IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ゼンジーレ・パット・アーゲーの特許一覧

<>
  • 特開-医療用注射装置 図1
  • 特開-医療用注射装置 図2
  • 特開-医療用注射装置 図3
  • 特開-医療用注射装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110417
(43)【公開日】2024-08-15
(54)【発明の名称】医療用注射装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/20 20060101AFI20240807BHJP
   A61M 5/315 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
A61M5/20 510
A61M5/315 550Z
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024014474
(22)【出願日】2024-02-01
(31)【優先権主張番号】23154693
(32)【優先日】2023-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】514207337
【氏名又は名称】ゼンジーレ・メディカル・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】リヒャート フォースター
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ゴースヘーファー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ゾマー
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン プフラング
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD08
4C066EE06
4C066FF05
4C066HH02
4C066HH30
(57)【要約】      (修正有)
【課題】音響信号を発生する医療用注射装置を提供する。
【解決手段】保持部分12を有するハウジング10と、ハウジング内に可動に配置された作動要素20と、ハウジング内に可動に配置された弾性要素30とを備える医療用注射装置1であって、医療用注射装置の初期状態において、弾性要素に予荷重が加えられている。弾性要素は、作動部分と、打撃部分と、初期状態において保持部分に圧縮係合する当接部分とを備えている。弾性要素は、作動部分に向かって作動要素を移動させることによりハウジングに対して移動するように構成されており、移動時に、当接部分が保持部分との係合から外れ、予荷重が加えられた弾性要素の伸張により、打撃部分が医療用注射装置の打撃受け部分に打ち付けられて、これにより音響信号を生成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用注射装置(1)であって、
保持部分(12)を有するハウジング(10)と、
前記ハウジング(10)内に可動に配置された作動要素(20)と、
前記ハウジング(10)内に可動に配置された弾性要素(30)と、
を備え、
前記医療用注射装置(1)の初期状態において、前記弾性要素(30)に予荷重が加えられており、前記弾性要素(30)は、
作動部分(32)と、
打撃部分(34)と、
前記初期状態において前記保持部分(12)に圧縮係合している当接部分(36)と、
を備え、
前記弾性要素(30)は、前記作動部分(32)に向かって前記作動要素(20)を移動させることによって前記ハウジング(10)に対して移動するように構成されており、該移動時に、前記当接部分(36)が前記保持部分(12)との係合から外れ、前記予荷重が加えられた弾性要素(30)の伸張により、前記打撃部分(34)が前記医療用注射装置(1)の打撃受け部分(22)に打ち付けられて、これにより音響信号を生成する、医療用注射装置(1)。
【請求項2】
前記弾性要素(30)は金属要素であり、任意選択的には、前記弾性要素(30)は曲げられた金属薄板から成っている、請求項1記載の医療用注射装置(1)。
【請求項3】
前記弾性要素(30)は細長い形状を有しており、前記弾性要素(30)の長手方向軸線(38)が、前記医療用注射装置(1)の長手方向軸線(2)に対して実質的に平行である、請求項1または2記載の医療用注射装置(1)。
【請求項4】
前記弾性要素(30)および/または前記作動要素(20)は、前記医療用注射装置(1)の長手方向軸線(2)に対して実質的に平行な方向に沿って前記ハウジング(10)に対して移動するように構成されており、任意選択的には、前記弾性要素(30)および/または前記作動要素(20)は、注射方向(5)の方向で前記ハウジング(10)に対して移動するように構成されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の医療用注射装置(1)。
【請求項5】
前記弾性要素(30)は、該弾性要素(30)が注射方向の方向で前記ハウジング(10)に対して移動した場合に、前記当接部分(36)が前記保持部分(12)との係合から外れるように構成されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の医療用注射装置(1)。
【請求項6】
前記弾性要素(30)は、該弾性要素(30)の第1の端部(39)を成す曲げ部分(39)を備えており、任意選択的には、前記初期状態において、前記曲げ部分(39)が、160°~210°、さらに任意選択的には170°~200°、さらに別の任意選択的には180°~190°の範囲にある曲げ角度を有している、請求項1から5までのいずれか1項記載の医療用注射装置(1)。
【請求項7】
前記弾性要素(30)は、前記当接部分(36)が前記保持部分(12)との係合から外れた後に、前記当接部分(36)が、前記医療用注射装置(1)の長手方向軸線(2)に対して実質的に垂直な方向で運動するように構成されており、任意選択的には、前記当接部分(36)が、前記医療用注射装置(1)の前記長手方向軸線(2)に向かって運動する、請求項1から6までのいずれか1項記載の医療用注射装置(1)。
【請求項8】
前記打撃部分(34)は前記当接部分(36)に隣接している、請求項1から7までのいずれか1項記載の医療用注射装置(1)。
【請求項9】
前記弾性要素(30)は、前記ハウジング(10)に摺動式に接触する摺動部分(31)を備えており、任意選択的には、前記摺動部分(31)が、前記ハウジング(10)に実質的に面接触している、請求項1から8までのいずれか1項記載の医療用注射装置(1)。
【請求項10】
前記打撃受け部分(22)が前記作動要素(20)の一部を形成している、請求項1から9までのいずれか1項記載の医療用注射装置(1)。
【請求項11】
前記打撃部分(34)は、任意選択的には前記弾性要素(30)が緊張したままであるように、前記打撃受け部分(22)に打ち付けられた後に該打撃受け部分(22)に当接している、請求項1から10までのいずれか1項記載の医療用注射装置(1)。
【請求項12】
前記作動要素(20)は前記ハウジング(10)により取り囲まれており、前記弾性要素(30)は、前記作動要素(20)と前記ハウジング(10)との間に配置されており、任意選択的には、前記弾性要素(30)は、前記ハウジング(10)内に形成された切欠き(14)内に配置されている、請求項1から11までのいずれか1項記載の医療用注射装置(1)。
【請求項13】
前記ハウジング(10)および/または前記作動要素(20)は中空形状を有しており、任意選択的には、前記ハウジング(10)および/または前記作動要素(20)は、実質的に中空円筒形状を有している、請求項1から12までのいずれか1項記載の医療用注射装置(1)。
【請求項14】
前記作動要素(20)は、前記作動部分(32)に当接するための作動面(24)を有しており、任意選択的には、注射が完了した後の状態において、前記作動面(24)が前記作動部分(32)に当接し、前記作動部分(32)が前記保持部分(12)に当接している、請求項1から13までのいずれか1項記載の医療用注射装置(1)。
【請求項15】
前記音響信号は、少なくとも30dB、任意選択的には少なくとも60dB、さらに任意選択的には少なくとも80dB、さらに別の任意選択的には少なくとも100dBの音響圧力を有している、請求項1から14までのいずれか1項記載の医療用注射装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、音響信号を生成するように構成されている医療用注射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動注射装置またはペン型注入器のような医療用注射装置にとって、この医療用注射装置の特定の動作状態へ達し、かつ/または離脱するや否や患者にフィードバックを提供することが必要となることが多い。例えば、アレルギー性ショックの発生時にアドレナリンのような緊急薬剤を注射する自動注射器の場合、薬剤がいつ完全に投与されたかを患者に知らせる必要がある。さもなければ、例えば技術的な誤作動によって注射が中断されたことを確認することができない。このことは、患者にとって健康上の重大なリスクとなり得ると理解される。
【0003】
医療用注射装置から物質が投与された程度を示す視覚的な表示に加えて、音響的なフィードバックが必要となることが多いことが判った。その理由は多岐にわたる。例えば、視覚的障害のある人にフィードバックが提供されることを保証しなければならない。さらに、視覚的な表示が患者の視野に入っていないように注射領域が配置されていることがある。さらに、注射状態/進行に関するフィードバックは、不十分な照明条件下でも必要とされることが理解される。
【0004】
医療用注射装置において、例えば注射プロセスがいつ完了したか、またはいつ開始されたかの音響フィードバックを提供するために、従来技術から様々な解決策が知られている。しかし、これらの解決策は、以下に挙げるように、様々な欠点を有している。
【0005】
第1に、例えば国際公開第2018/082886号に記載されているような、音響信号を提供するように構成された従来技術の医療用注射装置は、音響信号を生成するために複数の部品を備えたアセンブリを備えていることが多い。これにより、これらの複数の部品は、時として複雑に配置される。複数の部品、特に複雑な配置では、組立ての労力および/または時間が増大する。さらに、複数の部品の存在は、誤った組立てのリスクを増大させる。さらに、部品の個数の増加は、製造すべき部品の個数が増えるので、製造の労力も増大させる。さらには、特に、1つの部品の故障が、音響信号を生成するために機能する医療用注射装置および/またはアセンブリの故障につながる場合、故障発生度が高まる。
【0006】
第2に、音響信号を提供するように構成された従来技術の医療用注射装置では、音響信号を生成するために機能するアセンブリによって注射が減速されるか、それどころか中断されるという好ましくない事例が時々生じる。その理由の1つは、アセンブリが高い作動抵抗を有していることであり、この作動抵抗は、注射プロセスを減速させるか、それどころか中断させさえする。さらに、別の理由は、アセンブリの弾性要素に、医療用注射装置の、注射中に運動することが要求される別の部品に向かって予荷重が加えられ、これにより、その部品の可動性が妨げられていることであり得る。このような構成の可能な例は、米国特許第10918811号明細書の図4および図6に示されている。
【0007】
第3に、医療用注射装置内において音響信号を生成する部品は、通常は、音響信号を生成する機能のみを有している。しかし、原理的には、例えば医療用注射装置に必要とされる部品の総数を減らすために、医療用注射装置の個別の部品に2つ以上の機能を割り当てることが望ましいであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本開示の1つの目的は、少なくとも部分的に上述の欠点を克服する医療用注射装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、独立請求項において定義された医療用注射装置によって少なくとも部分的に達成される。本開示の別の態様は、従属請求項において定義されている。
【0010】
特に、この目的は、保持部分を有するハウジングと、ハウジング内に可動に配置された作動要素と、ハウジング内に可動に配置された弾性要素とを備える医療用注射装置によって達成される。医療用注射装置の初期状態において、弾性要素には予荷重が加えられており、弾性要素は、作動部分、打撃部分および当接部分を備えており、当接部分は、初期状態において保持部分に圧縮係合している。弾性要素は、作動部分に向かって作動要素を移動させることによってハウジングに対して移動するように構成されており、この移動時に、当接部分が保持部分との係合から外れ、予荷重が加えられた弾性要素の伸張により、打撃部分が医療用注射装置の打撃受け部分に打ち付けられて、これにより音響信号を生成する。
【0011】
医療用注射装置は、自動注射器、ペン型注入器および/またはシリンジであってもよい。しかし、好適には、医療用注射装置は自動注射器である。これは、特に自動注射器にとって、いつ薬剤が完全に投与されたか、かつ/またはいつ注射が開始されたかを患者に知らせることが重要であるからである。
【0012】
ハウジングは、複数の部品を備えていてよい。例えばハウジングは、実質的に中空の2つの円筒形の部品を有していてよく、これらの円筒形の部品は、部品がハウジング内に設置された後に、相互に挿入される。
【0013】
保持部分は、好適にはハウジングと一体的に形成されている。特に、保持部分は、弾性要素を少なくとも部分的に収容しているハウジングの一部と一体的に形成されていてよい。したがって、別個の保持部分を設ける必要がないので、部品の個数を減らすことができる。
【0014】
本開示を通じて使用される「弾性」という用語は、塑性変形することなしに弾性変形に耐えるための材料の能力を指していてよい。したがって、弾性要素に予荷重が加えられていることは、弾性要素が弾性変形している態様に関していてよい。
【0015】
医療用注射装置の上記初期状態は、医療用注射装置が注射プロセスを開始する前の状態と称することができる。
【0016】
さらに、作動部分、衝突部分および/または当接部分は、弾性要素の区切ることができる区分であってもよい。しかし、弾性要素の作動部分、打撃部分および/または当接部分が互いに連続的に移行し合うか、かつ/または重なり合っていてもよい。
【0017】
初期状態において保持部分に当接部分が圧縮係合しているとは、当接部分が保持部分に圧力を加えていると云うこともできる。さらに、当業者は、保持部分に圧縮係合している当接部分が、初期状態における弾性要素への予荷重を維持することができると理解する。
【0018】
特に、弾性要素は、移動させられた場合に、作動部分に当接する作動要素によってハウジングに対して移動するように構成されていてよい。
【0019】
予荷重が加えられた弾性要素の伸張により、打撃部分が打撃受け部分に打ち付けられるという態様から、当業者は、打撃部分が加速プロセスを受け得ると理解する。
【0020】
弾性要素は、打撃部分に打ち付けられた後に、弾性要素内の予荷重がより低い量またはゼロに低減されるように構成されていてよい。
【0021】
本開示による医療用注射装置は、様々な利点を有しており、これらの利点のうちの少なくとも2つの利点を以下にさらに詳細に示す。
【0022】
第1には、従来の医療用注射装置と比較して、本医療用注射装置の構成は、部品の個数の削減および/またはあまり複雑でない配置を可能にする。したがって、組立て労力および/または組立て時間を低減することができる。さらに、製造労力および/または誤った組立てのリスクを最小限にすることができる。これは、特に、弾性要素の配置と、ハウジングに対して弾性要素を移動させることに依存する機械的に単純な作動機構とによるものである。
【0023】
第2に、医療用注射装置内の低減された注射抵抗および/または作動抵抗を、記載された構成によって達成することができることが判った。したがって、弾性要素の作動が、注射プロセスを減速させるか、またはそれどころか中断させるというリスクを減らすことができる。このことは、特に弾性要素がハウジングに対して移動可能に構成されていることによるものであり、これは、移動時の不意の中断を回避することができる構成を可能にする。
【0024】
上記の利点は、様々な表現において以下のことにも当てはまり得ると理解される。
【0025】
弾性要素は金属要素であってもよく、弾性要素は、任意選択的には、曲げられた金属薄板から成っている。金属要素は、金属が通常はクリープしないので有利であることが証明されている。さらに、曲げられた金属薄板から成る弾性要素は、曲げにより、弾性要素が初期状態において有している予荷重の正確な設定を可能にするので、特に好適である。
【0026】
弾性要素は細長い形状を有していてよく、弾性要素の長手方向軸線は、医療用注射装置の長手方向軸線に対して実質的に平行である。この配置により、部品の省スペースの配置が可能となる。さらに、弾性要素をハウジング内で安定して案内することを達成することができる。これらの利点は、ハウジングが実質的に中空円筒形状を有している場合に特に当てはまる。
【0027】
弾性要素および/または作動要素が、医療用注射装置の長手方向軸線に対して実質的に平行な方向に沿ってハウジングに対して移動するように構成されていてよく、任意選択的には、弾性要素および/または作動要素は、注射方向の方向でハウジングに対して移動するように構成されている。この配置構成により、医療用注射装置内における構成要素、例えばプランジャの、物質の吐出を引き起こす運動を、弾性要素を移動させるために容易に使用することができる。この場合、運動を方向転換させる必要がないので、摩擦も、必要な部品の個数も低減させることができる。特に、弾性要素および作動要素が、注射方向の方向でハウジングに対して移動するように構成されていることにより、医療用注射装置内における注射抵抗および/または作動抵抗の低減が可能となる。したがって、弾性要素の作動が、注射プロセスを減速させるか、それどころか中断させるというリスクを減らすことができる。注射方向は、医療用注射装置から物質が吐出される方向と称することができる。さらに、注射方向は、医療用注射装置のカニューレが注射領域に挿入される方向と称することができる。
【0028】
弾性要素は、弾性要素が注射方向の方向でハウジングに対して移動した場合に、当接部分が保持部分との係合から外れるように構成されていてもよい。この構成は、特に、医療用注射装置内における注射抵抗および/または作動抵抗の低減を可能にするが、医療用注射装置の単純な構成も可能にする。例示的に、この構成により、医療用注射装置内における構成要素、例えばプランジャの、物質の吐出を引き起こす運動を、弾性要素の移動のために使用することができる。これにより、運動が方向転換される必要はなく、これにより摩擦も、部品の個数も減らすことができる。
【0029】
弾性要素は、弾性要素の第1の端部を成す曲げ部分を備えていてよい。特に、弾性要素が金属薄板から形成されている場合、曲げ部分により、弾性要素の曲げ特性を特に調節することができる。さらに、曲げ部分は、2つのばねアームを形成するために使用されていてよく、曲げ部分はばねアーム間で弾性継手を構成する。例示的に、一方のばねアームが作動部分を備えていてよく、他方のばねアームが打撃部分と当接部分とを備えていてよい。さらに、弾性要素のよりコンパクトな設計を、曲げによって達成することができる。したがって、必要な設置スペースを低減することができる。任意選択的に、初期状態において、曲げ部分は、160°~210°、任意選択的に170°~200°、さらに任意選択的に180°~190°の範囲にある曲げ角度を有している。これらの角度は、弾性要素内における十分な予荷重を可能にすることが証明されている。
【0030】
弾性要素は、当接部分が保持部分との係合から外れた後に、当接部分が、医療用注射装置の長手方向軸線に対して実質的に垂直な方向に運動するように構成されており、任意選択的には、当接部分が、医療用注射装置の長手方向軸線に向かって運動するように構成されていてもよい。当接部分が保持部分との係合から外れた後に、当接部分が医療用注射装置の長手方向軸線に対して実質的に垂直な方向に運動するように弾性要素が構成されることにより、長手方向軸線に沿って延びる部分への衝撃を達成することができる。これにより、より良好な音響伝搬が可能となり、ひいてはより明確な音響信号が可能となる。さらに、当接部分が医療用注射装置の長手方向軸線に向かって運動するように構成されていることにより、音響信号の音量は、特に、当接部分が医療用注射装置の長手方向軸線から外方向に向かって運動するように構成されている場合に比べて、増大され得ることが判った。このための1つの理由は、外方向への衝突の場合に、直接的な騒音減衰が行われることである。なぜならば、医療注射装置は、患者の手によって取り囲まれているからであるからであり、これに対して内方向への衝突の場合、すなわち医療注射装置の長手方向軸線に向かう場合には当てはまらない。しかし、別の構成では、当接部分が保持部分との係合から外れた後に、当接部分が、医療用注射装置の長手方向軸線から離れるように運動してもよいと理解される。
【0031】
衝突部分は、当接部分に隣接していてよい。これにより、打撃部分は、特に高い加速を受けることができる。これにより、音響信号を、高い音量で提供することができる。
【0032】
弾性要素は、ハウジングに摺動式に接触する摺動部分を備えていてよく、任意選択的に、摺動部分は、ハウジングに実質的に面接触している。弾性要素がハウジングに摺動接触することにより、注射プロセスを減速させるか、それどころか中断させる高い作動抵抗を回避することができる。特に、摺動部分がハウジングに実質的に面接触していることにより、医療用注射装置内における特に低減された注射抵抗および/または作動抵抗を達成することができる。
【0033】
任意選択的に、打撃受け部分は、作動要素の一部を形成する。これにより、作動要素が医療用注射装置内で2つ以上の機能を果たすことを達成することができる。したがって、医療用注射装置のために必要とされる部品の総数をさらに低減することができる。例えば、付加的な打撃受け部分を設ける必要はない。しかし、例えば、当接部分が保持部分との係合から外れた後に当接部分が医療用注射装置の長手方向軸線から離れるように運動する場合、打撃受け部分が作動要素の一部を形成しない構成も考えられる。
【0034】
衝突部分は、打撃受け部分に打ち付けられた後に、打撃受け部分に当接していてよく、任意選択的には、弾性要素が緊張したままである。これにより、弾性要素が医療用注射装置内で緩み、これにより混乱を引き起こす音響信号を発生させるのを回避することができる。さらに、弾性要素が打撃受け部分に打ち付けられた後に緊張していることにより、正確な音響信号を達成することができる。これは、緊張の欠如により打撃部分が打撃受け部分に複数回打ち付けられることを確実に回避することができるからである。
【0035】
任意選択的には、作動要素はハウジングにより取り囲まれており、弾性要素が、作動要素とハウジングとの間に配置されている。この配置は、当接部分がハウジングの保持部分との係合から外れるように、作動部分に向かって作動要素を移動させることにより弾性要素がハウジングに対して移動することを容易にする。さらに任意選択的には、弾性要素が、ハウジングの内部に形成された切欠き内に配置されている。好適には保持部分は、これにより、切欠き内にも配置されている。上記切欠きは、弾性要素のための改良されたガイドを提供する。
【0036】
ハウジングおよび/または作動要素が、中空形状を有していてよく、任意選択的に、ハウジングおよび/または作動要素が、実質的に中空円筒形状を有している。これらの形状は、特に本明細書に記載された技術的な実施形態に関連して、特に省スペース設計を可能にする。
【0037】
作動要素が、作動部分に当接するための作動面を有していてもよい。例えば、作動要素が実質的に中空円筒形状を有している場合、作動部分に当接するための作動面は、作動要素から半径方向に突出する周方向の突出部に設けられていてよい。任意選択的には、注射が完了した後の状態では、作動面は作動部分に当接し、作動部分は保持部分に当接している。これにより、医療用注射装置内における作動要素の引き続きの運動は阻止されてよい。したがって、作動要素が、意図せずに医療用注射装置の別の要素を妨害することを回避することができる。
【0038】
音響信号は、少なくとも30dB、任意選択的には少なくとも60dB、さらに任意選択的には少なくとも80dB、さらに別の任意選択的には少なくとも100dBの音響圧力を有していてよい。これらの値は、様々な用途のために音響信号の十分な音量を可能にすることが証明されている。音響圧力は、例えば選択された材料および/または選択された予荷重によって影響を受けることがある。
【0039】
以下に、添付図面を簡単に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】音響信号を生成する前の、本発明による医療用注射装置の一部を示す図である。
図2図1の詳細図である。
図3】音響信号を生成した後の医療用注射装置の一部を示す図である。
図4図3の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1図4に示すように、医療用注射装置1は、保持部分12を有するハウジング10と、ハウジング10内に可動に配置された作動要素20と、ハウジング10内に可動に配置された弾性要素30とを備えている。弾性要素30は、作動部分32と、打撃部分34と、当接部分36とを備えている。上記保持部分12は、ハウジング10の一部と一体的に形成されている。図示された医療用注射装置1は、注射プロセスが完了したときに、すなわち、物質が医療用注射装置1から完全に排出されたときに音響信号を生成するように構成されている。
【0042】
さらに、注射プロセスが開始されたかが明確に示されていないにも拘わらず、当業者は、図2図4との比較に基づいて、注射プロセスが開始されていない医療用注射装置1の初期状態において、弾性要素30に予荷重が加えられていることを理解する。特に、初期状態における当接部分36は、保持部分12に圧縮係合している。これにより、弾性要素30への予荷重が維持されている。
【0043】
さらに、図2および図4に詳細に示すように、弾性要素30は、作動部分32に向かって作動要素20を移動させることによりハウジング10に対して移動するように構成されており、移動時に当接部分36が保持部分12との係合から外れ、予荷重が加えられた弾性要素30の伸張により、打撃部分34が、医療用注射装置1の打撃受け部分22に打ち付けられ、これにより音響信号が生成される。前記打撃受け部分22は、作動要素20の一部を形成している。図示したように、作動要素20の移動は、コイルばねの応力緩和によって達成される一方で、この移動を達成するための別の手段も考えられる。
【0044】
弾性要素30は細長い形状を有しており、弾性要素30の長手方向軸線38は、医療用注射装置1の長手方向軸線2に対して実質的に平行である。さらに、弾性要素30および作動要素20は、医療用注射装置1の長手方向軸線2に対して実質的に平行である方向に沿ってハウジング10に対して移動するように構成されている。より詳細には、弾性要素30および作動要素20は、注射方向5の方向でハウジング10に対して移動するように構成されている。さらに、弾性要素30は、弾性要素30が注射方向5の方向でハウジング10に対して移動した場合に、当接部分36が保持部分12との係合から外れるように構成されている。
【0045】
図2に示すように、弾性要素30は、弾性要素30の第1の端部39を成す曲げ部分39を備えており、これにより、初期状態では、曲げ部分39は、180°~190°の範囲にある曲げ角度を有している。さらに、弾性要素30は、ハウジング10に摺動接触する摺動部分31を備えており、摺動部分31は、ハウジング10と実質的に面接触している。さらに、打撃部分34は、当接部分36に隣接している。
【0046】
さらに、図1図4に示したように、弾性要素30は、当接部分36が保持部分12との係合から外れた後に、当接部分36が医療用注射装置1の長手方向軸線2に対して実質的に垂直な方向に運動するように構成されている。特に、当接部分36は、医療用注射装置1の長手方向軸線2に向かって運動する。
【0047】
図4に示したように、打撃部分34は、打撃受け部分22に打ち付けられた後に、打撃受け部分22に当接しており、したがって、弾性要素30は緊張したままである。
【0048】
さらに図4には、作動要素20が、作動部分32に当接するための作動面24を有しており、注射が完了した状態において、作動面24が作動部分32に当接し、作動部分32が保持部分12に当接していることが示されている。
【0049】
実質的に中空の円筒形状を有する作動要素20は、同様に実質的に中空の円筒形状を有するハウジング10によって取り囲まれている。これにより、弾性要素30は、作動要素20とハウジング10との間、すなわち、ハウジング10の内側に形成された切欠き14内に配置されている。
【符号の説明】
【0050】
1 医療用注射装置
2 医療用注射装置の長手方向軸線
5 注射方向
10 ハウジング
12 保持部分
14 切欠き
20 作動要素
22 打撃受け部分
24 作動面
30 弾性要素
31 摺動部分
32 作動部分
34 打撃部分
36 当接部分
38 弾性要素の長手方向軸線
39 第1の端部/曲げ部分
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2024-03-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用注射装置(1)であって、
保持部分(12)を有するハウジング(10)と、
前記ハウジング(10)内に可動に配置された作動要素(20)と、
前記ハウジング(10)内に可動に配置された弾性要素(30)と、
を備え、
前記医療用注射装置(1)の初期状態において、前記弾性要素(30)に予荷重が加えられており、前記弾性要素(30)は、
作動部分(32)と、
打撃部分(34)と、
前記初期状態において前記保持部分(12)に圧縮係合している当接部分(36)と、
を備え、
前記弾性要素(30)は、前記作動部分(32)に向かって前記作動要素(20)を移動させることによって前記ハウジング(10)に対して移動するように構成されており、該移動時に、前記当接部分(36)が前記保持部分(12)との係合から外れ、前記予荷重が加えられた弾性要素(30)の伸張により、前記打撃部分(34)が前記医療用注射装置(1)の打撃受け部分(22)に打ち付けられて、これにより音響信号を生成する、医療用注射装置(1)。
【請求項2】
前記弾性要素(30)は金属要素であり、任意選択的には、前記弾性要素(30)は曲げられた金属薄板から成っている、請求項1記載の医療用注射装置(1)。
【請求項3】
前記弾性要素(30)は細長い形状を有しており、前記弾性要素(30)の長手方向軸線(38)が、前記医療用注射装置(1)の長手方向軸線(2)に対して実質的に平行である、請求項1または2記載の医療用注射装置(1)。
【請求項4】
前記弾性要素(30)および/または前記作動要素(20)は、前記医療用注射装置(1)の長手方向軸線(2)に対して実質的に平行な方向に沿って前記ハウジング(10)に対して移動するように構成されており、任意選択的には、前記弾性要素(30)および/または前記作動要素(20)は、注射方向(5)の方向で前記ハウジング(10)に対して移動するように構成されている、請求項1記載の医療用注射装置(1)。
【請求項5】
前記弾性要素(30)は、該弾性要素(30)が注射方向の方向で前記ハウジング(10)に対して移動した場合に、前記当接部分(36)が前記保持部分(12)との係合から外れるように構成されている、請求項1記載の医療用注射装置(1)。
【請求項6】
前記弾性要素(30)は、該弾性要素(30)の第1の端部(39)を成す曲げ部分(39)を備えており、任意選択的には、前記初期状態において、前記曲げ部分(39)が、160°~210°、さらに任意選択的には170°~200°、さらに別の任意選択的には180°~190°の範囲にある曲げ角度を有している、請求項1記載の医療用注射装置(1)。
【請求項7】
前記弾性要素(30)は、前記当接部分(36)が前記保持部分(12)との係合から外れた後に、前記当接部分(36)が、前記医療用注射装置(1)の長手方向軸線(2)に対して実質的に垂直な方向で運動するように構成されており、任意選択的には、前記当接部分(36)が、前記医療用注射装置(1)の前記長手方向軸線(2)に向かって運動する、請求項1記載の医療用注射装置(1)。
【請求項8】
前記打撃部分(34)は前記当接部分(36)に隣接している、請求項1記載の医療用注射装置(1)。
【請求項9】
前記弾性要素(30)は、前記ハウジング(10)に摺動式に接触する摺動部分(31)を備えており、任意選択的には、前記摺動部分(31)が、前記ハウジング(10)に実質的に面接触している、請求項1記載の医療用注射装置(1)。
【請求項10】
前記打撃受け部分(22)が前記作動要素(20)の一部を形成している、請求項1記載の医療用注射装置(1)。
【請求項11】
前記打撃部分(34)は、任意選択的には前記弾性要素(30)が緊張したままであるように、前記打撃受け部分(22)に打ち付けられた後に該打撃受け部分(22)に当接している、請求項1記載の医療用注射装置(1)。
【請求項12】
前記作動要素(20)は前記ハウジング(10)により取り囲まれており、前記弾性要素(30)は、前記作動要素(20)と前記ハウジング(10)との間に配置されており、任意選択的には、前記弾性要素(30)は、前記ハウジング(10)内に形成された切欠き(14)内に配置されている、請求項1記載の医療用注射装置(1)。
【請求項13】
前記ハウジング(10)および/または前記作動要素(20)は中空形状を有しており、任意選択的には、前記ハウジング(10)および/または前記作動要素(20)は、実質的に中空円筒形状を有している、請求項1記載の医療用注射装置(1)。
【請求項14】
前記作動要素(20)は、前記作動部分(32)に当接するための作動面(24)を有しており、任意選択的には、注射が完了した後の状態において、前記作動面(24)が前記作動部分(32)に当接し、前記作動部分(32)が前記保持部分(12)に当接している、請求項1記載の医療用注射装置(1)。
【請求項15】
前記音響信号は、少なくとも30dB、任意選択的には少なくとも60dB、さらに任意選択的には少なくとも80dB、さらに別の任意選択的には少なくとも100dBの音響圧力を有している、請求項1記載の医療用注射装置(1)。
【外国語明細書】