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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110350
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】物品乾燥装置及び物品乾燥方法
(51)【国際特許分類】
   F26B 15/00 20060101AFI20240807BHJP
   F26B 3/02 20060101ALI20240807BHJP
   B08B 3/02 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
F26B15/00 C
F26B3/02
B08B3/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014901
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000107734
【氏名又は名称】スピードファムクリーンシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土屋 伸次郎
【テーマコード(参考)】
3B201
3L113
【Fターム(参考)】
3B201AA46
3B201AB14
3B201BB32
3B201BB88
3B201CC12
3L113AA02
3L113AB02
3L113AC08
3L113AC31
3L113AC48
3L113AC52
3L113BA12
3L113CA08
3L113DA13
(57)【要約】
【課題】有底の筒状空間部を有する洗浄済みの物品をシンプルな構造で確実に乾燥させることができる物品乾燥装置を提供すること。
【解決手段】有底の筒状空間部101を有する洗浄済みの物品100を乾燥させる物品乾燥装置1であって、物品100の開口部103を下向きに保持した状態で所定の搬送方向に搬送する搬送機構20と、搬送機構20に保持された物品100の下側に配置された噴水ノズル32から、物品100の開口部103に向かって、物品100の底部102に達する純水を噴射するシャワー機構30と、噴水ノズル32の配置位置よりも搬送方向の下流位置で、搬送機構20に保持された物品100の下側に配置された第1エアノズル43から、物品100の開口部103に向かって気体を噴射する第1ブロー機構40と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底の筒状空間部を有する洗浄済みの物品を乾燥させる物品乾燥装置であって、
前記物品の開口部を下向きに保持した状態で所定の搬送方向に搬送する搬送機構と、
前記搬送機構に保持された前記物品の下側に配置された噴水ノズルから、前記物品の前記開口部に向かって、前記物品の底部に達する液体を噴射するシャワー機構と、
前記噴水ノズルの配置位置よりも前記搬送方向の下流位置で、前記搬送機構に保持された前記物品の下側に配置されたエアノズルから、前記物品の前記開口部に向かって気体を噴射するブロー機構と、
を備えることを特徴とする物品乾燥装置。
【請求項2】
請求項1に記載された物品乾燥装置において、
前記噴水ノズルの配置位置と前記エアノズルの配置位置との間で、前記搬送機構によって搬送される前記物品の上側に配置された第2のエアノズルから、前記物品に対して上方から気体を噴射する第2のブロー機構を備える
ことを特徴とする物品乾燥装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された物品乾燥装置において、
前記エアノズルの配置位置よりも前記搬送方向の下流位置に配置され、前記物品に向かって前記気体よりも高温の温風を送風する温風送風機構を備える
ことを特徴とする物品乾燥装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載された物品乾燥装置において、
前記搬送機構は、前記エアノズルの上方の一定区間で前記物品を前記搬送方向に沿って進退移動させる
ことを特徴とする物品乾燥装置。
【請求項5】
有底の筒状空間を有する洗浄済みの物品を乾燥させる物品乾燥方法であって、
開口部を下向きにして保持された前記物品の前記開口部に向かって、前記物品の底部に達する液体を噴射するシャワー工程と、
前記液体が噴射された後の前記物品の前記開口部に向かって気体を噴射するブロー工程と、
を備えることを特徴とする物品乾燥方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品乾燥装置及び物品乾燥方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、キュベットや試験管、微小な袋穴やネジ穴等が形成された部品等の有底の筒状空間部を有する物品を洗浄すると、筒状空間部の中に残った液体が表面張力によって空間内面に付着して残留し、容易に乾燥しないことがある。そこで、洗浄済みの物品を乾燥させる乾燥装置として、例えば、洗浄後の物品を開口部が外方に面するように保持した状態で回転させ、遠心力で水分を吹き飛ばして乾燥させる装置(例えば、特許文献1参照)や、洗浄後の物品が投入された乾燥槽の内部を真空状態にして真空乾燥を行う装置(例えば、特許文献2参照)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2-143165号公報
【特許文献2】特開2019-107598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば特許文献1に記載された乾燥装置では、物品を保持するキャリアを、物品に働く遠心力に耐えられる設計にする必要がある。また、回転中にキャリアから物品が外れた場合、物品や装置の破損が生じる懸念がある。そのため、キャリアの構造を大型化や複雑化等して遠心力に耐えられるようにしたり、物品の回転中の脱落を防止したりしなければならなかった。また、例えば特許文献2に記載された乾燥装置では、物品の周囲を真空状態にするための乾燥槽を用いる必要があり、装置構造が複雑で、精密なものになってしまう。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、有底の筒状空間部を有する洗浄済みの物品をシンプルな構造で確実に乾燥させることができる物品乾燥装置及び物品乾燥方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、有底の筒状空間部を有する洗浄済みの物品を乾燥させる物品乾燥装置であって、前記物品の開口部を下向きに保持した状態で所定の搬送方向に搬送する搬送機構と、前記搬送機構に保持された前記物品の下側に配置された噴水ノズルから、前記物品の前記開口部に向かって、前記物品の底部に達する液体を噴射するシャワー機構と、前記噴水ノズルの配置位置よりも前記搬送方向の下流位置で、前記搬送機構に保持された前記物品の下側に配置されたエアノズルから、前記物品の前記開口部に向かって気体を噴射するブロー機構と、を備える構成とした。
【0007】
また、上記目的を達成するため、本発明は、有底の筒状空間を有する洗浄済みの物品を乾燥させる物品乾燥方法であって、開口部を下向きにして保持された前記物品の前記開口部に向かって、前記物品の底部に達する液体を噴射するシャワー工程と、前記液体が噴射された後の前記物品の前記開口部に向かって気体を噴射するブロー工程と、を備える構成とした。
【発明の効果】
【0008】
これにより、本発明の物品乾燥装置及び物品乾燥方法は、有底の筒状空間部を有する洗浄済みの物品をシンプルな構造で確実に乾燥させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1の物品乾燥装置を示す全体構造である。
図2】実施例1の物品乾燥装置によって乾燥される物品を示す説明図である。
図3】物品のホルダセット状態を示す説明図である。
図4】シャワー機構によって噴射された純水の流れを示す説明図である。
図5】洗浄後に洗浄液が残留した状態の物品を示す説明図である。
図6】シャワー機構による純水噴射後の物品を示す説明図である。
図7】第1ブロー機構による空気噴射中の物品を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の物品乾燥装置及び物品乾燥方法を実施するための形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【0011】
図1に示された実施例1の物品乾燥装置1は、洗浄液を用いて洗浄された物品100(図2参照)を乾燥させる装置である。
【0012】
ここで、実施例1の物品乾燥装置1によって乾燥される物品100は、例えば図2に示された角筒状のキュベットのように、有底の筒状空間部101を有している。すなわち、物品100は、小径の筒状空間部101と、筒状空間部101の一方の端部を閉鎖する底部102と、筒状空間部101の他方の端部を開放する開口部103と、を有している。ここで、筒状空間部101は、例えば、開口部103が一辺3mm~5mm程度の正方形に設定され、奥行き(長さ)が約30mm程度に設定されている。
【0013】
なお、物品100は、図2に示されたキュベットに限らず、例えば底部102がドーム状に湾曲した円筒状の試験管であってもよい。また、物品100は、キュベットや試験管等の容器形状に限らず、表面に形成された袋穴(止まり穴)や機械加工されたネジ穴等を筒状空間部101とする部品等であってもよい。すなわち、物品100は、筒状空間部101に入り込んだ洗浄液や水に作用する表面張力による引っ張り力が、この洗浄液等による重力に勝ることで、洗浄液等が筒状空間部101に残留する現象が生じ得る筒状空間部101を有するものである。
【0014】
実施例1の物品乾燥装置1は、図1に示されたように、装置筐体10と、搬送機構20と、シャワー機構30と、第1ブロー機構(ブロー機構)40と、第2ブロー機構(第2のブロー機構)50と、温風送風機構60と、を備えている。
【0015】
装置筐体10は、箱型の乾燥チャンバであり、所定の側面に入口11が形成され、入口11が形成された側面とは反対側の側面に出口12が形成されている。また、装置筐体10は、入口11の外側に入口ホルダ受部11aが設けられ、出口12の外側に出口ホルダ受部12aが設けられている。入口ホルダ受部11aは、装置筐体10内に搬入されるホルダ21を載置する部分である。出口ホルダ受部12aは、装置筐体10内から搬出されたホルダ21を受け取る部分である。装置筐体10の内部は、入口11から出口12に向かって順にシャワー室13、エアブロー室14、温風室15に区画されている。
【0016】
そして、入口11及び、シャワー室13とエアブロー室14とを区画する第1区画壁16に形成された第1開口部16aは、開放している。また、出口12及び、エアブロー室14と温風室15とを区画する第2区画壁17に形成された第2開口部17aには、開閉可能なシャッタ18が設けられている。第2開口部17aに設けられた一方のシャッタ18は、温風室15に物品100を搬入する際に開き、その他のときは閉まっている。また、出口12に設けられた他方のシャッタ18は、温風室15から物品100を搬出する際に開き、その他のときは閉まっている。すなわち、温風室15は、シャッタ18によって閉鎖可能である。
【0017】
また、入口ホルダ受部11aとシャワー室13には、下流端が排水溝19aに連通した排水路19が設けられている。物品100に付着した洗浄液や、シャワー機構30に寄って噴射された純水は、排水路19を介して排水溝19aに排出可能になっている。
【0018】
そして、シャワー室13の内部には、シャワー機構30の噴水ノズル32が配置されている。また、エアブロー室14の内部には、第1ブロー機構40の第1エアノズル43と、第2ブロー機構50の第2エアノズル53が配置されている。また、温風室15には、温風送風機構60のエア吹出口61及びエア吸込口62が設けられている。さらに、搬送機構20のローラコンベア22は、装置筐体10の入口11の外側に設けられた入口ホルダ受部11aから、出口12の外側に設けられた出口ホルダ受部12aに至るまで連続して配置されている。
【0019】
搬送機構20は、物品100を装置筐体10の入口11から、装置筐体10の内部を通り出口12に向かう方向(以下「搬送方向」という)に搬送する機構である。また、搬送機構20は、物品100の搬送中、開口部103を下向きにした状態に保持する。実施例1の搬送機構20は、物品100を保持するホルダ21と、ローラコンベア22と、を有している。
【0020】
ホルダ21は、複数の物品100を同時に保持可能であり、図3に示されたように、物品100の底部102側の端部を保持する第1ホルダ21aと、物品100の開口部103側の端部を保持する第2ホルダ21bと、を有している。そして、物品100は、第1ホルダ21a及び第2ホルダ21bをそれぞれ貫通する保持孔21cに差し込まれ、ホルダ21によって保持される。また、物品100を保持したホルダ21は、第2ホルダ21bがローラコンベア22に載置される。
【0021】
これにより、ホルダ21に保持された物品100は、底部102が露出すると共に、開口部103が下方に向かって開放した状態で搬送される。なお、物品100は、外側面の水切れを向上させるために、第1ホルダ21aの保持孔21cを貫通することが好ましい。さらに、物品100は、ローラコンベア22との接触を防止するために、第2ホルダ21bの保持孔21cを貫通しないことが好ましい。
【0022】
ローラコンベア22は、搬送方向に沿って所定の間隔をあけて配置された複数のローラを有している。そして、ローラコンベア22は、各ローラが回転することでホルダ21に保持された複数の物品100を、ホルダ21ごと搬送する。ローラコンベア22による搬送速度は一定であり、実施例1では約10mm/sに設定されている。また、ローラコンベア22は、第1ブロー機構40が有する第1エアノズル43の上方の一定区間では、搬送方向に沿ってホルダ21ごと物品100を進退移動させる。ローラコンベア22の進退移動速度は搬送速度よりも遅く、実施例1では約2.5mm/sに設定されている。なお、実施例1では、ローラコンベア22は、第1ブロー機構40の上方の一定区間において物品100の進退移動動作を繰り返し、複数回往復させる。ローラコンベア22による物品100の往復回数(進退移動動作の回数)は、物品100が乾燥されればよいため、物品100の乾燥状態に応じて任意に設定が可能である。
【0023】
シャワー機構30は、上流端が純水供給源31aに接続された純水供給路31と、純水供給路31の下流端に接続された噴水ノズル32と、を有している。
【0024】
噴水ノズル32は、搬送機構20のローラコンベア22の下側に配置されている。つまり、噴水ノズル32は、搬送機構20によって保持された物品100の下側に配置される。このため、シャワー機構30は、物品100の開口部103に向かって、噴水ノズル32を介して物品100の下方から純水(液体)を噴射する。ここで、噴水ノズル32の吐出口33は、ローラコンベア22のローラ間の隙間に臨む位置に設置されている。そのため、純水はローラの間を通って物品100に吹き付けられる。
【0025】
また、純水供給路31には、噴水ノズル32から噴射される純水の圧力や流量を調整する調整バルブ34が設けられている。なお、実施例1では、噴水ノズル32が複数設けられており、調整バルブ34は、各噴水ノズル32の吐出量をそれぞれ毎分約1リットルに調整する。
【0026】
さらに、噴水ノズル32の吐出口33の口径は、物品100の開口部103の開口径よりも小さく、噴水ノズル32は、開口部103に流入可能な細い糸状の水流として純水を噴射可能である。
【0027】
そして、噴水ノズル32から噴射される純水の水流は、物品100の底部102に達する勢いの直進流である。つまり、実施例1のシャワー機構30は、噴水ノズル32から物品100の底部102に達する勢いで純水を直進流として噴射する。なお、「物品100の底部102に達する勢いの純水の直進流」とは、図4に示されたように、物品100の開口部103に噴水ノズル32の吐出口33が対向した際、吐出口33から筒状空間部101の伸張方向に沿ってほぼ拡散することなく流れ出て、底部102に当たる水流Sである。実施例1では、調整バルブ34によって、噴水ノズル32から噴射される純水の噴射圧を0.1~0.2MPaに設定することで、噴水ノズル32から噴射される純水が、物品100の底部102に達する勢いの直進流となる。なお、シャワー機構30によって噴射される純水は、物品100の底部102に達する勢いで噴射されればよく、直進流でなくてもよい。
【0028】
第1ブロー機構40は、ブロワ41と、上流端がブロワ41に接続されると共に途中が二股に分岐した送風路42と、送風路42の一方の下流端に設けられて空気を噴射する第1エアノズル43(エアノズル)と、を有している。
【0029】
ブロワ41は、一定の流量で連続的に空気を送出するものであり、ブロワ41の送風流量は、実施例1では4.9m/minに設定されている。なお、実施例1では、第1ブロー機構40と第2ブロー機構50とで、ブロワ41を共用している。
【0030】
送風路42は、ブロワ41と第1エアノズル43及び後述する第2エアノズル53を接続する風路である。なお、実施例1では、送風路42が途中で分岐し、第1ブロー機構40と第2ブロー機構50とで、送風路42を共用している。
【0031】
そして、第1エアノズル43は、搬送機構20のローラコンベア22の下側に配置されている。つまり、第1エアノズル43は、搬送機構20によって保持された物品100の下側に配置される。このため、第1ブロー機構40は、物品100の開口部103に向かって、第1エアノズル43を介して物品100の下方から空気(気体)を噴射する。
【0032】
また、第1エアノズル43は、エアブロー室14に配置されている。このため、第1エアノズル43は、シャワー室13に配置された噴水ノズル32の配置位置よりも、物品100の搬送方向の下流位置で空気を物品100に噴射する。
【0033】
さらに、第1エアノズル43の吐出口44は、ローラコンベア22のローラ間の隙間に臨む位置に配置されている。そのため、空気はローラの間を通って物品100に吹き付けられる。また、第1エアノズル43から噴射される空気の圧力及び流量は、送風路42に設けられたダンパー(不図示)によって調整される。ここで、第1エアノズル43から噴射される空気は、物品100の筒状空間部101の内部に残留した液体の表面張力に抗して、当該液体の表面を変形させる勢いであることが望ましい。
【0034】
なお、「物品100の内部に残留した液体」とは、物品100の筒状空間部101内に入り込み、表面張力によって筒状空間部101に留まり、筒状空間部101から排出されない液体(純水)である。また、「液体の表面張力に抗して液体表面を変形させる勢いの空気」とは、筒状空間部101に残留した液体を底部102に向かって押し込んで、表面張力を破壊する勢いの空気である。つまり、第1エアノズル43から噴射される空気は、表面張力よりも大きい力で液体を押圧し、液体の表面を変形させることが可能な勢いで噴射される。
【0035】
なお、具体的には、実施例1の第1ブロー機構40は、第1エアノズル43からの噴射直前の空気の圧力を10~12kPaに調整し、第1エアノズル43からの空気の流量が2.45m/minとなるように調整する。また、第1エアノズル43から噴射される空気は、20℃程度の常温から40℃程度の温風等、任意の温度に設定される。
【0036】
第2ブロー機構50は、第1ブロー機構40と共用のブロワ41及び送風路42と、送風路42の他方の下流端に設けられて空気を噴射する第2エアノズル53(第2のエアノズル)と、を有している。
【0037】
ここで、第2エアノズル53は、ローラコンベア22によって搬送される物品100の上側に配置されている。つまり、第2エアノズル53は、搬送機構20によって保持された物品100の上側に配置される。このため、第2ブロー機構50は、物品100の底部102に向かって、第2エアノズル53を介して物品100の上方から空気(気体)を噴射する。
【0038】
また、第2エアノズル53は、エアブロー室14内であって、第1エアノズル43よりも物品100の搬送方向の上流側に配置されている。このため、第2エアノズル53は、シャワー室13に配置された噴水ノズル32の配置位置と、第1エアノズル43の配置位置との間で物品100に空気を噴射する。
【0039】
そして、第2エアノズル53から噴射される空気の圧力及び流量は、送風路42に設けられたダンパー(不図示)によって調整される。実施例1の第2ブロー機構50は、第2エアノズル53からの噴射直前の空気の圧力を10~12kPaに調整し、第2エアノズル53からの空気の流量が2.45m/minとなるように調整する。また、第2エアノズル53から噴射される空気は、20℃程度の常温から40℃程度の温風等、任意の温度に設定される。
【0040】
温風送風機構60は、搬送機構20によって搬送された物品100に向かって第1ブロー機構40や第2ブロー機構50から噴射された空気よりも高温の温風を送風する機構である。実施例1の温風送風機構60は、エア吹出口61と、エア吸込口62と、エア循環路63と、を有している。
【0041】
エア吹出口61は、温風室15の底面に設けられ、搬送機構20のローラコンベア22の下方から温風を送風する。なお、エア吹出口61から送風される温風の風速は、実施例1では1.5m/sに設定されている。また、エア吹出口61には、下流端が排水溝19aに連通した排水路61aが接続されている。
【0042】
エア吸込口62は、温風室15の天井面に設けられ、搬送機構20のローラコンベア22の上方から温風室15内の空気を吸い込む。
【0043】
エア循環路63は、一端がエア吹出口61に接続され、他端がエア吸込口62に接続されている。エア循環路63の途中には、エア吸込口62側から順に送風ファン63a、ヒータ63bが設けられている。そして、温風送風機構60では、送風ファン63aが駆動することで、エア吸込口62を介して温風室15内の空気を吸い込み、ヒータ63bによって加熱した後、エア吹出口61から送風する。
【0044】
なお、実施例1の物品乾燥装置1では、温風送風機構60により、温風室15内の温度が約70℃に調整されている。また、物品乾燥装置1は、温風室15やエア循環路63等に温度センサを設け、温風送風機構60による送風温度の監視を行ってもよい。
【0045】
以下、実施例1の物品乾燥方法について説明する。
【0046】
実施例1の物品乾燥方法は、有底の筒状空間部101を有する洗浄済みの物品100を乾燥させる乾燥方法である。実施例1の物品乾燥方法は、物品乾燥装置1に物品100を搬入する搬入工程と、シャワー機構30によるシャワー工程と、第1ブロー機構40及び第2ブロー機構50によるブロー工程と、温風送風機構60による温風乾燥工程と、を有する。
【0047】
搬入工程では、まず、作業者等が、前工程である洗浄工程にて洗浄された複数の物品100をホルダ21にセットする。つまり、各物品100は、底部102側の端部が第1ホルダ21aの保持孔21cに差し込まれ、開口部103側の端部が第2ホルダ21bの保持孔21cに差し込まれる。次に、作業者等は、複数の物品100がセットされたホルダ21を、入口ホルダ受部11aに設けられたローラコンベア22上に載置する。このとき、第2ホルダ21bがローラコンベア22に乗せられる。このため、物品100は、開口部103を下向きにした状態で保持される。そして、作業者等は、物品乾燥装置1を操作し、ローラコンベア22のローラを駆動して、物品100をホルダ21ごとシャワー室13へと搬送する。
【0048】
シャワー工程では、物品乾燥装置1のシャワー機構30が、シャワー室13に搬入された物品100の開口部103に向かって、物品100の下方から噴水ノズル32を介して物品100の底部102に達する勢いで純水を噴射する。これにより、物品100の内部(筒状空間部101)には、噴水ノズル32から噴射された純水が、ここでは直進流となって流入する。なお、ローラコンベア22は、一定速度で搬送方向にホルダ21を搬送するため、物品100は、純水が噴射されている中を移動していく。つまり、搬送中に物品100の開口部103が噴水ノズル32の吐出口33に対向したとき、純水が筒状空間部101に流入する。そして、物品100は、純水が噴射された後、ホルダ21ごとエアブロー室14へと搬入される。
【0049】
ブロー工程では、まず、物品乾燥装置1の第2ブロー機構50が、エアブロー室14に搬入された物品100に対し、物品100の上方から第2エアノズル53を介して空気を噴射する。これにより、物品100の外表面に空気が吹き付けられ、物品100の外表面に付着した液体が吹き飛ばされる。次に、物品乾燥装置1の第1ブロー機構40が、物品100の下方から第1エアノズル43を介して筒状空間部101に向かって空気を噴射する。
【0050】
なお、ローラコンベア22は、第2エアノズル53の下方では、一定速度で搬送方向にホルダ21を搬送する。このため、物品100は、上方から空気が噴射されている中を移動していく。また、ローラコンベア22は、第1エアノズル43の上方の一定区間では、物品100を搬送方向に沿って進退移動させる。このため、物品100は、下方から空気が噴射されている位置では、搬送方向に沿って往復移動させられる。
【0051】
そして、温風工程では、温風送風機構60によってブロー工程で噴射された空気よりも高温の温風が循環している温風室15に物品100が搬入される。なお、物品100が搬入される際、第2開口部17aに設けられたシャッタ18がいったん開き、温風室15への物品100の搬入後に閉じる。そして、温風室15に搬入された物品100は、エア吹出口61の上方、すなわちエア吹出口61から送風される温風が直接当たる領域で、一定時間(例えば15分間)停止させられて待機する。これにより、物品100に付着していた液体が蒸発し、物品100は乾燥させられる。その後、出口12に設けられたシャッタ18が開き、物品100が出口ホルダ受部12aへと搬出され、物品100の乾燥は終了する。
【0052】
以下、洗浄された有底の筒状空間部101を有する物品100を乾燥する際の課題について説明する。
【0053】
図2に示されたような物品100は、一般的に洗浄液が噴射されたり、洗浄液に浸漬されたりすることで洗浄される。また、物品100は、筒状空間部101の内部も洗浄されるため、洗浄時、筒状空間部101に洗浄液が入り込む。そして、洗浄後は、開口部103を下向きにして物品100を保持することで、物品100に付着した洗浄液は自重によって落下したり、蒸発したりすることで乾燥させられる。
【0054】
しかしながら、筒状空間部101に入り込んだ洗浄液の表面張力による引っ張り力が、筒状空間部101内の洗浄液によって生じる重力よりも大きくなることで、洗浄液が自重では落下せず、筒状空間部101に洗浄液が残留することがある。しかも、図5に示されたように、筒状空間部101に残留した洗浄液Lが物品100の底部102まで充満している場合、例えば開口部103から筒状空間部101内に空気を噴射しても、洗浄液Lは筒状空間部101内でほとんど動かず、洗浄液Lの表面を大きく変形させることができなかった。そのため、表面張力による引っ張り力は低下せず、筒状空間部101から洗浄液Lを排出させることは難しかった。つまり、筒状空間部101内に空気を噴射するだけでは、筒状空間部101に液残りが発生し、物品100を確実に乾燥させることは困難であった。
【0055】
一方、筒状空間部101の液残りを解消するために、遠心力で筒状空間部101内の水分を吹き飛ばしたり、真空乾燥によって乾燥させたりする場合は、装置を大型化や複雑化する必要がある。そのため、この場合は、シンプルな構造で物品100を乾燥させることはできなかった。
【0056】
以下、実施例1の物品乾燥装置1及び物品乾燥方法の作用を説明する。
【0057】
実施例1の物品乾燥装置1は、乾燥対象の物品100の開口部103を下向きに保持した状態で所定の搬送方向に搬送する搬送機構20と、搬送機構20に保持された物品100の下側に配置された噴水ノズル32から、物品100の開口部103に向かって、物品100の底部102に達する純水(液体)を噴射するシャワー機構30と、噴水ノズル32の配置位置よりも搬送方向の下流位置で、搬送機構20に保持された物品100の下側に配置された第1エアノズル43から、物品100の開口部103に向かって空気(気体)を噴射する第1ブロー機構40と、を備えている。
【0058】
すなわち、実施例1の物品乾燥装置1及び物品乾燥方法では、まず、開口部103を下向きにして保持された洗浄済みの物品100に対し、底部102に達する勢いで純水を物品100の下方から噴射する(図4参照)。そして、純水を噴射した後、開口部103を下向きにして物品100を保持したまま、物品100の下方から空気を噴射する。
【0059】
これにより、筒状空間部101に残留した洗浄液Lが底部102まで充満している場合(図5参照)、底部102に達する勢いで純水が噴射されることで、噴射された純水が洗浄液Lを押し流すと共に、純水と同時に空気を筒状空間部101に送り込むことができる。この結果、実施例1の物品乾燥装置1は、図6に示されたように、筒状空間部101に残留した液体S´と、物品100の底部102との間に空気層Aを生じさせることができる。
【0060】
そして、実施例1の物品乾燥装置1は、筒状空間部101内の液体S´と底部102との間に空気層Aが生じた状態の物品100に対して空気を噴射することで、図7に示されたように、液体S´の表面を空気で押圧し、液体S´の表面を大きく変形させることができる。この結果、筒状空間部101に残留した液体S´に作用する表面張力による引っ張り力が低下し、筒状空間部101から液体S´が流出する。そして、筒状空間部101から液体S´が流出することで、実施例1の物品乾燥装置1は、筒状空間部101内の液残りを解消し、物品100を確実に乾燥させることができる。
【0061】
このように、実施例1の物品乾燥装置1は、例えば、物品100を保持するキャリアの構造を大型化や複雑化したり、物品100の周囲を真空状態にするための乾燥槽を用いたりすることなく、筒状空間部101の液残りを解消することができる。よって、実施例1の物品乾燥装置1は、有底の筒状空間部101を有する洗浄済みの物品100をシンプルな構造で確実に乾燥させることができる。
【0062】
また、実施例1の物品乾燥装置1は、搬送機構20によって搬送される物品100の上側に配置された第2エアノズル53を有し、噴水ノズル32の配置位置と第1エアノズル43の配置位置との間で、物品100に向かって、第2エアノズル53を介して物品100の上方から空気(気体)を噴射する第2ブロー機構50を備えている。
【0063】
これにより、実施例1の物品乾燥装置1は、物品100の外表面に付着した液体を空気で吹き飛ばすことができる。また、第2ブロー機構50は、第1ブロー機構40によって物品100の下方から空気を噴射する前に物品100の上方から空気を噴射することができる。このため、実施例1の物品乾燥装置1は、物品100の外表面に付着した液体が筒状空間部101に入り込むことを防止して、物品100を確実に乾燥させることができる。
【0064】
また、実施例1の物品乾燥装置1は、第1エアノズル43の配置位置よりも搬送方向の下流位置に配置され、物品100に向かって第1エアノズル43から噴射される空気よりも高温の温風を送風する温風送風機構60を備えている。
【0065】
これにより、実施例1の物品乾燥装置1は、物品100に吹き付けられた空気によって筒状空間部101から流出しなかった液体や、物品100の外表面に付着した液体を蒸発させて、物品100を十分に乾燥させることができる。
【0066】
また、実施例1の物品乾燥装置1では、搬送機構20が、第1エアノズル43の上方の一定区間で物品100を搬送方向に沿って進退移動させる。これにより、物品100は、第1エアノズル43の上方で搬送方向に沿って往復させられる。そのため、実施例1の物品乾燥装置1は、筒状空間部101に対して、第1エアノズル43から噴射された空気を複数回吹き付けることができる。このため、実施例1の物品乾燥装置1は、筒状空間部101に残留した液体を十分に流出させ、筒状空間部101の液残りを防止することができる。
【0067】
以上、本発明の物品乾燥装置及び物品乾燥方法を実施例1に基づいて説明してきたが、具体的な構成については、実施例1に限られるものではなく、各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0068】
実施例1の物品乾燥装置1は、第2ブロー機構50や温風送風機構60を備える例が示された。しかしながら、物品乾燥装置1は、第2ブロー機構50や温風送風機構60を備えていなくてもよい。すなわち、本発明の物品乾燥装置は、少なくとも搬送機構20とシャワー機構30と第1ブロー機構40とを備えていればよい。
【0069】
また、本発明の物品乾燥装置は、搬送機構20とシャワー機構30と第1ブロー機構40とに加え、第2ブロー機構50又は温風送風機構60のいずれか一方のみを備えるものであってもよい。
【0070】
また、実施例1の物品乾燥装置1は、搬送機構20が複数の物品100を保持可能なホルダ21と、ローラコンベア22とを有する例が示された。しかしながら、搬送機構20は、物品100の開口部103を下向きに保持した状態で所定の搬送方向に搬送することができればよいので、実施例1の形態に限らない。例えば、搬送機構20は、物品100の開口部103を下向きにした状態で吸着コンベアによって吸着して吊り下げるものであってもよい。
【0071】
さらに、実施例1の物品乾燥装置1では、噴水ノズル32や第1エアノズル43、第2エアノズル53が固定され、搬送機構20によってホルダ21ごと物品100を移動させて搬送させる例が示された。しかしながら、物品100の搬送はこれに限らない。例えば、搬送機構20は、物品100を所定の位置に保持するホルダと、ホルダに対して噴水ノズル32、第1エアノズル43、第2エアノズル53を所定の方向に移動させる移動機構とを有するものであってもよい。つまり、搬送機構20は、物品100と各ノズルとを相対的に移動させて、物品100を所定の搬送方向に搬送するものであればよい。
【0072】
また、実施例1の物品乾燥装置1では、搬送機構20が、第1エアノズル43の上方の一定区間で物品100を搬送方向に沿って進退移動させ、筒状空間部101に対して、第1エアノズル43から噴射された空気を複数回吹き付ける例が示された。しかしながら、物品乾燥装置1の構造はこれに限らない。例えば、複数の第1エアノズル43を物品100の搬送方向に沿って配置し、搬送機構20により、複数の第1エアノズル43の上方を一定の速度で搬送してもよい。この場合であっても、物品100の開口部103に向かって、物品100の下方から空気を複数回吹き付けることができる。これにより、搬送機構20は、第1エアノズル43の上方の一定区間で物品100を進退移動させる必要がないため、スループットの向上を図ることができる。
【0073】
また、実施例1の物品乾燥装置1では、温風室15が、複数のホルダ21を搬入可能な大きさを有していてもよい。ここで、物品100に付着していた液体を蒸発させるため、エア吹出口61から送風される温風を物品100に所定時間吹き付ける必要がある。このため、温風室15に複数のホルダ21を搬入可能とすることで、物品乾燥装置1は、温風室15の手前でホルダ21を待機させることなく、温風室15へホルダ21を搬入することが可能となる。このため、物品乾燥装置1は、スループットの向上を図ることができる。
【0074】
なお、実施例1の物品乾燥装置1では、温風室15内で物品100の移動を停止し、所定時間待機させて物品100に温風が当てられる例が示された。しかしながら、物品乾燥装置1は、エア吹出口61から送風される温風を物品100に所定時間吹き付けて、液体を蒸発できればよい。そのため、物品乾燥装置1は、温風室15内での物品100の移動を停止させず、温風を物品100にあてながら所定時間をかけて温風室15を通過させてもよい。
【0075】
また、実施例1の物品乾燥装置1では、噴水ノズル32から噴射される液体を「純水」とし、第1エアノズル43及び第2エアノズル53から噴射される気体を「空気」とする例が示された。しかしながら、液体や気体の種類はこれらに限らず、任意の液体や任意の気体を噴射してもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 物品乾燥装置
20 搬送機構
30 シャワー機構
32 噴水ノズル
40 第1ブロー機構(ブロー機構)
43 第1エアノズル(エアノズル)
100 物品
101 筒状空間部
102 底部
103 開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7