(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110342
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】車両用シートのサスペンション装置及び車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/52 20060101AFI20240807BHJP
【FI】
B60N2/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014885
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 竜誠
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 佑紀
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 深月
(72)【発明者】
【氏名】田中 健太
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BB22
3B087DD03
3B087DD11
(57)【要約】
【課題】サスペンションが設計範囲外でロックされることを防止する。
【解決手段】車両用シートのサスペンション装置では、シート本体と共にアッパ部材が昇降すると、ロック機構が有する一対のロック部材が相対的に変位する。このロック機構は、一対のロック部材を互いに噛合させるアクチュエータを有しており、当該噛合によりアッパ部材の昇降がロックされる。このロックを許容する範囲として設定されたロック許容範囲外に一対のロック部材の相対位置があることが検知部によって検知されている状態では、制御部によってアクチュエータが作動不能とされる。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の床部に固定されるロア部材と、
前記ロア部材の上方に配置され、シート本体が連結されるアッパ部材と、
前記アッパ部材を前記ロア部材に対して昇降可能に連結する昇降機構と、
前記アッパ部材の昇降によって弾性的に変形するばねと、
前記アッパ部材の昇降によって相対的に変位する一対のロック部材及び前記一対のロック部材を互いに噛合させる駆動源を有し、前記噛合により前記アッパ部材の昇降をロックするロック機構と、
前記一対のロック部材の相対位置が、前記ロックを許容する範囲として設定されたロック許容範囲外であるか否かを検知する検知部と、
前記相対位置が前記ロック許容範囲外であると前記検知部が検知している状態では、前記駆動源を作動不能にする制御部と、
を備えた車両用シートのサスペンション装置。
【請求項2】
前記昇降機構は、前記アッパ部材の昇降によって端部が前記アッパ部材及び前記ロア部材に対してスライドする一対のリンクアームを有するXリンクであり、
前記検知部は、前記相対位置が前記ロック許容範囲外であるか否かを前記スライドに基づいて検知する請求項1に記載の車両用シートのサスペンション装置。
【請求項3】
前記昇降機構は、前記アッパ部材の昇降によって端部が前記アッパ部材及び前記ロア部材に対して回転する一対のリンクアームを有するXリンクであり、
前記検知部は、前記相対位置が前記ロック許容範囲外であるか否かを前記回転に基づいて検知する請求項1に記載の車両用シートのサスペンション装置。
【請求項4】
乗員が着座するシート本体と、
前記シート本体が前記アッパ部材に連結された請求項1又は請求項2に記載の車両用シートのサスペンション装置と、
を備えた車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関し、特に車両用シートのサスペンション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に開示されたサスペンションシートは、Xリンクと、ロック機構とを備えている。Xリンクは、車両下方側がロアフレームに連結されると共にシート本体部を車両下方側から支持するアッパフレームに連結され、変位することによりアッパフレームを変位させる。このXリンクには、Xリンクの変位と連動して直線的に変位される前下側可動軸が設けられている。ロック機構は、一端部が前下側可動軸に固定されると共に前下側可動軸の変位する方向に沿って設けられたラックと、ラックの短手方向の端部側に設けられると共にラックの変位する範囲内でラックを拘束可能な噛合部を備えたロック部材と、を含んで構成されている。このロック機構を作動させることにより、任意のシート高さでサスペンションを固定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構成のサスペンションシートでは、ロック機構のラックとロック部材とを噛合させてサスペンションを拘束(ロック)する。このため、ラック及びロック部材の歯の摩耗により、設計範囲外でロックがかかってしまうという課題があった。設計範囲外でロックがかかると、強度設計の保証範囲外でサスペンションシートが使用されることとなるため、車両の衝突時等に強度が不足するおそれがある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、サスペンションが設計範囲外でロックされることを防止できる車両用シートのサスペンション装置及び車両用シートを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様の車両用シートのサスペンション装置は、車体の床部に固定されるロア部材と、前記ロア部材の上方に配置され、シート本体が連結されるアッパ部材と、前記アッパ部材を前記ロア部材に対して昇降可能に連結する昇降機構と、前記アッパ部材の昇降によって弾性的に変形するばねと、前記アッパ部材の昇降によって相対的に変位する一対のロック部材及び前記一対のロック部材を互いに噛合させる駆動源を有し、前記噛合により前記アッパ部材の昇降をロックするロック機構と、前記一対のロック部材の相対位置が、前記ロックを許容する範囲として設定されたロック許容範囲外であるか否かを検知する検知部と、前記相対位置が前記ロック許容範囲外であると前記検知部が検知している状態では、前記駆動源を作動不能にする制御部と、を備えている。
【0007】
第1の態様の車両用シートのサスペンション装置では、車体の床部に固定されるロア部材の上方に、シート本体が連結されるアッパ部材が配置される。アッパ部材は、昇降機構によってロア部材に対し昇降可能に連結される。アッパ部材が昇降すると、ばねが弾性的に変形すると共に、ロック機構が有する一対のロック部材が相対的に変位する。このロック機構が有する駆動源によって一対のロック部材が互いに噛合されると、アッパ部材の昇降がロックされる。このロックが許容される範囲として設定されたロック許容範囲外に一対のロック部材の相対位置があることが検知部によって検知されている状態では、制御部によって上記駆動源が作動不能とされる。これにより、サスペンション装置がロック許容範囲外(すなわち設計範囲外)でロックされることを防止できる。
【0008】
第2の態様の車両用シートのサスペンション装置は、第1の態様において、前記昇降機構は、前記アッパ部材の昇降によって端部が前記アッパ部材及び前記ロア部材に対してスライドする一対のリンクアームを有するXリンクであり、前記検知部は、前記相対位置が前記ロック許容範囲外であるか否かを前記スライドに基づいて検知する。
【0009】
第2の態様の車両用シートのサスペンション装置では、アッパ部材が昇降すると、Xリンクが有する一対のリンクアームの端部がアッパ部材及びロア部材に対してスライドする。検知部は、一対のロック部材の相対位置がロック許容範囲外であるか否かを、上記のスライドに基づいて検知する。これにより、検知部を簡素な構成にすることができる。
【0010】
第3の態様の車両用シートのサスペンション装置は、第1の態様において、前記昇降機構は、前記アッパ部材の昇降によって端部が前記アッパ部材及び前記ロア部材に対して回転する一対のリンクアームを有するXリンクであり、前記検知部は、前記相対位置が前記ロック許容範囲外であるか否かを前記回転に基づいて検知する。
【0011】
第3の態様の車両用シートのサスペンション装置では、アッパ部材が昇降すると、Xリンクが有する一対のリンクアームの端部がアッパ部材及びロア部材に対して回転する。検知部は、一対のロック部材の相対位置がロック許容範囲外であるか否かを、上記の回転に基づいて検知する。これにより、検知部を簡素な構成にすることができる。
【0012】
第4の態様の車両用シートは、乗員が着座するシート本体と、前記シート本体が前記アッパ部材に連結された第1の態様~第3の態様の何れか1つの態様の車両用シートのサスペンション装置と、を備えている。
【0013】
第4の態様の車両用シートでは、乗員が着座するシート本体が、サスペンション装置が備えるアッパ部材に連結される。このサスペンション装置は、第1の態様~第3の態様の何れか1つの態様のものであるため、前述した効果が得られる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、サスペンションが設計範囲外でロックされることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態に係る車両用シートを示す斜視図である。
【
図2】実施形態に係る車両用シートのサスペンション装置を示す斜視図である。
【
図3】実施形態に係るサスペンション装置を示す概略的な側面図であり、ロック機構のアンロック状態を示す図である。
【
図4】実施形態に係るサスペンション装置を示す概略的な側面図であり、ロック機構のロック状態を示す図である。
【
図5】実施形態に係るサスペンション装置のハードウエア構成の一部を示すブロック図である。
【
図6A】実施形態に係るサスペンション装置を示す概略的な側面図であり、アッパレールがロック許容上限位置に位置する状態を示す図である。
【
図6B】実施形態に係るサスペンション装置を示す概略的な側面図であり、アッパレールがロック許容上限位置よりも上方側に位置する状態を示す図である。
【
図7A】実施形態に係るサスペンション装置を示す概略的な側面図であり、アッパレールがロック許容下限位置に位置する状態を示す図である。
【
図7B】実施形態に係るサスペンション装置を示す概略的な側面図であり、アッパレールがロック許容下限位置よりも下方側に位置する状態を示す図である。
【
図8】実施形態に係るサスペンション装置の制御ECUによって実施される制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図9】実施形態に係るサスペンション装置の変形例を示す概略的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、
図1~
図8を参照して本発明の一実施形態に係る車両用シート10について説明する。なお、各図中においては、図面を見易くする関係から一部の符号を省略している場合がある。また、各図中に適宜記載された矢印FR、LH及びUPは、車両用シート10の前方、左方及び上方をそれぞれ示している。以下、単に前後左右上下の方向を用いて説明する場合、車両用シートに対する方向を示すものとする。
【0017】
図1に示されるように、本実施形態に係る車両用シート10は、乗員が着座するシート本体11と、サスペンション装置12とを備えている。シート本体11は、乗員の臀部及び大腿部を支持するシートクッション11Aと、乗員の背部を支持するシートバック11Bと、乗員の頭部を支持するヘッドレスト11Cとを備えている。
【0018】
図2に示されるように、サスペンション装置12は、エアサスペンション装置であり、左右一対のロアレール13と、左右一対のアッパレール14と、左右一対のXリンク16と、アッパブラケット36と、ロアブラケット40と、空気ばねであるエアスプリング54とを備えている。左右のXリンク16は、本発明における「昇降機構」に相当する。
【0019】
また、このサスペンション装置12は、
図3~
図5に示されるように、ロック機構60と、リミットセンサ74と、制御ECU68とを備えている。ロアレール13、アッパレール14、エアスプリング54、リミットセンサ74及び制御ECU68は、本発明における「ロア部材」、「アッパ部材」、「ばね」、「検知部」及び「制御部」にそれぞれ相当する。このサスペンション装置12は、車両走行時の車体の振動が車両用シートのシート本体11に伝わることを抑制する緩衝装置であり、シート本体11の下方に配置されている。
【0020】
左右のロアレール13は、例えばプレス成形された金属製の板材によって構成されており、前後方向を長手とする長尺状をなしている。各ロアレール13は、前後方向視で左右方向の内方側が開放された略U字状をなしている。各ロアレール13は、図示しないブラケットを介して車体の床部に固定される。
【0021】
左右のアッパレール14は、左右のロアレール13の上方にそれぞれ平行に配置されている。左右のアッパレール14は、例えばプレス成形された金属製の板材によって構成されており、前後方向を長手とする長尺状をなしている。各アッパレール14は、前後方向視で左右方向の内方側が開放された略U字状をなしている。これらのアッパレール14は、左右のXリンク16を介して左右のロアレール13に連結されている。これらのアッパレール14には、例えば周知のシートスライド機構を介してシート本体11が連結されている。
【0022】
各Xリンク16は、一対のリンクアーム18、20がX字状に組み合わされて構成されている。一対のリンクアーム18、20は、例えばプレス成形された金属製の板材によって構成されており、前後方向を長手とし且つ左右方向を板厚方向とする長尺状をなしている。一方のリンクアーム18は、前方側へ向かうほど上方側へ向かうように傾斜しており、他方のリンクアーム20は、前方側へ向かうほど下方側へ向かうように傾斜している。一対のリンクアーム18、20は、長手方向中間部同士がリンク軸22を介して連結されている。リンク軸22は、左右方向を軸線方向としており、一対のリンクアーム18、20は、リンク軸22の軸線回りに相対回転可能とされている。
【0023】
左右のXリンク16が有する一方のリンクアーム18は、前端部が上側スライド軸24に固定され、後端部が下側回転軸26に固定されている。左右のXリンク16が有する他方のリンクアーム20は、前端部が下側スライド軸28に固定され、後端部が上側回転軸30に固定されている。上側スライド軸24、下側回転軸26、下側スライド軸28及び上側回転軸30は、例えば金属製のパイプ材によって構成されており、左右方向を軸線方向として配置されている。リンクアーム18、20は、溶接等の手段で上側スライド軸24、下側回転軸26、下側スライド軸28及び上側回転軸30に固定されている。
【0024】
上側スライド軸24は、左右のアッパレール14の前部の内側に挿入されており、左右のアッパレール14に対して前後方向にスライド可能とされている。下側スライド軸28の左右方向両端部は、左右のロアレール13の前部の内側に挿入されており、左右のロアレール13に対して前後方向にスライド可能とされている。
【0025】
下側回転軸26の左右方向両端部は、左右のロアレール13の後端部の内側に挿入されており、軸受部材を介して左右のロアレール13の後端部に回転可能に支持されている。上側回転軸30の左右方向両端部は、左右のアッパレール14の後端部の内側に挿入されており、軸受部材を介して左右のアッパレール14の後端部に回転可能に支持されている。
【0026】
上記構成のサスペンション装置12では、下側回転軸26を支点として左右のXリンク16が同期して伸縮することにより左右のアッパレール14が左右のロアレール13に対して上下方向に昇降する。具体的には、左右のアッパレール14が上昇する際には、一対のリンクアーム18、20の傾斜方向が上下方向に近づくように左右のXリンク16が上方側へ伸びる。この際には、上側スライド軸24及び下側スライド軸28が左右のアッパレール14及び左右のロアレール13に対して後方側へ直線的にスライドし、上側回転軸30及び下側回転軸26に接近する。
【0027】
一方、左右のアッパレール14が左右のロアレール13側へ下降する際には、一対のリンクアーム18、20の傾斜方向が前後方向に近づくように左右のXリンク16が下方側へ縮む。この際には、上側スライド軸24及び下側スライド軸28が左右のアッパレール14及び左右のロアレール13に対して前方側へ直線的にスライドし、上側回転軸30及び下側回転軸26から離間する。
【0028】
左側のXリンク16が有する一方のリンクアーム18と、右側のXリンク16が有する一方のリンクアーム18との間には、アッパブラケット36が架け渡されている。アッパブラケット36は、例えばプレス成形された金属製の板材によって構成されており、左右方向を長手とし且つ略上下方向を板厚方向とする長尺板状をなしている。アッパブラケット36は、リンク軸22より後側で左右のリンクアーム18の上側に配置されており、左右のリンクアーム18に固定されている。
【0029】
アッパブラケット36の下方で左右のロアレール13の下側には、ロアブラケット40が配置されている。
図4及び
図5に示されるように、ロアブラケット40は、例えばプレス成形された金属製の板材によって構成されており、左右方向を長手とし且つ略上下方向を板厚方向とする長尺板状をなしている。ロアブラケット40は、リンク軸22より後側で左右のロアレール13の下側に配置されており、左右のロアレール13に固定されている。
【0030】
アッパブラケット36とロアブラケット40との間には、エアスプリング54が配置されている。なお、
図3及び
図4では、アッパブラケット36及びロアブラケット40の図示を省略している。エアスプリング54は、略上下方向を軸線方向とする円柱状をなしている。エアスプリング54の上端部は、アッパブラケット36に固定されており、エアスプリング54の下端部は、ロアブラケット40に固定されている。このエアスプリング54は、アッパブラケット36とロアブラケット40との間で圧縮方向の荷重を受け、アッパブラケット36をロアブラケット40に対して上方側へ付勢する。このエアスプリング54は、Xリンク16の伸縮すなわちアッパレール14の昇降によって弾性的に変形する。
【0031】
このサスペンション装置12は、エアスプリング54の振動を吸収する図示しないダンパを備えている。このダンパは、例えば油圧シリンダ式である。シート本体11に着座する乗員の荷重は、エアスプリング54によって弾性的に支持され、シート本体11の振動が上記のダンパにより吸収される。エアスプリング54は、例えば車両のエアブレーキ装置を構成するエアコンプレッサからエアチューブ等を介して圧縮空気を供給される構成になっている。エアスプリング54は、空気が供給されることで上方側へ膨出するため、左右のアッパレール14及びシート本体11の高さ位置が上昇される。また、エアスプリング54は、空気が排気されることでと下方側へ収縮するため、左右のアッパレール14及びシート本体11の高さ位置が下降される。
【0032】
このサスペンション装置12では、
図3及び
図4に示されるロック機構60によって、左右のアッパレール14及びシート本体11の昇降をロック可能とされている。ロック機構60は、一対のロック部材62、64と、駆動源であるアクチュエータ66とを備えている。一対のロック部材62、64は、例えば金属によって構成されており、上下方向を長手とする長尺状をなしている。
【0033】
一方のロック部材62は、一方のリンクアーム18に対して前後方向に相対移動可能に取り付けられている。このロック部材62は、例えば上端部が一方のリンクアーム18に軸支されており、前後方向に揺動可能とされている。他方のロック部材64は、他方のリンクアーム20に対して固定されており、一方のロック部材62に対して後方側から対向している。一方のロック部材62は、後方側へ突出し且つ上下方向に並んだ複数の歯(符号省略)を有しており、他方のロック部材64は、前方側へ突出し且つ上下方向に並んだ複数の歯(符号省略)を有している。
【0034】
アクチュエータ66は、例えばモータを含んで構成されており、一方のリンクアーム18に固定されている。このアクチュエータ66は、モータの駆動力で一方のロック部材62を前後方向に移動可能とされている。具体的には、アクチュエータ66は、
図3に示されるアンロック位置と
図4に示されるロック位置との間でロック部材62を移動させる。ロック部材62がロック位置に位置する状態では、ロック部材62の複数の歯がロック部材64の複数の歯と噛合される。これにより、Xリンク16の伸縮すなわちアッパレール14の昇降がロックされ、サスペンション装置12が機能しなくなる。ロック部材62がアンロック位置に位置する状態では、上記の噛合が解除され、Xリンク16の伸縮すなわちアッパレール14の昇降が可能となる。
【0035】
アクチュエータ66は、制御ECU68に電気的に接続されている。制御ECU68は、CPU(Central Processing Unit)68A、ROM(Read Only Memory)68B、RAM(Random Access Memory)68C、ストレージ68D及び入出力I/F68Eを含んで構成されている。CPU68A、ROM68B、RAM68C、ストレージ68D及び入出力I/F68Eは、バス68Fを介して相互に通信可能に接続されている。
【0036】
CPU68Aは、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU68Aは、ROM68Bからプログラムを読み出し、RAM68Cを作業領域としてプログラムを実行する。本実施形態では、ROM68Bにプログラムが記憶されている。ROM68Bは、各種プログラム及び各種データを記憶している。RAM68Cは、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ68Dは、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラムを記憶している。
【0037】
入出力I/F68Eには、アクチュエータ66と、ロックセンサ70と、ロックスイッチ72と、リミットセンサ74と、着座センサ76と、バックルスイッチ78とが電気的に接続されている。ロックセンサ70は、例えばアクチュエータ66に組み込まれたリミットスイッチであり、アクチュエータ66のモータの出力軸の回転位置を検知することで、ロック機構60がロック状態かアンロック状態かを間接的に検知する。
【0038】
ロックスイッチ72は、アクチュエータ66を作動させるためのスイッチであり、一例としてシートクッション11Aの側面に設けられている(
図1参照)。リミットセンサ74は、一例として上側スライド軸24に配設されたリミットスイッチであり、アッパレール14に対する上側スライド軸24(すなわちリンクアーム18の一端部)のスライド量を検知することで、一対のロック部材62、64の相対位置を間接的に検知する。
【0039】
着座センサ76は、例えばシートクッション11Aに配設された圧力センサであり、乗員からシートクッション11Aに加わる圧力を検知することで、シート本体11への乗員の着座の有無を間接的に検知する。バックルスイッチ78は、シート本体11に設けられたシートベルト装置80(
図1参照)のバックル82に配設されており、バックル82に対するタングプレート84の連結の有無を検知することで、乗員のシートベルト86の装着の有無を間接的に検知する。
【0040】
上記のように一対のロック部材62、64の相対位置を検知するリミットセンサ74では、ロック機構60のロックを許容する上下方向の範囲として設定されたロック許容範囲外に一対のロック部材62、64が位置するか否かを間接的に検知可能とされている。制御ECU68のCPU68Aは、リミットセンサ74からの出力に基づいて、一方のロック部材62が他方のロック部材64に対して
図6Aに示されるロック許容上限位置よりも上方側に位置する状態(
図6B参照)及び一方のロック部材62が他方のロック部材64に対して
図7Aに示されるロック許容下限位置よりも下方側に位置する状態(
図7B参照)を検知可能とされている。なお、
図6A及び
図6Bにおいて、H1<H2であり、
図7A及び
図7Bにおいて、H3>H4である。
【0041】
一対のロック部材62、64は、車体に対するシート本体11及びアッパレール14の振動に伴い、
図6Bに示される位置又は
図7Bに示される位置まで変位する場合がある。一方のロック部材62、64の相対位置が
図6Aに示される位置から
図7Aに示される位置までの範囲内(すなわちロック許容範囲内)にある状態では、ロック機構60のロックの強度が保証されている。制御ECU68のCPU68Aは、一対のロック部材62、64の相対位置がロック許容範囲外であることがリミットセンサ74によって検知されている状態では、ロックスイッチ72が操作されても、アクチュエータ66を作動させないように構成されている。
【0042】
以下、
図8を参照して、制御ECU68のCPU68Aが実施する制御処理の流れについて説明する。CPU68Aは、例えば車両のイグニッションスイッチがオンにされると、ステップS0において待機状態となる。そして、ステップS1においてロックスイッチ72がオンにされると、次のステップS2に移行する。
【0043】
ステップS2では、CPU68Aは、着座センサ76からの出力に基づいて、シート本体11に乗員が着座しているか否かを判断する。この判断が肯定された場合、ステップS3に移行し、この判断が否定された場合、ステップS6に移行する。
【0044】
ステップS3では、CPU68Aは、バックルスイッチ78からの出力に基づいて、乗員がシートベルト86を装着しているか否かを判断する。この判断が肯定された場合、ステップS4に移行し、この判断が否定された場合、ステップS6に移行する。
【0045】
ステップS4では、CPU68Aは、ロックセンサ70からの出力に基づいて、ロック機構60がロック状態か否かを判断する。この判断が否定された場合、ステップS5に移行し、この判断が肯定された場合、ステップS8に移行する。
【0046】
ステップS5では、CPU68Aは、リミットセンサ74からの出力に基づいて、アッパレール14がロック許容範囲内に位置するか否かを判断する。この判断が肯定された場合、ステップS7に移行し、この判断が否定された場合、ステップS6に移行する。
【0047】
ステップS6では、CPU68Aは、ロック機構60のアクチュエータ66を作動させず、ロック機構60のロックを無効にする。このステップS6での処理が完了すると、待機状態のステップS0に移行する。
【0048】
ステップS7では、CPU68Aは、ロック機構60のアクチュエータ66を作動させ、ロック機構60をロック状態にする。このステップS7での処理が完了すると、待機状態のステップS0に移行する。
【0049】
ステップS8では、CPU68Aは、ロック機構60のアクチュエータ66を作動させ、ロック機構60をアンロック状態にする。このステップS8での処理が完了すると、待機状態のステップS0に移行する。
【0050】
(実施形態のまとめ)
本実施形態では、乗員が着座するシート本体11が、サスペンション装置12のアッパレール14に連結されている。このアッパレール14は、Xリンク16によってロアレール13に対して昇降可能に連結されている。アッパレール14がシート本体11と共に昇降すると、エアスプリング54が弾性的に変形すると共に、ロック機構60が有する一対のロック部材62、64が相対的に変位する。
【0051】
一対のロック部材62、64がロック機構60のアクチュエータ66によって互いに噛合されると、アッパレール14の昇降がロックされる。このロックが許容される上下方向の範囲として設定されたロック許容範囲外に一対のロック部材62、64の相対位置があることがリミットセンサ74によって検知されている状態では、制御ECU68によってアクチュエータ66が作動不能とされる。これにより、サスペンション装置12がロック許容範囲外(すなわち設計範囲外)でロックされることを防止できる。
【0052】
また、本実施形態では、アッパレール14が昇降すると、Xリンク16が有するリンクアーム18の一端部がアッパレール14及びロアレール13に対してスライドする。検知部であるリミットセンサ74は、一対のロック部材62、64の相対位置がロック許容範囲外にあるか否かを、上記のスライドに基づいて検知する。これにより、検知部を簡素な構成にすることができる。
【0053】
なお、上記実施形態では、リミットセンサ74が検知部である構成にしたが、これに限らず、
図9に示される変形例のように構成してもよい。この変形例では、下側回転軸26に配設されたホールIC90が検知部とされている。このホールIC90は、下側回転軸26の回転(すなわちリンクアーム18の他端部の回転)を検知することで、一対のロック部材62、64の相対位置を間接的に検知する。このホールIC90は、ロック機構60のロックを許容する範囲として設定されたロック許容範囲外に一対のロック部材62、64の相対位置があるか否かを検知可能とされている。この変形例においても、検知部を簡素な構成にすることができる。
【0054】
また、上記実施形態では、Xリンク16が昇降機構である構成にしたが、これに限るものではない。昇降機構としては、スライド機構等の周知の機構を採用することができる。
【0055】
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことは勿論である。
【符号の説明】
【0056】
10 車両用シート
11 シート本体
12 サスペンション装置
13 ロアレール(ロア部材)
14 アッパレール(アッパ部材)
16 Xリンク
18、20 リンクアーム
54 エアスプリング(ばね)
60 ロック機構
62、64 ロック部材
66 アクチュエータ(駆動源)
68 制御ECU(制御部)
74 リミットセンサ(検知部)
90 ホールIC(検知部)