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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110337
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】炭化ケイ素の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/97 20170101AFI20240807BHJP
【FI】
C01B32/97
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014871
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】318008886
【氏名又は名称】ジカンテクノ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】518148294
【氏名又は名称】木下 貴博
(74)【代理人】
【識別番号】100167690
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 直
(72)【発明者】
【氏名】木下 貴博
【テーマコード(参考)】
4G146
【Fターム(参考)】
4G146MA14
4G146NA05
4G146NA30
4G146PA06
(57)【要約】
【課題】本発明は、植物性原料を原料の元として使用し、その植物性原料等から製造された炭素素材及びシリカとを混合し純度の高い炭化ケイ素を製造する方法を提供することにある。
【解決手段】植物性原料(9)を炭化した炭素(3)と、植物性原料(9)から生成した二酸化ケイ素(7)と、を混合し、その混合した混合原料を所定の温度によって焼成し形成することを特徴とする。以上の特徴により、本発明は、化石由来の原料を使用せずに、バイオマス材料を使用して炭化ケイ素(2)を得ることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物性原料を炭化した炭素と、植物性原料から生成した二酸化ケイ素と、を混合し、
その混合した原料を焼成して形成することを特徴とする炭化ケイ素の製造方法。
【請求項2】
前記炭素は、植物性原料を炭化し植物性原料に含まれる二酸化ケイ素を50wt%以上含んだ炭素を含むことを特徴とする請求項1の炭化ケイ素の製造方法。
【請求項3】
酒粕を炭化した炭素と、植物性原料から生成した二酸化ケイ素と、を混合し、 その混合した原料を焼成して形成することを特徴とする炭化ケイ素の製造方法。
【請求項4】
X線回折法によるX線回折パターンは、35.7θ(deg)にもっとも強くピークが存在し、次に60.0θ(deg)にピークが存在する請求項3に記載の炭化ケイ素の製造方法。
【請求項5】
X線回折法によるX線回折パターンは、35.7θ(deg)にもっとも強くピークが存在し、次に41.4θ(deg)及び60.0θ(deg)にピークが存在する請求項2に記載の炭化ケイ素の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物性原料を原料の元として使用し、炭化ケイ素の粉末を製造する製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から炭化ケイ素を製造する方法にアチソン炉を使用して発熱材料、切削材料、パワー半導体等の材料として盛んに炭化ケイ素の製造が工業的に行われている。特に、パワー半導体では純度が高い材料が求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、アチソン炉を使用して炭化ケイ素の粉末の不純物の純度が500ppm以下の炭化ケイ素粉末の製造方法が記載されている。
また、特許文献2には、溶液成長法によって炭化ケイ素の単結晶の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開WO2017/043215号
【特許文献2】国際公開WO2013/027790号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来から化石由来の原料から炭素素材を製造する方法があるが、二酸化炭素低減の観点から、化石由来の原料を使用せずに、バイオマス材料を使用して炭化ケイ素を得ることが望まれてきている。
バイオマス材料は、グラファイトや炭化水素ガスに比較して低コストであり、安価に原料を調達することも可能である。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、植物性原料を原料の元として使用し、その原料から炭化ケイ素を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
植物性原料を炭化した炭素と、植物性原料から生成した二酸化ケイ素と、を混合し、
焼成して形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
以上の特徴により、本発明は、化石由来の原料を使用せずに、バイオマス材料を使用して炭化ケイ素を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態の炭化ケイ素の製造工程を示すプロセスフローを示す概要図である。
図2】実施形態の炭化ケイ素を製造する製造装置に関する概要図である。
図3】実施形態の炭化ケイ素を製造する際の焼成時の温度勾配のグラフである。
図4】実施形態のシリカの製造工程を示すプロセスフローを示す概要図である。
図5】実施形態のシリカの製造工程を示すプロセスフローを示す概要図である。
図6】実施形態のシリカを製造する際の焼成時の温度勾配のグラフである。
図7】実施形態の炭素素材の製造工程を示すプロセスフローを示す概要図である。
図8】実施形態の炭素素材又はシリカを製造する製造装置に関する概要図である。
図9】実施形態の炭化ケイ素をラマン分光法で測定したラマンスペクトルと強度のグラフである。
図10】実施形態の炭化ケイ素をラマン分光法で測定したラマンスペクトルと強度のグラフである。
図11】実施形態の炭化ケイ素をX線回折装置で測定したX線スペクトルのグラフである。
図12】実施形態の炭化ケイ素をX線回折装置で測定したX線スペクトルのグラフである。
図13】実施形態の炭化ケイ素をX線回折装置で測定したX線スペクトルのグラフである。
図14】実施形態の炭化ケイ素をX線回折装置で測定したX線スペクトルのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明にかかる炭化ケイ素及炭化ケイ素の製造方法について、図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下に説明する実施形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。
【0011】
<バイオマス材料>
以下の実施例により炭化ケイ素2を製造する原料である植物性原料9について説明する。本発明は、食物の残渣や廃棄される植物性原料を使用して最終生成物である炭素素材を製造する。植物性原料は、植物や木材等を使用するが、特に植物を収穫した際の残渣等の廃棄される植物性原料を炭化ケイ素2を製造する原料として使用すれば安価に、原料を入手することが可能である。
【表1】
【0012】
表1は、植物性原料9の成分表である。表1は、最も左に示す原料を構成する成分の割合を以下右に百分率で示している。例えば、稲わらは、炭素(C)が37.4%、窒素(N)が0.53%、リン(P)が0.06%、リン酸(P)が0.14%、カリウム(K)が1.75%、カリ(KO)が2.11%、カルシウム(Ca)が0.05%、マグネシウム(Mg)が0.19%及びナトリウム(Na)が0.11%となっている。
【0013】
ここで、植物由来のケイ素含有の多孔質の植物性原料9は、低温(300℃以上且つ1000℃以下)にて炭化しても実質的な変化がなく、ケイ素を除去することで細孔の配列を維持できる。植物性原料9は、細胞が軸に沿って規則正しく配列し、細胞壁にケイ酸が沈積して肥厚している構造のものが多くある。
【0014】
そして、ケイ化細胞列の間には圧縮された狭い細胞列があり、炭素化後ケイ素等を除去することにより高い比表面積を有する炭素材料を得ることが可能である。上述したようにケイ酸が13%以上且つ35%以下と多くケイ酸が含まれるものが適している。ケイ酸が多過ぎても得られる炭素素材が少なくなるため、20%程度の範囲の植物性原料9が良い。
【0015】
炭素が多く含まれる植物性原料9の例として表1に示しているが、稲わらの他に、小麦わら、大麦わら、米ぬか、籾殻、そばわら、大豆わら、サツマイモのつる、カブの葉、ニンジンの葉、トウモロコシの稈、サトウキビ梢頭部、ヤシ粕、ピーナッツ殻、みかんの皮、レッド杉のおがくず、カカオ殻、大麦殻、小麦殻、カラ松の樹皮及び銀杏の落ち葉がある。
【0016】
その他、植物の加工残渣ではなく植物そのものや酒粕等の飲食物を製造する際に発生する残渣を使用しても良い。酒粕は水分が50wt%を含みタンパク質13wt%や炭水化物を23wt%を含んでいる。
【0017】
例えば、竹は、繊維素がセルロース、ヘミセルロース、リグニンで構成され、ミネラルが鉄、マグネシウム、カルシウム、マンガン、銅、ニッケル等から構成されているため。 また、竹の葉には焼成すると、シラノール基(Si-OH)が抽出され、焼成の過程でSiO4となって抽出される。
【0018】
【表2】
【表3】
【0019】
表2、3は、本発明にて、上述した表1の植物性原料9である。植物性原料9のうち、炭化ケイ素を製造する方法で最も適している籾殻に代表される植物性原料9の成分組成表である。表2は、原料を構成する成分の割合を百分率で示している。
【0020】
例えば、水分が8%~10%、灰分が10%~18%、脂質が0.1%~0.5%、リグニンが18%~25%、ヘミセルロースが16%~20%、セルロースが30%~35%及びその他が5%~10%である。このように、シリカ灰19となる主な成分は、リグニン、ヘミセルロース、セルロースである。
【0021】
表3は、表2に示す植物性原料9の無機質の化学成分である。表2に示す植物性原料9は、セルロース等の有機質が80wt%であり、無機質は20wt%である。表3の無機質の化学成分は、SiOが92.14wt%、Alが0.04wt%、CaOが0.48wt%、FeO3が0.03wt%、KOが3.2wt%、MgOが0.16wt%、MnOが0.18wt%、NaOが0.09wt%となっている。表2に示す植物性原料9は、無機質にシリカ(SiO)を多く含んでいる。
【0022】
(シリカの製造方法)
先ず、実施例1又は2に本実施形態の植物性原料9の内の籾殻を使用し、二酸化ケイ素であるシリカ7を製造する製造工程(S10)について図4及び図5を参照し説明する。
【0023】
先ず、植物性原料9を粉砕する(S11)が、微粒子化は粉砕工程(S15)の工程で行われるので、この工程では酸への浸漬の際に内部に染み込ませる程度の粉砕で良く、また脱水・乾燥工程(S13)を経るので洗濯網の目をすり抜けない大きさであれば良い。粉砕後の大きさは5mmから10mm程度であれば最も良い。ここで、粉砕方法は、ミル、ミキサー、グラインダー等が挙げられる。
【0024】
次に、粉砕した植物性原料9を(S11)、酸の溶液に浸漬する(S12)。酸の溶液は、硫酸、塩酸、クエン酸、シュウ酸、リンゴ酸及びギ酸等が挙げられる。例えば、クエン酸の溶液は、純水にクエン酸が1%から10%wtを溶解した溶液とする(S12)。1日程度浸漬した後、純水等で有機酸や溶出した不純物を洗い流す洗浄処理を行う。またクエン酸を含め有機酸水溶液の液温は20℃から80℃が良い。
【0025】
次に、酸に浸漬した植物性原料9を洗濯網に入れ、洗濯機に代表される回転式の脱水装置にて脱水を行う(S13)。脱水時の回転数は、300から3000rpmが良く、最も良いのは、500rpmから1500rpmが最も良い。
【0026】
脱水により、水分と一緒に不純物が排出される。特にクエン酸を使用した場合には、クエン酸が金属イオンを封鎖し、クエン酸の溶液と一緒に金属キレート化合物(金属錯体)として外部に排出される。そのため、脱水により焼成後のシリカ自体の純度が向上する。 次に、乾燥は乾燥機による乾燥、天日干しによる乾燥又は自然乾燥等がある。
【0027】
次に、焼成工程(S14)は、図6に示すように植物性原料9は、炉に入れ、炉内を大気圧にし、酸素が供給できる状態にし、300℃まで炉内温度を上昇し、300℃の温度で1~3時間程度の一定時間(a)温度を保持する。
【0028】
その後、酸素が供給できる状態にし、500℃まで炉内温度を上昇し、500℃の温度で1~3時間程度の一定時間(b)温度を保持する。
【0029】
その後、酸素が供給できる状態にし、700℃まで炉内温度を上昇し、700℃の温度で1~3時間程度の一定時間(c)温度を保持した後、cの保持時間の後は籾殻自身の自然焼成によって全焼成時間を1日とする。cの燃焼時間は、10から13時間が最も良い。
【0030】
その後、自然に鎮火した後、焼成後のシリカ7を炉内から取り出す。(c)の保持時間の後は籾殻の自己焼成によって焼成するので、(c)の保持時間を過ぎればエネルギーを使用する必要がないのでコスト削減となる。籾殻を焼成する際に一番エネルギーを必要とする300℃と500℃を一定時間保つことによって完全に焼成することができるので純度が向上する。
【0031】
焼成後の二酸化ケイ素であるシリカ7の成分の一例を示す。シリカ(SiO)7が、99.1から99.2%を示し、その他、Fe2O3は0.15から0.20%、Al2O3は0.05から0.03%、K2Oは0.05から0.08%、CaOは0.2から0.5%、MgOは、0.02から0.065%を示している。
【0032】
次に、シリカ7を粉砕する(S15)。粉砕したシリカ7は5から20μに粒子径の分布が多く存在する。そして、粉砕方法は、ジェットミル、ボールミル、ビーズミル等の粉砕方法であっても良い。
そして、最終的に製造されるのが非晶質のシリカ7の粉末である(S16)。
【0033】
実施例2に本実施形態の植物性原料9の内の籾殻を使用し、シリカ7を製造する製造工程(S20)について図5を参照し説明する。
【0034】
植物性原料9を粉砕する(S21)が、微粒子化は粉砕工程(S25)の工程で行われるので、この工程では酸への浸漬の際に内部に染み込ませる程度の粉砕で良く、また脱水工程(S23)を経るので洗濯網の目をすり抜けない大きさであれば良い。粉砕後の大きさは5mmから10mm程度であれば最も良い。ここで、粉砕方法は、ミル、ミキサー、グラインダー等が挙げられる。
【0035】
次に、粉砕した植物性原料9を水により水洗いを行う(S22)。例えば、純水に籾殻を浸す。1日程度籾殻を浸漬した後、石や泥等を洗い流す。液温は常温から80℃迄の温度が良い。水洗い(S22)は注水した後に攪拌し洗浄を行っても良い。また、少しずつ注水しながら攪拌する洗浄を行っても良い。
【0036】
次に、水洗浄した植物性原料9を洗濯網に入れ、洗濯機に代表される回転式の脱水装置にて脱水を行う(S23)。脱水時の回転数は、300から3000rpmが良く、最も良いのは、500rpmから1500rpmが最も良い。
【0037】
脱水により、水分と一緒に不純物が排出される。そして、そのまま乾燥工程を経ることなく次の焼成工程に遷ることが可能である。この回転による脱水工程によって籾殻の組織の分解も促進されて特に乾燥工程を得ることなく、次の工程に進めることが確認された。そのため工程の削減により製造時間の短縮を行うことが可能となった。
【0038】
従って、実施例においても回転式の脱水を行えば、乾燥工程を得ることは必ずしも必要がないが、乾燥すれば機械への腐食等の影響は軽減される。
【0039】
次に、焼成工程(S24)は、図6に示すように植物性原料9は、炉に入れ、炉内を大気圧にし、酸素が供給できる状態にし、300℃まで炉内温度を上昇し、300℃の温度で1~3時間程度の一定時間(a)温度を保持する。
【0040】
その後、酸素が供給できる状態にし、500℃まで炉内温度を上昇し、500℃の温度で1~3時間程度の一定時間(b)温度を保持する。
【0041】
その後、酸素が供給できる状態にし、700℃まで炉内温度を上昇し、700℃の温度で1~3時間程度の一定時間(c)温度を保持した後、籾殻自身の自然焼成によって全焼成時間を1日とする。cの燃焼時間は、10から13時間が最も良い。
【0042】
その後、自然に鎮火した後、焼成後のシリカ7を炉内から取り出す。(c)の保持時間の後は籾殻の自己焼成によって焼成するので、(c)の保持時間を過ぎればエネルギーを使用する必要がないのでコスト削減となる。籾殻を焼成する際に一番エネルギーを必要とする300℃と500℃を一定時間保つことによって完全に焼成することができるので純度が向上する。
【0043】
上記の製造方法によって製造されたシリカ7のICP発光分析法によって得られた純度は、97.7%から98.8%である。その他に含まれる代表的な金属はCa、K、AL、Mg、Mn、Na、P、Zn等がある。Caは、4700ppmから11000ppm、Kは、750ppmから15000ppm、Mgは、730ppmから1500ppm、Mnは、450ppmから640ppm、Mgは、730ppmから1500ppm、Mnは、450ppmから640ppm、Pは、270ppmから470ppm、Znは、89ppmから110ppm含まれている。
【0044】
次に、上述したS5と同様にシリカ7を粉砕する(S25)。粉砕したシリカ7は5から20μのサイズに粒子径の分布が多くなっている。そして、このシリカの粉砕方法は、ジェットミル、ボールミル、ビーズミル等の方法がある。
そして、最終的に製造されるのが非晶質のシリカ7の粉末である(S26)。
【0045】
実施例3に本実施形態の植物性原料9の内の籾殻を使用し、炭素素材を製造する製造工程(S30)について図7を参照し説明する。
本実施例ではグラフェン化させる籾殻賦活炭素3を製造する方法についてS31からS36のフローに基づいて説明する。
【0046】
先ず、本実施例では植物性原料9の内籾殻を使用した例を示す。植物性原料9を粉砕機により粉砕するが、後述する網状の袋に保持して脱水処理を行うため、微粉末になり過ぎない程度に粉砕を行う炭素原粉砕処理を行う(S31)。炭素原粉砕処理(S31)は、次の工程の際にアルカリ溶液が染みこみやすい程度の粉砕で良い。尚、S1の工程は、特に最初に処理を行う必要はなく、最後に粉砕を行う方法であっても良い。
【0047】
次に、粉砕した植物性原料9を、アルカリ性の水溶液20によって水温60℃以上に1時間から10時間反応させる水溶液浸透処理(S32)を行う。4時間程度反応させる工程を設けることが最も生産効率が良い。
【0048】
尚、本工程(S32)は、水溶液20に1週間程度の間、常温で植物性原料9を浸しておく方法であっても良い。この場合には、水溶液20のpHを調整し、9前後の弱アルカリ性の水溶液20を使用することも可能である。
【0049】
水溶液20中のアルカリの濃度は、10~50%wt濃度の水溶液20にし、この水溶液中20にて植物性原料9を反応させることにより、植物性原料9に含まれるシリカ成分の除去を主に行い、水溶液20中にシリカ成分を抽出する。
【0050】
これにより、有機出成分の濃度を高め、最終製品である籾殻賦活炭素3の炭素の割合を高めている。アルカリ性の濃度は、30%wtが最も良く、pHが9から14程度である。pH13の水酸化カリウムによって生成した水溶液20が最も良い。植物性原料9の投入量は、水に溶かす前の水酸化カリウムに対して、80%wtmから200%wtの範囲が最も良い。
【0051】
アルカリ性の材料としては、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム及び炭酸ナトリウム等のアルカリがあるが、最も良いのは、植物性原料9に含まれるもカリウムと同じくする成分であるpH13の水酸化カリウムを使用すると、籾殻賦活炭素3のグラフェン化をするのに有効である。
【0052】
図3は、アルカリ処理を行わずに300℃から500℃にて炭化処理をした際の走査透過電子顕微鏡により透過して現した写真である。元素分布を確認するとAl(アルミニュウム)は、微粒子状に点在している。またK(カリウム)は、大きな粒子として存在している。
【0053】
そのため、カリウムやアルミニュウムを除去することによって炭素の純度を向上させ、電気伝導度の向上にも繋がる。特に、アルミニュウムはアルカリに溶けやすく高温度で炭化させればより除去が可能である。またカリウムもアルカリに溶け込みやすく同じ水酸化カリウムを使用するとより良い。
【0054】
そのため、アルカリ性の材料としては、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム及び炭酸ナトリウム等のアルカリがあるが、最も良いのは、植物性原料9に含まれるもカリウムと同じくする成分であるpH13の水酸化カリウムを使用すると、炭素素材4のグラフェン化をするのに有効である。
【0055】
次に、アルカリ性を帯びた植物性原料9は、水溶液20の水分を除く脱水処理(S33)を行う、中和の処理を施すことなく、また水洗いをせずにアルカリ性の雰囲気を残した状態にする(S33)。この工程にて水分を除くことができるので、炭化する際の水分の蒸発による装置又はるつぼ等の容器へのアルカリ水分によるダメージを極力少なくすることが可能である。
【0056】
脱水処理(S33)は、水溶液浸透処理(S32)をした植物性原料9を編み目の細かい袋に入れ、洗濯のように遠心による脱水機にかけて脱水を行う。また他の方法としては、同様の袋に植物性原料9を入れ、その袋を絞り器によって絞って水分を得る方法であっても良い。
【0057】
アルカリ性を帯びた植物性原料9を洗濯網に入れ、洗濯機に代表される回転式の脱水装置にて脱水を行う(S33)。脱水時の回転数は、300から3000rpmが良く、最も良いのは、500rpmから1500rpmが最も良い。
【0058】
次に、同様に乾燥装置や陰干しにより水溶液20の水分を除く乾燥処理(S34)を行う。中和の処理を施すことなく、また水洗いをせずにアルカリ性の雰囲気を残した状態にする(S34)。この工程にて水分を除くことができるので、炭化する際の水分の蒸発による装置又はるつぼ等の容器へのアルカリ水分によるダメージを極力少なくすることが可能である。
【0059】
次に、窒素やアルゴンガス等のガスを流し又はカーボンフェルト等で密閉し、酸素を含まない状態で、燃焼温度1000℃を5時間維持した状態でアルカリ雰囲気の植物性原料9を炭化する炭化処理を行う(S35)。
【0060】
炭化工程(S35)は、温度が高いほどグラフェン化及び黒鉛化が進み、燃焼温度1000℃から2200℃附近が最も良く、上記温度を2時間から10時間の炭化時間に維持できれば良い。
【0061】
また、製造装置には植物性原料9を収納する金属を使用する場合が多いが、アルカリ性に耐えるようにするためにアルミナ等の溶射やアルミナの素材により植物性原料9を収容する収納容器を使用する等、アルカリの耐性に耐えるようなロータリーキルン式の炭化装置又は誘導加熱炉、電気炉等を使用すると良い。
【0062】
従来のように、固形のアルカリ性の材料と植物性原料9を反応させて賦活処理する工程に比べ、S3の状態での植物性原料9は、金属への直接的なアルカリによる腐食を起こしにくくするため製造装置の耐久性を向上することが可能である。
【0063】
そして、最後に炭化処理(S35)が終わった籾殻賦活炭素3を水また塩酸、硫酸及びクエン酸等の酸性水溶液に晒して中和処理(S36)を行い、更に残ったシリカ等を除去する(S6)。また、その後乾燥し、真空保管等を行えば、籾殻賦活炭素3の電気伝導度等の物性を保持した状態で出荷をすることが可能である。
【0064】
中和処理(S36)は、純度を向上するために純水等の水のみを使用した洗浄による中和が望ましい。酸等による中和も良いが、酸を洗い流す必要もあり、シリカ等の固形物の除去も必要であるため、コスト的にも水を使用する中和処理(S36)が最も良い。
そして、上記処理(S31からS36)にて製造された籾殻賦活炭素3は、粉末状の複数層のグラフェンである。
【0065】
また籾殻賦活炭素3は、二重リング法及び四端子法による測定した粉体抵抗値が、1.0×10-2Ω・cmとなり導電性が向上する。尚、抵抗値は低ければ低いほど良いが、1.0×10-3Ω・cmから3.8×10-2Ω・cmという範囲で製造された。
【0066】
また、籾殻賦活炭素3を水蒸気吸着測定法により測定し、BET式による比表面積は、1792m/gを示し、この幅は800m/g~2000m/gの幅がある。
何れも比表面積が大きくケイ素成分(Si)を取り除いた後の籾殻賦活炭素3は、より比表面積が大きくなっている。そのため、炭素素材4は、吸着する作用が高くなっている。
【0067】
また、籾殻賦活炭素3は、炭素の純度を98%以上を示し、残りは酸素とケイ素とアルミニュウム等が検出されるがケイ酸(SiO)は0.1%wtから5%wt未満である。
【0068】
次に、上述したシリカ7又は後述する籾殻炭化炭素4を焼成する際の製造装置100について図8を参照し説明する。
図8は、メッシュ式連続焼成炉100の概要図である。図8(A)は、メッシュ式連続焼成炉100の側面から視た内部構造を示す概要図である。メッシュ式連続炉100は、駆動モータ106と駆動ベルトが掛けられたローラ107に、メッシュ式搬送ベルト102が設けられている。メッシュ式連続炉100は、常温から1000℃迄の温度に達し、温度勾配や温度の保持時間等の調整をすることが可能である。
【0069】
メッシュ式連続焼成炉100は、入り口101から通して出口109に搬送する複数のメッシュ式収納容器110に植物性原料9を投入する。メッシュ式搬送ベルト102は、複数のメッシュ式収納容器110を入り口101から出口109まで搬送する。
【0070】
植物性原料9は燃焼時にガスが発生するので、メッシュ式連続焼成炉100はガスの排気を考慮し、炉内に廃棄吸入口105と外部への廃棄となる排気口104を備えている。これによって、燃焼性のガスは外部に排出され炉内に残るタールが少なくなる。
【0071】
また、図8(B)は、メッシュ式搬送ベルト102の平面図である。メッシュ式搬送ベルトは、ベルトを網状にすることによって植物性原料9に空気を送り込み植物性原料9を燃焼しやすくしている。
【0072】
図8(C)は、メッシュ式収納容器110の概要図である。メッシュ式収納容器110は、ある程度の高さを持つ筐体114の底面に、上下の両面からのヒータ103の熱を伝えやすいように又空気を取り入れやすいように、ステンレス等の金属製の網(116)を備えている。またメッシュ式収納容器110は、筐体114の側面に持ちやすいように取っ手112を設けている。
【0073】
(炭化ケイ素の製造方法)
上述し製造した混合原料8を使用し製造した炭化ケイ素2の製造工程について図1を参照し説明する。炭化ケイ素2は、植物性原料9等を元に製造した場合の例について説明する。
【0074】
先ず、炭素素材とシリカ7を選択し、植物性原料を選択する(S1)。そして、それぞれ炭素素材及びシリカ7を上述した製造方法にて製造する(S10・S20・S30)。そして、各炭素素材の粉末とシリカ7の粉末を表4に示す割合で混合した混合原料8を作成する(S4)。
【表4】
表4は、各炭素素材とシリカ7を混合した際の混合原料8の割合である。ここで、籾殻炭化炭素4は、上述したメッシュ式連続焼成炉100を使用し籾殻を500℃から800℃で焼成した炭素の粉末である。また、酒粕炭化炭素4は、酒粕を500℃から800℃で焼成した炭素の粉末である。
【0075】
上述の製造方法によって製造した籾殻賦活炭素3を36g、シリカ7を60gの割合で混合した原料である。籾殻炭化炭素4を84g、シリカ7を12gの割合で混合した原料である。酒粕炭化炭素5を18g、シリカ7を30gの割合で混合した混合原料8である。
籾殻炭化炭素4は、焼成し終わったシリカ7の割合が50wt%から60wt%の割合で含んでいる。従って新たに混入するシリカ7の割合が少なくなっている。
【0076】
図2は、炭化ケイ素2を、製造した際の焼成炉10である。以上の割合で混合した混合原料8を、るつぼに入れ図2に示す焼成炉1にて焼成した。焼成炉10は、吸入口からアルゴンガスや窒素ガスを封入することができると共に、排気路14から燃焼したガス等の排気が可能である。また、炉内11の温度は、ヒータ12により2200℃まで達することが可能である。
【0077】
図3に焼成炉10を作動した際の温度勾配を示す。炉内11は無酸素状態を維持した状態で以下の昇温工程を進める。炉内11は無酸素状態を保ち、焼成炉10は、1000℃まで一時間弱で昇温し30分程度1000℃を維持する。その後、30分程度で1500℃まで昇温し、30分程度1000℃を維持する。その後、50分程度で2000℃まで昇温し、5時間程度2000℃を維持し、その後は電源を止めて自然に温度を降下させる(S5)。
【0078】
次に、上述した製造工程によって製造された炭化ケイ素2(S6)について図9から図14を参照し説明する。図9及び図10は、ラマン分光法で測定した炭化ケイ素2のラマンスペクトルを示している。
【0079】
図9は、籾殻賦活炭素3を36g、シリカ7を60gの割合で混合した混合原料8から製造した炭化ケイ素2のラマンスペクトルである。1000cm-1の附近と800cm-1の附近にピーク値を持ち800cm-1の附近が強く表れている。
【0080】
図10は、酒粕炭化炭素5を18g、シリカ7を30gの割合で混合した混合原料8から製造した炭化ケイ素2のラマンスペクトルである。1000cm-1の附近と800cm-1の附近にピーク値を持ち800cm-1の附近が強く表れている。
【0081】
図11から図14は、X線回折装置で測定しX線回折法により得られたX線回折パターンを示している。
図11は、籾殻賦活炭素3を36g、シリカ7を60gの割合で混合した混合原料8から製造した炭化ケイ素2のX線回折パターンである。この炭化ケイ素2は、薄緑色の微粉末である。
【0082】
図11に示すA点は、35.64θ(deg)に高さ3121と強くピークが出ている。その他に、B点は、41.38θ(deg)に高さ9961と強くピークが出ている。C点は、59.96θ(deg)に高さ26512と強くピークが出ている。その他には、71.74θ(deg)に高さ20426と強くピークが出ている。
【0083】
図12は、籾殻炭化炭素4を84g、シリカ7を12gの割合で混合した混合原料8から製造した炭化ケイ素2の内、るつぼの上方から採取した炭化ケイ素2のX線回折パターンである。この炭化ケイ素2は、黒色の微粉末である。
【0084】
図12に示すD点は、35.70θ(deg)に高さ2888と強くピークが出ている。その他に、E点は、41.44θ(deg)に高さ1792と強くピークが出ている。F点は、60.04θ(deg)に高さ7196と強くピークが出ている。その他には、71.80θ(deg)に高さ5017と強くピークが出ている。
【0085】
図13は、籾殻炭化炭素4を84g、シリカ7を12gの割合で混合した混合原料8から製造した炭化ケイ素2の内、るつぼの下方から採取した炭化ケイ素2のX線回折パターンである。この炭化ケイ素2は、黒色の微粉末である。
【0086】
図13に示すG点は、35.71θ(deg)に高さ22994と強くピークが出ている。その他に、H点は、41.42θ(deg)に高さ2271と強くピークが出ている。I点は、60.04θ(deg)に高さ8740と強くピークが出ている。その他には、71.80θ(deg)に高さ6326と強くピークが出ている。
【0087】
図14は、酒粕炭化炭素5を18g、シリカ7を30gの割合で混合した混合原料8から製造した炭化ケイ素2のX線回折パターンである。この炭化ケイ素2は、緑色の粉末である。
【0088】
図14に示すJ点は、34.25θ(deg)に高さ913と強くピークが出ている。その他に、K点は、35.81θ(deg)に高さ21207と強くピークが出ている。L点は、38.29θ(deg)に高さ434と強くピークが出ている。M点は、41.5θ(deg)に高さ3706と強くピークが出ている。N点は、60.12θ(deg)に高さ11332と強くピークが出ている。その他には、71.90θ(deg)に高さ9646と強くピークが出ている。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の炭素素材の産業上の利用に関して、半導体、研磨材、発熱体等に利用が可能である。
【符号の説明】
【0090】
2…炭化ケイ素、3…籾殻賦活炭素、4…籾殻炭化炭素、5…酒粕炭化炭素、
7…シリカ、8…混合原料、9…植物性原料、10…焼成炉、11…炉内、
12…ヒータ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14