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特開2024-110338光デバイス、光送受信器及び光トランシーバ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110338
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】光デバイス、光送受信器及び光トランシーバ
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/035 20060101AFI20240807BHJP
   G02B 6/122 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
G02F1/035
G02B6/122
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014877
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】309015134
【氏名又は名称】富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三田村 宣明
【テーマコード(参考)】
2H147
2K102
【Fターム(参考)】
2H147AB11
2H147AC01
2H147BA05
2H147BD02
2H147BE01
2H147BE13
2H147CA01
2H147CA08
2H147CA22
2H147CA23
2H147CD02
2H147CD04
2H147DA08
2H147EA05A
2H147EA12A
2H147EA12D
2H147EA13A
2H147EA13C
2H147EA14B
2H147FA09
2H147GA17
2H147GA20
2K102AA21
2K102BA03
2K102BA40
2K102BB01
2K102BB04
2K102BC04
2K102BD01
2K102CA23
2K102DA05
2K102DB05
2K102DC08
2K102DD03
2K102DD05
2K102EA07
2K102EA12
2K102EA21
2K102EB10
2K102EB12
2K102EB20
2K102EB22
2K102EB25
2K102EB29
2K102EB30
(57)【要約】
【課題】非気密封止による信頼性の確保を図る光デバイス等を提供する。
【解決手段】光デバイスは、基板表面に光導波路が形成された基板と、前記光導波路上に積層されたバッファ層と、前記バッファ層上に形成された電極と、前記電極を覆う絶縁層と、前記電極と前記絶縁層との間に形成された密着層と、を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板表面に光導波路が形成された基板と、
前記光導波路上に積層されたバッファ層と、
前記バッファ層上に形成された電極と、
前記電極を覆う絶縁層と、
前記電極と前記絶縁層との間に形成された密着層と、
を有することを特徴とする光デバイス。
【請求項2】
前記密着層と前記絶縁層との間に水蒸気バリア層をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。
【請求項3】
前記絶縁層の代わりに水蒸気バリア層が形成されたことを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。
【請求項4】
前記電極は、
材料としてAuを含み、
前記密着層は、
ZnS又は、ZnS及びSiOの混合物を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の光デバイス。
【請求項5】
前記電極は、
材料としてAuを含み、
前記密着層及び前記絶縁層は、
ZnS又は、ZnS及びSiOの混合物を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の光デバイス。
【請求項6】
前記電極は、
材料としてAuを含み、
前記密着層は、
Pt又はRuを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の光デバイス。
【請求項7】
前記電極は、
材料としてAuを含み、
前記水蒸気バリア層は、
ZnSとSiOを含むことを特徴とする請求項2又は3に記載の光デバイス。
【請求項8】
前記電極は、
材料としてAuを含み、
前記水蒸気バリア層は、
Alを含むことを特徴とする請求項2又は3に記載の光デバイス。
【請求項9】
前記電極は、
材料としてAuを含み、
前記水蒸気バリア層及び前記絶縁層は、
Alを含むことを特徴とする請求項2又は3に記載の光デバイス。
【請求項10】
前記水蒸気バリア層は、
原子層堆積法によりAlで形成されていることを特徴とする請求項8に記載の光デバイス。
【請求項11】
前記電極は、
材料としてAuを含み、
前記絶縁層は、
SiOで形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の光デバイス。
【請求項12】
光送信器と、光受信器とを有する光送受信器であって、
前記光送信器は、
基板表面に光導波路が形成された基板と、
前記光導波路上に積層されたバッファ層と、
前記バッファ層上に形成された電極と、
前記電極を覆う絶縁層と、
前記電極と前記絶縁層との間に形成された密着層と、
を有することを特徴とする光送受信器。
【請求項13】
光送信器と、光受信器と、前記光送信器及び前記光受信器の信号処理を実行するプロセッサとを有する光トランシーバであって、
前記光送信器は、
基板表面に光導波路が形成された基板と、
前記光導波路上に積層されたバッファ層と、
前記バッファ層上に形成された電極と、
前記電極を覆う絶縁層と、
前記電極と前記絶縁層との間に形成された密着層と、
を有することを特徴とする光トランシーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光デバイス、光送受信器及び光トランシーバに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、インターネットプロトコル(IP)データの通信量の急増により、光ネットワークの大容量化が求められている。加えて、空間的に光トランシーバの収容効率を増やすために光変調器のさらなる小型化が望まれている。
【0003】
図9は、従来の光デバイスの一例を示す断面模式図である。図9に示す光デバイス200は、例えば、DP-QPSK(Dual Polarization-Quadrature Phase Shift Keying)等のコヒーレント用の光変調器を内蔵した光デバイスである。光デバイス200は、気密封止用パッケージ201と、リッド202とで気密封止の筐体構造を備え、その内部に光変調器チップ203を収容している。尚、光変調器チップ203は、気密封止用パッケージ201の底面に接着して固定されている。
【0004】
光デバイス200は、気密封止用パイプ204と、ブロック205と、コリメートレンズ206と、PR(Polarization Rotator)207と、PBC(Polarization Beam Combiner)208と、を有する。更に、光デバイス200は、気密封止用窓209と、集光レンズ210と、フェルール211とを有する。
【0005】
気密封止用パイプ204は、入力側光ファイバ221を気密封止用パッケージ201内に挿入するための金属パイプである。ブロック205は、気密封止用パイプ204内に挿入された入力側光ファイバ221と光変調器チップ203内の光導波路203Aとをバットジョイント接続で光結合するための部位である。フェルール211は、出力側光ファイバ222を光デバイス200に実装するための圧着端子である。
【0006】
光変調器チップ203は、入力側光ファイバ221からの信号光を電気信号で変調して変調光を出力する光変調器素子である。コリメートレンズ206は、光変調器チップ203からの変調光を平行光にするレンズである。PR207は、コリメートレンズ206からの平行光の変調光を偏波回転する偏波回転部である。PBC208は、偏波回転ありの変調光と、偏波回転なしの変調光とを偏波多重する偏波結合部である。PBC208は、偏波多重後の変調光を、気密封止用窓209を経て集光レンズ210に集光する。集光レンズ210は、集光した変調光を出力側光ファイバ222に出力するレンズである。
【0007】
気密封止用パッケージ201とリッド202とを溶接することで、気密封止用パッケージ201を気密封止している。気密封止用パイプ204の内面は、入力側光ファイバ221の表面に形成された金メッキと半田とで封止されている。更に、気密封止用窓209も、気密封止用窓209の表面に形成された金メッキと気密封止用パッケージ201とを銀ロウで気密封止されている。光変調器チップ203は、複数のMZM(Mach-Zehnder Modulator)を内蔵している。
【0008】
図10は、光変調器チップ203内のMZM240の一例を示す断面模式図である。図10に示すMZM240は、光変調器チップ203内のMZMである。MZM240は、図示せぬSi基板と、Si基板上に形成された中間層231と、中間層231に形成された光導波路232と、光導波路232上に形成されたバッファ層233と、を有する。更に、MZM240は、バッファ層233上に形成された信号電極235A(235)及び接地電極235B(235)を有する。
【0009】
中間層231は、例えば、SiOで形成される層である。光導波路232は、例えば、リブ232Aと、スラブ232Bとを有するリッジ導波路である。光導波路232は、例えば、LiNbO(以下、LNと称する)で形成される光導波路である。光導波路232は、信号電極235Aと接地電極235Bとの間にリブ232Aが配置されている。バッファ層233は、例えば、SiOで形成される層である。
【0010】
中間層231及びバッファ層233を形成するSiOは、光導波路232を形成するLNに比較して屈折率が低いため、光が光導波路232内に閉じ込められて伝搬されることになる。
【0011】
信号電極235A及び接地電極235Bは、Au電極層237で構成し、バッファ層233とAu電極層237との間を電極密着層234で接合している。電極密着層234は、例えば、Tiがよく用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2020-173408号公報
【特許文献2】特開2015-22224号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2016/0246004号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
近年、QSFP(Quad Small Form-factor Pluggable)56DD等の小型フォームファクターの96Gボーレート/秒のコヒーレント光トランシーバが流通している。しかしながら、今後、例えば、130Gボーレート/秒の高ボーレートの次世代の光トランシーバにおいてもQSFP56DDサイズの小型化の要求がある。小型の光トランシーバに光変調器を収容するには、光変調器チップ203の設計を工夫して小型化することに加え、気密封止用パッケージ201に入れずに、金属板上に固定するだけのオンボード型にする方法が考えられる。従って、オンボード型の光デバイスでは、従来技術で採用した気密封止用パッケージ201が不要となるため、気密封止に関わる作業負担が軽減できる。
【0014】
しかしながら、オンボード型の光デバイスでは、非気密封止構造であるため、バッファ層233の水分吸収によるDCドリフトの寿命への悪影響や、Ti等の電極密着層234の水酸化による剥離等が考えられる。しかも、オンボード型の光デバイスでは、信号電極235Aと接地電極235Bとの間での導電性異物の付着による信号電極235Aと接地電極235Bとの間のショートが考えられる。従って、オンボード型の光デバイスでは、非気密封止による信頼性の確保が求められているのが実情である。
【0015】
一つの側面では、非気密封止による信頼性の確保を図る光デバイス等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
一つの態様の光デバイスは、基板表面に光導波路が形成された基板と、前記光導波路上に積層されたバッファ層と、前記バッファ層上に形成された電極と、前記電極を覆う絶縁層と、前記電極と前記絶縁層との間に形成された密着層と、を有する。
【発明の効果】
【0017】
一つの側面によれば、非気密封止による信頼性の確保を図る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本実施例の光デバイスの一例を示す断面模式図である。
図2図2は、光変調器チップの一例を示す平面模式図である。
図3図3は、実施例1のDC側子MZMの一例を示す断面模式図である。
図4図4は、実施例2のDC側子MZMの一例を示す断面模式図である。
図5図5は、実施例3のDC側子MZMの一例を示す断面模式図である。
図6図6は、実施例4のDC側子MZMの一例を示す断面模式図である。
図7図7は、実施例5のDC側子MZMの一例を示す断面模式図である。
図8図8は、本実施例の光トランシーバの一例を示す説明図である。
図9図9は、従来の光デバイスの一例を示す断面模式図である。
図10図10は、従来の光変調器チップ内のMZMの一例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本出願人は、信号電極と接着電極との間を含め、光変調器チップの表面全面に、SiOからなる絶縁層を形成することで、非気密封止の影響を抑制できる光デバイスを提案している。しかしながら、信号電極及び接地電極が低抵抗のAu電極である場合、Auが極めて不活性であるため、SiOの絶縁層がAuに密着せず、絶縁層が容易にAu電極から剥離してしまうという問題を見出した。
【0020】
そこで、このような事態に対処する光デバイス等の実施の形態につき、図面に基づいて詳細に説明する。尚、本実施例により、開示技術が限定されるものではない。また、以下に示す各実施例は、矛盾を起こさない範囲で適宜組み合わせても良い。
【実施例0021】
図1は、本実施例の光デバイス1の一例を示す断面模式図である。図1に示す光デバイス1は、例えば、DPQPSK(Dual Polarization-Quadrature Phase Shift Keying)等のコヒーレント用の光変調器を内蔵した光デバイスであって、非気密封止のオンボード型の光デバイスである。光デバイス1は、金属板2と、光変調器チップ3と、ブロック4と、コリメートレンズ5と、PR(Polarization Rotator)6と、PBC(Polarization Beam Combiner)7と、集光レンズ8と、フェルール9と、を有する。これら光変調器チップ3、ブロック4、コリメートレンズ5、PR6、PBC7、集光レンズ8及びフェルール9等の部品を金属板2上に実装している。
【0022】
ブロック4は、入力側光ファイバ21と光変調器チップ3内の光導波路3Aとをバットジョイント接続で光結合するための部位である。フェルール9は、出力側光ファイバ22を光デバイス1に実装するための圧着端子である。
【0023】
光変調器チップ3は、入力側光ファイバ21からの信号光を電気信号で変調して変調光を出力する。コリメートレンズ5は、光変調器チップ3からの変調光を平行光にするレンズである。PR6は、コリメートレンズ5からの平行光の変調光を偏波回転する偏波回転部である。PBC7は、偏波回転あり変調光と、偏波回転なしの変調光とを偏波多重する偏波結合部である。PBC7は、偏波多重後の変調光を集光レンズ8に集光する。集光レンズ8は、集光した変調光を出力側光ファイバ22に出力するレンズである。
【0024】
図2は、光変調器チップ3の平面模式図である。図2に示す光変調器チップ3は、光導波路3Aと、光入力部31と、分岐部32と、X偏波MZM33Aと、Y偏波MZM33Bとを有する。光変調器チップ3は、PR6と、PBC7と、光出力部38とを有する。
【0025】
光入力部31は、図示せぬ光源からのレーザ光を入力する。分岐部32は、光入力部31からのレーザ光を光分岐し、光分岐後のレーザ光をX偏波MZM33A及びY偏波MZM33Bに出力する。
【0026】
X偏波MZM33Aは、分岐部32で分岐後のレーザ光をX偏波のデータ信号で直交位相変調し、X偏波のIQ成分の信号光をPBC7に出力する。Y偏波MZM33Bは、分岐部32で分岐後のレーザ光をY偏波のデータ信号で直交位相変調し、Y偏波のIQ成分の信号光をPR6に出力する。PR6は、Y偏波MZM33BからのY偏波のIQ成分の信号光を偏波回転してX偏波のIQ成分の信号光に変換し、変換後のX偏波のIQ成分の信号光をPBC7に出力する。更に、PBC7は、X偏波MZM33AからのX偏波のIQ成分の信号光と、PR6からの変換後のX偏波のIQ成分の信号光とを合波して偏波多重信号光を光出力部38に出力する。
【0027】
X偏波MZM33Aは、2個のRF側MZM34と、2個のDC側子MZM35と、DC側親MZM36と、合波部37と、を有する。
【0028】
RF側MZM34は、信号電極41Aと、接地電極41Bとを有する。信号電極41A及び接地電極41Bは、例えば、Au等の金属材料で構成する電極41である。RF側MZM34は、信号電極41Aから接地電極41Bへの高速信号に応じてレーザ光を高速変調し、高速変調後のレーザ光をDC側子MZM35に出力する。
【0029】
一方のDC側子MZM35は、信号電極42Aと、接地電極42Bとを有する。信号電極42A及び接地電極42Bは、例えば、Au等の金属材料で構成する電極42である。DC側子MZM35は、高速変調後のレーザ光を信号電極42Aから接地電極42Bへのデータ信号に応じて位相変調し、位相変調後のI成分の信号光をDC側親MZM36に出力する。
【0030】
他方のDC側子MZM35は、信号電極42Aと、接地電極42Bとを有する。信号電極42A及び接地電極42Bは、例えば、Au等の金属材料で構成する電極42である。DC側子MZM35は、高速変調後のレーザ光を信号電極42Aから接地電極42Bへのデータ信号に応じて位相変調し、位相変調後のQ成分の信号光をDC側親MZM36に出力する。
【0031】
DC側親MZM36は、信号電極43Aと、接地電極43Bとを有する。信号電極43A及び接地電極43Bは、例えば、Au等の金属材料で構成する電極43である。一方のDC側親MZM36は、信号電極43Aから接地電極43Bへの駆動電圧信号に応じて位相変調後のI成分の信号光を直交変調し、直交変調後のX偏波のI成分の信号光を合波部37に出力する。他方のDC側親MZM36は、信号電極43Aと、接地電極43Bとを有する。信号電極43A及び接地電極43Bは、例えば、Au等の金属材料で構成する電極43である。他方のDC側親MZM36は、信号電極43Aから接地電極43Bへの駆動電圧信号に応じて位相変調後のQ成分の信号光を直交変調し、直交変調後のX偏波のQ成分の信号光を合波部37に出力する。
【0032】
合波部37は、一方のDC側親MZM36からのX偏波のI成分の信号光と、他方のDC側親MZM36からのX偏波のQ成分の信号光とを合波し、合波後のX偏波のIQ成分の信号光をPBC7に出力する。
【0033】
Y偏波MZM33Bは、2個のRF側MZM34と、2個のDC側子MZM35と、DC側親MZM36と、合波部37とを有する。
【0034】
RF側MZM34は、信号電極41Aと、接地電極41Bとを有する。RF側MZM34は、信号電極41Aから接地電極41Bへの高速信号に応じてレーザ光を高速変調し、高速変調後のレーザ光をDC側子MZM35に出力する。
【0035】
一方のDC側子MZM35は、信号電極42Aと、接地電極42Bとを有する。DC側子MZM35は、高速変調後のレーザ光を信号電極42Aから接地電極42Bへのデータ信号に応じて位相変調し、位相変調後のI成分の信号光をDC側親MZM36に出力する。
【0036】
他方のDC側子MZM35は、信号電極42Aと、接地電極42Bとを有する。DC側子MZM35は、高速変調後のレーザ光を信号電極42Aから接地電極42Bへのデータ信号に応じて位相変調し、位相変調後のQ成分の信号光をDC側親MZM36に出力する。
【0037】
DC側親MZM36は、信号電極43Aと、接地電極43Bとを有する。DC側親MZM36は、信号電極43Aから接地電極43Bへの駆動電圧信号に応じて位相変調後のI成分の信号光を直交変調し、直交変調後のY偏波のI成分の信号光を合波部37に出力する。DC側親MZM36は、信号電極43Aから接地電極43Bへの駆動電圧信号に応じて位相変調後のQ成分の信号光を直交変調し、直交変調後のY偏波のQ成分の信号光を合波部37に出力する。
【0038】
合波部37は、他方のDC側親MZM36からのY偏波のI成分の信号光と、一方のDC側親MZM36からのY偏波のQ成分の信号光とを合波する。そして、合波部37は、合波後のY偏波のIQ成分の信号光をPR6に出力する。PR6は、合波部37からのY偏波のIQ成分の信号光を偏波回転し、偏波回転後のX偏波のIQ成分の信号光をPBC7に出力する。PBC7は、合波部37からのX偏波のIQ成分の信号光と、PR6からのX偏波のIQ成分の信号光とを偏波多重し、偏波多重信号を光出力部38から出力する。
【0039】
図3は、実施例1のDC側子MZM35の一例を示す断面模式図である。図3に示すDC側子MZM35は、図示せぬ基板と、基板上に積層された中間層51と、中間層51上に積層された光導波路52と、光導波路52上に積層されたバッファ層53と、バッファ層53上に形成された信号電極42A及び接地電極42Bとを有する。DC側子MZM35は、バッファ層53、信号電極42A及び接地電極42B上に形成された密着層56と、密着層56上に積層された絶縁層57とを有する。
【0040】
基板は、例えば、Si基板である。中間層51は、例えば、SiOで形成された層である。光導波路52は、例えば、LiNbO(以下、LNと称する)を主成分とする光導波路である。尚、光導波路52は、LNに限定されるものではなく、例えば、AlGaAsP、InGaAsP、Si等でも良く、適宜変更可能である。光導波路52は、例えば、リブ52Aと、スラブ52Bとを有するリッジ導波路である。光導波路52は、信号電極42Aと接地電極42Bとの間にリブ52Aが配置されている。バッファ層53は、例えば、SiOで形成されているクラッド層である。
【0041】
信号電極42A及び接地電極42Bは、Au電極層55と、電極密着層54とを有する電極42である。Au電極層55は、主成分をAuとする電極層である。電極密着層54は、主成分を、例えば、ZnSとし、Au電極層55とバッファ層53との間を接合する層である。密着層56は、主成分を、例えば、ZnSとし、バッファ層53及びAu電極層55の表面を保護する保護膜である。ZnSは、膜が密着しにくい不活性なAu電極層55にも強く密着する絶縁性の材料であり、ZnS上のSiOの絶縁層57とも密着性が高い。尚、密着層56は、ZnSに限定されるものではなく、ZnSとSiOとの混合物でも良く、適宜変更可能である。絶縁層57は、主成分を、例えば、SiOとし、密着層56表面を絶縁する層である。密着層56上の絶縁層57は、ZnSとの密着性が高いため、例えば、1μm~4μm程度に厚くでき、密着層56の耐電圧性を十分に確保しながら、導電性異物の付着による電極42間のショートを防止できる。
【0042】
尚、図3は、DC側子MZM35の信号電極42A及び接地電極42Bを例示したが、RF側MZM34内の信号電極41A及び接地電極41Bや、DC側親MZM36内の信号電極43A及び接地電極43Bにも適用可能である。
【0043】
次に実施例1の光変調器チップ3内のAu電極層55及びバッファ層53の表面上にZnSの密着層56を5nm~100nm程度の膜厚で形成する。密着層56は、例えば、ZnSからなるターゲットを用いて、RFスパッタ等の物理的成膜方法(PVD:Physical Vapor Deposition)で容易に形成が可能である。この際、RFスパッタでは、Arガスを用いるが、Arスパッタ圧力を0.1Pa~1Pa程度まで高くすることにより、ZnS粒子の平均自由工程が短くなり、回り込み(ステップカバレージ)が良くなり、Au電極層55の側面にもZnS膜が成膜されることになる。
【0044】
また、例えば、ジエチル亜鉛(Zn(CH2CH3)2)、塩化亜鉛(ZnCl2)、ヨウ化亜鉛(ZnI2)のいずれかと、硫酸(H2S)のガスをプリカーサとして用いてZnS膜をALD(Atomic Layer Deposition)で成膜することもできる。この場合、RFスパッタよりも更に回り込み(ステップカバレージ)が良くなり、Au電極層55の側面にも十分にZnS膜が成膜されることになる。
【0045】
続いて、ZnSからなる密着層56上に、SiOからなる絶縁層57を1μm~4μm程度の膜厚で形成する。SiOからなる絶縁層57は、例えば、SiをターゲットとしたDCスパッタや、SiOをターゲットとしたRFスパッタ等のPVDで容易に形成が可能である。
【0046】
実施例1のZnSからなる密着層56では、Au電極層55及びSiOの絶縁層57との密着性が高く、Au電極層55から剥離することがない。また、1μm~4μm程度の厚い膜厚のSiOからなる絶縁層57がAu電極層55上に形成されているので、数ボルト~数十ボルトの電圧を印加しても十分な耐電圧を有する。従って、オンボード型の非気密封止構造を適用した際に、信号電極42Aと接地電極42Bとの間に導電性異物が付着したとしても、信号電極42Aと接地電極42Bとの間のショートを防止できる。つまり、オンボード型の光デバイス1であっても、非気密封止による信頼性の確保を図ることができる。
【0047】
尚、Au電極層55との密着層56であるZnS自体が絶縁膜でもあるので、ZnS膜を1μm~4μm程度に厚くしてSiOの絶縁層57の代わりとしても良く、適宜変更可能である。この場合、SiOの絶縁層57は不要となる。
【0048】
尚、本実施例では、Au電極層55と電極密着層54とを有する信号電極42A及び接地電極42Bを光変調器に適用した構成を例示したが、光受光器、光減衰器、ヒータにおける信号電極及び接地電極にも適用可能である。
【実施例0049】
図4は、実施例2のDC側子MZM35Aの一例を示す断面模式図である。尚、実施例1の光デバイス1と同一の構成には同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。図4に示すDC側子MZM35Aと図3に示すDC側子MZM35とが異なるところは、密着層56の代わりに、Au電極層55と絶縁層57との間にZnS及びSiOの混合物から成る密着層56Aを形成した点にある。
【0050】
バッファ層53及びAu電極層55上にZnS及びSiOの混合物からなる密着層56Aを5nm~100nm程度の膜厚で形成する。ZnSとSiOの混合物からなる密着層56Aは、例えば、ZnSからなるターゲットを用いてRFスパッタで成膜しつつ、SiOからなるターゲットを用いてRFスパッタで成膜する、いわゆる二元スパッタで容易に形成が可能である。この際、ZnS及びSiOそれぞれのターゲットに印加するRF電力を適切な値とし、ZnS及びSiOの成膜速度を適切な比率にすることにより、ZnSとSiOとの混合比を所望の混合比に調整できる。ZnSとSiOの混合比を80:20程度とすることにより、水蒸気透過率が低減するので、実施例1の効果に加えて、バッファ層53の水分吸収によるDCドリフトの寿命への悪影響や、Ti等の電極密着層54の酸化、水酸化による剥離の防止効果も得られる。
【0051】
続いて、実施例1と同様に、ZnS及びSiOの混合物からなる密着層56A上に、SiOからなる絶縁層57を1μm~4μm程度の膜厚で、RFスパッタで形成する。
【0052】
実施例2のZnS及びSiOの混合物からなる密着層56Aでは、ZnSを多く含んでいるので、Au電極層55と絶縁層57との密着性が高く、Au電極層55から剥離することがない。また、1μm~4μm程度の厚い膜厚のSiOからなる絶縁層57がAu電極層55上に形成されているので、数ボルト~数十ボルトの電圧を印加しても十分な耐電圧を有する。従って、オンボード型の非気密封止構造を適用した際に、信号電極42Aと接地電極42Bとの間上に導電性異物が付着したとしても、信号電極42Aと接地電極42Bとの間のショートを防止できる。
【0053】
さらに、密着層56Aは、ZnSとSiOの混合比を80:20程度とすることにより、水蒸気透過率が低減するので、バッファ層53の水分吸収によるDCドリフトの寿命への悪影響や、Ti等の電極密着層54の酸化、水酸化による剥離の防止効果が得られる。
【0054】
尚、ZnSとSiOの混合物からなる密着層56Aの下に、実施例1と同様に、ZnSからなる密着層56を追加しても良い。この場合、Au電極層55と密着層56との密着性が更に高まる。
【0055】
その他、ZnSとSiOの二元スパッタで、ZnSとSiOのターゲットにプラズマを発生させたまま、成膜初期の2nm~20nm程度までZnSターゲット側のシャッターのみを開けてZnSのみをRFスパッタで成膜する。そして、途中からSiOターゲット側のシャッターも開けてZnSとSiOのRF二元スパッタを行うことも可能である。この場合、Au電極層55と密着層56Aとの密着性が上がり、かつ、ZnSと、ZnS及びSiOの混合物膜との界面が存在しないので、ZnSと、ZnS及びSiOの混合物膜との界面での剥離は皆無となる。なお、Auとの密着層56AであるZnS及びSiOの混合膜自体が絶縁膜でもあるので、ZnSとSiOの混合膜を1μm~4μm程度に厚くしてSiO膜の代わりとしても良い。この場合、SiO膜の絶縁層57が不要となる。つまり、オンボード型の光デバイス1であっても、非気密封止による信頼性の確保を図ることができる。
【0056】
尚、DC側子MZM35Aの信号電極42A及び接地電極42Bに適用する場合を例示したが、例えば、RF側MZM34内の信号電極41A及び接地電極41Bや、DC側親MZM36内の信号電極43A及び接地電極43Bにも適用可能である。
【実施例0057】
図5は、実施例3のDC側子MZM35Bの一例を示す断面模式図である。尚、実施例2の光デバイス1と同一の構成には同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。図5に示すDC側子MZM35Bと図4に示すDC側子MZM35Aとが異なるところは、密着層56Aと絶縁層57との間に水蒸気バリア層58を形成した点にある。
【0058】
密着層56Aは、ZnS及びSiOが80:20の混合比で構成し、例えば、5nm~100nm程度の膜厚で形成する。水蒸気バリア層58は、例えば、Alで構成し、例えば、10μm~100μm程度の膜厚で形成する。水蒸気バリア層58は、例えば、トリメチルアルミニウム(TMA:Trimethyl Aluminum)をメタルプリカーサとして用いた、原子層堆積法(ALD: Atomic Layer Deposition)で成膜する。その結果、回り込み(ステップカバレージ)が非常に良く、緻密で、水蒸気透過率が非常に低い膜にすることができる。
【0059】
Au電極層55及びバッファ層53上に、ZnS及びSiOが80:20の混合比の密着層56Aを、例えば、5nm~100nm程度の膜厚で、RF二元スパッタにより形成する。続いて、ZnSとSiOが80:20の混合比からなる密着層56A上に、Alからなる水蒸気バリア層58を10μm~100μm程度の膜厚で形成する。水蒸気バリア層58は、例えば、トリメチルアルミニウム(TMA : Trimethyl Aluminum)をメタルプリカーサとして用いた、原子層堆積法で成膜する。
【0060】
更に、実施例1及び2と同様に、水蒸気バリア層58上に、SiOからなる絶縁層57を、例えば、1μm~4μm程度の膜厚で、RFスパッタで形成する。
【0061】
実施例3のZnS及びSiOの混合物からなる密着層56Aが、ZnSを多く含んでいるので、Au電極層55、バッファ層53(SiO)及び水蒸気バリア層58(Al)との密着性が高く、Au電極層55から剥離することがない。また、例えば、1μm~4μm程度の厚い膜厚のSiOからなる絶縁層57がAu電極層55上に形成されているので、数ボルト~数十ボルトの電圧を印加しても十分な耐電圧を有する。従って、オンボード型の非気密封止構造を適用した際に、信号電極42Aと接地電極42Bとの間に導電性異物が付着したとしても、信号電極42Aと接地電極42Bとの間のショートを防止できる。
【0062】
光デバイス1では、Au電極層55との密着性が高い絶縁性の密着層56AをAu電極層55上に形成しているので、バッファ層53の水分吸収によるDCドリフトの寿命への悪影響や、Ti等の電極密着層54の水酸化による剥離を防止できる。更に、導電性異物の付着による信号電極42Aと接地電極42Bとの間のショートの発生を防止できる。つまり、オンボード型の光デバイス1であっても、非気密封止による信頼性の確保を図ることができる。
【0063】
更に、ZnSとSiOが80:20程度の混合膜の上に、更にALDで成膜した水蒸気透過率の低い水蒸気バリア層58を形成している。従って、バッファ層53の水分吸収によるDCドリフトの寿命への悪影響や、Ti等の電極密着層54の酸化、水酸化による剥離の防止効果が得られる。その他、水蒸気バリア層58であるAl膜自体が絶縁膜でもあるので、Al膜を1μm~4μm程度に厚くしてSiO膜の代わりとしても良い。この場合、SiOの絶縁層57は不要となる。
【0064】
また、本実施例では、基板からAu、ZnSとSiOの混合膜からなる密着層56A、Alからなる水蒸気バリア層58、SiO膜からなる絶縁層57、の順番とした。しかしながら、Al膜も絶縁層でもあるので、基板からAu、ZnSとSiOの混合膜からなる密着層56A、SiO膜からなる絶縁層57、Alからなる水蒸気バリア層58、の順番としても良く、適宜変更可能である。
【0065】
尚、DC側子MZM35Bの信号電極42A及び接地電極42Bに適用する場合を例示したが、例えば、RF側MZM34内の信号電極41A及び接地電極41Bや、DC側親MZM36内の信号電極43A及び接地電極43Bにも適用可能である。
【実施例0066】
図6は、実施例4のDC側子MZM35Cの一例を示す断面模式図である。尚、実施例1の光デバイス1と同一の構成には同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。図6に示すDC側子MZM35Cと図3に示すDC側子MZM35とが異なるところは、バッファ層53上に形成されたAu電極層55表面にPtの密着層59を形成した点にある。
【0067】
Ptは、電気抵抗が低く電極として使用でき、空気中の水分等で浸食されることがない上、SiO等の酸化物との密着性がAuよりも高い。Ptの密着層59は、例えば、電界メッキを用いて、Au電極層55及びTiの電極密着層54上のみに選択的に形成することが容易である。
【0068】
また、例えば、酸素、水素、窒素、アンモニアのいずれかと、(methylcyclopentadienyl)trimethylplatinumのガスをプリカーサとして用いてRt膜をALD(Atomic Layer Deposition)で成膜することもできる。この場合でも、ALDは回り込み(ステップカバレージ)が良いので、Au電極層55の側面にも十分にPt膜が成膜されることになる。
【0069】
続いて、Ptの密着層59及びバッファ層53上に、SiOからなる絶縁層57を1μm~4μm程度の膜厚で、RFスパッタで形成する。
【0070】
実施例4のPtの密着層59が、Au電極層55との密着性が高く、Au電極層55から剥離することがない。また、例えば、1μm~4μm程度の厚い膜厚のSiOからなる絶縁層57がAu電極層55とPtの密着層59上に形成されているので、数ボルト~数十ボルトの電圧を印加しても十分な耐電圧を有する。従って、オンボード型の非気密封止構造を適用した際に、信号電極42Aと接地電極42Bとの間に導電性異物が付着したとしても、信号電極42Aと接地電極42Bとの間のショートを防止できる。つまり、オンボード型の光デバイス1であっても、非気密封止による信頼性の確保を図ることができる。
【0071】
尚、DC側子MZM35Cの信号電極42A及び接地電極42Bに適用する場合を例示したが、例えば、RF側MZM34内の信号電極41A及び接地電極41Bや、DC側親MZM36内の信号電極43A及び接地電極43Bにも適用可能である。
【0072】
尚、実施例4では、密着層59としてPtで形成する場合を例示したが、Ptの代わりに、Ruで形成しても良く、適宜変更可能である。Ruも電気抵抗が低い電極として使用でき、空気中の水分等で浸食されることがない上、SiO等の酸化物との密着性がAuより高い。
【実施例0073】
図7は、実施例5のDC側子MZM35Dの一例を示す断面模式図である。尚、実施例4の光デバイス1と同一の構成には同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。図7に示すDC側子MZM35Dと図6に示すDC側子MZM35Cとが異なるところは、バッファ層53上に形成されたAu電極層55表面にRuの密着層59Aを形成すると共に、密着層59A及びバッファ層53上に水蒸気バリア層60を形成した点にある。
【0074】
Ruは、電気抵抗が低く電極として使用でき、空気中の水分等で浸食されることがない上、SiO等の酸化物との密着性がAuより高い。Ruの密着層59Aは、例えば、電界メッキを用いて、Au電極層55及びTiの電極密着層54上のみに選択的に形成することが容易である。
【0075】
また、例えば、酸化ルテニウム(RuO4)と、水素のガスをプリカーサとして用いてRu膜をALD(Atomic Layer Deposition)で成膜することもできる。この場合でも、ALDは回り込み(ステップカバレージ)が良いので、Au電極層55の側面にも十分にRu膜が成膜されることになる。
【0076】
続いて、実施例3と同様に、Ruの密着層59A及びバッファ層53上に、Alからなる水蒸気バリア層60を、例えば、10μm~100μm程度の膜厚でALDにより形成する。
【0077】
実施例5のRuの密着層59Aが、Au電極層55との密着性が高く、Au電極層55から剥離することがない。また、1μm~4μm程度の厚い膜厚のSiOからなる絶縁層57がAu電極層55とRuの密着層59A上に形成されているので、数ボルト~数十ボルトの電圧を印加しても十分な耐電圧を有する。従って、オンボード型の非気密封止構造を適用した際に、信号電極42Aと接地電極42Bとの間に導電性異物が付着したとしても、信号電極42Aと接地電極42Bとの間のショートを防止できる。つまり、オンボード型の光デバイス1であっても、非気密封止による信頼性の確保を図ることができる。
【0078】
さらに、ALDで成膜した水蒸気透過率の低い膜を形成しているので、バッファ層53の水分吸収によるDCドリフトの寿命への悪影響や、Ti等の電極密着層54の酸化、水酸化による剥離の防止効果が得られる。
【0079】
なお、実施例5では、密着層59AとしてRuで形成する場合を例示したが、実施例4と同様に、Ptで形成しても良く、適宜変更可能である。尚、Al膜も絶縁層でもあるので、Al膜を1μm~4μm程度に厚くしてSiO膜の代わりとしても良い。この場合、SiOの絶縁層57は不要となる。
【0080】
実施例5では、基板からAu電極層55、密着層59A、Alの水蒸気バリア層60、SiO膜の絶縁層57、の順番で配置した。しかしながら、Al膜も絶縁層57でもあるので、基板からAu、密着層59A、SiO膜の絶縁層57、Alの水蒸気バリア層60、の順番で配置しても良く、適宜変更可能である。
【0081】
尚、DC側子MZM35Dの信号電極42A及び接地電極42Bに適用する場合を例示したが、例えば、RF側MZM34内の信号電極41A及び接地電極41Bや、DC側親MZM36内の信号電極43A及び接地電極43Bにも適用可能である。
【0082】
次に実施例1乃至5の光デバイス1を採用した光トランシーバ100について説明する。図8は、本実施例の光トランシーバ100の一例を示す説明図である。図8に示す光トランシーバ100は、光送受信器101と、DSP(Digital Signal Processor)102とを有する。光送受信器101は、光送信器101Aと、光受信器101Bとを有する。DSP102は、光送受信器101全体を制御する。
【0083】
光送信器101Aは、ドライバ回路111と、光変調器素子112と、を有する。ドライバ回路111は、DSP102からの電気信号に応じて光変調器素子112を駆動する。光変調器素子112は、信号光を光変調する、本実施例の光デバイスである。
【0084】
光受信器101Bは、光受信器素子113と、TIA(Transimpeadance Amplifier)114と、を有する。光受信器素子113は、信号光を電気変換する。TIA114は、電気変換後の電気信号を増幅し、増幅後の電気信号をDSP102に出力する。
【0085】
DSP102は、送信信号のIQ変調処理、及び受信信号の復調処理を実行する。DSP102から変調電気信号は、ドライバ回路111で増幅され、高速アナログ駆動信号として光変調器素子112に入力される。一方、光受信器素子113で検出された電気信号はTIA114で増幅され、DSP102に入力されて復調される。
【0086】
尚、光変調器素子112の電気光学材料としては、例えば、(Pb)(Zr,Ti)O(PZT)、(Pb,La)(Zr,Ti)O(PLZT)、BaTiO(BTO)、(Sr,Ba)TiO(SBT)等を用いることができる。しかしながら、電気光学材料として、その他の電気光学効果を有するペロブスカイト型酸化物を用いてもよい。その他、Siや、InGaAsP、AlGaAsP等のIIIV族化合物半導体を用いることもできる。尚、InGaAsP、AlGaAsP等のIIIV族化合物半導体を用いる場合、光変調器の温度特性が大きいため、光送受信器101の下にTEC(Thermo Electroric Cooler)を具備し、非気密封止構造を適用できる耐湿性を有する特殊なTECを用いても良い。
【0087】
以上、本実施例を含む実施の形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0088】
(付記1)基板表面に光導波路が形成された基板と、
前記光導波路上に積層されたバッファ層と、
前記バッファ層上に形成された電極と、
前記電極を覆う絶縁層と、
前記電極と前記絶縁層との間に形成された密着層と、
を有することを特徴とする光デバイス。
(付記2)前記密着層と前記絶縁層との間に水蒸気バリア層をさらに有することを特徴とする付記1に記載の光デバイス。
(付記3)前記絶縁層の代わりに水蒸気バリア層が形成されたことを特徴とする付記1に記載の光デバイス。
(付記4)前記電極は、
材料としてAuを含み、
前記密着層は、
ZnS又は、ZnS及びSiOの混合物を含むことを特徴とする付記1又は2に記載の光デバイス。
(付記5)前記電極は、
材料としてAuを含み、
前記密着層及び前記絶縁層は、
ZnS又は、ZnS及びSiOの混合物を含むことを特徴とする付記1又は2に記載の光デバイス。
(付記6)前記電極は、
材料としてAuを含み、
前記密着層は、
Pt又はRuを含むことを特徴とする付記1又は2に記載の光デバイス。
(付記7)前記電極は、
材料としてAuを含み、
前記水蒸気バリア層は、
ZnSとSiOを含むことを特徴とする付記2又は3に記載の光デバイス。
(付記8)前記電極は、
材料としてAuを含み、
前記水蒸気バリア層は、
Alを含むことを特徴とする付記2又は3に記載の光デバイス。
(付記9)前記電極は、
材料としてAuを含み、
前記水蒸気バリア層及び前記絶縁層は、
Alを含むことを特徴とする付記2又は3に記載の光デバイス。
(付記10)前記水蒸気バリア層は、
原子層堆積法によりAlで形成されていることを特徴とする付記8に記載の光デバイス。
(付記11)前記電極は、
材料としてAuを含み、
前記絶縁層は、
SiOで形成することを特徴とする付記1又は2に記載の光デバイス。
(付記12)光送信器と、光受信器とを有する光送受信器であって、
前記光送信器は、
基板表面に光導波路が形成された基板と、
前記光導波路上に積層されたバッファ層と、
前記バッファ層上に形成された電極と、
前記電極を覆う絶縁層と、
前記電極と前記絶縁層との間に形成された密着層と、
を有することを特徴とする光送受信器。
(付記13)前記密着層と前記絶縁層との間に水蒸気バリア層をさらに有することを特徴とする付記12に記載の光送受信器。
(付記14)前記絶縁層の代わりに水蒸気バリア層が形成されたことを特徴とする付記12に記載の光送受信器。
(付記15)光送信器と、光受信器と、前記光送信器及び前記光受信器の信号処理を実行するプロセッサとを有する光トランシーバであって、
前記光送信器は、
基板表面に光導波路が形成された基板と、
前記光導波路上に積層されたバッファ層と、
前記バッファ層上に形成された電極と、
前記電極を覆う絶縁層と、
前記電極と前記絶縁層との間に形成された密着層と、
を有することを特徴とする光トランシーバ。
(付記16)前記密着層と前記絶縁層との間に水蒸気バリア層をさらに有することを特徴とする付記15に記載の光トランシーバ。
(付記17)前記絶縁層の代わりに水蒸気バリア層が形成されたことを特徴とする付記15に記載の光トランシーバ。
【符号の説明】
【0089】
1 光デバイス
42 電極
52 光導波路
55 Au電極層
56,56A 密着層
57 絶縁層
58 水蒸気バリア層
59,59A 密着層
100 光トランシーバ
101 光送受信器
101A 光送信器
101B 光受信器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10