(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110338
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】光デバイス、光送受信器及び光トランシーバ
(51)【国際特許分類】
G02F 1/035 20060101AFI20240807BHJP
G02B 6/122 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
G02F1/035
G02B6/122
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014877
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】309015134
【氏名又は名称】富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三田村 宣明
【テーマコード(参考)】
2H147
2K102
【Fターム(参考)】
2H147AB11
2H147AC01
2H147BA05
2H147BD02
2H147BE01
2H147BE13
2H147CA01
2H147CA08
2H147CA22
2H147CA23
2H147CD02
2H147CD04
2H147DA08
2H147EA05A
2H147EA12A
2H147EA12D
2H147EA13A
2H147EA13C
2H147EA14B
2H147FA09
2H147GA17
2H147GA20
2K102AA21
2K102BA03
2K102BA40
2K102BB01
2K102BB04
2K102BC04
2K102BD01
2K102CA23
2K102DA05
2K102DB05
2K102DC08
2K102DD03
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2K102EA07
2K102EA12
2K102EA21
2K102EB10
2K102EB12
2K102EB20
2K102EB22
2K102EB25
2K102EB29
2K102EB30
(57)【要約】
【課題】非気密封止による信頼性の確保を図る光デバイス等を提供する。
【解決手段】光デバイスは、基板表面に光導波路が形成された基板と、前記光導波路上に積層されたバッファ層と、前記バッファ層上に形成された電極と、前記電極を覆う絶縁層と、前記電極と前記絶縁層との間に形成された密着層と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板表面に光導波路が形成された基板と、
前記光導波路上に積層されたバッファ層と、
前記バッファ層上に形成された電極と、
前記電極を覆う絶縁層と、
前記電極と前記絶縁層との間に形成された密着層と、
を有することを特徴とする光デバイス。
【請求項2】
前記密着層と前記絶縁層との間に水蒸気バリア層をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。
【請求項3】
前記絶縁層の代わりに水蒸気バリア層が形成されたことを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。
【請求項4】
前記電極は、
材料としてAuを含み、
前記密着層は、
ZnS又は、ZnS及びSiO2の混合物を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の光デバイス。
【請求項5】
前記電極は、
材料としてAuを含み、
前記密着層及び前記絶縁層は、
ZnS又は、ZnS及びSiO2の混合物を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の光デバイス。
【請求項6】
前記電極は、
材料としてAuを含み、
前記密着層は、
Pt又はRuを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の光デバイス。
【請求項7】
前記電極は、
材料としてAuを含み、
前記水蒸気バリア層は、
ZnSとSiO2を含むことを特徴とする請求項2又は3に記載の光デバイス。
【請求項8】
前記電極は、
材料としてAuを含み、
前記水蒸気バリア層は、
Al2O3を含むことを特徴とする請求項2又は3に記載の光デバイス。
【請求項9】
前記電極は、
材料としてAuを含み、
前記水蒸気バリア層及び前記絶縁層は、
Al2O3を含むことを特徴とする請求項2又は3に記載の光デバイス。
【請求項10】
前記水蒸気バリア層は、
原子層堆積法によりAl2O3で形成されていることを特徴とする請求項8に記載の光デバイス。
【請求項11】
前記電極は、
材料としてAuを含み、
前記絶縁層は、
SiO2で形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の光デバイス。
【請求項12】
光送信器と、光受信器とを有する光送受信器であって、
前記光送信器は、
基板表面に光導波路が形成された基板と、
前記光導波路上に積層されたバッファ層と、
前記バッファ層上に形成された電極と、
前記電極を覆う絶縁層と、
前記電極と前記絶縁層との間に形成された密着層と、
を有することを特徴とする光送受信器。
【請求項13】
光送信器と、光受信器と、前記光送信器及び前記光受信器の信号処理を実行するプロセッサとを有する光トランシーバであって、
前記光送信器は、
基板表面に光導波路が形成された基板と、
前記光導波路上に積層されたバッファ層と、
前記バッファ層上に形成された電極と、
前記電極を覆う絶縁層と、
前記電極と前記絶縁層との間に形成された密着層と、
を有することを特徴とする光トランシーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光デバイス、光送受信器及び光トランシーバに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、インターネットプロトコル(IP)データの通信量の急増により、光ネットワークの大容量化が求められている。加えて、空間的に光トランシーバの収容効率を増やすために光変調器のさらなる小型化が望まれている。
【0003】
図9は、従来の光デバイスの一例を示す断面模式図である。
図9に示す光デバイス200は、例えば、DP-QPSK(Dual Polarization-Quadrature Phase Shift Keying)等のコヒーレント用の光変調器を内蔵した光デバイスである。光デバイス200は、気密封止用パッケージ201と、リッド202とで気密封止の筐体構造を備え、その内部に光変調器チップ203を収容している。尚、光変調器チップ203は、気密封止用パッケージ201の底面に接着して固定されている。
【0004】
光デバイス200は、気密封止用パイプ204と、ブロック205と、コリメートレンズ206と、PR(Polarization Rotator)207と、PBC(Polarization Beam Combiner)208と、を有する。更に、光デバイス200は、気密封止用窓209と、集光レンズ210と、フェルール211とを有する。
【0005】
気密封止用パイプ204は、入力側光ファイバ221を気密封止用パッケージ201内に挿入するための金属パイプである。ブロック205は、気密封止用パイプ204内に挿入された入力側光ファイバ221と光変調器チップ203内の光導波路203Aとをバットジョイント接続で光結合するための部位である。フェルール211は、出力側光ファイバ222を光デバイス200に実装するための圧着端子である。
【0006】
光変調器チップ203は、入力側光ファイバ221からの信号光を電気信号で変調して変調光を出力する光変調器素子である。コリメートレンズ206は、光変調器チップ203からの変調光を平行光にするレンズである。PR207は、コリメートレンズ206からの平行光の変調光を偏波回転する偏波回転部である。PBC208は、偏波回転ありの変調光と、偏波回転なしの変調光とを偏波多重する偏波結合部である。PBC208は、偏波多重後の変調光を、気密封止用窓209を経て集光レンズ210に集光する。集光レンズ210は、集光した変調光を出力側光ファイバ222に出力するレンズである。
【0007】
気密封止用パッケージ201とリッド202とを溶接することで、気密封止用パッケージ201を気密封止している。気密封止用パイプ204の内面は、入力側光ファイバ221の表面に形成された金メッキと半田とで封止されている。更に、気密封止用窓209も、気密封止用窓209の表面に形成された金メッキと気密封止用パッケージ201とを銀ロウで気密封止されている。光変調器チップ203は、複数のMZM(Mach-Zehnder Modulator)を内蔵している。
【0008】
図10は、光変調器チップ203内のMZM240の一例を示す断面模式図である。
図10に示すMZM240は、光変調器チップ203内のMZMである。MZM240は、図示せぬSi基板と、Si基板上に形成された中間層231と、中間層231に形成された光導波路232と、光導波路232上に形成されたバッファ層233と、を有する。更に、MZM240は、バッファ層233上に形成された信号電極235A(235)及び接地電極235B(235)を有する。
【0009】
中間層231は、例えば、SiO2で形成される層である。光導波路232は、例えば、リブ232Aと、スラブ232Bとを有するリッジ導波路である。光導波路232は、例えば、LiNbO3(以下、LNと称する)で形成される光導波路である。光導波路232は、信号電極235Aと接地電極235Bとの間にリブ232Aが配置されている。バッファ層233は、例えば、SiO2で形成される層である。
【0010】
中間層231及びバッファ層233を形成するSiO2は、光導波路232を形成するLNに比較して屈折率が低いため、光が光導波路232内に閉じ込められて伝搬されることになる。
【0011】
信号電極235A及び接地電極235Bは、Au電極層237で構成し、バッファ層233とAu電極層237との間を電極密着層234で接合している。電極密着層234は、例えば、Tiがよく用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2020-173408号公報
【特許文献2】特開2015-22224号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2016/0246004号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
近年、QSFP(Quad Small Form-factor Pluggable)56DD等の小型フォームファクターの96Gボーレート/秒のコヒーレント光トランシーバが流通している。しかしながら、今後、例えば、130Gボーレート/秒の高ボーレートの次世代の光トランシーバにおいてもQSFP56DDサイズの小型化の要求がある。小型の光トランシーバに光変調器を収容するには、光変調器チップ203の設計を工夫して小型化することに加え、気密封止用パッケージ201に入れずに、金属板上に固定するだけのオンボード型にする方法が考えられる。従って、オンボード型の光デバイスでは、従来技術で採用した気密封止用パッケージ201が不要となるため、気密封止に関わる作業負担が軽減できる。
【0014】
しかしながら、オンボード型の光デバイスでは、非気密封止構造であるため、バッファ層233の水分吸収によるDCドリフトの寿命への悪影響や、Ti等の電極密着層234の水酸化による剥離等が考えられる。しかも、オンボード型の光デバイスでは、信号電極235Aと接地電極235Bとの間での導電性異物の付着による信号電極235Aと接地電極235Bとの間のショートが考えられる。従って、オンボード型の光デバイスでは、非気密封止による信頼性の確保が求められているのが実情である。
【0015】
一つの側面では、非気密封止による信頼性の確保を図る光デバイス等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
一つの態様の光デバイスは、基板表面に光導波路が形成された基板と、前記光導波路上に積層されたバッファ層と、前記バッファ層上に形成された電極と、前記電極を覆う絶縁層と、前記電極と前記絶縁層との間に形成された密着層と、を有する。
【発明の効果】
【0017】
一つの側面によれば、非気密封止による信頼性の確保を図る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本実施例の光デバイスの一例を示す断面模式図である。
【
図2】
図2は、光変調器チップの一例を示す平面模式図である。
【
図3】
図3は、実施例1のDC側子MZMの一例を示す断面模式図である。
【
図4】
図4は、実施例2のDC側子MZMの一例を示す断面模式図である。
【
図5】
図5は、実施例3のDC側子MZMの一例を示す断面模式図である。
【
図6】
図6は、実施例4のDC側子MZMの一例を示す断面模式図である。
【
図7】
図7は、実施例5のDC側子MZMの一例を示す断面模式図である。
【
図8】
図8は、本実施例の光トランシーバの一例を示す説明図である。
【
図9】
図9は、従来の光デバイスの一例を示す断面模式図である。
【
図10】
図10は、従来の光変調器チップ内のMZMの一例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本出願人は、信号電極と接着電極との間を含め、光変調器チップの表面全面に、SiO2からなる絶縁層を形成することで、非気密封止の影響を抑制できる光デバイスを提案している。しかしながら、信号電極及び接地電極が低抵抗のAu電極である場合、Auが極めて不活性であるため、SiO2の絶縁層がAuに密着せず、絶縁層が容易にAu電極から剥離してしまうという問題を見出した。
【0020】
そこで、このような事態に対処する光デバイス等の実施の形態につき、図面に基づいて詳細に説明する。尚、本実施例により、開示技術が限定されるものではない。また、以下に示す各実施例は、矛盾を起こさない範囲で適宜組み合わせても良い。
【実施例0021】
図1は、本実施例の光デバイス1の一例を示す断面模式図である。
図1に示す光デバイス1は、例えば、DPQPSK(Dual Polarization-Quadrature Phase Shift Keying)等のコヒーレント用の光変調器を内蔵した光デバイスであって、非気密封止のオンボード型の光デバイスである。光デバイス1は、金属板2と、光変調器チップ3と、ブロック4と、コリメートレンズ5と、PR(Polarization Rotator)6と、PBC(Polarization Beam Combiner)7と、集光レンズ8と、フェルール9と、を有する。これら光変調器チップ3、ブロック4、コリメートレンズ5、PR6、PBC7、集光レンズ8及びフェルール9等の部品を金属板2上に実装している。
【0022】
ブロック4は、入力側光ファイバ21と光変調器チップ3内の光導波路3Aとをバットジョイント接続で光結合するための部位である。フェルール9は、出力側光ファイバ22を光デバイス1に実装するための圧着端子である。
【0023】
光変調器チップ3は、入力側光ファイバ21からの信号光を電気信号で変調して変調光を出力する。コリメートレンズ5は、光変調器チップ3からの変調光を平行光にするレンズである。PR6は、コリメートレンズ5からの平行光の変調光を偏波回転する偏波回転部である。PBC7は、偏波回転あり変調光と、偏波回転なしの変調光とを偏波多重する偏波結合部である。PBC7は、偏波多重後の変調光を集光レンズ8に集光する。集光レンズ8は、集光した変調光を出力側光ファイバ22に出力するレンズである。
【0024】
図2は、光変調器チップ3の平面模式図である。
図2に示す光変調器チップ3は、光導波路3Aと、光入力部31と、分岐部32と、X偏波MZM33Aと、Y偏波MZM33Bとを有する。光変調器チップ3は、PR6と、PBC7と、光出力部38とを有する。
【0025】
光入力部31は、図示せぬ光源からのレーザ光を入力する。分岐部32は、光入力部31からのレーザ光を光分岐し、光分岐後のレーザ光をX偏波MZM33A及びY偏波MZM33Bに出力する。
【0026】
X偏波MZM33Aは、分岐部32で分岐後のレーザ光をX偏波のデータ信号で直交位相変調し、X偏波のIQ成分の信号光をPBC7に出力する。Y偏波MZM33Bは、分岐部32で分岐後のレーザ光をY偏波のデータ信号で直交位相変調し、Y偏波のIQ成分の信号光をPR6に出力する。PR6は、Y偏波MZM33BからのY偏波のIQ成分の信号光を偏波回転してX偏波のIQ成分の信号光に変換し、変換後のX偏波のIQ成分の信号光をPBC7に出力する。更に、PBC7は、X偏波MZM33AからのX偏波のIQ成分の信号光と、PR6からの変換後のX偏波のIQ成分の信号光とを合波して偏波多重信号光を光出力部38に出力する。
【0027】
X偏波MZM33Aは、2個のRF側MZM34と、2個のDC側子MZM35と、DC側親MZM36と、合波部37と、を有する。
【0028】
RF側MZM34は、信号電極41Aと、接地電極41Bとを有する。信号電極41A及び接地電極41Bは、例えば、Au等の金属材料で構成する電極41である。RF側MZM34は、信号電極41Aから接地電極41Bへの高速信号に応じてレーザ光を高速変調し、高速変調後のレーザ光をDC側子MZM35に出力する。
【0029】
一方のDC側子MZM35は、信号電極42Aと、接地電極42Bとを有する。信号電極42A及び接地電極42Bは、例えば、Au等の金属材料で構成する電極42である。DC側子MZM35は、高速変調後のレーザ光を信号電極42Aから接地電極42Bへのデータ信号に応じて位相変調し、位相変調後のI成分の信号光をDC側親MZM36に出力する。
【0030】
他方のDC側子MZM35は、信号電極42Aと、接地電極42Bとを有する。信号電極42A及び接地電極42Bは、例えば、Au等の金属材料で構成する電極42である。DC側子MZM35は、高速変調後のレーザ光を信号電極42Aから接地電極42Bへのデータ信号に応じて位相変調し、位相変調後のQ成分の信号光をDC側親MZM36に出力する。
【0031】
DC側親MZM36は、信号電極43Aと、接地電極43Bとを有する。信号電極43A及び接地電極43Bは、例えば、Au等の金属材料で構成する電極43である。一方のDC側親MZM36は、信号電極43Aから接地電極43Bへの駆動電圧信号に応じて位相変調後のI成分の信号光を直交変調し、直交変調後のX偏波のI成分の信号光を合波部37に出力する。他方のDC側親MZM36は、信号電極43Aと、接地電極43Bとを有する。信号電極43A及び接地電極43Bは、例えば、Au等の金属材料で構成する電極43である。他方のDC側親MZM36は、信号電極43Aから接地電極43Bへの駆動電圧信号に応じて位相変調後のQ成分の信号光を直交変調し、直交変調後のX偏波のQ成分の信号光を合波部37に出力する。
【0032】
合波部37は、一方のDC側親MZM36からのX偏波のI成分の信号光と、他方のDC側親MZM36からのX偏波のQ成分の信号光とを合波し、合波後のX偏波のIQ成分の信号光をPBC7に出力する。
【0033】
Y偏波MZM33Bは、2個のRF側MZM34と、2個のDC側子MZM35と、DC側親MZM36と、合波部37とを有する。
【0034】
RF側MZM34は、信号電極41Aと、接地電極41Bとを有する。RF側MZM34は、信号電極41Aから接地電極41Bへの高速信号に応じてレーザ光を高速変調し、高速変調後のレーザ光をDC側子MZM35に出力する。
【0035】
一方のDC側子MZM35は、信号電極42Aと、接地電極42Bとを有する。DC側子MZM35は、高速変調後のレーザ光を信号電極42Aから接地電極42Bへのデータ信号に応じて位相変調し、位相変調後のI成分の信号光をDC側親MZM36に出力する。
【0036】
他方のDC側子MZM35は、信号電極42Aと、接地電極42Bとを有する。DC側子MZM35は、高速変調後のレーザ光を信号電極42Aから接地電極42Bへのデータ信号に応じて位相変調し、位相変調後のQ成分の信号光をDC側親MZM36に出力する。
【0037】
DC側親MZM36は、信号電極43Aと、接地電極43Bとを有する。DC側親MZM36は、信号電極43Aから接地電極43Bへの駆動電圧信号に応じて位相変調後のI成分の信号光を直交変調し、直交変調後のY偏波のI成分の信号光を合波部37に出力する。DC側親MZM36は、信号電極43Aから接地電極43Bへの駆動電圧信号に応じて位相変調後のQ成分の信号光を直交変調し、直交変調後のY偏波のQ成分の信号光を合波部37に出力する。
【0038】
合波部37は、他方のDC側親MZM36からのY偏波のI成分の信号光と、一方のDC側親MZM36からのY偏波のQ成分の信号光とを合波する。そして、合波部37は、合波後のY偏波のIQ成分の信号光をPR6に出力する。PR6は、合波部37からのY偏波のIQ成分の信号光を偏波回転し、偏波回転後のX偏波のIQ成分の信号光をPBC7に出力する。PBC7は、合波部37からのX偏波のIQ成分の信号光と、PR6からのX偏波のIQ成分の信号光とを偏波多重し、偏波多重信号を光出力部38から出力する。
【0039】
図3は、実施例1のDC側子MZM35の一例を示す断面模式図である。
図3に示すDC側子MZM35は、図示せぬ基板と、基板上に積層された中間層51と、中間層51上に積層された光導波路52と、光導波路52上に積層されたバッファ層53と、バッファ層53上に形成された信号電極42A及び接地電極42Bとを有する。DC側子MZM35は、バッファ層53、信号電極42A及び接地電極42B上に形成された密着層56と、密着層56上に積層された絶縁層57とを有する。
【0040】
基板は、例えば、Si基板である。中間層51は、例えば、SiO2で形成された層である。光導波路52は、例えば、LiNbO3(以下、LNと称する)を主成分とする光導波路である。尚、光導波路52は、LNに限定されるものではなく、例えば、AlGaAsP、InGaAsP、Si等でも良く、適宜変更可能である。光導波路52は、例えば、リブ52Aと、スラブ52Bとを有するリッジ導波路である。光導波路52は、信号電極42Aと接地電極42Bとの間にリブ52Aが配置されている。バッファ層53は、例えば、SiO2で形成されているクラッド層である。
【0041】
信号電極42A及び接地電極42Bは、Au電極層55と、電極密着層54とを有する電極42である。Au電極層55は、主成分をAuとする電極層である。電極密着層54は、主成分を、例えば、ZnSとし、Au電極層55とバッファ層53との間を接合する層である。密着層56は、主成分を、例えば、ZnSとし、バッファ層53及びAu電極層55の表面を保護する保護膜である。ZnSは、膜が密着しにくい不活性なAu電極層55にも強く密着する絶縁性の材料であり、ZnS上のSiO2の絶縁層57とも密着性が高い。尚、密着層56は、ZnSに限定されるものではなく、ZnSとSiO2との混合物でも良く、適宜変更可能である。絶縁層57は、主成分を、例えば、SiO2とし、密着層56表面を絶縁する層である。密着層56上の絶縁層57は、ZnSとの密着性が高いため、例えば、1μm~4μm程度に厚くでき、密着層56の耐電圧性を十分に確保しながら、導電性異物の付着による電極42間のショートを防止できる。
【0042】
尚、
図3は、DC側子MZM35の信号電極42A及び接地電極42Bを例示したが、RF側MZM34内の信号電極41A及び接地電極41Bや、DC側親MZM36内の信号電極43A及び接地電極43Bにも適用可能である。
【0043】
次に実施例1の光変調器チップ3内のAu電極層55及びバッファ層53の表面上にZnSの密着層56を5nm~100nm程度の膜厚で形成する。密着層56は、例えば、ZnSからなるターゲットを用いて、RFスパッタ等の物理的成膜方法(PVD:Physical Vapor Deposition)で容易に形成が可能である。この際、RFスパッタでは、Arガスを用いるが、Arスパッタ圧力を0.1Pa~1Pa程度まで高くすることにより、ZnS粒子の平均自由工程が短くなり、回り込み(ステップカバレージ)が良くなり、Au電極層55の側面にもZnS膜が成膜されることになる。
【0044】
また、例えば、ジエチル亜鉛(Zn(CH2CH3)2)、塩化亜鉛(ZnCl2)、ヨウ化亜鉛(ZnI2)のいずれかと、硫酸(H2S)のガスをプリカーサとして用いてZnS膜をALD(Atomic Layer Deposition)で成膜することもできる。この場合、RFスパッタよりも更に回り込み(ステップカバレージ)が良くなり、Au電極層55の側面にも十分にZnS膜が成膜されることになる。
【0045】
続いて、ZnSからなる密着層56上に、SiO2からなる絶縁層57を1μm~4μm程度の膜厚で形成する。SiO2からなる絶縁層57は、例えば、SiをターゲットとしたDCスパッタや、SiO2をターゲットとしたRFスパッタ等のPVDで容易に形成が可能である。
【0046】
実施例1のZnSからなる密着層56では、Au電極層55及びSiO2の絶縁層57との密着性が高く、Au電極層55から剥離することがない。また、1μm~4μm程度の厚い膜厚のSiO2からなる絶縁層57がAu電極層55上に形成されているので、数ボルト~数十ボルトの電圧を印加しても十分な耐電圧を有する。従って、オンボード型の非気密封止構造を適用した際に、信号電極42Aと接地電極42Bとの間に導電性異物が付着したとしても、信号電極42Aと接地電極42Bとの間のショートを防止できる。つまり、オンボード型の光デバイス1であっても、非気密封止による信頼性の確保を図ることができる。
【0047】
尚、Au電極層55との密着層56であるZnS自体が絶縁膜でもあるので、ZnS膜を1μm~4μm程度に厚くしてSiO2の絶縁層57の代わりとしても良く、適宜変更可能である。この場合、SiO2の絶縁層57は不要となる。
【0048】
尚、本実施例では、Au電極層55と電極密着層54とを有する信号電極42A及び接地電極42Bを光変調器に適用した構成を例示したが、光受光器、光減衰器、ヒータにおける信号電極及び接地電極にも適用可能である。
尚、DC側子MZM35Aの信号電極42A及び接地電極42Bに適用する場合を例示したが、例えば、RF側MZM34内の信号電極41A及び接地電極41Bや、DC側親MZM36内の信号電極43A及び接地電極43Bにも適用可能である。