(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110430
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】免振装置及びこれを備えた搬送装置
(51)【国際特許分類】
F16F 15/04 20060101AFI20240808BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
F16F15/04 M
F16F15/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014941
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】517329708
【氏名又は名称】SOCIAL ROBOTICS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159846
【弁理士】
【氏名又は名称】藤木 尚
(72)【発明者】
【氏名】浅野 滋
(72)【発明者】
【氏名】マーラベ アシャーン パンドゥカ
【テーマコード(参考)】
3J048
【Fターム(参考)】
3J048AA01
3J048AD06
3J048BA24
3J048BB06
3J048BD01
3J048BD02
3J048BF02
3J048BF16
(57)【要約】
【課題】ダンパに生じる加速度を抑制することができ、上板の上に載せた対象物の中身のこぼれ、対象物の転倒等を抑制できる免振装置及びこれを備えた搬送装置を提供する。
【解決手段】本発明の免振装置は、対象物を載せた状態で移動可能な移動体2に取り付けられる免振装置1であって、対象物を上面に載せることができる上板16と、移動体に取り付けられるベース板18と、ベース板の上方に固定されると共に上面視で内側に円形の開口部を形成しているダンパホルダ20と、上板に取付けられると共に、弾性体により形成されるダンパ24であって、ダンパホルダ20の開口部20aの内側において上面視で円盤状に形成され、ダンパホルダと連結されていない状態で上記ダンパホルダに対して相対移動可能に配置されるダンパ24と、を備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を載せた状態で移動可能な移動体に取り付けられる免振装置であって、
上記対象物を上面に載せることができる上板と、
上記移動体に取り付けられるベース板と、
上記ベース板の上方に固定されると共に上面視で内側に円形の開口部を形成しているダンパホルダと、
上記上板に取付けられると共に、弾性体により形成されるダンパであって、上記ダンパホルダの上記開口部の内側において上面視で円盤状に形成され、上記ダンパホルダと連結されていない状態で上記ダンパホルダに対して相対移動可能に配置される上記ダンパと、を備える免振装置。
【請求項2】
上記ダンパは、上記ダンパホルダと連結されていない状態で独立して慣性力により移動してから上記ダンパが上記ダンパホルダに接触し上記ダンパと上記ダンパホルダとの相対速度差が減衰される、請求項1に記載の免振装置。
【請求項3】
上記ダンパは、上記ダンパホルダに対して回転方向に移動できるように上記ダンパホルダの上記開口部の内側に配置される、請求項1に記載の免振装置。
【請求項4】
上記上板は、上記対象物を載せていない状態でも慣性力により上記ダンパを慣性方向に移動させられるような重量を有するように形成される、請求項1に記載の免振装置。
【請求項5】
上記ダンパは、上記移動体の平均走行速度が0.5km/h乃至4km/hの範囲内であり、且つ上記対象物が載せられていない場合又は上記対象物が10kg以下の重量である場合に、上記移動体の減速時に上記対象物にかかる加速度が5m/s2以下となるような所定のばね定数とダンパ係数を有するように形成されている、請求項1に記載の免振装置。
【請求項6】
さらに、上記ベース板上に設けられたすべり機構を備え、上記上板は、上記すべり機構により支持される、請求項1に記載の免振装置。
【請求項7】
上記ダンパは、上記ダンパホルダの厚み以上の厚みで形成される、請求項1に記載の免振装置。
【請求項8】
上記ダンパは、弾性を有する部材により形成される、請求項1に記載の免振装置。
【請求項9】
さらに、上記ベース板と上記移動体との間に設けられる傾斜機構を備え、
上記傾斜機構は、
上記移動体に取付けられるベースブラケットと、
上記ベースブラケット上で揺動可能に設けられている揺動ブラケットであって、上記揺動ブラケットは上記ベース板に取付けられる、上記揺動ブラケットとを備え、
上記揺動ブラケットがレール状開口部に沿って前方側に移動した場合には、上記上板が後方側に向けて傾斜され、
上記揺動ブラケットが上記レール状開口部に沿って後方側に移動した場合には、上記上板が前方側に向けて傾斜される、請求項1に記載の免振装置。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか1項に記載の免振装置と、移動可能な上記移動体と、を備えた搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免振装置及びこれを備えた搬送装置、特に対象物を載せた状態で移動可能な移動体に取り付けられる免振装置、及びこれを備えた搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1に示すように、配膳ロボット等に用いられる振動抑制装置が知られている。このような振動抑制装置は、配膳ロボットの走行開始時、停止時等にトレーに載置された食器等にかかる加速度を緩和することにより、料理がこぼれたり食器が転倒したりすることを抑制する。
【0003】
このような従来の振動抑制装置においてはバネやゴム等の弾性部材が、配膳ロボット側の基台と、配膳トレーが装着される可動上板との間に連結され、可動上板が配膳ロボットの自走又は停止による振動により移動した場合に、可動上板を元の位置に復元するように動作する。ここで、弾性部材は、基台側(外周側)の第1係止部と、可動上板側(中央部分)の第2係止部との間に設けられる。弾性部材は、外周側の3か所から中央部分まで延びるように設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示すような振動抑制装置においては、制振を行うように、3つの弾性部材が、基台と可動上板とを常に連結しているため、弾性部材が振動に対応して収縮された後、弾性部材による揺り戻しの衝撃による加速度が可動上板にかかり、料理等がこぼれるという問題があった。
また、配膳ロボットが複雑な動作を実行し、複数の異なる振動が比較的短時間の間に弾性部材に加わる場合に、振動が累積して比較的大きな加速度が生じ、料理等がこぼれるという問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、ダンパに生じる加速度を抑制することができ、上板の上に載せた対象物の中身のこぼれ、対象物の転倒等を抑制できる免振装置、及びこれを備えた搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の一実施形態によれば、対象物を載せた状態で移動可能な移動体に取り付けられる免振装置であって、上記対象物を上面に載せることができる上板と、上記移動体に取り付けられるベース板と、上記ベース板の上方に固定されると共に上面視で内側に円形の開口部を形成しているダンパホルダと、上記上板に取付けられると共に、弾性体により形成されるダンパであって、上記ダンパホルダの上記開口部の内側において上面視で円盤状に形成され、上記ダンパホルダと連結されていない状態で上記ダンパホルダに対して相対移動可能に配置される上記ダンパと、を備える。
このように構成された本発明の一実施形態によれば、上板に取付けられると共に、弾性体により形成されるダンパが、ダンパホルダの円形の開口部の内側に配置されると共に、上面視で円盤状に形成されている。これにより、上板及びダンパがベース板に対して自由に動くことができると共に上板及びダンパの移動がベース板に固定されたダンパホルダにより抑制される。よって、ダンパとダンパホルダとが接することによりダンパとダンパホルダとの相対速度差が減少されると共にダンパの揺り戻しの加速度を生じにくくすることができる。また、複数の異なる振動が比較的短時間の間に移動体側のダンパホルダに加わる場合であっても、ダンパ側において振動が累積して比較的大きな加速度が生じることを抑制できる。よって、ダンパに生じる加速度を抑制することができ、上板の上に載せた対象物の中身のこぼれ、対象物の転倒等を抑制できる。
【0008】
本発明の一実施形態によれば、好ましくは、上記ダンパは、上記ダンパホルダと連結されていない状態で独立して慣性力により移動してから上記ダンパが上記ダンパホルダに接触し上記ダンパと上記ダンパホルダとの相対速度差が減衰される。
このように構成された本発明の一実施形態によれば、上記ダンパは、上記ダンパホルダと連結されていない状態で独立して慣性力により移動してから上記ダンパが上記ダンパホルダに接触し上記ダンパと上記ダンパホルダとの相対速度差が減衰される。これにより、複数の異なる振動が比較的短時間の間に移動体側のダンパホルダに加わる場合であっても、ダンパ側において振動が累積して比較的大きな加速度が生じることをより抑制できる。よって、ダンパに生じる加速度をより抑制することができ、上板の上に載せた対象物の中身のこぼれ、対象物の転倒等をより抑制できる。
【0009】
本発明の一実施形態によれば、好ましくは、上記ダンパは、上記ダンパホルダに対して回転方向に移動できるように上記ダンパホルダの上記開口部の内側に配置される。
このように構成された本発明の一実施形態によれば、上記ダンパは、上記ダンパホルダに対して回転方向に移動できるので、移動体及びダンパホルダが回転方向に移動した場合に、ダンパが同じ回転方向への移動の力を受けにくくされている。従って、移動体の回転方向の移動時に対象物の中身のこぼれ等を抑制できる。
また、従来技術のようにダンパとダンパホルダとが物理的に接続されている場合には、ダンパがダンパホルダに対して相対的に回転される場合、後に回転分を戻そうとする力がダンパに働き、ダンパ上の対象物に戻りの加速度がかかるため、対象物の中身のこぼれ等が生じるおそれがある。これに対し、本発明の一実施形態によれば、上記ダンパは、上記ダンパホルダと連結されていない状態で上記ダンパホルダに対して回転方向に移動できるので、ダンパがダンパホルダに対して相対的に回転される場合、後に回転分を戻そうとする力の加速度により対象物の中身のこぼれ等が生じるおそれを抑制できる。
【0010】
本発明の一実施形態によれば、好ましくは、上記上板は、上記対象物を載せていない状態でも慣性力により上記ダンパを慣性方向に移動させられるような重量を有するように形成される。
このように構成された本発明の一実施形態によれば、上記上板は、上記対象物を載せていない状態でも慣性力により上記ダンパを慣性方向に移動させることができる。これにより、対象物が比較的軽量である場合であっても、ダンパに生じる加速度を抑制することができる。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、好ましくは、上記ダンパは、上記移動体の平均走行速度が0.5km/h乃至4km/hの範囲内であり、且つ対象物が載せられていない場合又は上記対象物が10kg以下の重量(0kgより大きく且つ10kgまでの軽量の重量)である場合に、上記移動体の減速時に上記対象物にかかる加速度が5m/s2以下となるような所定のばね定数とダンパ係数を有するように形成されている。
このように構成された本発明の一実施形態によれば、移動体が所定の平均走行速度を有し、対象物が載せられていない場合又は対象物が10kg以下の所定の重量である場合に、上記移動体の減速時に上記対象物にかかる加速度が5m/s2以下となるように、ダンパが所定のばね定数とダンパ係数を有するように形成されている。よって、ダンパに生じる加速度をより抑制することができ、上板の上に載せた対象物の中身のこぼれ、対象物の転倒等をより抑制できる。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、好ましくは、さらに、上記ベース板上に設けられたすべり機構を備え、上記上板は、上記すべり機構により支持される。
このように構成された本発明の一実施形態によれば、さらに、上記ベース板上にすべり機構が設けられ、上記上板は、すべり機構により支持される。これにより、上記上板が上記ダンパと共に、上記ベース板に対して相対移動するときに、上記上板の移動動作をより安定させ、ダンパの動作の信頼性を向上させることができる。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、好ましくは、上記ダンパは、上記ダンパホルダの厚み以上の厚みで形成される。
このように構成された本発明の一実施形態によれば、上記ダンパは、上記ダンパホルダの厚み以上の厚みで形成されるので、上記ダンパが、上記ダンパホルダに作用するときに、ダンパホルダの厚み全体にダンパが作用でき、ダンパの動作が安定しやすくできる。例えば、上記ダンパの側面の一部のみ、例えば上記ダンパの側面の上側の角のみが上記ダンパホルダに作用して動作が不安定になることを抑制できる。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、好ましくは、上記ダンパは、弾性を有する部材により形成される。
このように構成された本発明の一実施形態によれば、円盤状のダンパを比較的容易に形成できると共に、ばね係数に加えてダンパ係数を有しているダンパを実現できる。
【0015】
本発明の一実施形態によれば、好ましくは、さらに、上記ベース板と上記移動体との間に設けられる傾斜機構を備え、上記傾斜機構は、上記移動体に取付けられるベースブラケットと、上記ベースブラケット上で揺動可能に設けられている揺動ブラケットであって、上記揺動ブラケットは上記ベース板に取付けられる、上記揺動ブラケットとを備え、上記揺動ブラケットが上記レール状開口部に沿って前方側に移動した場合には、上記上板が後方側に向けて傾斜され、上記揺動ブラケットが上記レール状開口部に沿って後方側に移動した場合には、上記上板が前方側に向けて傾斜される。
このように構成された本発明の一実施形態によれば、免振装置は、さらに、上記ベース板と上記移動体との間に設けられる傾斜機構を備え、傾斜機構は上記ベースブラケット上で揺動可能に設けられている揺動ブラケットを備え、上記揺動ブラケットが上記レール状開口部に沿って前方側に移動した場合には、上記上板が後方側に向けて傾斜され、上記揺動ブラケットが上記レール状開口部に沿って後方側に移動した場合には、上記上板が前方側に向けて傾斜される。これにより、移動体が前方側に向けて下り傾斜となる場合に、揺動ブラケットが前方側に移動され、上記上板が後方側に向けて傾斜される。よって、対象物、例えばコップ内の液面からコップの前方側の上端までの長さを長くでき、対象物の中身が前方側からこぼれることをより抑制できる。同様に、移動体が後方側に向けて下り傾斜となる場合に、揺動ブラケットが後方側に移動され、上記上板が前方側に向けて傾斜される。よって、対象物、例えばコップ内の液面からコップの後方側の上端までの長さを長くでき、対象物の中身が後方側からこぼれることをより抑制できる。
【0016】
本発明の一実施形態によれば、好ましくは、免振装置と、移動可能な移動体と、を備えた搬送装置を提供できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の免振装置、及び、これを備えた搬送装置によれば、ダンパに生じる加速度を抑制することができ、上板の上に載せた対象物の中身のこぼれ、対象物の転倒等を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施形態による免振装置を備えた搬送装置を示す側面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態による免振装置の分解斜視図である。
【
図3】本発明の第1実施形態による免振装置のダンパの高さにおける水平断面図である。
【
図4】
図3のIV-IV線に沿って見た断面図である。
【
図5】本発明の第1実施形態による免振装置の数理モデルを示す図である。
【
図6】本発明の第1実施形態による免振装置のダンパが初期位置にある様子を示す図である。
【
図7】本発明の第1実施形態による免振装置のダンパがダンパホルダに向けて移動された様子を示す図である。
【
図8】本発明の第1実施形態による免振装置のダンパがダンパホルダに向けてさらに移動された様子を示す図である。
【
図9】
図7の免振装置のダンパがダンパホルダに向けて移動された様子を、上板を取り除いた状態で示す斜視図である。
【
図10】
図8の免振装置のダンパがダンパホルダに向けてさらに移動された様子を、上板を取り除いた状態で示す斜視図である。
【
図11】本発明の第2実施形態による免振装置の分解斜視図である。
【
図12】本発明の第2実施形態による免振装置において傾斜機構の揺動ブラケットの初期状態を示す側面図である。
【
図13】本発明の第2実施形態による免振装置において傾斜機構の揺動ブラケットがレール状開口部の後方側に移動した状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の第1実施形態による免振装置について説明する。
先ず、
図1は本発明の第1実施形態による免振装置を備えた搬送装置を示す側面図であり、
図2は本発明の第1実施形態による免振装置の分解斜視図であり、
図3は本発明の第1実施形態による免振装置のダンパの高さにおける水平断面図であり、
図4は
図3のIV-IV線に沿って見た断面図である。
【0020】
図1に示すように、本発明の第1実施形態による免振装置1は、対象物Aを載せた状態で移動可能な移動体2に取り付けられ、搬送装置4を構成している。搬送装置4は対象物Aを載せた状態で搬送可能な装置を形成している。搬送装置4は、例えば、対象物Aを載せた状態で搬送するサービスを提供するサービスロボットである。搬送装置4は、例えば、飲食店内等の施設内を移動し、料理等の対象物Aを厨房等の提供位置から客席のテーブル等の目的位置まで搬送する、及び/又は客席のテーブル等の目的位置から料理を食べ終えた後のコップやお皿等の食器(対象物A)を客席のテーブル等の目的位置から厨房等の提供位置まで戻り搬送するサービスを提供する。免振装置1は、既存の移動体2に取り付けられて搬送装置4を構成してもよい。以下、本発明の一実施形態における説明において、
図1に示すように移動体の本体が主に設けられている前方側、前方側と反対側を後方側とし、後方から前方を見た場合の右手側を右側、左手側を左側として説明する。
【0021】
移動体2は、自律走行可能な自走式の走行装置を形成している。なお、移動体2は、外部からの制御指令を受けて走行する外部制御式の走行装置により形成されてもよい。
【0022】
移動体2は、対象物Aを目的地まで搬送するサービスを提供するために、主に施設内を移動するが、補助的に施設外を移動してもよい。「主に」とは、移動体2の想定される移動距離のうち50%以上が施設内での移動となることをいう。「補助的に」とは、施設内でのサービス提供を主とするが、一部、店外や屋外の廊下等の施設外を走行する移動が許容され、このような施設外の移動が、移動体2の想定される移動距離のうち50%未満の移動となることをいう。施設は、対象物Aを提供位置から目的位置まで搬送することが必要とされる施設であり、例えば飲食店、病院、介護施設等の施設であるが、家屋内も含む。
【0023】
対象物Aは、提供位置から目的位置まで搬送される物であり、例えば提供位置としての厨房から目的位置としての客席のテーブルまで搬送される物であり、コップ、グラス、お皿、食事用の器具等の食器類が含まれる。対象物Aは、液体が6割から8割位まで満たされた状態のカップ、液体が同様に満たされたワイングラス、ガラスコップ、スープカップ、うどんの器、ラーメンの器、鍋等も含まれる。このような対象物Aは、液体が満たされているため、振動により液体がこぼれやすく、中身がこぼれないように搬送することが必要とされる。対象物Aは、同時に搬送される複数の物品であってもよい。対象物Aは、重量の合計(飲食物の場合には液体や料理の重量も含んだ重量の合計)が10kg以下(0kgより大きく且つ10kgまでの軽量の重量)の比較的小型の物品である。対象物Aは、例えば、0.5kg乃至10kgの範囲内の重量を有する。
【0024】
移動体2は、移動体2の本体を形成する本体3と、床面B上を前後左右等の自由な方向に走行可能な車輪11と、車輪11を駆動させるモータ6と、モータ6を制御する制御部8と、情報入力や情報出力が可能なモニタ9と、を備えている。
【0025】
本体3は、対象物Aや免振装置1を支持する骨格構造を形成している。本体3は、縦方向に延びる支持部5と、支持部5から横方向に延びる棚部7と、を備えている。上側の棚部7は、想定される客席のテーブルの高さより30cm低い高さから前記高さより30cm高い高さまでの範囲内の高さに形成されている。上側の棚部7は、例えば、床面Bから650cm~750cmの高さの範囲内の高さに形成されている。
【0026】
移動体2は、さらに、床面B等の走行面に配置される電子タグ10、例えばRFIDタグを電波等で読み取るリーダ部12と、人や障害物の有無を検知する検知センサ14とを備えている。
【0027】
リーダ部12は、電波等を足元方向に照射して電子タグ10の情報を読み取るように形成されている。よって、移動体2は、リーダ部12により電子タグ10を読み取りながら設定された走行経路に沿って自律走行できるように構成されている。
【0028】
検知センサ14は、人体、壁などの構造物、障害物等を検知できるようなセンサである。例えば、検知センサ14は、赤外線センサである。移動体2の走行中に、検知センサ14が人の飛び出し等を検出した場合には、制御部8が移動体2を走行状態から停止状態に急停止させるようになっている。
【0029】
制御部8は、提供位置から目的位置までの移動体2の自律走行を制御する。制御部8は、CPU及びメモリ等を内蔵し、メモリ等に記録された所定の制御プログラムに基づいて提供位置から目的位置まで及び目的位置から提供位置までの移動体2の自律走行を実現するように接続された機器を制御する。制御部8は、車輪11、車輪の操舵装置(図示せず)、モータ6、モニタ9、リーダ部12、検知センサ14等と互いに電気的に接続されている。これらの電気的な接続は、無線通信等により行われてもよい。制御部8の全部又は一部は、移動体2とは別の場所に配置され、無線通信により電気的に接続された機器を制御してもよい。
【0030】
次に、
図2乃至
図4により、免振装置1についてより詳細に説明する。
免振装置1は、対象物Aを上面に載せることができる上板16と、移動体2の棚部7に取り付けられるベース板18と、ベース板18の上方に固定されるダンパホルダ20と、ベース板18上に設けられたすべり機構であるボールキャスタ22と、上板16に取付けられると共に、弾性体により形成されるダンパ24と、ダンパ24とベース板18との間に設けられるダンパサポート26と、を備えている。免振装置1は、ダンパ24側と、ダンパホルダ20側とを切り離した状態で配置させ、振動や衝撃が直接、移動体2側から上板16側に伝わらない場合や伝えにくくする場合があるように構成されている。
【0031】
上板16は、天井方向に上向きに配置される板である。上板16は、ほぼ水平に配置される。上板16は、円盤のプレート状に形成されている。よって、上板16は、対象物を上面に載せることができる。対象物は、例えばコップ、グラス、お皿、食事用のナイフやフォーク、スプーン等の食器である。コップやグラスは、水や飲み物が6割から8割程度の容量まで満たされた状態で上板上に載せられる場合がある。またお皿は、料理が盛り付けられた状態、例えばスープや麺類等が6割から8割程度の容量まで満たされた状態で上板上に載せられる場合がある。このように、上板16は、例えば、コップやお皿等の食器を載せる円形のトレイを形成している。上板16は、中央領域において後述するダンパ24に固定されていると共に、中央領域より外側の領域においてはボールキャスタ22の上に載せられ、ボールキャスタ22により支持されている。上板16は、ダンパホルダ20やボールキャスタ22から振動や衝撃が伝わりにくい免振板を構成する。ボールキャスタ22は、上板16側に設けられてもよい。また、本実施形態においてはすべり機構はボールキャスタ22であるが、変形例として、すべり機構は、ベース板18又は上板16に設けられると共に、ナイロン樹脂等の樹脂により形成された半球状突起部と、ベース板18又は上板16の表面をフッ素コーティングしたフッ素コーティング面とにより、互いに滑りやすく形成されてもよい。
【0032】
上板16は、上板16の上面に比較的軽量の上記対象物Aを載せた状態や何も載せていない状態でも、慣性力によりダンパ24を移動させられるような所定重量を有している。なお、上板16は、上板16の上面に上記対象物Aが載せられていない状態や上板16の上面に比較的軽量(例えば500gまでの範囲内の重量(0gより大きく且つ500gまでの軽量の重量)、より好ましくは300g~500gの範囲内の重量)の上記対象物Aを載せた状態でも、慣性力によりダンパ24を移動させられるような所定重量を有していてもよい。
【0033】
ベース板18は、移動体2の本体3の棚部7上にねじ等により固定される。棚部7は最上部のものに限られず、中段、下段、2段目、3段目であってもよく、複数の棚部7に同時にベース板18が固定されてもよい。ベース板18は、六角形のプレート状に形成されているが、四角形、八角形、円形等の他の形状に形成されてもよい。ベース板18は棚部7上でほぼ水平に配置される。ベース板18は、金属板により形成されているが、樹脂等により形成されていてもよい。ベース板18の上面18aの中央領域18bは、ほぼ平坦に形成されており、ダンパ24がダンパサポート26上でベース板18の上面18aの中央領域18bにおいてベース板18に沿って平行移動できるように構成されている。
【0034】
ダンパホルダ20は、四角形のプレート状に形成されている。ダンパホルダ20には、上面視で内側に円形の開口部20aが形成されている。開口部20aの径D1は、ダンパ24の径D2以上の大きさである。すなわち、開口部20aの径D1は、ダンパ24の径D2と同じ又はダンパ24の径D2よりも大きい。ダンパホルダ20は、金属板等により形成されている。ダンパホルダ20は、4角のスペーサ21によりベース板18に固定されている。
【0035】
次に、
図2により、ダンパ24について説明する。ダンパ24は支柱25により上板16と固定されている。ダンパ24は、ダンパホルダ20の開口部20aの内側においてダンパホルダ20と連結されていない状態でダンパホルダ20に対して相対移動可能に配置される。ダンパ24は、ダンパホルダ20と連結されていない状態で独立して慣性力により移動してからダンパ24がダンパホルダ20に接触しダンパ24の移動速度が減衰されるように構成されている。ダンパ24は、上面視で円盤状に形成されている。ダンパ24の径D2は、開口部20aの径D1以下の大きさである。ダンパ24は、開口部20aの大きさとほぼ同じ大きさに形成されている。ダンパ24が、開口部20aの大きさとほぼ同じ大きさに形成されることにより、ダンパ24が初期位置に戻りにくくなることを抑制できる。初期位置のダンパ24と、ダンパホルダ20との間には、全周にわたって環状の隙間部がわずかに形成され、ダンパ24はダンパホルダ20と連結されていない状態で配置されている。ダンパ24は、ダンパホルダ20に対して回転方向に自在に移動できるようにダンパホルダ20の開口部20aの内側に配置される。
図3に示すように、ダンパ24は、ダンパホルダ20の厚み以上の厚みで形成される。すなわち、ダンパ24は、ダンパホルダ20の厚みと同じ厚み又はダンパホルダ20の厚みよりも大きな厚みで形成される。ダンパ24は、弾性を有する部材である発泡ゴムにより形成される。ダンパ24は、発泡ゴム以外のゴム等の弾性を有する部材によって形成されてもよい。
【0036】
ダンパ24は、ばねとしての特性を示すばね係数、に加えて所定の大きさの減衰係数(ダンパ係数)、例えば、揺れを減衰する時定数が1.5秒以内となる減衰係数、また例えば揺れを減衰する時定数が1秒乃至1.5秒の範囲内の値となる減衰係数を有している。従って、ダンパ24は、ダンパ24及び上板16の慣性力による移動や振動等を弱め減衰させる減衰機能を有する。例えば、ダンパ24は、移動体2の平均走行速度が0.5km/h乃至4km/hの範囲内であり、且つ対象物Aが載せられていない場合又は対象物Aが10kg以下の重量(例えば0kgより大きく且つ10kgまでの軽量の重量)である場合に、移動体2の減速時に上記対象物Aにかかる加速度が5m/s2以下となるようなばね定数とダンパ係数を有するように形成されている。なお、ダンパ24は、中心部から全周方向に向かってほぼ同様の減衰機能を有している。
【0037】
ダンパサポート26は、円形のプレートを形成している。ダンパサポート26は、ダンパ24と共に支柱25により上板16に固定されている。ダンパサポート26は、金属板により形成されている。ダンパサポート26は、ベース板18上においてベース板18に対して相対移動可能とされている。
【0038】
次に、
図5を参照して免振装置1の動作の理論について説明する。
対象物の重量、上板16の変位、移動体2の変位、ダンパ24の物理特性等は所定の数理モデルに基づき計算できる。
図5に所定の数理モデルの一例を示す。図中において、u(t)は上板の変位、z(t)は移動体の変位、mはペイロード(上板の重量を含む)の重量、kはダンパの剛性係数(ばね定数)、cはダンパの減衰係数(ダンパ係数)、yは免振装置のストローク、tは時間を示している。
ここで、
さらに、F=maを考慮すると、
と示される。
免振機構のストロークy(t)は、u(t)とz(t)の相対距離であるので、
y(t)=u(t)-z(t)
u(t)=y(t)+z(t)
となる。
u(t)の値を代入すると、
となる。このように、ペイロードの重量に対して、どのようなダンパの剛性係数と、ダンパの減衰係数を有したダンパが最適かを理論により導くことが可能である。
【0039】
次に、
図6乃至
図10を参照して免振装置1の動作について説明する。
図6は、本発明の第1実施形態による免振装置のダンパが初期位置にある様子を示す図である。
図7は本発明の第1実施形態による免振装置のダンパがダンパホルダに向けて移動された様子を示す図である。
図8は本発明の第1実施形態による免振装置のダンパがダンパホルダに向けてさらに移動された様子を示す図である。
図9は
図7の免振装置のダンパがダンパホルダに向けて移動された様子を、上板を取り除いた状態で示す斜視図である。
図10は
図8の免振装置のダンパがダンパホルダに向けてさらに移動された様子を、上板を取り除いた状態で示す斜視図である。
図6乃至
図8においては紙面の右側が前方側となっている。
図9及び
図10においては紙面の左下側が前方側となっている。
【0040】
例えば、移動体2(搬送装置4)が走行状態から何らかの原因で急に停止する場合に、免振装置1におけるダンパ24の動作について説明する。
図6に示すように、免振装置1では、初期の停止状態や移動体2の定常状態の走行状態(移動体2が加速したり減速したりしていない走行状態)においては、ダンパ24がダンパホルダ20の開口部20aのほぼ中央に位置している。このとき、ダンパ24と開口部20aとは部材により連結されていない状態である。ダンパ24と開口部20aとは、離間して配置され、両者の間には、隙間部が形成されている。ダンパ24及びダンパ24に固定されている上板16は、ダンパホルダ20及びダンパホルダ20が固定されているベース板18に対して自由に相対移動できるようになっている。
【0041】
例えば、移動体2の前方向きの走行状態から移動体2の前方に人が急に飛び出してくる等により移動体2が急停止する場合には、移動体2のベース板18及びダンパホルダ20が急停止される。これに対し、
図7及び
図9に示すように、ダンパ24と上板16とは慣性力により前方に向けて移動し続ける。
【0042】
ダンパ24がダンパホルダ20の開口部20aの前方側の側壁20cに向けて進む。移動体の減速直後には、ダンパ24は側壁20cに向けて、ダンパホルダ20と連結されていない状態で独立して慣性力により移動する。このように、ダンパ24側の動きが、移動体2のベース板18側の動きと切り離されて安定した動きとなっている。従って、移動体2側の急激な挙動に対し、ダンパ24側に加速度が生じにくくされている。よって、ダンパ24側に生じる加速度が5m/s2以下となるように抑制され、上板16上の対象物A内の液体がこぼれにくくされている。このとき、ダンパ24及び上板16との間の相対速度差(相対的な速度の差)は、ボールキャスタ22と上板16との摩擦等により、わずかに減少される。側壁20cに向けて進むダンパ24は、開口部20aの前方側の側壁20cに当接する。
【0043】
図7及び
図9に示すように、ダンパ24が側壁20cに当接したのち、ダンパ24の前方側部分は、前方側の側壁20cに対して徐々に変形しながら圧縮される。従って、ダンパ24とダンパホルダ20との相対速度差が減衰させる(速度差が減少される)。
図7においては、ダンパ24の中心部24aが、
図6における中心部24aよりも約10mm前方側に位置している。このときダンパ24(上板16)のストロークは約10mmである。ダンパ24の前方側部分が側壁20cにより変形された状態となっており、ダンパ24の速度が初期の速度に比べて減少されている。ダンパ24の速度が比較的緩やかに変化されるので、ダンパ24側に加速度が生じにくくされている。
【0044】
図8及び
図10に示すように、ダンパ24が、側壁20cに対してさらに進み、さらに変形されながら圧縮される。ダンパ24の中心部24aが、
図6における中心部24aの位置よりも約20mm前方側に位置している。このときダンパ24(上板16)のストロークは約20mmである。ダンパ24の移動速度は、側壁20cによりさらに反発力を受けて低減され、ダンパ24とダンパホルダ20との相対速度差が減衰される(速度差が減少される)。ダンパ24の移動速度が減少し、ダンパ24は緩やかにダンパホルダ20に対して停止される。このように、ダンパ24は、速度が比較的緩やかに減少され、停止されるので、ダンパ24側に加速度が生じにくくされている。よって、ダンパ24側に生じる加速度が5m/s
2以下となるように抑制され、上板16上の対象物A内の液体がこぼれにくくされている。ダンパ24は、一端停止された後、
図6に示すような初期位置までダンパの有するばねの性質により徐々に戻る。ダンパ24は、所定の減衰係数を有しており、このような戻りの移動についても、ダンパ24側に加速度が生じにくくされている。
【0045】
また、別の例として、移動体2(搬送装置4)が停止状態から加速して走行状態となる場合に、免振装置1におけるダンパ24の動作について説明する。
ダンパ24の停止状態において、
図6に示すように、ダンパ24がダンパホルダ20の開口部20aのほぼ中央に位置している。このように、移動体2が加速する状況においても、移動体2の減速状況と同様にダンパ24の慣性力の影響を低減させ、対象物A内の液体がこぼれにくくされている。
【0046】
例えば、移動体2が加速する場合には、先ず、移動体2のベース板18及びダンパホルダ20が移動を開始される。これに対し、ダンパ24と上板16とは慣性力によりダンパホルダ20に対して後方側に相対的に移動する。実際には、ダンパ24と上板16とは床面等に対してほぼ停止したままの状態である。
【0047】
ダンパホルダ20が前方側に向けて移動するので、ダンパ24が相対的にダンパホルダ20の開口部20aの前方側の側壁20cに向けて進む。移動体の加速開始直後には、ダンパホルダ20が前方側に向けて移動するので、ダンパ24は側壁20cに向けて、ダンパホルダ20と連結されていない状態で独立して慣性力により相対的に移動する。ダンパ24は床面に対してはほぼ停止したままである。このように、ダンパ24側の動きが、移動体2のベース板18側の動きと切り離されて安定した動きとなっている。従って、移動体2側の急激な挙動に対し、ダンパ24側に加速度が生じにくくされている。
よって、ダンパ24側に生じる加速度が5m/s2以下となるように抑制され、上板16上の対象物A内の液体がこぼれにくくされている。このとき、ダンパ24と上板16との間の相対速度差は、ボールキャスタ22と上板16との摩擦等により、わずかに減少される。開口部20aが前方側に向けて移動するので、ダンパ24は、開口部20aの後方側の側壁20cに当接する。
【0048】
ダンパ24が側壁20cに当接したのち、ダンパ24の後方側部分は、後方側の側壁20cに対して徐々に変形しながら圧縮される。従って、ダンパ24とダンパホルダ20との相対速度差が減衰される(速度差が減少される)。このように、移動体2及びダンパホルダ20の加速時に、ダンパホルダ20の加速度がダンパ24に伝達されにくく、ダンパ24の速度が比較的緩やかに変化されるので、ダンパ24側に加速度が生じにくくされている。
【0049】
ダンパホルダ20が前方側に向けてさらに移動されるとき、ダンパ24の後方側部分は、後方側の側壁20cに対してさらに進み、さらに変形されながら圧縮される。これにより、ダンパ24及び上板16のダンパホルダ20に対する相対速度差が減衰される(速度差が減少される)。最終的には、ダンパ24の移動速度が減少し、ダンパ24は緩やかにダンパホルダ20に対して停止される。このように、ダンパ24は、速度が比較的緩やかに変化され、ダンパホルダ20に対して停止される。移動体2及びダンパホルダ20の加速時に、ダンパホルダ20の加速度がダンパ24に伝達されにくく、ダンパ24の速度が比較的緩やかに変化される、すなわち相対速度差が減衰されるので、ダンパ24側に急激な加速度が生じにくくされている。よって、ダンパ24側に生じる加速度が5m/s
2以下となるように抑制され、上板16上の対象物A内の液体がこぼれにくくされている。ダンパ24は、一端停止された後、
図6に示すような初期位置までダンパの有するばねの性質により徐々に戻る。ダンパ24は、所定の減衰係数を有しており、このような戻りの移動についても、ダンパ24側に加速度が生じにくくされている。
【0050】
このように構成された本発明の一実施形態によれば、上板16に取付けられると共に、弾性体により形成されるダンパ24が、ダンパホルダ20の円形の開口部20aの内側に配置されると共に、上面視で円盤状に形成されている。これにより、上板16及びダンパ24がベース板18に対して自由に動くことができると共に上板16及びダンパ24の移動がベース板18に固定されたダンパホルダ20により抑制される。よって、ダンパ24とダンパホルダ20とが接することによりダンパ24とダンパホルダ20との相対速度差が減少されると共にダンパ24の揺り戻しの加速度を生じにくくすることができる。また、複数の異なる振動が比較的短時間の間に移動体側のダンパホルダ20に加わる場合であっても、ダンパ24側において振動が累積して比較的大きな加速度が生じることを抑制できる。よって、ダンパ24に生じる加速度を抑制することができ、上板16の上に載せた対象物Aの中身のこぼれ、対象物Aの転倒等を抑制できる。
【0051】
このように構成された本発明の一実施形態によれば、上記ダンパ24は、上記ダンパホルダ20と連結されていない状態で独立して慣性力により移動してから上記ダンパ24が上記ダンパホルダ20に接触し上記ダンパ24と上記ダンパホルダ20との相対速度差が減衰される。これにより、複数の異なる振動が比較的短時間の間に移動体2側のダンパホルダ20に加わる場合であっても、ダンパ24側において振動が累積して比較的大きな加速度が生じることをより抑制できる。よって、ダンパ24に生じる加速度をより抑制することができ、上板16の上に載せた対象物Aの中身のこぼれ、対象物Aの転倒等をより抑制できる。
【0052】
このように構成された本発明の一実施形態によれば、上記ダンパ24は、上記ダンパホルダ20に対して回転方向に移動できるので、移動体2及びダンパホルダ20が回転方向に移動した場合に、ダンパ24が同じ回転方向への移動の力を受けにくくされている。従って、移動体2の回転方向の移動時に対象物Aの中身のこぼれ等を抑制できる。
また、従来技術のようにダンパ24とダンパホルダ20とが物理的に接続されている場合には、ダンパ24がダンパホルダ20に対して相対的に回転される場合、後に回転分を戻そうとする力がダンパ24に働き、ダンパ24上の対象物Aに戻りの加速度がかかるため、対象物Aの中身のこぼれ等が生じるおそれがある。これに対し、本発明の一実施形態によれば、上記ダンパ24は、上記ダンパホルダ20と連結されていない状態で上記ダンパホルダ20に対して回転方向に移動できるので、ダンパ24がダンパホルダ20に対して相対的に回転される場合、後に回転分を戻そうとする力の加速度により対象物Aの中身のこぼれ等が生じるおそれを抑制できる。
【0053】
このように構成された本発明の一実施形態によれば、上記上板16は、上記対象物Aを載せていない状態でも慣性力により上記ダンパ24を慣性方向に移動させることができる。これにより、対象物Aが比較的軽量である場合であっても、ダンパ24に生じる加速度を抑制することができる。
【0054】
このように構成された本発明の一実施形態によれば、移動体2が所定の平均走行速度を有し、対象物Aが所定の重量である場合に、上記移動体2の減速時に上記対象物Aにかかる加速度が5m/s2以下となるように、ダンパ24が所定のばね定数とダンパ係数を有するように形成されている。よって、ダンパ24に生じる加速度をより抑制することができ、上板16の上に載せた対象物Aの中身のこぼれ、対象物Aの転倒等をより抑制できる。
【0055】
このように構成された本発明の一実施形態によれば、さらに、上記ベース板18上にすべり機構としてボールキャスタ22が設けられ、上記上板16は、すべり機構としてのボールキャスタ22により支持される。これにより、上記上板16が上記ダンパ24と共に、上記ベース板18に対して相対移動するときに、上記上板16の移動動作をより安定させ、ダンパ24の動作の信頼性を向上させることができる。
【0056】
このように構成された本発明の一実施形態によれば、上記ダンパ24は、上記ダンパホルダ20の厚み以上の厚みで形成されるので、上記ダンパ24が、上記ダンパホルダ20に作用するときに、ダンパホルダ20の厚み全体にダンパ24が作用でき、ダンパ24の動作が安定しやすくできる。例えば、上記ダンパ24の側面の一部のみ、例えば上記ダンパ24の側面の上側の角のみが上記ダンパホルダ20に作用して動作が不安定になることを抑制できる。
【0057】
このように構成された本発明の一実施形態によれば、円盤状のダンパ24を比較的容易に形成できると共に、ばね係数に加えてダンパ係数を有しているダンパ24を実現できる。
【0058】
このように構成された本発明の一実施形態によれば、免振装置1と、移動可能な移動体2と、を備えた搬送装置4を提供できる。
【0059】
次に、
図11乃至
図13により、本発明の第2実施形態による免振装置101を説明する。第2実施形態は、本発明による実施形態の免振装置が傾斜機構を備えている例である。
図11は本発明の第2実施形態による免振装置の分解斜視図である。
図12は本発明の第2実施形態による免振装置において傾斜機構の揺動ブラケットの初期状態を示す側面図である。
図13は本発明の第2実施形態による免振装置において傾斜機構の揺動ブラケットがレール状開口部の後方側に移動した状態を示す側面図である。
第2実施形態による免振装置101は、上述した第1実施形態による免振装置1と構造がほぼ同じであるため、本発明の第2実施形態の第1実施形態とは異なる点のみを説明し、同様な部分については図面に同じ参照符号を付して説明を省略する。
【0060】
図11に示すように、本発明の第2実施形態による免振装置101は、対象物Aを載せた状態で移動可能な移動体2に取り付けられ、搬送装置104を構成している。搬送装置104は対象物Aを載せた状態で搬送可能な装置を形成している。搬送装置104は、例えば、対象物Aを載せた状態で搬送するサービスを提供するサービスロボットである。搬送装置104は、例えば、飲食店内等の施設内を移動し、料理等の対象物Aを厨房等の提供位置から客席のテーブル等の目的位置まで搬送する、及び/又は客席のテーブル等の目的位置から料理を食べ終えた後のコップやお皿等の食器(対象物A)を客席のテーブル等の目的位置から厨房等の提供位置まで戻り搬送するサービスを提供する。免振装置101は、既存の移動体2に取り付けられて搬送装置104を構成してもよい。
【0061】
移動体2は、モータ6を制御する制御部108を備えている。制御部108は、提供位置から目的位置までの移動体2の自律走行を制御する。制御部108は、CPU及びメモリ等を内蔵し、メモリ等に記録された所定の制御プログラムに基づいて提供位置から目的位置まで及び目的位置から提供位置までの移動体2の自律走行を実現するように接続された機器を制御する。制御部108は、車輪11、車輪の操舵装置(図示せず)、モータ6、モニタ9、リーダ部12、検知センサ14等と互いに電気的に接続されている。これらの電気的な接続は、無線通信等により行われてもよい。制御部108の全部又は一部は、移動体2とは別の場所に配置され、無線通信により電気的に接続された機器を制御してもよい。
【0062】
次に、
図11乃至
図13により、免振装置101についてより詳細に説明する。
免振装置101は、後述する傾斜機構128に取り付けられるベース板118と、ベース板118と移動体2の棚部7との間に設けられる傾斜機構128と、を備えている。
【0063】
ベース板118は、傾斜機構128上にねじ等により固定される。よって、ベース板118は、傾斜機構128により傾斜が変更可能に設けられている。ベース板118は、六角形のプレート状に形成されているが、四角形、八角形、円形等の他の形状に形成されてもよい。ベース板118は傾斜機構128上において初期状態ではほぼ水平に配置されている。ベース板118は、金属板により形成されているが、樹脂等により形成されていてもよい。ベース板118の上面118aの中央領域118bは、ほぼ平坦に形成されており、ダンパ24がダンパサポート26上でベース板118の上面118aの中央領域118bにおいてベース板118に沿って平行移動できるように構成されている。このようにベース板118上で、第1実施形態と同様にダンパ24及び上板16等が移動可能に設けられている。
【0064】
傾斜機構128は、移動体2の棚部7に取り付けられるベースブラケット130と、ベースブラケット130上で揺動可能な揺動部である揺動ブラケット132と、を備えている。
【0065】
ベースブラケット130は、移動体2の前後方向に延び且つ縦方向に立ち上がる一対の壁部134を備え、壁部134には、前後方向に延びるレール状開口部136がそれぞれ形成されている。2本の壁部134は平行に延びている。レール状開口部136は、細長い溝開口が前後方向に延び且つ下方に突出する弧状開口部を形成している。
【0066】
揺動ブラケット132は、ベースブラケット130上で揺動可能に設けられている。揺動ブラケット132は、ベース板118の下面に取付けられ且つ固定されている。揺動ブラケット132は、移動体2の前後方向に延び且つ縦方向に垂下する一対の垂下壁部138と、右側の垂下壁部138からさらに右側の外側に突出するように形成されると共に左側の垂下壁部138からさらに左側の外側に突出するように形成されたベアリング部140とを備えている。ベアリング部140は、レール状開口部136内で前後方向に揺動できる。ベアリング部140がレール状開口部136内で前後方向に摺動することにより揺動ブラケット132及びベース板118が傾斜姿勢を変化させるようになっている。揺動ブラケット132がレール状開口部136に沿って前方側に移動した場合には、上板16の上面が後方側に向けて傾斜され、揺動ブラケット132がレール状開口部136に沿って後方側に移動した場合には、上板16の上面が前方側に向けて傾斜される。
【0067】
このように構成された本発明の一実施形態によれば、免振装置101は、さらに、上記ベース板118と上記移動体2との間に設けられる傾斜機構128を備え、傾斜機構128は上記ベースブラケット130上で揺動可能に設けられている揺動ブラケット132を備え、上記揺動ブラケット132が上記レール状開口部136に沿って前方側に移動した場合には、上記上板16が後方側に向けて傾斜され、上記揺動ブラケット132が上記レール状開口部136に沿って後方側に移動した場合には、上記上板16が前方側に向けて傾斜される。これにより、移動体2が前方側に向けて下り傾斜となる場合に、揺動ブラケット132が前方側に移動され、上記上板16の上面が後方側に向けて傾斜される。よって、対象物、例えばコップ内の液面からコップの前方側の上端までの長さを長くでき、対象物Aの中身が前方側からこぼれることをより抑制できる。同様に、移動体2が後方側に向けて下り傾斜となる場合に、揺動ブラケット132が後方側に移動され、上記上板16が前方側に向けて傾斜される。よって、対象物A、例えばコップ内の液面からコップの後方側の上端までの長さを長くでき、対象物Aの中身が後方側からこぼれることをより抑制できる。
【0068】
このように構成された本発明の一実施形態によれば、免振装置101と、移動可能な移動体2と、を備えた搬送装置104を提供できる。
【符号の説明】
【0069】
1 :免振装置
2 :移動体
4 :搬送装置
7 :棚部
16 :上板
18 :ベース板
18a :上面
20 :ダンパホルダ
20a :開口部
22 :ボールキャスタ
24 :ダンパ
101 :免振装置
104 :搬送装置
118 :ベース板
118a :上面
128 :傾斜機構
130 :ベースブラケット
132 :揺動ブラケット
136 :レール状開口部
A :対象物