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特開2024-110386太陽電池及びその製造方法、光起電力モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110386
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】太陽電池及びその製造方法、光起電力モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0224 20060101AFI20240807BHJP
【FI】
H01L31/04 260
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023169004
(22)【出願日】2023-09-29
(31)【優先権主張番号】202310107821.4
(32)【優先日】2023-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】519095522
【氏名又は名称】ジョジアン ジンコ ソーラー カンパニー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】512083920
【氏名又は名称】晶科能源股分有限公司
【氏名又は名称原語表記】JINKO SOLAR CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.1,Jinko Road, Shangrao Economic Development Zone Jiangxi 334100 CN
(74)【代理人】
【識別番号】100199819
【弁理士】
【氏名又は名称】大行 尚哉
(74)【代理人】
【識別番号】100087859
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 秀治
(72)【発明者】
【氏名】王浩
(72)【発明者】
【氏名】リ ウン チー
(72)【発明者】
【氏名】余丁
(72)【発明者】
【氏名】呉佳豪
(72)【発明者】
【氏名】劉旭
【テーマコード(参考)】
5F251
【Fターム(参考)】
5F251AA02
5F251AA16
5F251CB12
5F251CB13
5F251CB20
5F251CB24
5F251CB27
5F251CB29
5F251DA03
5F251FA06
5F251FA10
5F251FA17
5F251GA04
5F251GA15
5F251JA02
5F251JA03
5F251JA04
5F251JA05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、太陽電池及びその製造方法、光起電力モジュールを開示する。
【解決手段】太陽電池は、シリコン基板と、第1電極と、第2電極と、を含み、前記シリコン基板のうちの一方の表面には、前記シリコン基板から離れた方向に沿ってトンネル酸化層が設けられており、前記トンネル酸化層の前記シリコン基板から離れた側には、少なくとも2層のポリシリコンドーピング層が設けられ、隣接する前記ポリシリコンドーピング層間には、バリア層が設けられており、複数本の前記第1電極が異なる前記ポリシリコンドーピング層に電気的に接続されている。本発明は、ポリシリコン層の総厚さを低減するだけでなく、薄いポリシリコン層は、寄生吸収を下げ、短絡電流を高め、また、バリア層によってペーストがトンネル酸化層を溶落ちするリスクを防止するとともに、金属再結合を減らし、太陽電池の開放電圧を高め、ひいては太陽電池の光電変換効率を高める。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン基板と、第1電極と、第2電極と、を含み、
前記シリコン基板のうちの一方の表面には、前記シリコン基板から離れた方向に沿ってトンネル酸化層が設けられており、前記トンネル酸化層の前記シリコン基板から離れた側には、少なくとも2層のポリシリコンドーピング層が設けられ、隣接する前記ポリシリコンドーピング層間には、バリア層が設けられており、複数本の前記第1電極が異なる前記ポリシリコンドーピング層に電気的に接続されている、
ことを特徴とする太陽電池。
【請求項2】
前記シリコン基板に近い前記ポリシリコンドーピング層におけるリンのドーピング濃度が前記シリコン基板から遠い前記ポリシリコンドーピング層におけるリンのドーピング濃度より小さい、
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
少なくとも2層の前記ポリシリコンドーピング層は、第1ポリシリコンドーピング層と、第2ポリシリコンドーピング層と、第3ポリシリコンドーピング層と、を含み、前記第1ポリシリコンドーピング層と前記第2ポリシリコンドーピング層の間に第1バリア層を有し、前記第2ポリシリコンドーピング層と第3ポリシリコンドーピング層の間に第2バリア層を有し、ここで、前記第1ポリシリコンドーピング層が前記トンネル酸化層に近い側に位置し、前記第3ポリシリコンドーピング層が前記トンネル酸化層から遠い側に位置し、
前記第1ポリシリコンドーピング層には、リンがドープされており、前記第2ポリシリコンドーピング層と前記第3ポリシリコンドーピング層には、それぞれリン、及び炭素又は窒素がドープされている、
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項4】
前記第1電極は、第1サブ電極と、第2サブ電極と、を含み、前記第1サブ電極が前記第3ポリシリコンドーピング層に電気的に接続され、前記第2サブ電極が前記第1ポリシリコンドーピング層及び/又は前記第2ポリシリコンドーピング層に電気的に接続されている、
ことを特徴とする請求項3に記載の太陽電池。
【請求項5】
前記第1ポリシリコンドーピング層におけるリンのドーピング濃度は、前記第2ポリシリコンドーピング層におけるリンのドーピング濃度より小さく、前記第2ポリシリコンドーピング層におけるリンのドーピング濃度は、前記第3ポリシリコンドーピング層におけるリンのドーピング濃度より小さい、
ことを特徴とする請求項3に記載の太陽電池。
【請求項6】
前記第2ポリシリコンドーピング層と前記第3ポリシリコンドーピング層における炭素と窒素のドーピング比率は、5wt%未満である、
ことを特徴とする請求項3に記載の太陽電池。
【請求項7】
前記第1ポリシリコンドーピング層と前記第3ポリシリコンドーピング層におけるリンのドーピング濃度の比は、0.4~1である、
ことを特徴とする請求項3に記載の太陽電池。
【請求項8】
前記シリコン基板に垂直な方向に沿って、前記第1ポリシリコンドーピング層、前記第2ポリシリコンドーピング層及び前記第3ポリシリコンドーピング層の総厚さは、70nmを超えない、
ことを特徴とする請求項3に記載の太陽電池。
【請求項9】
前記シリコン基板に垂直な方向に沿って、前記第1ポリシリコンドーピング層、前記第2ポリシリコンドーピング層及び/又は前記第3ポリシリコンドーピング層の厚さの範囲は、5nm~40nmである、
ことを特徴とする請求項8に記載の太陽電池。
【請求項10】
前記シリコン基板に垂直な方向に沿って、前記第1バリア層と前記第2バリア層の厚さの範囲は、それぞれ0.5nm~2.5nmである、
ことを特徴とする請求項3に記載の太陽電池。
【請求項11】
前記シリコン基板はベースエリアとエミッタを含み、前記エミッタが前記ベースエリアの前記トンネル酸化層から離れた側に位置し、前記エミッタの前記ベースエリアから離れた側にパッシベーション層が設けられ、
前記第2電極が前記パッシベーション層を貫通して前記エミッタと電気的に接続されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項12】
積層して設置された第1封止用パネル、第1封止用接着フィルム、セルストリング、第2封止用接着フィルム及び第2封止用パネルを含み、前記セルストリングが複数の請求項1~11のいずれか1項に記載の太陽電池を電気的に接続することで形成される、
ことを特徴とする光起電力モジュール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光起電力の分野に関し、より具体的には、太陽電池及びその製造方法、光起電力モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
TOPcon(Tunnel Oxide Passivated Contact、トンネル酸化膜パッシベーションコンタクト)セルはチューブLPCVD(Low Pressure Chemical Vapor Deposition、 低圧化学気相成長)又はPECVD(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition、プラズマ励起化学気相成長)装置を用いて製造し、トンネル酸化層とポリシリコンドーピング層の2層が共にパッシベーションコンタクト構造を形成し、このトンネル酸化パッシベーションコンタクト構造によって、多数キャリアが酸化層を通過し、少数キャリアを遮断し、キャリアの選択通過性を効果的に実現しており、少数キャリアの再結合速度を大幅に下げ、電池の効率を高めている。
【0003】
TOPConセルでは、一般的に30nm程度のポリシリコンドーピング層を使用して良好なパッシベーション効果を実現できるが、現在のペースト及び焼結技術によって制限されるため、ポリシリコンドーピング層は、110~120nm程度にしてから、はじめて銀粒子がトンネル酸化層を溶落ちするリスクを効果的に下げることができる。そして、ポリシリコンドーピング層自体に強い近赤外光吸収能力があるため、厚いポリシリコン層は、短絡電流の損失をもたらすだけでなく、電池の性能に影響するとともに、生産コストの上昇を招いてしまう。上記のことから、薄層ポリシリコンの吸光と金属化のバランスを取るという課題を解決できない。
【0004】
したがって、薄層ポリシリコンの吸光と金属化のバランスを取るという課題を全体的に解決するために、太陽電池及びその製造方法、光起電力モジュールを提供する必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記に鑑みて、本発明には、太陽電池が提供され、この太陽電池は、シリコン基板と、第1電極と、第2電極と、を含み、前記シリコン基板のうちの一方の表面には、前記シリコン基板から離れた方向に沿ってトンネル酸化層が設けられており、前記トンネル酸化層の前記シリコン基板から離れた側には、少なくとも2層のポリシリコンドーピング層が設けられ、隣接する前記ポリシリコンドーピング層間には、バリア層が設けられており、複数本の前記第1電極が異なる前記ポリシリコンドーピング層に電気的に接続されている。
【0006】
選択できるように、前記シリコン基板に近い前記ポリシリコンドーピング層におけるリンのドーピング濃度が前記シリコン基板から遠い前記ポリシリコンドーピング層におけるリンのドーピング濃度より小さい。
【0007】
選択できるように、少なくとも2層の前記ポリシリコンドーピング層は、第1ポリシリコンドーピング層と、第2ポリシリコンドーピング層と、第3ポリシリコンドーピング層と、を含み、前記第1ポリシリコンドーピング層と前記第2ポリシリコンドーピング層の間に第1バリア層を有し、前記第2ポリシリコンドーピング層と第3ポリシリコンドーピング層の間に第2バリア層を有し、ここで、前記第1ポリシリコンドーピング層が前記トンネル酸化層に近い側に位置し、前記第3ポリシリコンドーピング層が前記トンネル酸化層から遠い側に位置し、
前記第1ポリシリコンドーピング層には、リンがドープされており、前記第2ポリシリコンドーピング層と前記第3ポリシリコンドーピング層には、それぞれリン、及び炭素又は窒素がドープされている。
【0008】
選択できるように、前記第1電極は、第1サブ電極と、第2サブ電極と、を含み、前記第1サブ電極が前記第3ポリシリコンドーピング層に電気的に接続され、前記第2サブ電極が前記第1ポリシリコンドーピング層及び/又は前記第2ポリシリコンドーピング層に電気的に接続されている。
【0009】
選択できるように、前記第1ポリシリコンドーピング層におけるリンのドーピング濃度は、前記第2ポリシリコンドーピング層におけるリンのドーピング濃度より小さく、前記第2ポリシリコンドーピング層におけるリンのドーピング濃度は、前記第3ポリシリコンドーピング層におけるリンのドーピング濃度より小さい。
【0010】
選択できるように、前記第2ポリシリコンドーピング層と前記第3ポリシリコンドーピング層における炭素と窒素のドーピング比率は、5wt%未満である。
【0011】
選択できるように、第1ポリシリコンドーピング層と前記第3ポリシリコンドーピング層におけるリンのドーピング濃度の比は、0.4~1である。
【0012】
選択できるように、前記シリコン基板に垂直な方向に沿って、前記第1ポリシリコンドーピング層、前記第2ポリシリコンドーピング層及び前記第3ポリシリコンドーピング層の総厚さは、70nmを超えない。
【0013】
選択できるように、前記シリコン基板に垂直な方向に沿って、前記第1ポリシリコンドーピング層、前記第2ポリシリコンドーピング層及び/又は前記第3ポリシリコンドーピング層の厚さの範囲は、5nm~40nmである。
【0014】
選択できるように、前記シリコン基板に垂直な方向に沿って、前記第1バリア層と前記第2バリア層の厚さの範囲は、それぞれ0.5nm~2.5nmである。
【0015】
選択できるように、前記シリコン基板はベースエリアとエミッタを含み、前記エミッタがベースエリアの前記トンネル酸化層から離れた側に位置し、前記エミッタの前記ベースエリアから離れた側にパッシベーション層が設けられ、前記第2電極が前記パッシベーション層を貫通して前記エミッタと電気的に接続されている。
【0016】
本発明には、光起電力モジュールが提供され、この光起電力モジュールは、積層して設置された第1封止用パネル、第1封止用接着フィルム、セルストリング、第2封止用接着フィルム及び第2封止用パネルを含み、前記セルストリングが複数の上記の太陽電池を電気的に接続することで形成される。
【発明の効果】
【0017】
従来技術と比べて、本発明によって提供される太陽電池及びその製造方法、光起電力モジュールは、少なくとも下記のような有益な効果を奏している。
【0018】
本発明に提供される太陽電池及びその製造方法、光起電力モジュールでは、この太陽電池が、シリコン基板と、第1電極と、第2電極とを含み、シリコン基板のうちの一方の表面には、シリコン基板から離れた方向に沿ってトンネル酸化層が設けられ、トンネル酸化層のシリコン基板から離れた側に少なくとも2層のポリシリコンドーピング層が設けられ、隣接するポリシリコンドーピング層間にバリア層が設けられ、複数本の第1電極が異なるポリシリコンドーピング層に電気的に接続されている。上記の方式によって、薄層ポリシリコンの吸光と金属化のバランスを取るという課題を解決し、具体的には、ポリシリコン層の総厚さを低減することができるだけでなく、薄いポリシリコン層は、寄生吸収を下げ、短絡電流を高めることができ、また、バリア層によってペーストがトンネル酸化層を溶落ちするリスクを防止するとともに、金属再結合を減らし、太陽電池の開放電圧を高め、ひいては太陽電池の光電変換効率を高めることができる。
【0019】
もちろん、本発明を実施する任意の製品は、特に上述の全ての技術的効果を同時に達成する必要はない。
【0020】
以下の添付図面を参照して本発明の例示的な実施例を詳細に説明することで、本発明の他の特徴及びその利点が明瞭になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
明細書に組み込まれかつ明細書の一部を構成する添付図面は、本発明の実施例を示し、それらの説明と共に、本発明の原理を説明するために使用される。
図1図1は、本発明に係る太陽電池の構成を示す図である。
図2図2は、本発明に係る太陽電池の製造方法のフローチャートである。
図3図3は、本発明に係る光起電力モジュールの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の各例示的な実施例について詳しく説明する。なお、特に明記されていない限り、これらの実施例に記載された部材とステップの相対的な配置、数式及び数値は、本発明の範囲を限定するものではない。
【0023】
以下の少なくとも1つの例示的な実施例についての説明は、実際には例示的なものであり、本発明及びその応用又は使用に対するいかなる限定とするものではない。
【0024】
当業者の周知した技術、方法及び装置は、詳しく説明されないかもしれないが、適切な場合、前記技術、方法及び装置は、明細書の一部とみなされるべきである。
【0025】
ここで示され、検討されたすべての例において、いかなる具体的な数値は、単なる例示として解釈され、制限として解釈されるべきではない。したがって、例示的な実施例の他の例は、異なる数値を持ってもよい。
【0026】
なお、類似した記号と文字は、下記の図面で類似した項目を示している。このゆえに、ある項目が1つの図面で定義されると、次の図面ではそれ以上検討する必要がない。
【0027】
図1は、本発明により提供される太陽電池の構造模式図であり、図1に示すように、本実施例では、太陽電池が提供され、太陽電池は、シリコン基板1と、第1電極2と、第2電極3と、を含み、シリコン基板1のうちの一方の表面には、シリコン基板1から離れた方向に沿ってトンネル酸化層4が設けられており、トンネル酸化層4のシリコン基板1から離れた側には、少なくとも2層のポリシリコンドーピング層5が設けられ、隣接するポリシリコンドーピング層5間には、バリア層6が設けられており、複数本の第1電極2が異なるポリシリコンドーピング層5に電気的に接続されている。
【0028】
具体的には、この太陽電池は、TOPConセルであってもよく、シリコン基板1と、第1電極2と、第2電極3と、を含み、ここで、シリコン基板1がN型シリコン基板であってもよく、第1電極2と第2電極3がいずれも例えば、銀、アルミニウム、銅、ニッケルなどの金属であってもよい。
【0029】
シリコン基板1のうちの一方の表面には、シリコン基板1から離れた方向に沿ってトンネル酸化層4が設けられ、トンネル酸化層4は、多数キャリアの電子をポリシリコンドーピング層5にトンネルして入らせると同時に、少数キャリアの正孔の再結合を阻止し、さらに、電子がポリシリコンドーピング層5で横方向に輸送されて金属に収集され、金属の接触再結合電流を大幅に低減し、TOPConセルの開放電圧と短絡電流を高めている。トンネル酸化層4のシリコン基板1から離れた側に複数層のポリシリコンドーピング層5が設けられ、隣接するポリシリコンドーピング層5間にバリア層6が設けられ、複数層のポリシリコンドーピング層5は、3層のポリシリコンドーピング層5、4層のポリシリコンドーピング層5又は5層のポリシリコンドーピング層5であってもよく、好ましくは、トンネル酸化層4のシリコン基板1から離れた側に3層のポリシリコンドーピング層5が設けられ、隣接する2つのポリシリコンドーピング層5間にバリア層6が設けられ、バリア層6がポリシリコンドーピング層5よりも緻密であり、バリア効果をもたらすことができる。具体的には、バリア層6は、電子輸送に影響を与えることなく、ペースト(例えば、銀粒子)による溶落ちを阻止する役割を果たすことができる。バリア層6は、酸化シリコン、酸窒化シリコン及び酸化アルミニウムを含むが、これらに限定されない。
【0030】
複数本の第1電極2は、異なるポリシリコンドーピング層5に電気的に接続されており、例えば、一部の第1電極2が最外層のポリシリコンドーピング層5(トンネル酸化層4から遠い側)まで焼結し、一部の第1電極2が最内層のポリシリコンドーピング層5(トンネル酸化層4に近い側)まで焼結し、一部の第1電極2が最内層と最外層の間のポリシリコンドーピング層5まで焼結し、バリア層6の存在によって、トンネル酸化層4を溶落ちするリスクをできるだけ低減し、TOPConセルの開放電圧、バッキングファクター及び電池の変換効率に影響することを防止する。
【0031】
シリコン基板1はベースエリア11とエミッタ12を含み、エミッタ12がベースエリア11のトンネル酸化層4から離れた側に位置し、エミッタ12のベースエリア11から離れた側にパッシベーション層7が設けられ、第2電極3がパッシベーション層7を貫通してエミッタと電気的に接続されている。
【0032】
上記の実施例からわかるように、本実施例によって提供される太陽電池は、少なくとも下記のような有益な効果を奏している。
【0033】
本実施例によって提供される太陽電池は、シリコン基板1と、第1電極2と、第2電極3と、を含み、シリコン基板1のうちの一方の表面には、シリコン基板1から離れた方向に沿ってトンネル酸化層4が設けられ、トンネル酸化層4のシリコン基板1から離れた側に少なくとも2層のポリシリコンドーピング層5が設けられ、隣接するポリシリコンドーピング層5間にバリア層6が設けられ、複数本の第1電極2が異なるポリシリコンドーピング層5に電気的に接続されている。上記の考案によって、薄層ポリシリコンの吸光と金属化のバランスを取るという課題が全体的に解決され、具体的にはポリシリコン層の総厚さを低減できるだけでなく、薄いポリシリコン層は、寄生吸収を低下させ、短絡電流を高めることができる。さらに、バリア層6によってペーストがトンネル酸化層4を溶落ちするリスクを低減するとともに、金属再結合を減少させ、太陽電池の開放電圧を高め、ひいては太陽電池の光電変換効率を向上させる。
【0034】
図1を引き続き参照すると、本発明の一実施例では、シリコン基板1に近いポリシリコンドーピング層5におけるリンのドーピング濃度がシリコン基板1から遠いポリシリコンドーピング層5におけるリンのドーピング濃度より小さく、これによって、電池の良好なパッシベーション効果を確保するだけでなく、リンがシリコン基板1に拡散して入るリスクを低減し、開圧回路及び短絡電流を効果的に向上させ、電池とペーストの良好な接触を確保し、接触抵抗を減らし、電池のバッキングファクターを高めることができる。具体的には、例えば、シリコン基板1に近いポリシリコンドーピング層5におけるリンのドーピング濃度の範囲は、2×1020/cm~2×1021/cmであってもよく、具体的には、例えば、シリコン基板1に近いポリシリコンドーピング層5におけるリンのドーピング濃度は、2×1020/cm、11×1020/cm、又は2×1021/cmであってもよく、シリコン基板1から遠いポリシリコンドーピング層5におけるリンのドーピング濃度の範囲は、5×1020/cm~5×1021/cmであってもよく、具体的には、シリコン基板1から遠いポリシリコンドーピング層5におけるリンのドーピング濃度は、5×1020/cm、27.5×1020/cm又は5×1021/cmであってもよい。
【0035】
図1を引き続き参照すると、本発明の一実施例では、少なくとも2層のポリシリコンドーピング層5は、第1ポリシリコンドーピング層51と、第2ポリシリコンドーピング層52と、第3ポリシリコンドーピング層53と、を含み、第1ポリシリコンドーピング層51と第2ポリシリコンドーピング層52の間に第1バリア層61を有し、第2ポリシリコンドーピング層52と第3ポリシリコンドーピング層53の間に第2バリア層62を有し、ここで、第1ポリシリコンドーピング層51がトンネル酸化層4に近い側に位置し、第3ポリシリコンドーピング層53がトンネル酸化層4から遠い側に位置する。
【0036】
第1ポリシリコンドーピング層51には、リンがドープされており、第2ポリシリコンドーピング層52と第3ポリシリコンドーピング層53には、それぞれリン及び炭素又は窒素がドープされている。つまり、第1ポリシリコンドーピング層51、第2ポリシリコンドーピング層52及び第3ポリシリコンドーピング層53のいずれにも、リンがドープされており、第2ポリシリコンドーピング層52と第3ポリシリコンドーピング層53は、リンに加えて、炭素又は窒素がさらにドープされており、これによって、光学的ギャップを増やし、寄生吸収を低減することができる。もちろん、実際の状況に応じて、第2ポリシリコンドーピング層52には、リンのみがドープされ、炭素又は窒素がドープされなくてもよい。また、第3ポリシリコンドーピング層53には、リンがドープされた上で、炭素又は窒素がドープされることで、光学的なギャップを増やし、寄生吸収を低減することができる。
【0037】
図1を引き続き参照すると、本発明の一実施例では、第1電極2は、第1サブ電極21と、第2サブ電極22と、を含み、第1サブ電極21が第3ポリシリコンドーピング層53に電気的に接続され、第2サブ電極22が第1ポリシリコンドーピング層51及び/又は第2ポリシリコンドーピング層52に電気的に接続されている。
【0038】
具体的には、第1電極2は、第1サブ電極21と、第2サブ電極22と、を含み、第1サブ電極21が第3ポリシリコンドーピング層53と電気的に接続され、第2サブ電極22が第2ポリシリコンドーピング層52と電気的に接続され、あるいは、第2サブ電極22が第1ポリシリコンドーピング層51と電気的に接続され、あるいは、一部の第2サブ電極22が第2ポリシリコンドーピング層52と電気的に接続され、残りの部分の第2サブ電極22が第1ポリシリコンドーピング層51と電気的に接続されることで、金属再結合をより効果的に減らし、太陽電池の開放電圧を向上させ、ひいては太陽電池の光電変換効率を高める。
【0039】
図1を引き続き参照すると、本発明の一実施例では、第1ポリシリコンドーピング層51におけるリンのドーピング濃度は、第2ポリシリコンドーピング層52におけるリンのドーピング濃度より小さく、第2ポリシリコンドーピング層52におけるリンのドーピング濃度は、第3ポリシリコンドーピング層53におけるリンのドーピング濃度より小さい。
【0040】
具体的には、第1ポリシリコンドーピング層51、第2ポリシリコンドーピング層52及び第3ポリシリコンドーピング層53におけるリンのドーピング濃度は、次第に高くなる。具体的には、第1ポリシリコンドーピング層51におけるリンのドーピング濃度が低濃度であるため、リンが電池内部に拡散して入るリスクを低減し、電池の良好なパッシベーション効果を確保することができる。第3ポリシリコンドーピング層53におけるリンのドーピング濃度が高濃度であるため、電池とペーストの良好な接触を確保し、接触抵抗を低減し、電池のバッキングファクターを高めることができる。第2ポリシリコンドーピング層52におけるリンのドーピング濃度は、第1ポリシリコンドーピング層51におけるリンのドーピング濃度と第3ポリシリコンドーピング層53におけるリンのドーピング濃度の間にある。
【0041】
図1を引き続き参照すると、本発明の一実施形例では、第2ポリシリコンドーピング層52と第3ポリシリコンドーピング層53における炭素と窒素のドーピング比率は、5wt%未満である。
【0042】
具体的には、第2ポリシリコンドーピング層52と第3ポリシリコンドーピング層53における炭素と窒素のドーピング比率が5wt%を超えると、電子輸送及びパッシベーション効果に影響し、ひいては電池効率に影響を及ぼす。したがって、第2ポリシリコンドーピング層52と第3ポリシリコンドーピング層53における炭素と窒素のドーピング比率を5wt%未満にすることで、電子輸送及びパッシベーション効果に役立ち、ひいては電池効率を高めることができる。選択できるように、第3ポリシリコンドーピング層53に炭素と窒素がドープされ、具体的には、第2ポリシリコンドーピング層52と第3ポリシリコンドーピング層53における炭素と窒素のドーピング比率は、0.01wt%、1wt%、2wt%、3wt%、4wt%又は5wt%であってもよい。
【0043】
図1を引き続き参照すると、本発明の一実施例では、第1ポリシリコンドーピング層51と第3ポリシリコンドーピング層53におけるリンのドーピング濃度の比の範囲は、0.4~1である。
【0044】
具体的には、第1ポリシリコンドーピング層51と第3ポリシリコンドーピング層53におけるリンのドーピング濃度の比が0.4より低い場合、第3ポリシリコンドーピング層53におけるリンのドーピング濃度が高すぎて、オージェ再結合がひどくなり、電池の短絡電流とパッシベーション効果に影響し、ひいては電池効率に影響を及ぼす。第1ポリシリコンドーピング層51と第3ポリシリコンドーピング層53におけるリンのドーピング濃度の比が1より大きい場合、第3ポリシリコンドーピング層53におけるリンのドーピング濃度が低すぎて、接触抵抗が大きくなり、電池のバッキングファクターを低下させ、電池効率に影響する。したがって、第1ポリシリコンドーピング層51と第3ポリシリコンドーピング層53におけるリンのドーピング濃度の比を0.4~1に設定することで、第3ポリシリコンドーピング層53におけるリンのドーピング濃度が高すぎることを回避し、オージェ再結合を低下させ、電池の短絡電流とパッシベーション効果を高めることができるだけでなく、第3ポリシリコンドーピング層53におけるリンのドーピング濃度が低すぎることを防止し、接触抵抗を低下させ、電池のバッキングファクターを向上させ、ひいては、電池効率を高めることができる。具体的には、第1ポリシリコンドーピング層51と第3ポリシリコンドーピング層53におけるリンのドーピング濃度の比は、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9又は1であってもよい。
【0045】
図1を引き続き参照すると、本発明の一実施例では、シリコン基板1に垂直な方向に沿って、第1ポリシリコンドーピング層51、第2ポリシリコンドーピング層52及び第3ポリシリコンドーピング層53の総厚さは、70nmを超えない。
【0046】
具体的には、シリコン基板1に垂直な方向に沿って、第1ポリシリコンドーピング層51、第2ポリシリコンドーピング層52及び第3ポリシリコンドーピング層53の総厚さが70nmを超えると、ポリシリコン層の総厚さを低減し、光の寄生吸収を高めることができないため、シリコン基板1に垂直な方向に沿って、第1ポリシリコンドーピング層51、第2ポリシリコンドーピング層52及び第3ポリシリコンドーピング層53の総厚さが70nmを超えないように設定することで、ポリシリコン層の総厚さを低減し、光の寄生吸収を減らすとともに、製造コストを下げることができる。具体的には、シリコン基板1に垂直な方向に沿って、第1ポリシリコンドーピング層51、第2ポリシリコンドーピング層52及び第3ポリシリコンドーピング層53の総厚さは、60nm、65nm又は70nmであってもよい。
【0047】
図1を引き続き参照すると、本発明の一実施例では、シリコン基板1に垂直な方向に沿って、第1ポリシリコンドーピング層51、第2ポリシリコンドーピング層52及び/又は第3ポリシリコンドーピング層53の厚さの範囲は、5nm~40nmである。
【0048】
具体的には、シリコン基板1に垂直な方向沿って、第1ポリシリコンドーピング層51、第2ポリシリコンドーピング層52及び第3ポリシリコンドーピング層53の厚さが5nm未満であると、ペーストがトンネル酸化層4を溶落ちするリスクがある。シリコン基板1に垂直な方向に沿って、第1ポリシリコンドーピング層51、第2ポリシリコンドーピング層52又は第3ポリシリコンドーピング層53の厚さが5nmより小さいと、各層のポリシリコンドーピング層の均一性が制御されにくくなる。シリコン基板1に垂直な方向に沿って、第1ポリシリコンドーピング層51、第2ポリシリコンドーピング層52及び/又は第3ポリシリコンドーピング層53の厚さが40nmを超えると、製造コストが高くなる。したがって、シリコン基板1に垂直な方向に沿って、第1ポリシリコンドーピング層51、第2ポリシリコンドーピング層52及び/又は第3ポリシリコンドーピング層53の厚さを5nm~40nmに設定することで、ペーストがトンネル酸化層4を溶落ちするリスクを低減できるだけでなく、各層のポリシリコンドーピング層の均一性の制御に役立つとともに、製造コストを削減することができる。具体的には、シリコン基板1に垂直な方向に沿って、第1ポリシリコンドーピング層51の厚さは、40nm、35nm、30nm、25nm、20nm、15nm、10nm又は5nmであってもよい。シリコン基板1に垂直な方向に沿って、第2ポリシリコンドーピング層52の厚さは、40nm、30nm、20nm、10nm又は5nmであってもよい。シリコン基板1に垂直な方向に沿って、第3ポリシリコンドーピング層53の厚さは5nm、10nm、20nm、30nm又は40nmであってもよい。選択できるように、第1ポリシリコンドーピング層51の厚さは40nmで、第2ポリシリコンドーピング層52の厚さは25nmで、第3ポリシリコンドーピング層53の厚さは5nmであってもよい。あるいは、第1ポリシリコンドーピング層51の厚さは35nmで、第2ポリシリコンドーピング層52の厚さは30nmで、第3ポリシリコンドーピング層53の厚さは5nmであってもよい。あるいは、第1ポリシリコンドーピング層51の厚さは30nmで、第2ポリシリコンドーピング層52の厚さは30nmで、第3ポリシリコンドーピング層53の厚さは10nmであってもよい。
【0049】
図1を引き続き参照すると、本発明の一実施例では、シリコン基板1に垂直な方向に沿って、第1バリア層61と第2バリア層62の厚さの範囲は、それぞれ0.5nm~2.5nmである。
【0050】
具体的には、シリコン基板1に垂直な方向に沿って、第1バリア層61と第2バリア層62の厚さがいずれも0.5nm未満であると、第1バリア層61と第2バリア層62の厚さが薄すぎて、製造工程では、均一性が制御されにくくなると同時に、ペーストによる溶落ちを阻止する効果が悪くなる。シリコン基板1に垂直な方向に沿って、第1バリア層61と第2バリア層62の厚さがいずれも2.5nmを超えると、電子の輸送に影響し、電池のバッキングファクターに大きく影響してしまう。したがって、シリコン基板1に垂直な方向に沿って、第1バリア層61と第2バリア層62の厚さの範囲をそれぞれ0.5nm~2.5nmに設定することで、第1バリア層61と第2バリア層62の厚さが薄すぎることを回避し、工程上で第1バリア層61と第2バリア層62の均一性を制御するのに役立つとともに、電子の輸送に有利であり、電池のバッキングファクターを高めることができる。具体的には、シリコン基板1に垂直な方向に沿って、第1バリア層61の厚さは、0.5nm、1nm、1.5nm、2nm又は2.5nmであってもよく、シリコン基板1に垂直な方向に沿って、第2バリア層62の厚さは、0.5nm、1nm、1.5nm、2nm又は2.5nmであってもよい。
【0051】
図2は、本発明によって提供された太陽電池の製造方法のフローチャートである。図1及び図2を引き続き参照すると、本実施例では、太陽電池の製造方法が提供され、この太陽電池の製造方法は、以下のステップを含む。具体的に、
シリコン基板1を洗浄してテクスチャリングするS1と、
テクスチャリングされた後のシリコン基板1に対してホウ素拡散を行って、ホウ素ドーピングシリコン層を形成するS2と、
裏面のホウ素ドーピングシリコン層におけるホウケイ酸ガラスを除去し、その後、裏面に対してアルカリ研磨するS3と、
アルカリ研磨した後に、裏面の積層にポリシリコンドーピング層5を堆積させるS4と、
前記ポリシリコンドーピング層5を堆積させた後に、裏面に対してリン拡散を行い、リン拡散後にアニーリングを行い、ポリシリコンドーピング層5を結晶化し、かつ不純物を活性化するS5と、
アニーリングを行った後に、前面ポリシリコンドーピング層のラップアラウンド(wraparound)、前面ホウケイ酸ガラス及び裏面リンケイ酸ガラスを除去し、その後、前面と裏面にコーディングするS6と、
前面と裏面のコーディングの表面にそれぞれ第1電極2と第2電極3を印刷するS7と、
第1電極2と第2電極3を印刷した後に、焼結を行い、ここで、複数本の第1電極2が異なるポリシリコンドーピング層5に電気的に接続されるS8と、を含む。
【0052】
具体的には、本実施例では、さらに、太陽電池の製造方法が提供される。この太陽電池の製造方法は、TOPConセルの製造方法であってもよく、抵抗率の範囲が0.3~2.1Ohm.cmで、少数キャリア寿命が2.5msより大きなN型単結晶シリコンウェーハを用いることができる。KOHとHの混合溶液中でシリコンウェーハ表面の損傷層を除去し、そして、KOH溶液中でテクスチャリングを行い、シリコンウェーハの表面にピラミッドテクスチャ表面を形成し、ピラミッドテクスチャ表面の大きさが1~5μmに制御され、テクスチャ表面が出来上がった後、シリコンウエーハの前面にB拡散を用いてエミッタを製造し、シート抵抗が110~150Ohm.cmであり、前面のホウケイ酸ガラスの厚さが50~120nmであり、シリコンウエーハの裏面からホウケイ酸ガラスを除去した後、アルカリ研磨を行い、シリコンウエーハの裏面の反射率を40%より大きくする。アルカリ研磨後、LPCVD装置で裏面の積層にポリシリコンドーピング層5を堆積させ、ポリシリコンドーピング層5の堆積が完了した後、リン拡散装置でドーピングし、リン拡散装置で直接アニーリングしてポリシリコンを結晶化させ、不純物(P)を押し出して活性化させる。アニーリング工程の条件は、800~1000℃でアニーリングを10~150min行い、アニーリング雰囲気はN(窒素ガス)、又は初期Nで後期O(酸素ガス)であり、アニーリングした後に洗浄する。あるいは、PECVD装置でポリシリコンドーピング層を堆積させ、ドープドポリシリコンを堆積させると同時にリンのドーピングを行い、そして、アニーリングを行い、ポリシリコンを結晶化させ、かつ不純物(P)を押し出して活性化させる。アニーリング後、前面ポリシリコンドーピング層のラップアラウンド、前面ホウケイ酸ガラス及び裏面リンケイ酸ガラスを除去する後、再度洗浄し、洗浄後、前面と裏面にコーディングし、例えば、シリコンウエーハの前面にALDで酸化アルミニウム層を堆積させ、PECVDで窒化シリコン層を製造する。シリコンウエーハの裏面に第1パッシベーション層を堆積させ、電池前駆体の製造を完成させる。表面パッシベーションが完了した後に、シリコンウエーハの前面と裏面に金属化を行い、スクリーン印刷の方式でシリコンウエーハの裏面に第1電極2、前面に第2電極3を順次印刷する。ペースト(銀粒子)は、その大きさがそれぞれ異なり、形状も異なるため、第1電極2がポリシリコンドーピング層5に溶け込む深さも異なり、例えば、複数本の第1電極2が異なったポリシリコンドーピング層5に電気的に接続され、第1電極2と第2電極3をスクリーン印刷した後、850°~950°の高温で第1電極2をポリシリコンドーピング層5に溶け込み、第2電極3をエミッタ層に溶け込み、最終的に電池の製造を完了させる。
【0053】
上記の実施例からわかるように、本実施例によって提供される太陽電池の製造方法は、少なくとも下記のような有益な効果を奏している。
【0054】
本実施例における太陽電池の製造方法によって、シリコン基板1を洗浄してテクスチャリングし、テクスチャリングされた後のシリコン基板1に対してホウ素拡散を行って、ホウ素ドーピングシリコン層を形成し、裏面のホウ素ドーピングシリコン層におけるホウケイ酸ガラスを除去した後に、裏面に対してアルカリ研磨し、アルカリ研磨後、裏面の積層にポリシリコンドーピング層5を堆積させ、前面ポリシリコンドーピング層5のラップアラウンドを除去し、そして、裏面にリン含有液体ドープ剤をローラー塗装し、そして、乾燥させ、乾燥後のリン含有液体ドープ剤に対してアニーリングを行い、ポリシリコンドーピング層5を結晶化しかつ不純物を活性化し、アニーリング後、前面と裏面にコーディングし、前面と裏面のコーディングの表面にそれぞれ第1電極2と第2電極3を印刷し、第1電極2と第2電極3を印刷した後に、焼結を行い、ここで、複数本の第1電極2が異なったポリシリコンドーピング層5に電気的に接続される。上記の方式を採用することで、金属再結合を低減し、太陽電池の開放電圧を向上させ、ひいては太陽電池の光電変換効率を高めることができる。
【0055】
図1を引き続き参照すると、本発明の一実施例では、アルカリ研磨後、裏面積層にポリシリコンドーピング層5を堆積させることは、トンネル酸化層4を製造して第1ポリシリコンドーピング層51を堆積させることと、第1バリア層61を製造して第2ポリシリコンドーピング層52を堆積させることと、第2バリア層62を製造して第3ポリシリコンドーピング層53を堆積させることと、を含む。
【0056】
具体的には、積層にポリシリコンドーピング層5を堆積させることは、PECVD(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition、プラズマ励起化学気相成長)で堆積させることができ、堆積温度が350~480℃であり、パワーが6000w-15000wであり、NO(笑気ガス)でトンネル酸化層4を成長させ、工程時間の範囲が10~60sであり、PH(ホスフィン)とSiH(シラン)の混合ガスを用いて、第1ポリシリコンドーピング層51をインサイチュ成長させ、工程の時間が100~300sであり、第1ポリシリコンドーピング層51を成長させた後に、NOを用いて第1バリア層61を成長させ、工程の時間が10~60sであり、あるいは、SiH、NO及びNHの混合ガスを用いて第1バリア層61を堆積させ、工程の時間が1~10sであり、第1バリア層61を成長させた後に、引き続き上記のように第2ポリシリコンドーピング層52、第2バリア層62及び第3ポリシリコンドーピング層53を順次成長させ、第2ポリシリコンドーピング層52及び/又は第3ポリシリコンドーピング層53の成長時、PH、SiH及びCH(又はNH)の混合ガスを用いて成長させることができ、工程の時間が30~300sである。上記の方式によって、ポリシリコン層の総厚さを低減できるだけでなく、薄いポリシリコン層は、寄生吸収を低減し、短絡電流を高め、また、バリア層6によってペーストがトンネル酸化層4を溶落ちするリスクを防止することができる。
【0057】
図1に示すように、本発明の一実施例では、第1電極2は、第1サブ電極21と、第2サブ電極22と、を含み、第1サブ電極21が第3ポリシリコンドーピング層53と電気的に接続され、第2サブ電極22が第1ポリシリコンドーピング層51及び/又は第2ポリシリコンドーピング層52と電気的に接続される。第1電極2について、太陽電池で詳しく説明されているため、ここで繰り返して説明する必要がない。
【0058】
図3は、本発明によって提供される光起電力モジュールの構造を示す図であり、図3に示すように、本実施例では、光起電力モジュールが提供され、光起電力モジュールは、積層して設置された第1封止用パネル201、第1封止用接着フィルム202、セルストリング203、第2封止用接着フィルム204及び第2封止用パネル205を含み、セルストリング203が複数の上記の太陽電池を電気的に接続することで形成される。
【0059】
具体的には、この光起電力モジュールは、積層配置される第1封止用パネル201、第1封止用接着フィルム202、セルストリング203、第2封止用接着フィルム204及び第2封止用パネル205を含む。セルストリング203は、上記の複数の太陽電池を電気的に接続することで形成され、第1封止用パネル201は、強化ガラスを採用してもよく、高い光透過率を有し、その光透過率が92%以上に達することができ、一般的に低鉄強化エンボスガラスを採用する。第2封止用パネル205は、ガラス材質、TPT(ポリフッ化ビニル複合膜)又はTPE(熱可塑性エラストマー)を採用することができ、第2封止用パネル205は、内部封止材料と電池を機械的損傷と外部環境から保護するために用いられ、さらに良好な絶縁性能を有し、モジュールの寿命を大きく決定し、優れた耐候性、低い水蒸気透過率、良好な電気絶縁性、一定の接着強度を有する。第1封止用接着フィルム202及び第2封止用接着フィルム204は、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)、POE(エチレンと高炭素数α-オレフィンとのランダム共重合体エラストマー)又はPVB(ポリビニルブチラール))の材質を採用することができる。EVA材質は、分子鎖に酢酸ビニルモノマーを導入することで、高い結晶度を低下させ、靭性、耐衝撃性、フィラー互換性及び熱密封性を高めることができる。POE材質は、その分子構造によって、優れた力学性能、レオロジー性と紫外線耐性を備え、ポリオレフィンとの親和性がよく、低温で靭性がよく、コストパフォーマンスが高いなどの特徴も持っている。PVBの材質は、メタノール、エタノール、ケトン類、ハロゲン化アルキル、芳香族炭化水素系溶剤に溶けることができ、フタル酸エステル、セバシン酸エステル可塑剤、ニトロセルロース、フェノール樹脂、エポキシ樹脂などと良好な相溶性があり、高い透明性、耐寒性、耐衝撃性、耐紫外線照射性を有し、金属、ガラス、木材、セラミックス、繊維製品などと良好な接着力を有する。第1封止用接着フィルム202と第2封止用接着フィルム204は、電池セルの封止保護に使われ、外界環境が電池セルの性能に影響することを防止し、第1封止用パネル201、太陽電池及び第2封止用パネル205を接着して、一定の接着強度を持たせ、高い光透過率、合理的な架橋度、優れた耐紫外線老化性能と優れた耐湿熱老化性能、極めて低い収縮率をを備え、各種第1封止用パネル201と第2封止用パネル205に対して長期的に強い接着性能、高い体積抵抗率を有している。セルストリング203は、上記の複数の太陽電池(図示せず)を電気的に接続することで形成され、隣接する2つの太陽電池がPVリボン(図示せず)を介して電気的に接続されている。
【0060】
上記の実施例からわかるように、本発明によって提供される太陽電池及びその製造方法、光起電力モジュールは、少なくとも下記のような有益な効果を奏している。
【0061】
本発明に提供される太陽電池及びその製造方法、光起電力モジュールでは、この太陽電池が、シリコン基板と、第1電極と、第2電極とを含み、シリコン基板のうちの一方の表面には、シリコン基板から離れた方向に沿ってトンネル酸化層が設けられ、トンネル酸化層のシリコン基板から離れた側に少なくとも2層のポリシリコンドーピング層が設けられ、隣接するポリシリコンドーピング層間にバリア層が設けられ、複数本の第1電極が異なるポリシリコンドーピング層に電気的に接続されている。上記の方式によって、薄層ポリシリコンの吸光と金属化のバランスを取るという課題を解決し、具体的には、ポリシリコン層の総厚さを低減することができるだけでなく、薄いポリシリコン層は、寄生吸収を下げ、短絡電流を高めることができ、また、バリア層によってペーストがトンネル酸化層を溶落ちするリスクを防止するとともに、金属再結合を減らし、太陽電池の開放電圧を高め、ひいては太陽電池の光電変換効率を高めることができる。
【0062】
例によって、本発明のいくつかの特定の実施例を詳しく説明したが、上記の例は、説明するためのものだけであり、本発明の範囲を限定するためのものではないことを当業者は理解すべきである。当業者は、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、上記の実施例を修正できることを理解すべきである。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって限定されている。

図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-03-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
シリコン基板と、第1電極と、第2電極と、を含み、
前記シリコン基板のうちの一方の表面には、トンネル酸化層が設けられており、前記トンネル酸化層の前記シリコン基板から離れた側の表面には、少なくとも2層のポリシリコンドーピング層が順次設けられ、隣接する前記ポリシリコンドーピング層間には、電子輸送に影響を与えずにペーストによる溶落ちを阻止するためのバリア層が設けられており、各前記ポリシリコンドーピング層少なくとも1本の前記第1電極に電気的に接続されている、
ことを特徴とする太陽電池。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項6
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項6】
前記第2ポリシリコンドーピング層においてドープされた炭素の質量百分率は5wt%未満であり、ドープされた窒素の質量百分率は5wt%未満であり、前記第3ポリシリコンドーピング層においてドープされた炭素の質量百分率は5wt%未満であり、ドープされた窒素の質量百分率は5wt%未満である
ことを特徴とする請求項3に記載の太陽電池。
【手続補正3】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項7
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項7】
前記第3ポリシリコンドーピング層におけるリンのドーピング濃度に対する前記第1ポリシリコンドーピング層におけるリンのドーピング濃度の比は、0.4~1である、
ことを特徴とする請求項3に記載の太陽電池。
【手続補正4】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項9
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項9】
前記シリコン基板に垂直な方向に沿って、前記第1ポリシリコンドーピング層、前記第2ポリシリコンドーピング層及び前記第3ポリシリコンドーピング層の厚さの範囲は、それぞれ5nm~40nmである、
ことを特徴とする請求項8に記載の太陽電池。