(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110405
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】DC主電源用のサージアレスタおよびそのようなサージアレスタを動作させる方法
(51)【国際特許分類】
H02H 3/20 20060101AFI20240807BHJP
H02H 7/00 20060101ALI20240807BHJP
H01C 7/12 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
H02H3/20 A
H02H7/00 C
H01C7/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024011696
(22)【出願日】2024-01-30
(31)【優先権主張番号】10 2023 102 619.4
(32)【優先日】2023-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】522067846
【氏名又は名称】デーン エスエー
【氏名又は名称原語表記】DEHN SE
【住所又は居所原語表記】Hans-Dehn-Strasse 1 92318 Neumarkt i.d.OPf. Deutschland
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クラウス ビューラー
(72)【発明者】
【氏名】アルント エルハルト
(72)【発明者】
【氏名】マルコ ケラーマン
【テーマコード(参考)】
5E034
5G004
5G053
【Fターム(参考)】
5E034EA07
5G004AA04
5G004BA07
5G053AA10
5G053BA01
5G053CA06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】DC主電源用のサージアレスタおよびそのようなサージアレスタを動作させる方法を提供する。
【解決手段】DC主電源(12)用のサージアレスタ(10)は、その電流強度が特定の電流閾値以上であるDC主電源(12)における主電源続流を消滅させるためのスパークギャップ(14)と、特定の電流閾値を下回る主電源続流を消滅させるように設定される、スパークギャップ(14)に割り当てられるトリガ可能な消滅補助器(36)と、消滅補助器(36)をトリガするための評価モジュール(38)と、を備え、評価モジュール(38)は、スパークギャップ(14)が単独では特定の持続時間内に主電源続流を消滅させることができないという事実を特徴とする少なくとも2つのトリッピング条件が満たされると直ぐに消滅補助器(36)をトリガするように設定される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
DC主電源(12)用のサージアレスタ(10)であって、
その電流強度が特定の電流閾値以上である前記DC主電源(12)における主電源続流を消滅させるためのスパークギャップ(14)と、
前記特定の電流閾値を下回る主電源続流を消滅させるように設定される、前記スパークギャップ(14)に割り当てられるトリガ可能な消滅補助器(36)と、
前記消滅補助器(36)をトリガするための評価モジュール(38)であって、前記スパークギャップ(14)が単独では特定の持続時間内に前記主電源続流を消滅させることができないという事実を特徴とする少なくとも2つのトリッピング条件が満たされると直ぐに前記消滅補助器(36)をトリガするように設定される、評価モジュール(38)と、
を備えるサージアレスタ(10)。
【請求項2】
前記少なくとも2つのトリッピング条件は、以下のパラメータ、すなわち、前記スパークギャップ(14)におけるアークの発生、位置、動きおよび/または燃焼持続時間、前記スパークギャップ(14)の点火補助器(24)の作動、前記サージアレスタ(10)に割り当てられる前記DC主電源(12)の経路における電流の流れ、および前記サージアレスタ(10)に割り当てられる前記DC主電源(12)の前記経路における前記特定の電流閾値を下回ることのうちの少なくとも2つに基づく、請求項1に記載のサージアレスタ。
【請求項3】
前記サージアレスタ(10)は、前記スパークギャップ(14)におけるアークを検出するための光センサ(39)、前記DC主電源(12)における電流強度を測定するための電流センサ(35)、および/または電圧センサ(70)を備える、請求項1または2に記載のサージアレスタ。
【請求項4】
前記特定の電流閾値が100A未満であり、および/または前記特定の持続時間が10ms未満である、請求項1から3のいずれか一項に記載のサージアレスタ。
【請求項5】
前記消滅補助器は、ハイブリッド回路、スナバ回路、向流回路、能動共振回路、および/または受動共振回路である、請求項1から4のいずれか一項に記載のサージアレスタ。
【請求項6】
前記サージアレスタ(10)は、前記スパークギャップ(14)および/または前記消滅補助器(36)への損傷につながる電流が前記サージアレスタ(10)に割り当てられる前記DC主電源(12)の経路内で発生する場合に、前記スパークギャップ(14)および/または前記消滅補助器(36)を前記DC主電源(12)から切り離すように設定されるバックアップ保護デバイス(48)を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載のサージアレスタ。
【請求項7】
前記評価モジュール(38)は、前記サージアレスタ(10)によって過去に処理された主電源続流に関する情報を含むトレーニングデータセットおよび/またはデータセットに基づいて、前記特定の電流閾値、前記特定の持続時間、および/または前記考慮されるトリッピング条件を適合させるように設定される機械学習モジュール(46)を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載のサージアレスタ。
【請求項8】
前記消滅補助器(36)は、前記スパークギャップ(14)と並列に接続されるまたは前記スパークギャップ(14)と直列に接続される別個のモジュールとして設計される、請求項1から7のいずれか一項に記載のサージアレスタ。
【請求項9】
前記サージアレスタ(10)が直列に接続される複数のスパークギャップ(14)を備え、トリガ可能な消滅補助器(36)が前記スパークギャップ(14)のうちの少なくとも1つに割り当てられる、請求項1から8のいずれか一項に記載のサージアレスタ。
【請求項10】
DC主電源(12)用のサージアレスタ(10)を動作させる方法であって、
-既に特定された持続時間内に前記サージアレスタ(10)のスパークギャップ(14)のみでは前記DC主電源(12)で発生している主電源続流を消滅させることができないという事実を特徴とする少なくとも2つのトリッピング条件が満たされるかどうかを前記サージアレスタ(10)の評価モジュール(38)によって検出するステップと、これが当てはまる場合に、
-前記評価モジュール(38)によって前記サージアレスタ(10)の消滅補助器(36)をトリガさせるステップと、
を含む方法。
【請求項11】
前記既に特定された持続時間内に前記スパークギャップ(14)自体が前記発生している主電源続流を消滅させることができる場合には前記消滅補助器(36)が受動的なままであり、前記既に特定された持続時間内に前記スパークギャップ(14)自体が前記発生している主電源続流を消滅させることができない場合には前記消滅補助器(36)が作動される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記スパークギャップ(14)内のアークが光センサ(39)によって検出され、前記DC主電源(12)内の電流強度が電流センサ(35)によって測定され、および/または電圧が電圧センサ(70)によって測定され、前記光センサ(39)、前記電流センサ(35)、および/または前記電圧センサ(70)が少なくとも1つのパラメータを検出し、そのパラメータに基づいて前記少なくとも2つのトリッピング条件がチェックされる、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記スパークギャップ(14)および/または前記消滅補助器(36)は、前記スパークギャップ(14)および/または前記消滅補助器(36)の損傷につながる前記サージアレスタ(10)に割り当てられる前記DC主電源(12)の経路で電流が発生する場合に、前記DC主電源(12)から切り離される、請求項10から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記サージアレスタ(10)の前記動作のためのパラメータが連続的に調整される、請求項10から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記スパークギャップ(14)の予期される挙動に関する情報が、前記特定の持続時間内に前記スパークギャップ(14)のみで前記DC主電源(12)において発生している主電源続流を消滅させることができるか否かを決定するために考慮される、請求項10から14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DC主電源用のサージアレスタ、およびそのようなサージアレスタを動作させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スパークギャップに基づくサージアレスタは、低電圧供給主電源における過渡外乱変数を放出するために使用される。
【0003】
いわゆる「主電源アレスタ」、すなわち、一般に相と主電源の中性導体または保護導体との間に配置されるサージアレスタは、例えば雷事象によって引き起こされる直流または結合インパルス電流を放電することができ、DC主電源における消費者のための主電源給電の遮断を引き起こすことなく、主電源続流を安全に防止または遮断することができなければならない。
【0004】
これまでのところ、通常のAC主電源について様々な技術が確立されており、それによって見込まれる比較的高い主電源続流を制限することも可能である。最大数百アンペアのより小さい電流、場合によっては、以前は制限されていた主電源続流の場合、AC主電源における自然電流ゼロ交差の極性変化によって最終ステップで消滅が実現される。
【0005】
しかしながら、供給主電源がDC電圧に変換されると、自然電流ゼロ交差はもはや適用されない。また、これは、より小さいまたは唯一限られた主電源続流の自然消滅も排除する。更に、保護デバイスを意図的に適合させることができる所定の短絡電流を仮定することは不可能である。短絡電流のレベル、供給方向、およびDC主電源の時定数も大きく変化する可能性がある。したがって、AC主電源からの既知の消滅原理は、DC主電源には容易に適用できない。
【0006】
数10kAの高い見込まれる短絡電流は、いわゆるホーンスパークギャップで制限され得る。そのようなホーンスパークギャップは、特に、スパークギャップが点火する点火領域と、アークを消弧するための消弧室と、点火領域と消弧室との間に位置される走行領域とを含み、走行領域を通じて、点火されたアークは、該アークを消弧室内で消弧できるように通過しなければならない。しかしながら、最大数百アンペアの電流強度を伴う小さな直流の場合、アークは走行領域をゆっくりしか通過しないか、まったく通過しない場合があり、それにより、ホーンスパークギャップが損傷する場合がある。
【0007】
独国特許出願公開第102007015933号明細書は、電子ハイブリッド回路を有する光起電力システムで使用するための過電圧保護デバイスを開示する。これは、スパークギャップと並列に接続された半導体部品を特徴とし、半導体部品は、スパークギャップの各点火後に作動され、発生し得る任意の主電源続流を消滅させるのに役立つ。この解決策の欠点は、半導体部品が見込まれる全主電源続流を制御できなければならないことである。これは、過電圧保護デバイスの最大性能を制限する。また、それぞれ使用されるべき半導体部品のコストは、制御されるべき最大電流に直結する。
【0008】
独国特許出願公開第102011053415号明細書は、第1の放電経路および第2の放電経路を有する過電圧保護デバイスを開示し、第1の放電経路はスパークギャップを有し、第2の放電経路はトリガ可能スイッチおよび直列接続サーミスタを有する。更に、過電圧保護デバイスは、第1の放電経路の状態および/または状態の経過に基づいてアレスタ事象の場合にトリガ可能スイッチを切り替えることができる制御手段を有する。
【0009】
独国特許出願公開第10211796号明細書は、主電源供給電圧から独立し、保護されるべきシステム部品とアースとの間で発生する過電圧事象を監視して過渡事象および静的事象を検出する選択アセンブリを有する過電圧保護デバイスを示し、事象のタイプに応じて、過電圧保護手段の動的短絡スイッチおよび/または静的短絡スイッチが作動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】独国特許出願公開第102007015933号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102011053415号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第10211796号明細書
【発明の概要】
【0011】
本発明の目的は、広い電流強度範囲にわたってDC続流を確実に消滅させるようになっているサージアレスタを提供することである。特に、サージアレスタは、費用効果の高い態様で実装されるようにもなっていなければならない。
【0012】
本発明の目的は、その電流強度が特定の電流閾値以上であるDC主電源における主電源続流を消滅させるためのスパークギャップと、特定の電流閾値を下回る主電源続流を消滅させるように設定される、スパークギャップに割り当てられるトリガ可能な消滅補助器とを備える、DC主電源用のサージアレスタによって達成される。サージアレスタは、消滅補助器をトリガするための評価モジュールを更に備え、評価モジュールは、スパークギャップが単独では特定の持続時間内に主電源続流を消滅させることができないという事実を特徴とする少なくとも2つのトリッピング条件が満たされると直ぐに消滅補助器をトリガするように設定される。
【0013】
本発明の目的は、DC主電源用のサージアレスタを動作させる方法であって、既に特定された持続時間内にサージアレスタのスパークギャップのみではDC主電源に発生している主電源続流を消滅させることができないという事実を特徴とする少なくとも2つのトリッピング条件が満たされるかどうかをサージアレスタの評価モジュールによって検出するステップを含む方法によって更に達成される。これが当てはまる場合、サージアレスタの消滅補助器は、評価モジュールによってトリガされる。
【0014】
本発明は、スパークギャップ自体が既に特定された持続時間内に発生している主電源続流を消滅させることができない場合にのみ消滅補助器を意図的に作動させるという基本的な考えに基づいている。このことは、インパルス電流負荷および主電源続流をスパークギャップ自体によって確実に制御できる場合に消滅補助器が受動的なままであることを意味する。これにより、特定の電流閾値を下回る電流強度を伴う負荷に関してのみ消滅補助器の構成要素を設計することが可能になり、その結果、本発明に係るサージアレスタのコストは、インパルス電流を放電して主電源続流を消滅させる信頼性を損なうことなく最小限に抑えることができる。
【0015】
本発明によれば、評価モジュールは、幾つかの特徴的なトリッピング条件が満たされる場合にのみ消滅補助器をトリップさせる。言い換えれば、評価モジュールは、幾つかの条件が存在すると直ぐに、特に主電源続流に関連する幾つかの条件が存在すると直ぐに、消滅補助器を作動させるように設定され、この場合、スパークギャップのみでは、特定の持続時間内に主電源続流を消滅させることができない。
【0016】
考慮されるべきトリッピング条件は、それぞれ使用されるスパークギャップおよび消滅補助器の動作のタイプおよびモードに適合される。
【0017】
スパークギャップのタイプはこれ以上根本的に制限されないため、本発明に係るサージアレスタは、それぞれ意図される使用場所に柔軟に適合させることができる。
【0018】
一変形形態において、スパークギャップは、ホーンスパークギャップまたはガスチューブアレスタである。そのようなスパークギャップは、インパルス電流を確実に処理するのに特に適しており、世界中で低コストで利用可能である。
【0019】
好ましくは、スパークギャップはホーンスパークギャップであり、該ホーンスパークギャップは、アークを点火するための点火領域と、アークを消弧するための消弧室と、点火領域と消弧室との間に位置される走行領域とを備え、走行領域を通じてアークが点火領域から消弧室内へと通過することができる。
【0020】
更なる変形例において、スパークギャップは、アークチャネル内の圧力上昇またはガス流の原理で動作するスパークギャップである。
【0021】
したがって、1つの態様は、スパークギャップ自体が既に特定された持続時間間内に発生している主電源続流を消滅させることができる場合に消滅補助器が受動的なままであることを提供し、消滅補助器は、スパークギャップ自体が既に特定された持続時間内に発生している主電源続流を消滅させることができないときに作動される。換言すれば、サージアレスタは、(作動された消滅補助器を伴う)能動動作モードと、(受動的な消滅補助器を伴う)受動動作モードとを有する。しかしながら、主電源続流は、受動動作モードおよび能動動作モードの両方において、すなわちスパークギャップ自体によってまたは作動した消滅補助器のサポートによって消滅される。
【0022】
少なくとも2つのトリッピング条件は、以下のパラメータ、すなわち、スパークギャップ内のアークの発生、移動および/または燃焼持続時間、スパークギャップの点火補助器のトリッピング、サージアレスタに割り当てられるDC主電源の経路内の電流の流れ、および特に特定の持続時間後にサージアレスタに割り当てられるDC主電源の経路内の特定の電流閾値を下回ることのうちの少なくとも2つに基づくことができる。
【0023】
アークの発生、移動および/または燃焼持続時間は、スパークギャップの挙動を決定するのに特に適している。
【0024】
アークがどこでどのような形態で発生するか、およびアークがどの程度移動するかは、それぞれ使用されるスパークギャップのタイプに依存する。
【0025】
アークが発生していない場合、これは電流閾値に達していないという表示であり得る。この場合、閾値未満の電流強度を有する電流を消滅補助器によって処理しなければならないか否かを、更なる条件によって決定するだけで済む。
【0026】
アークの移動および/または燃焼持続時間は、インパルスまたは主電源続流の現在の電流強度について結論を引き出すことができるようにし、電流強度が高いほど、一般にアークのより速い移動およびより短い燃焼持続時間をもたらす。
【0027】
特に、アークが点火範囲内に留まることをトリッピング条件として決定することができる。これは、主電源続流が特定の電流閾値を下回ることに起因し、および/または、スパークギャップを消滅補助器によってサポートする必要がある、スパークギャップの経年劣化の影響に起因する場合がある。
【0028】
スパークギャップの点火補助器のトリッピングは、スパークギャップにおけるアークの発生の開始についての結論を引き出すことができるようにする。例えば、点火補助器は、ガスチューブアレスタを含むことができ、その点火は、点火補助器をトリップする信号として使用される。この目的のために、光センサおよび/または磁場センサを点火補助器に割り当てることができる。変圧器によって生成された電圧または電流負荷下での点火補助器の構成要素の電圧変化を、点火補助器のトリッピングを示す信号として使用することもできる。
【0029】
サージアレスタに割り当てられるDC主電源の経路内の電流の流れ(「主経路」とも呼ばれる)により、関連するインパルスまたは主電源続流をとにかく処理する必要があるかどうかまたは依然として処理する必要があるかどうかに関して結論を引き出すことができる。これは、サージアレスタがDC主電源の交差分岐で使用されるため、特に重要であり、したがって、交差分岐内の任意の電流は、通常、残留電流として分類されるべきであり、残留電流は、それが十分に高く十分に長い場合、システムまたは個人の保護のための下流側手段をトリップし、望ましくない主電源の遮断につながる可能性がある。
【0030】
低電流強度の主電源続流を確実に取り扱うことができるようにするために、特定の持続時間の後にサージアレスタに割り当てられるDC主電源の経路において特定の電流閾値を下回ることを、トリッピング条件として使用することができる。
【0031】
この点において、少なくとも2つのトリッピング条件は、特に異なって検出される異なるパラメータに基づくことができる。
【0032】
サージアレスタは、スパークギャップ内のアークを検出するための光センサ、DC主電源内の電流強度を測定するための電流センサ、および/または信号伝送態様で評価モジュールに接続される電圧センサを備えることができる。したがって、スパークギャップ内のアークは、光センサによって検出することができ、DC主電源内の電流強度は、電流センサによって測定することができ、および/または電圧は、少なくとも1つのパラメータを検出する電圧センサ、光センサ、電流センサおよび/または電圧センサによって測定することができ、それに基づいて少なくとも2つのトリッピング条件がチェックされる。
【0033】
サージアレスタのコストを更に低減するために、光センサ、電流センサ、および/または電圧センサは、閾値センサとして設計されてもよい。
【0034】
サージアレスタは、アークの発生、移動および/または燃焼持続時間を決定するための少なくとも1つの光センサを有することができる。光センサは、例えば、アークの存在および位置を特性スペクトルから導き出すことができるように、アークによって放射された光を検出するように設定される。
【0035】
特に、少なくとも1つの光センサは、消弧室内、点火領域内、および/またはホーンスパークギャップとして設計されたスパークギャップの走行領域内に配置することができる。
【0036】
サージアレスタは、アークによって放射された光を少なくとも1つの光センサに導くように設定される光学部品を有することも可能である。このようにして、光センサは、アークが発生する場所またはその近くに直接設置する必要がないため、特に柔軟に位置され得る。特に、そのような設計は、光センサによって実行される測定に対する干渉源の影響を最小限に抑えることができるように、光センサを絞り要素の背後に位置させることができるようにする。
【0037】
更に、サージアレスタは、アークによって生成される磁場を介してアークを検出および/または位置特定するように設定される少なくとも1つの磁場センサを備えることができる。
【0038】
また、電流センサは、スパークギャップの構成要素に割り当てられてもよく、電流センサによって検出された電流強度は、アーク、特にその位置に関する結論を引き出すために使用することができる。
【0039】
アークが消弧室に到達したことを検出するために、アークの部分電流を検出するためのプローブが消弧室内に存在してもよい。
【0040】
アークの挙動を評価する可能性に関しては、スパークギャップのスイッチング挙動の評価がスパークギャップを主電源から切り離す目的で定められる、ドイツ特許出願公開第102019210236号明細書、ドイツ特許出願公開第102019210234号明細書、ドイツ特許出願公開第102019101212号明細書およびドイツ特許出願公開第102019101200号明細書も参照されたい。
【0041】
特定の電流閾値は、スパークギャップおよび消滅補助器のそれぞれの設計に関して定められる。特に、特定の電流閾値は、特定の持続時間内にスパークギャップによって確実に消滅される最も低い電流強度を有する電流である。したがって、電流閾値は、消滅補助器の必要な最小消滅能力を決定する。
【0042】
一変形例では、特定の電流閾値が100A未満である。
【0043】
例えば、特定の電流閾値は、1~100Aの範囲内である。100A以上の電流強度を有する主電源続流の場合、従来のスパークギャップの消滅能力は十分に増大するため、消滅補助器の使用頻度はますます低くなる。
【0044】
特定の持続時間は、特に、システムまたは個人の保護のための下流側デバイスがトリップされ、および/またはDC主電源の下流側構成要素が損傷する前に、電流閾値を下回る電流がスパークギャップを通じて流れ得る最大時間に依存する。これは、用途または使用領域のそれぞれの場合に依存し得る。
【0045】
一変形例において、特にスパークギャップの点火から想定し得る主電源続流のスイッチオフまでの目標総スイッチオフ時間を定める特定の持続時間は、10msよりも短い。
【0046】
例えば、特定の持続時間は、1ms~10msの範囲内である。本発明に係るサージアレスタは、非経済的に高価な構成要素に頼る必要なく、そのような短い持続時間であっても、消滅補助器を介して特定の電流閾値を下回る主電源続流を確実に消滅させることを可能にする。
【0047】
消滅補助器は、ハイブリッド回路、スナバ回路、向流回路、能動共振回路および/または受動共振回路であってもよい。
【0048】
制御不能な電流に起因する損傷からスパークギャップおよび/または消滅補助器を保護するために、サージアレスタは、スパークギャップおよび/または消滅補助器の損傷につながるサージアレスタに割り当てられるDC主電源の経路に電流が発生する場合に、スパークギャップおよび/または消滅補助器をDC主電源から切り離すように設定されるバックアップ保護デバイスを有することができる。この点において、サージアレスタに割り当てられるDC主電源の経路に電流が発生し、その結果、スパークギャップおよび/または消滅補助器が損傷する場合、スパークギャップおよび/または消滅補助器をDC主電源から切り離すことができる。
【0049】
バックアップ保護デバイスは、能動的または受動的にトリップされ得る。
【0050】
例えば、バックアップ保護デバイスがスイッチを備え、該スイッチは、スパークギャップと直列に接続され、スパークギャップを損傷するサージアレスタに割り当てられるDC主電源の経路に電流が発生する場合に、スパークギャップをDC主電源から切断するように設定される。
【0051】
更に、バックアップ保護デバイスは、消滅補助器と並列に接続される短絡器を有してもよい。
【0052】
更なる態様は、トレーニングデータセットおよび/または過去にサージアレスタによって処理された主電源続流に関する情報を含むデータセットに基づいて、特定の電流閾値、特定の持続時間および/または考慮されたトリッピング条件を適合させるように設定される機械学習モジュールを評価モジュールが有することを提供する。したがって、サージアレスタの動作は、特に連続的に適合させることができる。したがって、使用される構成要素の経年変化の影響または変化する影響を考慮に入れることができ、あるいは補償することさえできる。全体として、これは、消滅補助器が必要に応じて常に作動されるようにする。
【0053】
更に、サージアレスタの動作のためのパラメータを連続的に調整することができる。パラメータは、とりわけ、トリッピング条件、閾値、および/または遅延時間を含むことができる。連続的な適応は、少なくとも1つのセンサによって記録されたセンサ値、または特に機械学習モジュールによる推定値に基づくことができる。この点において、とりわけ、消滅補助器を作動させるためのアルゴリズムを連続的に適合させ、したがって消滅補助器が必要に応じて作動されるようにする自己学習システムを記憶することができる。
【0054】
スパークギャップの予期される挙動に関する情報を考慮して、スパークギャップのみで特定の持続時間内にDC主電源で発生する主電源続流を消滅させることができるか否かを決定することができる。この情報は、評価モジュールに記憶することができる。記録された測定データ、特に少なくとも1つのセンサからの測定データは、スパークギャップのみで所定の持続時間内にDC主電源内で発生する主電源続流を消滅させることができるか否かを決定するために、記憶された情報とともに使用される。それに応じて、消滅補助器は、トリガされるまたはされない、すなわち作動されるまたは受動的なままにされる。
【0055】
消滅補助器は、スパークギャップと並列にまたはスパークギャップと直列に接続される別個のモジュールとして設計されてもよい。
【0056】
これにより、DC主電源におけるスパークギャップへの消滅補助器の特に柔軟な割り当てが可能になる。このようにして、既存のサージアレスタは、必要に応じて、消滅補助器を柔軟に後付けするか、またはそれを拡張することができる。
【0057】
更なる構成において、別個のモジュールは、スパークギャップ、特にガスチューブアレスタ、および消滅補助器の並列接続を備えることができる。そのような別個のモジュールは、更なる電流制限サージ保護デバイスと直列に容易に接続されて、更なる電流制限サージ保護デバイスをそれらの直流消滅能力(「DC消滅能力」とも称される)に関してアップグレードすることができる。特に、この構成は、更なる電流制限サージ保護デバイスを修正する必要なく、更なる電流制限サージ保護デバイスのDC消滅容量を改善することを可能にする。
【0058】
一変形例において、サージアレスタは、直列に接続された複数のスパークギャップを備え、トリガ可能な消滅補助器がスパークギャップのうちの少なくとも1つに割り当てられる。
【0059】
本発明の更なる特徴および特性は、限定的な意味で理解されることを意図していない例示的な実施形態の以下の説明および図面から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【
図1】本発明に係るサージアレスタの第1の実施形態を示す。
【
図2】本発明に係るサージアレスタの第2の実施形態を示す。
【
図3】
図2のサージアレスタの動作のフロー図を示す。
【
図4】本発明に係るサージアレスタの第3の実施形態を示す。
【
図5】
図4のサージアレスタの動作のフロー図を示す。
【
図6】本発明に係るサージアレスタの第4の実施形態を示す。
【
図7】本発明に係るサージアレスタの第5の実施形態を示す。
【
図8】本発明に係るサージアレスタの第6の実施形態を示す。
【
図9】本発明に係るサージアレスタの第7の実施形態を示す。
【
図10】本発明に係るサージアレスタの第8の実施形態を示す。
【
図11】本発明に係るサージアレスタの第9の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0061】
図1は、本発明に係るサージアレスタ10の第1の実施形態を示す。
【0062】
サージアレスタ10は、DC主電源12の一部であり、第1の導体(「L+/L-」と第2の導体(「(PE)M」、すなわち、中性または保護導体)との間の交差分岐内に配置され、それらに電気的に接続される。以下、交差分岐を「主経路」ともいう。
【0063】
サージアレスタ10は、DC主電源12内で発生する主電源続流を消滅させるまたは少なくとも制限するために使用されるスパークギャップ14を備え、その電流強度は特定の電流閾値以上である。更に、スパークギャップ14は、DC主電源12で発生するインパルス電流を伝導し(安全に)放電する役割を果たす。
【0064】
図示の実施形態において、スパークギャップ14は、ホーンスパークギャップとして設計され、ホーンスパークギャップは、アークを点火するための点火領域16と、アークを消弧するために点火領域から空間的に分離された消弧室18と、点火領域16と消弧室18との間に配置された走行領域20とを備える。走行領域20は、アークが消弧室18に到達して消弧されるように移動および/または拡張することができる走行レール22を有する。
【0065】
ホーンスパークギャップとして設計されたスパークギャップ14は単なる例示であり、任意の他のタイプのスパークギャップも本発明に従って使用することができることを理解すべきである。
【0066】
スパークギャップ14は、直列に接続される補助点火電極26、ガスチューブアレスタ28、およびバリスタ30を有する点火補助器24も有する。
【0067】
点火補助器24は、スパークギャップ14の保護レベルを下げる働きをする。
【0068】
ガスチューブアレスタ28内で発生するアークを検出するように設定される光センサ32も、ガスチューブアレスタ28に割り当てられる。
【0069】
更に、第1の電流センサ34は、点火補助器の経路内の電流の流れを検出するように設定される点火補助器24の経路に割り当てられる。
【0070】
第2の電流センサ35が主経路に割り当てられ、第2の電流センサ35は、第1の電流センサ34とは対照的に、主経路内の電流の流れを検出するように設定され、したがってスパークギャップ14が直接さらされる電流について記述することを可能にする。
【0071】
トリガ可能な消滅補助器36は、スパークギャップ14のバイパスとしてホーンスパークギャップと並列に接続され、特定の電流閾値を下回る主電源続流を消滅させるように設定される。言い換えれば、消滅補助器36は、スパークギャップ14だけでは十分な信頼性で消滅させることができない主電源続流を処理するために使用される。
【0072】
これは、スパークギャップ14が、特定の電流閾値を下回る電流強度を有する電流も消滅させることができないことを排除するものではない。むしろ、消滅補助器36は、そのような電流を消滅させるときにサージアレスタ10の信頼性を高めるように機能する。
【0073】
消滅補助器36のタイプは、それぞれ意図されたサージアレスタ10の動作モードに適合させることができる。例えば、消滅補助器36は、ハイブリッド回路、スナバ回路、向流回路、能動共振回路および/または受動共振回路である。更に、消滅補助器36は、ガスチューブアレスタまたはスパークギャップを備えることができる。
【0074】
消滅補助器36は、特に、スパークギャップ14と並列に接続された別個のモジュールとして設計される。
【0075】
ハイブリッド回路およびアクティブスナバ回路の場合、消滅補助器36が作動されると、主経路、すなわちスパークギャップ14に割り当てられた経路に対して少なくとも一時的に低抵抗の電流経路が接続され、その結果、主経路からの電流の流れが消滅補助器36の経路に転流し、割り当てられたスパークギャップ14内のアークが消弧される。消滅補助器36の低抵抗経路の電流は、一定時間後に再び遮断される。
【0076】
向流原理を使用するとき、および共振回路において、スパークギャップ14内の電流の少なくとも1つの人工ゼロ交差が誘導され、その結果、DC主電源12内の電流が消滅される。
【0077】
ハイブリッド回路(「ハイブリッド回路構成」とも称される)は、例えば独国特許出願公開第102007015933号明細書および独国特許出願公開第102016211628号明細書から知られており、一般に、スイッチング接点またはスパークギャップと並列に配置された低経路抵抗を有する強力な半導体に基づいている。半導体が接続されると、スイッチまたはスパークギャップ経路からの電流が、半導体に転流し、存在し得るアークを消弧する。転流の場合、半導体に電流が流れている間の電圧降下は、アーク放電を維持するために必要な電圧よりも低いことが必要である。転流時間は、とりわけ、半導体とスイッチまたはスパークギャップとの間のインピーダンスおよび結合インダクタンスの比によって影響を受ける。スイッチングギャップは、とりわけ、負荷レベル、絶縁距離、および使用される材料に依存する期間内に転流が完了した後にのみ固化する。半導体は、半導体が電流をオフにすることができ、スイッチオフ中に発生する電圧に起因して分離ギャップが再点火しない程度までスイッチングギャップが再固化するまで電流を運ばなければならない。半導体がスイッチオンされる持続時間は、時間制御することができる。
【0078】
スイッチオフ半導体として、いわゆる「IGBT」(「絶縁ゲートバイポーラトランジスタ」の略称)を用いることができる。しかしながら、要件の範囲内でオフにすることができる他の制御可能な構成要素も使用することができる。半導体をオフにするとき、例えば、スイッチングされる電流および主電源条件に応じてDC主電源12に非常に高いスイッチング電圧がしばしば発生し、これは更なる措置なしにスパークギャップ14の再点火をもたらす。
【0079】
したがって、ハイブリッド回路は、過電圧を制限するための様々な手段を有することができる。能動的制限手段および受動的手段をここで使用することができる。一般的な手段は、バリスタ、サプレッサダイオード、およびスナバ回路の並列接続である。半導体が十分に寸法決めされている場合、ハードカットオフを回避することによって過電圧を制限することができるが、これは半導体の電力消費を著しく増大させる。
【0080】
スパークギャップの場合、独国特許出願公開第102007015933号明細書によるスパークギャップのアーク電圧から半導体を制御するための電圧を提供することが有利である。
【0081】
他のタイプのスパークギャップと比較して非常に低いアーク降下電圧を有するガスチューブアレスタの場合、特にIGBTが半導体として使用される場合、半導体に必要な制御電圧が高すぎる可能性があるため、追加の労力がここで必要とされる。
【0082】
あるいは、MOSFET(「金属酸化物半導体電界効果トランジスタ」の略称)をハイブリッド回路に使用することができ、特に、比較的高価なIGBTの経路抵抗が、それぞれのサージアレスタ10のために取り扱われる電流および電圧において非常に高くなり、消滅補助器36の経路における信頼できる転流をもはや保証することができない場合に使用することができる。
【0083】
消滅補助器36は、消滅補助器36が評価モジュール38によってトリガされ得るように、信号伝送態様で評価モジュール38に接続される。
【0084】
本発明によれば、評価モジュール38は、スパークギャップ14のみでは特定の持続時間内に主電源続流を消滅させることができないという事実を特徴とする少なくとも2つのトリッピング条件が満たされる場合にのみ消滅補助器36をトリガするように設定される。
【0085】
この目的のために、評価モジュール38は、光センサ32ならびに電流センサ34および35から受信したセンサデータを利用することができ、その結果、評価モジュール38は、電流が主経路を通ってまたは点火補助器24の経路を通って流れるかどうか、いつ、どのくらいの時間および/またはどのレベルで流れるか、ならびにガスチューブアレスタ28内でアークが発生するかどうか、いつ、および/またはどのくらいの時間発生するかを検出する。
図1に示されたもの以外のタイプまたはセンサ配置が使用される場合、評価モジュール38は、これらのセンサから得られたセンサデータを適切に利用することができることが理解され得る。
【0086】
加えて、スパークギャップ14の予期される挙動に関する情報を評価モジュール38に記憶することができ、これにより、収集された測定データから、発生している主電源続流をスパークギャップ14のみによって消滅させることができるかどうか、または消滅補助器36を作動させなければならないかどうかを決定することが可能になる。
【0087】
評価モジュール38は、アナログ回路またはマイクロプロセッサを含むことができる。
【0088】
規定電流閾値は、例えば、100A未満である。このような電流レベルでは、従来のホーンスパークギャップにおけるアークの走行挙動は制限されているため、この電流閾値を下回る主電源続流がスパークギャップ14によって、または少なくとも特定の持続時間内に消滅されるとは必ずしも仮定できない。
【0089】
特定の持続時間または総スイッチオフ時間は、例えば10ms未満である。
【0090】
特定の電流閾値および特定の持続時間は、それぞれ使用されるスパークギャップ14および消滅補助器36に適合されなければならず、前述した値以外の値も可能であることが理解される。しかしながら、本発明に係るサージアレスタ10は、評価モジュール38によって考慮されるトリッピング条件がサージアレスタ10のそれぞれの構成要素に柔軟かつ正確に適合されることを可能にし、その結果、DC主電源12で発生する主電源続流を確実に消滅させることができる。
【0091】
本発明に係るサージアレスタ10の更なる実施形態が以下でより詳細に説明され、第1の実施形態または前述の実施形態との違いのみがそれぞれ説明される。同一の符号は同一または機能的に同一の構成要素を示し、既に説明した各実施形態の説明を援用する。様々な実施形態の要素は、そのような組み合わせがサージアレスタ10の記載された動作モードと矛盾しない限り、所望に応じて互いに組み合わせることができることが理解される。
【0092】
図2は、本発明に係るサージアレスタ10の第2の実施形態を示す。
【0093】
第2の実施形態では、ホーンスパークギャップ内のアークの発生および挙動を決定するために、スパークギャップ14に更なる手段が例示的に割り当てられる。
【0094】
この目的のために、スパークギャップ14は、2つの光センサ39と、磁場センサ40と、消弧室18内のアークの部分電流を検出するために消弧室18に割り当てられたプローブ42とを有する。言い換えれば、1つ以上のセンサからの測定データを使用して、アーク挙動を評価することができる。
【0095】
光センサ39のうちの一方は、点火領域16に割り当てられ、その結果、この光センサは、特に、アークが発生したかどうか、およびアークが点火領域16を出るか、またはそこに留まるかどうかに関する情報を提供することができる。
【0096】
光センサ39のうちの他のセンサは、走行領域20に割り当てられ、特に、アークの位置、移動および拡張に関する情報を提供する。
【0097】
磁場センサ40は、アークによって引き起こされる磁場を検出するように構成され、このようにしてアークの挙動に関する情報も提供する。
【0098】
プローブ42は、アークが消弧室18に到達したか否か、および、いつ到達したかを検出するために使用され得る。
【0099】
特に単純な実施形態では、プローブ42は、電位差を検出するように設計することができる。プローブ42はまた、消弧室18内でプローブ42に対して部分アークを形成することができるように設計することができ、プローブ42は、部分アークを介して流れる電流の電流強度を決定するように設定される。
【0100】
第2の実施形態において、一方の走行レール22は更に遮断部44を有し、これは、アークが消弧室18への経路上で遮断部44の背後に位置する走行レール22の部分に移動した後にのみ電流または電位を予想することができ、その結果、この電流または電位は、対応するセンサによって(容易に)検出することができるため、アークの位置の決定を更に単純化する。
【0101】
加えて、第2の実施形態における評価モジュール38は機械学習モジュール46を有し、その機能は後により詳細に説明される。
【0102】
スパークギャップ14内のアークの点火、動き、したがってその動作モードを評価するために、様々なタイプのセンサまたはプローブおよびそれらの組み合わせを使用することができることが理解される。とりわけ、光センサ、磁場センサ、電流および/または電圧センサをこの目的のために使用することができ、これらのセンサは、
図2に関連して説明したものとは異なるように配置することもできる。
【0103】
点火補助器24に割り当てられた回路または主回路内のセンサの使用に応じて、必要なセンサの数はまた、1つまたは2つのセンサに限定することができ、したがって、スパークギャップ14内のアーク運動に関する情報を取得するのに必要な労力は少ない。
【0104】
以下、
図3に示すフロー図に基づいて、第2の実施形態に係るサージアレスタ10の動作態様についてより詳細に説明する。
【0105】
DC主電源12の通常動作中、本発明に係るサージアレスタ10は待機モード(
図3のステップS1参照)にある。
【0106】
DC主電源12に十分に高い過電圧が発生すると、電流の流れが点火補助器24および補助点火電極26を介してスパークギャップ14に導入される。インパルスまたは主電源続流の結果として、点火領域16においてアークが点火され得る(
図3のステップS2参照)。
【0107】
示されている更なるステップは、点火されたアークが消弧室18に入り、そこで消弧され得るかどうか、または消滅補助器36が作動されなければならないかどうかを評価するのに役立つ。
【0108】
まず、1msの第1の遅延時間を待ってから、点火されたアークの挙動を評価する(
図3のステップS3参照)。このようにして、スパークギャップ14のみで発生している主電源続流を処理することができるが、消滅補助器36が不必要に直接オンにされることが回避される。
【0109】
次いで、評価モジュール38は、アークの走行挙動を評価するために使用される(
図3のステップS4参照)。この目的のために、評価モジュール38は、サージアレスタ10のセンサからの全ての情報、すなわち、特に、光センサ32および39、電流センサ34および35、磁場センサ40、ならびにプローブ42からの情報にアクセスすることができる。
【0110】
アークが少なくとも走行し始める、すなわち、点火領域16から消弧室18の方向に移動し始めると決定される場合、4msの第2の遅延時間が待機される(
図3のステップS5参照)。第2の遅延時間は、スパークギャップ14の通常の消滅時間に対応するように選択され、この場合、第2の遅延時間は、インパルス電流を安全に放電し、通常は特定の電流閾値を超える主電源続流を消滅させ、またはDC主電源12内の個人およびシステム保護のための下流側デバイス(図示せず)がトリップされないレベルまで主電源続流を少なくとも制限する。第2の遅延時間の間、消滅補助器36は、その構成要素が瞬間的なインパルスまたは主電源続流にさらされないようにオンにされない。
【0111】
第2の遅延時間が経過した後、主経路を介して流れる電流、すなわちスパークギャップ14を介して流れる電流のレベルが評価される(
図3のステップS6参照)。
【0112】
この電流が特定の電流閾値を下回る電流強度、すなわちこの場合には100Aを下回る電流強度を有する場合、既に走行しているアークは、スパークギャップ14のみによって十分な程度および十分な時間に制限され、消滅補助器36は作動されないと想定される。したがって、サージアレスタ10は待機モードに戻る。
【0113】
しかしながら、電流が第2の遅延時間後に電流閾値を上回っている場合には、スパークギャップだけでは、発生している主電源続流を特定の持続時間内(この場合は10ms以内)に十分な程度まで処理することができず、
図3において消滅補助器36を更に作動させることができると想定される(ステップS7参照)。
【0114】
この手順は、消滅補助器36の誤ったトリッピングのリスクを排除または少なくとも低減することができる。
【0115】
評価モジュール38が、点火されたアークが少なくとも作動を開始していないと既に決定している場合、主経路を介して流れる電流の評価は、直ちに、すなわち第2の遅延時間を待つことなく行われる(
図3のステップS8参照)。
【0116】
この時点で主電源続流が既に特定の電流閾値を下回っていると決定された場合、消滅補助器36は、特定の持続時間内に可能な限り迅速かつ安全に主電源続流を制限するために直ちに作動される(
図3のステップS7参照)。
【0117】
電流強度が特定の電流閾値を上回る場合、消滅補助器36は、過度の電流による潜在的な負荷から消滅補助器36の構成要素を保護するために直ちに作動されない。代わりに、6msの第3の遅延時間が最初に待機され、次いで、例えば電流センサ35および/または光センサ39を使用して、第3の遅延時間の後に主経路を介して電流がまだ流れているかどうかを評価するためにセンサが使用される(
図3のステップS9参照)。換言すれば、スパークギャップ14のみでその間に第3の遅延時間内にアークを既に消弧したかどうかがチェックされる。
【0118】
この場合、サージアレスタ10は待機モードに戻る。しかしながら、主経路を介して流れる電流が依然として検出されている場合には、消滅補助器36を作動させてスパークギャップ14をサポートすることもでき、したがって、特定の持続時間内に主電源続流を依然として確実に消滅させることができるように試みることができる。
【0119】
ステップS6またはステップS9の後に特定の電流閾値よりも大きい電流レベルが検出されたときに消滅補助器36の作動が行われるべき、またはむしろ回避されるべき程度は、スパークギャップ14、消滅補助器36、および任意選択的に存在する更なる内部および外部保護手段の過負荷容量の設計に依存する。
【0120】
上記のシーケンスから、第1の遅延時間、第2の遅延時間および第3の遅延時間、ならびに第1の遅延時間および第2の遅延時間の合計は、特定の持続時間よりも短くなるように選択されなければならないことになる。
【0121】
しかしながら、特定の電流閾値、特定の持続時間、および第1から第3の遅延時間は、必要に応じて調整することができることが理解される。
【0122】
したがって、評価モジュール38は、特に、評価モジュール38内にデータセットの形態で記憶されている、サージアレスタ10によって過去に処理された主電源続流に基づいて、サージアレスタ10の動作に使用されるトリッピング条件、閾値、および/または遅延時間を適合させるように設定される。
【0123】
この目的のために、評価モジュール38は、データセットに基づいてそれぞれのパラメータを適合させるように設定された機械学習モジュール46にアクセスすることができる。このようにして、サージアレスタ10の動作モードを、サージアレスタ10の設置場所およびその耐用年数にわたってDC主電源12の実際の状態に適合させることが可能である。言い換えれば、機械学習モジュール46は、連続的な適応が行われるようにする。
【0124】
特に好適には、このようにして、特定の持続時間を短縮することができるかどうか、および/または消滅補助器36が絶対的に必要な場合にのみ確実にオンになるかどうかがチェックされる。
【0125】
特に、適応は、ユーザの介入を省くことができるように自動的に行われる。
【0126】
図3に示すフローチャートは、使用されるトリッピング条件および基準の一例にすぎないことを理解すべきである。これらは、当然ながら、スパークギャップ14、点火補助器24、消滅補助器36、および利用可能かつ検討中のセンサの特定の設計に適合させることができる。例えば、遅延時間、特定の持続時間、および特定の電流閾値に加えて、評価モジュール38は、サージアレスタ10の挙動を特徴付けるエネルギー、勾配、電荷、インピーダンス、または他の変数を利用することもできる。
【0127】
消滅補助器36に基づく追加の測定変数、例えば、消滅補助器36を介して流れる電流の電流強度またはその勾配を使用することも可能である。
【0128】
電流制限が既に行われているまたは電流が依然として増大している程度に関して、スパークギャップ14を通る電流強度の増大から情報を得ることができる。この情報は、消滅補助器36を早期にオンにすることが理にかなっている程度、または電流の増大に起因してオンにされた場合に過負荷のリスクがあるかどうかについての結論を引き出すために使用することができる。
【0129】
図4は、第1の実施形態と実質的に同様の第3の実施形態を示す。
【0130】
しかしながら、サージアレスタ10は、スイッチング素子50および作動可能な短絡器52を有するバックアップ保護デバイス48も有する。スイッチング素子50のみを設けることも可能である。
【0131】
スイッチング素子50は、少なくとも一度作動させることができ、必要に応じてスパークギャップ14を残りのDC主電源12から安全に切断するためのスイッチまたはヒューズとして機能する。
【0132】
基本的には、スイッチング素子50は、例えば時間電流特性や短絡スイッチングに基づいてトリガ可能な受動型スイッチング素子であってもよい。
【0133】
短絡器52は、消滅補助器36と並列に接続され、短絡器52が作動したときにスパークギャップ14および消滅補助器36を通過する電流を放電するために使用される。
【0134】
スイッチング素子50および短絡器52は、評価モジュール38および消滅補助器36に信号伝送方式で接続され、評価モジュール38および消滅補助器36の両方によってトリップすることができる。
【0135】
スイッチング素子50および/または短絡器52は、例えば摩耗、加熱、圧力および/または溶融積分に反応することができるスパークギャップ14の更なるデバイスによってトリップされるように設定されることも可能である。
【0136】
これに代えてまたは加えて、消滅補助器36に過負荷がかかるリスクがある場合、スイッチング素子50および/または短絡器52をトリップすることができる。
【0137】
図5は、第3の実施形態に係るサージアレスタ10の可能な動作モードを説明するフロー図を示す。
【0138】
DC主電源12の通常動作中、本発明によるサージアレスタ10は待機モードにある(
図5のステップS10参照)。
【0139】
スパークギャップ14をトリップするDC主電源12に十分に高い過電圧が発生すると、アークが点火領域16で点火される(
図5のステップS11参照)。これは、電流センサ34を介して決定することができるように、点火補助器24の経路を介して電流が流れるという事実によって検出することができる。
【0140】
示されている更なるステップは、点火されたアークが消弧室18に入り、そこで消弧され得るかどうか、消滅補助器36が作動されなければならないかどうか、またはバックアップ保護デバイス48が作動されなければならないかどうかを評価するのに役立つ。
【0141】
まず、主経路を流れる電流が電流センサ35によって測定され、評価モジュール38において評価される前に、7msの第1の遅延時間が待機される(
図5のステップS12,S13参照)。
【0142】
第1の遅延時間は、スパークギャップ14が特定の電流閾値、この場合は100Aを超える任意の主電源続流を確実に制限するまたは消滅させることができるべき持続時間に対応するように選択される。
【0143】
主経路を介して流れる電流が第1の遅延時間後に特定の電流閾値を下回ると決定された場合、消滅補助器36が作動されて、特定の持続時間内に発生する主電源続流を確実に消滅させる(
図5のステップS14参照)。
【0144】
しかしながら、主経路を介して流れる電流が第1の遅延時間の後でさえ電流閾値を上回る電流強度を有する場合、バックアップ保護デバイス48(
図5のステップS15参照)、すなわちスイッチング素子50および/または短絡器52がトリップされる。
【0145】
ステップS12の後-電流が流れていない場合-サージアレスタは、ステップS10に従って待機モードに自動的にリセットされることが理解される(
図5には明示的に示されていない)。
【0146】
図6は、直列に接続された複数のスパークギャップ14を有する本発明に係るサージアレスタ10の第4の実施形態を示し、消滅補助器36は、バイパスとしてスパークギャップ14のうちの1つと並列に接続されている。
【0147】
消滅補助器36は、好ましくは、アースに近いスパークギャップ14、すなわち、回路の観点から第2の導体(「(PE)M」に最も近く配置されたスパークギャップ14に割り当てられる。
【0148】
図示の実施形態では、スパークギャップ14の全ては、前述のようにホーンスパークギャップである。しかしながら、スパークギャップ14のタイプの任意の組み合わせも使用できることが理解される。
【0149】
サージアレスタ10内の幾つかのスパークギャップ14の使用は、更に高い電圧を制御することができ、および/または主電源続流を消滅させるための性能を更に改善するのに役立つ。しかしながら、そのような構成では、消滅補助器36がトリップすると直ぐに、スパークギャップ14内で発生する全ての部分アークが消弧されるため、直列接続されたスパークギャップ14のうちの一方のみに消滅補助器36を設ければ十分である。
【0150】
先に提示された実施形態に対するこの実施形態の利点は、消滅補助器36がDC主電源12に恒久的に直接接続されないことである。これは、少なくとも他のスパークギャップ14がトリップすると直ぐに、したがってサージアレスタ10の全体的な構成が作動するときにのみ当てはまる。このようにして、DC主電源12への直接接続の場合よりも低い要件または負荷に耐えることができなければならない構成要素を消滅補助器36に使用することができる。
【0151】
図7は、
図6に示す実施形態に実質的に対応する、本発明に係るサージアレスタ10の第5の実施形態を示す。
【0152】
しかしながら、第5の実施形態では、バックアップ保護デバイス48はスイッチング素子50を有さず、トリガ可能な短絡器52はDC主電源の相導体に直接電気的に接続され、その結果、サージアレスタ10の全てのスパークギャップ14は、トリップすると直ぐに短絡器52によってブリッジされる。
【0153】
この実施形態では、短絡器52は、特にスパークギャップ14および/または消滅補助器36のうちの1つ以上の挙動に関する情報に基づいてトリップされるように適合させることができる。
【0154】
図7に示すサージアレスタ10の構成は、サージアレスタ10の上流に配置された過電流保護要素(図示せず)を介してサージアレスタ10の切断が更に保証される場合に特に十分である。
【0155】
図8は、
図7の実施形態に実質的に対応する、本発明に係るサージアレスタ10の第6の実施形態を示す。
【0156】
しかしながら、消滅補助器36がバイパスとして割り当てられるスパークギャップ14は、ホーンスパークギャップではなく、ガスチューブアレスタである。言い換えれば、サージアレスタ10は、複数の異なるように設計されたスパークギャップ14を備える。
【0157】
このようにして、一方では関与する構成要素の複雑さおよびコストと、他方では十分なレベルの保護との間で最適な妥協を達成することができる。
【0158】
図8に見られるように、光センサ32がガスチューブアレスタに割り当てられ、それによって、アークがガスチューブアレスタの内部に形成されているかどうか、および形成されている場合にはどのくらいの時間かを決定することができる。
【0159】
したがって、この実施形態では、評価モジュール38は、ガスチューブアレスタ内のアークの発生および/または燃焼持続時間、主経路内の電流の流れ、および主経路内の電流閾値を超えるかまたは下回る電流の流れを、消滅補助器36のトリッピング条件として使用することができる。
【0160】
図9は、特に単純な設計を特徴とするサージアレスタ10の第7の実施形態を示す。
【0161】
第6の実施形態と同様に、第7の実施形態は、複数のスパークギャップ14を有し、スパークギャップ14の一方は、点火補助器24を備えたホーンスパークギャップとして設計され、他方のスパークギャップ14は、ガスチューブアレスタとして設計される。消滅補助器36は、バイパス内のガスチューブアレスタに割り当てられる。しかしながら、この実施形態では、ガスチューブアレスタは光センサによって監視されない。
【0162】
代わりに、本明細書に示すように、閾値送信機54を点火補助器24の経路に配置することができ、これは、例えば補助点火電流閾値を超えるか下回るときに点火補助器の作動を示すことができる。基本的に、閾値送信部54は、磁界の検出に基づいて動作することもできる。特に単純な実施形態では、閾値送信機54はリード接点とすることができる。
【0163】
電流センサ35も存在し、この電流センサ35は、主経路に割り当てられ、単純な閾値センサとして設計することもできる。
【0164】
無傷のスパークギャップ14の挙動が知られている場合には、特定の電流閾値を超えるか下回るかに基づいて、場合によっては主経路内の単一のセンサのみに基づいて、消滅補助器36を単にオンにしなければならないか否かを結論付けることが可能である。
【0165】
特に、この実施形態では、最初の待機時間後にスパークギャップ14の点火および特定の電流閾値を下回る電流のみが、トリッピング条件として必要とされる。
【0166】
しかしながら、第1の待機時間は、十分に長く選択されなければならず、これは、電流強度の最小閾値が、主電源続流の消滅プロセス中に数回アンダーシュートされ得るからである。
【0167】
また、
図9の配置は、ホーンスパークギャップ内のアークの走行挙動に関する情報を使用する必要なく、主電源続流を消滅させるための総時間を短縮することを可能にし、これは、ホーンスパークギャップを通るアークがまだ存在するにもかかわらず、消滅補助器36がオンに切り替えられた場合であっても、消滅補助器36に作用する電流が少なくとも制限され、消弧室18の消滅機能が損なわれず、更には消滅補助器36によってサポートされないためである。
【0168】
原理的には、トリッピング条件を決定する際に電流強度の考慮を完全に省略することも可能である。この場合、アークが発生した時間および特定の持続時間の経過のみがトリッピング条件として使用される。したがって、消滅補助器36は、アークの点火後に特定の持続時間が経過すると直ぐに必然的にトリガされる。このような解決策は、DC主電源12の故障電流がその後消滅補助器36に供給されないことが保証される場合に有用であり得る。これは、発生するインパルス電流が(安全に)放電されるとともにこの期間内に消滅補助器36を損傷する可能性がある主電源続流が確実に制限されるまたは消滅されるように、あるいは
図6から
図9に示すように消滅補助器36が全てのスパークギャップ14の全体に対してバイパスを形成しない場合には、例えば
図1、
図2および
図4に係る実施形態の場合のように、十分に長い第1の遅延時間および/または特定の持続時間を選択することによって達成することができる。
【0169】
図1、
図2、および
図4による実施形態では、消滅補助器36には、起動中に見込まれる主電源続流が取り込まれる。一方では、これは、不正確な作動を防止するための追加の手段を必要とする可能性があり、場合によっては消滅補助器36の過負荷に対する保護も必要とする可能性があり、他方では、早期の作動はまた、スパークギャップ14の消滅機能を乱す可能性があり、スパークギャップ14への負荷を更に増大させる可能性がある。
【0170】
スパークギャップ14が直列に接続される場合、スパークギャップ14による高電流の消滅に対する消滅補助器36の作動の影響が低減される。更に、消滅補助器36に過負荷がかかるリスクを低減することができる。
【0171】
特に、消滅補助器36の過負荷保護を提供することができ、これにより、可逆的な過負荷遮断が保証される。
【0172】
図8および
図9による実施形態では、主電源続流の制限は、ほぼ専ら消弧室18を有するスパークギャップ14によって実現され、すなわち、ガスチューブアレスタおよび消滅補助器36を有するスパークギャップ14によって実現されない。したがって、消滅補助器36の不正確な作動は、高電流での消滅能力の低下をもたらさない可能性がある。その結果、前述したように、使用されるセンサの数および/または種類、ならびにセンサによって収集された測定データの評価に関する労力を低減することができる。同時に、使用される構成要素の一部の追加の労力をほとんど伴わずに、サージアレスタ10の挙動の時間制御における高度な柔軟性を達成することが可能であり、これにより、特に全体的な停止時間を短縮することが可能になる。
【0173】
また、消滅補助器36が、サージアレスタ10の消滅能力、すなわち、サージアレスタ10の消滅能力閾値を超える電流および/または電流勾配が発生した場合に、消滅補助器36を自動的にオフにするように設定された統合監視機能を有することも可能である。
【0174】
これは、IGBTまたはMOSFETなどの半導体が消滅補助器36に使用される場合、特に大きな追加の努力なしに可能である。
【0175】
この構成では、評価モジュール38は、例えば消滅補助器36をトリップするための適合された流れパターンによって、消滅補助器36の自動停止後に適合された態様で一時的に次の消滅試行を実行するように設定することができる。例えば、一時的な次の消滅試行における消滅補助器36のトリッピングは、専ら時間間隔に基づいて、特に以前よりも短い時間間隔で実行することができる。
【0176】
図8および
図9で説明したガスチューブアレスタおよび並列消滅補助器36の配置は、前述したように、上流のスパークギャップ14にセンサを直接挿入することなく動作させることもできる。これにより、サージアレスタ10を他の続流制限アレスタまたはスパークギャップと直列に動作させることがより容易になる。
【0177】
図9はまた、ここではガスチューブアレスタとして設計された電流センサ35、消滅補助器36、評価モジュール38、およびスパークギャップ14のうちの1つが別個のモジュール55の構成要素であることを概略的に示している。
【0178】
例えば、別個のモジュール55の構成要素は、別個のハウジング(図示せず)に収容され、これは特に、
図9による実施形態で使用されるような比較的単純なセンサ技術に起因して可能である。
【0179】
従来のサージアレスタ10またはスパークギャップ14では、そのような別個のモジュール55は、DC消滅能力を高めるために必要に応じて直列に接続することができる。
【0180】
これらのデバイスとの協働は、主電源動作中に1ms未満の公称範囲での別個のモジュール55の作動後の消滅補助器36との短いスイッチオフ時間のために、容易に考慮に入れることができる。これにより、DC主電源のACシステム用に実際に設計された電流制限サージ保護デバイスを広範囲の用途にわたって動作させることが可能になる。
【0181】
主電源続流制限のためのホーンスパークギャップの使用に加えて、スタックされたスパークギャップ、幾つかのガスチューブアレスタの直列接続、またはいわゆるラダックスフロースパークギャップも使用することができ、これにより、流れおよび圧力の蓄積によって電流が制限される。更に、バリスタまたはサプレッサダイオードとの直列接続も可能である。スパークギャップ14としてこれらの電流制限デバイスの組み合わせとの直列接続も可能である。
【0182】
このような組み合わせは、サージアレスタ10が公称電圧よりも高い電圧で一時的に動作する主電源に使用される場合に特に有利であり、この場合、公称電圧用に設計された電流制限は、応答するときに十分ではない。このような構成は、サージアレスタ10の個々の構成要素の経年劣化の影響を打ち消すために、および/またはサージアレスタ10の構成要素が低保護レベルを達成するために動作電圧に対して既に小型化されている場合にも有利である。
【0183】
図10は、本発明に係るサージアレスタ10の第8の実施形態を示す。
【0184】
第8の実施形態では、サージアレスタ10は、複数のスパークギャップ14を再び備え、その一方はホーンスパークギャップとして設計され、他方はガスチューブアレスタとして設計され、評価モジュール38および消滅補助器36は、ガスチューブアレスタと並列に接続され、ガスチューブアレスタに割り当てられる。
【0185】
この例示的な実施形態では、消滅補助器36は、スナバ回路と向流回路との組み合わせであり、半導体スイッチング素子56およびコンデンサ58を有する。
【0186】
半導体スイッチング素子56は、サイリスタとして設計されている。
【0187】
コンデンサ58は、DC主電源12の導体に接続され、コンデンサ58を充電するように設定された充電回路60に接続されている。
【0188】
サージアレスタ10は、例えばリードセンサとすることができる磁場センサ40も有し、ガスチューブアレスタが発火した場合に評価モジュール38を待機状態にするように設定される。
【0189】
主経路に割り当てられた電流センサ35は、主経路における電流閾値のアンダーショットを検出し、この情報を評価モジュール38に送信するように設定される。
【0190】
異なる数のセンサ、他の種類のセンサ、および/またはセンサ配置を使用して、主経路内の電流の流れを監視することもできることが理解される。
【0191】
ガスチューブアレスタの予想される消滅挙動に関する情報は、評価モジュール38に記憶され、該情報は、最も単純な場合には、磁場センサ40および/または電流センサ35から受信された信号の所定のシーケンスおよび時間間隔のみを含む。
【0192】
この情報をトリッピング条件として、評価モジュール38は、電流が特定の電流閾値を下回る電流強度で主経路を通って流れるときに半導体スイッチング素子56を制御するように設定される。
【0193】
これにより、コンデンサ58は、半導体スイッチング素子56およびガスチューブアレスタを介して放電される。本発明によれば、コンデンサ58は、放電電流がまだ遮断されていないガスチューブアレスタの両端の電流と反対方向を有するように、充電回路60によって事前に充電されている。
【0194】
したがって、電流のゼロ交差は、一般に、向流によってガスチューブアレスタ、すなわちスパークギャップ14内に強制され、その結果、直列接続されたスパークギャップ14内の電流は全体として消滅される。この目的のために、向流の電流レベルは、ガスチューブアレスタを通る電流の瞬時値の量に少なくとも等しくなければならない。
【0195】
この消滅補助器36の提案された適用例では、対向電流を生成するのに必要な労力は、数10kAの範囲の電流強度を有することができる主電源の見込まれる電流の場合よりも、実質的に100Aの電流強度を有する小型または既に厳しく制限された主電源続流の場合の方が著しく低い。
【0196】
コンデンサの単純な放電に加えて、向流は、他の既知の原理を使用して、例えば変圧器ベースまたはパルス態様で生成することもできる。
【0197】
消滅補助器36として共振回路(「同調回路」とも称される)を使用する場合、
図10に示す構成のコンデンサ58をいわゆるRLC素子(抵抗-誘導-コンデンサ)に置き換えることが可能であり、振動により両方向に電流が流れることが可能でなければならない。
【0198】
向流原理とは対照的に、コンデンサの充電を使用して、例えば低電流でアークを消弧することもできる。この場合、コンデンサは、少なくとも2つのトリッピング条件に達すると、例えば半導体によってオンになる。
【0199】
スイッチオンおよびスイッチオフ容量を有するスイッチの代替として、より低い経路抵抗を有する安価な半導体をアクティブスナバ回路に使用することができ、アクティブスナバ回路は低電圧で制御することもできる。この場合、能動的なスイッチオフ挙動なしに消滅補助器36を実装することも可能である。
【0200】
消滅補助器36によってオフに切り替えなければならない少ない主電源続流の場合、一致した小型コンデンサの能動接続は、アークを消弧するのに十分であり得る。コンデンサの漸進的な充電はまた、電圧上昇の急峻さを制限し、スパークギャップ14の再点火のリスクを大幅に低減する。
【0201】
十分に短い全体的なスイッチオフ時間を達成するために、コンデンサが主電源電圧に完全に充電されるのを防ぐことが有用であり得る。コンデンサのサイズは、負荷に適合するように選択することもできる。これは、例えば、充電電圧および/または時間に応じて更なるコンデンサのカスケード式スイッチオンによって可能である。このようにして、消滅の成功および実際の需要に関する持続時間に関して、消滅プロセスを最適化することができる。そのような構成の動作のために、スイッチング動作後の充電されたコンデンサの受動的または能動的放電、および必要に応じて追加の過電圧保護も有用である。
【0202】
スパークギャップ14内の低電流での共振回路の簡単な接続に加えて、RLC素子に使用されるエネルギー貯蔵デバイスの予備充電または誘導結合による振動の能動的励起もまた、共振回路調整において提供することができる。
【0203】
図11は、少なくとも1つのアークチャネル62内の圧力上昇またはガス流に基づいて動作するスパークギャップ14を使用する、本発明に係るサージアレスタ10の第9の実施形態を示す。
【0204】
そのようなスパークギャップ14は、例えば、主電極64間のアークチャネル62内に硬質ガスを形成することによって、高圧、強いガス流またはそれらの組み合わせを発生させる。これは、アークの高いアーク電圧を生成することができ、アークを制限および消弧することができる。
【0205】
既に前述したように、そのような電流制限スパークギャップ14は、いわゆるラダックス流の原理に従って、更なる変更なしに、既に説明した消滅補助器36を用いて別個のモジュール55と直列に接続することができる。
【0206】
しかしながら、ホーンスパークギャップと同様に、スパークギャップ14の中または上への一体化もわずかな修正によって可能である。スパークギャップ14の電流制限効果を利用するために、主接続部に加えて、消滅補助器36の接続部のために第3の可能な接続部が必要とされる。消滅補助器36は、主接続部と別の電位接続部との間に接続される。電位接続部は、アークチャネル62に接触し、アーク電圧の一部のみをタップする。中間電極またはトリガ電極などの現在の部品を電位接続として使用することができる。しかしながら、追加の電極を導入することも可能である。
【0207】
図11は、直線状に延びるアークチャネル62を示す。しかしながら、アークチャネル62の他の幾何学的構成も考えられる。
【0208】
アークチャネル62は、硬質ガス放出材料66によって囲まれている。
【0209】
光センサ39がアークチャネル62内に配置され、それによってアークの発生および燃焼持続時間を検出することが可能である。
【0210】
スパークギャップ14は、補助点火電極26を有する点火補助器24を有し、これを介してアークチャネル62内のアークを点火することができる。
【0211】
更に、追加の接続電極68が設けられ、これは、消滅補助器36に導電態様で接続される。
【0212】
図示の実施形態では、消滅補助器36は、
図10と同様の向流回路として設計されている。しかしながら、前述した他のタイプの消滅補助器36も原則として使用することができる。
【0213】
スパークギャップ14が作動されると、接続電極68は、主電極64間に形成されるアークと接触し、その結果、接続電極68の接触面積に関して、アークの2つの部分面積が主電極に対してそれぞれ存在する。
【0214】
図11に示す配置により、消滅補助器36は、スパークギャップ14と並列に接続される必要はなく、またDC主電源12に直接接続されていないので、電流が消滅補助器36を介して流れ、それによってDC主電源12を損傷する可能性を確実に排除することができる。
【0215】
消滅補助器36の向流回路は、部分アークのうちの1つを消弧し、その結果、アーク全体も停止する。向流原理を選択することの別の利点は、転流の必要性に起因して消滅する前に電流制限が減少しないことである。
【0216】
消滅補助器36の作動は、評価モジュール38を介して行われ、評価モジュール38は、任意選択的に、磁場センサ40、電流センサ35、光センサ39、および/または電圧センサ70から受信したデータを利用して、スパークギャップ14が単独では特定の持続時間内に主電源続流を消滅させることができないという事実の特徴である少なくとも2つのトリッピング条件を識別することができる。この実施形態では、センサのタイプ、数、および/または配置はまた、
図11に示す変形例とは異なり得ることが理解される。
【0217】
転流原理を有する消滅補助器36を使用する場合、幾つかの要因を考慮に入れなければならない。
【0218】
圧力上昇またはガス流に基づくスパークギャップ14の電流制限効果は、負荷に依存する。圧力レベルは、とりわけ、インパルス電流および/または主電源続流の電流レベルに依存する。このように、消滅補助器36の電流閾値を下回る少ない主電源続流を伴うDC主電源12における低エネルギー外乱変数の場合にそのようなスパークギャップ14が作動される場合、圧力上昇は十分に短い時間内に発生することができず、その結果、発生する主電源続流を常に消滅または制限することができない。しかしながら、この場合、主電源続流が消滅補助器36の消滅限界よりも低いため、消滅補助器36の作動は常に成功する。
【0219】
しかしながら、電流が迅速かつ独立して消滅することなく、より大きな電流が消滅限界未満に制限される場合、ハイブリッド原理に基づく単純な消滅補助器36では、アークの一部の低抵抗短絡が電流を再び上昇させ、その消滅限界を超えるというリスクがあり得る。
【0220】
したがって、そのような消滅補助器36を作動させることによって電流制限を著しく低減しないように注意しなければならない。より低い電圧降下(例えば、より短い長さまたはより低い電界強度に起因する)でアークの一部を消弧し、消弧されたアークの領域を、例えばカバーまたは流れの影を使用して、更なる既存のアークから密封することが有利であり得る。
【0221】
これらのスパークギャップにおける比較的強い電流制限により、アークの各部分の部分電圧は非常に高い。これはまた、消滅補助器36の電気回路の高インピーダンスによって、スパークギャップ14から消滅補助器36への電流の完全な転流を可能にする。受動的もしくは能動的なインピーダンスまたはその連続的な適応もしくは非線形特性の統合により、電流制限への影響は低いままであり、消滅補助器36の電流許容能力および遮断能力が制限されているにもかかわらず、消滅プロセスを達成することができる。
【0222】
それにもかかわらず、消滅補助器36の過負荷が発生した場合、消滅補助器36の経路は、例えば、IGBTなどの半導体によって、消滅補助器36における消滅プロセスを開始することなく、すなわち、最小の遅延時間を待つことなく、比較的迅速に遮断することができる。
【0223】
この場合、消滅補助器36の緊急スイッチオフの場合、スパークギャップ14は再び点火するか、または外に出ず、消滅補助器36は直ちに解放される。したがって、消滅補助器36は、この自己保護機能のために無傷のままであるので、例えばタイミングおよび/または他の特定の基準に基づいて、消滅補助器36を使用して更なる消滅試行を実行することができる。複数の試みが失敗した場合、既に説明したように、追加の保護要素(図示せず)を作動させることができる。
【0224】
全体として、本発明に係るサージアレスタ10は、発生するインパルスおよび主電源続流の信頼できる取り扱いを特徴とする。加えて、サージアレスタ10に使用される構成要素の構造および複雑さは、インパルス電流を(安全に)放出して主電源続流を消滅させるときにコストと信頼性との間の最適な妥協点が達成されるように単純化することができる。
【外国語明細書】