IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツングの特許一覧

特開2024-110399電気自転車の駆動システムを作動させる方法
<>
  • 特開-電気自転車の駆動システムを作動させる方法 図1
  • 特開-電気自転車の駆動システムを作動させる方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110399
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】電気自転車の駆動システムを作動させる方法
(51)【国際特許分類】
   B62M 25/08 20060101AFI20240807BHJP
   B62M 6/45 20100101ALI20240807BHJP
   B62J 45/00 20200101ALI20240807BHJP
【FI】
B62M25/08
B62M6/45
B62J45/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024010014
(22)【出願日】2024-01-26
(31)【優先権主張番号】10 2023 200 855.6
(32)【優先日】2023-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】フライシャー,クラウス
(72)【発明者】
【氏名】バウムゲルトナー,ダニエル
(57)【要約】      (修正有)
【課題】いつでも且つ低摩耗で変速を行うことができる電気自転車の駆動システムを作動させる方法に関する。
【解決手段】本発明は、電気自転車の駆動システムを作動させる方法に関し、該方法は、前記電気自転車のモータを用いて発生させたモータトルクを所定の第1の時間の間上昇させるステップと、前記第1の時間の直後に前記モータトルクを所定の第2の時間の間減少させるステップと、前記第2の時間の間に前記駆動システムの変速システムの変速比を変化させるステップとを含んでいる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気自転車(100)の駆動システム(10)を作動させる方法において、
-前記電気自転車(100)のモータ(102)を用いて発生させたモータトルク(5)を所定の第1の時間(1)の間上昇させるステップと、
-前記第1の時間(1)の直後に前記モータトルク(5)を所定の第2の時間(2)の間減少させるステップと、
-前記第2の時間(2)の間に前記駆動システム(10)の変速システム(12)の変速比を変化させるステップと、
を含んでいる方法。
【請求項2】
前記モータトルク(5)を第1のモータトルク(50)からブースト・モータトルク(51)へ上昇させるように前記モータトルク(5)の上昇を行い、前記ブースト・モータトルク(50)が前記第1のモータトルク(50)の少なくとも120%、有利には少なくとも140%に相当している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記モータトルク(5)を変速・モータトルク(52)へ減少させるように前記モータトルク(5)の減少を行い、前記変速・モータトルク(52)が前記第1の時間(1)の前の前記第1のモータトルク(50)よりも小さい、請求項1~2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記変速・モータトルク(52)がゼロに等しく、または、前記変速・モータトルク(52)が前記第1のモータトルク(50)または最大モータトルク(55)の最大で20%、有利には最大で10%に相当する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の時間(2)の後に前記モータトルク(5)を2回目に上昇させるステップをさらに含んでいる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の時間(1)の前の前記第1のモータトルク(50)よりも大きな値への前記モータトルク(5)の2回目の上昇を、所定の第3の時間(3)の間行う、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の時間(1)を、検出した運転パラメータおよび/または周囲パラメータに依存して調整する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の時間(1)の間の前記モータトルク(5)の上昇を、運転パラメータおよび/または周囲パラメータに依存して調整する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記運転パラメータおよび/または周囲パラメータが、現在の勾配、現在の加速度、現在または間近のドライバートルク、現在のペダル踏み回数、車道特性、車道の推移、ナビゲーションデータを含んでいる、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
さらに、前記モータトルク(5)の上昇が間近に迫っていることに関する聴覚的および/または視覚的警告を出力するステップを含んでいる、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記変速システム(12)の前記変速比の変更を、制御可能に操作可能なアクチュエータ(11)を用いて実施する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記アクチュエータ(11)を制御ユニット(105)により自動的に操作する、および/または、前記アクチュエータ(11)を手動で発生可能な変速信号に応答して操作する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
さらに、
-特に前記第2の時間(2)の間に、前記変速システム(12)の複数の変速継続時間を記録して比較するステップと、
-前記複数の変速継続時間の比較に基づいて、前記変速システム(12)の機能性を、特に摩耗および/または変速設定を検出するステップと、
を含んでいる、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
-変速システム(12)を備えた駆動システム(10)と、
-モータ(102)と、
-前記変速システム(10)を操作するために設置されている制御ユニット(105)と、
を含み、
-前記制御ユニット(105)が、さらに、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法を実施するために設置されている、
電気自転車。
【請求項15】
前記モータ(102)が、通常走行作動で所定の最大モータトルク(55)を発生させるために設置され、前記第1の時間(1)の間に上昇させた前記ブースト・モータトルク(51)が、前記最大モータトルク(55)の少なくとも120%、有利には最大で150%に相当している、請求項14に記載の電気自転車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自転車の駆動システムを作動させる方法および電気自転車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ディレイラを有する自転車のための変速システムを備えた駆動システムが知られている。この場合、駆動システム内での変速比の変更は、自転車のチェーンを異なる大きさのピニオンの間で移動させることによって行われる。その際、負荷の下で変速は構造上困難であり、或いは、まったく不可能であり、或いは、かなりの摩耗を生じさせるのが通例である。自動変速も知られており、自動変速では、たとえばドライバートルクが適切である場合に、または、クランクが特定の位置にある場合に変速過程が開始される。
【発明の概要】
【0003】
これに対し、請求項1の構成要件を備えた本発明による方法は、いつでも且つ低摩耗で変速を行うことができるという利点を提供する。その際、特に、変速過程の間に速度ロスが発生しないように、または、わずかしか発生しないように、電気自転車での変速が可能になる。これは、本発明によれば、電気自転車の駆動システムを作動させる方法において、
-前記電気自転車のモータを用いて発生させたモータトルクを所定の第1の時間の継続の間上昇させるステップと、
-前記第1の時間の直後に前記モータトルクを所定の第2の時間の継続の間減少させるステップと、
-前記第2の時間の間に前記駆動システムの変速システムの変速比を変化させるステップと、
を含んでいる方法によって達成される。
【0004】
その際、特に、モータトルクの上昇とモータトルクの減少とを合目的的にアクティブに制御して行う。
【0005】
変速比の変更は、特に変速過程、または、「変速する」と見なしてよい。
【0006】
換言すれば、本方法においては、モータによって発生させたモータトルクをアクティブに減少させている間に変速を実施する。その際この減少は、事前の、特に短時間の、モータトルクのアクティブな上昇の直後に行われる。モータトルクを上昇させることにより、電気自転車のドライバーが短時間チェーンの張力を失い、これによって変速システムに作用するドライバートルクを減少させることが達成される。直後のモータトルクの減少により、第2の時間の間、モータトルクとドライバートルクとの和である全トルクが減少しており、これによって変速比の変化を、すなわち変速システムに作用する全トルクが特に低いときに変速を実行に移すことができることが達成される。これによって最適な、特に迅速な、摩耗のない変速過程を可能にすることができる。加えて、モータトルクの事前の上昇により、変速過程全体による速度ロスが発生しない、または、わずかしか発生しないことになる。
【0007】
従属項は、本発明の有利な更なる構成を内容としている。
【0008】
有利には、モータトルクを第1のモータトルクからブースト・モータトルクへ上昇させるようにモータトルクの上昇を行う。その際、ブースト・モータトルクは第1のモータトルクの少なくとも120%、有利には少なくとも140%、特に有利には最大で500%に相当している。その際、特に、第1のモータトルクは、電気自転車の通常走行作動においてドライバーのペダル踏力またはドライバートルクに基づいて発生させるモータトルクに相当している。これによって、モータにより提供されるブースト・モータトルクが変速過程の直前に著しく上昇することが保証され、その結果ドライバーが短時間でチェーンの張力を失い、よって第2の時間の間全トルクが可能な限り低く、または、ゼロに等しいという効果が、特に確実に現れる。
【0009】
特に有利には、モータトルクを変速・モータトルクへ減少させるようにモータトルクの減少を行う。その際、変速・モータトルクは第1の時間の前に発生させる第1のモータトルクよりも小さい。すなわち、第2の時間の間に発生させる変速・モータトルクが第1の時間の上昇前に存在しているモータトルクよりも小さくなる程度に、第2の時間の間にモータトルクをアクティブに制御して減少させる。これにより、変速過程の間に低いモータトルクおよび特に低い全トルクも変速システムに存在することが特に確実に保証される。
【0010】
特に、変速・モータトルクはゼロに等しい。択一的に、有利には、変速・モータトルクは第1のモータトルクまたは択一的に最大モータトルクの最大で20%、好ましくは最大で10%である。最大モータトルクとは、特に正常作動モードにおいて最大に提供可能なモータのモータトルクと見なされる。すなわち、変速・モータトルクを特に低い値へ減少させることで、特に確実に、摩耗を少なくして、時間的に効率的に変速過程を可能にすることができる。
【0011】
さらに有利には、本方法は、特に第2の時間の直後に、モータトルクを2回目に上昇させるステップをさらに含んでいる。すなわち、第2の時間満了後、モータトルクを変速・モータトルクから再び上昇させる。これによって、変速過程の直後に自転車のドライバーが再びチェーンに張力をもたらすことができ、加えてモータが再び駆動することが可能になり、その結果電気自転車の推進の可能な限り小さな、または、短時間の中断が保証される。
【0012】
有利には、モータトルクの2回目の上昇を、所定の第3の時間の間に行う。その際、モータトルクは、第1の時間の前の第1のモータトルクよりも大きな値へ上昇させる。したがって、特に、変速過程後に2回目のブーストを行う。好ましくは、第3の時間でモータトルクをブースト・モータトルクへ上昇させる。これによって、自転車の推進を特に確実に、著しい中断なく可能にさせることができる。
【0013】
好ましくは、第1の時間を、検出した運転パラメータおよび/または周囲パラメータに依存して調整する。すなわち、現在の運転パラメータおよび/または周囲パラメータに応じて第1の時間の延長または短縮を順応的に行うことができる。これによって、ブーストの作用を特に効果的に達成することができる。
【0014】
有利には、第1の時間の間のモータトルクの上昇を、算出された運転パラメータおよび/または周囲パラメータに依存して調整する。すなわち、現在の運転パラメータおよび/または周囲パラメータに応じて、ブースト・モータトルクの上昇または減少を、或いは、モータトルクの上昇の勾配の調整を、第1の時間内で順応的に行うことができる。これによって、ブーストの効果を状況に基づいて特に確実に達成できる。
【0015】
特に有利には、運転パラメータおよび/または周囲パラメータは、次のパラメータ、すなわち、現在の勾配、現在の加速度、現在または間近のドライバートルク、現在のペダル踏み回数、車道特性、車道の推移、ナビゲーションデータのうちの少なくとも1つを含んでいる。特に、パラメータはセンサを用いて検知できる。たとえば、間近のドライバートルクの査定も、たとえば現在のドライバートルクの補間によって、たとえば、制御ユニットを用いて行うことができる。車道特性として、電気自転車が現在街路上を走行しているか、或いは、オフロードを走行しているかをたとえば検出してよい。車道の推移として、特にカーブを考慮してよい。これにより、ブーストの作用を特に効果的に且つ確実に現在の走行作動に依存して構成できる。
【0016】
さらに有利には、本方法は、モータトルクの上昇が間近に迫っていることに関する聴覚的および/または視覚的警告を、好ましくは電気自転車の出力装置を用いて出力するステップをさらに含んでいる。すなわち、ブーストを投入する変速過程が間もなく実施されるという警告を電気自転車のドライバーに行うことができる。これによって、ドライバーにとって高度の運転快適性を可能にすることができる。
【0017】
有利には、本方法は、もっぱらペダル操作の間だけ、電気自転車のドライバーによって実施される。すなわち、ドライバーが筋力によりドライバートルクを発生させている場合だけ、ブーストによる変速と、ブーストに続くモータトルクの減少とを実施する。
【0018】
特に有利には、変速システムの変速比の変更を、制御可能に操作可能なアクチュエータを用いて実施する。特に、アクチュエータとして電動機を考慮してよい。したがって、好ましくは電子回路である。これにより、特に高度のユーザー快適性と、本方法の簡単でフレキシブルな実施とを可能にすることができる。特に、変速と、モータトルクの上昇または減少とを、互いに精確に同調させることができる。
【0019】
さらに有利には、アクチュエータを制御ユニットにより自動的に操作する。したがって、特に変速を完全自動で行い、特にもっぱら制御ユニットによって開始する。択一的にまたは追加的に、アクチュエータを手動で発生可能な変速信号に応答して操作する。変速信号は、たとえば入力装置を用いて、たとえばボタンを押すことによって、電気自転車のドライバーにより発生させてよい。変速信号を用いると、たとえばアクチュエータを直接的に操作することができ、或いは択一的に、制御ユニットを介して間接的に操作することができる。たとえば、変速信号として、シフトアップまたはシフトダウンするための命令を発してよい。これによって、電気自転車のドライバーに対し、特に簡単で快適な操作と、快適な運転作動とを提供できる。
【0020】
好ましくは、本方法は、さらに、特に第2の時間の間に、変速システムの複数の変速継続時間を記録して比較するステップと、複数の変速継続時間の比較に基づいて、変速システムの機能性を検出するステップとを含んでいる。特に、機能性として、摩耗および/または変速設定を検出またはチェックする。好ましくは、変速継続時間として、変速比をチェンジするために必要な継続時間が考慮される。その際、リヤディレーラの摩耗が増大することにより、或いは、たとえばリヤディレーラの間違った設定または好ましくない設定により、この変速継続時間は寿命とともに増大する。その際、記録に基づいて、摩耗の増大またはたとえば機能不良があることを検出できる。これに基づいて、たとえば警告の必要性を検出できる。
【0021】
さらに、本発明は電気自転車にも関し、すなわち変速システムを備えた駆動システムと、モータと、制御ユニットとを含む電気自転車にも関する。制御ユニットは、変速システムを操作するために設置されている。さらに、制御ユニットは前述の方法を実施するために設置されている。
【0022】
有利には、モータは、通常走行作動で所定の最大モータトルクを発生させるために設置されている。最大モータトルクとして、特に、ドライバーのペダル踏力の補助のために最大限使用可能なモータトルクが考慮される。その際、第1の時間の間に発生させたブースト・モータトルクの上昇は、最大モータトルクの少なくとも120%、有利には最大で150%に相当している。換言すれば、ブースト・モータトルクに対し常にリザーブが提供されているようにモータが形成されており、その結果最大補助での走行作動の間も、ブースト・モータトルクへのモータトルクの上昇がまだ可能である。これによって、最適化された変速をいつでも、しかも特に確実に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の有利な実施例による方法が実施される変速システムを備えた電気自転車の簡略概要図である。
図2】前記有利な実施例の方法を実施する際のモータトルクの推移を示す簡略概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、図との関連でいくつかの実施例をもとに本発明を説明する。図では、機能的に同じ構成部材はそれぞれ同じ参照符号で表している。
【0025】
図1は、駆動システム10を備えた電気自転車100の簡略概要図である。駆動システム10は、ペダル軸受の領域に駆動ユニットを含み、駆動ユニットは、特に電動機であるモータ102を含んでいる。モータ102は、電気自転車100の電気エネルギー蓄積器109により電気エネルギーの供給を受けることができる。
【0026】
モータ102を用いて発生させたモータトルクにより、筋力によって発生させた電気自転車100のドライバーのペダル踏力をモータで補助することができる。
【0027】
駆動システムは、さらに、変速システム12を含んでいる。変速システム12は、図1では極めて簡略に概略的に図示されているにすぎない。特に、変速システム12は、、電気自転車100の駆動システム10内での変速比を変えることができるようにするための少なくとも1つの変速機を含んでいる。たとえば、ディレイラとしての変速機は、後輪ハブおよび/またはチェーンリングに設けられていてよく、この場合特に大きさが異なるピニオンを用いて種々の変速比を提供することができる。択一的に、たとえば伝動装置またはハブギヤのような他の種類の変速機が設けられていてよいのも有利である。
【0028】
その際、変速システム12は、変速操作するために、すなわちたとえば変速装置の動きによってギヤチェンジを開始させるために設置されているアクチュエータ11を含んでいる。アクチュエータ11は特に電動機を含んでおり、その結果変速システム10は有利には電気変速機である。
【0029】
電気自転車100は、さらに、アクチュエータ11とモータ102とを操作するために設置されている制御ユニット105を含んでいる。その際、制御ユニット105は有利な本実施例による方法を実施するためにさらに形成されている。
【0030】
方法の過程を以下で詳細に説明し、その際図2を参照する。図2は、方法を実施している間に発生するトルクの推移を示すグラフ90である。その際、時間92に対するトルク91が図示されている。参照符号91aによって、値ゼロを持つトルクが表されている。
【0031】
図2に詳細に図示されているのは1つの変速過程であり、すなわち変速システム12の変速比の1回の変化である。
【0032】
なお、図2には、モータ102によって発生されるモータトルク5の推移と、ドライバーがペダルを踏む際に筋力により発生するドライバートルク6の推移との一例が図示されている。その際、クランク軸に発生するドライバートルク6は、図2で認められるように、実質的に周期的に変動し、たとえば正弦状に変動している。
【0033】
モータ102によって発生するモータトルク5は、ドライバートルク6に依存して、たとえばドライバートルク6の平均値に依存して発生させる。
【0034】
時点92aで変速信号を発生させる。変速信号は、制御ユニット105を用いて自動的に発生させるか、或いは択一的に、電気自転車100のドライバーによって手動で発生させた変速要望に応答して発生させることができる。当該変速要望は、たとえば入力ユニットを使って発生させることができる。制御ユニット105による自動変速は、たとえば、特にペダル踏み回数、速度などのような運転パラメータを監視することによって行うことができる。
【0035】
本方法の場合、変速信号の発生直後に、所定の第1の時間1の間モータトルク5を上昇させる。その際、第1の時間1の間、モータトルク5を、変速信号の前にある第1のモータトルク50から、ブースト・モータトルク51へ直線的に上昇させる。ブースト・モータトルク51は、好ましくは第1のモータトルク50の少なくとも120%である。
【0036】
その際、第1の時間1はたとえば所定の継続時間を有していてよく、たとえば少なくとも0.2秒、好ましくは最大1秒、有利には0.5秒の所定の継続時間を有していてよい。
【0037】
第1の時間1が順応的に調整可能に構成されていれば、特に有利である。その際、特に現時点での運転パラメータおよび/または周囲パラメータへの調整を行うことができ、特に現在の勾配、現在の加速度、現在または間近のドライバートルク、現在のペダル踏み回数、車道特性、車道の推移、および/または、ナビゲーションデータのような運転パラメータおよび/または周囲パラメータへの調整を行うことができる。
【0038】
第1の時間1の直後に、モータトルク5を所定の第2の時間2の間減少させる。その際、モータトルク5を所定の変速・モータトルク52へ減少させ、変速・モータトルクは、図示の実施例では、値ゼロを有する。その際、有利には、モータトルク5を第2の時間2の部分時間21内で値ゼロへ直線的に減少させる。第2の時間2の残りの期間の間、モータトルク5を有利には値ゼロに保持する。
【0039】
第2の時間2および/または部分時間21も同様にたとえば所定の継続時間を有していてよく、たとえば少なくとも0.2秒、好ましくは最大2秒の継続時間を有していてよい。たとえば、第2の時間2および/または部分時間も1つまたは複数の運転パラメータおよび/または周囲パラメータに対して順応的に調整可能に構成されていてよい。
【0040】
その際、第2の時間2の間に変速システム10の変速比を変化させ、すなわち第2の時間2内で変速を行う。
【0041】
この場合、モータトルク5をブースト・モータトルク51へ特別に上昇させ、続いて変速・モータトルク52へ減少させることは、電気自転車100の短時間の加速と、続いてのモータトルク5の排除とにより、ドライバーがチェーンの張力を失うという利点を提供する。すなわち、変速システム10において作用するドライバートルク6を、図2で認められるように、同様に値ゼロへ減少させる。これによって、特に部分時間21の後には、可能な限り低い全トルクが変速システム10に存在している。図示した実施例では、この全トルクはゼロに等しい。これによって、第2の時間2内での変速を特に簡単に、時間的に効率よく、少ない磨耗で行うことができる。
【0042】
第2の時間2の直後、再びモータトルク5の上昇を行う。その際、好ましくは、モータトルク5をダイレクトに適当な目標モータトルク53へ上昇させてよく、目標モータトルクは、電気自転車100の通常走行作動時にドライバートルク6に依存して設けられている。
【0043】
択一的に、有利には、破線5’で表したように、第3の時間3内でモータトルク5を新たに短時間でブースト・モータトルク51の値へ上昇させてよい。これにより、上昇させたモータトルク5によって電気自転車100の短時間でのより強力な加速が強制的に行われるので、変速による可能な限り低い速度ロスを提供できて特に有利である。加えて、これにより、ドライバーがより迅速に再びチェーンの張力を認知するので、特に高度な運転快適性を提供できる。
【符号の説明】
【0044】
1 第1の時間
2 第2の時間
3 第3の時間
5 モータトルク
10 駆動システム
11 アクチュエータ
12 変速システム
50 第1のモータトルク
51 ブースト・モータトルク
52 変速モータトルク
55 最大モータトルク
100 電気自転車
102 モータ
105 制御ユニット
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2024-05-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気自転車(100)の駆動システム(10)を作動させる方法において、
-前記電気自転車(100)のモータ(102)を用いて発生させたモータトルク(5)を所定の第1の時間(1)の間上昇させるステップと、
-前記第1の時間(1)の直後に前記モータトルク(5)を所定の第2の時間(2)の間減少させるステップと、
-前記第2の時間(2)の間に前記駆動システム(10)の変速システム(12)の変速比を変化させるステップと、
を含んでいる方法。
【請求項2】
前記モータトルク(5)を第1のモータトルク(50)からブースト・モータトルク(51)へ上昇させるように前記モータトルク(5)の上昇を行い、前記ブースト・モータトルク(50)が前記第1のモータトルク(50)の少なくとも120%、有利には少なくとも140%に相当している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記モータトルク(5)を変速・モータトルク(52)へ減少させるように前記モータトルク(5)の減少を行い、前記変速・モータトルク(52)が前記第1の時間(1)の前の前記第1のモータトルク(50)よりも小さい、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記変速・モータトルク(52)がゼロに等しく、または、前記変速・モータトルク(52)が前記第1のモータトルク(50)または最大モータトルク(55)の最大で20%、有利には最大で10%に相当する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の時間(2)の後に前記モータトルク(5)を2回目に上昇させるステップをさらに含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の時間(1)の前の前記第1のモータトルク(50)よりも大きな値への前記モータトルク(5)の2回目の上昇を、所定の第3の時間(3)の間行う、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の時間(1)を、検出した運転パラメータおよび/または周囲パラメータに依存して調整する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の時間(1)の間の前記モータトルク(5)の上昇を、運転パラメータおよび/または周囲パラメータに依存して調整する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記運転パラメータおよび/または周囲パラメータが、現在の勾配、現在の加速度、現在または間近のドライバートルク、現在のペダル踏み回数、車道特性、車道の推移、ナビゲーションデータを含んでいる、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
さらに、前記モータトルク(5)の上昇が間近に迫っていることに関する聴覚的および/または視覚的警告を出力するステップを含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記変速システム(12)の前記変速比の変更を、制御可能に操作可能なアクチュエータ(11)を用いて実施する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記アクチュエータ(11)を制御ユニット(105)により自動的に操作する、および/または、前記アクチュエータ(11)を手動で発生可能な変速信号に応答して操作する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
さらに、
-特に前記第2の時間(2)の間に、前記変速システム(12)の複数の変速継続時間を記録して比較するステップと、
-前記複数の変速継続時間の比較に基づいて、前記変速システム(12)の機能性を、特に摩耗および/または変速設定を検出するステップと、
を含んでいる、請求項1~1のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
-変速システム(12)を備えた駆動システム(10)と、
-モータ(102)と、
-前記変速システム(10)を操作するために設置されている制御ユニット(105)と、
を含み、
-前記制御ユニット(105)が、さらに、請求項1~1のいずれか一項に記載の方法を実施するために設置されている、
電気自転車。
【請求項15】
前記モータ(102)が、通常走行作動で所定の最大モータトルク(55)を発生させるために設置され、前記第1の時間(1)の間に上昇させた前記ブースト・モータトルク(51)が、前記最大モータトルク(55)の少なくとも120%、有利には最大で150%に相当している、請求項14に記載の電気自転車。
【外国語明細書】