▶ 東洋ゴム工業株式会社の特許一覧
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110377
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/00 20060101AFI20240807BHJP
B60C 5/00 20060101ALI20240807BHJP
B60C 9/22 20060101ALI20240807BHJP
B60C 11/12 20060101ALI20240807BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20240807BHJP
B60C 13/00 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
B60C11/00 D
B60C5/00 H
B60C9/22 D
B60C9/22 C
B60C11/12 D
B60C11/12 A
B60C11/03 100C
B60C11/00 Z
B60C13/00 G
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049777
(22)【出願日】2023-03-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-17
(31)【優先権主張番号】P 2023014777
(32)【優先日】2023-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】久保 晴香
(72)【発明者】
【氏名】柴山 健輔
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA02
3D131BA01
3D131BA04
3D131BA05
3D131BA20
3D131BB01
3D131BB11
3D131BC01
3D131BC02
3D131BC03
3D131BC12
3D131BC13
3D131BC18
3D131BC19
3D131BC20
3D131BC44
3D131BC51
3D131CA03
3D131CB06
3D131DA54
3D131DA56
3D131DA58
3D131EA08U
3D131EB05U
3D131EB11X
3D131EB15V
3D131EB15X
3D131EB18V
3D131EB18X
3D131EB23V
3D131EB23X
3D131EB24V
3D131EB24X
3D131EB27V
3D131EB31X
3D131EB46X
3D131EB47X
3D131EB82V
3D131EB83V
3D131EB86V
3D131EB86X
3D131EB90V
3D131EB91V
3D131EB94V
3D131EB95V
3D131EC01V
3D131EC01X
3D131EC12X
3D131EC22U
3D131EC24V
3D131EC24X
3D131HA35
3D131KA05
(57)【要約】
【課題】操縦安定性を確保しつつ、ノイズ性能を向上させた空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】本発明に係る空気入りタイヤは、トレッド10に設けられたトレッドゴムを備え、車両に対する装着方向が指定された空気入りタイヤであって、トレッドゴムは、タイヤ周方向に沿って延びる複数の主溝30,31,32と、主溝30,31,32により区画され、タイヤ軸方向外側に配置された一対のショルダーブロック60,70と、一対のショルダーブロック60,70の間に配置されたセンターブロック40,50と、を有し、センターブロック40,50は、タイヤ周方向に連続するリブ状のブロックであり、トレッドゴムの23℃での硬度(23℃Hs)が55以上、64以下である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッドに設けられたトレッドゴムを備え、車両に対する装着方向が指定された空気入りタイヤであって、
前記トレッドゴムは、
タイヤ周方向に沿って延びる複数の主溝と、
前記主溝により区画され、タイヤ軸方向外側に配置された一対のショルダーブロックと、
一対の前記ショルダーブロックの間に配置されたセンターブロックと、
を有し、
前記センターブロックは、タイヤ周方向に連続するリブ状のブロックであり、
前記トレッドゴムの23℃での硬度(23℃Hs)が55以上、64以下である、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記センターブロックには、タイヤ周方向に間隔をあけてサイプが複数形成され、
前記サイプは、前記センターブロックを横断し、前記センターブロックの平面視において、前記サイプの長さ方向両端よりもタイヤ周方向一方側に突出するように曲がった屈曲部を有する、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記センターブロックには、タイヤ周方向に間隔をあけてサイプが複数形成され、
前記サイプは、前記センターブロックの平面視において略S字形状を有する、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記主溝は、
タイヤ軸方向外側に配置された一対のショルダー主溝と、
前記一対のショルダーブロックの間に配置されたセンター主溝と、
を有し、
前記センターブロックは、
前記ショルダー主溝と前記センター主溝により区画され、タイヤ赤道よりも車両内側に配置される第1センターブロックと、
前記ショルダー主溝と前記センター主溝により区画され、タイヤ赤道よりも車両外側に配置される第2センターブロックと、
を有し、
前記第2センターブロックを横断するサイプの本数は、前記第1センターブロックを横断するサイプの本数よりも少ない、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記ショルダーブロックは、
タイヤ赤道よりも車両内側に配置される第1ショルダーブロックと、
タイヤ赤道よりも車両外側に配置される第2ショルダーブロックと、
を有し、
前記第2ショルダーブロックには、タイヤ軸方向に延びる横溝が形成され、
前記横溝は、サイプを介して前記ショルダー主溝につながっている、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
カーカスと、
前記カーカスのタイヤ径方向外側に配置されたベルトと、
前記ベルトのタイヤ径方向外側に配置され、前記ベルトのタイヤ軸方向両端部を覆うエッジプライと、
をさらに備え、
前記エッジプライは、タイヤ軸方向において互いに離間して配置され、
前記エッジプライのタイヤ軸方向の長さの合計は、前記トレッドのタイヤ軸方向の長さの50%以上である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記ベルトと前記エッジプライとの間に配置され、前記ベルトのタイヤ径方向外側を覆うキャッププライをさらに備える、請求項6に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記トレッドの接地面の矩形率が0.75以上、0.85以下である、請求項6に記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記トレッドのタイヤ軸方向の長さが、断面幅の呼びの84%以上、87%以下である、請求項6に記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
一対のサイドウォールと、
ビードコアおよびビードフィラーを有する一対のビードと、
をさらに備え、
前記ベルトの端部と、前記ビードフィラーの先端との間には補強ゴム層が配置され、
前記補強ゴム層のゴム硬度は、前記サイドウォールのゴム硬度よりも高く、前記ビードフィラーのゴム硬度よりも低い、請求項6に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関し、より詳しくは、車両に対する装着方向が指定されたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤ周方向に延びる複数の主溝と、主溝により区画されたブロックとを有するトレッドを備え、車両に対する装着方向が指定された空気入りタイヤが広く知られている。車両に対する装着方向が指定されたタイヤは、一般的に、トレッドパターンが左右非対称である。例えば、特許文献1には、タイヤ周方向に延びる3本の主溝と、3本の主溝により区画された2本のセンターブロックとを有し、各センターブロックに互いに異なるパターンでサイプが形成された空気入りタイヤが開示されている。
【0003】
また、近年、ノイズ性能の優れたタイヤが求められている。ノイズ性能を向上させるための手法として、例えば、トレッドに設けられたトレッドゴムの硬度を小さくすることが知られている。トレッドゴムの硬度を小さくすることで、路面からの入力が緩和され、ロードノイズを低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、トレッドゴムの硬度を小さくすると、トレッドの剛性が低下し、操縦安定性が悪化してしまうという問題がある。そのため、操縦安定性を確保しつつ、ノイズ性能を向上させることは容易ではない。
【0006】
本発明の目的は、操縦安定性を確保しつつ、ノイズ性能を向上させた空気入りタイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る空気入りタイヤは、トレッドに設けられたトレッドゴムを備え、車両に対する装着方向が指定された空気入りタイヤであって、トレッドゴムは、タイヤ周方向に沿って延びる複数の主溝と、主溝により区画され、タイヤ軸方向外側に配置された一対のショルダーブロックと、一対のショルダーブロックの間に配置されたセンターブロックと、を有し、センターブロックは、タイヤ周方向に連続するリブ状のブロックであり、トレッドゴムの23℃での硬度(23℃Hs)が55以上、64以下である。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る空気入りタイヤによれば、操縦安定性を確保しつつ、ノイズ性能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態の一例である空気入りタイヤの斜視図である。
【
図2】実施形態の一例である空気入りタイヤの断面図であって、タイヤ軸方向の半断面を示す図である。
【
図3】トレッドの接地面の形状を模式的に示す図である。
【
図4】実施形態の一例である空気入りタイヤの平面図であって、トレッドの一部を拡大して示す図である。
【
図5】実施形態の他の一例である空気入りタイヤの平面図であって、トレッドの一部を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る空気入りタイヤの実施形態の一例について詳細に説明する。以下で説明する実施形態はあくまでも一例であって、本発明は以下の実施形態に限定されない。また、以下で説明する実施形態の各構成要素を選択的に組み合わせてなる形態は本発明に含まれている。
【0011】
図1は、実施形態の一例である空気入りタイヤ1の斜視図である。
図1では、空気入りタイヤ1の内部構造を併せて図示している。
図1に示すように、空気入りタイヤ1は、路面に接地する部分であるトレッド10と、トレッド10の両側に配置された一対のサイドウォール12と、サイドウォール12のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード14と、一対のビード14の間に架け渡されるカーカス15と、カーカス15のタイヤ径方向内側に配置されたインナーライナー16とを備える。
【0012】
空気入りタイヤ1は、車両に対する装着方向が指定されたタイヤであって、車両の右側と左側とで車両に装着する向きが反対になる。トレッド10は、タイヤ赤道CL(
図2参照)に対して左右非対称のトレッドパターンを有する。なお、タイヤ赤道CLとは、トレッド10のタイヤ軸方向のちょうど中央を通るタイヤ周方向に沿った仮想線である。本明細書では、説明の便宜上「左右」の用語を使用するが、この左右とは、空気入りタイヤ1が車両に装着された状態で車両の進行方向に向かって左右を意味する。
【0013】
トレッド10は、トレッドゴム11で構成される。本実施形態では、トレッド10は、タイヤ赤道CL上に形成された主溝30(センター主溝)と、一対の主溝31,32(ショルダー主溝)を有する。3本の主溝30,31,32は、タイヤ軸方向に曲がることなく、タイヤ周方向に沿って真っ直ぐに形成されている。
【0014】
トレッド10は、主溝30,31により区画されるセンターブロック40(第1センターブロック)と、主溝30,32により区画されるセンターブロック50(第2センターブロック)とを有する。また、トレッド10は、ショルダー主溝31を挟んで第1センターブロック40とタイヤ軸方向に対向配置されるショルダーブロック60(第1ショルダーブロック)と、ショルダー主溝32を挟んで第2センターブロック50とタイヤ軸方向に対向配置されるショルダーブロック70(第2ショルダーブロック)とを有する。各ブロックは、タイヤ周方向に沿って真っ直ぐに形成されている。なお、ブロックとは、主溝の底に対応する位置からタイヤ径方向外側に向かって隆起した部分であって、陸とも呼ばれる。
【0015】
サイドウォール12は、トレッドゴム11とは異なる種類のサイドウォールゴム13で構成される。サイドウォール12は、トレッド10の両側に配置され、タイヤ周方向に沿って環状に形成されている。サイドウォール12は、空気入りタイヤ1のタイヤ軸方向外側に最も張り出した部分であって、タイヤ軸方向外側に向かって凸となるように緩やかに湾曲している。サイドウォール12は、カーカス15の損傷を防止する機能を有する。サイドウォール12は、空気入りタイヤ1がクッション作用をする際に最もたわむ部分であり、通常、耐疲労性を有する柔軟なゴムが採用される。
【0016】
ビード14は、サイドウォール12のタイヤ径方向内側に配置され、ホイールのリムに固定される部分である。ビード14は、ビードコア17と、ビードフィラー18とを有する。ビードコア17は、スチール製のビードワイヤで構成され、タイヤ周方向の全周にわたって延びる環状部材であり、ビード14に埋設されている。ビードフィラー18は、タイヤ径方向外側に延出する先端先細り形状を有し、タイヤ周方向の全周にわたって延びる環状の硬質ゴム部材である。
【0017】
カーカス15は、一対のビード14の間に架け渡され、ビードコア17の周りで折り返されることで係止されている。カーカス15は、有機繊維からなるカーカスコードと、トッピングゴムとを含む。カーカスコードは、タイヤ周方向に対して実質上直角(例えば、80°~90°)に配置されている。カーカスコードに用いられる有機繊維としては、例えば、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、アラミド繊維、およびナイロン繊維が挙げられる。
【0018】
インナーライナー16は、一対のビード14間のタイヤ内面を覆っている。インナーライナー16は、耐空気透過性ゴムにより構成されており、空気入りタイヤ1の空気圧を保持する機能を有する。
【0019】
空気入りタイヤ1は、カーカス15のタイヤ径方向外側に配置されたベルト19と、ベルト19のタイヤ径方向外側全体を覆うキャッププライ22と、キャッププライ22のタイヤ径方向外側に配置され、ベルト19のタイヤ軸方向の両端部を覆うエッジプライ23とをさらに備える。キャッププライ22およびエッジプライ23は、ベルト19を補強する機能を有する。
【0020】
ベルト19は、カーカス15の頂部の外周側に配置されており、カーカス15の外周面に重ねて設けられている。ベルト19は、タイヤ周方向に対して傾斜する方向に配列したコードをゴム被覆してなるベルトプライで形成されている。ベルト19のコードの材質は特に限定されず、例えば、ポリエステル、レーヨン、ナイロン、アラミド等の有機繊維、またはスチール等の金属が挙げられる。本実施形態では、ベルト19は、スチールコードを含む2枚のベルトプライ20,21(
図2参照)で構成されている。なお、ベルトプライの枚数は特に限定されず、1枚でもよいし、3枚以上でもよい。
【0021】
以下、
図2を参照しながら、空気入りタイヤ1の内部構造について詳説する。
図2は、本実施形態の空気入りタイヤ1のタイヤ周方向に垂直な断面図である。なお、空気入りタイヤ1は、トレッドパターンを除いて、タイヤ赤道CLに対して左右対称であるため、
図2では、空気入りタイヤ1の車両外側半分のみを示している。
【0022】
図2に示すように、空気入りタイヤ1は、カーカス15のタイヤ径方向外側に配置されたベルト19を備える。ベルト19は、2枚のベルトプライ20,21で構成されている。ベルトプライ20は、ベルトプライ21のタイヤ径方向内側に配置される。ベルトプライ20のタイヤ軸方向の長さは、ベルトプライ21のタイヤ軸方向の長さよりも大きい。つまり、ベルトプライ20の端部20Aは、ベルトプライ21の端部21Aよりもタイヤ軸方向外側に位置する。以下、ベルトプライ20の端部20Aを、ベルト19の端部19Aとして説明する。
【0023】
トレッド10とベルト19との間には、キャッププライ22およびエッジプライ23が配置されている。本実施形態では、キャッププライ22およびエッジプライ23は、連続する1つの部材として構成されている。キャッププライ22およびエッジプライ23は、長さ方向に引き揃えた有機繊維コードをタイヤ周方向に対して螺旋状に連続的に巻回することで得られる。キャッププライ22およびエッジプライ23に用いられる有機繊維としては、例えば、アラミド繊維、ポリエステル繊維、およびナイロン繊維が挙げられる。
【0024】
キャッププライ22の端部22Aは、ベルト19の端部19Aよりもタイヤ軸方向外側に位置している。つまり、キャッププライ22は、ベルト19のタイヤ径方向外側の全体を覆うように、ベルト19とトレッドゴム11との間に配置されている。
【0025】
エッジプライ23は、タイヤ径方向において、キャッププライ22のタイヤ径方向外側に隣接し、ベルト19の両端部を覆うように配置されている。本実施形態では、キャッププライ22のタイヤ軸方向の両端部が折り返されており、この折り返された部分がエッジプライ23である。ベルト19の両端部に配置されたエッジプライ23は、タイヤ軸方向において、互いに離間して配置されている。
【0026】
上記のように、キャッププライ22は、ベルト19のタイヤ径方向外側の全体を覆うように配置されているため、キャッププライ22からベルト19に作用するタイヤ径方向の拘束力は、タイヤ軸方向全体で比較的均一である。一方、エッジプライ23は、ベルト19のタイヤ軸方向の両端部を覆うように配置されているため、エッジプライ23からベルト19に作用するタイヤ径方向の拘束力は、ベルト19のタイヤ軸方向の両端部およびその周辺に集中して作用する。
【0027】
図2において、両矢印LTは、タイヤ赤道CLからトレッド10の端部までのタイヤ軸方向の長さを表している。ここで、トレッド10の端部とは、トレッドゴム11のタイヤ軸方向の端部11Aを意味する。この長さLTは、トレッド10のタイヤ軸方向の長さの半分である。また、両矢印LEは、エッジプライ23の外端23Aから、エッジプライ23の内端23Bまでのタイヤ軸方向の長さを表している。この長さLEは、エッジプライ23のタイヤ軸方向の長さの半分である。なお、長さLTおよび長さLEは、空気入りタイヤ1を正規リムに組み付けて内圧0kPaとした無負荷状態での長さを意味する。
【0028】
長さLEは、長さLTの50%以上であり、好ましくは55%以上であり、より好ましくは60%以上である。この場合、ベルト19のタイヤ軸方向外側に作用する拘束力が大きくなり、トレッド10の接地面の形状を湾曲化させることができる。より具体的には、
図3に示すように、タイヤ赤道CL上における接地面のタイヤ周方向に沿った長さ(接地長)に対し、接地面のタイヤ軸方向両端(接地端)近傍の接地長が比較的短く、トレッド10の接地面の形状が楕円形状に近い形状を有する。その結果、路面の水がトレッド10の接地面の輪郭に沿って効果的に左右にかき分けられるため、排水性能が向上し、湿潤路面での制動性・グリップ性(以下、ウェット性能という)が改善する。また、接地端近傍の接地長が短くなることで、走行時に発生するノイズの周波数が分散され、パターンノイズが低減される。さらに、ベルト19に作用する拘束力が大きくなるため、走行時のタイヤ軸方向の振動が抑制され、ロードノイズが低減される。長さLEの上限値は、例えば、長さLTの80%である。
【0029】
エッジプライ23の内端23Bは、ショルダー主溝32よりもタイヤ軸方向内側に位置することが好ましい。これにより、ベルト19のタイヤ軸方向外側に作用する拘束力がより大きくなり、トレッド10の接地面の形状を湾曲化させることが容易になる。
【0030】
エッジプライ23に用いる有機繊維コードの2%モジュラスは、3000N/mm2以上が好ましく、5000N/mm2以上がより好ましい。この場合、ウェット性能がより向上し、パターンノイズおよびロードノイズをより低減できる。また、エッジプライ23に用いる有機繊維コードの2%モジュラスは、13000N/mm2以下が好ましく、9000N/mm2以下がより好ましい。この場合、走行時の操縦安定性が向上する。よって、エッジプライ23に用いる有機繊維コードの2%モジュラスの好適な範囲の一例は、3000N/mm2以上、11000N/mm2以下である。なお、有機繊維コードの2%モジュラスの測定は、JIS L 1017の規定に準拠して行われる。
【0031】
図2において、両矢印LSは、空気入りタイヤ1を正規リムに組み付けて内圧0kPaとした無負荷状態にて、タイヤ赤道CLからサイドウォール12のうち最もタイヤ軸方向外側に張り出した部分までのタイヤ軸方向の長さを表している。この長さLSは、タイヤ断面最大幅の半分、つまり断面幅の呼びの半分である。ここで、長さLTは、長さLSの84%以上、87%以下であることが好ましい。長さLTが当該範囲内であれば、パターンノイズおよびロードノイズを低減させることが容易になる。なお、本明細書において、「断面幅の呼び」とは、JIS D4202「自動車用タイヤ-呼び方及び諸元」に規定された「タイヤの呼び」に含まれる「断面幅の呼び」である。
【0032】
本実施形態では、
図2に示すように、補強ゴム層24が、ベルト19の端部19Aと、ビードフィラー18の先端18Aの間の位置において、2枚のカーカス15に挟まれるように配置されている。補強ゴム層24は、タイヤ周方向に沿って環状に延びている。補強ゴム層24は、サイドウォール12の剛性を向上させる機能を有する。
【0033】
補強ゴム層24は、ビードベースラインBLを基準にしたタイヤ断面高さHの20%以上、60%以下の範囲に配置されることが好ましく、タイヤ断面高さHの30%以上、50%以下の範囲に配置されることがより好ましい。補強ゴム層24が当該範囲内に配置されると、サイドウォール12の剛性が向上し、トレッド10からビード14への振動伝達が抑制されることで、ロードノイズがより低減する。ここで、ビードベースラインBLは、標準リムのリム径を規定するタイヤ軸方向の仮想直線であり、タイヤ断面高さHは、空気入りタイヤ1を正規リムに組み付けて内圧0kPaとした無負荷状態にて、ビードベースラインBLからタイヤ赤道CL位置におけるトレッド10の外表面までのタイヤ径方向の距離である。
【0034】
補強ゴム層24の厚みは、0.4mm以上、3.0mm以下であることが好ましい。補強ゴム層24の厚みが当該範囲内であれば、ロードノイズの低減効果がより顕著になる。補強ゴム層24の厚みは、タイヤ径方向において異なっていてもよいが、本実施形態では、補強ゴム層24はタイヤ径方向にわたって一定の厚みを有している。
【0035】
補強ゴム層24のゴム硬度は、サイドウォール12のゴム硬度よりも高く、ビードフィラー18のゴム硬度よりも低いことが好ましい。この場合、ロードノイズの低減効果がより顕著になる。例えば、ビードフィラー18のゴム硬度は85~100、補強ゴム層24のゴム硬度は70~85、サイドウォール12のゴム硬度は45~70である。なお、上記のゴム硬度は、実施例に記載したJIS K6253に準拠した方法で測定した硬度である。
【0036】
以下、
図3を参照しながら、空気入りタイヤ1のトレッド10の接地面について詳説する。
図3は、トレッド10の接地面の形状を模式的に示す図である。
【0037】
上記の通り、エッジプライ23のタイヤ軸方向の長さを、トレッド10のタイヤ軸方向の長さの50%以上とすることで、ベルト19のタイヤ軸方向外側に作用する拘束力が大きくなり、トレッド10の接地面の形状が湾曲化する。そのため、
図3に示すように、トレッド10の接地面は、タイヤ赤道CL上における接地長(L1)に対し、接地端近傍の接地長(L2)が比較的短く、楕円形状に近い形状を有する。ここで、接地長(L1)とは、未使用の空気入りタイヤを正規リムに装着して、所定の内圧となるように空気を充填した状態で、正規荷重の70.4%に相当する荷重を加えたときの接地面のタイヤ赤道CL上のタイヤ周方向に沿った長さである。また、接地長(L2)とは、上記測定条件で求めた接地面のタイヤ軸方向両端から10mmタイヤ軸方向内側の位置における接地面のタイヤ周方向に沿った長さである。なお、上記測定条件における所定の内圧とは、タイヤの扁平率が60%以上である場合は、200kPaであり、扁平率が60%未満である場合は、220kPaである。また、Extra Loadと記載されたタイヤにおいては、上記測定条件における所定の内圧とは、扁平率が60%以上である場合は、240kPaであり、扁平率が60%未満である場合は、260kPaである。
【0038】
本明細書において、L2/L1がトレッド10の接地面の矩形率と定義される。なお、本実施形態において、接地長(L2)は、トレッド10の左右において実質的に同じ長さである。
【0039】
ここで、トレッド10の接地面の矩形率は、0.85以下であることが好ましく、0.83以下であることがより好ましい。この場合、ウェット性能およびノイズ性能を向上させることが容易になる。また、トレッド10の接地面の矩形率は、0.75以上であることが好ましく、0.77以上であることがより好ましい。この場合、操縦安定性が向上する。よって、トレッド10の接地面の矩形率の好適な範囲の一例は、0.75以上、0.85以下であり、より好ましくは、0.77以上、0.83以下である。
【0040】
以下、トレッドゴム11を構成するタイヤトレッド用ゴム組成物(以下、単にゴム組成物という)について詳説する。
【0041】
本発明のゴム組成物は、ゴム組成物の23℃での硬度(23℃Hs)が、55以上、64以下である。23℃Hsが当該範囲内であれば、後述するトレッドパターンを有するトレッドゴム11に当該ゴム組成物を適用した際、操縦安定性を確保しつつ、優れたノイズ性能を発揮することができる。なお、本発明において、23℃Hsとは、加硫後のゴム組成物を、実施例に記載したJIS K6253-3:2012に準拠し、デュロメータタイプAを用いて測定した値である。
【0042】
ゴム組成物の23℃Hsの下限値は、55であればよいが、好ましくは56、より好ましくは57である。この場合、タイヤの剛性が向上し、操縦安定性が向上する。ゴム組成物の23℃Hsの上限値は、64であればよいが、好ましくは63、より好ましくは63である。この場合、ノイズ性能の向上がより顕著になる。
【0043】
ゴム組成物の-25℃での貯蔵弾性率(-25℃E’)は、50MPa以上、150MPa以下であることが好ましい。ゴム組成物の-25℃E’が当該範囲内であれば、雪上路面や氷上路面での制動性・グリップ性(以下、スノー性能という)が向上する。なお、本発明において、-25℃E’とは、加硫後のゴム組成物を、温度-25℃、初期歪10%、動歪1%、周波数10Hzの条件で実施例に記載した方法で測定した値である。
【0044】
ゴム組成物は、スチレンブタジエン系ゴムおよびイソプレン系ゴムを含有するゴム成分を含む。これら2種類のゴムを含有することで、本発明の効果を発揮しつつ、加工性が向上したゴム組成物を得ることができる。
【0045】
スチレンブタジエン系ゴムは、スチレン系単位およびブタジエン系単位を有するゴムであれば特に限定されず、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E-SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S-SBR)等が挙げられる。なお、スチレンブタジエン系ゴムは、ゴム100質量部中のスチレン系単位およびブタジエン系単位の合計含有率が、例えば、95質量部以上であり、98質量部以上でも、100質量部でもよい。これらのスチレンブタジエン系ゴムは、1種を単独で用いてもよいが、2種以上を併用することが好ましい。
【0046】
スチレンブタジエン系ゴムは、非変性SBR、変性SBRのいずれであってもよいが、変性SBRを含むことが好ましい。変性SBRを含むことで転がり抵抗が低減し、良好な燃費性能が得られる傾向がある。なお、本明細書において、ゴム成分における「変性」とは、シリカとの反応性を有する官能基を有するもののことをいい、「未変性」とは、シリカとの反応性を有する官能基を有しないもののことをいう。シリカとの反応性を有する官能基としては、例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルコキシシリル基、エポキシ基などが挙げられ、当該官能基は、分子末端に導入されたものであってもよく、分子鎖中に導入されたものであってもよい。
【0047】
スチレンブタジエン系ゴムとしては、例えば、住友化学(株)、(株)ENEOSマテリアル、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等により製造・販売されているSBRを使用できる。
【0048】
上記ゴム組成物において、ゴム成分100質量部中のスチレンブタジエン系ゴムの含有量は、30質量部以上であることが好ましく、40質量部以上であることがより好ましく、50質量部以上であることがさらに好ましい。スチレンブタジエン系ゴムの含有量を30質量部以上にすることで、良好な操縦安定性が得られる傾向がある。また、スチレンブタジエン系ゴムの含有量は、80質量部以下とすることが好ましい。スチレンブタジエン系ゴムを多量に使用することで、加工性が悪化することが懸念されるが、スチレンブタジエン系ゴムの含有量を80質量部以下とすることで、加工性の悪化を抑制できる。よって、スチレンブタジエン系ゴムの含有量の好適な範囲の一例は、30質量部以上、80質量部以下である。
【0049】
スチレンブタジエン系ゴムのガラス転移温度(Tg)は、本発明の効果が良好に得られるという観点から、-70℃以上、-20℃以下であることが好ましい。ここで、スチレンブタジエン系ゴムのガラス転移温度は、JIS K7121に準拠して示差走査熱量測定(DSC)法により、昇温温度:20℃/分にて(測定温度範囲:-150℃~50℃)測定される。
【0050】
イソプレン系ゴムとしては、例えば、イソプレンゴム(IR)および天然ゴム等タイヤ工業において一般的なものを使用することができるが、スノー性能を向上させる観点から、天然ゴムであることが好ましい。天然ゴムには、非改質天然ゴム(NR)の他に、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素化天然ゴム(HNR)、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)、グラフト化天然ゴム等の改質天然ゴム等も含まれる。これらのゴムは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
上記ゴム組成物において、ゴム成分100質量部中のイソプレン系ゴムの含有量は、15質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であることがより好ましく、25質量部以上であることがさらに好ましい。
【0052】
ゴム成分には、スチレンブタジエン系ゴムおよびイソプレン系ゴム以外の他のゴム成分が含まれていてもよい。他のゴム成分としては、例えば、ブタジエン系ゴム(BR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)等のジエン系ゴムが挙げられる。これらのゴム成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】
ブタジエン系ゴム(BR)は、ブタジエン系単位を主たる単位とする重合体であれば特に限定されず、例えば、高シス含量のBR、低シス含量のBR等を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
本実施形態では、補強性充填剤として、カーボンブラックおよびシリカが用いられる。
【0055】
カーボンブラックとしては、特に限定されず、公知の種々の品種を用いることができる。例えば、カーボンブラックとしては、窒素吸着比表面積(N2SA)(JIS K6217-2)が70~150m2/gであるものを用いることが好ましい。具体的には、SAF級(N100番台),ISAF級(N200番台),HAF級(N300番台)のカーボンブラックが例示される。これら各グレードのカーボンブラックは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0056】
カーボンブラックの配合量は、ゴム成分100質量部に対して、10質量部未満であることが好ましく、8質量部未満であることが好ましい。カーボンブラックの配合量を減らすことで、ゴム組成物の硬度を低下させ、ノイズ性能を向上させることができる。また、カーボンブラックの配合量の下限は、例えば、2質量部超である。よって、カーボンブラックの配合量の好適な範囲の一例は、2質量部超、10質量部未満であり、より好ましくは、2質量部超、8質量部未満である。
【0057】
シリカとしては、特に限定されず、例えば、湿式沈降法シリカや湿式ゲル法シリカなどの湿式シリカを用いてもよい。シリカのBET比表面積(JIS K6430に記載のBET法に準じて測定)は、特に限定されず、例えば90~250m2/gでもよく、150~220m2/gでもよい。
【0058】
シリカの配合量は、ゴム成分100質量部に対して、60質量部超であることが好ましく、65質量部以上であることがより好ましい。シリカの配合量を60質量部超にすることで、ウェット性能が向上する。また、シリカの配合量は、90質量部未満であることが好ましく、85質量部以下であることがより好ましい。シリカの配合量を90質量部未満にすることで、転がり抵抗が減少する。よって、シリカの配合量の好適な範囲の一例は、60質量部超、90質量部未満である。
【0059】
本実施形態のゴム組成物には、上記成分の他に、シランカップリング剤、ステアリン酸、酸化亜鉛、ワックス、老化防止剤、オイル、加硫促進剤、加硫剤など、タイヤトレッド用ゴム組成物において一般に使用される各種添加剤を配合することができる。
【0060】
シランカップリング剤としては、スルフィドシランやメルカプトシラン等の公知のシランカップリング剤を用いることができる。シランカップリング剤の配合量は、特に限定されないが、シリカの配合量の2質量部以上、20質量部以下であることが好ましく、5質量部以上、15質量部以下であることがより好ましい。
【0061】
オイルとしては、一般にゴム組成物に配合される各種オイルを用いることができる。例えば、鉱物油、即ちパラフィンオイル、ナフテンオイル、およびアロマオイルからなる群から選択される少なくとも1種の鉱物油を用いてもよい。オイルの含有量は、特に限定されず、例えば、ゴム成分100質量部に対して40質量部以下でもよく、30質量部以下でもよい。
【0062】
加硫剤としては、硫黄が好ましく用いられる。加硫剤の配合量は、特に限定されず、例えば、ゴム成分100質量部に対して0.1質量部以上、5質量部以下でもよく、0.5質量部以上、3質量部以下でもよい。
【0063】
加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系、チウラム系、チアゾール系、およびグアニジン系などの各種加硫促進剤が挙げられる。これら加硫促進剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。加硫促進剤の配合量は、特に限定されず、例えば、ゴム成分100質量部に対して0.1質量部以上、5質量部以下でもよく、0.5質量部以上、3質量部以下でもよい。
【0064】
本実施形態に係るゴム組成物は、通常用いられるバンバリーミキサーやニーダー、ロール等の混合機を用いて、常法に従い混練し作製することができる。すなわち、例えば、第1混合段階(ノンプロ練り工程)で、ゴム成分に対し、カーボンブラックおよびシリカとともに、加硫剤および加硫促進剤以外の添加剤を添加混合し、次いで、得られた混合物に、最終混合段階(プロ練り工程)で加硫剤および加硫促進剤を添加混合して未加硫のゴム組成物を調製することができる。
【0065】
なお、ノンプロ練り工程は、単一の混合工程としてもよく、混合と排出を繰り返す複数の混合工程に分けて実施してもよい。例えば、ノンプロ練り工程は、ゴム成分およびカーボンブラックの全量と、シリカおよびシランカップリング剤の一部とを混合する第ノンプロ練り工程と、第1ノンプロ練り工程の混合物にシリカおよびシランカップリング剤の一部と、酸化亜鉛および老化防止剤の全量とを混合する第2ノンプロ練り工程とを含んでいてもよい。複数の混合工程に分けて実施することで、充填剤とポリマーの化学結合を均一に形成することが可能である。
【0066】
以下、
図4を参照しながら、空気入りタイヤ1のトレッドパターンについて詳説する。
図4は、空気入りタイヤ1(トレッド10)の平面図である。
【0067】
図4に示すように、トレッド10は、タイヤ赤道CLに対して左右非対称のトレッドパターンを有する。以下では、タイヤ赤道CLより接地端E1側の領域を第1領域10Aとし、タイヤ赤道CLより接地端E2側の領域を第2領域10Bとする。なお、本明細書において、「接地端E1,E2」は、未使用の空気入りタイヤ1を正規リムに装着して正規内圧となるように空気を充填した状態で所定の荷重を加えたときに、平坦な路面に接地する領域(接地面)のタイヤ軸方向両端と定義される。乗用車用タイヤの場合、所定の荷重は正規荷重の88%に相当する荷重である。空気入りタイヤ1のトレッドパターンは、第1領域10Aが車両内側に、第2領域10Bが車両外側に位置するように、車両に対してタイヤが装着された場合に、本発明の効果を発揮する。
【0068】
トレッド10は、タイヤ赤道CL上に形成されたセンター主溝30と、タイヤ赤道CLと車両内側の接地端E1との間に形成されたショルダー主溝31と、タイヤ赤道CLと車両外側の接地端E2との間に形成されたショルダー主溝32と、当該3本の主溝30,31,32により区画された複数のブロックとを有する。なお、主溝の本数は3本に限定されず、2本でもよいし、4本以上でもよい。
【0069】
ショルダー主溝31,32は、タイヤ赤道CL(センター主溝30)から等距離の位置にそれぞれ形成されることが好ましい。これにより、タイヤ赤道CLを境界とする左右の領域における剛性バランスが良好になり、本発明の効果がより顕著に発揮される。
【0070】
3本の主溝30,31,32の幅の合計は、接地端E1から接地端E2までのタイヤ軸方向に沿った長さ(以下、「タイヤ接地幅」とする)の3%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましく、8%以上であることがさらに好ましい。この場合、排水性能が向上し、ウェット性能が大幅に改善する。また、3本の主溝30,31,32の幅の合計は、タイヤ接地幅の30%以下であることが好ましく、28%以下であることがより好ましく、25%以下であることがさらに好ましい。この場合、優れた操縦安定性を確保できる。よって、3本の主溝30,31,32の幅の合計の好適な範囲の一例は、タイヤ接地幅の5%以上、30%以下である。また、ウェット性能の改善をより重視する場合は、3本の主溝30,31,32の幅の合計は、タイヤ接地幅の10%以上、30%以下であってもよい。なお、本明細書において、溝の幅とは、特に断らない限り、トレッド10の接地面に沿ったプロファイル面における幅を意味する。
【0071】
ショルダー主溝31,32の幅は、タイヤ赤道CL上に形成されたセンター主溝30の幅よりも大きいことが好ましい。この場合、排水性能が向上し、ウェット性能が大幅に改善する。センター主溝30の幅は、例えば、8mm以上、14mm以下であり、ショルダー主溝31,32の幅は、例えば、9mm以上、15mm以下である。3本の主溝30,31,32の深さは特に限定されず、例えば、7mm以上、15mm以下である。
【0072】
3本の主溝30,31,32の少なくともいずれかには、一般的に、摩耗インジケータ(図示せず)が設けられる。摩耗インジケータは、溝底に配置される突起であって、トレッドゴムの摩耗レベルを確認するための指標となる。
【0073】
3本の主溝30,31,32の壁は、溝底に向かって次第に溝幅が細くなるように傾斜している。主溝の壁はブロックの側壁を構成するため、言い換えると、ブロックの側壁は接地面から離れるほどブロックの幅が広くなるように側壁が傾斜している。
【0074】
トレッド10は、主溝30,31により区画される第1センターブロック40と、主溝30,32により区画される第2センターブロック50とを有する。また、トレッド10は、ショルダー主溝31を挟んで第1センターブロック40とタイヤ軸方向に対向配置される第1ショルダーブロック60と、ショルダー主溝32を挟んで第2センターブロック50とタイヤ軸方向に対向配置される第2ショルダーブロック70とを有する。
【0075】
第1センターブロック40および第2センターブロック50は、タイヤ周方向に連続するリブ状のブロックである。なお、本明細書において、「リブ状のブロック」とは、幅が2mmを超える溝が形成されていないブロックを意味する。第1センターブロック40および第2センターブロック50をタイヤ周方向に連続するリブ状のブロックとすることで、トレッド10の剛性が向上し、操縦安定性が向上する。
【0076】
第1センターブロック40および第2センターブロック50に幅広の溝が存在すると、トレッド10の剛性が低下しやすい。その結果、硬度の小さいゴム組成物をトレッドゴム11に適用した場合、操縦安定性が悪化するおそれがある。本実施形態の空気入りタイヤ1によれば、第1センターブロック40および第2センターブロック50に幅広の溝が形成されていないため、硬度の小さいゴム組成物をトレッドゴム11に適用した場合であっても、操縦安定性を確保できる。つまり、操縦安定性を確保しつつ、燃費性能を向上できる。
【0077】
第1センターブロック40および第2センターブロック50は、センター主溝30により分断されている。また、第1センターブロック40はショルダー主溝31により第1ショルダーブロック60と分断され、第2センターブロック50はショルダー主溝32により第2ショルダーブロック70と分断されている。本実施形態では、第1センターブロック40および第2センターブロック50は互いに同じ幅を有する。また、第1ショルダーブロック60および第2ショルダーブロック70は、第1センターブロック40および第2センターブロック50より幅広に形成され、互いに同じ幅を有する。空気入りタイヤ1は、ドライ路面だけでなく、ウェット路面、雪氷路面における性能にも優れ、オールシーズンタイヤに好適である。
【0078】
以下、
図4を参照しながら、トレッド10を構成するセンターブロック40,50、およびショルダーブロック60,70についてさらに詳説する。
【0079】
[第1センターブロック40]
第1センターブロック40は、タイヤ周方向に沿って真っ直ぐに形成され、全長にわたって一定の幅を有している。第1センターブロック40の接地面の幅は、例えばタイヤ接地幅の12~25%に相当する幅を有する。第1センターブロック40の幅が当該範囲内であれば、操縦安定性が向上する。第1センターブロック40の幅の一例は、15mm以上、35mm以下である。
【0080】
第1センターブロック40には、タイヤ周方向に間隔をあけてサイプ41が複数形成されている。本明細書では、溝幅が2.0mm以下の細溝をサイプと定義する。サイプの幅は、例えば、0.5mm以上、1.5mm以下、または0.5mm以上、1.0mm以下である。サイプ41は、操縦安定性およびノイズ性能の改善に寄与する。第1センターブロック40には、サイプ41と形状が異なる他のサイプが形成されていてもよいが、本実施形態ではサイプ41のみが形成されている。各サイプ41は、実質的に同じ形状を有する。詳しくは後述するが、第1センターブロック40を横断するサイプの本数は、第2センターブロック50を横断するサイプの本数より多い。
【0081】
サイプ41は、例えば、タイヤ周方向に所定本数単位で僅かにサイプ同士の間隔を変化させたバリアブルピッチで形成されていてもよく、同じ間隔で形成されていてもよい。タイヤ周方向に隣り合うサイプ41同士の間隔は、例えば、センター主溝30の幅より小さく、5mm以上、30mm以下である。また、サイプ41同士の間隔は、第2センターブロック50に形成されるサイプ同士の間隔よりも小さくなっている。
【0082】
サイプ41は、第1センターブロック40の平面視において、当該サイプの長さ方向両端よりもタイヤ周方向一方側に突出するように曲がった屈曲部42を有する。屈曲部42を有することで、硬度の小さいゴム組成物をトレッドゴム11に適用した場合であっても、サイプ41のエッジ効果により優れた制動性能を発揮する。車両の制動時には、車両内側の第1領域10Aで接地面積が大きくなるため、第1センターブロック40に多くのサイプ41を形成することでエッジ効果が高まり、湿潤路面における制動性能も大きく向上する。また、大きく屈曲したサイプ41により、横方向のエッジ成分が増加し、車両旋回時の操縦安定性も向上する。
【0083】
サイプ41は、第1センターブロック40を横断するサイプである。サイプ41が第1センターブロック40を横断して主溝30,31に連通することで、トレッド10のタイヤ軸方向中央部で空気が流れる流路が多くなる。これにより、走行時に発生する気柱管共鳴の周波数が分散され、パターンノイズが低減される。
【0084】
サイプ41の深さは、例えば、最も深い部分でセンター主溝30の深さの60~90%である。サイプ41は、長さ方向両端から所定の長さ範囲において、他の部分よりも深さが浅くなっていてもよい。この場合、サイプ41の形成による第1センターブロック40の剛性の低下を抑制でき、操縦安定性が向上する。所定の長さ範囲は、例えば、第1センターブロック40の幅の3~10%に相当する長さの範囲である。
【0085】
[第2センターブロック50]
第2センターブロック50は、上記のように、センター主溝30を挟んで第1センターブロック40とタイヤ軸方向に対向配置され、タイヤ周方向に沿って真っ直ぐに形成されている。第2センターブロック50の接地面の幅は、例えば、タイヤ接地幅の12~25%である。第2センターブロック50の幅が当該範囲内であれば操縦安定性が向上する。本実施形態において、第2センターブロック50は、第1センターブロック40と同じ幅を有し、全長にわたって一定の幅で形成されている。
【0086】
第2センターブロック50には、タイヤ周方向に間隔をあけて第1サイプ51が複数形成されている。複数の第1サイプ51は、例えば、タイヤ周方向に所定本数単位で僅かにサイプ同士の間隔を変化させたバリアブルピッチで形成されていてもよく、同じ間隔で形成されていてもよい。第2センターブロック50には、第1サイプ51のみが形成されていてもよいが、本実施形態では、第1サイプ51の他に、3種類のサイプ(第2サイプ52、第3サイプ53、および第4サイプ54)が形成されている。
【0087】
第1サイプ51は、第2センターブロック50を横断するサイプであって、主溝30,32につながっている。第1サイプ51は、第2センターブロック50の平面視において、略S字形状を有することが好ましい。この場合、硬度の小さいゴム組成物をトレッドゴム11に適用した場合であっても、車両旋回時における操縦安定性がより向上する。
【0088】
第2センターブロック50において、第1サイプ51の各々とタイヤ軸方向に重なる領域には、複数の第2サイプ52からなる第2サイプ群と、複数の第3サイプ53からなる第3サイプ群とが形成されている。第2サイプ52は、センター主溝30から延びてブロック内で終端し、第3サイプ53は、ショルダー主溝32から延びてブロック内で終端している。第2サイプ52および第3サイプ53は、第1サイプ51との間に所定の距離をあけて形成された短いサイプである。また、当該各サイプは、タイヤ軸方向および周方向に対して所定の角度で傾斜している。
【0089】
本実施形態において、1本の第1サイプ51とタイヤ軸方向に重なる第2サイプ群は、3本の第2サイプ52で構成されている。当該3本の第2サイプ52は、例えば、互いに等間隔で平行に形成されている。第3サイプ群についても同様に、互いに等間隔で平行に形成された3本の第3サイプ53で構成されている。各第2サイプ群を構成する複数の第2サイプ52は、互いに異なる長さを有し、第1サイプ51に近づくほど長くなっている。また、各第3サイプ群を構成する複数の第3サイプ53は、互いに異なる長さを有し、第1サイプ51に近づくほど長くなっている。
【0090】
即ち、センター主溝30から延びる各第2サイプ52は、第1サイプ51がショルダー主溝32の方向に凸となった領域では長く、センター主溝30の方向に凸となった領域では短くなっている。ショルダー主溝32から延びる第3サイプ53は、第1サイプ51がセンター主溝30の方向に凸となった領域では長く、ショルダー主溝32の方向に凸となった領域では短くなっている。この場合、第2センターブロック50の剛性バランスが良好になり、より信頼性の高いタイヤ性能を実現できる。
【0091】
第2センターブロック50の各第1サイプ51に挟まれた領域には、第2センターブロック50を横断する略直線状の第4サイプ54が形成されている。つまり、第2センターブロック50には、第1サイプ51と第4サイプ54がタイヤ周方向に交互に配置されている。第4サイプ54は、第2サイプ52および第3サイプ53と平行に形成され、途中で曲がることなく真っ直ぐに延びている。
【0092】
第4サイプ54は、ノイズの低減において重要な役割を果たす。具体的には、第4サイプ54が主溝30,32に連通することで空気が流れる流路が多くなる。これにより、走行時に発生する気柱管共鳴の周波数が分散され、パターンノイズが低減される。
【0093】
第2センターブロック50に形成される各サイプの深さは、互いに同じであってもよい。各サイプの深さは、例えば、最も深い部分でセンター主溝30の深さの60~90%である。本実施形態では、長さが短い第2サイプ52および第3サイプ53は、全長にわたって一定の深さを有する。他方、第1サイプ51および第4サイプ54は、長さ方向両端から所定の長さ範囲において、他の部分よりも浅くなっている。この場合、サイプの形成による第2センターブロック50の剛性低下を抑制できる。所定の長さ範囲は、例えば、第2センターブロック50の幅の3~10%に相当する長さ範囲である。
【0094】
第2センターブロック50を横断するサイプの本数は、第1センターブロック40を横断するサイプの本数よりも少ないことが好ましい。第1センターブロック40では、全てのサイプがブロックを横断しているが、第2センターブロック50では、第2サイプ52と第3サイプ53はブロック内で終端し、第1サイプ51と第4サイプ54がブロックを横断している。また、各ブロックに形成されたサイプ同士のタイヤ周方向の間隔は、第2センターブロック50において第1センターブロック40よりも大きくなっている。このため、センターブロック40,50を比較した場合に、ブロックを横断するサイプの本数は第2センターブロック50で大幅に少なくなっている。
【0095】
また、同一直線上に配置される第2サイプ52と第3サイプ53を1本とカウントした場合において、第1センターブロック40のサイプの本数が、第2センターブロック50のサイプの本数より多くてもよい。この場合、第1センターブロック40のサイプの本数は、例えば、第2センターブロック50のサイプの本数の1.1~1.5倍である。或いは、第2サイプ52および第3サイプ53の各々を1本とカウントした場合に、第1センターブロック40のサイプの本数>第2センターブロック50のサイプの本数であってもよい。第1センターブロック40のサイプの本数>第2センターブロック50のサイプの本数とすることにより、走行時に発生する気柱管共鳴の周波数が分散され、パターンノイズが低減される。また、制動性能と操縦安定性をより高いレベルで両立することが容易になる。
【0096】
[第1ショルダーブロック60]
第1ショルダーブロック60は、ショルダー主溝31を挟んで第1センターブロック40とタイヤ軸方向に対向配置され、タイヤ周方向に沿って真っ直ぐに形成されている。第1ショルダーブロック60の接地面の幅は、例えば、タイヤ接地幅の15~35%であり、第1センターブロック40の接地面の幅よりも大きい。本実施形態において、第1ショルダーブロック60は、第2ショルダーブロック70と同じ幅を有し、全長にわたって一定の幅で形成されている。
【0097】
第1ショルダーブロック60には、タイヤ軸方向に延びてショルダー主溝31につながった横溝として、長さが異なる2種類の横溝61,62が形成されている。いずれの横溝も、ショルダー主溝31から接地端E1を超える長さを有し、第1ショルダーブロック60の接地面を横断している。横溝61,62は、2mmを超える幅を有し、細線状の溝であるサイプと区別される。第1ショルダーブロック60は、上記のように、横溝61,62によりタイヤ周方向に接地面が分断されている。
【0098】
本明細書において、横溝が「タイヤ軸方向に延びる」とは、横溝がタイヤ軸方向に沿って延びる形態、およびタイヤ軸方向に対して45°以下、好ましくは30°以下の傾斜角度で延びる形態の両方を意図する。なお、タイヤ周方向に延びる主溝についても同様であり、主溝はタイヤ周方向に対して45°以下の傾斜角度で曲がりながらジグザグ状に形成されてもよい。
【0099】
横溝61,62は、例えば、ショルダー主溝31から接地端E1にわたって一定の幅を有する。ショルダー主溝31につながった横溝61,62を形成することにより排水性が向上し、ウェット性能が大幅に改善する。横溝61,62をショルダー主溝31と連通させると、ショルダー主溝31から横溝61,62に空気が流入するため、ノイズおよび空気抵抗が大きくなることが想定されるが、第1ショルダーブロック60は車両内側に配置されるため、横溝61,62の影響は小さい。なお、横溝62は、全長にわたって直線状に形成されている。横溝61は、接地端E1を超える位置まで直線状に形成され、サイドウォール12との境界またはその近傍でタイヤ周方向一方側に曲がっている。
【0100】
第1ショルダーブロック60において、横溝61と横溝62の間に位置する領域には、長さが異なる2種類のサイプ(第1サイプ63、第2サイプ64)が形成されている。いずれのサイプも、ショルダー主溝31から接地端E1を超える長さを有し、空気入りタイヤ1のショルダーにおいて互いに連結されている。第2サイプ64は、第1サイプ63よりも長く、横溝62と同様の長さを有する。第1ショルダーブロック60には、タイヤ周方向に、横溝61、第1サイプ63、第2サイプ64、および横溝62の順で、溝とサイプが繰り返し形成されている。なお、複数の溝とサイプは、例えば、バリアブルピッチで形成されている。
【0101】
横溝61,62、第1サイプ63、および第2サイプ64は、互いに略平行に形成され、タイヤ軸方向に対して傾斜している。当該横溝とサイプの傾斜角度は、例えば、センターブロック40,50のサイプの傾斜角度と比べて小さい。
【0102】
[第2ショルダーブロック70]
第2ショルダーブロック70は、ショルダー主溝32を挟んで第2センターブロック50とタイヤ軸方向に対向配置され、タイヤ周方向に沿って真っ直ぐに形成されている。第2ショルダーブロック70の接地面の幅は、例えば、タイヤ接地幅の20~35%であり、第2センターブロック50よりも大きい。第2ショルダーブロック70には、ブロックの接地面を横断する溝は形成されておらず、タイヤ周方向に連続している。
【0103】
第2ショルダーブロック70は、タイヤ軸方向に延びる横溝71,72、第1サイプ73、および第2サイプ74を有する点で、第1ショルダーブロック60と共通する。なお、長い方の溝である横溝71は、サイドウォール12との境界またはその近傍で、第1ショルダーブロック60の横溝61と反対方向に曲がっている。第2ショルダーブロック70には、タイヤ周方向に、横溝71、第2サイプ74、第1サイプ73、および横溝72の順で、溝とサイプが繰り返し形成されている。一方、第2ショルダーブロック70は、横溝71,72がショルダー主溝32に直接つながっていない点で、第1ショルダーブロック60と異なる。
【0104】
本実施形態において、横溝71,72は、第3サイプ75を介してショルダー主溝32につながっている。この場合、ショルダー主溝32から横溝71,72に空気が流入して車両外側に放出されることを抑制できるため、ノイズの抑制効果がより顕著になる。また、空気入りタイヤ1の空気抵抗も効果的に低減される。ノイズおよび空気抵抗には、車両内側に配置される第1ショルダーブロック60よりも車両外側に配置される第2ショルダーブロック70の溝の構成が大きく影響される。第3サイプ75の長さは特に限定されないが、好適な一例としては、第2ショルダーブロック70の接地面の幅の5~40%、または10~30%である。各第3サイプ65は、例えば、互いに同じ長さを有する。
【0105】
また、
図5に例示するように、第1ショルダーブロック60に形成された横溝61,62は、第2ショルダーブロック70の横溝71,72と同様に、第3サイプ65を介してショルダー主溝31につながっていてもよい。即ち、
図4に例示するトレッドパターンでは、左右のショルダーブロック60,70において横溝と主溝の接続形態が異なっているが、
図5に例示するトレッドパターンでは、ショルダーブロック60,70において横溝と主溝の接続形態が同様となっている。第3サイプ65の長さ、幅、深さ等は、第2ショルダーブロック70の第3サイプ75と実質的に同じであってもよい。
【実施例0106】
以下、実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0107】
バンバリーミキサーを使用し、下記表1に示す配合量(質量部)に従って、まず、第1混合段階で、ゴム成分に対し硫黄および加硫促進剤を除く他の配合剤を添加し混練し(排出温度=160℃)、次いで、得られた混練物に、最終混合段階で、硫黄と加硫促進剤を添加し混練して(排出温度=90℃)、ゴム組成物を調製した。表1中の各成分の詳細は、以下の通りである。
【0108】
・SBR1:(株)ENEOSマテリアル製「HPR355」(Tg=-21℃の変性溶液重合SBR)
・SBR2:(株)ENEOSマテリアル製「HPR850」(Tg=-24℃の変性溶液重合SBR)
・SBR3:(株)ENEOSマテリアル製「HPR350」(Tg=-32℃の変性溶液重合SBR)
・SBR4:(株)ENEOSマテリアル製「HPR840」(Tg=-60℃の変性溶液重合SBR)
・SBR5:旭化成(株)製「Tuf1834」(Tg=-68℃の溶液重合SBR)
・SBR6:(株)ENEOSマテリアル製「SBR0122」(Tg=-40℃の未変性ESBR)
・BR:宇部興産(株)製「BR150B」
・NR:RSS#3
・カーボンブラック1:東海カーボン(株)製「シースト6」
・カーボンブラック2:東海カーボン(株)製「シーストKH」
・シリカ:エボニックインダストリーズ社製「UltrasilVN3」
・シランカップリング剤:エボニックインダストリーズ社製「Si75」
・オイル1:アロマオイル、JX日鉱日石エネルギー(株)製「プロセスNC140」
・オイル2:アロマオイル、JX日鉱日石エネルギー(株)製「プロセスP200」
・樹脂:C5/C9系の脂肪族/芳香族共重合系炭化水素樹脂、東ソー(株)製「ペトロタック90」(ガラス転移温度:65℃、軟化点:95℃)
・ステアリン酸:花王(株)製「ルナックS-20」
・酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製「亜鉛華3種」
・ワックス:日本精鑞(株)製「OZOACE0355」
・老化防止剤1:大内新興化学工業(株)製「ノクラック6C」
・老化防止剤2:川口化学工業(株)製「アンテージRD」
・加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製「ノクセラーD」
・加硫促進剤2:住友化学(株)製「ソクシノールCZ」
・硫黄:鶴見化学工業(株)製「粉末硫黄」
【0109】
表1で得られた実施例1~9および比較例1の未加硫各ゴム組成物を160℃で30分間加硫した所定形状の試験片を作製し、硬度および粘弾性特性を評価した。各評価方法は以下の通りである。
【0110】
<硬度測定>
JIS K6253-3:2012に準拠して、デュロメータタイプA(型式:GS-719N、株式会社テクロック製)を用いて、各ゴム試験片の温度23℃での硬度Hsを測定した。
【0111】
<動的粘弾性測定>
JIS K6394に準拠して、東洋精機(株)製の粘弾性試験機を使用し、各ゴム試験片の-25℃E’(MPa)、0℃tanδ、35℃tanδを測定した。それぞれの測定条件は以下の通りである。
-25℃E:測定温度-25℃、初期歪10%、動歪1%、周波数10Hz
0℃tanδ:測定温度0℃、初期歪10%、動歪1%、周波数10Hz
35℃tanδ:測定温度35℃、初期歪10%、動歪1%、周波数10Hz
【0112】
表1で得られた実施例1~9および比較例1の未加硫各ゴム組成物をトレッドゴムに用いて、常法に従い加硫成型することにより
図4のトレッドパターンを有する試験用空気入りタイヤ(タイヤサイズ:195/60R17 90H)を作製した。得られた試験用空気入りタイヤを下記により評価した。
【0113】
<ノイズ性能>
各試験タイヤを排気量2000ccのFF車に装着し、車室内運転席の耳の位置にマイクロフォンを設置し、乾燥状態の平坦なアスファルト路面を80km/hで走行した時の音圧を測定した。表1の〇はノイズ性能に優れていることを意味し、×は〇の場合と比べてノイズ性能に劣ることを意味する。
【0114】
<ウェット性能>
各試験タイヤを排気量2000ccのFF車に装着し、湿潤路面にて、速度90km/hでABS作動させ20km/hまで減速時の制動距離を測定し(n=10の平均値)、比較例1を100とした指数で示した。数値が大きいほど制動距離が短く、制動性能が良好であることを示す。
【0115】
<スノー性能>
各試験タイヤ排気量2000ccのFF車に装着し、圧雪路にて、速度40km/hでABS作動させて制動距離を測定し、評価した。表1の〇はスノー性能に優れていることを意味し、×は〇の場合と比べてスノー性能に劣ることを意味する。
【0116】
【0117】
結果は表1に示す通りである。表1に示すように、トレッドゴムを構成するゴム組成物の硬度が55以上、64以下の空気入りタイヤは、操縦安定性を確保しつつ、ノイズ性能が改善されている。
【0118】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその省略、置き換え、変更などは、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0119】
1 空気入りタイヤ、10 トレッド、11 トレッドゴム、11A 端部、12 サイドウォール、13 サイドウォールゴム、14 ビード、15 カーカス、16 インナーライナー、17 ビードコア、18 ビードフィラー、18A 先端、19 ベルト、19A,20A,21A,22A 端部、20,21 ベルトプライ、22 キャッププライ、23 エッジプライ、23A 外端、23B 内端、24 補強ゴム層、30 主溝(センター主溝)、31,32 主溝(ショルダー主溝)、40 センターブロック(第1センターブロック)、41 サイプ、42 屈曲部、50 センターブロック(第2センターブロック)、51,63,73 第1サイプ、52,64,74 第2サイプ、53,65,75 第3サイプ、54 第4サイプ、60 ショルダーブロック(第1ショルダーブロック)、61,62,71,72 横溝、70 ショルダーブロック(第2ショルダーブロック)
【手続補正書】
【提出日】2023-09-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッドに設けられたトレッドゴムを備え、車両に対する装着方向が指定された空気入りタイヤであって、
前記トレッドゴムは、
タイヤ周方向に沿って延びる複数の主溝と、
前記主溝により区画され、タイヤ軸方向外側に配置された一対のショルダーブロックと、
一対の前記ショルダーブロックの間に配置されたセンターリブと、
を有し、
前記センターリブには、タイヤ周方向に間隔をあけてサイプが複数形成され、
前記サイプは、前記センターリブを横断し、前記センターリブの平面視において、タイヤ周方向における前記サイプの両端の位置よりもタイヤ周方向一方側に突出するように曲がった屈曲部を有し、
前記トレッドゴムの23℃での硬度(23℃Hs)が55以上、64以下である、空気入りタイヤ。
【請求項2】
トレッドに設けられたトレッドゴムを備え、車両に対する装着方向が指定された空気入りタイヤであって、
前記トレッドゴムは、
タイヤ周方向に沿って延びる複数の主溝と、
前記主溝により区画され、タイヤ軸方向外側に配置された一対のショルダーブロックと、
一対の前記ショルダーブロックの間に配置されたセンターリブと、
を有し、
前記センターリブには、タイヤ周方向に間隔をあけてサイプが複数形成され、
前記サイプは、前記センターリブの平面視において略S字形状を有し、
前記トレッドゴムの23℃での硬度(23℃Hs)が55以上、64以下である、空気入りタイヤ。
【請求項3】
トレッドに設けられたトレッドゴムを備え、車両に対する装着方向が指定された空気入りタイヤであって、
前記トレッドゴムは、
タイヤ周方向に沿って延びる複数の主溝と、
前記主溝により区画され、タイヤ軸方向外側に配置された一対のショルダーブロックと、
一対の前記ショルダーブロックの間に配置されたセンターリブと、
を有し、
前記ショルダーブロックは、
タイヤ赤道よりも車両内側に配置される第1ショルダーブロックと、
タイヤ赤道よりも車両外側に配置される第2ショルダーブロックと、
を有し、
前記第2ショルダーブロックには、タイヤ軸方向に延びる横溝が形成され、
前記横溝は、サイプを介してショルダー主溝につながっており、
前記トレッドゴムの23℃での硬度(23℃Hs)が55以上、64以下である、空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記主溝は、
タイヤ軸方向外側に配置された一対のショルダー主溝と、
前記一対のショルダーブロックの間に配置されたセンター主溝と、
を有し、
前記センターリブは、
前記ショルダー主溝と前記センター主溝により区画され、タイヤ赤道よりも車両内側に配置される第1センターリブと、
前記ショルダー主溝と前記センター主溝により区画され、タイヤ赤道よりも車両外側に配置される第2センターリブと、
を有し、
前記第2センターリブを横断するサイプの本数は、前記第1センターリブを横断するサイプの本数よりも少ない、請求項1~3のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
カーカスと、
前記カーカスのタイヤ径方向外側に配置されたベルトと、
前記ベルトのタイヤ径方向外側に配置され、前記ベルトのタイヤ軸方向両端部を覆うエッジプライと、
をさらに備え、
前記エッジプライは、タイヤ軸方向において互いに離間して配置され、
前記エッジプライのタイヤ軸方向の長さの合計は、前記トレッドのタイヤ軸方向の長さの50%以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記ベルトと前記エッジプライとの間に配置され、前記ベルトのタイヤ径方向外側を覆うキャッププライをさらに備える、請求項5に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記トレッドの接地面の矩形率が0.75以上、0.85以下である、請求項5に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記トレッドのタイヤ軸方向の長さが、断面幅の呼びの84%以上、87%以下である、請求項5に記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
一対のサイドウォールと、
ビードコアおよびビードフィラーを有する一対のビードと、
をさらに備え、
前記ベルトの端部と、前記ビードフィラーの先端との間には補強ゴム層が配置され、
前記補強ゴム層のゴム硬度は、前記サイドウォールのゴム硬度よりも高く、前記ビードフィラーのゴム硬度よりも低い、請求項5に記載の空気入りタイヤ。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関し、より詳しくは、車両に対する装着方向が指定されたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤ周方向に延びる複数の主溝と、主溝により区画されたブロックとを有するトレッドを備え、車両に対する装着方向が指定された空気入りタイヤが広く知られている。車両に対する装着方向が指定されたタイヤは、一般的に、トレッドパターンが左右非対称である。例えば、特許文献1には、タイヤ周方向に延びる3本の主溝と、3本の主溝により区画された2本のセンターブロックとを有し、各センターブロックに互いに異なるパターンでサイプが形成された空気入りタイヤが開示されている。
【0003】
また、近年、ノイズ性能の優れたタイヤが求められている。ノイズ性能を向上させるための手法として、例えば、トレッドに設けられたトレッドゴムの硬度を小さくすることが知られている。トレッドゴムの硬度を小さくすることで、路面からの入力が緩和され、ロードノイズを低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、トレッドゴムの硬度を小さくすると、トレッドの剛性が低下し、操縦安定性が悪化してしまうという問題がある。そのため、操縦安定性を確保しつつ、ノイズ性能を向上させることは容易ではない。
【0006】
本発明の目的は、操縦安定性を確保しつつ、ノイズ性能を向上させた空気入りタイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る空気入りタイヤは、トレッドに設けられたトレッドゴムを備え、車両に対する装着方向が指定された空気入りタイヤであって、トレッドゴムは、タイヤ周方向に沿って延びる複数の主溝と、主溝により区画され、タイヤ軸方向外側に配置された一対のショルダーブロックと、一対のショルダーブロックの間に配置されたセンターリブと、を有し、センターリブには、タイヤ周方向に間隔をあけてサイプが複数形成され、サイプは、センターリブを横断し、センターリブの平面視において、タイヤ周方向におけるサイプの両端の位置よりもタイヤ周方向一方側に突出するように曲がった屈曲部を有し、トレッドゴムの23℃での硬度(23℃Hs)が55以上、64以下である。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る空気入りタイヤによれば、操縦安定性を確保しつつ、ノイズ性能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態の一例である空気入りタイヤの斜視図である。
【
図2】実施形態の一例である空気入りタイヤの断面図であって、タイヤ軸方向の半断面を示す図である。
【
図3】トレッドの接地面の形状を模式的に示す図である。
【
図4】実施形態の一例である空気入りタイヤの平面図であって、トレッドの一部を拡大して示す図である。
【
図5】実施形態の他の一例である空気入りタイヤの平面図であって、トレッドの一部を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る空気入りタイヤの実施形態の一例について詳細に説明する。以下で説明する実施形態はあくまでも一例であって、本発明は以下の実施形態に限定されない。また、以下で説明する実施形態の各構成要素を選択的に組み合わせてなる形態は本発明に含まれている。
【0011】
図1は、実施形態の一例である空気入りタイヤ1の斜視図である。
図1では、空気入りタイヤ1の内部構造を併せて図示している。
図1に示すように、空気入りタイヤ1は、路面に接地する部分であるトレッド10と、トレッド10の両側に配置された一対のサイドウォール12と、サイドウォール12のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード14と、一対のビード14の間に架け渡されるカーカス15と、カーカス15のタイヤ径方向内側に配置されたインナーライナー16とを備える。
【0012】
空気入りタイヤ1は、車両に対する装着方向が指定されたタイヤであって、車両の右側と左側とで車両に装着する向きが反対になる。トレッド10は、タイヤ赤道CL(
図2参照)に対して左右非対称のトレッドパターンを有する。なお、タイヤ赤道CLとは、トレッド10のタイヤ軸方向のちょうど中央を通るタイヤ周方向に沿った仮想線である。本明細書では、説明の便宜上「左右」の用語を使用するが、この左右とは、空気入りタイヤ1が車両に装着された状態で車両の進行方向に向かって左右を意味する。
【0013】
トレッド10は、トレッドゴム11で構成される。本実施形態では、トレッド10は、タイヤ赤道CL上に形成された主溝30(センター主溝)と、一対の主溝31,32(ショルダー主溝)を有する。3本の主溝30,31,32は、タイヤ軸方向に曲がることなく、タイヤ周方向に沿って真っ直ぐに形成されている。
【0014】
トレッド10は、主溝30,31により区画されるセンターリブ40(第1センターリブ)と、主溝30,32により区画されるセンターリブ50(第2センターリブ)とを有する。また、トレッド10は、ショルダー主溝31を挟んで第1センターリブ40とタイヤ軸方向に対向配置されるショルダーブロック60(第1ショルダーブロック)と、ショルダー主溝32を挟んで第2センターリブ50とタイヤ軸方向に対向配置されるショルダーブロック70(第2ショルダーブロック)とを有する。各ブロックは、タイヤ周方向に沿って真っ直ぐに形成されている。なお、ブロックとは、主溝の底に対応する位置からタイヤ径方向外側に向かって隆起した部分であって、陸とも呼ばれる。
【0015】
サイドウォール12は、トレッドゴム11とは異なる種類のサイドウォールゴム13で構成される。サイドウォール12は、トレッド10の両側に配置され、タイヤ周方向に沿って環状に形成されている。サイドウォール12は、空気入りタイヤ1のタイヤ軸方向外側に最も張り出した部分であって、タイヤ軸方向外側に向かって凸となるように緩やかに湾曲している。サイドウォール12は、カーカス15の損傷を防止する機能を有する。サイドウォール12は、空気入りタイヤ1がクッション作用をする際に最もたわむ部分であり、通常、耐疲労性を有する柔軟なゴムが採用される。
【0016】
ビード14は、サイドウォール12のタイヤ径方向内側に配置され、ホイールのリムに固定される部分である。ビード14は、ビードコア17と、ビードフィラー18とを有する。ビードコア17は、スチール製のビードワイヤで構成され、タイヤ周方向の全周にわたって延びる環状部材であり、ビード14に埋設されている。ビードフィラー18は、タイヤ径方向外側に延出する先端先細り形状を有し、タイヤ周方向の全周にわたって延びる環状の硬質ゴム部材である。
【0017】
カーカス15は、一対のビード14の間に架け渡され、ビードコア17の周りで折り返されることで係止されている。カーカス15は、有機繊維からなるカーカスコードと、トッピングゴムとを含む。カーカスコードは、タイヤ周方向に対して実質上直角(例えば、80°~90°)に配置されている。カーカスコードに用いられる有機繊維としては、例えば、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、アラミド繊維、およびナイロン繊維が挙げられる。
【0018】
インナーライナー16は、一対のビード14間のタイヤ内面を覆っている。インナーライナー16は、耐空気透過性ゴムにより構成されており、空気入りタイヤ1の空気圧を保持する機能を有する。
【0019】
空気入りタイヤ1は、カーカス15のタイヤ径方向外側に配置されたベルト19と、ベルト19のタイヤ径方向外側全体を覆うキャッププライ22と、キャッププライ22のタイヤ径方向外側に配置され、ベルト19のタイヤ軸方向の両端部を覆うエッジプライ23とをさらに備える。キャッププライ22およびエッジプライ23は、ベルト19を補強する機能を有する。
【0020】
ベルト19は、カーカス15の頂部の外周側に配置されており、カーカス15の外周面に重ねて設けられている。ベルト19は、タイヤ周方向に対して傾斜する方向に配列したコードをゴム被覆してなるベルトプライで形成されている。ベルト19のコードの材質は特に限定されず、例えば、ポリエステル、レーヨン、ナイロン、アラミド等の有機繊維、またはスチール等の金属が挙げられる。本実施形態では、ベルト19は、スチールコードを含む2枚のベルトプライ20,21(
図2参照)で構成されている。なお、ベルトプライの枚数は特に限定されず、1枚でもよいし、3枚以上でもよい。
【0021】
以下、
図2を参照しながら、空気入りタイヤ1の内部構造について詳説する。
図2は、本実施形態の空気入りタイヤ1のタイヤ周方向に垂直な断面図である。なお、空気入りタイヤ1は、トレッドパターンを除いて、タイヤ赤道CLに対して左右対称であるため、
図2では、空気入りタイヤ1の車両外側半分のみを示している。
【0022】
図2に示すように、空気入りタイヤ1は、カーカス15のタイヤ径方向外側に配置されたベルト19を備える。ベルト19は、2枚のベルトプライ20,21で構成されている。ベルトプライ20は、ベルトプライ21のタイヤ径方向内側に配置される。ベルトプライ20のタイヤ軸方向の長さは、ベルトプライ21のタイヤ軸方向の長さよりも大きい。つまり、ベルトプライ20の端部20Aは、ベルトプライ21の端部21Aよりもタイヤ軸方向外側に位置する。以下、ベルトプライ20の端部20Aを、ベルト19の端部19Aとして説明する。
【0023】
トレッド10とベルト19との間には、キャッププライ22およびエッジプライ23が配置されている。本実施形態では、キャッププライ22およびエッジプライ23は、連続する1つの部材として構成されている。キャッププライ22およびエッジプライ23は、長さ方向に引き揃えた有機繊維コードをタイヤ周方向に対して螺旋状に連続的に巻回することで得られる。キャッププライ22およびエッジプライ23に用いられる有機繊維としては、例えば、アラミド繊維、ポリエステル繊維、およびナイロン繊維が挙げられる。
【0024】
キャッププライ22の端部22Aは、ベルト19の端部19Aよりもタイヤ軸方向外側に位置している。つまり、キャッププライ22は、ベルト19のタイヤ径方向外側の全体を覆うように、ベルト19とトレッドゴム11との間に配置されている。
【0025】
エッジプライ23は、タイヤ径方向において、キャッププライ22のタイヤ径方向外側に隣接し、ベルト19の両端部を覆うように配置されている。本実施形態では、キャッププライ22のタイヤ軸方向の両端部が折り返されており、この折り返された部分がエッジプライ23である。ベルト19の両端部に配置されたエッジプライ23は、タイヤ軸方向において、互いに離間して配置されている。
【0026】
上記のように、キャッププライ22は、ベルト19のタイヤ径方向外側の全体を覆うように配置されているため、キャッププライ22からベルト19に作用するタイヤ径方向の拘束力は、タイヤ軸方向全体で比較的均一である。一方、エッジプライ23は、ベルト19のタイヤ軸方向の両端部を覆うように配置されているため、エッジプライ23からベルト19に作用するタイヤ径方向の拘束力は、ベルト19のタイヤ軸方向の両端部およびその周辺に集中して作用する。
【0027】
図2において、両矢印LTは、タイヤ赤道CLからトレッド10の端部までのタイヤ軸方向の長さを表している。ここで、トレッド10の端部とは、トレッドゴム11のタイヤ軸方向の端部11Aを意味する。この長さLTは、トレッド10のタイヤ軸方向の長さの半分である。また、両矢印LEは、エッジプライ23の外端23Aから、エッジプライ23の内端23Bまでのタイヤ軸方向の長さを表している。この長さLEは、エッジプライ23のタイヤ軸方向の長さの半分である。なお、長さLTおよび長さLEは、空気入りタイヤ1を正規リムに組み付けて内圧0kPaとした無負荷状態での長さを意味する。
【0028】
長さLEは、長さLTの50%以上であり、好ましくは55%以上であり、より好ましくは60%以上である。この場合、ベルト19のタイヤ軸方向外側に作用する拘束力が大きくなり、トレッド10の接地面の形状を湾曲化させることができる。より具体的には、
図3に示すように、タイヤ赤道CL上における接地面のタイヤ周方向に沿った長さ(接地長)に対し、接地面のタイヤ軸方向両端(接地端)近傍の接地長が比較的短く、トレッド10の接地面の形状が楕円形状に近い形状を有する。その結果、路面の水がトレッド10の接地面の輪郭に沿って効果的に左右にかき分けられるため、排水性能が向上し、湿潤路面での制動性・グリップ性(以下、ウェット性能という)が改善する。また、接地端近傍の接地長が短くなることで、走行時に発生するノイズの周波数が分散され、パターンノイズが低減される。さらに、ベルト19に作用する拘束力が大きくなるため、走行時のタイヤ軸方向の振動が抑制され、ロードノイズが低減される。長さLEの上限値は、例えば、長さLTの80%である。
【0029】
エッジプライ23の内端23Bは、ショルダー主溝32よりもタイヤ軸方向内側に位置することが好ましい。これにより、ベルト19のタイヤ軸方向外側に作用する拘束力がより大きくなり、トレッド10の接地面の形状を湾曲化させることが容易になる。
【0030】
エッジプライ23に用いる有機繊維コードの2%モジュラスは、3000N/mm2以上が好ましく、5000N/mm2以上がより好ましい。この場合、ウェット性能がより向上し、パターンノイズおよびロードノイズをより低減できる。また、エッジプライ23に用いる有機繊維コードの2%モジュラスは、13000N/mm2以下が好ましく、9000N/mm2以下がより好ましい。この場合、走行時の操縦安定性が向上する。よって、エッジプライ23に用いる有機繊維コードの2%モジュラスの好適な範囲の一例は、3000N/mm2以上、11000N/mm2以下である。なお、有機繊維コードの2%モジュラスの測定は、JIS L 1017の規定に準拠して行われる。
【0031】
図2において、両矢印LSは、空気入りタイヤ1を正規リムに組み付けて内圧0kPaとした無負荷状態にて、タイヤ赤道CLからサイドウォール12のうち最もタイヤ軸方向外側に張り出した部分までのタイヤ軸方向の長さを表している。この長さLSは、タイヤ断面最大幅の半分、つまり断面幅の呼びの半分である。ここで、長さLTは、長さLSの84%以上、87%以下であることが好ましい。長さLTが当該範囲内であれば、パターンノイズおよびロードノイズを低減させることが容易になる。なお、本明細書において、「断面幅の呼び」とは、JIS D4202「自動車用タイヤ-呼び方及び諸元」に規定された「タイヤの呼び」に含まれる「断面幅の呼び」である。
【0032】
本実施形態では、
図2に示すように、補強ゴム層24が、ベルト19の端部19Aと、ビードフィラー18の先端18Aの間の位置において、2枚のカーカス15に挟まれるように配置されている。補強ゴム層24は、タイヤ周方向に沿って環状に延びている。補強ゴム層24は、サイドウォール12の剛性を向上させる機能を有する。
【0033】
補強ゴム層24は、ビードベースラインBLを基準にしたタイヤ断面高さHの20%以上、60%以下の範囲に配置されることが好ましく、タイヤ断面高さHの30%以上、50%以下の範囲に配置されることがより好ましい。補強ゴム層24が当該範囲内に配置されると、サイドウォール12の剛性が向上し、トレッド10からビード14への振動伝達が抑制されることで、ロードノイズがより低減する。ここで、ビードベースラインBLは、標準リムのリム径を規定するタイヤ軸方向の仮想直線であり、タイヤ断面高さHは、空気入りタイヤ1を正規リムに組み付けて内圧0kPaとした無負荷状態にて、ビードベースラインBLからタイヤ赤道CL位置におけるトレッド10の外表面までのタイヤ径方向の距離である。
【0034】
補強ゴム層24の厚みは、0.4mm以上、3.0mm以下であることが好ましい。補強ゴム層24の厚みが当該範囲内であれば、ロードノイズの低減効果がより顕著になる。補強ゴム層24の厚みは、タイヤ径方向において異なっていてもよいが、本実施形態では、補強ゴム層24はタイヤ径方向にわたって一定の厚みを有している。
【0035】
補強ゴム層24のゴム硬度は、サイドウォール12のゴム硬度よりも高く、ビードフィラー18のゴム硬度よりも低いことが好ましい。この場合、ロードノイズの低減効果がより顕著になる。例えば、ビードフィラー18のゴム硬度は85~100、補強ゴム層24のゴム硬度は70~85、サイドウォール12のゴム硬度は45~70である。なお、上記のゴム硬度は、実施例に記載したJIS K6253に準拠した方法で測定した硬度である。
【0036】
以下、
図3を参照しながら、空気入りタイヤ1のトレッド10の接地面について詳説する。
図3は、トレッド10の接地面の形状を模式的に示す図である。
【0037】
上記の通り、エッジプライ23のタイヤ軸方向の長さを、トレッド10のタイヤ軸方向の長さの50%以上とすることで、ベルト19のタイヤ軸方向外側に作用する拘束力が大きくなり、トレッド10の接地面の形状が湾曲化する。そのため、
図3に示すように、トレッド10の接地面は、タイヤ赤道CL上における接地長(L1)に対し、接地端近傍の接地長(L2)が比較的短く、楕円形状に近い形状を有する。ここで、接地長(L1)とは、未使用の空気入りタイヤを正規リムに装着して、所定の内圧となるように空気を充填した状態で、正規荷重の70.4%に相当する荷重を加えたときの接地面のタイヤ赤道CL上のタイヤ周方向に沿った長さである。また、接地長(L2)とは、上記測定条件で求めた接地面のタイヤ軸方向両端から10mmタイヤ軸方向内側の位置における接地面のタイヤ周方向に沿った長さである。なお、上記測定条件における所定の内圧とは、タイヤの扁平率が60%以上である場合は、200kPaであり、扁平率が60%未満である場合は、220kPaである。また、Extra Loadと記載されたタイヤにおいては、上記測定条件における所定の内圧とは、扁平率が60%以上である場合は、240kPaであり、扁平率が60%未満である場合は、260kPaである。
【0038】
本明細書において、L2/L1がトレッド10の接地面の矩形率と定義される。なお、本実施形態において、接地長(L2)は、トレッド10の左右において実質的に同じ長さである。
【0039】
ここで、トレッド10の接地面の矩形率は、0.85以下であることが好ましく、0.83以下であることがより好ましい。この場合、ウェット性能およびノイズ性能を向上させることが容易になる。また、トレッド10の接地面の矩形率は、0.75以上であることが好ましく、0.77以上であることがより好ましい。この場合、操縦安定性が向上する。よって、トレッド10の接地面の矩形率の好適な範囲の一例は、0.75以上、0.85以下であり、より好ましくは、0.77以上、0.83以下である。
【0040】
以下、トレッドゴム11を構成するタイヤトレッド用ゴム組成物(以下、単にゴム組成物という)について詳説する。
【0041】
本発明のゴム組成物は、ゴム組成物の23℃での硬度(23℃Hs)が、55以上、64以下である。23℃Hsが当該範囲内であれば、後述するトレッドパターンを有するトレッドゴム11に当該ゴム組成物を適用した際、操縦安定性を確保しつつ、優れたノイズ性能を発揮することができる。なお、本発明において、23℃Hsとは、加硫後のゴム組成物を、実施例に記載したJIS K6253-3:2012に準拠し、デュロメータタイプAを用いて測定した値である。
【0042】
ゴム組成物の23℃Hsの下限値は、55であればよいが、好ましくは56、より好ましくは57である。この場合、タイヤの剛性が向上し、操縦安定性が向上する。ゴム組成物の23℃Hsの上限値は、64であればよいが、好ましくは63、より好ましくは63である。この場合、ノイズ性能の向上がより顕著になる。
【0043】
ゴム組成物の-25℃での貯蔵弾性率(-25℃E’)は、50MPa以上、150MPa以下であることが好ましい。ゴム組成物の-25℃E’が当該範囲内であれば、雪上路面や氷上路面での制動性・グリップ性(以下、スノー性能という)が向上する。なお、本発明において、-25℃E’とは、加硫後のゴム組成物を、温度-25℃、初期歪10%、動歪1%、周波数10Hzの条件で実施例に記載した方法で測定した値である。
【0044】
ゴム組成物は、スチレンブタジエン系ゴムおよびイソプレン系ゴムを含有するゴム成分を含む。これら2種類のゴムを含有することで、本発明の効果を発揮しつつ、加工性が向上したゴム組成物を得ることができる。
【0045】
スチレンブタジエン系ゴムは、スチレン系単位およびブタジエン系単位を有するゴムであれば特に限定されず、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E-SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S-SBR)等が挙げられる。なお、スチレンブタジエン系ゴムは、ゴム100質量部中のスチレン系単位およびブタジエン系単位の合計含有率が、例えば、95質量部以上であり、98質量部以上でも、100質量部でもよい。これらのスチレンブタジエン系ゴムは、1種を単独で用いてもよいが、2種以上を併用することが好ましい。
【0046】
スチレンブタジエン系ゴムは、非変性SBR、変性SBRのいずれであってもよいが、変性SBRを含むことが好ましい。変性SBRを含むことで転がり抵抗が低減し、良好な燃費性能が得られる傾向がある。なお、本明細書において、ゴム成分における「変性」とは、シリカとの反応性を有する官能基を有するもののことをいい、「未変性」とは、シリカとの反応性を有する官能基を有しないもののことをいう。シリカとの反応性を有する官能基としては、例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルコキシシリル基、エポキシ基などが挙げられ、当該官能基は、分子末端に導入されたものであってもよく、分子鎖中に導入されたものであってもよい。
【0047】
スチレンブタジエン系ゴムとしては、例えば、住友化学(株)、(株)ENEOSマテリアル、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等により製造・販売されているSBRを使用できる。
【0048】
上記ゴム組成物において、ゴム成分100質量部中のスチレンブタジエン系ゴムの含有量は、30質量部以上であることが好ましく、40質量部以上であることがより好ましく、50質量部以上であることがさらに好ましい。スチレンブタジエン系ゴムの含有量を30質量部以上にすることで、良好な操縦安定性が得られる傾向がある。また、スチレンブタジエン系ゴムの含有量は、80質量部以下とすることが好ましい。スチレンブタジエン系ゴムを多量に使用することで、加工性が悪化することが懸念されるが、スチレンブタジエン系ゴムの含有量を80質量部以下とすることで、加工性の悪化を抑制できる。よって、スチレンブタジエン系ゴムの含有量の好適な範囲の一例は、30質量部以上、80質量部以下である。
【0049】
スチレンブタジエン系ゴムのガラス転移温度(Tg)は、本発明の効果が良好に得られるという観点から、-70℃以上、-20℃以下であることが好ましい。ここで、スチレンブタジエン系ゴムのガラス転移温度は、JIS K7121に準拠して示差走査熱量測定(DSC)法により、昇温温度:20℃/分にて(測定温度範囲:-150℃~50℃)測定される。
【0050】
イソプレン系ゴムとしては、例えば、イソプレンゴム(IR)および天然ゴム等タイヤ工業において一般的なものを使用することができるが、スノー性能を向上させる観点から、天然ゴムであることが好ましい。天然ゴムには、非改質天然ゴム(NR)の他に、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素化天然ゴム(HNR)、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)、グラフト化天然ゴム等の改質天然ゴム等も含まれる。これらのゴムは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
上記ゴム組成物において、ゴム成分100質量部中のイソプレン系ゴムの含有量は、15質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であることがより好ましく、25質量部以上であることがさらに好ましい。
【0052】
ゴム成分には、スチレンブタジエン系ゴムおよびイソプレン系ゴム以外の他のゴム成分が含まれていてもよい。他のゴム成分としては、例えば、ブタジエン系ゴム(BR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)等のジエン系ゴムが挙げられる。これらのゴム成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】
ブタジエン系ゴム(BR)は、ブタジエン系単位を主たる単位とする重合体であれば特に限定されず、例えば、高シス含量のBR、低シス含量のBR等を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
本実施形態では、補強性充填剤として、カーボンブラックおよびシリカが用いられる。
【0055】
カーボンブラックとしては、特に限定されず、公知の種々の品種を用いることができる。例えば、カーボンブラックとしては、窒素吸着比表面積(N2SA)(JIS K6217-2)が70~150m2/gであるものを用いることが好ましい。具体的には、SAF級(N100番台),ISAF級(N200番台),HAF級(N300番台)のカーボンブラックが例示される。これら各グレードのカーボンブラックは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0056】
カーボンブラックの配合量は、ゴム成分100質量部に対して、10質量部未満であることが好ましく、8質量部未満であることが好ましい。カーボンブラックの配合量を減らすことで、ゴム組成物の硬度を低下させ、ノイズ性能を向上させることができる。また、カーボンブラックの配合量の下限は、例えば、2質量部超である。よって、カーボンブラックの配合量の好適な範囲の一例は、2質量部超、10質量部未満であり、より好ましくは、2質量部超、8質量部未満である。
【0057】
シリカとしては、特に限定されず、例えば、湿式沈降法シリカや湿式ゲル法シリカなどの湿式シリカを用いてもよい。シリカのBET比表面積(JIS K6430に記載のBET法に準じて測定)は、特に限定されず、例えば90~250m2/gでもよく、150~220m2/gでもよい。
【0058】
シリカの配合量は、ゴム成分100質量部に対して、60質量部超であることが好ましく、65質量部以上であることがより好ましい。シリカの配合量を60質量部超にすることで、ウェット性能が向上する。また、シリカの配合量は、90質量部未満であることが好ましく、85質量部以下であることがより好ましい。シリカの配合量を90質量部未満にすることで、転がり抵抗が減少する。よって、シリカの配合量の好適な範囲の一例は、60質量部超、90質量部未満である。
【0059】
本実施形態のゴム組成物には、上記成分の他に、シランカップリング剤、ステアリン酸、酸化亜鉛、ワックス、老化防止剤、オイル、加硫促進剤、加硫剤など、タイヤトレッド用ゴム組成物において一般に使用される各種添加剤を配合することができる。
【0060】
シランカップリング剤としては、スルフィドシランやメルカプトシラン等の公知のシランカップリング剤を用いることができる。シランカップリング剤の配合量は、特に限定されないが、シリカの配合量の2質量部以上、20質量部以下であることが好ましく、5質量部以上、15質量部以下であることがより好ましい。
【0061】
オイルとしては、一般にゴム組成物に配合される各種オイルを用いることができる。例えば、鉱物油、即ちパラフィンオイル、ナフテンオイル、およびアロマオイルからなる群から選択される少なくとも1種の鉱物油を用いてもよい。オイルの含有量は、特に限定されず、例えば、ゴム成分100質量部に対して40質量部以下でもよく、30質量部以下でもよい。
【0062】
加硫剤としては、硫黄が好ましく用いられる。加硫剤の配合量は、特に限定されず、例えば、ゴム成分100質量部に対して0.1質量部以上、5質量部以下でもよく、0.5質量部以上、3質量部以下でもよい。
【0063】
加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系、チウラム系、チアゾール系、およびグアニジン系などの各種加硫促進剤が挙げられる。これら加硫促進剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。加硫促進剤の配合量は、特に限定されず、例えば、ゴム成分100質量部に対して0.1質量部以上、5質量部以下でもよく、0.5質量部以上、3質量部以下でもよい。
【0064】
本実施形態に係るゴム組成物は、通常用いられるバンバリーミキサーやニーダー、ロール等の混合機を用いて、常法に従い混練し作製することができる。すなわち、例えば、第1混合段階(ノンプロ練り工程)で、ゴム成分に対し、カーボンブラックおよびシリカとともに、加硫剤および加硫促進剤以外の添加剤を添加混合し、次いで、得られた混合物に、最終混合段階(プロ練り工程)で加硫剤および加硫促進剤を添加混合して未加硫のゴム組成物を調製することができる。
【0065】
なお、ノンプロ練り工程は、単一の混合工程としてもよく、混合と排出を繰り返す複数の混合工程に分けて実施してもよい。例えば、ノンプロ練り工程は、ゴム成分およびカーボンブラックの全量と、シリカおよびシランカップリング剤の一部とを混合する第ノンプロ練り工程と、第1ノンプロ練り工程の混合物にシリカおよびシランカップリング剤の一部と、酸化亜鉛および老化防止剤の全量とを混合する第2ノンプロ練り工程とを含んでいてもよい。複数の混合工程に分けて実施することで、充填剤とポリマーの化学結合を均一に形成することが可能である。
【0066】
以下、
図4を参照しながら、空気入りタイヤ1のトレッドパターンについて詳説する。
図4は、空気入りタイヤ1(トレッド10)の平面図である。
【0067】
図4に示すように、トレッド10は、タイヤ赤道CLに対して左右非対称のトレッドパターンを有する。以下では、タイヤ赤道CLより接地端E1側の領域を第1領域10Aとし、タイヤ赤道CLより接地端E2側の領域を第2領域10Bとする。なお、本明細書において、「接地端E1,E2」は、未使用の空気入りタイヤ1を正規リムに装着して正規内圧となるように空気を充填した状態で所定の荷重を加えたときに、平坦な路面に接地する領域(接地面)のタイヤ軸方向両端と定義される。乗用車用タイヤの場合、所定の荷重は正規荷重の88%に相当する荷重である。空気入りタイヤ1のトレッドパターンは、第1領域10Aが車両内側に、第2領域10Bが車両外側に位置するように、車両に対してタイヤが装着された場合に、本発明の効果を発揮する。
【0068】
トレッド10は、タイヤ赤道CL上に形成されたセンター主溝30と、タイヤ赤道CLと車両内側の接地端E1との間に形成されたショルダー主溝31と、タイヤ赤道CLと車両外側の接地端E2との間に形成されたショルダー主溝32と、当該3本の主溝30,31,32により区画された複数のブロックとを有する。なお、主溝の本数は3本に限定されず、2本でもよいし、4本以上でもよい。
【0069】
ショルダー主溝31,32は、タイヤ赤道CL(センター主溝30)から等距離の位置にそれぞれ形成されることが好ましい。これにより、タイヤ赤道CLを境界とする左右の領域における剛性バランスが良好になり、本発明の効果がより顕著に発揮される。
【0070】
3本の主溝30,31,32の幅の合計は、接地端E1から接地端E2までのタイヤ軸方向に沿った長さ(以下、「タイヤ接地幅」とする)の3%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましく、8%以上であることがさらに好ましい。この場合、排水性能が向上し、ウェット性能が大幅に改善する。また、3本の主溝30,31,32の幅の合計は、タイヤ接地幅の30%以下であることが好ましく、28%以下であることがより好ましく、25%以下であることがさらに好ましい。この場合、優れた操縦安定性を確保できる。よって、3本の主溝30,31,32の幅の合計の好適な範囲の一例は、タイヤ接地幅の5%以上、30%以下である。また、ウェット性能の改善をより重視する場合は、3本の主溝30,31,32の幅の合計は、タイヤ接地幅の10%以上、30%以下であってもよい。なお、本明細書において、溝の幅とは、特に断らない限り、トレッド10の接地面に沿ったプロファイル面における幅を意味する。
【0071】
ショルダー主溝31,32の幅は、タイヤ赤道CL上に形成されたセンター主溝30の幅よりも大きいことが好ましい。この場合、排水性能が向上し、ウェット性能が大幅に改善する。センター主溝30の幅は、例えば、8mm以上、14mm以下であり、ショルダー主溝31,32の幅は、例えば、9mm以上、15mm以下である。3本の主溝30,31,32の深さは特に限定されず、例えば、7mm以上、15mm以下である。
【0072】
3本の主溝30,31,32の少なくともいずれかには、一般的に、摩耗インジケータ(図示せず)が設けられる。摩耗インジケータは、溝底に配置される突起であって、トレッドゴムの摩耗レベルを確認するための指標となる。
【0073】
3本の主溝30,31,32の壁は、溝底に向かって次第に溝幅が細くなるように傾斜している。主溝の壁はブロックの側壁を構成するため、言い換えると、ブロックの側壁は接地面から離れるほどブロックの幅が広くなるように側壁が傾斜している。
【0074】
トレッド10は、主溝30,31により区画される第1センターリブ40と、主溝30,32により区画される第2センターリブ50とを有する。また、トレッド10は、ショルダー主溝31を挟んで第1センターリブ40とタイヤ軸方向に対向配置される第1ショルダーブロック60と、ショルダー主溝32を挟んで第2センターリブ50とタイヤ軸方向に対向配置される第2ショルダーブロック70とを有する。
【0075】
第1センターリブ40および第2センターリブ50は、タイヤ周方向に連続するリブ状のブロックである。なお、本明細書において、「リブ状のブロック」とは、幅が2mmを超える溝が形成されていないブロックを意味する。第1センターリブ40および第2センターリブ50をタイヤ周方向に連続するリブ状のブロックとすることで、トレッド10の剛性が向上し、操縦安定性が向上する。
【0076】
第1センターリブ40および第2センターリブ50に幅広の溝が存在すると、トレッド10の剛性が低下しやすい。その結果、硬度の小さいゴム組成物をトレッドゴム11に適用した場合、操縦安定性が悪化するおそれがある。本実施形態の空気入りタイヤ1によれば、第1センターリブ40および第2センターリブ50に幅広の溝が形成されていないため、硬度の小さいゴム組成物をトレッドゴム11に適用した場合であっても、操縦安定性を確保できる。つまり、操縦安定性を確保しつつ、燃費性能を向上できる。
【0077】
第1センターリブ40および第2センターリブ50は、センター主溝30により分断されている。また、第1センターリブ40はショルダー主溝31により第1ショルダーブロック60と分断され、第2センターリブ50はショルダー主溝32により第2ショルダーブロック70と分断されている。本実施形態では、第1センターリブ40および第2センターリブ50は互いに同じ幅を有する。また、第1ショルダーブロック60および第2ショルダーブロック70は、第1センターリブ40および第2センターリブ50より幅広に形成され、互いに同じ幅を有する。空気入りタイヤ1は、ドライ路面だけでなく、ウェット路面、雪氷路面における性能にも優れ、オールシーズンタイヤに好適である。
【0078】
以下、
図4を参照しながら、トレッド10を構成するセンター
リブ40,50、およびショルダーブロック60,70についてさらに詳説する。
【0079】
[第1センターリブ40]
第1センターリブ40は、タイヤ周方向に沿って真っ直ぐに形成され、全長にわたって一定の幅を有している。第1センターリブ40の接地面の幅は、例えばタイヤ接地幅の12~25%に相当する幅を有する。第1センターリブ40の幅が当該範囲内であれば、操縦安定性が向上する。第1センターリブ40の幅の一例は、15mm以上、35mm以下である。
【0080】
第1センターリブ40には、タイヤ周方向に間隔をあけてサイプ41が複数形成されている。本明細書では、溝幅が2.0mm以下の細溝をサイプと定義する。サイプの幅は、例えば、0.5mm以上、1.5mm以下、または0.5mm以上、1.0mm以下である。サイプ41は、操縦安定性およびノイズ性能の改善に寄与する。第1センターリブ40には、サイプ41と形状が異なる他のサイプが形成されていてもよいが、本実施形態ではサイプ41のみが形成されている。各サイプ41は、実質的に同じ形状を有する。詳しくは後述するが、第1センターリブ40を横断するサイプの本数は、第2センターリブ50を横断するサイプの本数より多い。
【0081】
サイプ41は、例えば、タイヤ周方向に所定本数単位で僅かにサイプ同士の間隔を変化させたバリアブルピッチで形成されていてもよく、同じ間隔で形成されていてもよい。タイヤ周方向に隣り合うサイプ41同士の間隔は、例えば、センター主溝30の幅より小さく、5mm以上、30mm以下である。また、サイプ41同士の間隔は、第2センターリブ50に形成されるサイプ同士の間隔よりも小さくなっている。
【0082】
サイプ41は、第1センターリブ40の平面視において、当該サイプの長さ方向両端よりもタイヤ周方向一方側に突出するように曲がった屈曲部42を有する。屈曲部42を有することで、硬度の小さいゴム組成物をトレッドゴム11に適用した場合であっても、サイプ41のエッジ効果により優れた制動性能を発揮する。車両の制動時には、車両内側の第1領域10Aで接地面積が大きくなるため、第1センターリブ40に多くのサイプ41を形成することでエッジ効果が高まり、湿潤路面における制動性能も大きく向上する。また、大きく屈曲したサイプ41により、横方向のエッジ成分が増加し、車両旋回時の操縦安定性も向上する。
【0083】
サイプ41は、第1センターリブ40を横断するサイプである。サイプ41が第1センターリブ40を横断して主溝30,31に連通することで、トレッド10のタイヤ軸方向中央部で空気が流れる流路が多くなる。これにより、走行時に発生する気柱管共鳴の周波数が分散され、パターンノイズが低減される。
【0084】
サイプ41の深さは、例えば、最も深い部分でセンター主溝30の深さの60~90%である。サイプ41は、長さ方向両端から所定の長さ範囲において、他の部分よりも深さが浅くなっていてもよい。この場合、サイプ41の形成による第1センターリブ40の剛性の低下を抑制でき、操縦安定性が向上する。所定の長さ範囲は、例えば、第1センターリブ40の幅の3~10%に相当する長さの範囲である。
【0085】
[第2センターリブ50]
第2センターリブ50は、上記のように、センター主溝30を挟んで第1センターリブ40とタイヤ軸方向に対向配置され、タイヤ周方向に沿って真っ直ぐに形成されている。第2センターリブ50の接地面の幅は、例えば、タイヤ接地幅の12~25%である。第2センターリブ50の幅が当該範囲内であれば操縦安定性が向上する。本実施形態において、第2センターリブ50は、第1センターリブ40と同じ幅を有し、全長にわたって一定の幅で形成されている。
【0086】
第2センターリブ50には、タイヤ周方向に間隔をあけて第1サイプ51が複数形成されている。複数の第1サイプ51は、例えば、タイヤ周方向に所定本数単位で僅かにサイプ同士の間隔を変化させたバリアブルピッチで形成されていてもよく、同じ間隔で形成されていてもよい。第2センターリブ50には、第1サイプ51のみが形成されていてもよいが、本実施形態では、第1サイプ51の他に、3種類のサイプ(第2サイプ52、第3サイプ53、および第4サイプ54)が形成されている。
【0087】
第1サイプ51は、第2センターリブ50を横断するサイプであって、主溝30,32につながっている。第1サイプ51は、第2センターリブ50の平面視において、略S字形状を有することが好ましい。この場合、硬度の小さいゴム組成物をトレッドゴム11に適用した場合であっても、車両旋回時における操縦安定性がより向上する。
【0088】
第2センターリブ50において、第1サイプ51の各々とタイヤ軸方向に重なる領域には、複数の第2サイプ52からなる第2サイプ群と、複数の第3サイプ53からなる第3サイプ群とが形成されている。第2サイプ52は、センター主溝30から延びてブロック内で終端し、第3サイプ53は、ショルダー主溝32から延びてブロック内で終端している。第2サイプ52および第3サイプ53は、第1サイプ51との間に所定の距離をあけて形成された短いサイプである。また、当該各サイプは、タイヤ軸方向および周方向に対して所定の角度で傾斜している。
【0089】
本実施形態において、1本の第1サイプ51とタイヤ軸方向に重なる第2サイプ群は、3本の第2サイプ52で構成されている。当該3本の第2サイプ52は、例えば、互いに等間隔で平行に形成されている。第3サイプ群についても同様に、互いに等間隔で平行に形成された3本の第3サイプ53で構成されている。各第2サイプ群を構成する複数の第2サイプ52は、互いに異なる長さを有し、第1サイプ51に近づくほど長くなっている。また、各第3サイプ群を構成する複数の第3サイプ53は、互いに異なる長さを有し、第1サイプ51に近づくほど長くなっている。
【0090】
即ち、センター主溝30から延びる各第2サイプ52は、第1サイプ51がショルダー主溝32の方向に凸となった領域では長く、センター主溝30の方向に凸となった領域では短くなっている。ショルダー主溝32から延びる第3サイプ53は、第1サイプ51がセンター主溝30の方向に凸となった領域では長く、ショルダー主溝32の方向に凸となった領域では短くなっている。この場合、第2センターリブ50の剛性バランスが良好になり、より信頼性の高いタイヤ性能を実現できる。
【0091】
第2センターリブ50の各第1サイプ51に挟まれた領域には、第2センターリブ50を横断する略直線状の第4サイプ54が形成されている。つまり、第2センターリブ50には、第1サイプ51と第4サイプ54がタイヤ周方向に交互に配置されている。第4サイプ54は、第2サイプ52および第3サイプ53と平行に形成され、途中で曲がることなく真っ直ぐに延びている。
【0092】
第4サイプ54は、ノイズの低減において重要な役割を果たす。具体的には、第4サイプ54が主溝30,32に連通することで空気が流れる流路が多くなる。これにより、走行時に発生する気柱管共鳴の周波数が分散され、パターンノイズが低減される。
【0093】
第2センターリブ50に形成される各サイプの深さは、互いに同じであってもよい。各サイプの深さは、例えば、最も深い部分でセンター主溝30の深さの60~90%である。本実施形態では、長さが短い第2サイプ52および第3サイプ53は、全長にわたって一定の深さを有する。他方、第1サイプ51および第4サイプ54は、長さ方向両端から所定の長さ範囲において、他の部分よりも浅くなっている。この場合、サイプの形成による第2センターリブ50の剛性低下を抑制できる。所定の長さ範囲は、例えば、第2センターリブ50の幅の3~10%に相当する長さ範囲である。
【0094】
第2センターリブ50を横断するサイプの本数は、第1センターリブ40を横断するサイプの本数よりも少ないことが好ましい。第1センターリブ40では、全てのサイプがブロックを横断しているが、第2センターリブ50では、第2サイプ52と第3サイプ53はブロック内で終端し、第1サイプ51と第4サイプ54がブロックを横断している。また、各ブロックに形成されたサイプ同士のタイヤ周方向の間隔は、第2センターリブ50において第1センターリブ40よりも大きくなっている。このため、センターリブ40,50を比較した場合に、ブロックを横断するサイプの本数は第2センターリブ50で大幅に少なくなっている。
【0095】
また、同一直線上に配置される第2サイプ52と第3サイプ53を1本とカウントした場合において、第1センターリブ40のサイプの本数が、第2センターリブ50のサイプの本数より多くてもよい。この場合、第1センターリブ40のサイプの本数は、例えば、第2センターリブ50のサイプの本数の1.1~1.5倍である。或いは、第2サイプ52および第3サイプ53の各々を1本とカウントした場合に、第1センターリブ40のサイプの本数>第2センターリブ50のサイプの本数であってもよい。第1センターリブ40のサイプの本数>第2センターリブ50のサイプの本数とすることにより、走行時に発生する気柱管共鳴の周波数が分散され、パターンノイズが低減される。また、制動性能と操縦安定性をより高いレベルで両立することが容易になる。
【0096】
[第1ショルダーブロック60]
第1ショルダーブロック60は、ショルダー主溝31を挟んで第1センターリブ40とタイヤ軸方向に対向配置され、タイヤ周方向に沿って真っ直ぐに形成されている。第1ショルダーブロック60の接地面の幅は、例えば、タイヤ接地幅の15~35%であり、第1センターリブ40の接地面の幅よりも大きい。本実施形態において、第1ショルダーブロック60は、第2ショルダーブロック70と同じ幅を有し、全長にわたって一定の幅で形成されている。
【0097】
第1ショルダーブロック60には、タイヤ軸方向に延びてショルダー主溝31につながった横溝として、長さが異なる2種類の横溝61,62が形成されている。いずれの横溝も、ショルダー主溝31から接地端E1を超える長さを有し、第1ショルダーブロック60の接地面を横断している。横溝61,62は、2mmを超える幅を有し、細線状の溝であるサイプと区別される。第1ショルダーブロック60は、上記のように、横溝61,62によりタイヤ周方向に接地面が分断されている。
【0098】
本明細書において、横溝が「タイヤ軸方向に延びる」とは、横溝がタイヤ軸方向に沿って延びる形態、およびタイヤ軸方向に対して45°以下、好ましくは30°以下の傾斜角度で延びる形態の両方を意図する。なお、タイヤ周方向に延びる主溝についても同様であり、主溝はタイヤ周方向に対して45°以下の傾斜角度で曲がりながらジグザグ状に形成されてもよい。
【0099】
横溝61,62は、例えば、ショルダー主溝31から接地端E1にわたって一定の幅を有する。ショルダー主溝31につながった横溝61,62を形成することにより排水性が向上し、ウェット性能が大幅に改善する。横溝61,62をショルダー主溝31と連通させると、ショルダー主溝31から横溝61,62に空気が流入するため、ノイズおよび空気抵抗が大きくなることが想定されるが、第1ショルダーブロック60は車両内側に配置されるため、横溝61,62の影響は小さい。なお、横溝62は、全長にわたって直線状に形成されている。横溝61は、接地端E1を超える位置まで直線状に形成され、サイドウォール12との境界またはその近傍でタイヤ周方向一方側に曲がっている。
【0100】
第1ショルダーブロック60において、横溝61と横溝62の間に位置する領域には、長さが異なる2種類のサイプ(第1サイプ63、第2サイプ64)が形成されている。いずれのサイプも、ショルダー主溝31から接地端E1を超える長さを有し、空気入りタイヤ1のショルダーにおいて互いに連結されている。第2サイプ64は、第1サイプ63よりも長く、横溝62と同様の長さを有する。第1ショルダーブロック60には、タイヤ周方向に、横溝61、第1サイプ63、第2サイプ64、および横溝62の順で、溝とサイプが繰り返し形成されている。なお、複数の溝とサイプは、例えば、バリアブルピッチで形成されている。
【0101】
横溝61,62、第1サイプ63、および第2サイプ64は、互いに略平行に形成され、タイヤ軸方向に対して傾斜している。当該横溝とサイプの傾斜角度は、例えば、センターリブ40,50のサイプの傾斜角度と比べて小さい。
【0102】
[第2ショルダーブロック70]
第2ショルダーブロック70は、ショルダー主溝32を挟んで第2センターリブ50とタイヤ軸方向に対向配置され、タイヤ周方向に沿って真っ直ぐに形成されている。第2ショルダーブロック70の接地面の幅は、例えば、タイヤ接地幅の20~35%であり、第2センターリブ50よりも大きい。第2ショルダーブロック70には、ブロックの接地面を横断する溝は形成されておらず、タイヤ周方向に連続している。
【0103】
第2ショルダーブロック70は、タイヤ軸方向に延びる横溝71,72、第1サイプ73、および第2サイプ74を有する点で、第1ショルダーブロック60と共通する。なお、長い方の溝である横溝71は、サイドウォール12との境界またはその近傍で、第1ショルダーブロック60の横溝61と反対方向に曲がっている。第2ショルダーブロック70には、タイヤ周方向に、横溝71、第2サイプ74、第1サイプ73、および横溝72の順で、溝とサイプが繰り返し形成されている。一方、第2ショルダーブロック70は、横溝71,72がショルダー主溝32に直接つながっていない点で、第1ショルダーブロック60と異なる。
【0104】
本実施形態において、横溝71,72は、第3サイプ75を介してショルダー主溝32につながっている。この場合、ショルダー主溝32から横溝71,72に空気が流入して車両外側に放出されることを抑制できるため、ノイズの抑制効果がより顕著になる。また、空気入りタイヤ1の空気抵抗も効果的に低減される。ノイズおよび空気抵抗には、車両内側に配置される第1ショルダーブロック60よりも車両外側に配置される第2ショルダーブロック70の溝の構成が大きく影響される。第3サイプ75の長さは特に限定されないが、好適な一例としては、第2ショルダーブロック70の接地面の幅の5~40%、または10~30%である。各第3サイプ65は、例えば、互いに同じ長さを有する。
【0105】
また、
図5に例示するように、第1ショルダーブロック60に形成された横溝61,62は、第2ショルダーブロック70の横溝71,72と同様に、第3サイプ65を介してショルダー主溝31につながっていてもよい。即ち、
図4に例示するトレッドパターンでは、左右のショルダーブロック60,70において横溝と主溝の接続形態が異なっているが、
図5に例示するトレッドパターンでは、ショルダーブロック60,70において横溝と主溝の接続形態が同様となっている。第3サイプ65の長さ、幅、深さ等は、第2ショルダーブロック70の第3サイプ75と実質的に同じであってもよい。
【実施例0106】
以下、実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0107】
バンバリーミキサーを使用し、下記表1に示す配合量(質量部)に従って、まず、第1混合段階で、ゴム成分に対し硫黄および加硫促進剤を除く他の配合剤を添加し混練し(排出温度=160℃)、次いで、得られた混練物に、最終混合段階で、硫黄と加硫促進剤を添加し混練して(排出温度=90℃)、ゴム組成物を調製した。表1中の各成分の詳細は、以下の通りである。
【0108】
・SBR1:(株)ENEOSマテリアル製「HPR355」(Tg=-21℃の変性溶液重合SBR)
・SBR2:(株)ENEOSマテリアル製「HPR850」(Tg=-24℃の変性溶液重合SBR)
・SBR3:(株)ENEOSマテリアル製「HPR350」(Tg=-32℃の変性溶液重合SBR)
・SBR4:(株)ENEOSマテリアル製「HPR840」(Tg=-60℃の変性溶液重合SBR)
・SBR5:旭化成(株)製「Tuf1834」(Tg=-68℃の溶液重合SBR)
・SBR6:(株)ENEOSマテリアル製「SBR0122」(Tg=-40℃の未変性ESBR)
・BR:宇部興産(株)製「BR150B」
・NR:RSS#3
・カーボンブラック1:東海カーボン(株)製「シースト6」
・カーボンブラック2:東海カーボン(株)製「シーストKH」
・シリカ:エボニックインダストリーズ社製「UltrasilVN3」
・シランカップリング剤:エボニックインダストリーズ社製「Si75」
・オイル1:アロマオイル、JX日鉱日石エネルギー(株)製「プロセスNC140」
・オイル2:アロマオイル、JX日鉱日石エネルギー(株)製「プロセスP200」
・樹脂:C5/C9系の脂肪族/芳香族共重合系炭化水素樹脂、東ソー(株)製「ペトロタック90」(ガラス転移温度:65℃、軟化点:95℃)
・ステアリン酸:花王(株)製「ルナックS-20」
・酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製「亜鉛華3種」
・ワックス:日本精鑞(株)製「OZOACE0355」
・老化防止剤1:大内新興化学工業(株)製「ノクラック6C」
・老化防止剤2:川口化学工業(株)製「アンテージRD」
・加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製「ノクセラーD」
・加硫促進剤2:住友化学(株)製「ソクシノールCZ」
・硫黄:鶴見化学工業(株)製「粉末硫黄」
【0109】
表1で得られた実施例1~9および比較例1の未加硫各ゴム組成物を160℃で30分間加硫した所定形状の試験片を作製し、硬度および粘弾性特性を評価した。各評価方法は以下の通りである。
【0110】
<硬度測定>
JIS K6253-3:2012に準拠して、デュロメータタイプA(型式:GS-719N、株式会社テクロック製)を用いて、各ゴム試験片の温度23℃での硬度Hsを測定した。
【0111】
<動的粘弾性測定>
JIS K6394に準拠して、東洋精機(株)製の粘弾性試験機を使用し、各ゴム試験片の-25℃E’(MPa)、0℃tanδ、35℃tanδを測定した。それぞれの測定条件は以下の通りである。
-25℃E:測定温度-25℃、初期歪10%、動歪1%、周波数10Hz
0℃tanδ:測定温度0℃、初期歪10%、動歪1%、周波数10Hz
35℃tanδ:測定温度35℃、初期歪10%、動歪1%、周波数10Hz
【0112】
表1で得られた実施例1~9および比較例1の未加硫各ゴム組成物をトレッドゴムに用いて、常法に従い加硫成型することにより
図4のトレッドパターンを有する試験用空気入りタイヤ(タイヤサイズ:195/60R17 90H)を作製した。得られた試験用空気入りタイヤを下記により評価した。
【0113】
<ノイズ性能>
各試験タイヤを排気量2000ccのFF車に装着し、車室内運転席の耳の位置にマイクロフォンを設置し、乾燥状態の平坦なアスファルト路面を80km/hで走行した時の音圧を測定した。表1の〇はノイズ性能に優れていることを意味し、×は〇の場合と比べてノイズ性能に劣ることを意味する。
【0114】
<ウェット性能>
各試験タイヤを排気量2000ccのFF車に装着し、湿潤路面にて、速度90km/hでABS作動させ20km/hまで減速時の制動距離を測定し(n=10の平均値)、比較例1を100とした指数で示した。数値が大きいほど制動距離が短く、制動性能が良好であることを示す。
【0115】
<スノー性能>
各試験タイヤ排気量2000ccのFF車に装着し、圧雪路にて、速度40km/hでABS作動させて制動距離を測定し、評価した。表1の〇はスノー性能に優れていることを意味し、×は〇の場合と比べてスノー性能に劣ることを意味する。
【0116】
【0117】
結果は表1に示す通りである。表1に示すように、トレッドゴムを構成するゴム組成物の硬度が55以上、64以下の空気入りタイヤは、操縦安定性を確保しつつ、ノイズ性能が改善されている。
【0118】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその省略、置き換え、変更などは、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
1 空気入りタイヤ、10 トレッド、11 トレッドゴム、11A 端部、12 サイドウォール、13 サイドウォールゴム、14 ビード、15 カーカス、16 インナーライナー、17 ビードコア、18 ビードフィラー、18A 先端、19 ベルト、19A,20A,21A,22A 端部、20,21 ベルトプライ、22 キャッププライ、23 エッジプライ、23A 外端、23B 内端、24 補強ゴム層、30 主溝(センター主溝)、31,32 主溝(ショルダー主溝)、40 センターリブ(第1センターリブ)、41 サイプ、42 屈曲部、50 センターリブ(第2センターリブ)、51,63,73 第1サイプ、52,64,74 第2サイプ、53,65,75 第3サイプ、54 第4サイプ、60 ショルダーブロック(第1ショルダーブロック)、61,62,71,72 横溝、70 ショルダーブロック(第2ショルダーブロック)