(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110412
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】収着式ヒートポンプおよび収着式循環法
(51)【国際特許分類】
F25B 17/04 20060101AFI20240807BHJP
【FI】
F25B17/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024014031
(22)【出願日】2024-02-01
(31)【優先権主張番号】23154664
(32)【優先日】2023-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】523136514
【氏名又は名称】アー・ゲー・オー ゲー・エム・ベー・ハー エナギー プルス アンラーゲン
【氏名又は名称原語表記】AGO GmbH Energie + Anlagen
【住所又は居所原語表記】Am Goldenen Feld 23, 95326 Kulmbach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クラウス ラミング
【テーマコード(参考)】
3L093
【Fターム(参考)】
3L093AA03
3L093BB43
3L093LL05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】除霜時の効率を高めると共に摩耗を減じる収着式ヒートポンプ及び収着式循環法を提供する。
【解決手段】溶媒と冷媒との単相の混合物である希溶液および濃溶液と、希溶液が冷媒を高圧レベルで吸収し、その際に熱を放出する吸収器2と冷却装置3であって、複数の冷却レジスタ11を有し、複数の冷却レジスタ11では、それぞれ通常運転において濃溶液が絞り弁12で低圧レベルに膨張させられ、空気冷却器14において周辺空気から熱を吸収し、その際に冷媒を追い出し、空気冷却器14は、それぞれ通常運転を中断する除霜運転において加熱熱の供給によって除霜する。除霜時の効率を高めると共に収着式ヒートポンプ1の摩耗を減じるために、冷却装置3は、複数の冷却レジスタ11のうちの1つの冷却レジスタの除霜運転でその都度、濃溶液の部分流が加熱熱を放出するように、部分流を高圧レベルで当該冷却レジスタを通して案内するバイパス17を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収着式ヒートポンプ(1)であって、
・ ガス状の冷媒および液状の溶媒と、
・ 前記溶媒と前記冷媒との単相の混合物である希溶液および濃溶液と、
・ 前記希溶液が前記冷媒を高圧レベルで吸収し、その際に熱を放出する吸収器(2)と、
・ 冷却装置(3)であって、複数の冷却レジスタ(11)を有し、該複数の冷却レジスタ(11)では、それぞれ通常運転において前記濃溶液が絞り弁(12)で低圧レベルに膨張させられ、空気冷却器(14)において周辺空気から熱を吸収し、その際に前記冷媒を追い出し、前記空気冷却器(14)は、それぞれ前記通常運転を中断する除霜運転において加熱熱の供給によって除霜可能である、冷却装置(3)と
を有する、収着式ヒートポンプ(1)において、
前記冷却装置(3)は、前記複数の冷却レジスタ(11)のうちの1つの冷却レジスタの前記除霜運転でその都度、前記濃溶液の部分流が前記加熱熱を放出するように、前記部分流を前記高圧レベルで当該冷却レジスタを通して案内するバイパス(17)を有することを特徴とする、収着式ヒートポンプ(1)。
【請求項2】
前記除霜運転において前記加熱熱を放出した後、前記部分流は、好ましくは、各々の前記冷却レジスタ(11)の前記絞り弁(12)に対して並列なそれぞれ1つの逆止弁(13)を通って前記濃溶液内に再び案内されることを特徴とする、請求項1記載の収着式ヒートポンプ(1)。
【請求項3】
前記冷却装置(3)は、それぞれ前記複数の冷却レジスタ(11)のうちの1つの冷却レジスタの前記通常運転において前記濃溶液を前記空気冷却器(14)から前記吸収器(2)に案内するかまたは前記除霜運転において前記濃溶液を前記バイパス(17)から前記空気冷却器(14)に案内する遮断弁(15,16)を有することを特徴とする、請求項1または2記載の収着式ヒートポンプ(1)。
【請求項4】
前記冷却装置(3)は、前記濃溶液の残流を前記バイパス(17)に対して並列に調整する調整弁(19)を有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の収着式ヒートポンプ(1)。
【請求項5】
前記溶媒は水であり、前記冷媒はアンモニアであることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の収着式ヒートポンプ(1)。
【請求項6】
収着式循環法であって、
・ ガス状の冷媒および液状の溶媒と、
・ 前記溶媒と前記冷媒との単相の混合物である希溶液および濃溶液と
を含み、
・ 前記希溶液は前記冷媒を高圧レベルで吸収し、その際に熱を放出し、
・ 複数の冷却レジスタ(11)では、それぞれ通常運転において前記濃溶液が低圧レベルに膨張させられ、空気冷却器(14)において周辺空気から熱を吸収し、その際に前記冷媒を追い出し、前記空気冷却器(14)は、それぞれ前記通常運転を中断する除霜運転において加熱熱の供給によって除霜される、
収着式循環法において、
前記除霜運転でその都度、前記濃溶液の部分流が前記加熱熱を前記高圧レベルで前記空気冷却器(14)において放出することを特徴とする、収着式循環法。
【請求項7】
前記濃溶液は、それぞれ前記通常運転および前記除霜運転において、各々の前記空気冷却器(14)を互いに逆方向に通流することを特徴とする、請求項6記載の収着式循環法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、まず、収着式ヒートポンプであって、ガス状の冷媒および液状の溶媒と、この溶媒と冷媒との単相の混合物である希溶液および濃溶液と、希溶液が冷媒を高圧レベルで吸収し、その際に熱を放出する吸収器と、冷却装置であって、複数の冷却レジスタを有し、これらの複数の冷却レジスタでは、それぞれ通常運転において濃溶液が絞り弁で低圧レベルに膨張させられ、空気冷却器において周辺空気から熱を吸収し、その際に冷媒を追い出し、空気冷却器は、それぞれ通常運転を中断する除霜運転において加熱熱の供給によって除霜可能である、冷却装置とを有する、収着式ヒートポンプに関する。本発明は、さらに、このような収着式ヒートポンプの収着式循環法に関する。
【0002】
このような収着式ヒートポンプおよび収着式循環法は、住宅産業における暖房目的で一般的に知られており、除霜運転では、循環路逆転または高温ガス除霜のプロセスを利用している。
【0003】
知られているプロセスでは、除霜中に有効熱が生成されない。圧縮機の断続的な運転と、通常運転と除霜運転との間の切換時の圧力のその都度急激な変化とは、知られている収着式ヒートポンプの複数の構成要素に負荷をかけ、これらの構成要素を摩耗させてしまう。
【0004】
課題
本発明の根底にある課題は、除霜時の効率を高めると共に摩耗を減じることである。
【0005】
解決手段
知られている収着式ヒートポンプを前提して、本発明によれば、冷却装置は、複数の冷却レジスタのうちの1つの冷却レジスタの除霜運転でその都度、濃溶液の部分流が加熱熱を放出するように、部分流を高圧レベルで当該冷却レジスタを通して案内するバイパスを有することが提案される。本発明に係る収着式ヒートポンプは、除霜のために、通常であれば濃溶液から積極的に取り去らなければならない余剰の熱を利用し、こうして、効率を高める。除霜時には、熱力学的な循環路内の質量流量が、除霜する冷却レジスタにおいて通常運転で熱を吸収する割合だけ減じられる。これによって、本発明に係る収着式ヒートポンプの加熱出力が除霜時には相応に低下する。しかしながら、循環路内の圧力比は不変のままである。これによって、構成要素にかかる負荷および構成要素の摩耗が大幅に減じられる。
【0006】
本発明に係る収着式ヒートポンプでは、冷却レジスタと吸収器との間で低圧レベルにおいて濃溶液が冷媒を追い出し、残りの希溶液はポンプによって高圧レベルにもたらされ、冷媒は圧縮機によって高圧レベルにもたらされる。
【0007】
好ましくは、本発明に係る収着式ヒートポンプでは、除霜運転において加熱熱を放出した後、部分流は、濃溶液内に再び案内される。したがって、除霜運転時には、循環路が閉じられる。さらに好ましくは、部分流は、各々の冷却レジスタの絞り弁に対して並列なそれぞれ1つの逆止弁を通って案内される。この場合、濃溶液は、通常運転および除霜運転において、空気冷却器を互いに逆方向に通流する。絞り弁と逆止弁とは、省スペースにて1つの構成部材で「絞り逆止弁」として形成されていてよい。
【0008】
好ましくは、本発明に係る収着式ヒートポンプでは、冷却装置は、それぞれ複数の冷却レジスタのうちの1つの冷却レジスタの通常運転において濃溶液を空気冷却器から吸収器に案内するかまたは除霜運転において濃溶液をバイパスから空気冷却器に案内する遮断弁を有する。この場合、この遮断弁の操作によって、各々の冷却レジスタが通常運転と除霜運転との間で切り換えられる。冷却レジスタの遮断弁は、省スペースにて1つの構成部材で「3ポート2位置弁」として形成されてよい。
【0009】
好ましくは、本発明に係る収着式ヒートポンプでは、冷却装置は、濃溶液の残流をバイパスに対して並列に調整する調整弁を有する。この調整弁は、バイパスおよび空気冷却器における部分流の圧力損失を補償する。代替的には、部分流は残流なしで濃溶液を完全に含んでいてよい。この場合、除霜運転で運転されている冷却レジスタが、最大の出力で、つまり、可能な限り迅速に除霜される。
【0010】
好ましくは、本発明に係る収着式ヒートポンプでは、溶媒は水であり、冷媒はアンモニアである。水およびアンモニアは天然の物質であり、冷凍技術において実証されている。
【0011】
知られている収着式循環法を前提として、本発明によれば、除霜運転でその都度、濃溶液の部分流が加熱熱を高圧レベルで空気冷却器において放出することが提案される。このような方法は、本発明に係る収着式ヒートポンプによって実施され、その利点の点で同様に優れている。
【0012】
好ましくは、本発明に係る収着式循環法では、濃溶液は、それぞれ通常運転および除霜運転において、各々の空気冷却器を互いに逆方向に通流する。既存の導管内で流れ方向を逆転させることによって、必要となるバイパス管路を最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る収着式ヒートポンプを示す図である。
【0014】
実施例
以下に、本発明を一実施例に基づき説明する。図示の本発明に係る収着式ヒートポンプ1は、吸収器2、冷却装置3、分離器4、圧縮機5、ポンプ6ならびに複数の導管7を有している。これらの導管7は、吸収器2、冷却装置3および分離器4をこの順序で接続して、環状に閉じられた系を形成している。この場合、圧縮機5は、冷媒用分岐路8にて分離器4を吸収器2に接続しており、ポンプ6は、冷媒用分岐路8に対して並列に延在する溶媒用分岐路9にて分離器4を吸収器2に接続している。この吸収器2と冷却装置3との間の導管7と、溶媒用分岐路9とは、溶液熱交換器10を通して案内されている。
【0015】
冷却装置3は、互いに並列に配置された2つの冷却レジスタ11を有している。吸収器2から出発して分離器4にまで、各々の冷却レジスタ11は、絞り弁と、この絞り弁に対して並列に配置された逆止弁13と、空気冷却器14と、第1の遮断弁15とを有している。空気冷却器14は、それぞれ第1の遮断弁15に対して並列に配置された第2の遮断弁16を介して、絞り弁12よりも上流側で分岐したバイパス17に接続可能である。このバイパス17の分岐点18と絞り弁12との間に冷却装置3は調整弁19を有している。
【0016】
遮断弁15,16によって、冷却レジスタ11は、それぞれ通常運転と除霜運転とに切換可能である。
【0017】
溶媒としての水に冷媒としてのアンモニア(NH3)を含む本発明に係る収着式循環法では、吸収器2内で希溶液流が冷媒流を吸収し、加熱出力を熱媒に放出する。
【0018】
通常運転における両方の冷却レジスタ11による運転事例では、27barの高圧下にて1.39kg/sで吸収器2から流出した濃溶液が、両方の冷却レジスタ11に均等に分配され、両方の絞り弁12によって互いに等しい低圧に膨張させられ、その際に冷却され、両方の空気冷却器14内で加熱される。これらの両方の空気冷却器14内で加熱された濃溶液は、開放された第1の遮断弁15を介して後続の分離器4内に集められ、冷媒をガス状に分離する。残りの希溶液は、溶媒用分岐路9内でポンプ6によって再び高圧にもたらされ、ガス状の冷媒は、冷媒用分岐路8内で圧縮機5によって再び高圧にもたらされ、吸収器2内に圧送される。この吸収器2内では、希溶液が冷媒を再び吸収し、冷却され、加熱熱を熱媒に放出する。
【0019】
通常運転では、空気冷却器14のフィン(図示せず)に着霜が生じる。この着霜を除霜するために、本発明に係る収着式循環法では、冷却レジスタ11が交互に通常運転から除霜運転に切り換えられる。
【0020】
第1の冷却レジスタ11を除霜するためには、調整弁19と、第1の冷却レジスタ11において第1の遮断弁15とが閉鎖され、第2の遮断弁16が開放される。その後、この第2の遮断弁16を介して、ここでは全ての濃溶液を含む30℃で高圧下の部分流が、第1の冷却レジスタ11の空気冷却器14に流入し、この空気冷却器14と外気とを138kWの除霜出力で加熱し、空気冷却器14から10℃で進出し、逆止弁13を介して、引き続き通常運転で運転されている第2の冷却レジスタ11に流入する。
【0021】
第2の冷却レジスタ11では、濃溶液が、絞り弁12によって2.2barの低圧に膨張させられ、その際に-10℃に冷却され、空気冷却器14内で外気から785kWを受け取り、開いている第1の遮断弁15を介して-5℃で冷却装置3から流出する。
【0022】
分離器4内では、濃溶液が0.67kg/sのガス状の冷媒を分離する。この冷媒は、圧縮機5において365kWで高圧に圧縮される。残りの0.72kg/sの希溶液は、ポンプ6において5kWで吸収器2に圧送され、その際、溶液熱交換器10内で66℃に加熱される。
【0023】
第1の冷却レジスタ11が完全に除霜されると、この第1の冷却レジスタ11は、調整弁19と、第1の遮断弁15と、第2の遮断弁16との切換によって再び通常運転にもたらされる。
【0024】
代替的には、調整弁19によって、除霜運転において濃溶液の真の部分流しか第1の冷却レジスタ11内に案内しないことが可能である。これによって、除霜出力は減じられ、除霜のために必要となる時間は増加させられる。
【符号の説明】
【0025】
1 収着式ヒートポンプ
2 吸収器
3 冷却装置
4 分離器
5 圧縮機
6 ポンプ
7 導管
8 冷媒用分岐路
9 溶媒用分岐路
10 溶液熱交換器
11 冷却レジスタ
12 絞り弁
13 逆止弁
14 空気冷却器
15 遮断弁
16 遮断弁
17 バイパス
18 分岐点
19 調整弁
【外国語明細書】