表示パネルに代えて有機ELパネルが使用される構成や、1つのレンズからなるレンズ系が使用される構成等がある。一般的に、VRゴーグルは、ハウジング内に、画像表示パネルとレンズ、偏光板や位相差フィルム等の光学フィルムを重なるように配置して構成される。使用時には、レンズのそれぞれが両眼に対向するように頭部にVRゴーグルを装着する。VRゴーグルを装着した状態では、ハウジング内は閉鎖されており、ハウジング内への外光の侵入は抑制されている。ただし、ハウジング内の表示パネルと使用者の眼との間には、レンズ等の光学部材や偏光板等の光学フィルムが複数配置されており、表示パネルから出射された光の一部は、これらの光学部材や光学フィルムの表面で複数回反射される。
【0034】
例えば、図2に矢印で示すように、バックライトから出射された光の一部は、レンズ表面で屈折して反射板に入射し、反射板の表面でバックライト側に反射される。この反射光の一部は、バックライト側のレンズの表面で再度反射され、使用者側のレンズを透過して使用者の眼に入射する。このように光学部材の表面で複数回反射した光は、使用者の目に入射するとゴーストとして視認され、表示画像の視認性を悪化させる。図2に示すように、光学部材の表面に反射防止フィルムを設けることにより反射光によるゴーストを抑制することができるが、反射防止フィルムの光学特性によっては、反射光に色が付くことでゴーストとして視認され、表示画像の視認性を損なう場合がある。
【0035】
本願の発明者が検討したところ、VRゴーグル内部で表示パネルからの出射光の光路は、レンズ等の光学部材表面での屈折等により、光学部材に対する入射角が5~25°の範囲で変化し得ること、及び、光学部材に対して5~25°の入射角で入射した光の反射光がゴーストとして視認されることが分かった。また、入射角5~25°の光の反射光によるゴーストを低減するには、入射角5°の光の正反射光の視感反射率と、入射角25°の光の正反射光の視感反射率とをいずれも0.3%以下とし、かつ、入射角5°の光の正反射光と、入射角25°の光の正反射光との色差ΔE*abを5以下とした反射防止フィルム10を、光学部材の表面に設けることが有効であることを見出した。
【0036】
ここで、視感反射率(「視感平均反射率」とも呼ばれる)は、分光光度計を用い、反射防止フィルム10の最表面(低屈折率層4)に入射角5°または25°の光線束を入射させて分光反射率曲線を求め、JIS R 3106に準拠し、求めた分光反射率曲線を視感平均反射率に換算することにより得られる値であり、XYZ表色系におけるY値である。
【0037】
また、色差ΔE*abは、L*a*b*表色系で表される座標L*、a*、b*の差であるΔL*、Δa*、Δb*によって下記式で定義される2つの色感の隔たりであり、JIS Z8730:2009に規定されている。
ΔE*ab={(ΔL*)+(Δa*)+(Δb*)1/2
【0038】
入射角5°の光の正反射光の視感反射率と、入射角25°の光の正反射光の視感反射率とのいずれかが0.3%を超える場合、正反射光の光量が多くなることで、正反射光がゴーストとして視認されるため好ましくない。また、入射角5°の光の正反射光と、入射角25°の光の正反射光との色差ΔE*abが5を超える場合、正反射光の光量が少ない場合であっても、色付きにより反射光がゴーストとして視認されるため好ましくない。
【0039】
本実施形態に係る反射防止フィルム10は、入射角5°及び25°で入射した光の正反射光の視感反射率(Y値)がいずれも0.3%以下であり、かつ、入射角5°及び25°で入射した光の正反射光の色差ΔE*abが5以下であるという光学特性を有する。したがって、本実施形態に係る反射防止フィルム10を、VRゴーグル内で光路を変化させる光学部材の表面に設けることにより、VRゴーグル内における反射光(ゴースト)の低減と、反射光の色付きの抑制が可能となり、VRゴーグルの表示画像の視認性を向上させることができる。
【0040】
本実施形態に係る反射防止フィルム10は、偏光板の構成部材として使用することができる。具体的には、直線偏光フィルムの片面に反射防止フィルム10を貼り合わせた直線偏光板や、直線偏光フィルムの片面に1/4位相差フィルムと反射防止フィルム10とをこの順で貼り合わせた円偏光板を構成することができる。本実施形態に係る反射防止フィルム10を用いた偏光板は、VRゴーグルのハウジング内部に収容される表示パネルや、レンズ等の光学部材に重ねて使用することができ、VRゴーグル内における反射光の低減と、反射光の色付き抑制に有効である。
【実施例0041】
以下、本発明を具体的に実施した実施例を説明する。
【0042】
実施例及び比較例として、図1に記載の層構成(透明フィルム基材/ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層)を有する反射防止フィルムを作成した。透明フィルム基材として、厚み40μmのポリメチルメタクリレート(PMMA)フィルムを使用した。透明フィルム基材上に、紫外線硬化性アクリル樹脂(ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA))、フッ素樹脂、光重合開始剤及び溶剤を含有するハードコート層形成用組成物を塗布し、乾燥させた後、紫外線照射により塗膜を重合硬化させ、厚み5.5μmのハードコート層を形成した。
【0043】
次に、ハードコート層上に、紫外線硬化性アクリル樹脂(PETA)、フッ素樹脂、ジルコニア(酸化ジルコニウム)微粒子、光重合開始剤及び溶剤を含有する高屈折率形成用塗工液を塗布し、乾燥させた後、紫外線照射により塗膜を重合硬化させ、屈折率1.76の高屈折率層を形成した。硬化後の高屈折率層の厚み(物理膜厚)は、表1に記載の値となるように塗工量を調整した。
【0044】
次に、高屈折率層上に、紫外線硬化性アクリル樹脂(PETA)、フッ素樹脂、中空シリカ微粒子、光重合開始剤及び溶剤を含有する低屈折率形成用塗工液を塗布し、乾燥させた後、紫外線照射により塗膜を重合硬化させ、屈折率1.29の低屈折率層を形成した。硬化後の低屈折率層の厚み(物理膜厚)は、表1に記載の値となるように塗工量を調整した。
【0045】
[視感平均反射率]
実施例1~4及び比較例1~7に係る反射防止フィルムの低屈折率層表面における分光反射率を、自動分光光度計(日立製作所製 U-4100)を用いて測定した。分光反射率測定において、光学積層体の裏面(透明フィルム基材における低屈折率層が設けられた面と反対側の面)には、つや消し用の黒板を貼合して反射防止の処置を行い、入射光の入射角5°及び25°のそれぞれで測定した。得られた分光反射率曲線をJIS R 3106に準拠して視感反射率(Y値)を算出した。
【0046】
[色差]
また、視感平均反射率の測定と同様に反射防止の処置を行った反射防止フィルムを用い、分光光度計(日立製作所製 U-4100)を用いて低屈折率層表面に入射角5°及び25°のそれぞれで光を照射し、L*a*b*表色系における反射光の色座標L*、a*及びb*を測定し、下記式により入射角5°の正反射光と入射角25°の正反射光の色差ΔE*ab値を算出した
ΔE*ab={(ΔL*)+(Δa*)+(Δb*)1/2
【0047】
[ゴースト視認性]
市販のVRゴーグル(Oculus(登録商標) Quest2)を分解し、画像表示パネル及び2枚のレンズに設けられていた反射防止フィルムを剥離し、実施例1~4及び比較例1~7に係る反射防止フィルムを光学用粘着剤(TD06A、株式会社巴川製紙所製)で貼り付け、VRゴーグルを組戻した。使用したVRゴーグルの構造を図2に示す。被験者がVRゴーグルを装着し、白画面を表示した状態で、ゴーストの視認性を確認した。
【0048】
表1に、実施例1~4及び比較例1~7の高屈折率層膜厚、低屈折率層膜厚、視感反射率Y値、色差ΔE*ab、ゴースト視認性の評価結果を併せて示す。
【表1】
【0049】
実施例1~4に係る反射防止フィルムはいずれも、入射角5°及び25°の正反射光の視感反射率が0.3%以下、かつ、入射角5°及び25°の正反射光の色差が5以下であり、目立ったゴーストは視認できなかった。
【0050】
比較例1~7に係る反射防止フィルムは、入射角5°及び25°の正反射光の視感反射率が高いか、色差が大きいために、ゴースト目立って観察された。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、VRゴーグル(VRヘッドセット)等のヘッドマウントディスプレイに利用できる。
【符号の説明】
【0052】
1 透明フィルム基材
2 ハードコート層
3 高屈折率層
4 低屈折率層
10 反射防止フィルム
図1
図2