(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110413
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】医療用記録装置、医療用ハンドピース、および医療用ツールの摩耗の程度を判定する方法
(51)【国際特許分類】
A61B 17/16 20060101AFI20240807BHJP
G01L 5/00 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
A61B17/16
G01L5/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024014121
(22)【出願日】2024-02-01
(31)【優先権主張番号】10 2023 102 615.1
(32)【優先日】2023-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】521389815
【氏名又は名称】エースクラップ・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Aesculap AG
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】ビュルク,アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】フィールテル,ビョルン
【テーマコード(参考)】
2F051
4C160
【Fターム(参考)】
2F051AA17
2F051AB08
2F051AB09
4C160LL04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】外科治療プロセス中に外科用のシャフトツールの外部荷重を記録するための医療用記録装置に関する。
【解決手段】該医療用記録装置は、軸受位置において前記シャフトツールを取り付けるように構成された外科治療装置用のベアリングシャフトと、所定の曲げ弾性を有する少なくとも1つの弾性変形可能なベアリングシャフト部と、前記外部荷重による前記ベアリングシャフト部の曲げ変形の状態、動作、及び/又は程度を検出するように構成された検出装置と、を備える。本開示はさらに、前記ベアリングシャフトを備える医療用ハンドピース、医療用ハンドピースと評価ユニットとを備えたシステム、並びに、医療用ツールの摩耗の程度を判定する方法に関する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科治療プロセス中に外科用のシャフトツールの外部荷重を検出または記録するための医療用記録装置であって、
軸受位置において前記シャフトツールを取り付け且つ/又は支持するように構成された外科治療装置用のベアリングシャフトと、
所定の曲げ弾性を有する少なくとも1つの弾性変形可能なベアリングシャフト部と、
前記外部荷重による前記ベアリングシャフト部の曲げ変形の状態、動作、及び/又は程度を検出するように構成された検出装置またはセンサシステムと、
を備える医療用記録装置。
【請求項2】
前記検出装置は、少なくとも1つのセンサを有する、
請求項1に記載の医療用記録装置。
【請求項3】
前記センサは、力センサである、
請求項2に記載の医療用記録装置。
【請求項4】
前記力センサは、圧電センサ又は感圧センサである、
請求項3に記載の医療用記録装置。
【請求項5】
前記検出装置は、前記ベアリングシャフト内において互いに直交して配置された少なくとも2つのセンサを有する、
請求項2に記載の医療用記録装置。
【請求項6】
前記ベアリングシャフトは、前記シャフトツールを取り付け又は支持するために、前記ベアリングシャフトの長手方向において互いに間隔を空けて配置された複数の軸受位置を有し、
前記検出装置は、前記複数の軸受位置の間に少なくとも部分的に配置されている、
請求項1に記載の医療用記録装置。
【請求項7】
前記ベアリングシャフトは、前記ベアリングシャフトを前記外科治療装置に結合するための近位結合部を有し、
前記検出装置と前記近位結合部との間に、前記検出装置の信号を伝達するように設けられた導電路が形成または配置されている、
請求項1に記載の医療用記録装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの検出装置を含む内側スリーブが、弾性変形可能な前記ベアリングシャフト部内に形成されている、
請求項1に記載の医療用記録装置。
【請求項9】
弾性変形可能な前記ベアリングシャフト部は、複数の凹部を有する、
請求項1に記載の医療用記録装置。
【請求項10】
前記凹部は、壁厚を減少させるスリット又はテーパ部として形成されている、
請求項9に記載の医療用記録装置。
【請求項11】
弾性変形可能な前記ベアリングシャフト部は、ボールジョイントを有する、
請求項1に記載の医療用記録装置。
【請求項12】
前記ボールジョイントは、2つの回転軸を有し、
前記2つの回転軸は、互いに直交するように配置されている、
請求項11に記載の医療用記録装置。
【請求項13】
医療用のシャフトツールを回転駆動かつ/または振動駆動するための医療用ハンドピースであって、
請求項1に記載の医療用記録装置を備える、
医療用ハンドピース。
【請求項14】
請求項13に記載の医療用ハンドピースと、評価ユニットとを備えるシステムであって、
前記評価ユニットは、前記医療用ハンドピースの前記ベアリングシャフト部の曲げ変形の状態、動作、及び/又は程度を表す検出装置の信号を、蓄積された参照データとの比較によって評価し、前記評価に基づいて医療用のシャフトツールの摩耗の程度を判定する、
システム。
【請求項15】
前記評価ユニットは、判定された前記摩耗の程度に基づいて前記シャフトツールの寿命予測および/または交換の推奨を出力する寿命予測ユニットを有する、
請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
医療用のシャフトツールの磨耗の程度を判定する方法であって、
ベアリングシャフトのベアリングシャフト部の曲げ変形の状態、動作、および/または程度を判定するステップと、
前記ベアリングシャフト部の前記曲げ変形の状態、動作、および/または程度を、参照データと比較するステップと、
前記比較に基づいて前記摩耗の程度を判定するステップと、
前記摩耗の程度を出力するステップと、
を備える方法。
【請求項17】
前記シャフトツールの寿命予測および/または交換の推奨を出力するステップを更に備える、
請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記シャフトツールの判定された前記摩耗の程度に基づいて前記シャフトツールの駆動パラメータを調整するステップを更に備える、
請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療用記録装置(医療用検出装置)、ベアリングシャフトを備える医療用ハンドピース、医療用ハンドピースと評価ユニットとを備えるシステム、及び、医療用ツールの摩耗の程度を判定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[本開示の背景]
多くの医療分野において、回転駆動かつ/または振動駆動される工具(シャフトツール、シャフト工具、シャフト器具)、特に、機械加工、研磨、および/または切断のエフェクタ(作用部)(ツールヘッド)を有する工具が日常的に使用されている。例えば、この種の工具は、骨および/または軟骨組織の外科用途において研磨工具として使用される。
【0003】
使用中、すなわち外科治療プロセス中に、上記の工具は、磨耗にさらされることで、エフェクタ(作用部)の性能(特に、切断性能)の低下が見られたり、工具の切断性能の低下が生じたりする。切削性能が低下すると、工具の動作箇所で高温が発生し、患者に損傷を及ぼし得る。また、例えば、外科医は、自身の力の適用を増やすことで、継続的に低下するエフェクタ(作用部)の性能(切断性能)を補おうとすることが見られ得る。この結果、特に、工具が任意(一時的)に挿入される外科用器具上の軸受要素(ベアリングコンポーネント)にも、同様に、より強い負荷がかかることになる。さらに、工具を作動させるために電気駆動部によって供給される電力がより多く必要になり、その結果、摩耗の増大とは別に、電気駆動部の発熱も増大する。
【0004】
[本技術の最新状況]
現在のところ、治療プロセスにおける工具の摩耗を特定する方法は、経験を積んだユーザー(治療者)が切削性能の変化を特定して工具を交換すること以外にない。
【0005】
工具の磨耗と、その結果としての切削性能の低下は、治療プロセスを通じて進行する継続的なプロセスであるため、ユーザーが自分の経験のみに基づいて工具の交換の最適な時期を特定および/または判断することは特に困難である。この方法において、ユーザーが工具に加える力や、外科医の個々の力は全く考慮されないか、又は、駆動の瞬間くらいにしか考慮されないため、仮に工具の合計使用時間が検出されたとしても、根本的には満足な結果につながらない。
【0006】
結果として、工具の交換が早すぎることでコストが増大するか、又は、工具の交換が遅すぎることで手術の結果が損なわれ、場合によっては患者の安全が危険にさらされかねない。
【発明の概要】
【0007】
本開示の目的は、上記の最新技術の欠点を取り除くか、又は、少なくとも軽減することである。
【0008】
具体的に、本開示の目的は、治療プロセスにおける医療用工具の磨耗を検出する可能性を提供し、工具の寿命(耐用期間)の最適化を達成し、治療プロセス中の患者の安全性を高めることである。
【0009】
この目的は、請求項1に記載の医療用記録装置によって達成される。さらに、この目的は、いずれか1つの独立請求項に記載の医療用ハンドピース、システム、および方法によって達成される。
【0010】
具体的に、この目的は、外科治療プロセス中における(外科用/医療用の手動器具または外科用のロボットに挿入される)外科用のシャフトツールの(例えば、外科医またはロボットによって加えられる)外部荷重(外科用のシャフトツールに作用する力)を記録するための医療用記録装置(医療用検出装置)によって達成される。医療用記録装置は、軸受位置において前記シャフトツールを取り付け且つ/又は支持するように構成された外科治療装置(外科用/医療用の手動器具または外科用のロボット)用のベアリングシャフトを有する。さらに、医療用記録装置(医療用検出装置)は、決定された(好ましくは、所定の、又は予め決定され得る)曲げ弾性を有する少なくとも1つの弾性変形可能なベアリングシャフト部と、前記外部荷重による前記ベアリングシャフト部の曲げ変形の状態、動作、及び/又は程度を検出するように構成された検出装置(センサシステム)とを有する。
【0011】
換言すれば、上記の目的は、特にベアリングシャフトに組み込まれるか又は適合される医療用記録装置(医療用検出装置)によって達成される。ベアリングシャフトは、医療用のシャフトツールを保持し、受け取り、支持するための医療用ハンドピース(ハンドル)または医療用ロボットに締結(結合)されるように提供され、構成される。
【0012】
ベアリングシャフトは、実質的に管状の形状を有し、特にその近位端部に結合要素を備え、これにより、ベアリングシャフトは、医療用のハンドピース(ハンドル)または医療用のロボットに対して、交換可能に結合係合され得る。
【0013】
医療用記録装置(医療用検出装置)(以下、単に「記録装置」ともいう)は、特に、外科治療プロセス中にシャフトツールに作用する径方向の力の形態において、(外科医またはロボットによって加えられる)外部荷重を記録(取得、検出)するように構成されている。ベアリングシャフトは、医療用のシャフトツールのツールシャンクを回転可能に支持するハンドピース側またはロボット側のシャフトであり、必要に応じて、ハンドピース側またはロボット側の駆動装置から医療用のシャフトツールに駆動力を伝達するように提供、構成されるトルク伝達トレインを有する。このように、医療用のシャフトツールは、回転駆動かつ/または振動駆動されるツールである。特に、医療用のシャフトツールは、医療用のフライスカッターまたは医療用のドリルであってもよい。
【0014】
医療用記録装置は、弾性変形可能なベアリングシャフト部をさらに有し、弾性変形可能なベアリングシャフト部は、好ましくはベアリングシャフトの長手方向部分の形態である。弾性変形可能なベアリングシャフト部は、決定された(好ましくは所定の)曲げ弾性を有し、該曲げ弾性は、一定であってもよいし、調整可能であってもよい。弾性変形可能とは、好ましくは、外部荷重が取り除かれると、弾性変形可能なベアリングシャフト部が伸張した(真っ直ぐな)ホーム状態(自然状態)に戻ることを意味する。
【0015】
さらに、医療用記録装置は、ベアリングシャフト部の曲げ変形の状態、動作、および/または、程度(形状、度合い)を記録(取得、検出)するように提供および構成された検出装置を有する。言い換えれば、検出装置は、曲げ変形が発生しているかどうか、および/または、曲げ変形がどれほど強いかを検出するように構成されている。
【0016】
このような記録装置は、ベアリングシャフト部の曲げ変形の状態、動作、および/または、程度(形状、度合い)によって、手術中(外科治療プロセス中)にシャフトツールに作用する(径方向の)力を示す信号を生成し得る。シャフトツールに作用する力は、シャフトツールの摩耗状態に直接関係する。具体的には、力が大きいほどシャフトツールが磨耗していることを示す。このように、本開示に係る記録装置は、シャフトツールの摩耗状態を記録(取得、検出)することができ、工具(シャフトツール)交換の具体的(理想的)な時点が判定され得る。このようにして、工具(シャフトツール)の寿命が最大限に延長可能になり、患者を傷つけるリスクが軽減され、治療者は、自身の経験に基づいて手動(触覚、視覚、アナログ)で工具(シャフトツール)交換のタイミングを判断する必要がないため、安心できる。
【0017】
この種の記録装置によれば、治療プロセス中における力の永続的な検出、外科治療プロセス中にオペレータがシャフトツールに過度の圧力をかけた場合の警告オプション、力の永続的な検出による摩耗の自動識別、工具(シャフトツール)の交換推奨の表示、及び、(例えば個々の工具に関連する)再利用可能な工具の摩耗履歴のログ(記録)が可能になる。
【0018】
一体化される解決策の場合、上記の目的は、医療用ハンドピース上および/または医療用ロボット上に、回転駆動かつ/または振動駆動される医療用シャフトツールを受け入れるためのベアリングシャフトによって達成される。この場合、ベアリングシャフトは、少なくとも1つの弾性変形可能なベアリングシャフト部を有し、該ベアリングシャフト部には、少なくとも1つの検出装置の少なくとも1つのセンサが配置され、検出装置は、ベアリングシャフトの曲げ変形および/または該曲げ変形の程度を検出するように提供および構成される。
【0019】
したがって、本発明の要旨は、検出装置によってベアリングシャフトの曲げ変形を検出して、外科治療プロセスにおける外科用のシャフトツールの外部荷重を記録する記録装置にある。
【0020】
第1の態様では、検出装置は、少なくとも1つのセンサ、好ましくは力センサ、具体的には、圧電センサまたは感圧抵抗器を有してもよい。
【0021】
換言すれば、外科治療プロセス中における外科用のシャフトツールの外部荷重を表す信号を検出する検出装置は、センサであってもよい。好ましくは、前記センサは、力センサである。ひずみゲージまたは感圧抵抗器が特に適している。
【0022】
医療用シャフトツールの外部荷重を示す(表す)信号は、この種のセンサによって、簡単で、安価で、メンテナンスの手間がかからない方法で生成され得る。
【0023】
別の態様において、検出装置は、少なくとも2つのセンサを備えてもよく、該2つのセンサは、ベアリングシャフト内で互いに直交して配置されてもよい。
【0024】
このように複数のセンサを互いに直交して配置することにより、シャフトツールに作用する力の方向が確実に検出され得る。
【0025】
別の態様において、ベアリングシャフトは、医療用のシャフトツールを支持するための複数の軸受位置(ベアリングポイント)を有してもよく、検出装置は、複数の軸受位置(ベアリングポイント)の間に少なくとも部分的に配置(形成)されてもよい。
【0026】
換言すれば、ベアリングシャフトは、ボールベアリング、ボールベアリング対、ローラーベアリング、若しくはニードルベアリングの形態、又は、ベアリングシャフト内でのシャフトツールの回転取り付けおよび/または振動取り付けを可能にする任意の他の種類のベアリングの形態の軸受位置(ベアリングポイント)を有してもよい。特に、ベアリングシャフトは、ベアリングシャフト内に互いに離間して形成される2つの軸受位置(ベアリングポイント)を有してもよい。これらの軸受位置(ベアリングポイント)の間に、検出装置または検出装置の一部が、検出装置によって曲げ変形の状態、動作、および/または程度が検出可能なように配置されてもよい。
【0027】
このような検出装置の配置により、シャフトツールの磨耗の増大によって発生する遠位の軸受位置(シャフトツールのツールヘッドに面する軸受位置)における反力の増大が、確実に検出可能になる。シャフトツールは両方の軸受位置で支持されており、シャフトツールの磨耗に応じて、軸受位置の間の領域が、対応する曲げモーメントによって、様々な程度に拡張され、圧縮され、又は曲げられるため、検出装置は、摩耗に依存する信号を生成し得る。
【0028】
別の態様において、ベアリングシャフトは、ツールシャフトを医療用のハンドピースおよび/または医療用のロボットに結合するための近位結合部(結合部)を有してもよく、検出装置の信号を伝導するように提供および構成された導体トラック(導電路)を有してもよい。導体トラックは、検出装置と結合部との間に形成されてもよい。
【0029】
換言すれば、曲げ変形の状態、動作、および/または程度をマッピング(検出)する検出装置によって生成される信号は、導体トラックを介して結合部に伝達され得る。
【0030】
前記信号は、導体トラックによって、インターフェースとして機能するか又はインターフェースの形態であるベアリングシャフトの結合部に、信頼性が高く省スペースな方法で伝達され得る。
【0031】
さらなる態様において、弾性変形可能なベアリングシャフト部には、少なくとも1つの検出装置を含み得る内側スリーブまたは中間スリーブが形成されてもよい。
【0032】
換言すれば、上記の軸受位置の間に、内側スリーブまたは中間スリーブが形成されてもよい。前記スリーブ(内側スリーブまたは中間スリーブ)は、軸受位置のベアリングを互いに対して位置決めし得る。さらに、前記スリーブ(内側スリーブまたは中間スリーブ)は、検出装置または検出装置の一部を含むか、これらに接触するか、又は、これらを支持してもよい。
【0033】
このような内側スリーブまたは中間スリーブを設けることにより、装着性が向上し得る。
【0034】
別の態様において、内側スリーブまたは中間スリーブは、少なくとも1つの(好ましくは2つの)ピンを介してベアリングシャフトに接続されてもよい。
【0035】
さらなる態様において、弾性変形可能なベアリングシャフト部は、保護層によって覆われてもよい。保護層は、熱収縮チューブなどであってもよく、例えば、ベアリングシャフト部の曲げ弾性および/または外科用のシャフトツールの機能を損ない得る、汚染された粒子や流体などの環境の影響から、ベアリングシャフト部を保護する。
【0036】
一態様において、ベアリングシャフトは、完全(全体的)に弾性材料で作られてもよい。
【0037】
ベアリングシャフトの曲げ弾性は、ベアリングシャフトの長手方向の全長にわたって変化してもよい。
【0038】
別の態様において、弾性変形可能なベアリングシャフト部は、好ましくは壁厚を減少させるスリットまたはテーパ部の形態で、凹部を有してもよい。
【0039】
換言すれば、ベアリングシャフト部の曲げ弾性は、壁厚を減少させるスリットまたはテーパ部によって、増大(設定、決定、予め決定)されてもよい。スリットは、ベアリングシャフト(ベアリングシャフト部)内、又は、ベアリングシャフト(ベアリングシャフト部)上におけるレーザーカットパターンであってもよい。テーパ部は、ベアリングシャフトの壁厚、特に、その外周の壁厚を減少させるものであってもよい。
【0040】
別の態様において、代替的または追加的に、内側スリーブまたは中間スリーブが、曲げ弾性を設定するように壁厚を減少させるスリットまたはテーパ部を有してもよい。
【0041】
さらなる態様において、レーザーカットパターン(スリットまたはテーパ部)は、ベアリングシャフト部の長手方向の全長(内側スリーブまたは中間スリーブの長手方向の全長)にわたって一定であってもよい。代替として、レーザーカットパターン(スリットまたはテーパ部)は、幾何学的な形状などにおいて、長手方向の全長にわたって変化してもよい。
【0042】
別の態様において、弾性変形可能なベアリングシャフト部は、ボールジョイント、好ましくは二軸ボールジョイントを有してもよい。
【0043】
換言すれば、ベアリングシャフトは、2つの部分からなるベアリングシャフトであってもよく、ベアリングシャフトの第1の部分とベアリングシャフトの第2の部分とがボールジョイントを介して接続されてもよい。ベアリングシャフトの第1の部分はボール本体で構成されてもよく、ベアリングシャフトの第2の部分はシェル本体で構成されてもよい。ボール本体は、シェル本体内に取り付けられてもよい。
【0044】
さらなる態様において、ボールジョイントは、2つの回転軸を有してもよく、該二軸ボールジョイントの2つの回転軸は、互いに直交して配置される。
【0045】
一態様において、ボール本体は、好ましくはラグ又はピンの形態における少なくとも1つの突出部を有してもよく、該突出部は、シェル本体の少なくとも1つの溝またはガイドに係合する。溝またはガイドは、ベアリングシャフトの長手方向に延在してもよい。このような突出部と溝(ガイド)との組み合わせにより、ベアリングシャフトの第1の部分がベアリングシャフトの第2の部分に対してベアリングシャフトの中心軸の周りで回転することが防止され得る。
【0046】
さらなる態様において、シェル本体は、(組み立てられた状態において)ボール本体の周囲をチューリップ形状で包み込む複数のシェルセグメントで構成されてもよく、個々のシェルセグメントは、組み立て中に跳ね返るように(弾性的に)変形し得る。
【0047】
さらなる態様において、検出装置または検出装置の少なくとも一部は、ボールジョイント内に形成されてもよい。具体的には、ボールジョイントのキャビティ(空洞)内またはボールジョイント上に、少なくとも1つのひずみゲージまたは感圧抵抗器が形成されてもよい。感圧抵抗器は、ベアリングシャフトの長手方向に対して垂直(横方向)に方向付けられてもよく、一方、ひずみゲージは、ベアリングシャフトの長手方向に対して平行に方向付けられてもよい。
【0048】
別の態様において、ボールジョイントは、曲げ変形の状態、動作、および/または程度に応じて、感圧抵抗器に圧縮力を及ぼす圧縮ばねを有するように形成されてもよい。
【0049】
別の態様において、少なくとも1つの感圧抵抗器を受けるために、ボールジョイントに隣接して接触面が形成されてもよい。
【0050】
別の態様において、感圧抵抗器に均等に圧縮力を分配するために、圧縮ばねと感圧抵抗器との間に、複数のディスク又は少なくとも1つのディスクが形成されてもよい。
【0051】
さらなる態様において、(具体的には、センサの形態における)検出装置または検出装置の少なくとも一部を固定するための接着溝が、ベアリングシャフト(好ましくは、変形可能なベアリングシャフト部)に形成されてもよい。
【0052】
さらなる態様において、検出装置は、少なくとも1つのセンサと、少なくとも1つのロッド(またはロープ)とを備えてもよい。この場合、ロッドまたはロープの一端は、変形可能なベアリングシャフト部に形成され、他端は、ベアリングシャフトの近位端部に形成される。ロッドまたはロープは、力伝達要素として機能し、これにより、センサの位置がより自由に設計可能になる。
【0053】
一態様において、センサごとにロッドまたはロープが形成されてもよい。
【0054】
ロッドまたはロープは、ベアリングシャフトの少なくとも1つの穴(長穴)内で案内されてもよい。
【0055】
また、上記の目的は、上記いずれかの態様に係る医療用記録装置を備えた、医療用のシャフトツールを回転駆動かつ/または振動駆動する医療用ハンドピースによって達成される。
【0056】
換言すれば、医療用ハンドピースは、ベアリングシャフト内またはベアリングシャフト上に医療用記録装置を備えるように構成されてもよい。
【0057】
さらに、上記の目的は、上記態様に係る医療用ハンドピースと評価ユニットとを備えたシステムによって達成され、評価ユニットは、医療用ハンドピースのベアリングシャフト部の曲げ変形の状態、動作、および/または程度を表す検出装置の信号を評価し、具体的には、当該信号を、蓄積された参照データと比較し、当該評価に基づいて、医療用シャフトツールの摩耗の程度を判定する。
【0058】
換言すれば、前記システムは、評価ユニットを有し、該評価ユニットは、例えば、ケーブルまたは無線によって医療用ハンドピースに接続され得る医療用ハンドピースの制御装置など、医療用ハンドピースとは別に形成されてもよい。評価ユニットは、特に、ベアリングシャフト内に形成され得る導体トラックを介して、検出装置の信号を受信する。評価ユニットは、受信された信号を評価し、その評価に基づいて医療用のシャフトツールの磨耗の程度を判定する。評価ユニットは、信号と蓄積された基準データとの比較に基づいて、前記評価を実行してもよい。
【0059】
一態様において、前記蓄積された参照データは、人工知能によって訓練されたもの、又は、訓練され得るものであってもよい。
【0060】
別の態様において、評価ユニットは、データベース(好ましくは、クラウド)に接続されてもよく、当該データベースから参照データを取得してもよいし、当該データベースの参照データにアクセスしてもよい。
【0061】
別の態様において、評価ユニットは、(特定の)シャフトツール、及び/又は、(特定の)シャフトツールの特性を、評価ユニットに入力することを可能にする入力インターフェースを有してもよい。入力インターフェースは、タッチスクリーン又はキーボードなどの手動入力インターフェースであってもよい。
【0062】
代替として、又は、追加として、入力インターフェースは、読み取りユニットを備えて構成されてもよく、該読み取りユニットは、RFIDタグなどのシャフトツールの無線識別要素を読み取り、シャフトツールを自動的に識別する。
【0063】
別の態様において、評価ユニットは、個々のシャフトツールの個々の摩耗の値を前記データベースに登録(蓄積)してもよい。
【0064】
別の態様において、評価ユニットは、判定(確立)された摩耗の程度(度合い)に基づいて、医療用のシャフトツールの寿命予測および/または交換の推奨を出力する寿命予測ユニットを有してもよい。
【0065】
換言すれば、評価ユニットは、寿命予測ユニットを有してもよい。寿命予測ユニットは、人工知能を用いて訓練されてもよい。代替的に、又は、追加的に、寿命予測ユニットは、参照データを用いて訓練されてもよい。寿命予測ユニットは、判定(確立)された摩耗の程度を、蓄積されたデータと比較することにより、シャフトツールの交換が必要になり得る時期を予測してもよい。代替的に、又は、追加的に、寿命予測ユニットは、最大許容摩耗度(許容される最大限の摩耗の程度)に達したと寿命予測ユニットが判定した場合に、医療用のシャフトツールの交換の推奨を出力してもよい。最大許容摩耗度は、オペレータによって入力されてもよいし、人工知能によって判定(設定、確立)されてもよい。
【0066】
さらなる態様において、評価ユニットは、医療用ハンドピースまたは医療用ロボットなどのエネルギーの流れを考慮してもよい。換言すれば、例えば、駆動流などのエネルギーの流れが、評価ユニットによって、摩耗の程度を判定(確立)するために使用されてもよい。
【0067】
さらなる態様において、評価ユニットは、医療用ハンドピース上または手術場所(作業場所)上に、温度センサ、ひずみゲージ、および/または加速度センサを有してもよい。
【0068】
さらなる態様において、システムは、摩耗の程度がさらに正確に識別され得るように追加の識別要素を有してもよい。追加の識別要素は、高速カメラ、赤外線カメラ、赤外線温度センサシステムなどであってもよい。
【0069】
別の態様において、手術場所(作業場所)、シャフトツール、および、場合によってはチップにおける表面の結果が、カメラによって検出された画像データを介して評価されてもよい。
【0070】
上記の目的はさらに、医療用のシャフトツールの磨耗の程度を判定(確立)する方法によって達成され、該方法は、
ベアリングシャフトのベアリングシャフト部の曲げ変形の状態、動作、および/または程度を判定するステップと、
前記ベアリングシャフト部の前記曲げ変形の状態、動作、および/または程度を、参照データと比較するステップと、
前記比較に基づいて前記摩耗の程度を判定するステップと、
前記摩耗の程度を出力するステップと、
を備える。
【0071】
一態様において、当該方法は、前記シャフトツールの寿命予測および/または交換の推奨を出力するステップを更に備える。
【0072】
別の態様では、上記の比較するステップにおいて、シャフトツール(工具)の送り速度(供給速度)が考慮されてもよい。
【0073】
別の態様では、上記の比較するステップにおいて、シャフトツールの速度、および/または角度(圧力角)が考慮されてもよい。
【0074】
別の態様において、当該方法は、前記シャフトツールの判定された前記摩耗の程度に基づいて前記シャフトツールの駆動パラメータを調整するステップを更に備える。
【0075】
換言すれば、シャフトツールの送り(供給)や速度などの駆動パラメータは、現在発生している外部荷重に合わせて調整可能である。
【0076】
別の態様では、人工知能と組み合わせて、特に医療/外科用ロボットと組み合わせて、トラバース(横断)動作および/または作業ルーチンが、検出された信号、および特定された外部荷重に基づいて調整されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る医療用ハンドピースの図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る医療用ハンドピースの断面図を、第1の詳細図と共に示す。
【
図3】本発明の第2の実施形態に係る医療用ハンドピースの図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態に係る医療用ハンドピースの断面図を、第2の詳細図と共に示す。
【
図5】本発明の第3の実施形態に係る医療用ハンドピースの断面図を、第3の詳細図および第4の詳細図と共に示す。
【
図6】本発明の第4の実施形態に係る医療用ハンドピースの図である。
【
図7】本発明の第4の実施形態に係る医療用ハンドピースの断面図を、第5詳細図と共に示す。
【
図8】本発明の第5の実施形態に係る医療用ハンドピースの図である。
【
図9】本発明の第5の実施形態に係る医療用ハンドピースの断面図を、第6の詳細図および第7の詳細図と共に示す。
【
図10】本発明の第6の実施形態に係る医療用ハンドピースの図である。
【
図11】本発明の第6の実施形態に係る医療用ハンドピースの断面図を、第8詳細図および第9詳細図と共に示す。
【
図12】本発明の第7の実施形態に係る医療用ハンドピースの図である。
【
図13】本発明の第7の実施形態に係る医療用ハンドピースの断面図を、第10の詳細図、第11の詳細図、および第12の詳細図と共に示す。
【発明を実施するための形態】
【0078】
以下、本発明の実施の形態が関連図面に基づいて説明される。
【0079】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る医療用ハンドピース1を示す。医療用ハンドピース1は、カップリング7を介してハンドル部5に取り外し可能に接続されるベアリングシャフト3を備える。ベアリングシャフト3は、実質的に管状の形状を有する。医療用ハンドピース1の先端部、すなわり、ベアリングシャフト3の先端部には、医療用のシャフトツール(シャフト工具、シャフト器具)9のための保持部(ホルダ)が形成されている。ベアリングシャフト3は、ハンドル部5によって生成される回転または振動の駆動力を医療用のシャフトツール9に伝達可能に設けられている。上記の駆動力は、例えば、ハンドル部5内の電気式、油圧式、または空圧式の駆動装置11(
図2参照)によって生成され得る。
【0080】
図2は、
図1の医療用ハンドピース1の断面図を示す。ベアリングシャフト3には、駆動軸13が、駆動装置11によって生成された駆動力をシャフトツール9に伝達するように、回転可能に支持されている。シャフトツール9は、ツールシャンク(ツール軸部)15とエフェクタ(作用部)17とを有する。エフェクタ17は、例えば、フライスヘッド、又はドリル等であってもよい。ツールシャンク15と駆動軸13とは、「プラグアンドプレイ方式」により接続(接続可能と)される。ツールシャンク15は、ベアリングシャフト3に回転可能に支持されている。具体的に、ツールシャンク15は、第1の軸受位置(第1のベアリングポイント)19と第2の軸受位置(第2のベアリングポイント)21とで支持されている。図示の実施形態において、第1の軸受位置19および第2の軸受位置21は、それぞれ、ボールベアリング(ボールベアリング対)で構成されている。当然のことながら、ボールベアリングの代わりに他の適切なベアリングも考えられる。第1の軸受位置19と第2の軸受位置21とは、ベアリングシャフト3において(軸方向において)互いに離間して形成されている。ベアリングシャフト3の内面には、ひずみゲージ23の形態でセンサ(力センサ)が構成されている。ひずみゲージ23は、ツールシャンク15に向かう方向において中間スリーブ25によって範囲が定められている。中間スリーブ25は、ベアリングシャフト3の長手方向において第1の軸受位置19のベアリングと第2の軸受位置21のベアリングとを互いに対して相対的に位置決めする。さらに、中間スリーブ25は、導電路としての導体トラック33(
図4参照)を有するように構成されてもよい。導体トラック33は、ひずみゲージ23によって生成された測定信号をベアリングシャフト3の近位端(医療用ハンドピース1の近位端)に送信可能である。中間スリーブ25とは別に、第1の軸受位置19、更なる全ての中間スリーブ、及び、第2の軸受位置21などの軸受位置におけるベアリングも、導体トラック33が近位方向において測定信号を評価ユニット69まで導くことができるように構成されている。
【0081】
第1実施形態におけるベアリングシャフト3は、弾性材料で形成されている。換言すれば、ベアリングシャフト3自体は、(弾性的に)移動可能に、又は、弾性的に柔軟であるように構成されており、ベアリングシャフト3の中心軸Mに対して垂直に作用する力(径方向の力)によって弾性的に撓み得る(弾性変形可能である)。ひずみゲージ23は、ベアリングシャフト3において位置決めされた医療用ツールに径方向に作用する力および/または外部荷重によって生成されるベアリングシャフト3の弾性的な撓みや曲がりを、(具体的には、第1の軸受位置19と第2の軸受位置21との間におけるベアリングシャフト部SAにおいて)検出するように設けられている。
【0082】
[第2の実施形態]
図3および
図4は、本発明の第2の実施形態に係る医療用ハンドピース1を示す。以下、
図1および
図2を用いて説明された第1の実施形態との相違点のみが説明される。
【0083】
第2の実施形態におけるベアリングシャフト部SAにおいて、ベアリングシャフト3の外周は、熱収縮チューブ27などの保護層(保護スリーブ、保護シース)によって、汚染された粒子や液体媒体などの環境の影響から保護される。保護層は、ベアリングシャフト部SAの曲げ弾性を調整するためにも使用され得る。
【0084】
図4は、
図3の医療用ハンドピース1の断面図を、ベアリングシャフト部SAの詳細図と共に示しており、詳細図では、説明を分かりやすくするためにシャフトツール9は図示されていない。ベアリングシャフト3のベアリングシャフト部SAには、ベアリングシャフト3の弾性を増大させ、曲げ弾性を所望の値または所定の値に調整するために、スリット29の形態のレーザーカットパターンが形成されている。
【0085】
第2の実施形態では、さらに、中間スリーブ25が省略されている。しかしながら、第2の実施形態のベアリングシャフト3には、第1の軸受位置19と第2の軸受位置21とのベアリングを位置決めする肩部31が形成されている。肩部31は、ベアリングシャフト3と一体的に(具体的には、物質的に一体に)形成されている。ベアリングシャフト3の内面において第1の軸受位置19と第2の軸受位置21との間には、複数のひずみゲージ23が形成(配置)されている。複数のひずみゲージ23は、導体トラック33を介して互いに接触され得る。ひずみゲージ23は、例えば接着によって、ベアリングシャフト3の内面に固定されている。任意選択で、シャフトの洗浄性を改善するために、スリット29には、エラストマーモジュールが充填されるか、又は、エラストマーが埋め込まれてもよい。
【0086】
[第3の実施形態]
図5は、第3の実施形態に係る医療用ハンドピース1の断面図を示す。第3の実施形態は、第2の実施形態に実質的に対応するので、以下では、第3の実施形態と第2の実施形態との相違点のみが説明される。
【0087】
第3実施形態では、ベアリングシャフト3に肩部31が形成されておらず、肩部31の代わりに、スリット付きの内側スリーブ35が、第1の軸受位置19と第2の軸受位置21との間に形成されている。スリット付きの内側スリーブ35の内面には、複数のひずみゲージ23が形成され、固定されている。さらに、スリット付きの内側スリーブ35には、複数の導体トラック33が形成されている。スリット付きの内側スリーブ35は、第1の軸受位置19と第2の軸受位置21とを互いに対して相対的に位置決めする。ベアリングシャフト3とスリット付きの内側スリーブ35との間の明確な位置決めは、2つの位置決めピン37によって保証される。2つの位置決めピン37は、ベアリングシャフト3とスリット付きの内側スリーブ35との対応する開口部に係合し、スリット付きの内側スリーブ35とベアリングシャフトとを、少なくとも互いに対して確実(積極的)に接続する。位置決めピン37は、他の適切な方法でベアリングシャフト3に圧入、接着、または固定されてもよい。
【0088】
[第4の実施形態]
図6および
図7は、第4の実施形態に係る医療用ハンドピース1を示す。第4の実施形態は、第3の実施形態に実質的に対応するので、以下では、第4の実施形態と第3の実施形態との相違点のみが説明される。
【0089】
第4実施形態では、ベアリングシャフト3にスリット29が形成されていない。ただし、ベアリングシャフト3の可動性は、ベアリングシャフト部SA内の軸径のテーパ部39によって実現される。テーパ部39は、例えば、壁厚を約50%減少させることによって形成されてもよい。当然のことながら、壁厚の減少に関して他の値も可能である。必要に応じて、ベアリングシャフト3内にエッジが形成されるのを防止し、洗浄性を改善するために、テーパ部39にエラストマーが埋め込まれてもよい。ここに示す第4の実施形態において、テーパ部39は、ベアリングシャフト3の外側のシャフトの周溝によって実現されている。あるいは、ベアリングシャフト3の内周面に周溝を形成することも考えられる。
【0090】
ここに示す第4の実施形態では、スリット付きの内側スリーブ35が形成されている。あるいは、より薄い壁厚によって可動性が増大され得る内側スリーブ(中間スリーブ)が形成されてもよい。さらなる代替として、第4の実施形態では、第2の実施形態のように、肩部31を有する内側スリーブが完全に省略されてもよい。
【0091】
以上の第1~第4の実施形態は、ベアリングシャフト3の弾性またはベアリングシャフト3の材料の弾性によってのみ曲げられ得る一体型のベアリングシャフト3を用いて構成されているが、以下の実施形態では、ボールジョイントを使用することで必要な可動性が得られる変形例が説明される。換言すれば、以下の実施形態では、ベアリングシャフト3が2つの部分からなる。
【0092】
[第5の実施形態]
図8および
図9は、本発明の第5の実施形態に係る医療用ハンドピース1を示す。
【0093】
ベアリングシャフト3は、第1近位シャフト部(近位結合部)41と第2遠位シャフト部43とを有する。第1近位シャフト部41と第2遠位シャフト部43とは、ボールジョイント45によって互いに移動可能に接続されている。ボールジョイント45は、ベアリングシャフト部SAに形成されている。ボールジョイント45は、第1近位シャフト部41に形成されたチューリップ型のシェル部47と、第2遠位シャフト部43に形成されたボール部49とを備えている。ボール部49は、シェル部47内に移動可能に支持されている。中心軸Mを中心とするシェル部47に対するボール部49の回転は、ボール部49に形成されてシェル部47の凹部53内を摺動するジャーナル51によって抑制される。第1近位シャフト部41と第2遠位シャフト部43との間の傾斜運動が許容されるように、凹部53は、実質的に中心軸Mの方向に延びるか、又は、中心軸Mに平行に延びる。ボールジョイント45の周囲は、熱収縮チューブ27によって保護されている。シェル部47の個々のセグメント55は、組み立て中においてシェル部47内にボール部49が挿入可能なように弾性変形可能に設けられており、挿入が完了すると、シェル部47は、そのホームポジション(本来の位置)及びホーム形状(本来の形状)に戻るように跳ね返る。
【0094】
第5実施形態では、ボールジョイント45にひずみゲージ23が形成されている。ひずみゲージ23は、その両端部において、第1近位シャフト部41と第2遠位シャフト部43とに接続されている。ひずみゲージ23を固定するために、第1近位シャフト部41と第2遠位シャフト部43との両方に接着溝57が形成されている。接着溝57には、ひずみゲージ23を固定するように接着剤が充填可能となっている。
【0095】
前述の実施形態と同様に、スリーブとボールベアリングとに形成された導体トラック33を介してひずみゲージ23からハンドピースの後部に信号が伝達される。
【0096】
[第6の実施形態]
図10および
図11は、第6の実施形態に係る医療用ハンドピースを示す。第6の実施形態は、第5の実施形態に実質的に対応するため、以下では、第6の実施形態と第5の実施形態との相違点のみが説明される。
【0097】
第6実施形態では、力センサとして、ひずみゲージ23の代わりに感圧抵抗器59が用いられる。感圧抵抗器59は、第1近位シャフト部41の平坦な表面61上に、中心軸Mに対して垂直に形成されている。ひずみゲージ23で測定されるひずみの変化と同様に、感圧抵抗器59では、鉛直方向に加えられる圧力によって(電気)抵抗が変化する。第6の実施形態では、案内された圧縮ばね63およびディスク(図示せず)によってボールジョイント45を介して第1近位シャフト部41に対して相対移動可能な第2遠位シャフト部43によって、前記圧力が感圧抵抗器59に伝達される。
【0098】
[第7の実施形態]
図12および
図13は、第7の実施形態に係る医療用ハンドピースを示す。第7の実施形態は、第6の実施形態に実質的に対応するため、以下では、第7の実施形態と第6の実施形態との相違点のみが説明される。
【0099】
第6の実施形態とは対照的に、圧縮ばね63を介するのではなく、ロッド65を介して(あるいは、ロープまたはワイヤロープを介して)、それぞれの感圧抵抗器59に圧力または引張力が伝達される。第7実施形態における感圧抵抗器59は、ベアリングシャフト3の遠位端部(先端部)に設けられるか、あるいは、医療用ハンドピース1のハンドル部5に設けられる。ロッド65は、第1近位シャフト部41の穴67を通して案内される。
【0100】
さらに、
図12には、評価手段としての評価ユニット69が概略的に示されている。評価手段(評価ユニット69)は、寿命予測ユニットおよび/または入力装置をさらに有してもよい。
【0101】
当然のことながら、以上の実施形態で説明された特徴の組み合わせは、決定的であることを意味するものではない。むしろ、技術的に合理的な方法において可能であれば、異なる実施形態の間で特徴が適宜置き換えられてもよい。
【0102】
以下、本開示に係る医療用記録装置(医療用検出装置)、および、本開示に係るシステムの例示的な機能が、図面を用いて説明される。
【0103】
外科治療プロセス中において、治療者は、医療用ハンドピース1に力を加える。当該力は、シャフトツール9の切削性能に依存し、シャフトツール9の磨耗に応じて治療の進行とともに変化する。当該力が加えられると、ベアリングシャフト部SAが曲げ変形する。ベアリングシャフト部SAの曲げ変形は、センサ(ひずみゲージ23又は感圧抵抗器59)によって信号に変換される。当該信号は、導体トラック33を介して医療用ハンドピースの近位端に伝達される。評価ユニット69は、当該信号を評価し、その評価に基づいて、シャフトツール9の磨耗の程度、シャフトツール9の寿命予測、及び/又は、シャフトツール9の交換の推奨を出力する。
【0104】
代替の実施形態では、複数の異なる軸における力を同時に検出および評価するために、複数のひずみゲージ23、又は、複数の感圧抵抗器59が、径方向に分散して配置されてもよい。その結果、あらゆる方向からの力が評価され得る。このことは、ハンドヘルド用途では特に重要である。なぜなら、例えばロボット用途の場合のように、結果として生じるハンドピースの動きは未知であるか、又は、事前に決定できないためである。
【符号の説明】
【0105】
1 医療用ハンドピース
3 ベアリングシャフト(シャフト)
5 ハンドル部
7 カップリング
9 医療用シャフトツール(工具)
11 駆動装置
13 駆動シャフト
15 ツールシャンク
17 エフェクタ
19 第1の軸受位置
21 第2の軸受位置
23 ひずみゲージ
25 中間スリーブ
27 熱収縮チューブ
29 スリット
31 肩部
33 導体トラック
35 スリット付きの内側スリーブ
37 位置決めピン(ピン)
39 テーパ部
41 近位シャフト部
43 遠位シャフト部
45 ボールジョイント
47 シェル部
49 ボール部
51 ジャーナル
53 凹部
55 セグメント
57 接着溝
59 感圧抵抗器(FSR)
61 (平坦な)表面
63 圧縮ばね
65 ロッド
67 穴
69 評価ユニット(評価手段)
M 中心軸
SA ベアリングシャフト部
【外国語明細書】