(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110380
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】疲労破断防止のための脊椎茎固定装置
(51)【国際特許分類】
A61B 17/70 20060101AFI20240807BHJP
【FI】
A61B17/70
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088652
(22)【出願日】2023-05-30
(31)【優先権主張番号】10-2023-0014178
(32)【優先日】2023-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】513124282
【氏名又は名称】朴 慶佑
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】朴 慶佑
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL24
4C160LL44
4C160LL56
4C160LL57
4C160LL64
4C160LL66
4C160LL69
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、ロッドのコイル部の中心が直線部の中心線から一定間隔だけ偏心をおいて特定の傾きを有するように構成して、脊椎固定手術後の屈曲(flexion)と伸展(extension)運動時に一般的な身体力学的動きと類似の動きを実現し、ロッドの直線部区間を平坦面に加工して、脊椎固定手術時にロッドの定着位置設定作業を手軽に行うことができる脊椎茎固定装置に関する。
【解決手段】両側に貫通した収納部を有しかつ、収納部の内周面に雌ねじが形成されており、底部にグルーブ16a、16bが並列に形成されたヘッド部12と、ヘッド部の底面に延びて固定対象である脊椎の節に人体中心線を基準として対称に挿入されるスクリュー18とを具備するねじ10、とを含む脊椎茎固定装置を提供する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
両側に貫通した収納部を有しかつ、前記収納部の内周面に雌ねじが形成されており、底部にグルーブが並列に形成されたヘッド部と、前記ヘッド部の底面に延びて固定対象である脊椎の節に挿入されるスクリューとを具備するねじと、
前記ねじのグルーブに載置される直線部と、前記直線部の中心とは偏心をおいて一定の距離だけ離れた中心を基準として特定の角度だけ傾けて巻かれるコイル部とを有するロッドと、
中央部に固定溝が形成され、前記ねじのヘッド部の雌ねじに締結されて、前記ロッドを加圧して固定するためのセットスクリューとを含む脊椎茎固定装置。
【請求項2】
前記ロッドの直線部は、上面が平らな平坦面を有することを特徴とする請求項1に記載の脊椎茎固定装置。
【請求項3】
前記ロッドの平坦面は、断面が減少する圧着加工工程によって形成されることを特徴とする請求項2に記載の脊椎茎固定装置。
【請求項4】
前記ロッドの直線部の断面径がコイル部の断面径より大きく形成されたことを特徴とする請求項1に記載の脊椎茎固定装置。
【請求項5】
前記ロッドの直線部の断面径がΦ4.5mmであり、コイル部の断面径がΦ4.0mmであることを特徴とする請求項4に記載の脊椎茎固定装置。
【請求項6】
前記ねじは、脊椎の両側に人体中心線を基準として対称に挿入され、
ロッドのコイル部は、人体中心線を基準として脊椎の両側に対称に位置するように直線部の中心線を基準としてコイル部の巻かれた方向が互いに反対であることを特徴とする請求項1に記載の脊椎茎固定装置。
【請求項7】
前記セットスクリューは、中央部の下端に固定溝より小さな大きさに貫通する結合ホールが形成され、
前記結合ホールに嵌合するように中央部の上側に球体突起が具備され、底面にはロッドの平坦面と密接するように平面に形成されて、前記セットスクリューの締結力によって加えられる垂直荷重をロッドの平坦面に均等に分布させるためのワッシャをさらに含む、請求項2に記載の脊椎茎固定装置。
【請求項8】
前記セットスクリューは、中央部の下端に固定溝より小さな大きさに貫通する結合ホールが形成され、
前記結合ホールに嵌合するように中央部の上側に球体突起が具備され、底面にはロッドの球面を収容する大きさの球体溝が形成されて、前記セットスクリューの締結力によって加えられる垂直荷重をロッドの平坦面に均等に分布させるためのワッシャをさらに含む、請求項1に記載の脊椎茎固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、損傷または変形した脊椎茎をねじとロッドで固定するための脊椎茎固定装置に関し、さらに詳しくは、ロッドを構成する直線部とコイル部が中心偏心と特定の傾きを有するように構成して屈曲と伸展の自然な身体力学的運動を実現し、脊椎固定手術過程で前記ロッドのコイル部を一定の設定角度範囲内に維持させて脊椎固定手術を精密かつ単純化することができ、手術患者の頻繁な腰運動によってセットスクリューとロッドとの接点部位に加えられる繰り返し荷重による応力が発生して疲労破断につながるのを防止できる脊椎茎固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、脊椎は、通常24個(癒合節である仙椎および尾椎を除く)の骨からなり、これは関節の節で連結されており、各関節の間にはディスクが位置する。この構成によって、前記脊椎は緩衝作用をしながら人間の姿勢を維持し体重と多様な荷重を支えるだけでなく、運動の土台になり、内臓器官を保護する重要な機能をする。しかし、前記脊椎が外部の衝撃といった人為的な要因、退行性変化または異常な姿勢が長い間持続するにつれて脊椎が損傷または変形した場合、脊椎管や椎間孔を通過する神経を圧迫することによって激しい痛みを誘発する。このような退行性疾患が一定の段階以上進行した場合には、脊椎の節の損傷あるいは変形した部分が神経を押したり圧迫しないように手術しなければならない。
【0003】
代表的な脊椎退行性疾患として、脊椎分節間の不安定を伴う脊椎管狭窄症、脊椎すべり症、脊椎分離症などが挙げられ、このような退行性疾患は、脊椎茎固定装置を用いた脊椎癒合術により治療している。
【0004】
脊椎茎固定装置を用いた脊椎癒合術を、
図1および
図2を参照して簡略に説明すれば、次の通りである。
【0005】
図1は、従来技術による脊椎茎固定装置の構成を示す斜視図であり、
図2は、従来技術による脊椎茎固定装置が脊椎の節に定着された概略図である。
【0006】
図1に示すように、従来技術による脊椎茎固定装置は、U字状の収納溝101aと、前記収納溝101aの内周面に形成された雌ねじ山とを有するヘッド部101と、脊椎茎に挿入されるスクリュー102とを具備し、損傷した脊椎の節に挿入されるねじ100と、それぞれのねじ100を連結して脊椎茎固定役を果たすロッド200と、前記収納溝101aに形成された雌ねじ山と締結されてロッド200を固定し、上部にレンチ挿入溝300aが形成されたセットスクリュー300とで構成されている。
【0007】
上記の従来技術による脊椎茎固定装置は、
図2に示されるように、ねじ100のスクリュー102をそれぞれの脊椎茎500に挿入固定させ、ヘッド部101に形成されたU字状の収納溝101aにロッド200を載置した後、セットスクリュー300で固定する。
【0008】
このような一連の過程で手術する脊椎癒合術において、前記ロッド200は、脊椎を固定するのに最も中枢的な役割を果たす。したがって、ロッドの材質や弾性の有無などが、脊椎骨の節の癒合後の、人体に及ぼす影響が大きい。
【0009】
従来のロッド200は、複数の脊椎茎ねじを同時に連結するように単一形態で構成されており、大部分が医療用チタン材質で形成されているので、ロッド自体の弾性がない。これにより、脊椎固定手術後、ロッドの形状通りに脊椎骨の節が癒合(fusion)した後には、自然な矢状バランスを維持することが困難である。また、前記ロッドの形状通りに完全に癒合した後、脊椎茎ねじの刺さった部位の脊椎の上の節または下の節に荷重が集中するため、癒合後数年後にさらに他の脊椎管狭窄や不安定といった連接部の退行変化をもたらす問題点がある。また、外部要因によって腰に衝撃が加えられる場合、ロッドが曲がったり、脊椎茎ねじの首部分が破断する問題点がある。
【0010】
前記ロッドは、患者個々人の脊椎の形状とは関係なく一般的な脊椎の形状に基づいて製作されるため、それぞれの単品を規格化して多様な形状と長さに製作しなければならないという困難があり、製作費用を増加させる要因として作用している。このような構造のロッドは、脊椎茎ねじに連結する作業の際にも多くの不都合を誘発する。すなわち、人ごとに脊椎茎の形状と病症の状態が異なるので、脊椎の節と節に挿入されたそれぞれの脊椎茎ねじが一律に整列されていない場合、ロッドを装着することが極めて困難になる。これは弾性のないロッドの物理的性質に関係がある。この場合には、ねじを傾けてねじって距離と方向を合わせたり、定められた角度範囲でねじ部を中心にヘッド部が自在に回動する多軸型スクリュー(polyaxial type screw)を用いてヘッド部の角度を任意に調整した後、ロッドの設置位置を合わせて固定する。このように、直線型ロッドを用いた脊椎癒合術は、ねじの設置位置が一律に位置しているかを正確に把握して脊椎茎にねじ挿入のための穴を開けなければならないので、手術の精密さが要求されることから、医師の負担が増す。また、脊椎茎の湾曲形状に合わせて単一形態のロッドをいちいち曲げて、ねじの設置位置に合わせてロッドを一律に連結するのに多くの時間を費やさなければならないので、手術時間が長くなる問題点がある。
【0011】
上記のロッドが抱える問題点を克服すべく、本願出願人は大韓民国登録特許第10-0645377号、同特許第10-0645396号、同特許第10-0645398号により多様な形状のロッドを提案した。
【0012】
本願出願人によって登録された先行特許に提示された脊椎茎固定装置は、
図3に示すように、ロッド200を分節形態で構成しかつ、前記ロッド200の中央部に弾性部202を形成し、ねじ100の収納溝101aには2つのグルーブ103a、103bを形成した構造を有する。このような従来の脊椎茎固定装置は、分節ロッド200がねじ100の収納溝103a、103bにジグザグに連続して連結してロッドの曲げ(bending)変形を与えることにより、脊椎の節と節との間に一定の範囲内で流動するようにした。
【0013】
提示された先行特許は、脊椎癒合術後、腰運動による緩衝作用により脊椎の節間の運動を円滑に維持すると同時に、脊椎の節間の固定力を高める効果を実現する。
【0014】
上記の構成について多年にわたる臨床の結果、手術過程でロッド中央部の弾性部がロッドの中心線に対して一定の角度だけ傾いた角度を人体中心線を基準として対称に維持してこそ、ロッドの弾性力を倍加して手術患者の腰運動時に最適化された生体力学を実現し、後ろに反らした時に曲がる角度を効果的に制限できることを知るようになった。したがって、このようなロッドの角度を維持して締結することは手術過程においても非常に重要である。しかし、ロッドの直線部、すなわちセットスクリューと接触する部分の断面が円形になっているので、ねじにロッドを載置した後、セットスクリューで締結する過程で、前記ロッドが回転するため、ロッド中央部の弾性部の設定角度を正確に合わせることが極めて困難な問題点を含んでいる。
【0015】
また、前記セットスクリューでロッドを締結する過程でセットスクリューとロッドとの接点部位にスクラッチ(scratch)が発生し、前記スクラッチは、長期間のロッドの弾性運動によって微細な切り欠き(notch)に成長してロッドを破断させることが現れている。特に、セットスクリューとねじのグルーブに載置されたロッドとの接点部位に集中的な切り欠きが発生して破断するケースが多発している。このような原因についてより詳しく説明すれば、前記ねじのグルーブに載置されたロッドをセットスクリューが加圧する機構的作用においてセットスクリューとロッドとの間の接点部位で発生したスクラッチ部位に繰り返し荷重による応力が集中し、この応力は疲労破断につながっていることを究明した。
【0016】
前記セットスクリューとロッドとの接点部位に応力が集中する現象は、本願出願人が多年にわたる臨床を通して確認した結果であり、切り欠きの発生によるロッドの破断現象は、セットスクリューと円形断面のロッドとの接点部位が点接触からなることと関連性がある。すなわち、腰を前に曲げる動作である屈曲(flexion)と、後ろに伸ばす動作である伸展(extension)により身体力学的運動をする時、前記ロッドのコイル部が弾性作動する過程でロッドの直線部が一定の角度だけ流動しながら点接触部位に長期間にわたる疲労(fatigue)が発生し、疲労現象はロッドを破断させる原因である疲労破断(fatigue failure)につながる。
【0017】
また、セットスクリューとロッドとの接触部位の強度が弱くなる原因は、脊椎癒合術過程におけるセットスクリューの強い固定力に起因している。すなわち、ロッドが動かないようにセットスクリューが押す締結力は、ロッドの直線部全体に均一な分布で伝達されず、セットスクリューの末端面とロッドとの接点部位により多くの荷重が集中して点接点部位の強度が弱くなる問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】大韓民国登録特許第10-0645377号(2006.11.06.登録)
【特許文献2】大韓民国登録特許第10-0645396号(2006.11.06.登録)
【特許文献3】大韓民国登録特許第10-0645398号(2006.11.06.登録)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
そのため、本発明は、上記の諸問題点を解決すべくなされたものであって、ロッドのコイル部の中心から側方に一定の間隔だけ偏心を有する位置にロッドの直線部が位置するように構成して、脊椎固定手術後の屈曲(flexion)と伸展(extension)行為の際に自然な身体力学的動きを実現できる脊椎茎固定装置を提供することを目的とする。
【0020】
また、本発明は、セットスクリューに接触するロッドの直線部区間の一部を平坦面に加工して、脊椎固定手術時にロッドの定着位置設定作業を手軽に行うことができる脊椎茎固定装置を提供することを他の目的とする。
【0021】
また、本発明は、前記両側ロッドのコイル部が脊椎茎ねじのヘッド部の一定の整列線上からずれることなく設定角度(31.7゜±5゜)範囲内に位置して、人体の中心線を基準として自然に対称を維持できるようにした脊椎茎固定装置を提供することをさらに他の目的とある。
【0022】
また、本発明は、セットスクリューにワッシャを一体に構成して、セットスクリューとロッドとの接点部位を点接触ではない面接触をなすようにすることで、前記セットスクリューとロッドとの間の接点部位に繰り返し荷重によって疲労破断につながるのを防止できる脊椎茎固定装置を提供することをさらに他の目的とする。
【0023】
また、本発明は、コイル部が具備されたロッドで脊椎分節の間を連結することにより、前記脊椎分節間の固定力を高めることができ、同時に脊椎分節間の運動を円滑に維持できる脊椎茎固定装置を提供することをさらに他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記の目的を達成するために、本発明では、両側に貫通した収納部を有しかつ、前記収納部の内周面に雌ねじが形成されており、底部にグルーブが並列に形成されたヘッド部と、前記ヘッド部の底面に延びて固定対象である脊椎の節に挿入されるスクリューとを具備するねじと、前記ねじのグルーブに載置される直線部と、前記直線部の中心と偏心をおいて一定の距離だけ離れた中心を基準として特定の角度だけ傾けて巻かれるコイル部とを有するロッドと、中央部に固定溝が形成され、前記ねじのヘッド部の雌ねじに締結されて、前記ロッドを加圧して固定するためのセットスクリューとを含む脊椎茎固定装置を提供する。
【0025】
本発明の実施例において、前記ロッドの直線部は、上面が平らな平坦面を有する。これは、前記ロッドがねじのグルーブに載置される時、平坦面が上部を向くようにしてセットスクリューとの結合時に装着位置の基準面として作用する。
【0026】
前記ロッドの平坦面は、圧着プレスなどによって断面が直角に押されて減少する圧着加工工程で形成されることを特徴とする。
【0027】
前記ロッドの直線部の直径がコイル部の直径より大きく形成され、好ましくは、前記ロッドの直線部の直径がΦ4.5mmであり、コイル部の直径がΦ4.0mmであることを特徴とする。
【0028】
本発明の一実施例において、前記ねじは、脊椎の両側に人体中心線を基準として対称に挿入され、ロッドのコイル部は、両側の脊椎に対称に位置するように直線部の中心線を基準として巻かれた方向が互いに反対であることを特徴とする。
【0029】
また、前記セットスクリューは、中央部に貫通した結合ホールが形成された円筒部で構成され、前記円筒部の結合ホールに嵌合するように中央部の上側に球体突起が具備され、底面にはロッドの平坦面と密接するように平面に形成されて、前記セットスクリューの締結力によって加えられる垂直荷重をロッドの平坦面に均等に分布させるためのワッシャをさらに含むことを特徴とする。
【0030】
本発明によるワッシャの他の実施例として、前記ワッシャは、セットスクリューの結合ホールに嵌合するように中央部の上側に球体突起が具備され、底面にはロッドの球面を収容する大きさの球体溝が形成されて、前記セットスクリューの締結力によって加えられる垂直荷重を面接触させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
上述のように、本発明によれば、次の効果がある。
【0032】
第一、ロッドの直線部の上面を平坦面処理することにより、脊椎固定手術過程でねじのグルーブに載置されるロッドの平坦面が上部を向くようにして自らの位置を容易に見つけて装着することができる。これにより、セットスクリューの締結力によって結合過程で前記ロッドが回転するのを防止し、コイル部が脊椎茎ねじのヘッド部の一定の整列線上からずれて横になるのを再度立てて角度を調整する作業が要らなくなる。
【0033】
より詳しく説明すれば、本発明は、脊椎固定手術のロッド結合作業を実施する時、ロッドの中心線を基準としてコイル部を一定に立てて、人体中心線を基準として前記両側ロッドのコイル部が一方に偏ることなく対称に維持する定着位置設定作業が非常に重要である。これは、脊椎固定後、身体を後ろに反らす伸展運動をする時、ロッドのコイル部が腰の反りを制限可能で、多数の癒合した脊椎の節と節との間に荷重が集中せず、腰の負担を低減するからである。
【0034】
このように、ねじのグルーブに載置されるロッドの平坦面が上部を向くようにし、セットスクリューで締結することにより、ロッドの定着位置が手軽に設定できるのである。
【0035】
第二、脊椎固定手術後にも脊椎の正常な荷重分配構造(load sharing mechanism)と類似の荷重分配を実現する。
【0036】
脊椎の前方部は主に椎体で構成され、脊椎の後方部は脊椎管および後関節、突起(横突起、棘突起)で構成されるが、脊椎に加えられる垂直荷重が前方部と後方部に約8:2の比率で分配されることが一般的である。しかし、脊椎癒合(fusion)などの目的で挿入した後方部構造物の剛性(rigidity)が大きい場合、荷重の大部分が脊椎の後方部に分配される応力遮蔽効果(stress shielding effect)が発生して自然な荷重分配の流れが遮断されたり、前方部および後方部に加えられる荷重分配が2:8~3:7まで逆転する現象が発生する。このような現象は、脊椎前方部の椎体に加えられる荷重が減少し、脊椎骨癒合を目的として椎体と椎体との間に挿入された脊椎癒合用ケージ(interbody fusion cage)と椎体間の微細刺激(micro-motion or stimulus)を弱くするので、十分な骨癒合を期待しにくく、ケージ移動(migration)や骨癒合失敗のような結果をもたらす。
【0037】
本発明では、直線部とコイル部が中心偏心と特定の傾きを有するように構成されたロッドで脊椎分節の間を連結することにより、正常な荷重分配構造(load sharing mechanism)に似た荷重分配を実現する。このような効果は、有限要素分析の結果、前方部と後方部の荷重分配比率が7:3あるいは7.5:2.5の比率で正常な荷重分配比率に近接していることを確認した。
【0038】
第三、分節ごとの連結形態で構成されたロッドの連続した連結作業が可能なため、脊椎固定作業を迅速に行うことができ、従来の剛性ロッド(rigid rod)を用いた手術方法が有するロッド結合過程における手術の煩わしさを解消することができる。特に、手術節を延長する再手術が不可避な場合に、剛性ロッドを用いた手術の場合には、既存に締結されたロッドを除去し、新しいロッドを取り替えなければならなかったのに対し、本発明では、このような分節連結方式のおかげで再手術が必要な部位だけ切開して延長する部分のロッドのみ締結すれば良いというメリットがある。
【0039】
第四、前記セットスクリューにワッシャを一体に構成して、前記セットスクリューを締結した時、ロッドの接触部位に加えられる荷重を均一に分布させることにより、セットスクリューとロッドとの間の接点部位が繰り返し応力によって疲労破断(fatigue failure)につながるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】従来技術による脊椎茎固定装置の構成を示す斜視図、
【
図2】従来技術による脊椎茎固定装置が脊椎の節に装着された概略図、
【
図3】従来技術による脊椎茎ねじのロッドの多様な形状を示す例示図、
【
図4】本発明による脊椎茎固定装置の一実施例の構成を示す斜視図、
【
図5】本発明による脊椎茎固定装置の要部である左側Lロッドの構成を示す正面および右側面投象図、
【
図6】本発明による脊椎茎固定装置の要部である右側Rロッドの構成を示す正面および右側面投象図、
【
図7】本発明の要部であるセットスクリューにワッシャが装着された構成を示す断面図、
【
図8】ねじのヘッド部にロッドとセットスクリューとが結合された概略的な断面投象図、
【
図9】
図7のセットスクリューとワッシャとが一体化された構成の他の例示図、
【
図10】本発明のロッドにコイル部を成形する前のストレート状態の図、
【
図11】本発明のロッドにコイル部を2回巻いた成形後の図、
【
図12】本発明の要部であるロッドの直線部に平坦面を加工した一例示図、
【
図14】本発明による脊椎茎固定装置を用いた脊椎固定手術におけるディスク圧力プロファイルを示すグラフ図、
【
図15】本発明による脊椎茎固定装置が脊椎に装着された状態を示す模型図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、添付した
図4~
図15を参照して、本発明の好ましい実施例を詳細に説明する。
【0042】
本発明による脊椎茎固定装置は、セットスクリューでロッドを固定する手術作業においてロッドの定着位置設定作業を手軽に行うことができ、ロッドが繰り返し応力によって疲労破断につながるのを防止するために実現したものである。
【0043】
本発明の一実施例による脊椎茎固定装置の構成を、
図4~
図10を参照して説明する。
【0044】
図4は、本発明による脊椎茎固定装置の一実施例の構成を示す斜視図であり、
図5は、本発明による脊椎茎固定装置の要部である左側Lロッドの構成を示す正面および右側面投象図であり、
図6は、本発明による脊椎茎固定装置の要部である右側Rロッドの構成を示す正面および右側面投象図であり、
図7は、本発明の要部であるセットスクリューにワッシャが装着された構成を示す断面図であり、
図8は、ねじのヘッド部にロッドとセットスクリューとが結合された概略的な断面投象図である。
【0045】
本実施例における脊椎茎固定装置は、
図4~
図6に示すように、長手方向に貫通し、内周面に雌ねじが形成されたU字状の収納溝14と、前記収納溝14の底部に2つのグルーブ16a、16bとが形成されたヘッド部12と、人体中心線を基準として脊椎の節に対称に挿入されるスクリュー18とを具備する複数のねじ10と、前記ねじ10のグルーブ16a、16bに載置される直線部22と、前記直線部22の中心から一定の偏心dをおいた中心を基準として左側Lあるいは右側Rに巻かれたコイル部24とで構成されて、前記ねじ10と結合されるロッド20と、前記ヘッド部12の収納溝14に締結され、中央部にレンチ溝32が形成されたセットスクリュー30と、前記セットスクリュー30の底面に一体に結合され、セットスクリュー30の締結時、ロッド20の直線部22に均一な分布で固定荷重を加えるワッシャ40とで構成される。
【0046】
上記の本発明の脊椎茎固定装置は、脊椎500の節の横方向の両側に人体中心線を基準として対称にねじ10が挿入され、前記収納溝14のグルーブ16a、16bにロッド20がジグザグに載置されて、縦方向に各脊椎の節を連結する。
【0047】
本発明の実施例において、前記ロッド20のコイル部24は、2回転巻かれた形状であり、両側の直線部22は、ロッド20の定着位置の基準を設定するために、上部が平坦な平坦面26を有する。前記ロッド20は、平坦面26が上部を向いた状態で定着された時、コイル部24は、直線部22の中心線から約31.7゜±5゜の傾きで自動的に立てられ、左右両側ロッド20のコイル部24は、人体中心線を基準として両側に対称に定着される。
【0048】
前記セットスクリュー30は、
図7に示すように、底面の中央に羽根部36を有する貫通ホール34が形成されている。前記ワッシャ40は、収納溝14に挿入される大きさに角張った形状を有し、セットスクリュー30の貫通ホール34に嵌合するように上部に球体突起42が形成される。この時、前記貫通ホール34の羽根部36と球体突起42は、遊びを有するように構成されて、セットスクリュー30は、回転しながらヘッド部12の雌ねじに締結されるが、ワッシャ40は回転せずに下降してロッド20の平坦面26を均一な荷重で加圧する。これにより、前記セットスクリュー30の締結による回転力によってロッド20の接触面に発生したスクラッチ部位が前記ロッド20の繰り返しの弾性作動によって切り欠きにつながるのを防止することができる。
【0049】
より詳しく説明すれば、
図8に示すように、前記セットスクリュー30により締結力を提供してもセットスクリュー30の回転面がワッシャ40にのみ接触するため、ロッド20にはセットスクリュー30の回転面によるスクラッチが伝達されない。そして、前記ワッシャ40が押す均一な分布荷重がロッド20の平坦面26の接触面部位全体に適用されるので、従来技術のように、人の腰が曲がってから伸びる繰り返し応力が点接触部位に集中して疲労破断につながるのを防止できるのである。
【0050】
一方、セットスクリュー30に一体に結合されるワッシャ40の他の実施例の構成を
図9に示す。
【0051】
本実施例では、前記ワッシャ40の底面にロッドの外径を取り囲むことができる大きさの球体溝44が形成された構造を提示する。
【0052】
前記ワッシャ40の球体溝44によれば、ロッド20の直線部22に平坦面26を形成せずにヘッド部12のグルーブ16a、16bに載置する場合、前記球体溝44が平坦面26のない球形断面の直線部22に面接触してセットスクリュー30の荷重を直線部22に均一な分布で作用させるのである。
【0053】
図10は、本発明のロッドにコイル部24を成形する前のストレート状態の図であり、
図11は、本発明のロッドにコイル部24を2回巻いた成形後の図であり、
図12は、本発明の要部であるロッドの直進部に平坦面を加工した一例示図であり、
図13は、平坦面加工の他の例示図である。
【0054】
図10および
図11に示すように、本発明の実施例では、前記ロッド20の直線部22区間の断面径がコイル部24区間の断面径より大きく形成した構造を提示する。これは、腰固定手術後長期間が経過した地点での臨床をみた時、直線部22の疲労破断が発生する時期を遅延させたり、半永久的に維持するために、ロッド20の定着作業が許容可能な範囲内で最大限に剛性を維持できるようにするためである。本実施例では、直線部22の断面径がΦ4.5mmであり、コイル部24の断面径がΦ4.0mmである構造を提示する。
【0055】
また、剛性を維持するための直径を増加させたロッド20の直線部22は、
図12に示すように、直径の損失がないように圧縮プレスなどの機械で押す方式で上部面を平坦に加工する。前記平坦面26の他の例として、
図13に示すように、下部のラウンド面を除いて上面および側面の両方を圧縮プレスなどで押して角張った形状に加工することもできる。
【0056】
上記のように、前記ロッド20の構成によれば、
図15に示すように、人体中心線を基準として前記両側ロッド20のコイル部24が一方に偏ることなく対称に維持する定着位置設定作業をロッドの平坦面26を基準として容易にできるので、ロッド20の結合作業を簡素化することができる。
【0057】
図14に示したディスク圧力プロファイルグラフに示すように、屈曲(flexion)運動の場合にはディスクの前方側に圧力が高くなり、伸展(extension)運動の場合にはディスクの後方側に圧力が高くなる。中立(neutral)の場合には、ディスクの前方と後方の圧力が類似の水準になることが一般的である。本発明の脊椎茎固定装置のうち、ロッド20の定着位置設定作業が正しく実現され、直線部22の中心から一定の偏心dをおいた中心を基準としてコイル部24が巻かれている特性のおかげで、正常なディスク圧力プロファイルに比べて圧力数値はやや減少しても全般的なグラフのパターンが類似する一定の負荷減少効果(uniformly unloading effect)が現れる。
【0058】
また、脊椎は特定の1つの節だけが動くのではなく、それぞれの節の動きが合わされて全体として屈曲(flexion)と伸展(extension)のような運動をする。通常、各分節の動きを示すことをROM(Range of Motion)というが、これは相対的に手術した節はROMが小さく、手術した節の上下連接部位のROMが大きくなるのが、一般的な脊椎の生体力学分析の結果である。したがって、手術した分節の上下連接した分節の退行変化(Adjacent Segment Degeneration)が加速化することも、このような不自然な脊椎の力学運動に起因する。
【0059】
前記直線部22とコイル部24が中心偏心と特定の傾きを有するように構成された本発明のロッド20構造によれば、剛性ロッド(rigid rod)を用いた手術に比べて相対的に手術した節のROMは最大化され、連接した節のROMは最小化される。また、本発明の脊椎茎固定装置を脊椎500の節間の脊椎の後方部に装着し、脊椎癒合用ケージを脊椎の前方部に併用したケースに対する有限要素分析の結果、前方部と後方部の荷重分配比率が7:3あるいは7.5:2.5の比率で正常な荷重分配構造(load sharing mechanism)の比率に近接することが裏付けられた。その結果、手術した分節の上下連接した分節の退行変化(Adjacent Segment Degeneration)を最小化することができる。
【0060】
前記ロッドの作動方式を説明すれば、前記ロッド20の直線部22の中心から一定の偏心dをおいた中心を基準としてコイル部24が巻かれているため、腰を前に曲げる動作である屈曲(flexion)時の動きがより大きく、後ろに伸ばす動作である伸展(extension)時にこの動きがより小さくなる方式でロッド20が作動することにより、脊椎の実際の生体力学的な動きに似た結果を導出するのである。
【0061】
ロッドの形状においてコイル部の中心が直線部の中心と偏心して巻かれた構造ではない、一般的なスプリングのように、中心軸を基準としてコイル部と直線部が同心円になる方式で巻かれた中心スプリング構造であれば、屈曲と伸展時の動きの程度や大きさが類似しているため、腰運動が不自然になる。
【0062】
しかし、本発明によるロッドの直線部およびコイル部の結合構造によって脊椎が一方に偏るのを防止し、脊椎を前に曲げる時の動きより後ろに反らした時の腰の反りを制限可能で、多数の癒合した脊椎の節と節との間においても正常な荷重分配構造に類似しているため、腰の負担を低減する効果を実現する。
【0063】
以上、本発明の特定の実施例について説明した。しかし、本発明の思想および範囲はこのような特定の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲内で多様に修正および変形可能であることは本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば当然理解するであろう。
【符号の説明】
【0064】
10:ねじ 12:ヘッド部
14:収納溝 16a、16b:グルーブ
20:ロッド 22:直線部
24:コイル部 26:平坦面
30:セットスクリュー 32:レンチ溝
34:貫通ホール 36:羽根部
40:ワッシャ 42:球体突起
44:球体溝 500:脊椎