(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110402
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】汚泥処理システム
(51)【国際特許分類】
C02F 11/02 20060101AFI20240807BHJP
C02F 11/00 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
C02F11/02
C02F11/00 Z ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024010868
(22)【出願日】2024-01-29
(31)【優先権主張番号】P 2023014760
(32)【優先日】2023-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】大野 慶詞
(72)【発明者】
【氏名】新實 誉也
【テーマコード(参考)】
4D059
【Fターム(参考)】
4D059AA05
4D059BA01
4D059BA21
4D059BK11
4D059CA28
4D059EB20
(57)【要約】
【課題】汚泥を構成する汚泥粒子を効率的に粉砕可能な汚泥処理システムを提供する。
【解決手段】本発明によれば、加圧部と、汚泥粒子粉砕部と、生物処理部を備える、汚泥処理システムであって、前記汚泥粒子粉砕部は、狭窄部を有する流路を備え、かつ前記流路中の汚泥が前記加圧部によって加圧されて前記狭窄部を通過することによって前記汚泥に含まれる汚泥粒子が粉砕されるように構成され、前記生物処理部は、前記汚泥粒子粉砕部から送られた前記汚泥を含む処理対象液に対して生物処理を行うように構成され、前記汚泥粒子粉砕部は、前記狭窄部の上流側の部位での前記汚泥に加わる圧力が所定の目標値に近づくように、前記狭窄部の流れ抵抗を調整するように構成されている、汚泥処理システムが提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧部と、汚泥粒子粉砕部と、生物処理部を備える、汚泥処理システムであって、
前記汚泥粒子粉砕部は、狭窄部を有する流路を備え、かつ前記流路中の汚泥が前記加圧部によって加圧されて前記狭窄部を通過することによって前記汚泥に含まれる汚泥粒子が粉砕されるように構成され、
前記生物処理部は、前記汚泥粒子粉砕部から送られた前記汚泥を含む処理対象液に対して生物処理を行うように構成され、
前記汚泥粒子粉砕部は、前記狭窄部の上流側の部位での前記汚泥に加わる圧力が所定の目標値に近づくように、前記狭窄部の流れ抵抗を調整するように構成されている、汚泥処理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の汚泥処理システムであって、
前記狭窄部は、ベースと、前記ベースに対して移動可能に構成された可動部の間に設けられ、
前記汚泥粒子粉砕部は、前記可動部を移動させることによって前記狭窄部の流れ抵抗を調整するように構成されている、汚泥処理システム。
【請求項3】
請求項1に記載の汚泥処理システムであって、
前記目標値は、50~100MPaの範囲内の値である、汚泥処理システム。
【請求項4】
請求項1に記載の汚泥処理システムであって、
前記生物処理は、好気性生物による代謝処理であり、
前記生物処理部は、大気よりも高い酸素濃度を有する高濃度酸素含有ガスが含まれる高濃度酸素空間に前記処理対象液をさらすことによって、前記処理対象液に酸素を供給するように構成される、汚泥処理システム。
【請求項5】
加圧部と、汚泥粒子粉砕部と、生物処理部を備える、汚泥処理システムであって、
前記汚泥粒子粉砕部は、狭窄部を有する流路を備え、かつ前記流路中の汚泥が前記加圧部によって加圧されて前記狭窄部を通過することによって前記汚泥に含まれる汚泥粒子が粉砕されるように構成され、
前記生物処理部は、前記汚泥粒子粉砕部から送られた前記汚泥を含む処理対象液に対して生物処理を行うように構成され、
前記生物処理は、好気性生物による代謝処理であり、
前記生物処理部は、大気よりも高い酸素濃度を有する高濃度酸素含有ガスが含まれる高濃度酸素空間に前記処理対象液をさらすことによって、前記処理対象液に酸素を供給するように構成される、汚泥処理システム。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の汚泥処理システムであって、
前記生物処理部は、前記高濃度酸素含有ガスが充満した高濃度酸素室内に、前記処理対象液を液滴又は薄膜状にして供給することによって前記処理対象液に酸素を供給するように構成される、汚泥処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
家庭や工場から排出される汚水に含まれる有機物を浄化設備で分解する際に、活性汚泥法が一般的に利用されている。活性汚泥法では、曝気槽に流入させた汚水に空気又は酸素を曝気し、好気性菌などの微生物を増殖させて活性汚泥とし、微生物に有機物を分解させる。曝気槽に汚水を供給すると、流入した汚水と同量の液体が曝気槽の下流に設けられた沈殿槽に流れ込む。
【0003】
活性汚泥は、比重が水よりも大きいため、沈殿槽の底には活性汚泥がたまり、活性汚泥の上層には、有機物が分解された液分がたまる。上澄み液は、必要に応じて、濾過、消毒などの後処理を経て、外部環境に放流される。
【0004】
汚水の処理を続けると、活性汚泥の体積が増加して余剰汚泥が発生する。余剰汚泥は、液分を除去した後の固形分を埋め立てたり、前記固形分を焼却したりして、処理している。この処理にコストがかかり、また、環境負荷となることから、余剰汚泥を系外に排出する量を低減することが求められている。
【0005】
特許文献1では、活性汚泥を、加圧部で加圧した加圧下で狭窄部から低圧部に噴出させることにより、活性汚泥を構成する汚泥粒子を粉砕して汚泥の減容化を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、汚泥をノズルから噴出することによって、汚泥を構成する汚泥粒子の粉砕を行っているが、汚泥粒子を細かく粉砕するにはノズルの孔径を小さくする必要があり、ノズルの孔径を小さくすると処理効率が低下してしまう。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、汚泥を構成する汚泥粒子を効率的に粉砕可能な汚泥処理システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1]加圧部と、汚泥粒子粉砕部と、生物処理部を備える、汚泥処理システムであって、前記汚泥粒子粉砕部は、狭窄部を有する流路を備え、かつ前記流路中の汚泥が前記加圧部によって加圧されて前記狭窄部を通過することによって前記汚泥に含まれる汚泥粒子が粉砕されるように構成され、前記生物処理部は、前記汚泥粒子粉砕部から送られた前記汚泥を含む処理対象液に対して生物処理を行うように構成され、前記汚泥粒子粉砕部は、前記狭窄部の上流側の部位での前記汚泥に加わる圧力が所定の目標値に近づくように、前記狭窄部の流れ抵抗を調整するように構成されている、汚泥処理システム。
[2][1]に記載の汚泥処理システムであって、前記狭窄部は、ベースと、前記ベースに対して移動可能に構成された可動部の間に設けられ、前記汚泥粒子粉砕部は、前記可動部を移動させることによって前記狭窄部の流れ抵抗を調整するように構成されている、汚泥処理システム。
[3][1]又は[2]に記載の汚泥処理システムであって、前記目標値は、50~100MPaの範囲内の値である、汚泥処理システム。
[4][1]~[3]の何れか1つに記載の汚泥処理システムであって、前記生物処理は、好気性生物による代謝処理であり、前記生物処理部は、大気よりも高い酸素濃度を有する高濃度酸素含有ガスが含まれる高濃度酸素空間に前記処理対象液をさらすことによって、前記処理対象液に酸素を供給するように構成される、汚泥処理システム。
[5]加圧部と、汚泥粒子粉砕部と、生物処理部を備える、汚泥処理システムであって、前記汚泥粒子粉砕部は、狭窄部を有する流路を備え、かつ前記流路中の汚泥が前記加圧部によって加圧されて前記狭窄部を通過することによって前記汚泥に含まれる汚泥粒子が粉砕されるように構成され、前記生物処理部は、前記汚泥粒子粉砕部から送られた前記汚泥を含む処理対象液に対して生物処理を行うように構成され、前記生物処理は、好気性生物による代謝処理であり、前記生物処理部は、大気よりも高い酸素濃度を有する高濃度酸素含有ガスが含まれる高濃度酸素空間に前記処理対象液をさらすことによって、前記処理対象液に酸素を供給するように構成される、汚泥処理システム。
[6][4]又は[5]に記載の汚泥処理システムであって、前記生物処理部は、前記高濃度酸素含有ガスが充満した高濃度酸素室内に、前記処理対象液を液滴又は薄膜状にして供給することによって前記処理対象液に酸素を供給するように構成される、汚泥処理システム。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、汚泥粒子粉砕部は、狭窄部の上流側の部位での汚泥に加わる圧力が所定の目標値に近づくように、狭窄部の流れ抵抗を調整するように構成されている。狭窄部の上流側の部位での圧力は、種々の要因で変動するところ、狭窄部の上流側の部位での圧力を指標として狭窄部の流れ抵抗を調整することによって、汚泥の処理を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態の汚泥処理システム10を示す。
【
図2】
図1中の汚泥粒子粉砕部2の詳細な構成を示す断面図である。
【
図3】
図3Aは、
図2中の領域Aの拡大図である。
図3Bは、
図3Aの状態から可動部2iを対向面2h1に近づけた状態で、流路2b中に汚泥9を流した状態を示す。
【
図4】
図4A及び
図4Bは、それぞれ、本発明の第2実施形態の汚泥処理システム10の汚泥粒子粉砕部2の、
図3A及び
図3Bに対応する断面図である。
【
図5】
図5Aは、
図4A中の領域Aの拡大図である。但し、可動部2iとベース2hの間隔を広げて図示している。
図5Bは、
図5Aの部位の斜視図である。
【
図6】
図4B中の領域Aの拡大図である。但し、汚泥粒子9aは図示省略している。
【
図7】
図7Aは、本発明の第3実施形態の汚泥処理システム10の汚泥粒子粉砕部2の、
図3Aに対応する断面図である。
図7Bは、
図7A中の領域Aの拡大図である。但し、可動部2iとベース2hの間隔を広げて図示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。さらに、以下の実施形態のうち、特許請求の範囲で規定されていない要素は、任意の要素であるので、省略可能である。以下の説明中で開示する数値の末尾には、任意の個数(例えば1つ又は2つ)の「0」を追加してもよい。例えば、「1.4」の後ろに「0」を1つ又は2つ追加して「1.40」又は「1.400」としてもよい。
【0013】
1.第1実施形態
図1に示すように、本発明の第1実施形態の汚泥処理システム10は、汚泥粒子粉砕部2と、加圧部3と、生物処理部4を備える。システム10は、汚水槽1と、沈殿槽5と、余剰タンク6と、放流槽7を備えてもよい。また、システム10には、システム10内を流れる流体を輸送するためのポンプや配管が適宜設けられる。汚泥処理システム10は、家庭や工場から排出される汚水8を浄化するための設備である。汚水8には有機物が含まれており、この有機物を微生物の力を利用して分解することによって、汚水8を浄化することができる。以下、汚泥処理システム10の詳細を説明する。
【0014】
<汚水槽1>
家庭や工場から排出される汚水8は、必要に応じて、濾過などの固液分離方法によって除去可能な固形分が除去された後に汚水槽1に貯留される。固液分離方法で除去する粒子径の下限は、300μmが好ましく、100μmがさらに好ましく、50μmがさらに好ましく、20μmがさらに好ましい。粒子径が大きい粒子を予め除去することによって、汚泥粒子粉砕部2の狭窄部2aに詰まったり、生物処理の効率が低下したりすることが抑制される。汚水槽1内の汚水8は、生物処理部4に送られて汚泥9と混合されて生物処理される。
【0015】
<汚泥粒子粉砕部2>
余剰タンク6内に収容されている汚泥9は、汚泥粒子粉砕部2に投入される。汚泥9には、多数の汚泥粒子9a(
図3Bに図示)が含まれており、汚泥粒子粉砕部2では、
図3Bに示すように、汚泥粒子9aを粉砕することによって、汚泥粒子9aを微細化する。汚泥粒子9aが微細化されることによって、生物処理部4での汚泥9の分解が促進される。なお、汚水8の一部又は全部を汚泥9とともに汚泥粒子粉砕部2に送ることによって、汚水8に含まれる粒子の粉砕を行ってもよい。
【0016】
汚泥粒子9aは、生物処理に用いる生物(例:微生物)に起因する物質(生体や死骸)や、汚水8中の固形分などで構成される。粉砕前の汚泥粒子9aのメジアン径をM1とし、粉砕後の汚泥粒子9aのメジアン径をM2とする。M1は、例えば、0.5~10μmであり、1~5μmが好ましい。この値は、具体的には例えば、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10μmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲であってもよい。M2は、例えば、0.1~5μmであり、0.5~3μmが好ましい。この値は、具体的には例えば、0.1、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0μmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲であってもよい。M2/M1は、例えば、0.5以下であり、0.3以下が好ましい。この値は、例えば、0.001~0.5であり、具体的には例えば、0.001、0.01、0.05、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲又は何れか以下であってもよい。汚泥粒子のメジアン径は、レーザ回折/散乱式粒子径分布(粒度分布)測定装置(例えば、株式会社堀場製作所製、型式LA-960)を用いて測定することができる。
【0017】
汚泥粒子9aの粉砕によって、好ましくは汚泥粒子9aに含まれる微生物の細胞壁(ペプチドグリカン壁)が破壊される。これによって、汚泥粒子が生物処理されやすくなる。微生物の直径は通常1μm超であるので、粒子径が1μm以下になるまで汚泥粒子9aを粉砕することによって、細胞壁が粉砕されやすくなる。粉砕後の汚泥粒子9aには粒子径が1μm以下である粒子の個数の割合が、5%以上が好ましく、10%以上が好ましい。
【0018】
図2~
図3に示すように、汚泥粒子粉砕部2は、狭窄部2aを有する流路2bを備える。汚泥粒子粉砕部2は、流路2b中の汚泥9が加圧部3によって加圧されて狭窄部2aを通過することによって汚泥9に含まれる汚泥粒子9aが粉砕されるように構成される。加圧部3は、例えば、プランジャーポンプで構成される。プランジャーポンプは、多連型(例:3連型)であることが好ましい。この場合、脈動の抑制が可能である。
【0019】
汚泥粒子9aが狭窄部2aを通過する際に汚泥粒子9aに強いせん断力が加わる。また、汚泥粒子9aが狭窄部2aを通過する際に加速され、加速された汚泥粒子9aが壁面に衝突する。さらに、汚泥9が狭窄部2aを通過する際に、汚泥9に含まれる水の圧力が低下して蒸気圧又はそれ以下に減圧されることによって、キャビテーションによって局部的沸騰及び/又は溶存気体の遊離が生じて直径100μm以下の微細な気泡(マイクロバブル及び/又はナノバブル)が発生する。この気泡が消滅する際に衝撃圧と破壊力が生じ、同時に超音波が発生する。つまり、汚泥9又は汚泥粒子9aが狭窄部2aを通過する際には、汚泥粒子9aに、せん断力、衝突力、衝撃圧、及び破壊力の少なくとも1つが加わることによって汚泥粒子9aが粉砕される。
【0020】
キャビテーションによって発生する気泡の数は、例えば、1000万個/mL以上であり、例えば、1000万~10億個/mLであり、1~5億個/mLが好ましい。気泡の平均粒径は、例えば、1~500nmであり、10~100nmが好ましく、20~60nmがさらに好ましい。なお、外部からエアーを供給して汚泥9と共に流通させることも可能であるが、このようなエアー供給を行うとエアーの分だけ汚泥9の流通量が減少してしまうので、外部からのエアー供給は行わないことが好ましい。狭窄部2aを通過する汚泥9の速度は、例えば、300m/秒以上であり、500m/秒以上が好ましい。この速度は、例えば、300~3000m/秒であり、具体的には例えば、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000、3000m/秒であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲又は何れか以上であってもよい。
【0021】
汚泥粒子粉砕部2は、ベース2hと、ベース2hに対して移動可能に構成された可動部2iを備える。ベース2h及び可動部2iは、組み立て性等の観点で、複数の部材が組み合わさって構成されているが、ここでは、便宜上、ベース2h及び可動部2iをそれぞれ1つの部材として図示している。
【0022】
ベース2hと可動部2iによって汚泥粒子粉砕部2内での流路2bが構成される。ベース2hには、流入口2cと吐出口2dが設けられ、流入口2cと吐出口2dの間に流路2bが設けられる。
図3Aに示すように、流路2bは、上流側流路2eと、狭窄部2aと、下流側流路2gを備える。狭窄部2aは、ベース2hと可動部2iの間に設けられ、可動部2iの移動に伴って狭窄部2aの流れ抵抗(詳細は後述)が可変になっている。上流側流路2e及び下流側流路2gは、少なくとも一部がベース2hに設けられ、ベース2hと可動部2iの間に設けられた部位があってもよい。下流側流路2gでは、可動部2iの柱状の側面2i2と、ベース2hの対向面(対向壁)2h3の間に環状の流路2g1が形成されている。
【0023】
図2~
図3に示すように、汚泥9は、流入口2cから流入し、上流側流路2eと、狭窄部2aと、下流側流路2gをこの順で通って、吐出口2dから吐出される。流路2bにおいて汚泥9が流通する流通面積が最も小さくなっている部位(つまり、狭窄部2a)での流通面積をS1とし、流入口2c及び吐出口2dでの流通面積をそれぞれS2、S3とすると、S1は、S2とS3の何れよりも小さくなっている。S1/S2及び/又はS1/S3の値は、0.5以下が好ましく、0.2以下がさらに好ましい。この値は、例えば、0.001~0.5であり、具体的には例えば、0.001,0.01、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲又は何れか以下であってもよい。狭窄部2aは環状であることが好ましい。
【0024】
ところで、狭窄部2aの上流側の部位での汚泥9に加わる圧力P1は、加圧部3の送液能力の変動、汚泥9の粘度変化、狭窄部2aの状態などの要因によって変動する場合がある。上流側の部位は、狭窄部2aと加圧部3の間の部位であり、例えば、狭窄部2aと流入口2cの間の部位(例:上流側流路2e)であるが、流入口2cと加圧部3の間の部位であってもよい。圧力P1が低くなりすぎると、汚泥9や汚泥粒子9aが狭窄部2aを通過する速度が低下したり、汚泥粒子9aに加わるせん断力が小さくなりすぎたりして、汚泥粒子9aの粉砕が不十分になる場合がある。また、加圧部3の送液能力を高めていないにも関わらず、圧力P1が上昇するのは、何らかの原因によって、汚泥9や汚泥粒子9aが狭窄部2aをスムーズに通過できていないことを意味しており、この状態では、汚泥粒子9aの粉砕速度が低くなりすぎる場合がある。また、圧力P1が高すぎると、機械的負荷が大きくなる。従って、圧力P1は、低すぎず、かつ、高すぎない値であることが好ましい。
【0025】
圧力P1は、狭窄部2aの流れ抵抗を変化させることによって調整することができ、汚泥粒子粉砕部2は、圧力P1が所定の目標値に近づくように、狭窄部2aの流れ抵抗を調整するように構成されていることが好ましい。これによって、圧力P1が適正な値に調整されるので、汚泥粒子9aの粉砕効率を高めるとともにユーザビリティを高めることができる。加圧部3が周期的に動作する場合、圧力P1も周期的に変動する(脈動する)場合がある。この場合、圧力P1として、周期的に変動する圧力の最大値や平均値などの代表値を採用することができる。
【0026】
狭窄部2aの流れ抵抗とは、汚泥9が狭窄部2aを通過する際に汚泥9に加わる抵抗を意味する。狭窄部2aの流れ抵抗は、例えば、狭窄部2aの幅及び/又は長さの変化に応じて変化する。狭窄部2aの幅とは、
図3Aに示すように、汚泥9の流れ方向9dに平行な断面での、汚泥9の流れ方向9dに垂直な方向の長さである。狭窄部2aの幅が大きいほど、汚泥9が流れる流通面積が大きくなるので、狭窄部2aの流れ抵抗が小さくなる。また、狭窄部2aの長さとは、汚泥9の流れ方向9dに沿った長さであり、狭窄部2aの長さが短いほど、汚泥9が流れにくい部位を通過するのにかかる時間が短くなるので、狭窄部2aの流れ抵抗が小さくなる。従って、狭窄部2aの幅を大きくしたり長さを短くしたりすると狭窄部2aの流れ抵抗が小さくなって圧力P1が低下し、狭窄部2aの幅を小さくしたり長さを長くしたりすると狭窄部2aの流れ抵抗が大きくなって圧力P1が上昇する。従って、圧力P1は、狭窄部2aの流れ抵抗を変化させることによって調整することができる。
【0027】
例えば、目標値が55MPaである場合、圧力P1が55MPaからずれると、圧力P1が55MPaに近づくように狭窄部2aの流れ抵抗を変化させる。狭窄部2aの流れ抵抗の調整は、随時行ってもよく、間欠的に行ってもよい。間欠的に行う場合、所定時間ごと(例えば1分ごと)に行ってもよく、圧力P1が許容範囲から外れたときに行ってもよい。例えば、目標値が55MPaである場合に、許容範囲を50~60MPaのように設定した場合、圧力P1が50MPa未満になったり60MPa超になったりしたときに、圧力P1が55MPaに近づくように狭窄部2aの流れ抵抗の調整が行われる。また、下限目標値と上限目標値をそれぞれ設け、圧力P1が下限目標値を下回ると、圧力P1が下限目標値に近づくように狭窄部2aの流れ抵抗の調整を行い、圧力P1が上限目標値を上回ると、圧力P1が上限目標値に近づくように狭窄部2aの流れ抵抗の調整を行うようにしてもよい。目標値、下限目標値、又は上限目標値は、それぞれ、例えば、50~100MPaの範囲内の値であり、具体的には例えば、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100MPaであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内の値であってもよい。また、狭窄部2aの下流側の部位での汚泥9に加わる圧力P2は、圧力P1と同じか、圧力P1よりも低い。
【0028】
狭窄部2aの流れ抵抗の調整は、狭窄部2aの幅(狭窄部2aの幅が最も小さくなっている部位での幅。以下、同じ。)が0.5mm以上となるように行うのが好ましい。狭窄部2aの幅が狭くなりすぎると、汚泥9の処理効率が不十分になりやすいからである。また、狭窄部2aの流れ抵抗の調整は、狭窄部2aの幅が3.0mm以下となるように行うのが好ましい。狭窄部2aの幅が広すぎると、汚泥粒子9aの粉砕が不十分になりやすいからである。狭窄部2aの幅は、例えば、具体的には例えば、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲であってもよい。
【0029】
狭窄部2aの幅をW1とし、粉砕前の汚泥粒子9aのメジアン径をM1とすると、W1/M1の値は、例えば、100以下であり、50以下が好ましい。この場合、汚泥粒子9aの粉砕効率が特に高くなる。この値は、例えば、0.1~100であり、具体的には例えば、0.1、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲又は何れか以下であってもよい。
【0030】
図3Aに示すように、狭窄部2aは、好ましくは、第1狭窄部2a1と第2狭窄部2a2を備える。第1狭窄部2a1は、可動部2iの先端面2i1と、ベース2hの第1対向面(対向壁)2h1の間に設けられる。先端面2i1と第1対向面2h1の間の距離が第1狭窄部2a1の幅である。第2狭窄部2a2は、可動部2iの側面2i2と、ベース2hの第2対向面(対向壁)2h2の間に設けられる。側面2i2と第2対向面2h2の間の距離が第2狭窄部2a2の幅である。狭窄部2a1,2a2の一方は省略可能である。
【0031】
先端面2i1は、上流側流路2eと対向していることが好ましい。先端面2i1は、汚泥9の流れ方向9dに非平行であり、垂直であることが好ましい。また、先端面2i1の外縁が円形で、上流側流路2eの横断面が円形である場合には、先端面2i1と上流側流路2eは、同心であることが好ましい。この場合、上流側流路2eを流れる汚泥9が先端面2i1に衝突して第1狭窄部2a1を通じて先端面2i1の外縁に向かって流れる。第1狭窄部2a1では先端面2i1に平行に汚泥9が流れるので、先端面2i1は、汚泥9の流れ方向9dに非平行(好ましくは垂直)である。第1狭窄部2a1での汚泥9の流れ方向は、上流側流路2eでの流れ方向9dに対して非平行(好ましくは垂直)になる。
【0032】
第1狭窄部2a1の出口に隣接した位置には、第1狭窄部2a1を通過した汚泥9が衝突する位置に衝突壁2jが設けられており、第1狭窄部2a1で加速された汚泥粒子9aが衝突壁2jに衝突して粉砕されやすくなっている。衝突壁2jは、環状であることが好ましい。第1狭窄部2a1から出た汚泥9は、方向を変えて、第2狭窄部2a2に向かう。先端面2i1の外縁には凹部2kが設けられており、汚泥9が方向を変えやすくなっている。側面2i2は、上流側流路2eでの汚泥9の流れ方向と平行であることが好ましい。第2狭窄部2a2では側面2i2に平行に汚泥9が流れる。
【0033】
このように、本実施形態では、狭窄部2aは、第1狭窄部2a1及び第2狭窄部2a2によって、断面が略L字状に形成されていて、汚泥9に外力が加わりやすくなっている。
【0034】
図2及び
図3Aに示すように、先端面2i1と第1対向面2h1の間が広く開いた状態から可動部2iを右方向(つまり、先端面2i1が第1対向面2h1に近づく方向)に移動させると、第1狭窄部2a1の幅が狭まると共に、第2狭窄部2a2の長さが長くなる。このため、
図3Bに示すように、可動部2iを右方向に移動させるに連れて、狭窄部2aの流れ抵抗が上昇して、圧力P1が上昇する。一方、可動部2iを左方向(つまり、先端面2i1が第1対向面2h1から離れる方向)に移動させると、第1狭窄部2a1の幅が広がると共に、第2狭窄部2a2の長さが短くなる。このため、可動部2iを左方向に移動させるに連れて、狭窄部2aの流れ抵抗が低下して、圧力P1が低下する。
【0035】
このように、汚泥粒子粉砕部2は、可動部2iを移動させることによって狭窄部2aの流れ抵抗を調整可能であるので、可動部2iを移動させることによって圧力P1を調整することができる。このような構成によれば、加圧部3の送液能力を変化させることによって圧力P1を調整する構成に比べて、シンプルにかつ素早く圧力P1を調整することが可能である。可動部2iは、人力で移動させてもよく、動力を用いて自動で移動させてもよい。何れの場合も、圧力P1を参照して、圧力P1が目標値に近づくように、可動部2iを移動させることができる。可動部2iは、例えば、油圧駆動することができる。
【0036】
自動で可動部2iを移動させる場合、圧力P1は、デジタル信号で監視し、PLCへ入力することが好ましい。また、可動部2iの動力は、例えば、サーボモータであり、この場合、可動部2iの位置を常に把握することができる。可動部2iは、直線運動だが、精密な位置制御を行うために動力側は回転運動で制御することが好ましい。粉砕対象の汚泥9の流量に応じて、ボールねじを直接接続しても良いし、倍力機構(トグル)を設けても良い。一例として狭窄部2aを通過する圧力の中央値を70MPa、上下限値を±10MPaと設定し、60MPaを下回った場合や80MPaを上回った場合、PLCからフィードバック信号を発信し、中央値±3MPaになるまで自動で作動させる。
【0037】
仮に供給汚泥が枯渇した場合、圧力P1が著しく低い値が継続し、可動部2iは前進し続け(狭窄部が狭くなり続け)、狭窄部2aの幅が0となって衝突が生じ、機械破損の怖れがある。これを避けるために、可動部2iの移動範囲を事前に設定し、位置情報から可動部2iが規定値以上動かないようにするとともに、設備全体でアラームを発信し、汚泥を供給する部位(加圧部3及び余剰タンク6)の確認を促すようにする。万一、可動部2iが必要以上に前進した際に負荷が逃げるようにするため、可動部2iを固定する台座に後退機構を設けたり、トグルの関節に破損部を設けたりすることが好ましい。後者の場合、破損部を破損させることによって、可動部2i及びベース2hの損傷を軽減又は抑制することができる。また、可動部2iの移動に伴って伸縮するスプリングを設け、可動部2iが必要以上に前進したときにスプリングに閾値を超える力が加わると、スプリングの付勢力によって可動部2iを後退させるようにしてもよい。また、台座と固定部の間にスプリングを設けることによって上記後退機構を構成してもよい。この場合、台座の背面がスプリングで支持されるので、可動部2iの先端がベース2hに衝突していないときは台座は移動しないが、可動部2iの先端がベース2hに衝突して可動部2i及び台座に後ろ向きの強い力が加わると、スプリングが縮んで台座が後退する。これによって、可動部2i及びベース2hの損傷が軽減又は抑制される。
【0038】
第1狭窄部2a1の幅が第2狭窄部2a2の幅よりも狭い領域では、第1狭窄部2a1が汚泥9の流れのボトルネックになる。そして、可動部2iを移動させると第1狭窄部2a1の幅がその分変化して流路面積が変化するので、圧力P1が大きく変動する。一方、第1狭窄部2a1の幅が第2狭窄部2a2の幅よりも広い領域では、第2狭窄部2a2が汚泥9の流れのボトルネックになるが、可動部2iを移動させても第2狭窄部2a2の幅が変化せずに、第2狭窄部2a2の長さが変化するだけである。このため、可動部2iを移動させても汚泥9の流路面積が変化せず、可動部2iの移動に伴う圧力P1の変化が比較的小さくなる。このため、本実施形態では、第1狭窄部2a1の幅が狭いほど、可動部2iの移動に伴う圧力P1の変化が大きくなり、圧力P1の調整を素早く行うことが可能になる。
【0039】
<生物処理部4>
生物処理部4は、汚泥粒子粉砕部2から送られた汚泥9を含む処理対象液11に対して生物処理を行うように構成されている。生物処理とは、好気性又は嫌気性生物による代謝処理を意味し、生物処理によって処理対象液11に含まれる有機物が分解される。生物処理は、好気性生物(好ましくは好気性微生物)による代謝処理であることが好ましい。生物処理は、汚泥粒子9aの表面積が大きいほど効率的に行われるところ、汚泥粒子粉砕部2において汚泥粒子9aが粉砕されて微細化されているので、生物処理部4での効率的な生物処理が可能になっている。好ましくは、処理対象液11中に好気性生物が含まれており、処理対象液11に酸素を供給することによって、好気性生物による代謝を促進することができる。酸素の供給は、任意の方法で行うことができ、一例では、処理対象液11中に酸素を含むガスをバブリングすることであるが、このバブリングは、消費電力が多くなる場合がある。
【0040】
そこで、本実施形態では、生物処理部4は、大気よりも高い酸素濃度を有する高濃度酸素含有ガスが含まれる高濃度酸素空間に処理対象液11をさらすことによって、処理対象液11に酸素を供給している。高濃度酸素含有ガス中の酸素濃度は、例えば25~100体積%であり、50~100体積%が好ましい。この酸素濃度は、具体的には例えば、25、30、40、50、60、70、80、90、100体積%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲であってもよい。
【0041】
一例では、生物処理部4は、反応槽4aと、高濃度酸素室4bと、酸素発生装置4cを備える。酸素発生装置4cは、例えば空気中の酸素を濃縮することによって、高濃度酸素含有ガスを発生される装置である。発生した高濃度酸素含有ガスは、高濃度酸素室4b内に充填される。高濃度酸素室4bでの高濃度酸素含有ガスの圧力は、大気圧よりも高いことが好ましく、例えば、0.12~0.5MPaであり、0.15~0.25MPaが好ましい。この圧力は、具体的には例えば、0.12、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50MPaであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲であってもよい。
【0042】
反応槽4aには、汚泥粒子粉砕部2から送られた汚泥9と、汚水8が混合された処理対象液11が収容されている。生物処理部4は、高濃度酸素含有ガスが充満した高濃度酸素室4bに、処理対象液11を液滴又は薄膜状にして供給することによって処理対象液11に酸素を供給するように構成される。処理対象液11は、ポンプの作用によって反応槽4aから取り出されて高濃度酸素室4b内に供給される。このような方法によれば、処理対象液11に確実に酸素を供給することができると共に、発生させた酸素を効率的に利用可能であるので、消費電力の低減も達成可能である。この方法は、バッチ式で行ってもよく、連続式で行ってもよい。バッチ式の場合、所定量の処理対象液11を高濃度酸素室4b内に散布し、散布が完了した後に、高濃度酸素室4bから取り出して、反応槽4aに戻すことができる。連続式の場合、高濃度酸素室4bを通過した処理対象液11を、順次、反応槽4aに戻すことができる。
【0043】
<沈殿槽5>
処理対象液11を生物処理部4で生物処理して得られる処理済み液12は、沈殿槽5に送られる。処理済み液12には、生物処理部4で分解されなかった有機物等を含む固形分が含まれており、この固形分が沈殿槽5において余剰汚泥9bとして沈殿する。余剰汚泥9bの上側の上澄み液12aは、汚水8よりも有機物が減少した状態になっており、外部環境に排出可能な程度の汚染度になっている。上澄み液12aは、放流槽7に送られ、放流槽7において濾過や消毒などの後処理が行われた後に、系外に排出される。
【0044】
余剰汚泥9bは、余剰タンク6に送られ、そのまま又は新たな汚水8と混合されて汚泥粒子粉砕部2に送られ、粉砕処理される。余剰タンク6内の余剰汚泥9bは、次サイクルで利用する際には、単に、汚泥9と称する。余剰タンク6から汚泥粒子粉砕部2に送られる汚泥9には、生物処理部4では処理しきれなかった比較的大きな汚泥粒子9aが含まれているが、汚泥粒子9aが汚泥粒子粉砕部2で粉砕されることによって、生物処理されやすくなる。このような方法によれば、生物処理部4では処理しきれなかった汚泥粒子9aが、粉砕後に、再度、生物処理されるので、汚泥9の減量化が可能となる。
【0045】
本実施形態のシステム10においても、余剰汚泥9bの蓄積量が基準値を超えた場合には、余剰タンク6又は沈殿槽5の余剰汚泥9bを系外に排出してもよい。系外に排出した余剰汚泥9bは、埋め立てや焼却などの方法で処理することができる。本実施形態のシステム10によれば、系外に排出する余剰汚泥9bの量を低減することができるので、余剰汚泥9bの廃棄コストを低減することができる。
【0046】
2.第2実施形態
図4~
図5を用いて、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に類似しており、第1実施形態で説明した内容は、その趣旨に反しない限り、本実施形態にも適用可能である。本実施形態は、汚泥粒子粉砕部2の構成の違いが第1実施形態との主な相違点である。以下、相違点を中心に説明する。
【0047】
本実施形態では、
図4~
図5に示すように、先端面2i1と第1対向面2h1には互いに対向するように環状凸部と環状凹部が設けられおり、これによって、第1狭窄部2a1がジグザグ形状になっている。このような構成によれば、第1狭窄部2a1を通過する汚泥粒子9aにより強い力が加わりやすいので、汚泥粒子9aの粉砕が一層促進される。
【0048】
具体的な構成は、以下の通りである。先端面2i1には、中央部2i3と、環状凹部2i4と、環状凸部2i5と、周縁部2i6が設けられている。環状凹部2i4は、中央部2i3を取り囲むように配置される。環状凸部2i5は、環状凹部2i4を取り囲むように配置される。周縁部2i6は、環状凸部2i5を取り囲むように配置される。
【0049】
第1対向面2h1には、テーパー部2h4と、環状凸部2h5と、環状凹部2h6と、周縁部2h7が設けられている。テーパー部2h4は、上流側流路2eを取り囲むように配置される。環状凸部2h5は、テーパー部2h4を取り囲むように配置される。環状凹部2h6は、環状凸部2h5を取り囲むように配置される。周縁部2h7は、環状凹部2h6を取り囲むように配置される。
【0050】
中央部2i3は、上流側流路2e及びテーパー部2h4に対向する。環状凹部2i4は、環状凸部2h5に対向する。環状凸部2i5は、環状凹部2h6に対向する。周縁部2i6は、周縁部2h7に対向する。
【0051】
環状凹部2i4及び2h6は、それぞれ、断面が三角形状になっている。環状凸部2i5及び2h5は、それぞれ、断面が台形状になっている。環状凹部2i4及び2h6の側面の傾斜角度は、それぞれ、可動部2iの稼働方向(
図5Aの左右方向)に対して、例えば、30~60度(本実施形態では45度)であり、35~55度が好ましく、40~50度がさらに好ましい。環状凸部2i5の外側の側面2i7の傾斜角度は、可動部2iの稼働方向に対して、20~50度(本実施形態では35度)であり、25~45度が好ましく、30~40度がさらに好ましい。環状凸部2h5の内側の側面(つまり、テーパー部2h4)の傾斜角度は、可動部2iの稼働方向に対して、15~45度(本実施形態では30度)であり、20~40度が好ましく、25~30度がさらに好ましい。
【0052】
図6に示すように、環状凸部2i5及び2h5は、それぞれ、環状凹部2h6,2i4内に入り込むことができ、環状凸部2i5と環状凹部2h6の間と、環状凸部2h5と環状凹部2i4の間のそれぞれに汚泥粒子9aが通過する流路が形成される。この流路は、断面台形状の環状凸部2i5及び2h5と、断面三角形状の環状凹部2i4及び2h6の間に形成されるので、汚泥粒子9aが流れる方向に沿って流通断面積が変化するようになっている。このような構成によれば、第1狭窄部2a1を通過する汚泥粒子9aに強い力が加わりやすく、汚泥粒子9aの粉砕が一層促進される。なお、環状凸部及び環状凹部は、それぞれ、上記とは異なる形状であってもよく、環状凸部及び環状凹部が互いに非相似形状である場合には、汚泥粒子9aの流れ方向に沿って流通断面積が変化するという効果が奏される。
【0053】
可動部2iの直径をDとし、中央部2i3の直径をD1とし、環状凹部2i4の幅をW1とし、環状凸部2i5の頂面の幅をW2とし、環状凹部2i4の底から環状凸部2i5の頂面までの高さ(可動部2iの稼働方向の長さ。以下、同様。)をH1とし、周縁部2i6から環状凸部2i5の頂面までの高さをH2とする。Dは、例えば、6~24mm(本実施形態では12mm)であり、8~18mmが好ましく、10~14mmがさらに好ましい。D1/Dは、例えば、0.15~0.45(本実施形態では0.30)であり、0.20~0.40が好ましく、0.25~0.35がさらに好ましい。W1/Dは、例えば0.06~0.18(本実施形態では0.12)であり、0.08~0.16が好ましく、0.10~0.14がさらに好ましい。W2/Dは、例えば0.02~0.08(本実施形態では0.05)であり、0.03~0.07が好ましく、0.04~0.06がさらに好ましい。H1/Dは、例えば0.03~0.09(本実施形態では0.06)であり、0.04~0.08が好ましく、0.05~0.07がさらに好ましい。H2/Dは、例えば0.02~0.08(本実施形態では0.05)であり、0.03~0.07が好ましく、0.04~0.06がさらに好ましい。
【0054】
上流側流路2eの直径をD2とし、環状凸部2h5の頂面の幅をW3とし、環状凹部2h6の幅をW4とし、環状凹部2h6の底から環状凸部2h5の頂面までの高さをH3とする。D2/Dは、例えば、0.10~0.40(本実施形態では0.25)であり、0.15~0.35が好ましく、0.20~0.30がさらに好ましい。W3/Dの説明は、W2/Dと同様である。W4/Dの説明は、W1/Dと同様である。H3/Dの説明は、H1/Dと同様である。
【0055】
3.第3実施形態
図7を用いて、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態は、第2実施形態に類似しており、第2実施形態で説明した内容は、その趣旨に反しない限り、本実施形態にも適用可能である。本実施形態は、汚泥粒子粉砕部2の構成の違いが第2実施形態との主な相違点である。以下、相違点を中心に説明する。
【0056】
本実施形態では、
図7に示すように、先端面2i1には、複数の環状凹部2i4と環状凸部2i5が設けられており、第1対向面2h1には、複数の環状凸部2h5と環状凹部2h6が設けられている。このような構成によれば、第1狭窄部2a1を通過する汚泥粒子9aにより強い力が加わりやすいので、汚泥粒子9aの粉砕が一層促進される。
【0057】
4.その他実施形態
汚泥粒子粉砕部2は、可搬式に構成されていてもよい。この場合、汚泥粒子粉砕部2を備えない汚泥処理システム10において、汚泥粒子粉砕部2を試験的に導入して、汚泥粒子粉砕部2を導入することの効果を確認することが容易になる。また、繁忙期に一時的に汚泥粒子粉砕部2を増設して、汚泥粒子粉砕の処理能力を高めることを容易になる。可搬式の汚泥粒子粉砕部2は、車両などを用いて運搬することができる。可搬式の汚泥粒子粉砕部2は、一例では、コンテナ内に配置することができる。この場合、運搬が容易になる。可搬式の汚泥粒子粉砕部2には、余剰タンク6から汚泥9を供給してもよく、汚泥処理システム10のその他の部位からの汚泥9又は汚水8を供給してもよい。
【0058】
また、可搬式の汚泥粒子粉砕部2には、汚泥9又は汚水8で構成される処理対象液を一時的に貯蔵する貯蔵タンクを配置してもよい。この場合、汚泥粒子粉砕部2への処理対象液の供給速度を安定させることができる。貯蔵タンクは、汚泥粒子粉砕部2と同じコンテナ内に配置することができる。この場合、汚泥粒子粉砕部2と貯蔵タンクがコンテナに配置されたユニットとして取り扱うことができるので、取り扱い性に優れている。また、貯蔵タンク内において、処理対象液に対して前処理を行ってもよい。前処理としては、処理対象液に含まれる巨大粒子を除去したり、粉砕したりする処理が挙げられる。巨大粒子とは、汚泥粒子粉砕部2の狭窄部2aに詰まる程度のサイズの粒子であり、巨大粒子を予め除去又は粉砕することによって、巨大粒子が汚泥粒子粉砕部2の狭窄部2aに詰まることが抑制される。この粉砕は、例えば、汚泥粒子粉砕部2の狭窄部2aよりも広い流路を有する粉砕機を用いて行うことができる。可搬式の汚泥粒子粉砕部2で処理して得られる処理済み液は、例えば、反応槽4aに戻すことができる。
【0059】
ところで、可搬式の汚泥粒子粉砕部2は、貯水池やため池などの水域内の処理対象水中のアオコに対して外力を加えて粉砕可能に構成される可搬式のアオコ粉砕機としても利用可能である。アオコの粉砕によってアオコの細胞壁が破壊されてアオコが微生物(好ましくは好気性微生物)によって捕食されやすくなり、水質浄化が促進される。水質浄化は、運用開始当初は、すでに存在しているアオコを処理する必要があるので、高い処理能力が要求されるが、アオコが十分に減少した後は、アオコの増殖を抑制可能な程度の運転を行えばいいので、高い処理能力が必要となる期間が限られている。このため、アオコ粉砕機を可搬式として、一時的に処理能力を高めることができるようにする運用が好適である。
【符号の説明】
【0060】
1 :汚水槽
2 :汚泥粒子粉砕部
2a :狭窄部
2a1 :第1狭窄部
2a2 :第2狭窄部
2b :流路
2c :流入口
2d :吐出口
2e :上流側流路
2g :下流側流路
2g1 :流路
2h :ベース
2h1 :第1対向面
2h2 :第2対向面
2h3 :対向面
2h4 :テーパー部
2h5 :環状凸部
2h6 :環状凹部
2h7 :周縁部
2i :可動部
2i1 :先端面
2i2 :側面
2i3 :中央部
2i4 :環状凹部
2i5 :環状凸部
2i6 :周縁部
2i7 :側面
2j :衝突壁
2k :凹部
3 :加圧部
4 :生物処理部
4a :反応槽
4b :高濃度酸素室
4c :酸素発生装置
5 :沈殿槽
6 :余剰タンク
7 :放流槽
8 :汚水
9 :汚泥
9a :汚泥粒子
9b :余剰汚泥
9d :方向
10 :汚泥処理システム
11 :処理対象液
12 :処理済み液
12a :上澄み液
P1 :圧力