(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110351
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】運行支援装置、システム、プログラム、及び運行支援方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20240807BHJP
G08G 1/0965 20060101ALI20240807BHJP
G06Q 50/40 20240101ALI20240807BHJP
【FI】
G08G1/00 D
G08G1/0965
G06Q50/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014902
(22)【出願日】2023-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100187078
【弁理士】
【氏名又は名称】甲原 秀俊
(74)【代理人】
【識別番号】100217113
【弁理士】
【氏名又は名称】高坂 晶子
(72)【発明者】
【氏名】長田 祐
(72)【発明者】
【氏名】宇野 慶一
【テーマコード(参考)】
5H181
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181AA12
5H181BB04
5H181BB15
5H181CC04
5H181FF03
5H181FF10
5H181FF13
5H181MA43
5L049CC42
5L050CC42
(57)【要約】
【課題】車両の運行ダイヤに乱れが生じにくくする。
【解決手段】運行支援装置20は、車両30を自動運転により運行させる。運行支援装置20は、車両30の通過が予定されている経路を構成する複数のリンクについて、緊急車両の出現履歴をリンクごとに示す出現データを取得し、取得された出現データに基づいて、前記車両の走行中における緊急車両の出現数をリンクごとに予測し、予測された結果に応じて前記車両の運行計画を調整する制御部を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を自動運転により運行させる運行支援装置であって、
前記車両の通過が予定されている経路を構成する複数のリンクについて、緊急車両の出現履歴をリンクごとに示す出現データを取得し、取得された出現データに基づいて、前記車両の走行中における緊急車両の出現数をリンクごとに予測し、予測された結果に応じて前記車両の運行計画を調整する制御部を備える運行支援装置。
【請求項2】
前記緊急車両は走行する車線があらかじめ定められており、
前記制御部は、前記複数のリンクのうち、前記出現数が閾値以上であるリンクを特定し、特定されたリンクにおける前記車両の走行車線を、前記緊急車両が走行する車線とは異なる車線に設定することにより前記運行計画を調整する、請求項1に記載の運行支援装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記複数のリンクのうち、前記出現数が閾値以上であるリンクを特定し、特定されたリンクが結ぶ第1のノードから第2のノードまでの予定所要時間を長くすることにより前記運行計画を調整する、請求項1に記載の運行支援装置。
【請求項4】
前記複数のリンクは、同じノードを結ぶ1つ以上の候補リンクを含み、
前記制御部は、前記候補リンクについて、候補リンクごとの前記出現数を比較し、前記出現数が最も少ないリンクを前記車両の運行経路を構成するリンクとして選択することにより前記運行計画を調整する、請求項1に記載の運行支援装置。
【請求項5】
前記複数のリンクは、同じノードを結ぶ1つ以上の候補リンクを含み、
前記制御部は、前記車両の運行が開始された後に、前記車両に接近中の緊急車両があるかどうかを判定し、接近中の緊急車両があると判定された場合に、前記複数のリンクのうち、前記緊急車両と前記車両とが遭遇することが予測されるリンクを第1リンクとして特定し、特定された第1リンクが結ぶ2つのノードと同じノードを結ぶ1つ以上の候補リンクのうち、前記第1リンクとは異なる候補リンクのいずれかを前記車両の運行経路を構成する第2リンクとして選択することにより前記運行計画を調整する、請求項1に記載の運行支援装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1リンクとは異なる候補リンクについて、候補リンクごとの前記出現数を比較し、前記出現数が最も少ないリンクを前記第2リンクとして選択する、請求項5に記載の運行支援装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記候補リンクについて、候補リンクごとのロスタイムを比較し、ロスタイムが最も少ないリンクを前記第2リンクとして選択する、請求項5に記載の運行支援装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記車両が運行されるときの環境条件を示す環境データを更に取得し、取得された環境データに更に基づいて前記出現数を予測する、請求項1に記載の運行支援装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記出現データで示される緊急車両の出現履歴に、前記環境データで示される環境条件に応じて重み付けを行うことにより、前記出現数を予測する、請求項8に記載の運行支援装置。
【請求項10】
請求項1に記載の運行支援装置と、
前記運行支援装置から前記運行計画を受信し、受信された運行計画に従って走行を行う車両と
を備えるシステム。
【請求項11】
車両を自動運転により運行させる運行支援装置として機能するコンピュータに、
前記車両の通過が予定されている経路を構成する複数のリンクについて、緊急車両の出現履歴をリンクごとに示す出現データを取得することと、
取得された出現データに基づいて、前記車両の走行中における緊急車両の出現数をリンクごとに予測することと、
予測された結果に応じて前記車両の運行計画を調整することと
を含む動作を実行させるプログラム。
【請求項12】
前記緊急車両は走行する車線があらかじめ定められており、
前記調整することは、前記複数のリンクのうち、前記出現数が閾値以上であるリンクを特定し、特定されたリンクにおける前記車両の走行車線を、前記緊急車両が走行する車線とは異なる車線に設定することを含む、請求項11に記載のプログラム。
【請求項13】
前記調整することは、前記複数のリンクのうち、前記出現数が閾値以上であるリンクを特定し、特定されたリンクが結ぶ第1のノードから第2のノードまでの予定所要時間を長くすることを含む、請求項11に記載のプログラム。
【請求項14】
前記複数のリンクは、同じノードを結ぶ1つ以上の候補リンクを含み、
前記調整することは、前記候補リンクについて、候補リンクごとの前記出現数を比較し、前記出現数が最も少ないリンクを前記車両の運行経路を構成するリンクとして選択することを含む、請求項11に記載のプログラム。
【請求項15】
前記複数のリンクは、同じノードを結ぶ1つ以上の候補リンクを含み、
前記調整することは、前記車両の運行が開始された後に、前記車両に接近中の緊急車両があるかどうかを判定し、接近中の緊急車両があると判定された場合に、前記複数のリンクのうち、前記緊急車両と前記車両とが遭遇することが予測されるリンクを第1リンクとして特定し、特定された第1リンクが結ぶ2つのノードと同じノードを結ぶ1つ以上の候補リンクのうち、前記第1リンクとは異なる候補リンクのいずれかを前記車両の運行経路を構成する第2リンクとして選択することを含む、請求項11に記載のプログラム。
【請求項16】
前記動作は、
前記車両が運行されるときの環境条件を示す環境データを更に取得することと、
取得された環境データに更に基づいて前記出現数を予測することと
を更に含む、請求項11に記載のプログラム。
【請求項17】
車両を自動運転により運行させる運行支援方法であって、
制御部により、前記車両の通過が予定されている経路を構成する複数のリンクについて、緊急車両の出現履歴をリンクごとに示す出現データを取得することと、
前記制御部により、取得された出現データに基づいて、前記車両の走行中における緊急車両の出現数をリンクごとに予測することと、
前記制御部により、予測された結果に応じて前記車両の運行計画を調整することと
を含む運行支援方法。
【請求項18】
前記緊急車両は走行する車線があらかじめ定められており、
前記調整することは、前記制御部により、前記複数のリンクのうち、前記出現数が閾値以上であるリンクを特定し、特定されたリンクにおける前記車両の走行車線を、前記緊急車両が走行する車線とは異なる車線に設定することを含む、請求項17に記載の運行支援方法。
【請求項19】
前記調整することは、前記制御部により、前記複数のリンクのうち、前記出現数が閾値以上であるリンクを特定し、特定されたリンクが結ぶ第1のノードから第2のノードまでの予定所要時間を長くすることを含む、請求項17に記載の運行支援方法。
【請求項20】
前記複数のリンクは、同じノードを結ぶ1つ以上の候補リンクを含み、
前記調整することは、前記車両の運行が開始された後に、前記制御部により、前記車両に接近中の緊急車両があるかどうかを判定し、接近中の緊急車両があると判定された場合に、前記複数のリンクのうち、前記緊急車両と前記車両とが遭遇することが予測されるリンクを第1リンクとして特定し、特定された第1リンクが結ぶ2つのノードと同じノードを結ぶ1つ以上の候補リンクのうち、前記第1リンクとは異なる候補リンクのいずれかを前記車両の運行経路を構成する第2リンクとして選択することを含む、請求項17に記載の運行支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、運行支援装置、システム、プログラム、及び運行支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両から路上障害の画像を取得し、路上障害の画像に基づいて路上障害の解消の指示を出力する運行管理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
定期運行バスなどの車両が緊急車両と遭遇した場合、緊急車両の走行を優先させると車両の運行ダイヤに乱れが生じる場合がある。
【0005】
本開示の目的は、車両の運行ダイヤに乱れが生じにくくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る運行支援装置は、
車両を自動運転により運行させる運行支援装置であって、
前記車両の通過が予定されている経路を構成する複数のリンクについて、緊急車両の出現履歴をリンクごとに示す出現データを取得し、取得された出現データに基づいて、前記車両の走行中における緊急車両の出現数をリンクごとに予測し、予測された結果に応じて前記車両の運行計画を調整する制御部を備える。
【0007】
本開示に係るプログラムは、
車両を自動運転により運行させる運行支援装置として機能するコンピュータに、
前記車両の通過が予定されている経路を構成する複数のリンクについて、緊急車両の出現履歴をリンクごとに示す出現データを取得することと、
取得された出現データに基づいて、前記車両の走行中における緊急車両の出現数をリンクごとに予測することと、
予測された結果に応じて前記車両の運行計画を調整することと
を含む動作を実行させる。
【0008】
本開示に係る運行支援方法は、
車両を自動運転により運行させる運行支援方法であって、
制御部により、前記車両の通過が予定されている経路を構成する複数のリンクについて、緊急車両の出現履歴をリンクごとに示す出現データを取得することと、
前記制御部により、取得された出現データに基づいて、前記車両の走行中における緊急車両の出現数をリンクごとに予測することと、
前記制御部により、予測された結果に応じて前記車両の運行計画を調整することと
を含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、車両の運行ダイヤに乱れが生じにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の実施形態に係るシステムの構成を示す図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る運行支援装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】本開示の実施形態に係る運行支援装置の動作を示すフローチャートである。
【
図4】本開示の実施形態に係る運行支援装置の別の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の一実施形態について、図を参照して説明する。
【0012】
各図中、同一又は相当する部分には、同一符号を付している。本実施形態の説明において、同一又は相当する部分については、説明を適宜省略又は簡略化する。
【0013】
図1を参照して、本実施形態に係るシステム10の構成を説明する。
【0014】
本実施形態に係るシステム10は、運行支援装置20と、1台以上の車両30とを備える。システム10は、例えばMaaSなどのモビリティサービスの提供に用いられる。「MaaS」は、Mobility-as-a-Serviceの略語である。
【0015】
運行支援装置20は、インターネットなどのネットワーク40を介して車両30と通信可能である。
【0016】
運行支援装置20は、データセンタなどの施設に設置され、システム10を管理する運行支援者によって運用される。運行支援装置20は、例えば、クラウドコンピューティングシステム又はその他のコンピューティングシステムに属するサーバなどのコンピュータである。運行支援装置20はシステム10の管理室に設置され、運行支援者によって利用されてもよい。あるいは、管理室に設置された運行支援装置20が、2人以上の運行支援者によって共用されてもよい。本実施形態において、運行支援装置20は、運行計画PLにしたがって車両30を自動運転により運行させる。
【0017】
車両30は、例えば、ガソリン車、ディーゼル車、水素車、HEV、PHEV、BEV、又はFCEVなどの任意の種類の自動車である。「HEV」は、hybrid electric vehicleの略語である。「PHEV」は、plug-in hybrid electric vehicleの略語である。「BEV」は、battery electric vehicleの略語である。「FCEV」は、fuel cell electric vehicleの略語である。車両30は、本実施形態ではMaaS専用車両であるが、任意のレベルで運転が自動化されたAVであってもよい。「AV」は、autonomous vehicleの略語である。自動化のレベルは、例えば、SAEのレベル分けにおけるレベル1からレベル5のいずれかである。「SAE」は、Society of Automotive Engineersの略語である。
【0018】
ネットワーク40は、インターネット、少なくとも1つのWAN、少なくとも1つのMAN、又はこれらの組合せを含む。「WAN」は、wide area networkの略語である。「MAN」は、metropolitan area networkの略語である。ネットワーク40は、少なくとも1つの無線ネットワーク、少なくとも1つの光ネットワーク、又はこれらの組合せを含んでもよい。無線ネットワークは、例えば、アドホックネットワーク、セルラーネットワーク、無線LAN、衛星通信ネットワーク、又は地上マイクロ波ネットワークである。「LAN」は、local area networkの略語である。
【0019】
【0020】
システム10において、運行支援装置20は、モビリティサービスプラットフォームとして機能する。概要として、運行支援装置20は、車両30の運行計画PLを決定し、決定された運行計画PLにしたがって車両30を自動運転により運行させる。
【0021】
車両30は、本実施形態では、1人以上の乗客を輸送するバスである。車両30は、運行支援装置20からの運行計画PLにしたがって自動運転走行する定期運行バスとして運行される。車両30の通過が予定されている経路R1は複数のリンクで構成される。例えば、経路R1を構成する複数のリンクは、車両30の出発地と目的地とをノードするリンクを含む。出発地と目的地とをノードするリンクは1つに限られず、複数のリンクを含んでよい。また、車両30の経由地をノードとしてもよい。車両30の経由地は、例えば停留所である。
【0022】
本実施形態において、車両30には情報処理装置が搭載されている。情報処理装置は、例えば自動運転制御ソフトウェアがインストールされたコンピュータ、並びにカメラ及びライダー等のセンサを搭載可能な機器であるが、これに限られず任意の装置であってもよい。情報処理装置は、例えば、車両30のルーフトップ等、車両30の任意の部位に搭載される。情報処理装置は、運行支援装置20からの指令に基づいて車両制御を行う。例えば、情報処理装置には、運行支援装置20から車両30の運行計画PLを示す情報が送信される。情報処理装置は、送信された運行計画PLに基づいて、車両30の動作を制御する。その結果、車両30が当該運行計画PLにしたがって走行される。運行計画PLには、例えば、車両30の運行経路R2を示す情報、各リンクにおける車両30が走行する車線を示す情報、ノード間の予定所要時間をリンクごとに示す情報、及び車両30の各ノードにおける待機時間を示す情報等が含まれる。情報処理装置は、車両30の位置データ、又は車両30が停車した停留所名若しくは車両30の発着状態を示すデータを取得し、取得された情報を運行ステータスデータとして、運行支援装置20に送信してもよい。あるいは、情報処理装置は、車両30の周囲の状況を示すデータを取得し、取得されたデータを、周囲データd1として運行支援装置20に送信してもよい。周囲データd1については後述する。
【0023】
車両30が自動運転により走行中に、例えば救急車などの緊急車両と遭遇する場合がある。緊急車両を優先させることは、日本の道路交通法で定められたルールであり、自動運転車両であっても対応しなくてはならない。緊急自動車と遭遇した際の自動運転による回避制御の例としては、緊急車両との距離を取って一時停止する、ハザードをたく、又は交差点に入らない等の方法がある。しかしながら、自動運転車両においてこのような回避制御を行うことは、処理が煩雑となり、演算に電力が多くかかる等のデメリットがある。また、車両30が緊急車両に遭遇した場合、上述したような回避制御に時間がかかり、車両30の運行ダイヤに乱れが生じる場合がある。さらに、例えば、道路が渋滞している場合、又は雨天の場合等、環境条件によっては、緊急車両を回避するための制御は更に複雑になると考えられる。したがって、車両30の運行ダイヤに乱れが生じにくくするためには、緊急車両になるべく遭遇しないような運行計画PLを立てることが望ましい。
【0024】
本実施形態において、「緊急車両」には、公共の緊急自動車及び民間の緊急自動車が含まれる。公共の緊急自動車は、例えば、警察車両、消防車両、救急車両、皇宮警察車両、自衛隊の警務車両、化学防護車両、及び高速道路の道路パトロール車両等である。民間の緊急自動車は、例えば、電力会社、ガス会社、又は水道会社の緊急作業車両、レッカー車両、及び病院のドクターカー等である。「緊急車両」には、赤十字血液センタ又は製薬会社の輸血又は臓器の搬送車両等が含まれてもよい。
【0025】
本実施形態において、運行支援装置20は、車両30を自動運転により運行させる。運行支援装置20は、車両30の通過が予定されている経路R1を構成する複数のリンクについて、緊急車両の出現履歴をリンクごとに示す出現データD1を取得する。運行支援装置20は、取得された出現データD1に基づいて、車両30の走行中における緊急車両の出現数Nをリンクごとに予測する。運行支援装置20は、予測された結果に応じて車両30の運行計画PLを調整する。
【0026】
本実施形態によれば、車両30の走行中における緊急車両の出現数Nをリンクごとに予測した結果に応じて車両30の運行計画PLが調整される。例えば、出現数Nが閾値TH以上であるリンクを特定し、特定されたリンクでは車両30の走行車線X1を緊急車両の走行車線X2と異なる車線に設定することにより、車両30が緊急自動車に遭遇する確率を低くすることができる。これは、車両30が緊急自動車に遭遇しなければ、車両30の運行中に緊急車両を回避する制御にかかる時間と手間が軽減されるので、車両30の運行ダイヤに乱れが生じにくくなると考えられるからである。また、出現数Nが閾値TH以上であるリンクを特定し、特定されたリンクでは結ぶ第1のノードN1から第2のノードN2までの予定所要時間を長くすることにより、仮に車両30が緊急自動車に遭遇して回避制御に時間がかかっても、車両30の運行ダイヤに乱れが生じにくくなる。あるいは、同じノードを結ぶ1つ以上の候補リンクがある場合に、候補リンクのうち出現数Nが最も少ないリンクを車両30の運行経路R2を構成するリンクとして選択することにより、車両30が緊急自動車に遭遇する確率を低くしてもよい。このように、車両30の走行中における緊急車両の出現数Nをリンクごとに予測した結果に応じて車両30の運行計画PLを調整することで、車両30の運行ダイヤに乱れが生じにくくすることができる。
【0027】
図2を参照して、本実施形態に係る運行支援装置20の構成を説明する。
【0028】
運行支援装置20は、制御部21と、記憶部22と、通信部23とを備える。
【0029】
制御部21は、少なくとも1つのプロセッサ、少なくとも1つのプログラマブル回路、少なくとも1つの専用回路、又はこれらの任意の組合せを含む。プロセッサは、CPU若しくはGPUなどの汎用プロセッサ、又は特定の処理に特化した専用プロセッサである。「CPU」は、central processing unitの略語である。「GPU」は、graphics processing unitの略語である。プログラマブル回路は、例えば、FPGAである。「FPGA」は、field-programmable gate arrayの略語である。専用回路は、例えば、ASICである。「ASIC」は、application specific integrated circuitの略語である。制御部21は、運行支援装置20の各部を制御しながら、運行支援装置20の動作に関わる処理を実行する。
【0030】
記憶部22は、少なくとも1つの半導体メモリ、少なくとも1つの磁気メモリ、少なくとも1つの光メモリ、又はこれらの任意の組合せを含む。半導体メモリは、例えば、RAM又はROMである。「RAM」は、random access memoryの略語である。「ROM」は、read only memoryの略語である。RAMは、例えば、SRAM又はDRAMである。「SRAM」は、static random access memoryの略語である。「DRAM」は、dynamic random access memoryの略語である。ROMは、例えば、EEPROMである。「EEPROM」は、electrically erasable programmable read only memoryの略語である。記憶部22は、例えば、主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能する。記憶部22には、運行支援装置20の動作に用いられるデータと、運行支援装置20の動作によって得られたデータとが記憶される。本実施形態において、記憶部22には、例えば、出現データD1が記憶されている。出現データD1は、車両30の通過が予定されている経路R1を構成する複数のリンクについて、緊急車両の出現履歴をリンクごとに示すデータである。記憶部22には、例えば、環境データD2が更に記憶されていてもよい。環境データD2は、車両30の走行が予定されている経路R1を構成する複数のリンクの少なくともいずれかにおいて発生しうる環境条件を示すデータである。
【0031】
通信部23は、少なくとも1つの通信用インタフェースを含む。通信用インタフェースは、例えば、LANインタフェースである。通信部23は、運行支援装置20の動作に用いられるデータを受信し、また運行支援装置20の動作によって得られるデータを送信する。本実施形態において、通信部23は、車両30と通信を行う。
【0032】
運行支援装置20の機能は、本実施形態に係るプログラムを、制御部21としてのプロセッサで実行することにより実現される。すなわち、運行支援装置20の機能は、ソフトウェアにより実現される。プログラムは、運行支援装置20の動作をコンピュータに実行させることで、コンピュータを運行支援装置20として機能させる。すなわち、コンピュータは、プログラムに従って運行支援装置20の動作を実行することにより運行支援装置20として機能する。
【0033】
プログラムは、非一時的なコンピュータ読取り可能な媒体に記憶しておくことができる。非一時的なコンピュータ読取り可能な媒体は、例えば、フラッシュメモリ、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、又はROMである。プログラムの流通は、例えば、プログラムを記憶したSDカード、DVD、又はCD-ROMなどの可搬型媒体を販売、譲渡、又は貸与することによって行う。「SD」は、Secure Digitalの略語である。「DVD」は、digital versatile discの略語である。「CD-ROM」は、compact disc read only memoryの略語である。プログラムをサーバのストレージに格納しておき、サーバから他のコンピュータにプログラムを転送することにより、プログラムを流通させてもよい。プログラムをプログラムプロダクトとして提供してもよい。
【0034】
コンピュータは、例えば、可搬型媒体に記憶されたプログラム又はサーバから転送されたプログラムを、一旦、主記憶装置に格納する。そして、コンピュータは、主記憶装置に格納されたプログラムをプロセッサで読み取り、読み取ったプログラムに従った処理をプロセッサで実行する。コンピュータは、可搬型媒体から直接プログラムを読み取り、プログラムに従った処理を実行してもよい。コンピュータは、コンピュータにサーバからプログラムが転送される度に、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行してもよい。サーバからコンピュータへのプログラムの転送は行わず、実行指示及び結果取得のみによって機能を実現する、いわゆるASP型のサービスによって処理を実行してもよい。「ASP」は、application service providerの略語である。プログラムは、電子計算機による処理の用に供する情報であってプログラムに準ずるものを含む。例えば、コンピュータに対する直接の指令ではないがコンピュータの処理を規定する性質を有するデータは、「プログラムに準ずるもの」に該当する。
【0035】
運行支援装置20の一部又は全ての機能が、制御部21としてのプログラマブル回路又は専用回路により実現されてもよい。すなわち、運行支援装置20の一部又は全ての機能が、ハードウェアにより実現されてもよい。
【0036】
図3及び
図4を参照して、本実施形態に係る運行支援装置20の動作を説明する。この動作は、本実施形態に係る運行支援方法に相当する。
【0037】
図3のステップS1において、運行支援装置20の制御部21は、車両30の通過が予定されている経路R1を構成する複数のリンクについて、緊急車両の出現履歴をリンクごとに示す出現データD1を取得する。本実施形態において、緊急車両の出現履歴とは、単位期間当たりにおいて、緊急車両が各リンクを通過した回数による履歴のことである。単位期間は、例えば、1日、1週間、又は1か月など、任意に定めることができる。出現履歴には、緊急車両の出現した日付及び時刻等の情報が含まれてもよい。出現データD1は任意の手順で取得されてよいが、例えば次のような手順で取得される。例えば、緊急車両が公共の緊急自動車である場合、制御部21は、記憶部22にあらかじめ記憶された出現データD1を取得する。出現データD1は、例えば、日本の総務省消防庁管轄から提供される実績報告データである。実績報告データは、ネットワーク40に接続されている他の装置から提供されてもよい。制御部21は、自治体の道路監視管理カメラにより撮影された画像を解析して緊急車両の通過を検知し、検知された回数を示すデータを出現データD1として取得してもよい。あるいは、制御部21は、運行支援装置20の管理下にある車両VHに搭載されたドライブレコーダの映像を解析することにより緊急車両の通過を検知してもよい。車両VHには、車両30が含まれてよい。制御部21は、各車両VHに搭載された撮像センサなどに検知された画像を解析することにより緊急車両の通過を検知してもよい。制御部21は、車両30の運行実績を示す運行管理データd2を取得し、取得された運行管理データd2で示される車両30の遅延状況に基づいて緊急車両の通過を検知してもよい。
【0038】
図3のステップS2において、運行支援装置20の制御部21は、ステップS1で取得された出現データD1に基づいて、車両30の走行中における緊急車両の出現数Nをリンクごとに予測する。各リンクにおける出現数Nは任意の手順で予測されてよい。例えば、制御部21は、出現データD1で示されるリンクごとの緊急車両の出現履歴を統計処理することにより、出現数Nをリンクごとに予測する。制御部21は、予測された出現数Nを各リンクに紐づける。具体的には、制御部21は、予測された出現数Nをリンクごとにプロットする。出現履歴に緊急車両の出現した日付及び時刻等の情報が含まれている場合、制御部21は、車両30の走行が予定されている日時を判定し、判定された日時に対応する緊急車両の出現履歴を統計処理することによりリンクごとの出現数Nを予測してもよい。
【0039】
図3のステップS3において、運行支援装置20の制御部21は、ステップS2で予測された結果に応じて車両30の運行計画PLを調整する。具体的には、制御部21は、運行計画PLを調整する第1の手順として、複数のリンクのうち、出現数Nが閾値TH以上であるリンクを特定し、特定されたリンクにおける車両30の走行車線X1を、緊急車両の走行車線X2とは異なる車線に設定することにより運行計画PLを調整する。例えば、緊急車両の走行車線X2はあらかじめ定められているものとする。一例として、特定されたリンクが第1車線及び第2車線を含み、第1車線が緊急車両の走行車線X2として定められている場合、制御部21は、特定されたリンクにおける第2車線を車両30の走行車線X1として設定する。閾値THは任意の値とすることができるが、例えば、単位期間当たりのリンクごとの出現数Nの平均値とすることができる。かかる構成によれば、車両30が緊急自動車に遭遇する確率を低くすることができる。よって、車両30の運行中に緊急車両を回避する制御にかかる時間と手間が軽減されるので、車両30の運行ダイヤに乱れが生じにくくなる。
【0040】
図3のステップS3において運行計画PLを調整する第2の手順として、運行支援装置20の制御部21は、特定されたリンクが結ぶ第1のノードN1から第2のノードN2までの予定所要時間を長くしてもよい。一例として、第1のノードN1が車両30の出発地であり、第2のノードN2が車両30の目的地であるとする。また、特定されたリンクの長さ、すなわち、第1のノードN1から第2のノードN2までの距離がYであり、車両30の出発地の出発時刻がT1である場合に、制御部21は、目的地への到着時刻T2を遅らせることにより予定所要時間を長くする。具体的には、制御部21は、距離Yと車両30の標準的走行速度とに基づいて車両30が第2のノードN2に到着すると予測される時刻を算出し、算出された時刻よりも遅い時刻を、到着時刻T2として設定する。第1のノードN1が車両30の出発地であり、第2のノードN2が車両30の経由地としての停留所である場合、制御部21は、第2のノードN2での車両30の待機時間を、あらかじめ定められた標準的な待機時間よりも長くすることにより、予定所要時間を長くしてもよい。あるいは、第1のノードN1が車両30の停留所であり、第2のノードN2が車両30の目的地である場合、制御部21は、第1のノードN1での車両30の待機時間を、あらかじめ定められた標準的な待機時間よりも長くすることにより、予定所要時間を長くしてもよい。このようにノード間の予定所要時間を長くすることで、仮に車両30が緊急自動車に遭遇して回避制御に時間がかかったことによる遅れを相殺することができる。よって、車両30の運行ダイヤに乱れが生じにくくなる。
【0041】
図3のステップS3において運行計画PLを調整する第3の手順として、運行支援装置20の制御部21は、複数のリンクのうち、同じノードを結ぶ1つ以上の候補リンクについて、候補リンクごとの出現数Nを比較し、出現数Nが最も少ないリンクを車両30の運行経路R2を構成するリンクとして選択してもよい。かかる構成によれば、車両30が緊急自動車に遭遇する確率を低くすることができる。よって、車両30の運行中に緊急車両を回避する制御にかかる時間と手間が軽減されるので、車両30の運行ダイヤに乱れが生じにくくなる。
【0042】
本実施形態の一変形例として、閾値THを、例えば、小さい順に第1閾値TH1、第2閾値TH2・・・と段階的に設け、段階ごとに運行計画PLの調整手順を異ならせてもよい。具体的には、
図3のステップS3において、制御部21は、出現数Nが第1閾値TH1以上であるリンクを特定し、出現数Nが第2閾値TH2以上であるリンクを更に特定してもよい。そして、制御部21は、出現数Nが第1閾値TH1以上であるリンクについては、上述した第1の手順を行い、出現数Nが第2閾値TH2以上であるリンクについては、上述した第1の手順に加えて第2の手順を更に行うようにしてもよい。
【0043】
図3のステップS4において、運行支援装置20の制御部21は、ステップS3において調整された運行計画PLを車両30に通知する。具体的には、制御部21は、運行計画PLを示すデータを、通信部23を介して車両30に搭載された情報処理装置に送信する。情報処理装置は、送信されたデータで示される運行計画PLにしたがって車両30を運行させる。
【0044】
以上述べたように、本実施形態に係る運行支援装置20は、車両30を自動運転により運行させる。運行支援装置20は、車両30の通過が予定されている経路R1を構成する複数のリンクについて、緊急車両の出現履歴をリンクごとに示す出現データD1を取得する。運行支援装置20は、取得された出現データD1に基づいて、車両30の走行中における緊急車両の出現数Nをリンクごとに予測する。運行支援装置20は、予測された結果に応じて車両30の運行計画PLを調整する。
【0045】
かかる構成によれば、車両30の運行中に予想される緊急車両の出現数Nに基づいて、車両30の運行計画PLが調整される。その結果、車両30の運行ダイヤに乱れが生じにくくなる。
【0046】
上述した実施形態の一変形例として、運行支援装置20の制御部21は、車両30の運行が開始された後に、車両30に接近中の緊急車両があるかどうかを判定してもよい。そして、制御部21は、接近中の緊急車両があると判定された場合に、複数のリンクのうち、緊急車両と車両30とが遭遇することが予測されるリンクを第1リンクL1として特定し、特定された第1リンクL1が結ぶノードと同じノードを結ぶ1つ以上の候補リンクCLのうち、前記第1リンクL1とは異なる候補リンクCL’のいずれかを車両30の運行経路R2’を構成する第2リンクL2として選択することにより、運行計画PLを更に調整してもよい。具体的には、運行支援装置20の制御部21は、車両30の運行が開始された後に、
図3のステップS3における運行計画PLを調整する処理として、
図4のステップS31からステップS34の処理を更に行ってもよい。
【0047】
図4のステップS31において、運行支援装置20の制御部21は、車両30の運行が開始されたことを検知すると、車両30の周囲の状況を示す周囲データd1を取得する。本実施形態において、車両30の周囲とは、車両30から一定の距離Sの範囲内の領域を指す。距離Sは、車両30の周囲に緊急車両が存在する場合に、当該緊急車両がQ分以内に車両30まで到達可能な範囲で、任意に定められてよい。周囲データd1は任意の手順で取得されてよい。例えば、運行支援装置20の制御部21は、情報処理装置により送信された周囲データd1を通信部23を介して受信し、受信された周囲データd1を取得する。あるいは、運行支援装置20の制御部21は、運行支援装置20の管理下にある任意の複数の車両VHと通信部23を介して通信を行い、各車両VHに搭載された撮像センサなどに検知された画像を受信し、受信された画像を周囲データd1として取得してもよい。複数の車両VHには車両30が含まれてよい。制御部21は、車両VHに搭載されたドライブレコーダの映像を受信し、受信された映像を周囲データd1として取得してもよい。
【0048】
図4のステップS32において、運行支援装置20の制御部21は、車両30に接近中の緊急車両があるかどうかを判定する。制御部21は、ステップS31で周囲データd1を解析することにより、車両30に接近中の緊急車両があるかどうかを判定する。ステップS32において、車両30に接近中の緊急車両があると判定された場合にはステップS33の処理が行われる。ステップS32において、車両30に接近中の緊急車両がないと判定された場合にはステップS31に戻って再度処理が行われる。
【0049】
図4のステップS33において、運行支援装置20の制御部21は、複数のリンクのうち、ステップS32で検知された緊急車両と車両30とが遭遇することが予測されるリンクを第1リンクL1として特定する。具体的には、制御部21は、緊急自動車の位置及び走行方向を検知する。緊急自動車の位置及び走行方向は任意の手順で検知されてよいが、例えば、制御部21は、複数の車両VHに搭載されたドライブレコーダのトランスログ、路側機、又は定点カメラで撮影された画像に基づいて緊急自動車の位置及び走行方向を検知する。制御部21は、検知された緊急自動車の位置及び走行方向に基づいて緊急自動車の予想ルートr1を判定し、判定された予想ルートr1と重なるリンクを第1リンクL1として特定する。制御部21は、更に、緊急車両と車両30とが遭遇する地点と時刻を予測してもよい。
【0050】
図4のステップS34において、運行支援装置20の制御部21は、ステップS33において特定された第1リンクL1が結ぶノードと同じノードを結ぶ1つ以上の候補リンクCLのうち、第1リンクL1とは異なる候補リンクCL’のいずれかを、車両30の運行経路R2’を構成する第2リンクL2として選択する。一例として、第1リンクL1が結ぶノードが、車両30の運行経路R2’における第1の停留所及び第2の停留所であるとする。制御部21は、第1の停留所及び第2の停留所を結ぶリンクであって、第1リンクL1とは別の1つ以上のリンクである候補リンクCL’について、候補リンクCL’ごとの出現数Nを比較する。制御部21は、候補リンクCL’のうち、出現数Nが最も少ないリンクを第2リンクL2として選択する。あるいは、制御部21は、候補リンクCL’について、候補リンクCL’ごとのロスタイムを比較し、ロスタイムが最も少ないリンクを第2リンクL2として選択してもよい。候補リンクCL’ごとのロスタイムは任意の手順で算出することができるが、例えば、第1リンクL1についての予定所要時間と、候補リンクCL’ごとの予定所要時間との差分を求めることにより、算出することができる。
【0051】
上述のように、運行支援装置20の制御部21は、車両30の運行が開始された後に、車両30に接近中の緊急車両があるかどうかを判定する。制御部21は、接近中の緊急車両があると判定された場合に、車両30の走行が予定されている経路R1を構成する複数のリンクのうち、緊急車両と車両30とが遭遇することが予測されるリンクを第1リンクL1として特定する。制御部21は、特定された第1リンクL1が結ぶ2つのノードと同じノードを結ぶ1つ以上の候補リンクCLのうち、第1リンクL1とは異なる候補リンクCL’のいずれかを車両30の運行経路R2’を構成する第2リンクL2として選択することにより運行計画PLを調整する。
【0052】
かかる構成によれば、車両30が運行を開始した後に緊急車両が検知された場合であっても、当該緊急車両が通過するルートを予測し、予測されたルート以外のリンクを車両30の運行経路R2として選択することで、車両30の運行経路R2を運行経路R2’にリルートすることができる。よって、車両30が運行を開始した後であっても、車両30と緊急車両との遭遇を回避することができる。したがって、車両30の運行ダイヤに乱れが生じにくくなる。
【0053】
上述した変形例の別の例について説明する。上述した変形例において、第1リンクL1を第2リンクL2に変更することにより運行計画PLを調整した場合、第2リンクL2のロスタイムの分だけ第2の停留所への到着が遅れることになる。この場合、運行支援装置20の制御部21は、車両30の乗客に対して通知を行ってもよい。すなわち、制御部21は、運行計画PLを調整した結果、次のノードへの車両30の到着時刻が遅れる場合に、車両30の乗客に対して通知を行ってもよい。乗客に対する通知は任意の手順で行うことができる。例えば、制御部21は、次のノードへの到着の遅れを知らせる案内Gを車両30において出力させる制御を行う。案内Gには、音声による案内G1又は文字若しくは標識による案内G2が含まれる。案内Gは任意の手段で出力されてよいが、例えば、次のノードが第2の停留所である場合、制御部21は、案内Gとして、「次の停留所への到着が遅れます」というメッセージM1を作成し、作成されたメッセージM1を、通信部23を介して車両30に送信する。そして、車両30が備えるスピーカなどの出力装置に、案内GとしてのメッセージM1を音声で出力させる制御を行う。あるいは、制御部21は、車両30が備えるサイネージなどの出力装置に、案内Gとして、メッセージM1を文字で出力させる制御を行ってもよい。さらに、制御部21は、第2リンクL2のロスタイムに基づいて、第2の停留所への到着予定時刻を算出し、算出された到着予定時刻をメッセージM1とともに通知してもよい。あるいは、制御部21は、車両30の到着が遅れることを、第2の停留所で待機中の乗客に通知してもよい。具体的には、制御部21は、案内G’として、「バスの到着が遅れます」というメッセージM1’を作成し、作成されたメッセージM1’を停留所に設置されたサイネージなどの出力装置に表示させる制御を行ってもよい。
【0054】
上述した変形例の更に別の例について説明する。前提として、
図3のステップS3における第2の手順を行って、運行支援装置20の制御部21は、特定されたリンクが結ぶ第1のノードN1から第2のノードN2までの予定所要時間を長くすることにより運行計画PLを調整した場合、当該リンクには予定所要時間を長くした分がマージン時間として設定されていることになる。すなわち、
図3のステップS3における第2の手順によれば、各リンクにおける車両30の予定所要時間に、あらかじめ設定された猶予時間が「マージン時間」として設定される。上述した変形例において、第1リンクL1を第2リンクL2に変更することにより運行計画PLを調整した場合、第2リンクL2のロスタイムの分だけ第2の停留所への到着が遅れることになる。そこで、本例では、制御部21は、当該ロスタイムの分だけマージン時間を短縮することにより、遅れを相殺してもよい。そして、制御部21は、マージン時間を短縮してもロスタイムが相殺できない場合、車両30の乗客に対して通知を行ってもよい。制御部21は、ロスタイムとマージン時間とを比較して、ロスタイムがマージン時間を超える場合に、マージン時間を短縮してもロスタイムが相殺できないと判定する。
【0055】
本開示は上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、ブロック図に記載の2つ以上のブロックを統合してもよいし、又は1つのブロックを分割してもよい。フローチャートに記載の2つ以上のステップを記述に従って時系列に実行する代わりに、各ステップを実行する装置の処理能力に応じて、又は必要に応じて、並列的に又は異なる順序で実行してもよい。その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲での変更が可能である。
【0056】
例えば、上述した実施形態において、運行支援装置20の制御部21は、
図3のステップS1において、車両30が運行されるときの環境条件を示す環境データD2を更に取得し、
図3のステップS2において、ステップS1で取得された環境データD2に更に基づいて、出現数Nを予測してもよい。具体的には、制御部21は、出現データD1で示される緊急車両の出現履歴に、環境データD3で示される環境条件に応じて重み付けを行うことにより、出現数Nを予測してもよい。本実施形態において、「環境条件」には、例えば、イベントの発生、天候、又はラッシュアワーの時間帯等が含まれる。環境データD2は任意の手順で取得されてよいが、例えば、制御部21は、記憶部22にあらかじめ記憶された環境データD2を取得する。制御部21は、車両30の走行が予定されている地域の自治体により提供されたイベント開催予定を示すデータを環境データD2として取得してもよい。あるいは、制御部21は、例えば、日本の気象庁から提供される気象予報データであって、車両30の走行が予定されている日の天候を示す気象予報データを環境データD2として取得してもよい。あるいは、制御部21は、日本の気象庁から提供される気象予報データをもとに車両30の走行が予定されている日の天候を予測し、予想された天候を示すデータを環境データD2として取得してもよい。制御部21は、例えば、日本の道路情報を収集する道路交通センタから提供される交通情報をもとにラッシュアワーの時間帯を予測し、予測されたラッシュアワーの時間帯を示すデータを環境データD2として取得してもよい。環境データD2は、ネットワーク40に接続されている他の装置から提供されてもよい。
【0057】
運行支援装置20の制御部21は、出現データD1で示される緊急車両の出現履歴を統計処理することにより予測された出現数Nに対して、取得された環境データD2で示される環境条件に応じて重み付けを行う。例えば、環境データD2としてイベント開催予定を示すデータが取得された場合に、制御部21は、環境データD2で示されるイベント開催予定を参照し、イベント開催地の周辺のリンクについて予測された出現数Nが、当該リンクにおけるイベントが開催されない場合の値よりも大きい値となるように重み付けを行う。これは、イベントが開催される場合に、イベント開催地の周辺の道路は渋滞が予想される。そして、イベント開催に伴う緊急車両出動の増加が予想され、また、道路が渋滞している場合、緊急車両を回避するための制御は、道路が渋滞していない場合と比べて複雑になるために、緊急車両と遭遇した場合には回避制御に更に時間がかかり、車両30の運行ダイヤに乱れがより生じると考えられるため、通常時より十分な対応を準備する必要があるからである。同様に、環境データD2として天候を示すデータが取得された場合に、制御部21は、環境データD2を参照し、雨天などの悪天候が予想されているリンクについて予測された出現数Nが、当該リンクにおける悪天候でない場合の値よりも大きい値となるように重み付けを行う。また、制御部21は、環境データD2としてラッシュアワーの時間帯を示すデータが取得された場合に、制御部21は、環境データD2を参照し、車両30の通過時間がラッシュアワーの時間帯と重なるリンクについて予測された出現数Nに対して、当該リンクにおけるラッシュアワーの時間帯でない場合の値よりも大きい値となるように重み付けを行う。例えば悪天候及びラッシュアワー等の環境条件についても同様に通常時より十分な対応を準備することが望ましい。そして、制御部21は、重み付けにより得られた値を出現数N’として予測する。
【0058】
上述したように、運行支援装置20の制御部21は、車両30が運行されるときの環境条件を示す環境データD2を更に取得し、取得された環境データD2に更に基づいて出現数Nを予測する。
【0059】
かかる構成によれば、環境条件を加味してリンクごとの出現数N’が予測される。よって、より精度よく出現数Nを判定することができる。したがって、車両30の運行ダイヤに乱れが更に生じにくくなる。
【0060】
以下に本開示の実施形態の一部について例示する。しかしながら、本開示の実施形態はこれらに限定されない点に留意されたい。
[付記1]
車両を自動運転により運行させる運行支援装置であって、
車両の通過が予定されている経路を構成する複数のリンクについて、緊急車両の出現履歴をリンクごとに示す出現データを取得し、取得された出現データに基づいて、車両の走行中における緊急車両の出現数をリンクごとに予測し、予測された結果に応じて車両の運行計画を調整する制御部を備える運行支援装置。
[付記2]
緊急車両は走行する車線があらかじめ定められており、
制御部は、複数のリンクのうち、出現数が閾値以上であるリンクを特定し、特定されたリンクにおける車両の走行車線を、緊急車両が走行する車線とは異なる車線に設定することにより運行計画を調整する、付記1に記載の運行支援装置。
[付記3]
制御部は、複数のリンクのうち、出現数が閾値以上であるリンクを特定し、特定されたリンクが結ぶ第1のノードから第2のノードまでの予定所要時間を長くすることにより運行計画を調整する、付記1又は付記2に記載の運行支援装置。
[付記4]
複数のリンクは、同じノードを結ぶ1つ以上の候補リンクを含み、
制御部は、候補リンクについて、候補リンクごとの出現数を比較し、出現数が最も少ないリンクを車両の運行経路を構成するリンクとして選択することにより運行計画を調整する、付記1から付記3のいずれかに記載の運行支援装置。
[付記5]
複数のリンクは、同じノードを結ぶ1つ以上の候補リンクを含み、
制御部は、車両の運行が開始された後に、緊急車両の接近を示す緊急データが取得されると、取得された緊急データに基づいて、複数のリンクのうち、緊急データで示される緊急車両と車両とが遭遇することが予測されるリンクを第1リンクとして特定し、特定された第1リンクが結ぶノードと同じノードを結ぶ1つ以上の候補リンクのうち、第1リンクとは異なる候補リンクのいずれかを車両の運行経路を構成する第2リンクとして選択することにより運行計画を調整する、付記1から付記4のいずれかに記載の運行支援装置。
[付記6]
制御部は、第1リンクとは異なる候補リンクについて、候補リンクごとの出現数を比較し、出現数が最も少ないリンクを第2リンクとして選択する、付記1から付記5のいずれかに記載の運行支援装置。
[付記7]
制御部は、候補リンクについて、候補リンクごとのロスタイムを比較し、ロスタイムが最も少ないリンクを第2リンクとして選択する、付記1から付記6のいずれかに記載の運行支援装置。
[付記8]
制御部は、車両が運行されるときの環境条件を示す環境データを更に取得し、取得された環境データに更に基づいて出現数を予測する、付記1から付記7のいずれかに記載の運行支援装置。
[付記9]
制御部は、出現データで示される緊急車両の出現履歴に、環境データで示される環境条件に応じて重み付けを行うことにより、出現数を予測する、付記1から付記8のいずれかに記載の運行支援装置。
[付記10]
付記1から付記9のいずれかに記載の運行支援装置と、
運行支援装置から運行計画を受信し、受信された運行計画に従って走行を行う車両と
を備えるシステム。
[付記11]
車両を自動運転により運行させる運行支援装置として機能するコンピュータに、
車両の通過が予定されている経路を構成する複数のリンクについて、緊急車両の出現履歴をリンクごとに示す出現データを取得することと、
取得された出現データに基づいて、車両の走行中における緊急車両の出現数をリンクごとに予測することと、
予測された結果に応じて車両の運行計画を調整することと
を含む動作を実行させるプログラム。
[付記12]
緊急車両は走行する車線があらかじめ定められており、
調整することは、複数のリンクのうち、出現数が閾値以上であるリンクを特定し、特定されたリンクにおける車両の走行車線を、緊急車両が走行する車線とは異なる車線に設定することを含む、付記11に記載のプログラム。
[付記13]
調整することは、複数のリンクのうち、出現数が閾値以上であるリンクを特定し、特定されたリンクが結ぶ第1のノードから第2のノードまでの予定所要時間を長くすることを含む、付記11又は付記12に記載のプログラム。
[付記14]
複数のリンクは、同じノードを結ぶ1つ以上の候補リンクを含み、
調整することは、候補リンクについて、候補リンクごとの出現数を比較し、出現数が最も少ないリンクを車両の運行経路を構成するリンクとして選択することを含む、付記11から付記13のいずれかに記載のプログラム。
[付記15]
複数のリンクは、同じノードを結ぶ1つ以上の候補リンクを含み、
調整することは、車両の運行が開始された後に、緊急車両の接近を示す緊急データが取得されると、取得された緊急データに基づいて、複数のリンクのうち、緊急データで示される緊急車両の位置と車両の位置とが重なるリンクを第1リンクとして特定し、特定された第1リンクが結ぶノードと同じノードを結ぶ1つ以上の候補リンクのうち、第1リンクとは異なる候補リンクのいずれかを車両の運行経路を構成する第2リンクとして選択することを含む、付記11から付記14のいずれかに記載のプログラム。
[付記16]
動作は、
車両が運行されるときの環境条件を示す環境データを更に取得することと、
取得された環境データに更に基づいて出現数を予測することと
を更に含む、付記11から付記15のいずれかに記載のプログラム。
[付記17]
車両を自動運転により運行させる運行支援方法であって、
制御部により、車両の通過が予定されている経路を構成する複数のリンクについて、緊急車両の出現履歴をリンクごとに示す出現データを取得することと、
制御部により、取得された出現データに基づいて、車両の走行中における緊急車両の出現数をリンクごとに予測することと、
制御部により、予測された結果に応じて車両の運行計画を調整することと
を含む運行支援方法。
[付記18]
緊急車両は走行する車線があらかじめ定められており、
調整することは、制御部により、複数のリンクのうち、出現数が閾値以上であるリンクを特定し、特定されたリンクにおける車両の走行車線を、緊急車両が走行する車線とは異なる車線に設定することを含む、付記17に記載の運行支援方法。
[付記19]
調整することは、制御部により、複数のリンクのうち、出現数が閾値以上であるリンクを特定し、特定されたリンクが結ぶ第1のノードから第2のノードまでの予定所要時間を長くすることを含む、付記17又は付記18に記載の運行支援方法。
[付記20]
複数のリンクは、同じノードを結ぶ1つ以上の候補リンクを含み、
調整することは、制御部により、車両の運行が開始された後に、緊急車両の接近を示す緊急データが取得されると、取得された緊急データに基づいて、複数のリンクのうち、緊急情報で示される緊急車両の位置と車両の位置とが重なるリンクを第1リンクとして特定し、特定された第1リンクが結ぶノードと同じノードを結ぶ1つ以上の候補リンクのうち、第1リンクとは異なる候補リンクのいずれかを車両の運行経路を構成する第2リンクとして選択することを含む、付記17から付記19のいずれかに記載の運行支援方法。
【符号の説明】
【0061】
10 システム
20 運行支援装置
21 制御部
22 記憶部
23 通信部
30 車両
40 ネットワーク