(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110348
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】眼科装置
(51)【国際特許分類】
A61B 3/15 20060101AFI20240807BHJP
A61B 3/10 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
A61B3/15
A61B3/10 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014898
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 真理子
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA09
4C316AA21
4C316AB02
4C316AB16
4C316FA04
4C316FA06
4C316FB03
4C316FB13
4C316FZ01
(57)【要約】
【課題】被検眼と取得光学系との位置関係を、操作者に客観的に把握させることができる眼科装置を提供すること。
【解決手段】被検眼の眼情報を取得する取得光学系20と、被検眼を撮影して前眼部カメラ画像を取得する前眼部カメラ17と、被検眼に対する取得光学系20の位置及び向きの少なくとも一方を変更する光学系変更機構15と、光学系変更機構15を操作する操作者によって視認可能なディスプレイ30と、前眼部カメラ画像に基づいて取得光学系20に対する被検眼の位置を特定し、被検眼の位置と取得光学系20の位置との位置関係を示す位置関係情報をディスプレイ30に表示させる制御部40と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の眼情報を取得する取得光学系と、
前記被検眼を撮影して前眼部画像を取得するカメラと、
前記被検眼に対する前記取得光学系の位置及び向きの少なくとも一方を変更する光学系変更機構と、
前記光学系変更機構を操作する操作者によって視認可能なディスプレイと、
前記前眼部画像に基づいて前記取得光学系に対する前記被検眼の位置を特定し、前記被検眼の位置と前記取得光学系の位置との位置関係を示す位置関係情報を前記ディスプレイに表示させる制御部と、
を備えることを特徴とする眼科装置。
【請求項2】
請求項1に記載された眼科装置において、
前記制御部は、操作部を介して前記操作者が入力した制御信号に基づいて、前記光学系変更機構を制御するマニュアルアライメントモードのとき、前記位置関係情報を前記ディスプレイに表示させる
ことを特徴とする眼科装置。
【請求項3】
請求項2に記載された眼科装置において、
前記ディスプレイは、タッチパネル機能を有し、
前記制御部は、前記マニュアルアライメントモードのとき、前記操作部となる前記ディスプレイに対する前記操作者のタッチ操作に基づいて、前記光学系変更機構を制御する
ことを特徴とする眼科装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載された眼科装置において、
前記制御部は、前記取得光学系の光束を示す光束画像を前記位置関係情報に重畳させて前記ディスプレイに表示させる
ことを特徴とする眼科装置。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載された眼科装置において、
前記制御部は、前記取得光学系の光軸を示す光軸画像を前記位置関係情報に重畳させて前記ディスプレイに表示させる
ことを特徴とする眼科装置。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載された眼科装置において、
前記制御部は、前記被検眼に提示された固視標の位置を示す固視画像を前記位置関係情報に重畳させて前記ディスプレイに表示させる
ことを特徴とする眼科装置。
【請求項7】
請求項1又は請求項2に記載された眼科装置において、
前記制御部は、前記被検眼の視線方向を示す視線画像を前記位置関係情報に重畳させて前記ディスプレイに表示させる
ことを特徴とする眼科装置。
【請求項8】
請求項1又は請求項2に記載された眼科装置において、
前記制御部は、前記被検眼の位置を眼球を模した眼球画像又は前記前眼部画像によって表示させる
ことを特徴とする眼科装置。
【請求項9】
請求項1又は請求項2に記載された眼科装置において、
前記制御部は、所定の仮想視点から見た状態で前記位置関係情報を表示させると共に、前記仮想視点の位置を変更可能とする
ことを特徴とする眼科装置。
【請求項10】
請求項1又は請求項2に記載された眼科装置において、
前記ディスプレイは、前記被検眼及び前記取得光学系に対して画面の向きを変更可能に設置され、
前記制御部は、前記画面の向きを検出する画面検出部によって検出された前記画面の向きに応じて仮想視点を設定し、前記画面の向きに応じて設定された仮想視点から見た状態で前記位置関係情報を表示させる
ことを特徴とする眼科装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼科装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、被検眼の眼情報を取得する取得光学系を備えた眼科装置が知られている。従来の眼科装置では、タッチパネル機能を有するディスプレイに表示された被検眼の観察画像に検者等の操作者がタッチ操作し、当該タッチ操作に基づいて取得光学系を移動させる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の眼科装置では、ディスプレイをタッチ操作する操作者は、ディスプレイに表示された被検眼の観察画像に基づいて被検眼と取得光学系との相対的な位置関係を推定する必要がある。つまり、操作者は、被検眼と取得光学系との位置関係を客観的に把握することができず、取得光学系を移動させる際、観察画像から推定した主観的な位置関係情報に基づいてタッチ操作を行わなければならなかった。
【0005】
また、被検者の被検眼を含む顔画像をカメラで撮影し、タッチパネル機能を有するディスプレイに表示された顔画像に操作者がタッチ操作を行い、当該タッチ操作を入力情報として顔支持部を移動させる眼科装置も知られている。この場合であっても、操作者は、ディスプレイに表示された顔画像から被検眼と取得光学系との相対的な位置関係を推定してタッチ操作を行う必要があり、操作者は、被検眼と取得光学系との位置関係を客観的に把握できないという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、被検眼と取得光学系との位置関係を、操作者に客観的に把握させることができる眼科装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、被検眼の眼情報を取得する取得光学系と、前記被検眼を撮像して前眼部画像を取得するカメラと、前記被検眼に対する前記取得光学系の位置及び向きの少なくとも一方を変更する光学系変更機構と、前記光学系変更機構を操作する操作者によって視認可能なディスプレイと、前記前眼部画像に基づいて前記取得光学系に対する前記被検眼の位置を特定し、前記被検眼の位置と前記取得光学系の位置との位置関係を示す位置関係情報を前記ディスプレイに表示させる制御部と、を備える構成とした。
【発明の効果】
【0008】
これにより、本発明の眼科装置は、被検眼と取得光学系との位置関係を、操作者に客観的に把握させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1の眼科装置を示す外観斜視図である。
【
図2】実施例1の眼科装置の制御構成を示すブロック図である。
【
図3】実施例1の眼科装置におけるアライメント時の制御手順を示すフローチャートである。
【
図4】オートアライメント実施前のディスプレイの画面を示す説明図である。
【
図5】オートアライメント実施時のディスプレイの画面を示す説明図である。
【
図6】マニュアルアライメント実施時のディスプレイの画面を示す説明図である。
【
図7】実施例1の位置関係情報を示す説明図である。
【
図8】マニュアルアライメント実施時のディスプレイの画面の変形例を示す説明図である。
【
図9】光束画像、光軸画像、固視標画像、視線画像が重畳された位置関係情報を示す説明図である。
【
図10】被検眼の位置が前眼部カメラ画像によって表示されたときの位置関係情報を示す説明図である。
【
図11A】画面が第1の方向に向けられたときの眼科装置を示す外観図である。
【
図11B】画面が第1の方向に向けたられときの位置関係情報を示す説明図である。
【
図12A】画面が第2の方向に向けられたときの眼科装置を示す外観図である。
【
図12B】画面が第2の方向に向けられたときの位置関係情報を示す説明図である。
【
図13A】画面が第3の方向に向けられたときの眼科装置を示す外観図である。
【
図13B】画面が第3の方向に向けられたときの位置関係情報を示す説明図である。
【
図14A】画面が第4の方向に向けられたときの眼科装置を示す外観図である。
【
図14B】画面が第4の方向に向けられたときの位置関係情報を示す説明図である。
【
図15A】画面が第5の方向に向けられたときの眼科装置を示す外観図である。
【
図15B】画面が第5の方向に向けられたときの位置関係情報を示す説明図である。
【
図16A】画面が第6の方向に向けられたときの眼科装置を示す外観図である。
【
図16B】画面が第6の方向に向けられたときの位置関係情報を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の眼科装置を実施するための形態は、図面に示す実施例1に基づいて、以下のように説明される。なお、以下の説明では、被検者に対峙する側から見て、左右方向が矢印Xで示され、上下方向(鉛直方向)が矢印Yで示され、左右方向及び上下方向と直交する方向が前後方向として矢印Zで示される。また、左右方向(X軸方向)において、被検者に対峙する側を基準にして左側が左方向、右側が右方向とされる。さらに、前後方向(Z軸方向)において、被検者側が前側、反対側が後側とされる。
【0011】
実施例1の眼科装置1は、眼底カメラと光干渉断層計の複合機である。眼科装置1は、筐体10と、被検眼の眼情報として眼底像や網膜断層画像等を取得する取得光学系20と、ディスプレイ30と、各種の演算処理や制御処理等を実行する制御部40と、を有している。
【0012】
筐体10は、
図1に示すように、ベース11と、架台12と、本体部13と、支柱14と、を有している。なお、取得光学系20は本体部13に収容され、ディスプレイ30は本体部13の上部に取り付けられている。
【0013】
ベース11は、本体部13を支持する架台12と支柱14が設けられ、図示しない光学台の上に設置される。ベース11には、光学系変更機構15や制御部40が内蔵されている。さらに、ベース11には、外部メモリやパーソナルコンピュータに接続するための外部入出力端子11a、電源ケーブルを差し込むための電源インレット(不図示)、眼科装置1を起動又は停止させるための電源スイッチ(不図示)等が形成されている。
【0014】
ここで、光学系変更機構15は、ベース11に対して架台12を本体部13ごと左右方向(X軸方向)及び前後方向(Z軸方向)へ移動させ、ベース11及び架台12に対して本体部13を上下方向(Y軸方向)へ移動させる電動式の公知の移動機構である。すなわち、光学系変更機構15は、第1移動用アクチュエータ15aと、第1伝達機構(不図示)と、第2移動用アクチュエータ15bと、第2伝達機構(不図示)と、を有している。第1移動用アクチュエータ15aは、架台12を前後左右に移動させる駆動力を発生する電動のステッピングモータ等である。第1伝達機構は、第1移動用アクチュエータ15aが発生した駆動力を架台12に伝達する動力伝達機構である。第2移動用アクチュエータ15bは、本体部13を上下に移動させる駆動力を発生する電動のステッピングモータ等である。第2伝達機構は、第2移動用アクチュエータ15bが発生した駆動力を本体部13に伝達する動力伝達機構である。
【0015】
実施例1の眼科装置1では、本体部13は、光学系変更機構15によって、架台12ごと自動的に左右方向及び前後方向に移動させられると共に、自動的に上下方向に移動させられる。このため、本体部13に収容された取得光学系20は、光学系変更機構15により、ベース11に対する左右方向、前後方向、上下方向の位置が変更される。すなわち、被検眼と取得光学系20との位置関係は、光学系変更機構15により相対的に変更される。
【0016】
本体部13は、被検者に対向する側面に、対物レンズ16aが嵌め込まれた円形の観察窓16が形成され、取得光学系20は、観察窓16を介して被検眼に対峙可能に本体部13に収容されている。そして、取得光学系20の光路は、観察窓16の中心を通るように本体部13内に設置されている。また、観察窓16の周囲には、複数(実施例1では二台)の前眼部カメラ17が設けられている。
【0017】
複数の前眼部カメラ17は、被検眼の前眼部を異なる方向から実質的に同時に撮影し、被検眼の前眼部カメラ画像101(前眼部画像、
図4等参照)を取得するカメラである。各前眼部カメラ17は、それぞれ取得光学系20の光路から外れた位置に設けられている。実施例1では、観察窓16を挟んで左右方向に並んで二台の前眼部カメラ17が配置されているが、前眼部カメラ17の数や配置位置等は任意に設定可能である。しかしながら、前眼部カメラ17は、演算処理を考慮すると、異なる二方向から実質的に同時に前眼部を撮影可能な構成であれば十分である。なお、「実質的に同時」とは、複数の前眼部カメラ17による撮影において、眼球運動を無視できる程度の撮影タイミングのズレを許容することを示す。それにより、被検眼が実質的に同じ位置(向き)にあるときの前眼部カメラ画像101を複数の前眼部カメラ17によって取得することができる。
【0018】
また、複数の前眼部カメラ17による撮影は動画撮影でも静止画撮影でもよい。動画撮影の場合、撮影開始タイミングを合わせるよう制御したり、フレームレートや各フレームの撮影タイミングを制御したりすることにより、上記した実質的に同時の前眼部撮影を実現することができる。一方、静止画撮影の場合、撮影タイミングを合わせるよう制御することにより、これを実現することができる。複数の前眼部カメラ17によって撮影された前眼部カメラ画像101は、制御部40によってディスプレイ30に表示される。
【0019】
支柱14は、ベース11から起立し、上下方向に伸びている。支柱14には、顎受部14a及び額当部14bが設けられている。また、支柱14には、図示しない外部固視灯を保持するための固視灯保持部14cが形成されている。
【0020】
顎受部14a及び額当部14bは、被検眼の眼情報を取得する際、本体部13(取得光学系20)に対する被検者の顔、すなわち被検眼の位置を固定する。顎受部14aは、被検者が顎を載せる箇所であり、額当部14bは、被検者が額を宛がう箇所である。なお、顎受部14aは、図示しない駆動機構によってベース11に対して上下方向に移動可能である。
【0021】
また、外部固視灯は、固視光を出射する光源を有し、外部固視に用いられる。外部固視灯の光源は、位置及び出射方向を任意に調整可能である。外部固視灯の光源の位置等を調整することで、眼科装置1は、被検眼を任意の方向に回旋させたり、内部固視時よりも大きく回旋させたりできる。また、眼科装置1は、内部固視が行えない場合、外部固視を用いて被検眼又は僚眼の視線を誘導し、被検眼の向きを調整することができる。
【0022】
実施例1の眼科装置1は、被検者が顎受部14aに顎を載せると共に額当部14bに額を宛がい、本体部13に対峙した状態で外部固視灯又は内部固視標を適宜点灯させ、被検眼の検査、観察、撮影等を行う。
【0023】
本体部13に収容された取得光学系20は、被検眼の眼情報(眼底像等)を取得する光学系である。取得光学系20は、
図2に示されたように、被検眼の眼底に照明光を照射する照明光学系21、照明された眼底の観察及び撮影を行う撮影光学系22、OCTユニット23等を含んでいる。
【0024】
照明光学系21は、眼底観察時、被検眼からの眼底反射像を用いるために、被検眼の瞳孔上に観察照明光のリング透光部像を形成する。また、照明光学系21は、眼底撮影時、キセノンランプをフラッシュ発光させて、眼底を照明する。なお、照明光学系21は、蛍光撮影の場合には、FAG撮影かICG撮影かに応じてエキサイタフィルタを切り換えることが可能である。さらに、照明光学系21は、カラー撮影の場合には、エキサイタフィルタを光路上から退避させる。
【0025】
撮影光学系22は、照明光学系21によって照明された被検眼からの反射光を、撮像素子に導き、眼底の観察や撮影を可能とする。また、撮影光学系22は、OCTユニット23からの信号光を眼底に導くと共に、眼底を経由した信号光をOCTユニット23に導く。撮影光学系22の撮像素子によって検出された画像(前眼部観察画像102や撮影画像)は、制御部40によってディスプレイ30に表示される。
【0026】
OCTユニット23は、被検眼の断層画像(OCT画像)を取得するための光学系である。制御部40は、OCTユニット23から入力される検出信号を解析し、例えば眼底のOCT画像を形成し、眼底OCT画像をディスプレイ30に表示させる。
【0027】
ディスプレイ30は、本体部13の観察窓16が形成された側面の反対側の側面の上部に設けられている。ディスプレイ30は、眼科装置1を操作する操作者(検者)によって視認可能な表示装置である。ディスプレイ30は、タッチパネル機能を有する液晶表示装置で構成された画面31を有している。
【0028】
また、ディスプレイ30は、本体部13に対し、左右方向(X軸方向)及び上下方向(Y軸方向)に回転自在に支持されており、操作者の所望に応じて、被検眼及び取得光学系20に対して画面31の向きを変えることができる。実施例1では、ディスプレイ30が有する画面31の向きは、第1の方向~第6の方向までの六方向に変更可能である。なお、第1の方向は、ディスプレイ30が上方に向かって回転し、画面31が被検者に向けられる方向である(
図11A参照)。また、第2の方向は、ディスプレイ30が上方に向かって回転した状態で、画面31が被検者の左方に向けられた方向である(
図12A参照)。また、第3の方向は、ディスプレイ30が上方に向かって回転した状態で、画面31が被検者の右方に向けられた方向である(
図13A参照)。また、第4の方向は、ディスプレイ30が下方に向かって回転し、画面31が被検者の反対側(被検者に対峙する方)に向けられた方向である(
図14A参照)。また、第5の方向は、ディスプレイ30が下方に回転した状態で、画面31が被検者の左方に向けられた方向である(
図15A参照)。また、第6の方向は、ディスプレイ30が下方に回転した状態で、画面31が被検者の右方に向けられた方向である(
図16A参照)。
【0029】
また、ディスプレイ30は、画面31の向きを検出する画面検出センサ(画面検出部)32を有している。画面検出センサ32によって検出された画面31の向きの情報は、制御部40に入力される。
【0030】
そして、ディスプレイ30の画面31には、制御部40の制御の下で、撮影光学系22の撮像素子によって検出された画像(前眼部観察画像102、撮影画像等)、OCT画像、前眼部カメラ17によって撮影された前眼部カメラ画像101、操作部33としてのソフトウェアキー33b等が適宜表示される。さらに、画面31には、後述する位置関係情報J(
図6等参照)が表示される。
【0031】
操作部33は、操作者や被検者が顎受部14a、架台12、本体部13の位置、取得光学系20の動作や設定等を制御する際に操作されるものである。操作部33は、操作者等によって操作されることで、操作に応じた所定の操作信号を制御部40に出力する。制御部40は、操作部33からの操作信号に基づいて顎受部14a、光学系変更機構15、取得光学系20の照明光学系21等に所定の制御指令を出力する。この結果、顎受部14aや本体部13、取得光学系20等の動作や設定等が操作される。
【0032】
操作部33は、実施例1では、タッチパネル機能を有するディスプレイ30の画面31によって構成される。制御部40は、画面31にソフトウェアキー33b、各種画像等を表示させ、ソフトウェアキー33b等にタッチ操作を行わせることで、取得光学系20のアライメント、各種検査条件の設定、及びディスプレイ30の画面31の表示内容の調整等の各種動作の操作を可能とする。なお、操作部33は、筐体10に設けられた各種のボタンや、筐体10に接続されたキーボードやマウス等の入力装置やパーソナルコンピュータ等で構成されてもよい。
【0033】
制御部40は、記憶部41又は内蔵する内部メモリ42に記憶したプログラムを例えばRAM(Random Access Memory)上に展開することにより、操作部33に対する操作等に応じて、眼科装置1の動作を統括的に制御する。実施例1では、内部メモリ42は、RAM等で構成され、記憶部41は、ROM(Read Only Memory)やEEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)等で構成される。
【0034】
実施例1の眼科装置1では、上記した構成の他に、測定完了信号や検者等からの指示に応じて測定結果を印字するプリンタや、測定結果を外部メモリやサーバー等に出力する出力部や、動作の状況等を報知する音声出力部が適宜設けられてもよい。
【0035】
さらに、制御部40には、
図2に示されたように、本体部13の内部において、図示しないケーブルを介して取得光学系20が有する各光学系が接続されている。そして、制御部40は、取得光学系20における照明光学系21の光源や撮影光学系22の動作部等を制御し、駆動(移動も含む)させる。さらに、制御部40には、前眼部カメラ17と、第1移動用アクチュエータ15aと、第2移動用アクチュエータ15bと、ディスプレイ30と、ソフトウェアキー33bを含む操作部33と、記憶部41と、架台位置センサ18と、画面検出センサ32とが、本体部13の内部において図示しないケーブルを介して接続されている。制御部40は、操作部33からの操作信号や、各種演算結果に応じて、前眼部カメラ17と、第1移動用アクチュエータ15aと、第2移動用アクチュエータ15bと、ディスプレイ30と、に所定の制御指令を出力して制御する。さらに、眼科装置1では、商用電源から制御部40に電力が供給され、制御部40が上記の接続された各部に電力を供給する。
【0036】
なお、架台位置センサ18は、ベース11上における架台12(取得光学系20)の左右方向及び前後方向の位置と、ベース11に対する本体部13(取得光学系20)の上下方向の位置とを検出するセンサである。架台位置センサ18は、検出した架台12の位置情報を制御部40に出力する。制御部40は、架台位置センサ18の検出結果に基づいて、取得光学系20の位置を算出することが可能である。
【0037】
実施例1の眼科装置1におけるアライメント時の制御手順は、
図3に示されたフローチャートに基づいて以下のように説明される。なお、
図3に示されたアライメント時の制御手順は、被検者が顎受部14aに顎を載せ、額当部14bに額を宛がうことで顔(被検眼)の位置を固定すると共に、眼科装置1の電源が投入されたときに開始される。また、このとき、操作者は外部固視灯又は内部固視標を点灯させ、被検眼を固視させる。
【0038】
ステップS1では、制御部40は、オートアライメントモードを設定する。
【0039】
ステップS2では、ステップS1でのオートアライメントモードの設定に続き、制御部40は、複数の前眼部カメラ17及び取得光学系20の撮影光学系22を制御し、二種類の被検眼の前眼部画像(前眼部カメラ画像101と前眼部観察画像102)を取得する。
【0040】
ステップS3では、ステップS2での前眼部画像の取得に続き、制御部40は、取得した二種類の前眼部画像をディスプレイ30の画面31に表示させる。このとき、
図4に示されたように、画面31には、制御部40によって、第1表示領域31aと、第2表示領域31bと、が設定される。制御部40は、第1表示領域31aに前眼部カメラ17によって撮影された前眼部カメラ画像101を表示させ、第2表示領域31bに撮影光学系22によって取得された前眼部観察画像102を表示させる。さらに、制御部40は、第1表示領域31aに二本の顎受基準ラインLを表示させる。顎受基準ラインLは、前眼部カメラ画像101に重畳して表示される。また、制御部40は、ディスプレイ30の画面31内の第1表示領域31a及び第2表示領域31bとは異なる領域に、顎受部14aを上下動させるための操作部33となるソフトウェアキーである顎受上下動ボタン33aを表示させる。なお、第1表示領域31aや第2表示領域31bの大きさや配置は任意に設定可能である。また、
図4に示された画面31には、顎受上下動ボタン33a以外の必要なソフトウェアキー33bや、患者ID等の文字情報、操作方法等が適宜表示されている。
【0041】
ステップS4では、ステップS3での前眼部画像等の表示に続き、操作者は、第1表示領域31aに表示された顎受基準ラインLを目安に、顎受上下動ボタン33aをタッチ操作する。このタッチ操作の入力を受けて、制御部40は、顎受上下動ボタン33aに対するタッチ操作に応じて、顎受部14aを上下方向に移動させる。これにより、顎受部14aの位置(高さ)が調整される。なお、このとき、操作者は、前眼部カメラ画像101における瞳孔が二本の顎受基準ラインLの間に入るように顎受上下動ボタン33aをタッチ操作する。
【0042】
ステップS5では、ステップS4での顎受部14aの位置調整に続き、制御部40は、顎受部14aの位置が基準範囲に収まったか否かを判断する。顎受部14aの位置が基準範囲に収まったと判断された場合(YES:顎受部14aの位置OK)、制御部40は、画面31の表示を切り替えて、オートアライメント用の前眼部画像103及び瞳孔検出マーク104をディスプレイ30の画面31に表示させる(ステップS6、
図5参照)。顎受部14aの位置が基準範囲に収まっていないと判断された場合(NO:顎受部14aの位置NG)、制御部40は、画面31の表示を切り替えず、顎受部14aの位置調整を継続させる。
【0043】
ここで、オートアライメント用の前眼部画像103は、
図5に示されたように、複数の前眼部カメラ17によって撮影された前眼部カメラ画像101を組み合わせて形成される。また、瞳孔検出マーク104は、被検眼の瞳孔の位置を示すマークである。なお、瞳孔検出マーク104によって示される瞳孔の位置は、制御部40による瞳孔検出の結果に基づいて求められる。制御部40は、オートアライメント用の前眼部画像103を画面31に表示させる際、画面31に画像表示領域31cを設定する。そして、制御部40は、画像表示領域31c内にオートアライメント用の前眼部画像103及び瞳孔検出マーク104を表示させる。また、制御部40は、画面31内の画像表示領域31cとは異なる領域に、マニュアルアライメントモードに切り替えるための操作部33となるソフトウェアキーであるマニュアルモードボタン33cを表示させる。なお、画像表示領域31cの大きさや配置は任意に設定可能である。また、
図5に示された画面31には、マニュアルモードボタン33c以外の必要なソフトウェアキー33bや、患者ID等の文字情報等が適宜表示されている。
【0044】
ステップS7では、ステップS6でのオートアライメント用の前眼部画像103等の表示に続き、制御部40は、オートアライメント用の前眼部画像103に基づいて、オートアライメントを実施する。すなわち、制御部40は、オートアライメント用の前眼部画像103を解析し、被検眼に対する取得光学系20のX軸方向、Y軸方向、Z軸方向のずれ量を求め、ずれ量が所定範囲に収まるように、光学系変更機構15(第1移動用アクチュエータ15a及び第2移動用アクチュエータ15b)を制御して、本体部13(取得光学系20)を左右、前後、上下に移動させる。
【0045】
ステップS8では、ステップS7でのオートアライメントの実施に続き、制御部40は、オートアライメントが成功したか否かを判断する。オートアライメント成功と判断された場合(YES:オートアライメントOK)、制御部40は、アライメント完了としてアライメント制御を終了する(エンド)。オートアライメント失敗と判断された場合(NO:オートアライメントNG)、制御部40は、オートアライメントを中止して、マニュアルアライメントモードに切り替える(ステップS9)。なお、オートアライメントの成功は、被検眼に対する取得光学系20のずれ量が所定時間内に所定範囲に収まったことで判断される。また、オートアライメントが失敗する原因は、例えば被検眼の瞼が十分に開いていないことや、病理眼等の理由で瞳孔が捉えられないこと、被検眼の固視が安定していないこと等が挙げられる。
【0046】
ステップS10では、ステップS9でのマニュアルアライメントモードへの切り替えに続き、制御部40は、複数の前眼部カメラ17を制御し、被検眼の前眼部画像(前眼部カメラ画像101)を取得する。
【0047】
ステップS11では、ステップS10での前眼部カメラ画像101の取得に続き、制御部40は、取得した前眼部カメラ画像101に基づいて、本体部13(取得光学系20)に対する被検眼の実際の位置を特定する。すなわち、制御部40は、前眼部カメラ画像101を解析し、本体部13(取得光学系20)から被検眼までの距離や、取得光学系20の光軸や観察窓16等を基準とした被検眼の左右方向及び上下方向のずれ量等を算出し、これらの距離等に基づいて被検眼の位置を特定する。
【0048】
ステップS12では、ステップS11での被検眼の位置の特定に続き、制御部40は、架台位置センサ18によって検出された架台12の位置情報に基づいて、取得光学系20の実際の位置を算出する。なお、制御部40は、第1移動用アクチュエータ15aと第2移動用アクチュエータ15bの動作量から取得光学系20の位置を算出してもよい。
【0049】
ステップS13では、ステップS12での取得光学系20の位置の算出に続き、制御部40は、実際の被検眼の位置に対する実際の取得光学系20の位置を客観的に表した情報である位置関係情報Jを演算する。位置関係情報Jは、ステップS11において前眼部カメラ画像101から特定した被検眼の位置(本体部13(取得光学系20)から被検眼までの距離、取得光学系20の光軸等を基準とした被検眼の左右方向及び上下方向のずれ量)と、ステップS12において算出された取得光学系20の位置と、等に基づいて演算される。
【0050】
ステップS14では、ステップS13での位置関係情報Jの演算に続き、制御部40は、画面31の表示を切り替えて、演算した位置関係情報Jをディスプレイ30の画面31に表示させる。このとき、
図6に示されたように、画面31には、制御部40によって、第3表示領域31dと、第4表示領域31eと、が設定される。制御部40は、第3表示領域31dに位置関係情報Jを表示させる。また、制御部40は、第4表示領域31eに、前眼部カメラ画像101及び瞳孔検出マーク104を表示させる。さらに、制御部40は、第3表示領域31dに、位置関係情報Jに重畳して本体部13(取得光学系20)を左右前後上下動させるためのソフトウェアキーである矢印ボタン群34を表示させる。矢印ボタン群34は、上下左右前後をそれぞれ指し示す第1矢印アイコン34a~第6矢印アイコン34fによって構成されている(
図7参照)。さらに、制御部40は、ディスプレイ30の画面31内の第3表示領域31d及び第4表示領域31eとは異なる領域に、必要なソフトウェアキー33bや、患者ID等の文字情報等を適宜表示させる。
【0051】
ステップS15では、ステップS14での位置関係情報J等の表示に続き、操作者は、矢印ボタン群34の第1矢印アイコン34a~第6矢印アイコン34f(
図7参照)のうちいずれかをタッチ操作する。このタッチ操作の入力を受けて、制御部40は、画面31に表示された矢印ボタン群34に対するタッチ操作に応じて、第1移動用アクチュエータ15a及び第2移動用アクチュエータ15bを駆動させ、本体部13(取得光学系20)の位置を変更するマニュアルアライメントを実施する。
【0052】
すなわち、制御部40は、矢印ボタン群34の第1矢印アイコン34aがタッチ操作されたとき、第2移動用アクチュエータ15bを駆動させて本体部13を上方に移動させる。また、制御部40は、矢印ボタン群34の第2矢印アイコン34bがタッチ操作されたとき、第2移動用アクチュエータ15bを駆動させて本体部13を下方に移動させる。また、制御部40は、矢印ボタン群34の第3矢印アイコン34cがタッチ操作されたとき、第1移動用アクチュエータ15aを駆動させて架台12を左方向に移動させる。また、制御部40は、矢印ボタン群34の第4矢印アイコン34dがタッチ操作されたとき、第1移動用アクチュエータ15aを駆動させて架台12を右方向に移動させる。また、制御部40は、矢印ボタン群34の第5矢印アイコン34eがタッチ操作されたとき、第1移動用アクチュエータ15aを駆動させて架台12を前側に移動させる。また、制御部40は、矢印ボタン群34の第6矢印アイコン34fがタッチ操作されたとき、第1移動用アクチュエータ15aを駆動させて架台12を後側に移動させる。
【0053】
なお、矢印ボタン群34へのタッチ操作は、一般的なシングルタップ操作に限らない。タッチ操作は、例えば、ダブルタップ操作、長押し操作(ロングタップ)、所定方向へのフリック操作、所定方向へのスワイプ操作、所定方向へのドラッグ操作、ピンチイン操作、ピンチアウト操作等であってもよい。
【0054】
また、制御部40は、矢印ボタン群34に対するタッチ操作の種類や回数、操作量(タップ時間、ドラッグ量等)等に応じて、第1移動用アクチュエータ15a及び第2移動用アクチュエータ15bの制御を変更する。つまり、第1移動用アクチュエータ15a及び第2移動用アクチュエータ15bによる架台12或いは本体部13の移動方向や移動量は、操作者が操作部33であるディスプレイ30の画面31をタップする回数や操作量等に応じて設定される。
【0055】
さらに、マニュアルアライメント実施時、操作者は、前眼部カメラ画像101に重畳して示された瞳孔検出マーク104が、図示を略すアライメントマーク内に位置するように矢印ボタン群34をタッチ操作し、本体部13の位置を調整する。
【0056】
ステップS16では、ステップS15でのマニュアルアライメントの実施に続き、制御部40は、マニュアルアライメントが成功したか否かを判断する。マニュアルアライメント成功と判断された場合(YES:マニュアルアライメントOK)、制御部40は、アライメント完了としてアライメント制御は終了する(エンド)。マニュアルアライメント失敗と判断された場合(NO:マニュアルアライメントNG)、操作者及び制御部40は、マニュアルアライメントの実施を継続する(ステップS10に戻る)。
【0057】
ここで、マニュアルアライメントを継続する場合、フローチャートのステップS10に戻ることから、位置関係情報Jは再度演算される。すなわち、制御部40は、マニュアルアライメントを実施したことで生じた被検眼と取得光学系20との位置関係の変化を、新たに演算した位置関係情報Jに反映することができる。
【0058】
実施例1の眼科装置1におけるディスプレイ30の画面31に表示される位置関係情報Jは、以下のように説明される。
【0059】
実施例1の位置関係情報Jは、
図7に示されたように、被検眼を示す眼球モデルを表す第1アイコン51と、取得光学系20を表す第2アイコン52と、を有するグラフィック画像50によって表示される。
【0060】
第1アイコン51及び第2アイコン52は、等角投影法によって示される。ここで、「等角投影法」は、傾斜させた立体物を、前後、左右、上下の三方向で作る角度が互いに等角(120度)になるように描く図法である。このため、等角投影法によって表示されたグラフィック画像50は、基本的に被検眼及び眼科装置1の斜め上方に設定された仮想視点から見た斜視図になる。なお、
図7に示された例では、制御部40は、眼科装置1の前側上方で眼科装置1の右側の位置に設定された仮想視点から見た状態で位置関係情報Jを表示させている。
【0061】
また、制御部40は、仮想視点の位置を変更し、任意に設定された仮想視点から見た状態で位置関係情報Jを表示させることができる。つまり、制御部40は、例えば
図7に示されたように、眼科装置1の前側上方で眼科装置1の右側に設定された仮想視点から見た状態で位置関係情報Jを表示させたり、眼科装置1を上方から垂直に見下ろす位置に設定された仮想視点から見た状態で位置関係情報Jを表示させたりできる。
【0062】
また、実施例1では、第1アイコン51は、被検眼の外殻を左右方向に分割し、内部を空洞とした被検眼を模式的に示す等角投影法で示された眼球モデル画像(眼球画像)によって表示されている。なお、
図7では、被検眼の水晶体に相当する部分に符号αが付され、被検眼の眼底に相当する部分に符号βが付されている。また、第1アイコン51は
図7に示すものに限らず、例えば、被検眼の任意の一部(例えば、前眼部のみ、水晶体のみ等)を模式的に示す眼球モデル画像であってもよい。また、第1アイコン51は、被検眼の外殻を半透過に表示して内部構造の全体又は左半分若しくは右半分を模式的に示す眼球モデル画像であってもよいし、被検眼の一部(例えば上部四分の一)を破断して内部の構造を模式的に示した眼球モデル画像であってもよい。なお、
図6及び
図7に示す例では、眼球モデルの内部は無模様であるが、例えば、被検眼の左半分の血管画像が眼球モデルの内部に重畳して表示されてもよい。
【0063】
一方、第2アイコン52は、取得光学系20を模式的に示す等角投影法で示す円筒画像によって表示されている。なお、第2アイコン52として示される円筒画像は、検者が位置関係情報Jを把握しやすい形状であればよく、例えば円錐形等(
図9、
図10参照)であってもよい。また、矢印ボタン群34は、第2アイコン52である円筒画像の長手方向を前後の基準にして表示されている。
【0064】
実施例1の眼科装置1の作用は、以下のように説明される。
【0065】
実施例1の眼科装置1は、取得光学系20と、前眼部カメラ17と、光学系変更機構15と、ディスプレイ30と、制御部40と、を備えている。ここで、取得光学系20は、被検眼の眼情報を取得する。また、前眼部カメラ17は、被検眼を撮影して被検眼の前眼部カメラ画像101を取得する。また、光学系変更機構15は、第1移動用アクチュエータ15a及び第2移動用アクチュエータ15bを有している。そして光学系変更機構15は、各アクチュエータ15a、15bの動力を利用して本体部13の左右方向、前後方向、上下方向の各位置を変更し、本体部13に収容された取得光学系20の位置を変更する。また、ディスプレイ30は、光学系変更機構15を操作する操作者によって視認可能な画面31を有する。そして、制御部40は、前眼部カメラ画像101に基づいて取得光学系20に対する被検眼の位置を特定する。さらに、制御部40は、被検眼の位置と取得光学系20の位置との位置関係を示す位置関係情報Jをディスプレイ30の画面31に表示させる。
【0066】
このため、実施例1の眼科装置1は、ディスプレイ30に表示された位置関係情報Jによって、被検眼と取得光学系20とがどのような位置関係で配置されているのかを、操作者に客観的に把握させることができる。そして、操作者は、被検眼と取得光学系20との位置関係を客観的に把握することで、被検眼と取得光学系20との位置関係を精度よく認識し、取得光学系20の位置を制御する際の操作性の向上を図ることができる。
【0067】
また、実施例1の眼科装置1では、制御部40は、オートアライメントが成功したか否かを判断し(ステップS8)、オートアライメントが失敗したと判断した場合、マニュアルアライメントモードに切り替える(ステップS9)。そして、制御部40は、マニュアルアライメントモードのとき、
図6に示されたように、位置関係情報Jをディスプレイ30の画面31に表示させる(ステップS10~ステップS14)。
【0068】
これにより、実施例1の眼科装置1は、マニュアルアライメントモードに設定され、操作者が光学系変更機構15を制御する際、操作者に被検眼と取得光学系20との位置関係を客観的に把握させることができる。このため、操作者は、マニュアルアライメントモードのとき、被検眼と取得光学系20との位置関係を客観的に把握した状態で操作部33(矢印ボタン群34)をタッチ操作することができる。
【0069】
なお、実施例1では、制御部40は、位置関係情報Jと同時に前眼部カメラ画像101及び瞳孔検出マーク104をディスプレイ30の画面31に表示させる。このため、操作者は、位置関係情報Jと前眼部カメラ画像101との双方を視認することができる。そして、操作者は、客観的に示された被検眼と取得光学系20との位置関係と、前眼部カメラ画像101及び瞳孔検出マーク104に基づいて主観的に推定した被検眼と取得光学系20との位置関係と、を把握した上で操作部33(矢印ボタン群34)をタッチ操作することができる。
【0070】
また、実施例1の眼科装置1では、制御部40は、マニュアルアライメントモードのとき、操作部33となるディスプレイ30の画面31に対する操作者のタッチ操作に基づいて、光学系変更機構15を制御する。これにより、実施例1の眼科装置1は、操作者の直感的な操作を可能にし、取得光学系20の位置を変更する際の操作性の向上を図ることができる。
【0071】
特に、実施例1の眼科装置1では、第1移動用アクチュエータ15a及び第2移動用アクチュエータ15bを駆動させるための矢印ボタン群34が、位置関係情報Jに重畳して表示されている。そのため、操作者は、取得光学系20の動きをさらに直感的に判断することができる。
【0072】
また、実施例1の眼科装置1では、制御部40は、所定の仮想視点から見た状態で位置関係情報Jを表示させると共に、仮想視点の位置を変更可能としている。これにより、実施例1の眼科装置1は、任意の方向から見た状態で位置関係情報Jを表示することができ、被検眼と取得光学系20との位置関係を、操作者がさらに把握しやすい状態で表示できる。
【0073】
以上、本発明の眼科装置1を実施例1に基づいて説明してきたが、具体的な構成については、実施例1に限られるものではなく、各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0074】
実施例1の眼科装置1では、矢印ボタン群34が、第2アイコン52に重畳して表示されているが、これに限らない。例えば、
図8に示されたように、制御部40は、前眼部カメラ画像101が表示される第4表示領域31eに、矢印ボタン群34を表示させてもよい。矢印ボタン群34が第4表示領域31eに表示された前眼部カメラ画像101の周囲に配置されることで、位置関係情報Jに矢印ボタン群34が重畳して表示する必要がない。そのため、眼科装置1は、位置関係情報Jを操作者が見やすい状態で提示できる。
【0075】
また、実施例1の眼科装置1では、位置関係情報Jが第1アイコン51及び第2アイコン52を有するグラフィック画像50によって表示される例が示された。しかしながら、制御部40は、位置関係情報Jであるグラフィック画像50に対し、
図9に示されたように、取得光学系20の光束を示す光束画像53、取得光学系20の光軸を示す光軸画像54、被検眼に提示された固視標の位置を示す固視画像55、被検眼の視線方向を示す視線画像56、をそれぞれ重畳させて表示してもよい。なお、制御部40は、光束画像53、光軸画像54、固視画像55、視線画像56から選択した任意の画像をグラフィック画像50に重畳させることができる。
【0076】
ここで、光束画像53は、被検眼と取得光学系20との間で光が進行する様子を示す線状画像である。制御部40は、取得光学系20の位置(向き)に基づいて光束の方向や範囲を解析し、光束画像53を生成する。なお、一般的に、眼底カメラでは、被検眼の角膜や水晶体からの反射を除去するため、リング照明が用いられる。そのため、照明光の光束は、撮影光の光束とは通過する位置が異なる。位置関係情報Jに重畳表示される光束画像53は、照明光の光束を示すものであってもよいし、撮影光の光束を示すものであってもよい。また、制御部40は、取得光学系20を示す第2アイコン52から、被検眼を示す第1アイコン51の眼球モデルにおける眼底位置に至るまで光束画像53を表示することで、取得光学系20の光束が眼底のどこに向けられているのかを表示することができる。
【0077】
また、光軸画像54は、取得光学系20から出射された光の向きを示す線状画像である。制御部40は、取得光学系20の位置(向き)に基づいて光軸の方向を解析し、光軸画像54を生成する。実施例1の光軸画像54は、取得光学系20を表す第2アイコン52の円筒画像の軸方向に一致して示される。また、制御部40は、取得光学系20を示す第2アイコン52から、被検眼を示す第1アイコン51の眼球モデルにおける眼底位置に至るまで光軸画像54を表示することで、取得光学系20の光軸が眼底のどこに向けられているのかを表示することができる。
【0078】
また、固視画像55は、被検眼に提示された外部固視灯の位置を示す楕円形画像である。制御部40は、前眼部カメラ画像101を解析して固視標の位置を特定し、固視画像55を生成する。
【0079】
また、視線画像56は、被検眼の視線を示す矢印画像である。制御部40は、前眼部カメラ画像101を解析して視線の方向を特定し、視線画像56を生成する。
【0080】
これにより、眼科装置1は、取得光学系20の光束の向きや範囲、光軸や視線の方向等を操作者に理解させやすく表示できる。
【0081】
なお、制御部40は、光束画像53や光軸画像54を位置関係情報Jに重畳して表示させた場合、マニュアルアライメントを実施する際、光束画像53や光軸画像54に対する操作者のタッチ操作に応じて、第1移動用アクチュエータ15aや第2移動用アクチュエータ15bに制御信号を出力し、本体部13(取得光学系20)の位置を変更してもよい。すなわち、眼科装置1は、ソフトウェアキーである矢印ボタン群34を表示せず、ディスプレイ30の画面31の所定の位置に対するタッチ操作に応じて取得光学系20の位置を変更してもよい。
【0082】
さらに、
図6及び
図7に示された例では、位置関係情報Jにおける被検眼の位置を示す第1アイコン51が、被検眼の眼球を模した眼球モデル画像によって表示されている。しかしながら、
図10に示されたように、位置関係情報Jにおける被検眼の位置は前眼部カメラ画像101によって示されてもよい。この場合、制御部40は、光軸画像54を位置関係情報Jに重畳して表示させることで、取得光学系20が向いている方向を操作者が把握しやすく表示できる。
【0083】
すなわち、被検眼の位置は、眼球モデル画像である第1アイコン51によって表示されてもよいし、前眼部カメラ画像101によって表示されてもよい。これにより、眼科装置1は、任意の表示状態で位置関係情報Jを表示させることができる。
【0084】
また、実施例1の眼科装置1は、所定の仮想視点から見た状態で位置関係情報Jを表示させ、仮想視点の位置が任意に設定可能である例が示された。そのため、例えば、
図11B~
図16Bに示されたように、制御部40は、画面検出センサ32によって検出されたディスプレイ30の画面31の向きに応じて仮想視点を設定し、画面31の向きに応じて設定された仮想視点から見た状態で位置関係情報Jを表示させてもよい。
【0085】
つまり、制御部40は、画面31が第1の方向を向いている(
図11A参照)ときには、
図11Bに示されたように、眼科装置1の前方上部、つまり被検者の背後に設定された仮想視点から見た状態で位置関係情報Jを表示する。
【0086】
また、制御部40は、画面31が第2の方向を向いている(
図12A参照)ときには、
図12Bに示されたように、眼科装置1の右側に設定された仮想視点から見た状態で位置関係情報Jを表示する。
【0087】
また、制御部40は、画面31が第3の方向を向いている(
図13A参照)ときには、
図13Bに示されたように、眼科装置1の左側に設定された仮想視点から見た状態で位置関係情報Jを表示する。
【0088】
また、制御部40は、画面31が第4の方向を向いている(
図14A参照)ときには、
図14Bに示されたように、眼科装置1の後方上部、つまり操作者の背後に設定された仮想視点から見た状態で位置関係情報Jを表示する。
【0089】
また、制御部40は、画面31が第5の方向を向いている(
図15A参照)ときには、
図15Bに示されたように、眼科装置1の右側に設定された仮想視点から見た状態で位置関係情報Jを表示する。
【0090】
また、制御部40は、画面31が第6の方向を向いている(
図16A参照)ときには、
図16Bに示されたように、眼科装置1の左側に設定された仮想視点から見た状態で位置関係情報Jを表示する。
【0091】
このように、画面31の向きに応じて設定された仮想視点から見た状態で位置関係情報Jを表示させることで、眼科装置1は、被検眼と取得光学系20との位置関係を、操作者の視線方向に合わせて表示することができる。このため、眼科装置1は、被検眼と取得光学系20との位置関係を、操作者が把握しやすい状態で表示できる。
【0092】
また、実施例1では、光学系変更機構15が、ベース11に対する取得光学系20の位置を左右方向、前後方向、上下方向に変更する例が示された。しかしながら、光学系変更機構15は、取得光学系20を左右方向や上下方向に回転させ、取得光学系20の向きを左右方向或いは上下方向、又はその双方(左右及び上下)に変更(回転)させるものであってもよい。さらに、光学系変更機構15は、取得光学系20の位置を変更し、且つ、取得光学系20の向きを変更するものであってもよい。
【0093】
また、実施例1の眼科装置1では、位置関係情報Jをグラフィック画像50によって表示させる例が示された。しかしながら、位置関係情報Jは、被検眼と取得光学系20との位置関係を示した情報であればよい。そのため、位置関係情報Jは、例えば対物レンズ16aから被検眼までの距離等を示す数値画像等によって示されてもよいし、グラフィック画像と数値画像とを組み合わせて示されてもよい。
【符号の説明】
【0094】
1 眼科装置
10 筐体
15 光学系変更機構
17 前眼部カメラ(カメラ)
20 取得光学系
30 ディスプレイ
31 画面
40 制御部
101 前眼部カメラ画像(前眼部画像)
J 位置関係情報