(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110339
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】固形塗料の施工装置、及び人工構造物表示用の固形塗料
(51)【国際特許分類】
E01C 23/16 20060101AFI20240807BHJP
【FI】
E01C23/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014879
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】511071278
【氏名又は名称】テック鬼城株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】弁理士法人森特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡▲崎▼ 實
【テーマコード(参考)】
2D053
【Fターム(参考)】
2D053AA28
2D053AA29
2D053AD03
2D053EA21
(57)【要約】
【課題】
構造物に対して任意の表示を形成する際に、熱可塑性樹脂、顔料、反射材、又は繊維などの塗料の原料を施工現場で混合する手間を省略して、塗料を人工構造物に対して施工することが可能な塗料の施工装置と、それに用いられる塗料とを提供する。
【解決手段】
固形塗料を加熱により溶融させて、溶融した固形塗料を人工構造物の表面に施工する装置であり、当該装置は、固形塗料を挿入するための貫通孔を有する容器と、該容器の下端部に配置され、前記容器の下端部に現れる固形塗料の端部を受ける受部とを有しており、前記受部は、加熱可能に構成される固形塗料の施工装置と、それに使用する固形塗料である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形塗料を加熱により溶融させて、溶融した固形塗料を人工構造物の表面に施工する装置であり、
当該装置は、
固形塗料を挿入するための貫通孔を有する容器と、
該容器の下端部に配置され、前記容器の下端部に現れる固形塗料の端部を受ける受部とを有しており、
前記受部は、加熱可能に構成される固形塗料の施工装置。
【請求項2】
前記容器の互いに対向する二つの側壁が加熱可能に構成される請求項1に記載の固形塗料の施工装置。
【請求項3】
前記側壁は、第1壁部と、第1壁部から離隔した位置に設けられる第2壁部とを有しており、
第2壁部は炎の熱により加熱される請求項1又は2に記載の固形塗料の施工装置。
【請求項4】
第2壁部には、複数の貫通孔が設けられる請求項3に記載の固形塗料の施工装置。
【請求項5】
前記受部は、炎の熱により加熱される請求項1又は2に記載の固形塗料の施工装置。
【請求項6】
受部で溶融された固形塗料を貯留し、溶融した固形塗料を人工構造物の表面に適用する貫通孔を備えた貯留容器をさらに備える請求項1又は2に記載の固形塗料の施工装置。
【請求項7】
前記容器、前記受部、及び前記貯留容器を乗せる台車部を備える請求項6に記載の固形塗料の施工装置。
【請求項8】
請求項1に記載の固形塗料の施工装置の前記容器に挿入して使用する固形塗料であり、
当該固形塗料は、容器に挿入した状態において、容器の内壁と前記受部とにより保持される形状であり、
熱可塑性樹脂と、顔料と、反射材と、繊維とが混合された固形物である人工構造物表示用の固形塗料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形塗料の施工装置、及び人工構造物表示用の固形塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
路面や壁面などの人工構造物に対して、塗料を付着させて、交通情報や区画線などの任意の表示を施す技術が知られている。例えば、特許文献1には、熱可塑性樹脂、顔料、及び可塑剤等をリボンミキサで混合して得た粉末を、加熱槽で200℃で加熱して溶融し、溶融された粉末を加熱槽の底のスリットからアスファルトの上に落下させて塗布する方法が記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、上記のような塗料をアスファルトの上に塗布する際に使用する装置が記載されている。引用文献2の装置は、ガスバーナーで加熱可能に構成された外套を備える塗料用容器と、骨材を投入する骨材用容器とを備える。塗料用容器には、加熱により溶融する塗料を投入する。加熱により溶融する塗料は、塗料用容器の底に設けられたスリットから、落下し路面に塗布される。骨材は、骨材用容器の底に設けられたスリットから落下し、前記塗料が固化する前に塗料の上に散布される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭51-49532号公報
【特許文献2】実開昭51-74322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の方法では、特許文献2に記載のように台車に設けられた塗料用の容器に、熱可塑性樹脂、顔料、及びガラスビーズなどの反射材を投入し、容器を加熱して、溶融した塗料を構造物に対して施工していた。熱可塑性樹脂、顔料、及び反射材などの原料は、それぞれの原料が別々に袋に充填された状態にあり、特許文献1のように、各原料をミキサーで混合した後、上記の加熱槽のように加熱可能にした容器に移して、原料を溶融させて、路面に施工していた。
【0006】
施工現場で、熱可塑性樹脂、顔料、又は反射材などの塗料の原料を混合する場合、各原料が入っている袋を施工現場に搬入し、前記袋を一つ一つ開いて、それぞれの原料が所定の配合割合となるように計量して、前記ミキサーに各原料を投入しなければならなかった。施工現場で原料が入っている袋を開袋すると大量の空き袋が発生するという問題があった。また、施工現場に各原料を混合する際に使用するミキサーを搬入する作業が必要であり、煩雑であった。
【0007】
それぞれの原料を予め計量して袋に混合したものを施工現場に持ち込むことも考えられる。しかしながら、それぞれの原料を予め混合した場合、密度の差異、粒径の相違などの要因により、原料が袋の中で分離してしまう。
【0008】
本発明は、構造物に対して任意の表示を形成する際に、熱可塑性樹脂、顔料、反射材、又は繊維などの塗料の原料を施工現場で混合する手間を省略して、塗料を人工構造物に対して施工することが可能な塗料の施工装置と、それに用いられる塗料とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
固形塗料を加熱により溶融させて、溶融した固形塗料を人工構造物の表面に施工する装置であり、当該装置は、固形塗料を挿入するための貫通孔を有する容器と、該容器の下端部に配置され、前記容器の下端部に現れる固形塗料の端部を受ける受部とを有しており、前記受部は、加熱可能に構成される固形塗料の施工装置により、上記の課題を解決する。
【0010】
前記固形塗料の施工装置の前記容器に挿入して使用する固形塗料であり、当該固形塗料は、容器に挿入した状態において、容器の内壁と前記受部とにより保持される形状であり、熱可塑性樹脂と、顔料と、反射材と、繊維とが混合された固形物である人工構造物表示用の固形塗料により、上記の課題を解決する。
【0011】
前記装置と前記固形塗料によれば、熱可塑性樹脂等の原料を含有する固形塗料を容器の貫通孔に入れた状態で、受部を加熱することにより、複数の塗料用原料を施工現場で混合する手間を省略して、前記固形塗料を溶融させて塗料を人工構造物に対して施工することができる。前記貫通孔に入れられた固形塗料は、下端部が加熱された受部により順次、溶融する。重力により固形塗料が順次降下して前記受部に接触して溶融され、施工対象物に対して適用される。
【0012】
前記装置においては、前記容器の互いに対向する二つの側壁が加熱可能に構成されたものとすることが好ましい。受部に加えて、側壁から前記固形塗料を加熱することにより、固形塗料を速やかに溶融させることができる。
【0013】
前記装置において、前記側壁は、第1壁部と、第1壁部から離隔した位置に設けられる第2壁部とを有しており、第2壁部は炎の熱により加熱される構成とすることが好ましい。熱源として炎を利用することにより、側壁を速やかに加熱し、固形塗料を速やかに溶融させることができる。側壁を第1壁部と第2壁部とで構成し、第1壁部と第2壁部とを離隔して配置することにより、炎の熱で側壁や固形塗料が過熱されることを防ぐことができる。
【0014】
前記装置において、第2壁部には、複数の貫通孔が設けられる構成とすることが好ましい。第2壁部に、複数の貫通穴を設けることにより、側壁及び固形塗料の加熱速度を最適化することができる。
【0015】
前記装置において、前記受部は、炎の熱により加熱されるようにすることが好ましい。熱源として炎を利用することにより、受部を速やかに加熱し、固形塗料を速やかに溶融させることができる。
【0016】
前記装置は、受部で溶融された固形塗料を貯留し、溶融した固形塗料を人工構造物の表面に適用する貫通孔を備えた貯留容器をさらに備えるものとすることが好ましい。
【0017】
前記装置は、前記容器、前記受部、及び前記貯留容器を乗せる台車部を備えるものとすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、構造物に対して任意の表示を形成する際に、熱可塑性樹脂、顔料、反射材、又は繊維などの塗料の原料を施工現場で混合する手間を省略して、塗料を人工構造物に対して施工することが可能な塗料の施工装置と、それに用いられる塗料とを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】固形塗料の施工装置の一実施形態を示す側面図である。
【
図4】
図1のAA´部における断面図であり、容器、受部等のみを示す断面図である。
【
図5】
図1の施工装置に固形塗料を装填した状態を示す断面図である。
【
図6】溶融した固形塗料の上に、新たな固形塗料を継ぎ足す様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の固形塗料の施工装置(以下、単に装置と称することがある。)と固形塗料の一実施形態について説明する。以下に示す実施形態は、本発明の限られた例に過ぎず、本発明の技術的範囲は例示した実施形態に限定されるものではない。
【0021】
図1ないし4に固形塗料の施工装置の一実施形態を示す。本実施形態にかかる装置1(以下、装置と称することがある。)は、固形塗料9を加熱により溶融させて、溶融した固形塗料9を人工構造物の表面に施工する装置である。前記装置1は、固形塗料9を挿入するための貫通孔113を有する容器11と、容器11の下端部に配置され、前記容器11の下端部に現れる固形塗料9の端部を受ける受部12とを有する。前記受部12は、加熱可能に構成される。
【0022】
前記装置1は、受部12で溶融された固形塗料を貯留し、溶融した固形塗料を人工構造物の表面に適用する貫通孔131を備えた貯留容器13と、前記容器11、前記受部12、及び前記貯留容器13を乗せる台車部14とをさらに備える。貫通孔131は、スリット形状の孔である。
【0023】
前記容器11は、対向する一対の側壁111と、当該側壁111を連結する他の側壁112とから構成される。容器11の内部は、隔壁114により区画されている。それぞれの区画は、上端部と下端部とは開口部になっており、容器11の上端部と下端部の開口部を連通させるように貫通孔113が設けられる。それぞれの貫通孔113は、角柱状の固形塗料9を収容した状態で、固形塗料9を保持することができる形状とされている。
【0024】
前記容器11は、上方視点において、短辺と長辺とを有する矩形であり、長手方向に複数の貫通孔113が配されており、それぞれの貫通孔113に固形塗料9を嵌めることができる形状とされる。容器の形状は長方形に限定されない。また、容器に設けられる貫通孔の数も特に限定されない。
【0025】
前記容器11は、車輪141を備える台車部14に固定される。前記容器11は、容器11の長辺が台車部14の走行方向に沿うように配置される。前記容器11の長辺の部分は、
図4に示したように、容器の長辺部を構成する第1壁部111aと、第1壁部111aから離隔した位置に設けられる第2壁部111bとを有する。第1壁部111aと第2壁部111bとの間は、空隙となっており、第1壁部111aと第2壁部111bとは、上端部及び左右の端部において連結されており、下端部が解放され外気と前記空隙とが連通する構造となっている。
【0026】
図4に示したように、第2壁部111bに向かって炎を吹き付ける加熱部151が、左右の側壁に近接して設けられる。
図4の例では、加熱部151は、ガスバーナーである。容器11の側壁は、上記のように、第1壁部111aと第2壁部111bとで構成される。これにより、固形塗料9が過熱され、固形塗料の一部が焦げついたり、変色するのを防ぐことができる。第2壁部111bには、複数の貫通孔115が設けられており、貫通孔115から炎の一部が第1壁部111aと第2壁部111bとの間に侵入することができるようにしてある。これにより、加熱の効率が最適化されている。加熱の程度はバーナーの出力を調整することによっても実施することができる。上述の通り、第1壁部111aと第2壁部111bとの空隙が外気と連通するように構成されている。前記空隙において酸素が不足することによる不完全燃焼の発生と、煤の発生と容器11への付着とが低減されるようになっている。
【0027】
前記受部12は、前記容器11の下端部には、容器の下端部に現れる固形塗料の下端部を受けるように配置される。受部12は、平坦な板状部121を有する形状であり、当該板状部121により固形塗料9の下端部を受ける。受部12の板状部121は、斜めに傾斜した状態で固定される。受部の裏面には、加熱部152が配される。加熱部152は、ガスバーナーである。
【0028】
上記加熱部152により、受部12を加熱することにより、前記容器11に収容された固形塗料を溶融させて、傾斜した板状部121に沿って、溶融した固形塗料を後述の貯留容器13へと流す。受部12の表面の上端部と左右の端部とには、上方に突出する側壁部122が設けられる。側壁部122により、溶融した固形塗料が受部12からこぼれないようにされている。また、受部12は、上方視点において、下端部の幅が小さくなるテーパー形状とされる。受部12の裏面の上端部と左右の端部とには、下方に突出する側壁部123が設けられる。側壁部123により、加熱部152の炎が受部12の外に漏れ出すのを防止するとともに、受部12を補強する。
【0029】
貯留容器13は、前記容器11又は受部12で溶融させた固形塗料を一時的に貯留する。貯留容器13の底部には、貫通孔131が設けられている。台車部14に固定されたリンク機構を利用した操作部16を操作することにより、貫通孔131を開閉することができる。貫通孔131を開くと、溶融した固形塗料が施工対象物である路面へと落ちて、塗料を施工対象物に適用することができる。本実施形態の装置1は、車輪を備える台車部14を備えており、作業者が手で押したり、モーターやエンジンなどの動力源を利用したりして、自走させることができる。装置を走行させながら、貫通孔131を開いて、塗料を施工対象物に適用することができる。
【0030】
台車部14には、前記容器11、受部12、貯留容器13、及び操作部16に加えて、加熱部の燃料を貯留するタンク17が搭載される。タンク17には、燃料として、プロパンガスなどの可燃性のガスを貯留しておくことができる。燃料は、配管171を介して、加熱部151及び152に供給される。
【0031】
上記の装置1には、以下のような固形塗料を好適に使用することができる。すなわち、前記容器11に挿入した状態において、容器11の内壁と前記受部12とにより保持される形状であり、熱可塑性樹脂と、顔料と、反射材と、繊維とが混合され固化した人工構造物表示用の固形塗料である。
【0032】
熱可塑性樹脂としては、路面標示用塗料として、一般的に使用されているものを使用すればよい。例えば、アクリル樹脂若しくはアルキド樹脂などの溶剤系合成樹脂又は水系合成樹脂、石油樹脂、又はロジン樹脂などが挙げられる。
【0033】
顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、炭酸カルシウム、珪石粉、又は有機系顔料などが挙げられる。
【0034】
反射材としては、例えば、ガラスビーズが挙げられる。
【0035】
繊維としては、例えば、ポリアリレート繊維が挙げられる。
【0036】
固形塗料の形状は、特に限定されないが、受部12により加熱により、下端部から溶融し、固形塗料が受部12に向かって順次降下しながら上端部まで溶融させる目的で、棒状にすることが好ましい。前記容器に投入した固形塗料がある程度溶融して、棒状の固形塗料がある程度降下したら、降下した固形塗料の上に次の固形塗料を装填することにより、途切れなく、塗料を施工対象物に施工することができる。固形塗料の断面形状は、特に限定されないが、例えば、円形、四角形などの多角形などが挙げられる。
【0037】
人工構造物としては、固形塗料で任意の表示をする構造物が挙げられる。例えば、アスファルト、コンクリートなどで構成される路面、駐車場、又は壁などである。
【0038】
上記の装置1では、熱可塑性樹脂と、顔料と、反射材と、繊維とが予め混合され棒状に成型された固形塗料を、前記容器に装填し、加熱部で固形塗料を溶融させて、施工対象物に塗料を施工することができる。上記の装置1によれば、熱可塑性樹脂などの原料を施工現場で計量したり、開袋したり、混合したりする手間がなく、極めて簡単に塗料を施工することができる。固形塗料の残量が減った場合には、前記容器に棒状の固形塗料を順次装填すればよいので、固形塗料の継ぎ足しも容易である。
【符号の説明】
【0039】
1 固形塗料の施工装置
9 固形塗料
11 容器
113 貫通孔
12 受部
111 側壁
111a 第1壁部
111b 第2壁部
115 貫通孔
14 台車部
13 貯留容器
131 貫通孔