(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110322
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】回動補助具及び作業対象物の回動方法
(51)【国際特許分類】
E02B 7/02 20060101AFI20240807BHJP
【FI】
E02B7/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014852
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】竹村 嘉哲
(72)【発明者】
【氏名】後藤 政人
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼能 雄大
(57)【要約】
【課題】反転作業中の作業対象物の旋回を制御又は抑制する。
【解決手段】少なくとも2つの柱部材31,32が互いに傾斜して連結された作業対象物34の回動を補助する反転補助具4であって、少なくとも2つの柱部材31,32の少なくとも一方のベースプレート31P,32Pに着脱自在に取り付けられる取付部41と、先端面43bが同一平面E上で延びている接地部43と、接地部43の両端部において先端面43bから互いに離れる方向に斜めに延びる斜面部45と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの柱部材が互いに傾斜して連結された作業対象物の回動を補助する回動補助具であって、
前記少なくとも2つの柱部材の少なくとも一方の端部に着脱自在に取り付けられる取付部と、
先端が同一平面上で延びている接地部と、
前記接地部の両端部において前記先端から互いに離れる方向に斜めに延びる傾斜部と、
を備えることを特徴とする回動補助具。
【請求項2】
前記接地部及び前記傾斜部は、前記取付部が前記柱部材に取り付けられた状態において、該柱部材の外周縁よりも外側に位置することを特徴とする請求項1に記載の回動補助具。
【請求項3】
前記傾斜部は、直線状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の回動補助具。
【請求項4】
少なくとも2つの柱部材が互いに傾斜して連結された作業対象物を回動させる回動方法であって、
前記作業対象物に着脱自在に取り付けられる取付部と、先端が同一平面上で延びている接地部と、前記接地部の両端部において前記先端から互いに離れる方向に斜めに延びる傾斜部と、を有する回動補助具を、所定の載置面に横置きにされた状態にある前記作業対象物の前記少なくとも2つの柱部材の少なくとも一方の柱部材の端部に、前記回動補助具を前記接地部の先端が前記載置面に対して直交するように取り付け、前記傾斜部の側に前記作業対象物を回動させる
ことを特徴とする作業対象物の回動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回動補助具及び作業対象物の回動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
山間部等の河川においては、台風や大雨による土砂災害を防止するための堰堤が設置されることがある。堰堤は、水を通過させつつも土石流に含まれる岩石や流木が通過することを抑えるものであり、その壁部にて土石流の勢いを弱めるとともに、岩石や流木を堰き止める機能を有する。近年では、水の通過を遮ることなく、岩石や流木だけを捕捉するため、堰堤の一部にスリットを形成し、このスリットとして鋼管等で柵状に構築された捕捉体を設けた、いわゆる透過型堰堤が構築されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
透過型堰堤としては、複数の鋼管フレーム部材を河川横断方向に対して間隔をあけて設置してなる鋼製スリットダムが一般に知られている。鋼管フレーム部材は、複数の円筒状の鋼管部材からなり、これら部材を溶接等によって接合することで構成されている。具体的には、長尺の鋼管部材(本体部)に対して短尺の鋼管部材(枝部)を枝状(ラムダ(λ)状)に接合する。
【0004】
このような鋼管部材同士の接合は、予め工場等で行われることが一般的である。鋼管部材の接合を行う場合には、通常、長尺の鋼管部材を横置きにした状態で短尺の鋼管部材を上方から取り付ける。また、鋼管フレーム部材の所定の高さ位置において、隣接する鋼管フレーム部材同士を連結する横繋ぎ材(梁部)が各鋼管フレーム部材の長尺の鋼管部材に設けられることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、横繋ぎ材は、横置きにされた状態の各鋼管フレーム部材を実際の配置に並べて、各鋼管フレーム部材の長尺の鋼管部材に接合される。横繋ぎ材を長尺の鋼管部材に接合する場合、例えば、横置き状態の鋼管フレーム部材を、長尺の鋼管部材に対して短尺の鋼管部材が高さ方向において上になるように反転(回動)させる必要がある。
【0007】
λ型の鋼管フレーム部材のような作業対象物を反転させる場合、鋼管フレーム部材をクレーン等に取付けられたワイヤにより吊り上げて、短尺の鋼管部材を長尺の鋼管部材に高さ方向において対向するようにする。特に、作業対象物が円筒状の鋼管により形成されている場合には、鋼管フレーム部材に取り付けられる吊りピースの位置と鋼管フレーム部材の重心位置とがずれることによって、作業対象物のバランスを確保することが困難であった。その結果、作業対象物が、長尺の鋼管部材を起点に予期しない旋回をして移動することがあり、大きな作業スペースを確保する必要があった。
【0008】
また、反転作業中に作業対象物が旋回して移動することにより、例えば、長尺の鋼管部材には、定盤等の設置面との摩擦等により衝撃が加わり続け疵が付くことがあった。
【0009】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、反転作業中の作業対象物の旋回を制御又は抑制することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決した本発明は、少なくとも2つの柱部材が互いに傾斜して連結された作業対象物の回動を補助する回動補助具であって、前記少なくとも2つの柱部材の少なくとも一方の端部に着脱自在に取り付けられる取付部と、先端が同一平面上で延びている接地部と、前記接地部の両端部において前記先端から互いに離れる方向に斜めに延びる傾斜部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る回動補助具の一態様において、前記接地部及び前記斜面部は、前記取付部が前記柱部材に取り付けられた状態において、該柱部材の外周縁よりも外側に位置する。
【0012】
また、本発明に係る回動補助具の一態様において、前記傾斜部は、直線状に形成されている。
【0013】
さらに、上記課題を解決した本発明は、少なくとも2つの柱部材が互いに傾斜して連結された作業対象物を回動させる回動方法であって、前記作業対象物に着脱自在に取り付けられる取付部と、先端が同一平面上で延びている接地部と、前記接地部の両端部において前記先端から互いに離れる方向に斜めに延びる傾斜部と、を有する回動補助具を、所定の載置面に横置きにされた状態にある前記作業対象物の前記少なくとも2つの柱部材の少なくとも一方の柱部材の端部に、前記回動補助具を前記接地部の先端が前記載置面に対して直交するように取り付け、前記傾斜部の側に前記作業対象物を回動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、反転作業中の作業対象物の旋回を制御又は抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】捕捉体を構成する本体部、枝部及び梁部を接合した接合体の斜視図である。
【
図3】本実施の形態に係る反転補助具の正面図である。
【
図4】反転補助具が取り付けられた横置き状態における接合体を示す斜視図である。
【
図5A】本体部に反転補助具が取り付けられた横置きされた接合体を示す端面図である。
【
図5B】
図5Aに示した接合体を反転させた状態を示す端面図である。
【
図5C】枝部を上にして縦置きされた状態にある接合体を示す端面図である。
【
図5D】
図5Cに示す接合体を上方から見た概略的な平面図であり、梁部を本体部に接合する工程を説明する。
【
図5F】梁部が部分的に接合された接合体を示す図であり、(a)は接合体を反転させた状態を示す端面図であり、(b)は(a)に示す接合体の側面図である。
【
図5G】枝部に反転補助具が取り付けられた横置きされた接合体を示す端面図である。
【
図5H】
図5Gに示した接合体を反転させた状態を示す端面図である。
【
図5I】本体部を上にして縦置きされた状態にある接合体を示す図であり、(a)は端面図であり、(b)は側方から見た部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率等が異なる部分が含まれている場合がある。
【0017】
<堰堤の構成>
最初に、製造時に反転補助具が用いられる捕捉体を備えた堰堤について説明する。
図1は、透過型堰堤の斜視図である。堰堤1は、その基礎部が地盤に埋設されており、河川を横切るように河川の幅方向に沿って延在するように構築される。堰堤1は、例えば、コンクリート又はソイルセメントによって構築される。
【0018】
堰堤1は、一般に透過型堰堤として知られるものであり、河川の上流から流れてくる流水を通す透過部2と、透過部2に設けられて流水を通すとともに土石及び流木を捕捉する捕捉体3とを備える。
【0019】
捕捉体3は、複数の上流側支柱31と、複数の下流側支柱32と、複数の梁材33と、を有する。上流側支柱31は、河川上流側に立設され、下流側支柱32は、上流側支柱31に対して下流側に立設される。
【0020】
上流側支柱31と下流側支柱32とは、互いに傾斜するように互いに接合(連結)されていて、下流側支柱32は、その軸線が上流側支柱31の軸線に対して交差するように上流側支柱31に接合されている。具体的には、下流側支柱32の一端部は、上流側支柱31の長手方向の中程において、上流側支柱31に溶接によって接合されている。
【0021】
梁材33は、上流側支柱31の所定の高さ位置に設けられている。梁材33は、隣接する上流側支柱31の間に設けられていて、隣接する上流側支柱31を連結している。本実施の形態において梁部33は、高さ方向において各上流側支柱31の4個所に接合されている(
図1参照)が、梁部33が上流側支柱31に接合される個所は、特に限定されず、捕捉体3の規模等により適宜設定される。
【0022】
上流側支柱31の下端側には、例えば、平面視円形状又は略円形の鋼製のベースプレート31P、下流側支柱32の下端側には、例えば、平面視円形状又は略円形の鋼製のベースプレート32Pが溶接等によって接合されている。ベースプレート31P,32Pは、上流側支柱31及び下流側支柱32の外径よりも大きく形成されている。上流側支柱31及び下流側支柱32の下端部は、ベースプレート31P,32Pとともに堰堤1の基礎部に連結される。
【0023】
上流側支柱31に接合されていない梁材33の端部(自由端部)には、例えば、平面視円形状又は略円形の鋼製のフランジプレート33Pが溶接等によって接合されている。フランジプレート33Pは、梁材33の外径よりも大きく形成されている。2つの梁材33は、自由端部の側でフランジプレート33Pを介して互いに連結されている。
【0024】
以下に各構成の詳細について説明する。なお、説明の便宜上、上流側支柱31を「本体部31」、下流側支柱32を「枝部32」と、梁材33を「梁部33」として説明し、「本体部31」と「枝部32」が接合されたものをλ(ラムダ)型の「接合体34」として説明することもある。
図2は、捕捉体3を構成する本体部31、枝部32及び梁部33を接合した接合体34の斜視図である。
【0025】
本体部31は、例えば、円筒状の鋼管により形成されている。本体部31の一端部(捕捉体3として設置した際の下端部)における端面は、本体部31の軸線に対して傾斜した端面である。本体部31には、その両端部近傍の側面に吊りピース310が溶接によって1つずつ接合されている。吊りピース310は、吊り金具等を掛けるための挿通孔を有する。なお、吊りピース310は、各端部に1つずつ設けられている場合に限られない。2つの吊りピース310(1つのみ図示)は、円筒状に形成された本体部31の軸線方向に沿って並んで配置されている。
【0026】
枝部32は、例えば、円筒状の鋼管により形成されている。枝部32は、その軸線が本体部31の軸線に斜めに交差するように、溶接によって接合されている。枝部32は、その一端部が本体部31に接合されており、他端部が本体部31の一端部側(捕捉体3として設置した際の下端部側)に向けて延びている。
【0027】
梁部33は、例えば、円筒状の鋼管により形成されている。梁部33は、捕捉体3として設置した際の本体部(上流側支柱)31の上端側に所定の間隔をあけて2つ接合されている。梁部33は、例えば、その軸線が本体部31及び枝部32それぞれの軸線を含む仮想平面に対して直交する側で一端部が本体部31に接合されており、他端部が捕捉体3として設置した際の河川の幅方向に延びている。なお、捕捉体3において両端部に配置される接合体34には、1つの梁部33のみが接合されている。
【0028】
ベースプレート31P,32P及びフランジプレート33Pはそれぞれ、本体部31、枝部32及び梁部33の一端部に設けられている。ベースプレート31P,32P及びフランジプレート33Pは、その中心が本体部31,枝部32及び梁部33に対して同心上に又はほぼ同心上に位置するように配置されている。ベースプレート31P,32P及びフランジプレート33Pには、その外周側に沿って複数の挿通孔31a,32a,33aが形成されている。この挿通孔を介して本体部31及び枝部32は、堰堤1の基礎部に連結され、梁部33は、隣接する本体部31の梁部33に連結される。以上のような接合体34に梁部33を接合するにあたって、接合体34の反転を補助する反転補助具4が用いられる。
【0029】
<反転補助具>
次に、本実施の形態に係る反転補助具(回動補助具)4について説明する。本実施の形態に係る反転補助具4は、本体部(柱部材)31及び枝部(柱部材)32が互いに傾斜して連結された接合体(作業対象物)34の反転(回動)を補助する反転補助具(回動補助具)4であって、本体部(柱部材)31及び枝部(柱部材)32の少なくとも一方のベースプレート(端部)31P,32Pに着脱自在に取り付けられる取付部41と、先端面(先端)43bが同一平面上で延びている接地部43と、接地部43の脚部43aにおいて先端面43bから互いに離れる方向に斜めに延びる斜面部(傾斜部)45と、を備えることを特徴とする。本実施の形態に係る反転補助具4の構成について以下に具体的に説明する。
【0030】
図3は、本実施の形態に係る反転補助具4の正面図である。反転補助具4は、略矩形状の鋼板から形成されている。本体部31に枝部32を接合する際に、反転補助具4は、本体部31のベースプレート31P及び枝部32のベースプレート32Pに取り付けられる。反転補助具4は、取付部41と、接地部43と、斜面部45と、を備える。
【0031】
取付部41は、ベースプレート31P,32Pに着脱自在に取り付けられる部分である。取付部41は、反転補助具4の一方の長辺側に位置し、円形状に形成された2つの挿通孔41aを有する。挿通孔41aは、ベースプレート31P,32Pの挿通孔31a,32aの位置に対応するように配置されており、後述する連結具(ボルト)を挿通するために用いられる。すなわち、挿通孔41aの間隔は、反転補助具4が取り付けられるベースプレート31P,32Pの2つの挿通孔31a,32aの間隔と等しくなるように形成されている。
【0032】
接地部43は、反転補助具4の一方の長辺に対向する側の他方の長辺側に位置する。接地部43は、長手方向の両側に一対の脚部43aを有する。反転補助具4は、ベースプレート31P,32Pに取り付けられた状態において、少なくとも脚部43aがベースプレート31P,32Pの外縁よりも外側に突出する。
【0033】
このような構成にすることにより、接合体34の反転時に、ベースプレート31P,32Pの接地を回避し、接合体34を安定した姿勢で反転させることができる。また、一対の脚部43aは、その先端面43bが同じ平面(同一平面)E上に位置する。2つの脚部43aは、接合体34に梁部33を接合する溶接等の作業時にそれぞれの先端面43bが定盤(載置面)に接地している。
【0034】
一対の脚部43aの間には、円弧状の凹部43cが形成されている。凹部43cは、主として反転補助具4の軽量化を目的として形成されているが、接合体34を安定した姿勢で旋回させるよう、本体部31、枝部32、梁部33、ベースプレート31P,32P及びフランジプレート33Pの総重量を支持するのに十分な強度を有するように設計されている。凹部43cの形状は円弧状に限られず、矩形状などあらゆる態様が適用できる。また、凹部43cが形成されておらず一の接地部43だけであってもよい。
【0035】
斜面部45は、一対の脚部43aにおいて互いに最も離れた角部に形成されている。斜面部45は、面取り加工、角落とし加工により形成されている。各斜面部45は、先端面43bから取付部41の側に向かって、互いに離れる方向に斜めに延びている。斜面部45は、直線状に形成されており、接合体34の反転時に定盤等の載置面に線接触又は面接触するので、接合体34が旋回しづらくなり、接合体34の安定した反転作業に寄与する。
【0036】
<接合体の反転方法>
次に、本実施の形態に係る反転補助具4を用いた接合体34の反転方法について説明する。本実施の形態に係る反転補助具4を用いた、本体部31及び枝部32が互いに傾斜して連結された接合体34を反転(回動)させる反転方法においては、接合体34に着脱自在に取り付けられる取付部41と、先端面43bが同一平面上で延びている接地部43と、接地部43の両端部において先端面43bから互いに離れる方向に斜めに延びる斜面部45と、を有する反転補助具4を、横並び又は横置きにされた状態にある本体部31及び枝部32の少なくとも一方のベースプレート31P,32P(端部)に、反転補助具4を接地部43の先端面43bが定盤に対して直交するように取り付け、斜面部45の側に接合体34を回動させる。本実施の形態に係る反転(回動)方法について以下に具体的に説明する。
【0037】
図4は、反転補助具4が取り付けられた横置き状態における接合体34を示す斜視図であるなお、接合体34に関して「横置き」及び「横並び」とは、接合体34の本体部31及び枝部32が定盤上において互いに横に並んだ状態をいい、接合体34に関して「縦置き」及び「縦並び」とは、接合体34の本体部31及び枝部32が高さ方向において互いに対向した状態のことをいう。
【0038】
接合体34への梁部33の接合は、捕捉体3の原寸(設計図)が描かれた定盤上において行われる。捕捉体3を構成する全ての接合体34を横置きにして定盤上に並べる。定盤上において、接合体34の本体部31及び枝部32は、例えば、H形鋼に載置されて支持されている。
【0039】
以下の説明において、一の接合体34に対して2つの梁部33を接合する場合を例にして説明する。なお、以下で説明する反転方法は、接合体34に1つの梁部33を接合する場合の反転方法と同じである。
【0040】
図5Aは、本体部31に反転補助具4が取り付けられた横置きされた接合体34を示す端面図である。
図5Bは、
図5Aに示した接合体34を反転させた状態を示す端面図である。
図5Cは、枝部32を上にして縦置きされた状態にある接合体34を示す端面図である。
図5Dは、
図5Cに示す接合体34を上方から見た概略的な平面図であり、梁部33を本体部31に接合する工程を説明する。
図5Eは、
図5DにおけるE-E線に沿った部分断面図である。
図5Fは、梁部33が部分的に接合された接合体34を示す図であり、(a)は接合体34を反転させた状態を示す端面図であり、(b)は(a)に示す接合体34の側面図である。
図5Gは、枝部32に反転補助具4が取り付けられた横置きされた接合体34を示す端面図である。
図5Hは、
図5Gに示した接合体34を反転させた状態を示す端面図である。
図5Iは、本体部31を上にして縦置きされた状態にある接合体34を示す図であり、(a)は端面図であり、(b)は側方から見た部分断面図である。
【0041】
まず、横置きされた接合体34の本体部31のベースプレート31Pに反転補助具4を取り付ける。具体的には、枝部32に面する側とは反対側のベースプレート31Pの部分に、反転補助具4の長手方向が定盤に対して直交又は略直交するように、取付部41の挿通孔41aとベースプレート31Pの挿通孔31aの位置を合わせる。次いで、ボルトを反転補助具4の挿通孔41a及びベースプレート31Pの挿通孔31aに挿通する。ベースプレート31Pから反対側に突き出たボルトにナットを締結することにより、反転補助具4がベースプレート31Pに取り付けられる。反転補助具4がベースプレート31Pに取り付けられた状態において、脚部43aの先端面43b及び斜面部45は、ベースプレート31Pの外周縁の外側に位置している。
【0042】
横置きされた状態にある接合体34(
図5A参照)を、クレーン等により吊り上げる。この場合、ベースプレート31Pとは反対側の本体部31の上端部を、反転補助具4を定盤上に設置させつつ、上方に吊り上げて枝部32を本体部31に対して上方側で対向するように(縦並び状態になるように)枝部32を吊り上げる。この作業に伴い、接合体34は、図中において反時計回り(矢印R)に回動し始め、まず斜面部45が定盤に面接触すると、接合体34は静止(安定)した状態になる(
図5B参照)。次いで、さらに、接合体34を矢印Rの方向に回動させることにより、反転補助具4の2つの脚部43aの先端面43bが定盤に面接触すると接合体34の回動は止まる(
図5C参照)。
【0043】
縦置きされた状態において、本体部31は、捕捉体3の原寸が描かれた定盤の側に位置している。この原寸に合わせて、縦置きされた複数の接合体34の各本体部31に1つ又は2つの梁部33を適宜接合する(
図5D及び
図5E参照)。接合体34に対する梁部33の接合は上方(矢印方向)から行うため、まず、接合体34に対して梁部33の上半分の外周にわたって溶接作業を実施して、上半分に溶接部分Wが形成される。
【0044】
次いで、接合体34を再度吊り上げて(
図5F(b)参照)、本体部31と枝部32とが横並びになるまで、反時計回りにさらに接合体34を反転させる(
図5F(a)参照)。縦置きされた接合体34を横置きする場合、本体部31に取り付けられた反転補助具4の斜面部45が定盤に接触し、段階的に横置き状態に移行する。
【0045】
接合体34が横置きされた後、本体部31のベースプレート31Pを外して、枝部32のベースプレート32Pに反転補助具4を付け替える。まず、本体部31に面する側とは反対側の枝部32のベースプレート32Pの部分で、反転補助具4の長手方向が定盤に対して直交又は略直交するように、取付部41の挿通孔41aとベースプレート32Pの挿通孔32aの位置を合わせる。次いで、ボルトを反転補助具4の挿通孔41a及びベースプレート32Pの挿通孔32aに挿通する。ベースプレート32Pから反対側に突き出たボルトにナットを締結することにより、反転補助具4がベースプレート32Pに取り付けられる(
図5G参照)。反転補助具4がベースプレート32Pに取り付けられた状態において、脚部43aの先端面43b及び斜面部45は、ベースプレート32Pの外周縁の外側に位置している。
【0046】
次いで、接合体34を反時計回りにさらに回動させる。枝部32のベースプレート32Pに取り付けられた反転補助具4の斜面部45が定盤に接触しつつ(
図5H参照)、枝部32の反転補助具4の2つの先端面43bが定盤に接触するまで接合体34をさらに回動させる(
図5I(a)参照)。
【0047】
枝部32が定盤側に位置し、本体部31が高さ方向において枝部32に対して対向する縦並び状態において、本体部31に対してまだ溶接が施されていない梁部33の側が上方に面する。溶接が施されていない梁部33の残り半分に溶接を施して、梁部33を本体部31に接合する(
図5I(b)参照)。
【0048】
以上のような反転補助具4を作業対象物である接合体34(本体部31及び枝部32の少なくとも一方)に取り付けることにより、接合体34を安定的に反転させることができる。例えば、反転補助具4が取り付けられていない場合、接合体34は、本体部31及び枝部32のベースプレート31P,32Pのエッジが接合体34の反転作業時に定盤に接触することになり、ベースプレート31P,32Pのエッジが潰れたり、疵がついたりすることがある。また、反転補助具4が取り付けれていない場合、本体部31及び枝部32を縦並び状態にする過程において、接合体34が横滑りしたり、ベースプレート31P,32Pのエッジを起点にして接合体34が大きく旋回したりすることがある。
【0049】
これに対して反転補助具4を取り付けた場合には、接合体34を反転させる際に、少なくとも直線状の面を有する斜面部45が定盤に線接触又は面接触するようになり、旋回の起点となり得る角部がない。反転補助具4により接合体34は、斜面部45を介して段階的に回動することになり、接合体34が大きく旋回することは防がれる。
【0050】
また、反転補助具4は、脚部43aの先端面43b及び斜面部45がベースプレート31P,32Pの外周縁の外側に位置するように取り付けられているので、接合体34の反転作業時にベースプレート31P,32Pが定盤に接触することはなく、ベースプレート31P,32Pが損傷することはない。
【0051】
<その他>
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。また、例えば、上記実施の形態における各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。なお、上記実施の形態においては、反転作業開始時、反転補助具4は、本体部31のベースプレート31Pにのみ取り付けられていたが、枝部32のベースプレート32Pにも取り付けられていてもよい。
【符号の説明】
【0052】
4・・・反転補助具(回動補助具)、41・・・取付部、43・・・接地部、43a・・・脚部、43b・・・先端面(先端)、45・・・斜面部(傾斜部)
E・・・平面(同一平面)