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特開2024-110318軌条運搬台車、軌条運搬装置、および軌条運搬方法
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  • 特開-軌条運搬台車、軌条運搬装置、および軌条運搬方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110318
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】軌条運搬台車、軌条運搬装置、および軌条運搬方法
(51)【国際特許分類】
   B61B 13/04 20060101AFI20240807BHJP
   B28C 5/42 20060101ALI20240807BHJP
   B28C 7/16 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
B61B13/04 F
B28C5/42
B28C7/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014847
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】592070937
【氏名又は名称】光永産業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591078273
【氏名又は名称】株式会社美貴本
(71)【出願人】
【識別番号】000226482
【氏名又は名称】日工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135781
【弁理士】
【氏名又は名称】西原 広徳
(74)【代理人】
【識別番号】100217227
【弁理士】
【氏名又は名称】野呂 亮仁
(72)【発明者】
【氏名】上西 庄二
【テーマコード(参考)】
4G056
【Fターム(参考)】
4G056AA06
4G056CB12
4G056CB23
4G056CD63
4G056CE02
(57)【要約】
【課題】簡単な構成で、傾斜地において生コンクリートを安定して運搬することができる。
【解決手段】
傾斜地に設置された軌条2を走行する軌条運搬台車4であって、軌条2上を転輪する車輪41aが設けられた台車本体41と、生コンクリートを収容可能な収容部42aを有する搬送体42と、搬送体42に取付けられた回転駆動源43と、収容部42aに収容され、回転駆動源43で発生した回転駆動力により回転する攪拌ブレード44と、搬送体42の重心位置よりも上方に配置され、平面視において進行方向に対し垂直に延びる軸線を中心に、搬送体42を台車本体41に軸支する軸支部45とを備え、搬送体42は、軌条2の傾斜に応じて軸支部45の軸線を中心に台車本体41に対して相対的に回転し、かつ、自重によって水平状態若しくはこれに近い状態に維持される構成である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜地に設置された軌条を走行する軌条運搬台車であって、
前記軌条上を転輪する車輪が設けられた台車本体と、
生コンクリートを収容可能な収容部を有する搬送体と、
前記搬送体に取付けられた回転駆動源と、
前記収容部に収容され、前記回転駆動源で発生した回転駆動力により回転し、生コンクリートを攪拌する攪拌ブレードと、
前記搬送体の重心位置よりも上方に配置され、平面視において前記軌条の延伸方向に対し垂直に延びる軸線を中心に、前記搬送体を前記台車本体に軸支する軸支部とを備え、
前記搬送体は、前記軌条の傾斜に応じて前記軸線を中心に前記台車本体に対して相対的に回転し、かつ、自重によって水平状態若しくはこれに近い状態に維持される構成である
軌条運搬台車。
【請求項2】
前記回転駆動源が、前記軸支部よりも上方に配置された
請求項1記載の軌条運搬台車。
【請求項3】
前記搬送体の下端部に生コンクリートを排出可能な排出口をさらに設けた
請求項2記載の軌条運搬台車。
【請求項4】
前記台車本体に対し複数の前記搬送体が前記軌条の延伸方向に並ぶように軸支されている
請求項1記載の軌条運搬台車。
【請求項5】
前記台車本体の最も後方に位置する車輪である後輪が、最も後方に位置する搬送体の軸支部よりも後方に配置されている
請求項4記載の軌条運搬台車。
【請求項6】
前記台車本体に対し着脱可能に構成された前記搬送体には、吊上装置で当該搬送体を吊り上げるための係止部が設けられている
請求項1記載の軌条運搬台車。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の軌条運搬台車と、
前記軌条を走行し、前記軌条運搬台車を牽引する牽引車とを備えた
軌条運搬装置。
【請求項8】
軌条上を転輪する車輪が設けられた台車本体と、生コンクリートを収容可能な収容部を有する搬送体と、前記搬送体に取付けられた回転駆動源と、前記収容部に収容され、前記回転駆動源で発生した回転駆動力により回転し、生コンクリートを攪拌する攪拌ブレードと、前記搬送体の重心位置よりも上方に配置され、平面視において前記軌条の延伸方向に対し垂直に延びる軸線を中心に、前記搬送体を前記台車本体に軸支する軸支部とを備え、傾斜地に設置された前記軌条を走行する軌条運搬台車を用いて生コンクリートを運搬する軌条運搬方法であって、
前記搬送体が前記軌条の傾斜に応じて前記軸線を中心に前記台車本体に対して相対的に回転し、かつ、自重によって水平状態若しくはこれに近い状態に維持しつつ運搬を行う
軌条運搬方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえば、傾斜地に敷設した軌条に沿って物を運ぶような軌条運搬台車、軌条運搬機、および軌条運搬方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、山林等の傾斜地で物を運搬するための軌条運搬機が使用されている。たとえば、傾斜地に設置された軌条上を走行する牽引車と、牽引車に連結されて牽引車とともに軌条上を走行する運搬台車とから構成される軌条運搬車が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1記載の運搬台車は、軌条上を転輪する車輪が設けられた台車本体と、台車本体上に設けられた荷台と、台車本体および荷台を接続する接続機構とを備えている。特許文献1記載の運搬台車における接続機構は、伸縮アクチュエータと、4つの枢支手段と、各枢支手段による接続を開放して非接続状態にする開放手段とを備えている。特許文献1記載の運搬台車では、接続機構を適宜制御することにより、荷台を水平に維持することができる。たとえば、特許文献1記載の運搬台車は、運搬台車の荷台にコンクリートミキサを積載して運搬することができる。
【0003】
しかしながら、特許文献1記載の運搬台車では、荷台を水平に維持するための接続機構の構成が非常に大掛かりであり、製造コストおよび維持コストが増大するという問題がある。また、特許文献1記載の運搬台車では、コンクリートミキサを出発地と目的地とでそれぞれ積み降ろしする必要があり、非常に手間がかかるという問題がある。さらに、運搬台車を含む軌条運搬システムの用途の特性上、出発地または目的地は傾斜地であることが多く、このような傾斜地においてコンクリートミキサを積み降ろしするのは不便であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-163505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、簡単な構成で、傾斜地において生コンクリートを安定して運搬することができる、軌条運搬台車、軌条運搬装置、および軌条運搬方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明は、傾斜地に設置された軌条を走行する軌条運搬台車であって、前記軌条上を転輪する車輪が設けられた台車本体と、生コンクリートを収容可能な収容部を有する搬送体と、前記搬送体に取付けられた回転駆動源と、前記収容部に収容され、前記回転駆動源で発生した回転駆動力により回転し、生コンクリートを攪拌する攪拌ブレードと、前記搬送体の重心位置よりも上方に配置され、平面視において前記軌条の延伸方向に対し垂直に延びる軸線を中心に、前記搬送体を前記台車本体に軸支する軸支部とを備え、前記搬送体は、前記軌条の傾斜に応じて前記軸線を中心に前記台車本体に対して相対的に回転し、かつ、自重によって水平状態若しくはこれに近い状態に維持される構成である軌条運搬台車、軌条運搬装置、および軌条運搬方法であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本願発明により、簡単な構成で、傾斜地において生コンクリートを安定して運搬することができる、軌条運搬台車、軌条運搬装置、および軌条運搬方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】平地における本発明の軌条運搬システムの構成を示す説明図。
図2】傾斜地における本発明の軌条運搬システムの構成を示す説明図。
図3】本発明の搬送体の構成を示す斜視図。
図4】搬送体および攪拌ブレードの構成説明図。
図5】攪拌ブレードの外観形状を示す構成説明図。
図6】給電ユニットの構成を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本願発明の一実施形態を図面と共に説明する。図1は平地における(軌条2が平地に設置された場合の)本発明の軌条運搬システム1の構成を示す説明図である。図2は傾斜地における(軌条2が傾斜地に設置された場合の)本発明の軌条運搬システム1の構成を示す説明図である。
【0010】
図1および図2に示すように、本実施形態の軌条運搬システム1は、軌条2を走行する牽引車(軌条運搬機)3と、牽引車3に牽引されて軌条2を走行する軌条運搬台車4とを有している。また、軌条2は、一般的な自動車や一般的な鉄道車両が走行不可能な山林等の傾斜地に設置されている。すなわち、軌条2の出発地と目的地の間には傾斜地が存在する。軌条2が設置される地面の傾斜角度は、出発地から目的地までの間で変化することが多い。また、出発地または目的地が傾斜地となっている場合もある。
【0011】
軌条2は、牽引車3および軌条運搬台車4に係り合うことによって牽引車3および軌条運搬台車4の走行方向を決定するものであり、軌条ユニット2Uの一部として構成されている。軌条2の形態は、軌条運搬システムの分野で通常使用されるものであれば特に限定される必要が無く、軌条2は、1本の軌条(単軌条)であってもよく、あるいは複数本の軌条であってもよい。
【0012】
軌条ユニット2Uは、軌条2と、軌条2を地上から支持するための支持機構20と、この支持機構20に支持されて、軌条2の両側から牽引車3および軌条運搬台車4の荷重を受ける補助レール21とを有している。
【0013】
軌条2は、たとえば鋼材の押し出しにより横断面視矩形状に形成されているか、あるいは長尺状の鋼板を折り曲げることにより横断面視矩形状に成形することによってなる角パイプ状に形成されている。軌条2の底面には、底面視(平面視)真円形状をなす複数の係合穴が設けられている。また、複数の係合穴は、軌条2の延伸方向(軸線方向)において等間隔に設けられている。係合穴は、底面視真円形状をなすものとしているが、楕円形状または矩形状をなすように形成されていてもよい。
【0014】
補助レール21は、断面略円形状に形成されており、たとえば金属製丸パイプ状または中実な丸棒状に形成されている。この補助レール21は軌条2から所定の間隔を隔てて対をなして配置されている。すなわち、補助レール21は、軌条2の延伸方向(牽引車3および軌条運搬台車4の進行方向)から見て、軌条2を中心に、左右のそれぞれに配置されている。
【0015】
また、補助レール21の上面(上端部)は、軌条2よりも所定寸法下方に位置する。さらに、補助レール21は、上面側が湾曲面となっており、牽引車3が走行中に側方に多少のブレを生じたとしても、安定して牽引車3を支持し得る。
【0016】
支持機構20は、棒状、柱状または筒状に形成されており、軌条2の延伸方向において適宜の間隔で複数配置されている。支持機構20の下端部は地面に接地しており、軌条2および補助レール21をそれぞれ所要の位置および向きで支持している。
【0017】
そして、本実施形態では、このような軌条ユニット2Uの軌条2上を牽引車3および軌条運搬台車4が走行可能に載置されている。すなわち、牽引車3および軌条運搬台車4は、軌条2上を走行することによって出発地から目的地までの間で移動可能である。
【0018】
牽引車3は、傾斜地に敷設された軌条2を走行する運搬機(動力車)であり、メインボディ31と、軌条2に係り合う駆動輪32と、補助レール21上を走行転輪する補助輪(図示せず)とを有している。メインボディ31は、外観は略直方体形状をなしている。メインボディ31には、動力源としてのエンジンまたはモータが収容されている。また、メインボディ31には、動力源に燃料または電力を供給するための燃料タンクや電池等が搭載されることになる。
【0019】
また、メインボディ31の後方には、牽引車3を運転する運転者が着席するための座席33が設けられている。座席33は、地面の傾斜に応じるべくメインボディ31に対し予めある程度の角度で傾斜した姿勢で設けられている。なお、座席33がメインボディ31に対して傾斜する角度を適宜変更したり、調節可能としたりする機能を設ける態様を否定するものではない。また、座席33の位置に対応して、牽引車3を運転するための運転操作部(図示せず)も設けられている。
【0020】
さらに、メインボディ31には、動力源の出力を適度な速度およびトルクに変換しつつ駆動輪32へ伝達する動力伝達機構が設けられている。また、駆動輪32の外周には、軌条2の係合穴と同じ間隔で配置された複数の係合突起が形成されている。牽引車3は、駆動輪32の係合突起が軌条2の係合穴と係合しつつ回転することで、傾斜面でも滑り落ちることなく安定して、前進、後退、停止を実行できる。
【0021】
さらに、牽引車3および軌条運搬台車4は、棒状、柱状または筒状の連結部材34によって機械的に連結されている。このため、軌条運搬台車4は、牽引車3の動きに連動して、前進、後退、停止する。したがって、牽引車3および軌条運搬台車4は、一体となって移動する軌条運搬装置を構成する。
【0022】
補助輪は、駆動輪32の両側に正面視対をなして補助レール21の位置に合わせて設けられたものである。この補助輪の平面視の寸法は、側方(幅方向または左右方向)に多少ズレようとしても、補助レール21に好適に支持され得るとともに、速やかにズレが戻るよう、補助レール21よりも幅広な、好適にたとえば3倍以上に幅広な寸法に設定されている。
【0023】
図3は、本発明の搬送体42の構成を示す斜視図である。図4は搬送体42および攪拌ブレード44の構成説明図である。図5は攪拌ブレード44の外観形状を示す構成説明図である。図6は本発明の給電ユニット50の構成を示す説明図である。以下、軌条運搬台車4からみて牽引車3側方向を前方と定義して説明を行う。
【0024】
図1図3に示すように、軌条運搬台車4は、軌条2上を転輪する車輪41aと、車輪41a上に設けられた台車本体41と、生コンクリートを収容可能な収容部42aを有する搬送体42と、搬送体42に取付けられた回転駆動源43と、搬送体42に収容され、回転駆動源43で発生した回転駆動力により回転する攪拌ブレード44とを備えている。
【0025】
台車本体41は、軌条運搬台車4の各部品を支持するためのものであり、平面視矩形状の下部フレーム41bと、下部フレーム41bの左右の側部のそれぞれから上方に立ち上がる起立フレーム41cと、下部フレーム41bの下部に取り付けられる車輪41aとを有している。車輪41aは、台車本体41の前端部の下面および台車本体41の後端部の下面のそれぞれの適宜の位置に配置されている。また、台車本体41における下部フレーム41bの上方であって左右の起立フレーム41cに挟まれた空間に搬送体42が収まるように配置される。また、台車本体41の最後部には、電源ユニット5が配置されている。
【0026】
搬送体42は、軸支部45によって台車本体41(起立フレーム41c)に軸支されている。具体的には、搬送体42は、平面視において軌条2の延伸方向(牽引車3および軌条運搬台車4の進行方向)に対し垂直に延びる軸線CL(図3参照)を中心に台車本体41(起立フレーム41c)に対し相対的に回動可能に軸支されている。軸線CLは、搬送体42の前後左右の中央を通るように設定されており、軸支部45は、軸線CLと交差する搬送体42の外周面に設けられている。すなわち、軸支部45は、搬送体42の外周面に対向するように2か所設けられている。
【0027】
軸支部45は、搬送体42の上下方向の中央よりも上方に配置されており、搬送体42の重心位置よりも上方に配置されている。なお、搬送体42の重心位置とは、搬送体42だけでなく、搬送体42に設けられる回転駆動源43および攪拌ブレード44を含んだ場合の重心位置のことであり、さらに、収容部42aに生コンクリートが収容されている場合には、生コンクリートも含んだ場合の重心位置のことである。
【0028】
軸支部45は、軸線CLに沿って延びる円柱状または円筒状の軸部材と、軸部材に回動可能に嵌合するU字状の溝を有する嵌合部材とを有している。本実施例では、台車本体41(起立フレーム41c)側に軸部材が設けられ、搬送体42側(搬送体42の左右の端部)に下方が開放するU字状(逆U字状)の溝を有する嵌合部材45aが設けられている。なお、台車本体41(起立フレーム41c)側に嵌合部材を設け、搬送体42側に軸部材を設けるようにしてもよい。
【0029】
ここで、搬送体42は、台車本体41(軸支部45)に対し着脱可能に構成されている。具体的には、台車本体41に取り付けられた状態で、台車本体41に対し上方に相対的に移動することによって、嵌合部材と軸部材の嵌合が解除されて台車本体41から離脱する(取り外される)。一方、搬送体42は、台車本体41から取り外された状態で、軸支部45の位置を合わせて台車本体41に対し下方に相対的に移動することによって、嵌合部材と軸部材とが嵌合し、台車本体41に軸支される(取り付けられる)。
【0030】
ここで、軸支部45が搬送体42の重心位置よりも上方に配置されているため、台車本体41が傾くと、搬送体42の重心位置が軸支部45の真下になるように、搬送体42が台車本体41に対して相対的に回転する。すなわち、搬送体42は、台車本体41に対して所定角度傾いた状態となる。たとえば、図2に示すように、軌条2が所定の傾斜角度Aで傾くように設置されている場合、台車本体41も平地の場合に比べて傾斜角度Aで傾く姿勢となる。このとき、搬送体42は、平地の場合(図1参照)に比べて台車本体41に対して傾斜角度Aと略同程度の角度で傾いた状態となる。すなわち、搬送体42は水平状態若しくはこれに近い状態に維持される。このことは、軌条2の傾斜角度が変化しても同じであり、軌条2の傾斜角度にかかわらず、搬送体42は水平状態若しくはこれに近い状態に維持される。
【0031】
以上のように、搬送体42は、軸支部45の作用により、軌条2の傾斜角度に応じて軸線CLを中心に台車本体41に対して相対的に回転し、かつ、自重によって水平状態若しくはこれに近い状態に維持される構成である。
【0032】
収容部42aは、全体としては上下に延び、上面および下面が開放する筒状(円筒状または角筒状)に形成されている。また、収容部42aは、下方に向かうにつれて断面積が縮小する逆円錐形または逆四角錐形に形成されている。このため、上面開口から収容部42aに生コンクリートを投入することができる。すなわち、収容部42aは、生コンクリートを収容して搬送するバケット(生コンクリート運搬バケット)として機能する。
【0033】
収容部42a(搬送体42)の下面開口42cには、蓋体42dが設けられている。蓋体42dは、収容部42a(搬送体42)に対し相対的に変位可能に設けられており、収容部42aの下面開口42cを開放および閉塞することができる。収容部42aに生コンクリートが収容されている場合、収容部42aの下面開口42cが開放されると、生コンクリートは自重により下面開口42cから排出される。すなわち、下面開口42cは、生コンクリートを排出可能な排出口として機能する。また、下面開口42cの下方には矩形状の下部フレーム41bの開口部分が位置しており、下部フレーム41bを通過して生コンクリートを排出させることもできる。
【0034】
また、収容部42aの上方には、搬送体42の上端部を構成する上部フレーム42eが設けられている。上部フレーム42eは、下方が開放するU字状(逆U字状)に形成されており、上部フレーム42eの下端部は収容部42aの上端部に固定されている。このため、クレーン等の吊上装置を用いて、上部フレーム42eに吊上装置のフックを掛止して、搬送体42を吊り上げることができる。すなわち、上部フレーム42eは、搬送体42を吊上装置で吊り上げて自由に移動させるための係止部(吊上部)としても機能する。このようにすれば、搬送体42を吊上装置で吊り上げて台車本体41から離脱させ、任意の排出目標位置まで移動させて搬送体42を吊り上げたまま下面開口42cを開放し、生コンクリートを排出目標位置において排出させることができる。生コンクリートの排出作業が完了すると、台車本体41の所定位置まで搬送体42を吊り上げたまま移動させ、台車本体41に再度取り付けることができる。以上のように、搬送体42を吊り上げた状態で、台車本体41から離脱させ、生コンクリートを排出し、台車本体41に再度取り付けることができる。
【0035】
回転駆動源43は、回転駆動力を発生させることができる所謂回転モータである。たとえば、回転駆動源43としては、インバータモータ等を用いることができる。回転駆動源43は、給電ユニット50(図6参照)によって電源ユニット5と電気的に接続されており、電源ユニット5から供給される電力によって作動する。給電ユニット50の具体的な構成は後述する。また、回転駆動源43は、減速機などを有する動力伝達機構を介して攪拌ブレード44に機械的に接続されている。
【0036】
回転駆動源43は、攪拌ブレード44をある方向に回転(正回転)させることができるほか、正回転の逆方向に回転(逆回転)させることができる。さらに、正回転および逆回転のそれぞれにおいて、攪拌ブレード44の回転数を変化させることができる。たとえば、攪拌ブレード44の回転数は、通常攪拌時(通常搬送時)には生コンクリートが攪拌可能な速度となるように、生コンクリートの排出時または排出後には攪拌ブレード44に付着した生コンクリートを吹き飛ばすことができる速度となるように、実験等に基づいて適宜回転数を設定することができる。
【0037】
回転駆動源43は、搬送体42の重心位置よりも上方に配置されている。また、回転駆動源43は、軸支部45よりも上方に配置されている。具体的には、回転駆動源43は、収容部42aの上端部に取り付けられた駆動源支持部材42bに取り付けられている。
【0038】
また、駆動源支持部材42bは、軸支部45の軸線に沿って延びるように設けられている。また、駆動源支持部材42bの両端部は収容部42aの外周面よりも突出している。駆動源支持部材42bの両端部には、軸支部45が機械的に固定されている。すなわち、駆動源支持部材42bは、平面視において対向する軸支部45を直線的に繋ぐように設けられている。このため、回転駆動源43の重みによる荷重が収容部42aに過剰にかかることを防止し、また、駆動源支持部材42bが軸支部45にかかる搬送体42全体の荷重を受けることができ、搬送体42の強度を向上させ、かつ、軸支部45にかかる荷重を分散させることができる。
【0039】
図4および図5に示すように、攪拌ブレード44は、棒状または筒状の回転軸部44aと、回転軸部44aの外周面に設けられた螺旋状のブレード部(羽根部)44bとを有している。攪拌ブレード44が回転することによって、収容部42aに収容された生コンクリートが攪拌される。
【0040】
ブレード部44bとしては、生コンクリートを攪拌可能な形状であればよく、特定の形状に限定される必要は無いが、本実施径形態では、ブレード部44bは、下方に向かって徐々に外径が縮小するように形成されている。具体的には、ブレード部44bは、側面視において回転軸部44aの中心軸線に対して所定の傾斜角度Bに沿って徐々に外径が縮小するように形成されている。
【0041】
この回転軸部44aは、軸支部45によって搬送体42が回動する軸線CLと交差する位置(この実施例では軸線CLの中心で軸線CLに直交する位置または平面視における収容部42aの中心位置)に配置されており、この回転軸部44aの上端に回転駆動源43が設けられている。これにより、止まっている攪拌ブレード44を回転駆動源43が回転駆動させるときに、攪拌ブレード44の回転方向と逆方向の反力が回転駆動源43に生じても、この反力によって搬送体42が回動することがない。したがって、攪拌ブレード44の回転開始/停止、回転速度の変更等を実行しても搬送体42の姿勢を安定させておくことができ、生コンクリートの適切な撹拌を連続的に継続することができる。
【0042】
また、回転軸部44aが軸線CLの中心位置または平面視における収容部42aの中心位置で軸線CLに直交していることにより、攪拌ブレード44が回転することでブレード部44bが生コンクリートに対して持ち上がる方向もしくは沈み込む方向へ押し出されようとしても、攪拌ブレード44にかかるその応力を軸支部45(特に軸線CLの中心)によってしっかりと受け止めることができ、軸支部45やブレード部44bが変形等することを防止できる。
【0043】
また、軸支部45は、台車本体41の最も後方に位置する車輪41aの回転軸と軸線CLが平行となるように配置されている。言い換えれば、軸支部45は、台車本体41が車輪41aによって軌条2上を移動する進行/後退方向に対して軸線CLが直交するように配置されている。これにより、山林等に設置されて上下に高さが変わって様々な角度に傾斜しつつ伸びている軌条2に沿って台車本体41が移動する際に、傾斜角度の変化に合わせて搬送体42がスムーズに回動し、どのような傾斜角度であっても搬送体42が略水平(この実施例では回転軸部44aが鉛直)の姿勢を維持することができる。
【0044】
また、攪拌ブレード44の下端部は、収容部42aの底面の近傍に位置する。たとえば、攪拌ブレード44の下端部と収容部42aの底面との離間距離Cは、
バケット内の生コンクリートの骨材が搬送中に噛み込まない距離に設定することができる。また、離間距離Cは、搬送する生コンクリート種類等から噛み込まない距離に設定することが好ましい。このようにすれば、収容部42aの底部付近の生コンクリートを攪拌させながら上側に移動させることができ、生コンクリートが収容部42aの底部付近に滞留することを防止し、生コンクリートを効率よく攪拌することができる。
【0045】
なお、本実施形態では、台車本体41に対し2つの搬送体42が軌条2の延伸方向に並ぶように軸支されている。このため、1度に多くの生コンクリートを運搬することができる。なお、台車本体41に軸支される搬送体42の数は特に限定されず、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0046】
ただし、台車本体41の最も後方に位置する車輪41a(後輪)が、最も後方に位置する搬送体42の軸支部45よりも後方に配置されている。これにより、傾斜地を走行する場合であっても安定して軌条2上を走行することができる。
【0047】
図6に示すように、給電ユニット50は、スイッチユニット51と、第1給電ケーブル52と、第1給電ソケット53と、第2給電ケーブル54と、第2給電ソケット55と、第3給電ケーブル56とを有している。スイッチユニット51、第1給電ケーブル52、第1給電ソケット53、第2給電ケーブル54、第2給電ソケット55、および第3給電ケーブル56のそれぞれは、台車本体41に取り付けられている。第1給電ケーブル52は、スイッチユニット51と電源ユニット5とを電気的に接続する電気ケーブルである。第2給電ケーブル54は、スイッチユニット51と第1給電ソケット53とを電気的に接続する電気ケーブルである。第3給電ケーブル56は、スイッチユニット51と第2給電ソケット55とを電気的に接続する電気ケーブルである。
【0048】
第1給電ソケット53は、台車本体41の前側に配置されており、前側の搬送体42に取付けられた回転駆動源43から延びる電源ケーブル43aの電源プラグ43bを接続することができる。第2給電ソケット55は、台車本体41の後側に配置されており、後側の搬送体42に取付けられた回転駆動源43から延びる電源ケーブル43aの電源プラグ43bを接続することができる。第1給電ソケット53および第2給電ソケット55は、それぞれの電源プラグ43bと着脱(挿入抜去)可能に構成されており、電源ユニット5と回転駆動源43との電気的接続/電気的切断を切り替えることができる。具体的には、電源プラグ43bを第1給電ソケット53または第2給電ソケット55に挿入する(差し込む)ことによって、電源ユニット5と電源プラグ43bに接続された回転駆動源43とを電気的に接続することができる。
【0049】
また、スイッチユニット51は、前後方向において第1給電ソケット53および第2給電ソケット55の間に配置されている。スイッチユニット51は、第1給電ソケット53(第2給電ケーブル54)および第2給電ソケット55(第3給電ケーブル56)の両方に対し電力を供給する状態(電力供給状態)と電力を供給しない状態(電力停止状態)とで切り替えるための手動スイッチ51aを有している。手動スイッチ51aが操作されることにより、第1給電ソケット53(第2給電ケーブル54)および第2給電ソケット55(第3給電ケーブル56)並びに第1給電ソケット53および第2給電ソケット55のそれぞれに接続された回転駆動源43への電力供給が切り替えられる。すなわち、手動スイッチ51aが操作されることにより、スイッチユニット51(給電ユニット50)に電気的に接続された回転駆動源43の駆動/停止が切り替えられる。なお、スイッチユニット51(給電ユニット50)に電気的に接続されていない(電源プラグ43bが第1給電ソケット53または第2給電ソケット55に挿入されていない)回転駆動源43は、手動スイッチ51aの操作にかかわらず駆動しない。
【0050】
さらに、スイッチユニット51(手動スイッチ51a)、第1給電ソケット53、および第2給電ソケット55の配置高さEは、地上から1000mm~2000mmの範囲とすることができ、地上から1200mm~1800mmの範囲とすることが好ましく、地上から1700mm~1800mmの範囲とすることがより好ましい。このようにすれば、地上に立ったまま(台車本体41に乗ることなく)手動スイッチ51aの操作、第1給電ソケット53または第2給電ソケット55への電源プラグ43bの着脱を行うことができる。すなわち、手動スイッチ51aの操作、第1給電ソケット53または第2給電ソケット55への電源プラグ43bの着脱を安全かつ容易に行うことができる。なお、回転駆動源43としてインバータモータを用いることにより、攪拌ブレード44の回転数を変化させて、生コンクリート排出時の攪拌ブレード44上(ブレード部44b上)の生コンの残りをはね飛ばすこともできる。この場合、インバータモータを制御するためのインバータ盤を収容する収容容器(インバータ盤容器)が台車本体41に取り付けられる。また、この場合、スイッチユニット51、第1給電ソケット53、および第2給電ソケット55のそれぞれは、インバータ盤容器に集約して設けられていてもよい(収容されていてもよい)。このようにすれば、手動スイッチ51aの操作、インバータ制御、および電源プラグ43bの着脱を1か所でまとめて行うことができる。
【0051】
本発明の軌条運搬台車4は、生コンクリートが収容される収容部42aに収容され、回転駆動源43で発生した回転駆動力により回転する攪拌ブレード44と、搬送体42の重心位置よりも上方に配置され、平面視において進行方向に対し垂直に延びる軸線を中心に、搬送体42を台車本体41に軸支する軸支部45を備え、搬送体42は、軌条2の傾斜に応じて軸支部45の軸線を中心に台車本体41に対して相対的に回転し、かつ、自重によって水平状態若しくはこれに近い状態に維持される構成である。したがって、本発明によれば、収容部42aに収容された生コンクリートを攪拌ブレード44で適宜攪拌するとともに、搬送体42を水平状態若しくはこれに近い状態に維持しながら軌条2を走行することができる。特に、搬送体42は自重によって水平状態若しくはこれに近い状態に維持されるため、搬送体42を水平に保つための動力が不要であり、簡単な構成で、傾斜地において生コンクリートを安定して運搬することができる。また、本発明では、運搬中に生コンクリートを攪拌することができるため、運搬中の生コンクリートの材料分離を抑制し、生コンクリートの品質を維持しながら運搬することが可能となる。
【0052】
なお、水平状態とは、軌条2が平地に設置された場合における搬送体42の状態のことである。すなわち、水平状態とは、回転軸部44aの中心軸線が鉛直方向を向く状態ということもできるし、筒状に形成された収容部42aの延伸方向(軸線方向)が鉛直方向を向く状態ということもできる。また、水平状態とは、攪拌ブレード44の回転軸部44aが鉛直になっている状態、あるいは収納されている生コンクリートに対して攪拌ブレード44および回転軸部44aが適切に働くよう設計されている角度に位置している状態ということもできる。
【0053】
また、本発明によれば、回転駆動源43が、軸支部45よりも上方に配置された構成であるので、搬送体42(収容部42a)の下端位置をできるだけ下方にすることができ、収容部42aの容積を大きくすることができる。したがって、1度に多くの生コンクリートを運搬することができる。
【0054】
さらに、本発明によれば、搬送体42の下端部に生コンクリートを排出可能な排出口(下面開口42c)をさらに設けた構成であるので、台車本体41に搬送体42を軸支した状態のまま生コンクリートを排出することができ、便利である。
【0055】
この発明における軌条運搬台車は、軌条運搬台車4に対応し、以下同様に、軌条は軌条2に対応し、車輪は車輪41aに対応し、台車本体は台車本体41に対応し、収容部は、収容部42aに対応し、搬送体は、搬送体42に対応し、回転駆動源は、回転駆動源43に対応し、攪拌ブレードは、攪拌ブレード44に対応し、軸支部は、軸支部45に対応し、排出口は、下面開口42cに対応し、牽引車は、牽引車3に対応するが、この発明は本実施形態に限られず他の様々な実施形態とすることができる。また、上述の実施形態で挙げた画面および具体的な構成等は一例であり、実際の製品に応じて適宜変更することが可能である。
【0056】
たとえば、上述の実施形態では、牽引車3の駆動機構として、駆動輪32の係合突起が軌条2の係合穴と係合するような構成としたが、軌条2にラックを形成し、駆動輪32の外周面にラックにかみ合うギアを設けた所謂ラック方式の駆動機構とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本願発明は、山林等の傾斜地での運搬産業、山林内での鉄塔、橋、道路等の建設時における資材や人の運搬産業など、道路のない場所または道路の設置が困難な場所に軌条を敷設して軌条運搬機により物を運搬する種々の産業に利用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1…軌条運搬システム
2…軌条
2U…軌条ユニット
3…牽引車(軌条運搬機)
4…軌条運搬台車
41…台車本体
42…搬送体
43…回転駆動源
44…攪拌ブレード
45…軸支部
5…電源ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6