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特開2024-110398異常検出装置および異常検出システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110398
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】異常検出装置および異常検出システム
(51)【国際特許分類】
   F16D 66/00 20060101AFI20240807BHJP
   B60T 17/22 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
F16D66/00 A
B60T17/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024008528
(22)【出願日】2024-01-24
(31)【優先権主張番号】P 2023014389
(32)【優先日】2023-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小杉 正則
(72)【発明者】
【氏名】柴田 泰宏
【テーマコード(参考)】
3D049
3J058
【Fターム(参考)】
3D049BB12
3D049HH45
3D049HH47
3D049HH48
3D049HH52
3D049KK01
3D049MM01
3D049RR02
3D049RR06
3J058AA43
3J058AA48
3J058AA53
3J058BA32
3J058BA60
3J058CD13
3J058CD38
3J058DB20
3J058DB25
3J058DD02
3J058EA29
3J058FA01
(57)【要約】
【課題】摩擦ブレーキ機構あるいはその周辺部品の熱異常を簡便な構成で検出できるようにする。
【解決手段】センサ装置(100)は、車輪(210)を車体に締結するナット(240)に取り付けられる。センサ装置(100)は、温度センサと、外部との間で無線通信を行なう通信部と、制御部とを備える。制御部は、温度センサの出力がしきい値を超える場合に、センサ装置(100)の近傍に配置されるブレーキ機構(260)による制動力がフェード現象によって低下する可能性があることを示す信号を外部に無線送信するように通信部を制御する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪を車体に締結する締結部材に取り付けられた異常検出装置であって、
前記締結部材の温度を検出する温度センサと、
外部との間で無線通信を行なう通信部と、
前記温度センサの出力がしきい値を超える場合に異常を示す信号を外部に無線送信するように前記通信部を制御する制御部とを備える、異常検出装置。
【請求項2】
前記車体には、摩擦力を利用して前記車輪の回転を制動するブレーキ機構が備えられ、
前記しきい値は、前記ブレーキ機構において不具合が生じる可能性がある温度に基づいて設定され、
前記異常を示す信号は、前記ブレーキ機構において不具合が生じる可能性があることを示す信号である、請求項1に記載の異常検出装置。
【請求項3】
前記締結部材に嵌合されるカバー部材に取り付けられる、請求項1に記載の異常検出装置。
【請求項4】
前記カバー部材および前記締結部材の少なくとも一方には、前記カバー部材を前記締結部材に固定するための磁力を発生する磁石が設けられ、
前記しきい値は、前記磁石において熱消磁が生じる可能性がある温度に基づいて設定され、
前記異常を示す信号は、前記カバー部材が前記磁石の熱消磁によって脱落する可能性があることを示す信号である、請求項3に記載の異常検出装置。
【請求項5】
前記締結部材に加わる加速度を検出する加速度センサをさらに備え、
前記制御部は、前記加速度センサの出力に基づいて前記締結部材の緩みの有無を検出し、検出結果を示す信号を外部に無線送信するように前記通信部を制御する、請求項1に記載の異常検出装置。
【請求項6】
車輪を車体に締結する締結部材に取り付けられた検出装置と、
前記検出装置との間で無線通信可能に構成された制御装置とを備え、
前記検出装置は、
前記締結部材の温度を検出する温度センサと、
前記温度センサの出力を外部に無線送信する通信部とを備え、
前記制御装置は、前記検出装置から受信した前記温度センサの出力がしきい値を超える場合に異常を示す信号を出力する、異常検出システム。
【請求項7】
4つ以上の複数の車輪を車体にそれぞれ締結する複数の締結部材にそれぞれ取り付けられた複数の検出装置と、
前記複数の検出装置との間で無線通信可能に構成された制御装置とを備え、
前記複数の検出装置の各々は、
前記締結部材の温度を検出する温度センサと、
前記温度センサの出力を外部に無線送信する通信部とを備え、
前記複数の車輪の各々には、摩擦力を利用して前記車輪の回転を制動するブレーキ機構が備えられ、
前記制御装置は、前記複数の検出装置にそれぞれ備えられた複数の温度センサの出力のうち、いずれか1つの温度センサの出力が他の温度センサの出力よりも所定値以上乖離している場合、当該1つの温度センサが取り付けられる車輪のブレーキ機構あるいはその周辺において機械的な故障が生じていることを示す信号を出力する、異常検出システム。
【請求項8】
4つ以上の複数の車輪を車両の車体にそれぞれ締結する複数の締結部材にそれぞれ取り付けられた複数の検出装置と、
前記複数の検出装置との間で無線通信可能に構成された制御装置とを備え、
前記複数の検出装置の各々は、
前記車輪の回転軸に対して直交する方向の加速度を検出する加速度センサと、
前記締結部材の温度を検出する温度センサと、
前記温度センサの出力を外部に無線送信する通信部とを備え、
前記複数の車輪の各々には、摩擦力を利用して前記車輪の回転を制動するブレーキ機構が備えられ、
前記制御装置は、
前記複数の検出装置にそれぞれ備えられる複数の加速度センサの出力および複数の温度センサの出力を用いて前記複数の車輪のいずれか1つが機械的に故障している単一機械故障が生じているか否かを判定し、
前記単一機械故障が生じていると判定された場合に前記単一機械故障を示す信号を外部に無線送信するように前記通信部を制御する、異常検出システム。
【請求項9】
前記複数の検出装置の各々は、前記加速度センサの出力に基づいて前記車両が基準値未満の低車速での走行中であると判定される場合に前記温度センサの出力上昇率を前記制御装置に送信し、
前記制御装置は、前記複数の検出装置からそれぞれ受信した複数の前記温度センサの出力上昇率のうち、いずれか1つの温度センサの出力上昇率が他の温度センサの出力上昇率よりも所定値以上乖離している場合、当該1つの温度センサが取り付けられる車輪のブレーキ機構あるいはその周辺において前記単一機械故障が生じていると判定する、請求項8に記載の異常検出システム。
【請求項10】
前記複数の検出装置の各々は、前記加速度センサの出力に基づいて前記車両が走行を開示したと判定される場合に前記温度センサの出力を前記制御装置に送信するとともに、前記加速度センサの出力に基づいて前記車両が所定距離を走行したと判定される場合に前記温度センサの出力を前記制御装置に送信し、
前記制御装置は、
前記複数の検出装置から受信した情報に基づいて、前記車両が走行を開始した時から前記所定距離を走行した時までの複数の前記温度センサの出力上昇を算出し、
複数の前記温度センサの出力上昇のうち、いずれか1つの温度センサの出力上昇昇が他の温度センサの出力上昇昇よりも所定値以上乖離している場合、当該1つの温度センサが取り付けられる車輪のブレーキ機構あるいはその周辺において前記単一機械故障が生じていると判定する、請求項8に記載の異常検出システム。
【請求項11】
車輪を車両の車体に締結する締結部材に取り付けられた異常検出装置であって、前記車輪には、摩擦力を利用して前記車輪の回転を制動するブレーキ機構が備えられ、
前記異常検出装置は、
前記車輪の回転軸に対して直交する方向の加速度を検出する加速度センサと、
前記締結部材の温度を検出する温度センサと、
外部との間で無線通信を行なう通信部と、
制御部とを備え、
前記制御部は、
前記加速度センサの出力と前記温度センサの出力とを用いて前記ブレーキ機構あるいはその周辺において機械的な故障が生じているか否かを判定し、
前記機械的な故障が生じていると判定された場合に前記機械的な故障を示す信号を外部に無線送信するように前記通信部を制御する、異常検出装置。
【請求項12】
前記制御部は、
前記加速度センサの出力に基づいて前記車輪の回転速度を算出し、
前記車輪の回転速度に基づいて前記ブレーキ機構が正常である時の前記温度センサの出力上昇率の推定値を算出し、
前記温度センサの出力上昇率が前記推定値よりも所定値以上乖離している場合に前記機械的な故障が生じていると判定する、請求項11に記載の異常検出装置。
【請求項13】
前記制御部は、
前記加速度センサの出力と前記温度センサの出力とを用いて前記車両が走行を開始した時から所定距離を走行した時までの前記温度センサの出力上昇量を算出し、
前記温度センサの出力上昇量が基準値よりも所定値以上乖離している場合に前記機械的な故障が生じていると判定する、請求項11に記載の異常検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、摩擦ブレーキ機構あるいはその周辺部品の異常を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、車両には、ディスクブレーキあるいはドラムブレーキ等の摩擦ブレーキ機構が備えられている。摩擦ブレーキ機構において、摩擦力を発生する物体(ディスクブレーキの場合にはブレーキパッドおよびロータ、ドラムブレーキの場合にはドラムおよびブレーキシュー)の温度がある一定の温度以上に到達すると、ブレーキの効きが悪くなるフェード現象が生じることが知られている。
【0003】
たとえば特開平5-42868号公報(特許文献1)には、フェード現象が発生する可能性を予測するフェード検出装置が開示されている。このフェード検出装置においては、ブレーキパッド近傍にある車輪速センサ内に温度センサが配置され、この温度センサの出力に基づいてフェード現象の予兆が検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5-42868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特開平5-42868号公報においては、フェード現象の予兆を検出するために、ブレーキパッド近傍に温度センサを新たに追加する必要がある。しかしながら、ブレーキパッド近傍は狭い空間でありスペース上の制約が多いため、温度センサを簡便には追加することができないことが懸念される。
【0006】
本開示は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、摩擦ブレーキ機構あるいはその周辺部品の熱異常を簡便な構成で検出できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様による異常検出装置は、車輪を車体に締結する締結部材に取り付けられた異常検出装置であって、締結部材の温度を検出する温度センサと、外部との間で無線通信を行なう通信部と、温度センサの出力がしきい値を超える場合に異常を示す信号を外部に無線送信するように通信部を制御する制御部とを備える。
【0008】
本開示の一態様による異常検出システムは、車輪を車体に締結する締結部材に取り付けられた検出装置と、検出装置との間で無線通信可能に構成された制御装置とを備える。検出装置は、締結部材の温度を検出する温度センサと、温度センサの出力を外部に無線送信する通信部とを備える。制御装置は、検出装置から受信した温度センサの出力がしきい値を超える場合に異常を示す信号を出力する。
【0009】
上記の異常検出装置あるいは異常検出システムによれば、車輪の締結部材に取り付けられたセンサ装置内の温度センサを利用して、締結部材の温度がしきい値を超えていることを検出することができる。これにより、締結部材の周辺部品(摩擦ブレーキ機構あるいはその周辺部品)の熱異常を、簡便な構成で検出することができる。
【0010】
本開示の一態様による異常検出システムは、4つ以上の複数の車輪を車体にそれぞれ締結する複数の締結部材にそれぞれ取り付けられた複数の検出装置と、複数の検出装置との間で無線通信可能に構成された制御装置とを備える。複数の検出装置の各々は、締結部材の温度を検出する温度センサと、温度センサの出力を外部に無線送信する通信部とを備える。複数の車輪の各々には、摩擦力を利用して車輪の回転を制動するブレーキ機構が備えられる。制御装置は、複数の検出装置にそれぞれ備えられた複数の温度センサの出力のうち、いずれか1つの温度センサの出力が他の温度センサの出力よりも所定値以上乖離している場合、当該1つの温度センサが取り付けられる車輪のブレーキ機構あるいはその周辺において機械的な故障が生じていることを示す信号を出力する。
【0011】
本開示の一態様による異常検出システムは、4つ以上の複数の車輪を車両の車体にそれぞれ締結する複数の締結部材にそれぞれ取り付けられた複数の検出装置と、複数の検出装置との間で無線通信可能に構成された制御装置とを備える。複数の検出装置の各々は、車輪の回転軸に対して直交する方向の加速度を検出する加速度センサと、締結部材の温度を検出する温度センサと、温度センサの出力を外部に無線送信する通信部とを備える。複数の車輪の各々には、摩擦力を利用して車輪の回転を制動するブレーキ機構が備えられる。制御装置は、複数の検出装置にそれぞれ備えられる複数の加速度センサの出力および複数の温度センサの出力を用いて複数の車輪のいずれか1つが機械的に故障している単一機械故障が生じているか否かを判定し、単一機械故障が生じていると判定された場合に単一機械故障を示す信号を外部に無線送信するように通信部を制御する。
【0012】
本開示の一態様による異常検出装置は、車輪を車両の車体に締結する締結部材に取り付けられた異常検出装置である。車輪には、摩擦力を利用して車輪の回転を制動するブレーキ機構が備えられる。異常検出装置は、車輪の回転軸に対して直交する方向の加速度を検出する加速度センサと、締結部材の温度を検出する温度センサと、外部との間で無線通信を行なう通信部と、制御部とを備える。制御部は、加速度センサの出力と温度センサの出力とを用いてブレーキ機構あるいはその周辺において機械的な故障が生じているか否かを判定し、機械的な故障が生じていると判定された場合に機械的な故障を示す信号を外部に無線送信するように通信部を制御する。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、摩擦ブレーキ機構あるいはその周辺部品の熱異常を簡便な構成で検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】異常検出装置が搭載される車両の構成を模式的に示す図である。
図2】車輪およびその周辺部品の構造の一例を示す部分断面図である。
図3】ナットキャップおよびその周辺部品の構造の一例を示す部分断面図である。
図4】センサ装置の構成の一例を示す図である。
図5】センサ装置の制御部の処理手順の一例を示すフローチャート(その1)である。
図6】センサ装置の制御部の処理手順の一例を示すフローチャート(その2)である。
図7】車両の制御装置の処理手順の一例を示すフローチャート(その1)である。
図8】車両の制御装置の処理手順の一例を示すフローチャート(その2)である。
図9】センサ装置の制御部の処理手順の一例を示すフローチャート(その3)である。
図10】車両の制御装置の処理手順の一例を示すフローチャート(その3)である。
図11】センサ装置の制御部の処理手順の一例を示すフローチャート(その4)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0016】
図1は、本実施の形態による異常検出装置が搭載される車両200の構成を模式的に示す図である。車両200は、通信端末201と、制御装置205と、複数の車輪210とを備える。複数の車輪210の各々は、ホイール220と、ホイール220に取り付けられるタイヤ230とを含む。
【0017】
各車輪210のホイール220は、5つのナット240により車両200の車体(より詳しくは図2に示すホイールハブ25a)に取り付けられている。なお、各車輪210のナット240の個数は5つに限定されるものではない。
【0018】
各車輪210を車体に取り付ける5つのナット240のうちの1つには、センサ装置100が配置される。なお、センサ装置100は、各車輪210を車体に取り付ける5つのナット240のうちの2つ以上に配置されていてもよい。
【0019】
図2は、車輪210およびその周辺部品の構造の一例を示す部分断面図である。ホイールハブ25aに固定されているボルト250をホイール220に貫通させた状態でボルト250にナット240を締結することによって、車輪210がホイールハブ25aに固定される。なお、ホイールハブ25aは、図示しないベアリングを介して車両200の車体に固定されている。
【0020】
ホイールハブ25aの近傍には、ブレーキ機構260が設けられている。ブレーキ機構260は、ブレーキパッド261と、ホイールハブ25aに固定されたロータ(ディスク)262とを含む。ブレーキ機構260は、ブレーキパッド261をロータ262に圧着させて発生する摩擦力によって、車輪210の回転を制動する。なお、図2には、ブレーキ機構260がディスクブレーキである例が示されているが、ブレーキ機構260は摩擦力を利用して車輪210の回転を制動するものであればよく、たとえばドラムブレーキであってもよい。
【0021】
ナット240には、ナットキャップ241が取り付けられている。センサ装置100は、ナットキャップ241に取り付けられている。なお、ロータ262、ホイールハブ25a、ボルト250、ナット240は、いずれも金属製である。
【0022】
図3は、ナットキャップ241およびその周辺部品の構造の一例を示す部分断面図である。ホイール220には、ホイール穴221が設けられている。ホイール穴221には、ホイールハブ25aに固定されているボルト250が挿入(貫通)される。ナット240は、ホイール穴221に挿入された状態のボルト250をホイール220に締結する。
【0023】
ナットキャップ241は、ナット240を覆うようにナット240に嵌合されて固定される。ナットキャップ241は、ナット240に着脱可能に構成されている。ナットキャップ241は、天井部241aと、側面部241bとを含む。側面部241bは、ボルト250のうちホイール穴221を貫通した部分を周状に取り囲むように設けられている。天井部241aは、ボルト250の先端部251と(ボルト250の挿入方向に)対向するように設けられている。天井部241aは、側面部241bと連続的に設けられている。なお、ナット240とホイール220との間には、ワッシャ243が設けられていてもよい。
【0024】
センサ装置100は、ナットキャップ241の天井部241aの内表面241cに取り付けられている。したがって、センサ装置100は、ボルト250が収容されるナットキャップ241の空間S内に配置されている。なお、センサ装置100が取り付けられる位置は、必ずしも天井部241aの内表面241cに限定されず、たとえば、ナットキャップ241の側面部241bに内蔵されていてもよい。また、センサ装置100は、ナットキャップ241ではなくナット240自体に取り付けられてもよい。
【0025】
センサ装置100は、車体に対する車輪210の取付状態を示す信号を出力するセンサ(たとえば加速度センサ)を備え、そのセンサからの信号に基づいて車輪210の脱落の予兆(ナット240の緩み)の有無を判定する。
【0026】
図4は、センサ装置100の構成の一例を示す図である。図4には、センサ装置100が車輪210の脱落の予兆(ナット240の緩み)の有無を加速度センサを用いて判定する場合の構成が例示されている。なお、センサ装置100が車輪210の脱落の予兆の有無を判定するために用いられるセンサは、必ずしも加速度センサに限定されず、たとえば磁気センサであってもよい。
【0027】
センサ装置100は、加速度センサ1と、制御部2と、通信部3と、電源部4とを備える。
【0028】
加速度センサ1は、たとえば、ホイール220の回転軸に対して直交する平面において互いに直交する2つの軸(X軸およびY軸)の各々の加速度を検出する。
【0029】
通信部3は、車両200の通信端末201(図1参照)との間で無線通信可能に構成される。通信部3は、制御部2の処理結果を示す信号等を車両200の通信端末201(図1参照)に送信する。また、通信部3は、車両200の通信端末201(図1参照)から送信された情報を受信して制御部2に送信する。
【0030】
電源部4は、センサ装置100の内部の電子部品の各々に電力を供給する。電源部4は、たとえばボタン電池などで実現することができる。
【0031】
制御部2は、図示されないCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサと、メモリと、入出力バッファとを含んで構成される。加速度センサ1からの信号(X軸方向の加速度およびY軸方向の加速度)に基づいてナット240が緩んでいるか否かを判定し、その判定結果に基づいて車輪210の脱落の予兆の有無を判定し、その判定結果を通信部3から車両200の通信端末201に送信する処理を実行する。制御部2は、加速度センサ1からの信号に基づいてナット240が緩んでいると判定される場合には車輪210の脱落の予兆が有ると判定し、その判定結果を通信部3から車両200の通信端末201に送信する。一方、加速度センサ1からの信号に基づいてナット240が緩んでいると判定されない場合には車輪210の脱落の予兆が無いと判定し、その判定結果を通信部3から車両200の通信端末201に送信する。
【0032】
さらに、センサ装置100には、温度センサ5が内蔵されている。制御部2の処理はセンサ装置100の内部の電子部品(半導体等)の特性を踏まえて行なわれるが、電子部品の特性は環境温度に応じて変化し得る。そこで、制御部2は、電子部品の特性ずれを温度センサ5の出力に応じて補正しながら処理を実行する。これにより、センサ装置100の処理精度が環境温度に応じて低下することが抑制される。
【0033】
図1に戻って、通信端末201は、各車輪210のセンサ装置100との間で無線通信可能に構成される。制御装置205は、図示されないCPU等のプロセッサと、メモリと、入出力バッファとを含んで構成される。制御装置205は、車輪210のセンサ装置100から通信端末201が受信した信号に基づいて車輪210の状態を監視し、監視結果を図示しないディスプレイ等に表示してユーザに通知する。
【0034】
<センサ装置100によるフェード現象の予兆通知>
ブレーキ機構260のブレーキパッド261およびロータ262の温度がある一定の温度以上に到達すると、ブレーキ機構260がフェードを起してブレーキの効きが悪くなる、いわゆるフェード現象が生じることが知られている。したがって、フェード現象の予兆を事前に検出してユーザに通知することが望ましい。
【0035】
しかしながら、ブレーキ機構260あるいはその近傍に熱電対やサーミスタ等の温度センサを埋設することはスペース上の制約等によって難しい場合がある。
【0036】
これに対し、ナット240およびナットキャップ241は車両の外側から見える意匠部品であり、スペース上の制約は比較的少なく、温度センサを配置し易い。特に、ナット240の緩み検出用のセンサ装置100には温度センサ5が内蔵されているところ、ナット240はブレーキ機構260から比較的近い位置にあり、かつロータ262からナット240までの部品は熱伝導性のよい金属で構成されている。そのため、ナット240にはブレーキ機構260の熱が伝達され易く、ナット240の温度にはブレーキ機構260の温度が反映され易い。
【0037】
以上の点に鑑み、本実施の形態においては、ナット240の緩み検出用のセンサ装置100に内蔵される温度センサ5を活用して、フェード現象の予兆通知を行なう。具体的には、センサ装置100の制御部2のメモリに、ブレーキ機構260においてフェード現象が生じる可能性がある温度に基づいて設定された「しきい値th1」を予め記憶しておく。そして、制御部2は、温度センサ5の出力をナット240の温度として取得し、温度センサ5の出力がしきい値th1を超える場合に、ブレーキ機構260による制動力がフェード現象によって低下する可能性があることを示す信号を外部の通信端末201に向けて無線送信するように通信部3を制御する。
【0038】
図5は、センサ装置100の制御部2の処理手順の一例を示すフローチャートである。
まず、制御部2は、温度センサ5によって検出された温度(ナット240の温度)を取得する(ステップS10)。
【0039】
次いで、制御部2は、温度センサ5によって検出された温度がしきい値th1を超えているか否かを判定する(ステップS10)。しきい値th1は、上述のように、ブレーキ機構260においてフェード現象が生じる可能性がある温度に基づいて設定される値である。しきい値th1は、予め制御部2のメモリに記憶されている。
【0040】
温度センサ5によって検出された温度がしきい値th1を超えていない場合(ステップS20においてNO)、制御部2は、フェード現象の予兆通知を行なうことなく、処理を終了する。
【0041】
温度センサ5によって検出された温度がしきい値th1を超えている場合(ステップS20においてYES)、制御部2は、フェード現象の予兆通知を行なう(ステップS30)。具体的には、制御部2は、ブレーキ機構260による制動力がフェード現象によって低下する可能性があることを示す信号を外部の通信端末201に向けて無線送信するように通信部3を制御する。
【0042】
制御装置205は、センサ装置100から通信端末201が受信した通知内容を図示しないディスプレイ等に表示してユーザに警告する。これにより、ユーザは、ブレーキ機構260においてフェード現象が生じる可能性があることを事前に把握することができる。
【0043】
以上のように、本実施の形態においては、車輪210を車体に締結するナット240を覆うナットキャップ241に取り付けられたセンサ装置100に内蔵される温度センサ5を利用して、フェード現象の予兆通知を行なう。これにより、フェード現象の予兆通知を簡便な構成で検出することができる。
【0044】
本実施の形態によるセンサ装置100は、本開示の「異常検出装置」の一例である。また、本実施の形態による温度センサ5、通信部3および制御部2は、それぞれ本開示の異常検出装置における「温度センサ」、「通信部」および「制御部」の一例である。また、本実施の形態によるナットキャップ241は、本開示の「カバー部材」の一例である。
【0045】
[変形例1]
上述の実施の形態においては、ナットキャップ241に取り付けられるセンサ装置100に内蔵される温度センサ5を活用してフェード現象の予兆通知を行なう例について説明した。しかしながら、温度センサ5を活用した異常通知は、必ずしもフェード現象の予兆通知に限定されるものではない。
【0046】
たとえば、ブレーキ機構260がブレーキフルードの油圧を利用して制動力を発生させる機構である場合には、ブレーキフルードの温度上昇によりブレーキフルード内に気泡が発生すると、ブレーキペダルを踏んでもブレーキの効きが悪くなる、いわゆるベーパーロック現象が発生することが知られている。そこで、ブレーキ機構260がブレーキフルードの油圧を利用して制動力を発生させる機構である場合には、センサ装置100に内蔵される温度センサ5を活用して、ベーパーロック現象の予兆通知を行なうようにしてもよい。具体的には、センサ装置100の制御部2のメモリに、ブレーキ機構260においてベーパーロック現象が生じる可能性がある温度に基づいて設定された「しきい値」を予め記憶しておく。そして、制御部2は、温度センサ5の出力がしきい値を超える場合に、ブレーキ機構260においてベーパーロック現象が発生する可能性があることを示す信号を外部の通信端末201に向けて無線送信するように通信部3を制御するようにしてもよい。
【0047】
上述のフェード現象およびベーパーロック現象はブレーキ機構260において生じる不具合であるが、温度センサ5を活用した異常通知は、必ずしもブレーキ機構260において生じる不具合の予兆通知であることに限定されるものではない。たとえば、温度センサ5を活用して、ブレーキ機構260を含むタイヤ230周りの不具合(たとえばタイヤ230のバーストなど)の予兆通知を行なうようにしてもよい。
【0048】
また、ナットキャップ241とナット240とが磁石(ネオジウム磁石等)による磁力によって固定されている場合には、その磁石が熱によって磁力を失う熱消磁が生じると、ナットキャップ241がナット240から脱落してしまうことが懸念される。この点に鑑み、温度センサ5を活用してナットキャップ241の脱落の予兆通知を行なうようにしてもよい。
【0049】
図6は、変形例1によるセンサ装置100の制御部2の処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、図6には、フェード現象の予兆通知に加えて、キャップ脱落の予兆通知を行なう例が示されている。具体的には、図6に示すフローチャートは、上述の図5に示すフローチャートに対して、キャップ脱落の予兆通知を行なうためのステップS40,S50が追加されたものである。図6のその他のステップ(上述の図5に示したステップと同じ番号を付しているステップ)については、既に説明したため詳細な説明はここでは繰り返さない。
【0050】
温度センサ5によって検出された温度がしきい値th1を超えていない場合(ステップS20においてNO)、制御部2は、温度センサ5によって検出された温度がしきい値th2を超えているか否かを判定する(ステップS40)。しきい値th2は、ナットキャップ241とナット240との固定に用いられる磁石において熱消磁が生じる可能性がある温度に基づいて設定される値であり、予め制御部2のメモリに記憶されている。なお、しきい値th2は、しきい値th1よりも低い値である。
【0051】
温度センサ5によって検出された温度がしきい値th2を超えていない場合(ステップS40においてNO)、制御部2は、ナットキャップ241の脱落の予兆通知を行なうことなく、処理を終了する。
【0052】
温度センサ5によって検出された温度がしきい値th2を超えている場合(ステップS40においてYES)、制御部2は、ナットキャップ241の脱落の予兆通知を行なう(ステップS50)。具体的には、制御部2は、ナットキャップ241が磁石の熱消磁によって脱落する可能性があることを示す信号を外部の通信端末201に向けて無線送信するように通信部3を制御する。
【0053】
制御装置205は、センサ装置100から通信端末201が受信した通知内容を図示しないディスプレイ等に表示してユーザに警告する。これにより、ユーザは、ナットキャップ241が脱落する可能性があることを事前に把握することができる。
【0054】
[変形例2]
上述の実施の形態においては、センサ装置100が温度センサ5の出力としきい値th1とを比較してフェード現象の予兆通知を行なう。
【0055】
しかしながら、センサ装置100が温度センサ5の出力を通信部3から無線送信し、制御装置205がセンサ装置100から受信した温度センサ5の出力としきい値th1とを比較してフェード現象の予兆通知を行なうような異常検出システムを構成するようにしてもよい。
【0056】
本変形例2によるセンサ装置100および制御装置205は、本開示の異常検出システムにおける「検出装置」および「制御装置」の一例である。
【0057】
[変形例3]
上述の実施の形態においては、フェード現象の予兆を検出するために、全ての車輪210の温度センサ5の出力に対して、同一のしきい値th1を設定している。一般に、全ての車輪210のブレーキ機構260が正常に動作している場合には、全ての車輪210のブレーキが摺動して発熱するため、全ての車輪210のブレーキ機構260の温度上昇量は概ね同様であり大きな差異はない。そのため、全ての車輪210のブレーキ機構260が正常に動作していることを前提としてフェード現象の予兆を検出するのであれば、全ての車輪210の温度センサ5の出力に対して同一のしきい値th1を設定するだけで十分である。
【0058】
これに対し、全ての車輪210のうちの1つの車輪210のブレーキ機構260あるいはその周辺だけに生じる機械的な故障(以下「単一機械故障」ともいう)が発生している場合、単一機械故障が生じているブレーキ機構260の温度が、他の正常なブレーキ機構260の温度と乖離する。たとえば、単一機械故障が、ブレーキ機構の摩擦要素(ブレーキパッド261、あるいはドラムブレーキの場合はライニング等)の引きずりあるいは焼き付け、もしくは、ブレーキ機構の周辺に配置されるハブベアリングの焼き付け等といった、常に異常な摺動(摩擦)を生じる故障である場合、その故障が生じているブレーキ機構の温度だけが、他の正常なブレーキ機構の温度に比べて極端に高くなり、ひいてはホイール自体が高温になる。また、単一機械故障が、ブレーキ機構の摩擦部材が固着等によって正常に動かずにブレーキ力が不足する故障(いわゆる片効き状態)である場合、故障が生じているブレーキ機構の温度だけが、他の正常なブレーキ機構の温度に比べて極端に低くなる。
【0059】
以上の点を踏まえ、本変形例3においては、車輪210のナットキャップ241に取り付けられるセンサ装置100に内蔵された温度センサ5を利用して、フェード現象の予兆通知に代えてあるいは加えて、単一機械故障の通知を行う。具体的には、車両200の制御装置205が、4つの車輪210にそれぞれ取り付けられる4つの温度センサ5の出力を取得し、4つの温度センサ5の出力のうち、1つの温度センサ5の出力だけが他の温度センサ5の出力よりも所定値以上乖離している場合に、出力が乖離している温度センサ5が取り付けられている車輪210のブレーキ機構260あるいはその周辺において単一機械故障が生じていると判定し、その旨の通知を行う。なお、車輪210の数は4つに限定されるものではなく、大型トラックのように4つ以上の車輪210を備えていてもよい。
【0060】
図7は、本変形例3による車両200の制御装置205の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0061】
制御装置205は、4つの車輪210にそれぞれ取り付けられる4つの温度センサ5の出力(温度)を取得する(ステップS60)。
【0062】
次いで、制御装置205は、ステップS60で取得された4つの温度センサ5の出力のうち、1つの温度センサ5の出力だけが他の温度センサ5の出力よりも所定値以上高いか否かを判定する(ステップS61)。たとえば、制御装置205は、4つの温度センサ5のうちから出力が最も高い温度センサ5を除いた3つの温度センサ5の出力の平均値を算出し、出力が最も高い温度センサ5の出力が他の温度センサ5の出力の平均値よりも所定値以上高いか否かを判定する。なお、他の判定手法として、たとえば、制御装置205は、4つの温度センサ5の出力を予め定められた基準値とそれぞれ比較し、1つの温度センサ5の出力のみが基準値よりも所定値以上高く、かつ他の温度センサ5の出力が基準値よりも低いか否かを判定するようにしてもよい。
【0063】
1つの温度センサ5の出力だけが他の温度センサ5の出力よりも所定値以上高い場合(ステップS61においてYES)、制御装置205は、単一機械故障(発熱異常)の通知を行う(ステップS62)。具体的には、制御装置205は、当該1つの温度センサ5が配置された車輪210のブレーキ機構260あるいはその周辺において単一機械故障(発熱異常)が生じていると判定し、その旨をディスプレイ等に表示してユーザに通知する。
【0064】
一方、ステップS61においてNOと判定された場合、制御装置205は、1つの温度センサ5の出力だけが他の温度センサ5の出力よりも所定値以上低いか否かを判定する(ステップS63)。たとえば、制御装置205は、4つの温度センサ5のうちから出力が最も低い温度センサ5を除いた3つの温度センサ5の出力の平均値を算出し、出力が最も低い温度センサ5の出力が他の温度センサ5の出力の平均値よりも所定値以上低いか否かを判定する。なお、他の判定手法として、たとえば、制御装置205は、4つの温度センサ5の出力を予め定められた基準値とそれぞれ比較し、1つの温度センサ5の出力のみが基準値よりも所定値以上低く、かつ他の温度センサ5の出力が基準値よりも高いか否かを判定するようにしてもよい。
【0065】
1つの温度センサ5の出力だけが他の温度センサ5の出力よりも所定値以上低い場合(ステップS63においてYES)、制御装置205は、単一機械故障(ブレーキ力不足)の通知を行う(ステップS64)。具体的には、制御装置205は、当該1つの温度センサ5が配置された車輪210のブレーキ機構260において単一機械故障(ブレーキ力不足)が生じていると判定し、その旨をディスプレイ等に表示してユーザに通知する。
【0066】
以上のように、本変形例3においては、4つの車輪210のナットキャップ241に取り付けられた4つのセンサ装置100にそれぞれ内蔵される4つの温度センサ5の出力を利用して、1つの車輪210のブレーキ機構260あるいはその周辺において単一機械故障(発熱異常あるいはブレーキ力不足)が生じている旨の通知を行う。これにより、単一機械故障の通知を簡便な構成で実現することができる。
【0067】
なお、上述の図7のステップS61,S63の判定においては温度センサ5の出力そのものを用いるが、温度センサ5の出力の上昇量あるいは上昇率を用いるようにしてもよい。たとえば、ステップS61において、4つの温度センサ5の出力の上昇量を算出し、出力の上昇量が最も高い温度センサ5を除いた3つの温度センサ5の出力の上昇量の平均値を算出し、出力の上昇量が最も高い温度センサ5の出力の上昇量が、他の3つの温度センサ5の出力の上昇量の平均値よりも所定値以上高いか否かを判定するようにしてもよい。同様に、ステップS63において、4つの温度センサ5の出力の上昇量を算出し、出力の上昇量が最も低い温度センサ5を除いた3つの温度センサ5の出力の上昇量の平均値を算出し、出力の上昇量が最も低い温度センサ5の出力の上昇量が、他の3つの温度センサ5の出力の上昇量の平均値よりも所定値以上低いか否かを判定するようにしてもよい。
【0068】
[変形例4]
車輪210のナットキャップ241に取り付けられるセンサ装置100には、上述の図4に示されるように、温度センサ5だけでなく、加速度センサ1が内蔵されている。加速度センサ1は、ホイール220の回転軸に対して直交する平面において互いに直交する2つの軸(X軸およびY軸)の各々の加速度を検出可能である。そのため、加速度センサ1の出力を利用することで、タイヤ230の回転速度を把握可能であり、さらには、タイヤ230の回転速度から車両200の走行状態(走行、停止、車速)を把握可能である。
【0069】
この点を踏まえ、本変形例4においては、センサ装置100に内蔵されている加速度センサ1の出力と温度センサ5の出力とを利用して、上述の単一機械故障の有無を判定する。
【0070】
<低速走行中の温度センサ5の出力上昇率を利用する例>
たとえば、車両200の低速走行中において、正常なブレーキ機構260では減速時のみに摩擦が生じかつ生じる摩擦熱も小さいため大きな温度上昇は生じないが、引きずり故障中のブレーキ機構260では常に摩擦が生じるため正常時よりも大きな温度上昇が生じる。また、車両200の低速走行中において、正常なブレーキ機構260では減速時に生じる摩擦熱によってある程度の温度上昇が生じるが、片効き状態であるブレーキ機構260では減速時にも摩擦熱が生じないためほぼ温度上昇しない。
【0071】
これらの点に鑑み、低速走行中の温度センサ5の出力上昇率(単位時間あたりの温度上昇量)を利用して単一機械故障を検出するようにしてもよい。
【0072】
図8は、本変形例4による車両200の制御装置205が低速走行中の温度センサ5の出力上昇率を利用して単一機械故障を検出する場合の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0073】
制御装置205は、4つの車輪210にそれぞれ取り付けられる4つのセンサ装置100から、低速走行中の4つの温度センサ5の出力上昇率(温度上昇率)をそれぞれ取得する(ステップS70)。すなわち、4つの車輪210にそれぞれ取り付けられる4つのセンサ装置100の各々は、加速度センサ1の出力に基づいて車両200が基準値未満の低車速での走行中であると判定される場合に温度センサ5の出力上昇率を算出して制御装置205に送信するように構成されている。制御装置205は、4つのセンサ装置100からそれぞれ送信されてくる、低速走行中の4つの温度センサ5の出力上昇率を受信する。
【0074】
次いで、制御装置205は、ステップS70で取得された4つの温度センサ5の出力上昇率のうち、1つの温度センサ5の出力上昇率だけが他の温度センサ5の出力上昇率よりも所定値以上大きいか否かを判定する(ステップS71)。たとえば、制御装置205は、出力上昇率が最も高い温度センサ5を除いた3つの温度センサ5の出力上昇率の平均値を算出し、出力上昇率が最も高い温度センサ5の出力上昇率が他の温度センサ5の出力上昇率の平均値よりも所定値以上大きいか否かを判定する。なお、他の判定手法として、たとえば、制御装置205は、4つの温度センサ5の出力上昇率を予め定められた基準値とそれぞれ比較し、1つの温度センサ5の出力上昇率のみが基準値よりも所定値以上高く、かつ他の温度センサ5の出力上昇率が基準値よりも低いか否かを判定するようにしてもよい。
【0075】
1つの温度センサ5の出力上昇率だけが他の温度センサ5の出力上昇率よりも所定値以上大きい場合(ステップS71においてYES)、制御装置205は、単一機械故障(発熱異常)の通知を行う(ステップS62)。
【0076】
一方、ステップS71においてNOと判定された場合、制御装置205は、1つの温度センサ5の出力上昇率だけが他の温度センサ5の出力上昇率よりも所定値以上小さいか否かを判定する(ステップS72)。たとえば、制御装置205は、出力上昇率が最も低い温度センサ5を除いた3つの温度センサ5の出力上昇率の平均値を算出し、出力上昇率が最も低い温度センサ5の出力上昇率が他の温度センサ5の出力上昇率の平均値よりも所定値以上小さいか否かを判定する。なお、他の判定手法として、たとえば、制御装置205は、4つの温度センサ5の出力上昇率を予め定められた基準値とそれぞれ比較し、1つの温度センサ5の出力上昇率のみが基準値よりも所定値以上小さく、かつ他の温度センサ5の出力上昇率が基準値よりも大きいか否かを判定するようにしてもよい。
【0077】
1つの温度センサ5の出力上昇率だけが他の温度センサ5の出力上昇率よりも所定値以上小さい場合(ステップS72においてYES)、制御装置205は、単一機械故障(ブレーキ力不足)の通知を行う(ステップS64)。
【0078】
以上のように、低速走行中の4輪の温度センサ5の出力上昇率を利用して車両200の制御装置205が単一機械故障を検出するようにしてもよい。
【0079】
<タイヤ回転速度に応じた温度センサ5の出力上昇率の推定値を利用する例>
タイヤ230の回転速度に応じて温度センサ5の出力上昇率を推定する場合には、4輪の温度センサ5の出力上昇率を利用するのではなく、1輪の温度センサ5の出力上昇率を利用して単一機械故障を検出することも可能である。この場合、車両200の制御装置205ではなく、4輪にそれぞれ取り付けられた4つのセンサ装置100の各々が単一機械故障を検出可能である。
【0080】
図9は、4輪にそれぞれ取り付けられた4つのセンサ装置100の制御部2の各々が温度センサ5の出力上昇率の推定値を利用して単一機械故障を検出する場合の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0081】
各センサ装置100の制御部2は、所定期間中の加速度センサ5の出力および温度センサ5の出力を取得する(ステップS80)。
【0082】
次いで、制御部2は、ステップS80で取得された加速度センサ5の出力からタイヤ230の回転速度を算出する(ステップS81)。
【0083】
次いで、制御部2は、ステップS81で算出されたタイヤ230の回転速度に応じて基準上昇率を算出する(ステップS82)。基準上昇率は、単一機械故障が生じていない場合の温度センサ5の出力上昇率の推定値である。タイヤ230の回転速度と基準上昇率との対応関係は実験等によって求められて制御部2のメモリに予め記憶されている。制御部2は、メモリに記憶された当該対応関係を参照して、ステップS81で算出されたタイヤ230の回転速度に対応する基準上昇率を算出する。
【0084】
次いで、制御部2は、ステップS80で取得された温度センサ5の出力から温度センサ5の出力上昇率を算出する(ステップS83)。
【0085】
次いで、制御部2は、ステップS83で算出された温度センサ5の出力上昇率が、ステップS82で算出された基準上昇率よりも所定値以上大きいか否かを判定する(ステップS84)。
【0086】
ステップS84でYESと判定された場合、制御部2は、単一機械故障(発熱異常)の通知を行う(ステップS85)。具体的には、制御部2は、当該車輪210のブレーキ機構260あるいはその周辺において単一機械故障(発熱異常)が生じていると判定し、その旨を示す信号を外部の通信端末201に向けて無線送信するように通信部3を制御する。
【0087】
一方、ステップS84でNOと判定された場合、制御部2は、ステップS83で算出された温度センサ5の出力上昇率が、ステップS82で算出された基準上昇率よりも所定値以上小さいか否かを判定する(ステップS86)。
【0088】
ステップS86でYESと判定された場合、制御部2は、単一機械故障(ブレーキ力不足)の通知を行う(ステップS87)。具体的には、制御部2は、自らが配置される車輪210のブレーキ機構260あるいはその周辺において単一機械故障(ブレーキ力不足)が生じていると判定し、その旨を示す信号を外部の通信端末201に向けて無線送信するように通信部3を制御する。
【0089】
以上のように、4輪にそれぞれ取り付けられた4つのセンサ装置100の各々が、タイヤ230の回転速度に応じた温度センサ5の出力上昇率の推定値(基準上昇率)を利用して単一機械故障を検出するようにしてもよい。
【0090】
<車両走行開始時からの温度センサ5の出力上昇量を利用する例>
たとえば停車中の車両200の右側にのみ直射日光が当たっているような場合、その後に車両200が走行を開示する時点で左右のタイヤ230でそもそも温度差が生じる。この点を考慮して、車両走行開始時の温度(=停車時の温度)を起点とし、起点からの温度上昇量に基づいて単一機械故障を検出するようにしてもよい。このようにすることで、日光の影響で各タイヤ230に温度差が生じている場合であっても、その温度差の影響を排除して単一機械故障を検出することができる。そのため、単に温度の絶対値を利用する場合に比べて、単一機械故障を適切に検出することができる。
【0091】
図10は、車両200の制御装置205が車両走行開始時からの温度センサ5の出力上昇量を利用して単一機械故障を検出する場合の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0092】
制御装置205は、4つの車輪210にそれぞれ取り付けられる4つのセンサ装置100から、走行開始時の4つの温度センサ5の出力をそれぞれ取得する(ステップS90)。すなわち、4つの車輪210にそれぞれ取り付けられる4つのセンサ装置100の各々は、加速度センサ1の出力に基づいて車両200が走行を開始したと判定される場合に温度センサ5の出力を制御装置205に送信するように構成されている。制御装置205は、4つのセンサ装置100からそれぞれ送信されてくる、走行開始時の4つの温度センサ5の出力を受信する。
【0093】
次いで、制御装置205は、4つの車輪210にそれぞれ取り付けられる4つのセンサ装置100から、所定距離走行時の4つの温度センサ5の出力をそれぞれ取得する(ステップS91)。すなわち、4つの車輪210にそれぞれ取り付けられる4つのセンサ装置100の各々は、加速度センサ1の出力に基づいて車両200が走行を開始してから所定距離を走行したと判定される場合に温度センサ5の出力を制御装置205に送信するように構成されている。制御装置205は、4つのセンサ装置100からそれぞれ送信されてくる、所定距離走行時の4つの温度センサ5の出力を受信する。
【0094】
次いで、制御装置205は、ステップS90,S91で取得された情報に基づいて、走行開始時から所定距離走行時までの4つの温度センサ5の出力上昇量をそれぞれ算出する(ステップS92)。
【0095】
次いで、制御装置205は、ステップS92で算出された4つの温度センサ5の出力上昇量のうち、1つの温度センサ5の出力上昇量だけが他の温度センサ5の出力上昇量よりも所定値以上大きいか否かを判定する(ステップS93)。
【0096】
ステップS93でYESと判定された場合、制御装置205は、単一機械故障(発熱異常)の通知を行う(ステップS62)。
【0097】
一方、ステップS93でNOと判定された場合、制御装置205は、ステップS92で算出された4つの温度センサ5の出力上昇量のうち、1つの温度センサ5の出力上昇量だけが他の温度センサ5の出力上昇量よりも所定値以上小さいか否かを判定する(ステップS94)。
【0098】
ステップS94でYESと判定された場合、制御装置205は、単一機械故障(ブレーキ力不足)の通知を行う(ステップS64)。
【0099】
以上のように、走行開始時からの4輪の温度センサ5の出力上昇量を利用して車両200の制御装置205が単一機械故障を検出するようにしてもよい。
【0100】
なお、4輪の温度センサ5の出力上昇量を利用するのではなく、1輪の温度センサ5の出力上昇量に基づいて単一機械故障を検出することも可能である。この場合、車両200の制御装置205ではなく、4輪にそれぞれ取り付けられた4つのセンサ装置100の各々が単一機械故障を検出可能である。
【0101】
図11は、4輪にそれぞれ取り付けられた4つのセンサ装置100の制御部2の各々が走行開始時からの温度センサ5の出力上昇量を利用して単一機械故障を検出する場合の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0102】
各センサ装置100の制御部2は、走行開始時の温度センサ5の出力を取得する(ステップS100)。すなわち、制御部2は、加速度センサ1の出力に基づいて車両200が走行を開始したと判定される場合に温度センサ5の出力を取得する。
【0103】
次いで、制御部2は、所定距離走行時の温度センサ5の出力を取得する(ステップS101)。すなわち、制御部2は、加速度センサ1の出力に基づいて車両200が走行を開始してから所定距離を走行したと判定される場合に温度センサ5の出力を取得する。
【0104】
次いで、制御装置205は、ステップS100,S101で取得された情報に基づいて、走行開始時から所定距離走行時までの温度センサ5の出力上昇量を算出する(ステップS102)。
【0105】
次いで、制御部2は、ステップS102で算出された温度センサ5の出力上昇量が予め定められた基準値よりも所定値以上大きいか否かを判定する(ステップS103)。ステップS103でYESと判定された場合、制御部2は、単一機械故障(発熱異常)の通知を行う(ステップS85)。
【0106】
一方、ステップS103でNOと判定された場合、制御部2は、ステップS102で算出された温度センサ5の出力上昇量が予め定められた基準値よりも所定値以上小さいか否かを判定する(ステップS104)。ステップS104でYESと判定された場合、制御部2は、単一機械故障(ブレーキ力不足)の通知を行う(ステップS87)。
【0107】
以上のように、4輪にそれぞれ取り付けられた4つのセンサ装置100の各々が、走行開始時からの温度センサ5の出力上昇量を利用して単一機械故障を検出するようにしてもよい。
【0108】
[変形例5]
たとえば荷物を載せてない牽引車のように、4つよりも多い数の車輪を備える大型の車両においては、全ての車輪を接地させるのではなく、一部の車輪を浮かせて接地させずに走行することによって、タイヤの摩耗を低減する場合がある。この場合、接地していない当該一部の車輪のブレーキはほとんど摺動しないため、発熱しない。
【0109】
この点を考慮し、上述の実施の形態およびその変形例で説明した制御を行う場合において、予め浮かせて接地していないタイヤの温度情報を除外しておくようにしてもよい。
【0110】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0111】
以上に説明した例示的な実施の形態およびその変形例は、以下の態様の具体例である。
(第1項) 本開示による異常検出装置は、車輪を車体に締結する締結部材に取り付けられた異常検出装置であって、締結部材の温度を検出する温度センサと、外部との間で無線通信を行なう通信部と、温度センサの出力がしきい値を超える場合に異常を示す信号を外部に無線送信するように通信部を制御する制御部とを備える。
【0112】
上記の態様によれば、車輪を車体に締結する締結部材に取り付けられた温度センサを利用して、締結部材の温度がしきい値を超えていることを検出することができる。これにより、締結部材の周辺部品(摩擦ブレーキ機構あるいはその周辺部品)の熱異常を、簡便な構成で検出することができる。
【0113】
(第2項) 第1項に記載の異常検出装置において、車体には、摩擦力を利用して車輪の回転を制動するブレーキ機構が備えられる。しきい値は、ブレーキ機構において不具合が生じる可能性がある温度に基づいて設定される。異常を示す信号は、ブレーキ機構において不具合が生じる可能性があることを示す信号である。
【0114】
上記の態様によれば、ブレーキ機構において不具合(フェード現象、ベーパーロック現象など)が生じる可能性があることを、簡便な構成で検出することができる。
【0115】
(第3項) 第1項に記載の異常検出装置において、異常検出装置は、締結部材に嵌合されるカバー部材に取り付けられる。
【0116】
上記の態様によれば、締結部材に嵌合されるカバー部材に取り付けられた温度センサを利用して、締結部材の周辺部品の熱異常を検出することができる。
【0117】
(第4項) 第3項に記載の異常検出装置において、カバー部材および締結部材の少なくとも一方には、カバー部材を締結部材に固定するための磁力を発生する磁石が設けられる。しきい値は、磁石において熱消磁が生じる可能性がある温度に基づいて設定される。異常を示す信号は、カバー部材が磁石の熱消磁によって脱落する可能性があることを示す信号である。
【0118】
上記の態様によれば、カバー部材が磁石の熱消磁によって脱落する可能性があることを、簡便な構成で検出することができる。
【0119】
(第5項) 第1項に記載の異常検出装置において、異常検出装置は、締結部材に加わる加速度を検出する加速度センサをさらに備える。制御部は、加速度センサの出力に基づいて締結部材の緩みの有無を検出し、検出結果を示す信号を外部に無線送信するように通信部を制御する。
【0120】
上記の態様によれば、締結部材の緩みの有無を検出する既存の装置を利用して、締結部材の周辺部品の熱異常を検出することができる。
【0121】
(第6項) 本開示による異常検出システムは、車輪を車体に締結する締結部材に取り付けられた検出装置と、検出装置との間で無線通信可能に構成された制御装置とを備える。検出装置は、締結部材の温度を検出する温度センサと、温度センサの出力を外部に無線送信する通信部とを備える。制御装置は、検出部から受信した温度センサの出力がしきい値を超える場合に異常を示す信号を出力する。
【0122】
上記の態様によれば、車輪を車体に締結する締結部材に取り付けられた温度センサを利用して、締結部材の温度がしきい値を超えていることを検出することができる。これにより、締結部材の周辺部品(摩擦ブレーキ機構あるいはその周辺部品)の熱異常を、簡便な構成で検出することができる。
【0123】
(第7項) 本開示による異常検出システムは、4つ以上の複数の車輪を車体にそれぞれ締結する複数の締結部材にそれぞれ取り付けられた複数の検出装置と、複数の検出装置との間で無線通信可能に構成された制御装置とを備える。複数の検出装置の各々は、締結部材の温度を検出する温度センサと、温度センサの出力を外部に無線送信する通信部とを備える。複数の車輪の各々には、摩擦力を利用して車輪の回転を制動するブレーキ機構が備えられる。制御装置は、複数の検出装置にそれぞれ備えられた複数の温度センサの出力のうち、いずれか1つの温度センサの出力が他の温度センサの出力よりも所定値以上乖離している場合、当該1つの温度センサが取り付けられる車輪のブレーキ機構あるいはその周辺において機械的な故障が生じていることを示す信号を出力する。
【0124】
(第8項) 本開示による異常検出システムは、4つ以上の複数の車輪を車両の車体にそれぞれ締結する複数の締結部材にそれぞれ取り付けられた複数の検出装置と、複数の検出装置との間で無線通信可能に構成された制御装置とを備える。複数の検出装置の各々は、車輪の回転軸に対して直交する方向の加速度を検出する加速度センサと、締結部材の温度を検出する温度センサと、温度センサの出力を外部に無線送信する通信部とを備える。複数の車輪の各々には、摩擦力を利用して車輪の回転を制動するブレーキ機構が備えられる。制御装置は、複数の検出装置にそれぞれ備えられる複数の加速度センサの出力および複数の温度センサの出力を用いて複数の車輪のいずれか1つが機械的に故障している単一機械故障が生じているか否かを判定し、単一機械故障が生じていると判定された場合に単一機械故障を示す信号を外部に無線送信するように通信部を制御する。
【0125】
(第9項) 第8項に記載の異常検出システムにおいて、複数の検出装置の各々は、加速度センサの出力に基づいて車両が基準値未満の低車速での走行中であると判定される場合に温度センサの出力上昇率を制御装置に送信する。制御装置は、複数の検出装置からそれぞれ受信した複数の温度センサの出力上昇率のうち、いずれか1つの温度センサの出力上昇率が他の温度センサの出力上昇率よりも所定値以上乖離している場合、当該1つの温度センサが取り付けられる車輪のブレーキ機構あるいはその周辺において単一機械故障が生じていると判定する。
【0126】
(第10項) 第8項に記載の異常検出システムにおいて、複数の検出装置の各々は、加速度センサの出力に基づいて車両が走行を開示したと判定される場合に温度センサの出力を制御装置に送信するとともに、加速度センサの出力に基づいて車両が所定距離を走行したと判定される場合に温度センサの出力を制御装置に送信する。制御装置は、複数の検出装置から受信した情報に基づいて、車両が走行を開始した時から所定距離を走行した時までの複数の温度センサの出力上昇を算出し、複数の温度センサの出力上昇のうち、いずれか1つの温度センサの出力上昇昇が他の温度センサの出力上昇昇よりも所定値以上乖離している場合、当該1つの温度センサが取り付けられる車輪のブレーキ機構あるいはその周辺において単一機械故障が生じていると判定する。
【0127】
(第11項) 本開示による異常検出装置は、車輪を車両の車体に締結する締結部材に取り付けられた異常検出装置である。車輪には、摩擦力を利用して車輪の回転を制動するブレーキ機構が備えられる。異常検出装置は、車輪の回転軸に対して直交する方向の加速度を検出する加速度センサと、締結部材の温度を検出する温度センサと、外部との間で無線通信を行なう通信部と、制御部とを備える。制御部は、加速度センサの出力と温度センサの出力とを用いてブレーキ機構あるいはその周辺において機械的な故障が生じているか否かを判定し、機械的な故障が生じていると判定された場合に機械的な故障を示す信号を外部に無線送信するように通信部を制御する。
【0128】
(第12項) 第11項に記載の異常検出装置において、制御部は、加速度センサの出力に基づいて車輪の回転速度を算出し、輪の回転速度に基づいてブレーキ機構が正常である時の温度センサの出力上昇率の推定値を算出し、温度センサの出力上昇率が推定値よりも所定値以上乖離している場合に機械的な故障が生じていると判定する。
【0129】
(第13項) 第11項に記載の異常検出装置において、制御部は、加速度センサの出力と温度センサの出力とを用いて車両が走行を開始した時から所定距離を走行した時までの温度センサの出力上昇量を算出し、温度センサの出力上昇量が基準値よりも所定値以上乖離している場合に機械的な故障が生じていると判定する。
【符号の説明】
【0130】
1 加速度センサ、2 制御部、3 通信部、4 電源部、5 温度センサ、25a ホイールハブ、100 センサ装置、200 車両、201 通信端末、205 制御装置、210 車輪、220 ホイール、221 ホイール穴、230 タイヤ、240 ナット、241 ナットキャップ、241a 天井部、241b 側面部、241c 内表面、243 ワッシャ、250 ボルト、251 先端部、260 ブレーキ機構、261 ブレーキパッド、262 ロータ。
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