(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110431
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】捕獲器
(51)【国際特許分類】
A01M 1/10 20060101AFI20240808BHJP
【FI】
A01M1/10 A
A01M1/10 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014943
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】596173229
【氏名又は名称】吉池 喜美登
(72)【発明者】
【氏名】吉池 喜美登
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA12
2B121AA16
2B121BA12
2B121BA16
2B121BA18
2B121BA51
2B121BA58
2B121EA24
(57)【要約】
【課題】屋外でカシナガキクイムシを捕獲するのに、誘引剤と粘着剤と捕獲水を使用せず、落ち葉の除去作業などの保全作業をしないで長期間にわたり捕獲能力を維持する捕獲器を提供する。
【解決手段】透明部を備えた壁面部(1)により縦向きの谷部(2)が備えられ、谷部(2)の下側に下向きで錐状な漏斗部(3)が備えられ、漏斗部(3)の先に補虫孔(4)が備えられ、捕集部(5)には開口部(6)と排水部(7)が備えられ、漏斗部(3)に補集部(5)の開口部(6)が嵌めて付けられ、補虫孔(4)の外側に逆刺状部(8)が備えられ、屋根部(9)が谷部(2)の上側に備えられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面部(1)と谷部(2)と漏斗部(3)と補集部(5)と屋根部(9)を備えた捕獲器であって、透明部を備えた壁面部(1)が縦向きの谷部(2)を形成し、漏斗部(3)は頂部が下向きな錐状で谷部(2)の下側に備えられ、漏斗部(3)の先に補虫孔(4)が備えられ、補集部(5)は開口部(6)が備えられた入れ物状で、漏斗部(3)に補集部(5)の開口部(6)が嵌め付けられ、捕集部(5)の排水部(7)が補虫孔(4)より下に備えられ、補虫孔(4)の外側に逆刺状部(8)が備えられ、屋根部(9)が谷部(2)の上側に備えられたことを特長とする捕獲器。
【請求項2】
捕集部(5)が透明で底に開閉自在口部(15)が備えられたことを特徴とする請求項1記載の捕獲器。
【請求項3】
傾斜した屋根部(9)と壁面部(1)により、上方に尖った錐状の錐状空間部(14)が備えられたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の捕獲器。
【請求項4】
谷部(2)の内側に突き出た逆刺壁(16)が備えられたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の捕獲器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現在の日本の森林において最も重要な生物害とされている、ナラ枯れの原因となるナラ菌を感染させて、ナラ類集団枯死を発祥させるカシナガキクイムシ(以下、カシナガと記載する)の捕獲器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カシナガの食害にあっても対象木が枯れない程度にカシナガの数を減少させることで対象木に耐性を付けさせて枯れないようにすることを目的としたこの種の捕獲器として、後記の非特許文献1に示されるようなトラップ(以後、既知トラップと記載する)が知られている。
【0003】
この既知トラップは、市販のA4サイズのクリアファイルを加工して、補助衝突板と半円形の水抜き孔のある逆三角形状の補虫部分を形成し、補助衝突板を溶着した横幅30cmの背面のクリアファイルの左右の縦縁辺付近の上部と中間部の4箇所に鋲を打ち、対象木の湾曲した樹皮面に沿わせてほぼ密着させて固定し、その後に補助衝突板の下端と捕獲部分の上部中央をホッチキスで固定し、補虫部分に洗剤をまぜた捕獲水を入れて使用する。
【0004】
飛来して対象木に先着したカシナガは集合フェロモンを発し、それに誘引されて多数のカシナガが飛来し、対象木の樹皮面から約2から6cmの間を飛び回りながら、好適部位を探し樹皮にとりつく習性を利用して捕獲するものである。カシナガは既知トラップから透けて見える樹皮に取り付こうとして平滑な合成樹脂面に取り付けずに落下して捕獲水に捕獲され、または飛んでいるときに補助衝突板に衝突し羽根を閉じ自重で落下し捕獲水に捕獲されるようである。手作りできることから多くの森林公園や寺社等の自然愛護活動ボランティア等の団体で使用されている。
【0005】
しかし既知トラップには多くの不都合があり、そのひとつとして雨が降らず日差しの強い日が続くと補虫部分の捕獲水が蒸発してなくなり、カシナガを捕獲できなくなる不都合があった。
【0006】
また、雨天が続くときや夕立のときには、上側に大きく開口している補虫部分に雨水が浸入し捕獲水の石けん成分が希釈されるので、捕獲されたカシナガは捕獲水の表面張力により沈まず死ににくなるため逃げ出すことが多くなる不都合があり、また半円形孔の排水部から補虫水の水面に浮いているカシナガが増加した捕獲水と一緒にこぼれ落ちて逃げる不都合があった。
【0007】
また、梅雨期などは雨水により捕獲水の石けん成分が希釈されて無害になるので、捕獲水にボウフラが湧きヤブ蚊を短期間に大量に繁殖させる不都合があった。
【0008】
カシナガによる被害木は水を吸い上げる能力が著しく阻害されるため、水分の蒸発を少なくし枯れるのを防ぐ自己防衛作用をするためにたくさんの葉を頻繁に落とすので、補虫部分の開口部が上向きに大きく広がっている形状の既知トラップは落ち葉が貯まりやすく、落ち葉が捕獲水の水面に浮いたり、葉の一部が水面から突き出すなどして溜まり、捕獲されたカシナガは落ち葉の水面から突き出している部分を這い上がり飛翔して逃げ出してしまう不都合があった。
【0009】
既知トラップの性能を発揮するには捕中部分が変形せずに取りつけられる、対象木の幹の直径が40cm以上の大木でゆるやかに湾曲した樹皮面が必要であるが、既知トラップを幹の直径が30cm以下の樹皮面の湾曲がきつい小径木に取り付けると、捕中部分の中央がつぶれて変形するので、捕虫部分の開口が狭くなりカシナガが捕獲しにくくなり、また補助衝突板も含めてクリアファイル材の弾性力に対抗して形状を無理に変形させるので取り付けにくく、接合部が外れて破損しやすいという不都合があった。
【0010】
既知トラップは、背面のクリアファイルを対象木の湾曲している樹皮面に沿ってほぼ密着して固定するので、樹皮面を這い回るアリなどの虫類やヤスデなどの多足類などが既知トラップの背面のクリアファイルを這い伝って浸入し、脚を滑らせて捕獲水に落ちて捕獲され溺れ死ぬ不都合があった。
【0011】
コナラやクヌギではカシナガにより開けられた突入孔から樹液が多量ににじみ出ることが多く、その樹液を求めて飛来するカブトムシ類やスズメバチ、タテハチョウ類やセミなどが、開口が上向きに大きく広がった補虫部分の石けん入り捕獲水に捕獲され中で死んでいるのが散見され、既知トラップを付けることでカシナガ以外の大きな昆虫などを捕獲して殺してしまう不都合があった。
【0012】
以上のように、非特許文献1に掲載の既知トラップは、捕獲能力を維持するために使用中は頻繁に捕獲水の補充と落ち葉の除去という保全作業をする必要があり、対象木が多くなるにともない、大変な人手と労力を必要とし多大な人権費がかかるという不都合があり、またカシナガ以外の昆虫などを捕獲死させる不都合があり、直径30cm以下の小径木に使用すると捕獲部の開口が部が変形して狭くなり捕獲能力が減少し、取り付けにくいという不都合があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】ホームページ、http://www.pref.shizuoka.jp/sangyou/sa-850/ar650.pdfに掲載された静岡県経済産業部の「あたらしい林業技術No.650、ナラ枯れ対策に新しいトラップを開発」 のP.3とP.8に掲載のナラ枯れ対策用のトラップ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明が解決しようとする課題は、誘引剤や粘着剤を使用せず、捕獲水を不要とすることで捕獲水を補充する保全作業をなくし、落ち葉が補虫部分に溜まらない構造にして長期間にわたり人手をかけずにカシナガを捕獲できる捕獲器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、壁面部(1)と谷部(2)と漏斗部(3)と補集部(5)と屋根部(9)を備えた捕獲器であって、透明部を備えた壁面部(1)が縦向きの谷部(2)を形成し、漏斗部(3)は頂部が下向きな錐状で谷部(2)の下側に備えられ、漏斗部(3)の先に補虫孔(4)が備えられ、補集部(5)は開口部(6)が備えられた入れ物状で、漏斗部(3)に補集部(5)の開口部(6)が嵌め付けられ、捕集部(5)の排水部(7)が補虫孔(4)より下に備えられ、補虫孔(4)の外側に逆刺状部(8)が備えられ、屋根部(9)が谷部(2)の上側に備えられたことを特長とする捕獲器である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の捕獲器によれば、カシナガを捕獲するのに捕獲水を不要としたことで、捕獲水を補充する保全作業を不要とし、また屋根部(9)が落ち葉を漏斗部(3)に溜まるのを防ぐので、落ち葉を除去するという保全作業が不要となり、また誘引剤と粘着材を使用しないので誘引剤の蒸散にともなう補充作業または交換作業と、粘着材が土ホコリなどの付着により粘着力が低下したときの新品取替作業を不要とし、取付後は数年の長期間にわたり保全作業を必要とせずに安定した捕獲能力を維持できる効果がある。
【0017】
具体的には、本捕獲器に水を補充して回る労力が省け、雨水により石けん水が希釈され界面活性作用が弱まるために、カシナガが死ににくくなり補虫水に浮いている落ち葉や壁を伝って逃げ出すことがない効果があり、捕獲水を使用しないのでボウフラが湧かずヤブ蚊を繁殖させない効果があり、排水孔からカシナガが雨水と一緒にこぼれ落ちて逃げ出すことがない効果があり、本捕獲器は保全作業をしなくても長期間にわたりカシナガを捕獲できる効果がある。
【0018】
石けん成分を混ぜた捕獲水を使用しないので、カシナガにより開けられた突入孔からにじみ出た樹液に飛来するカブトムシ類やタテハチョウ類とセミなどの昆虫を捕獲溺死させない効果がある、また対象木に飛来してくるカブトムシやセミ、羽根の大きいタテハチョウなどの昆虫は、漏斗部(3)の補虫孔(4)より体が大きいので補虫孔(4)を通過できずに漏斗部(3)の途中で止まり、しばらくすると漏斗部(3)の前方の傾斜面(10)から這い出すか飛翔して逃げ出すので、本捕獲器は森林の生態系を壊さず、対象木の樹皮面の近辺を飛び回る習性で大量に飛来するカシナガのみをほぼ選択的に捕獲できる効果がある。
【0019】
本捕獲器を対象木に取りつけると、取りつけた壁面部(1)と対象木の湾曲した樹皮面の間にくさび形の隙間が両側に形成されるので、樹皮面を這い回るアリや虫類の幼体やヤスデなどの多足類などが本捕獲器に入りにくくなる効果があり、まれにくさび形の隙間の壁面部(1)を這い伝って谷部(2)に侵入しても、壁面部(1)を這い回れる能力があり谷部(2)の外に這い逃げ出せるので、それらのカシナガ以外の虫類などを捕獲しない効果がある。
【0020】
カシナガの被害木は、カシナガの生息するトンネル内に繁殖したカビ(ナラ菌)に犯されて水分の吸い上げ能力が減少して水分が不足するので多量に葉を落とすが、落ち葉は屋根部(9)により遮られ捕獲する部分の漏斗部(3)に溜まらないので落ち葉を除去する保全作業をしないですむ効果がある。
【0021】
本捕獲器は、壁面部(1)の平面を縦方向で一部を湾曲した樹皮面に接触させて取りつけて固定するので、小径木でも被害を受けるシラカシやマテバシイなど幹径が30cm以下で幹面がきつく湾曲した小径木への取付が容易であり、谷部(2)の開口が変形してつぶれないので捕獲能力も減少しない効果があり、捕獲水を使用しないので、捕集部(5)に接合不良による隙間孔があっても捕獲水が漏れることがないので、製作が容易となり捕獲水の漏れ孔を塞ぐ手間のかかる補修をしなくてもよい効果がある。
【0022】
本発明の捕獲器は、捕獲水や誘引剤や粘着剤を使用しないので時間が経過しても捕獲能力が低下せず、設置後は数年の長期間にわたり保守作業が不要で人権費を大幅に削減できる効果があり、今まで放置されていた斜面の多い山谷やササ藪の生い茂った広大な山林の中にある数百本以上の多量の対象木に取り付けて使用するのにも適し、人手と活動費用をかけられない都市部の森林緑地公園や寺社の樹木の愛護活動をするボランティア活動グループにも専門知識を必要とせずに簡単に取り付けられ、運用中は保全作業をせずに使用できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施例1の捕獲器を示す斜視図である。
【
図2】
図1の谷部(2)の縦方向中央で切断した縦半断面図である。
【
図3】本発明の実施例2の捕獲器を示す斜視図である。
【
図4】
図3の谷部(2)の縦方向中央で切断した縦半断面図である。
【
図5】
図3の重心線上印(19)部での水平切断部端面図である。
【
図6】本発明の実施例3の捕獲器を示す斜視図である。
【
図7】
図6の谷部(2)の縦方向中央で切断した縦半断面図である。
【
図8】本発明の実施例4の捕獲器を示す斜視図である。
【
図9】
図8の谷部(2)の縦方向中央で切断した縦半断面図である。
【0024】
図1、
図2、
図3、
図4、
図6、
図7、
図8、
図9の各図のおいて、本来は透明部の下側になる部材が透けて見えるが、各図では上下の構造を理解しやすくするために、重なり部の下側になる部品は隠れ線として破線で図示した。
図1、
図3、
図6、
図8の捕集部(5)の内側の厚みの破線は略して外表面のみを図示した。
各図で同じ部位が左右両側にある壁面部(1)は、記述するうえで壁面部(1)の片方を必要により示すときに壁面部(1a)または壁面部(1b)または壁面部(1a、1b)と表記する。
【発明を実施するための形態】
【実施例0025】
図1は、本発明の実施例1の捕獲器を示す斜視図であり、
図2には
図1の谷部(2)の縦方向中央で切断した縦半断面図である。
【0026】
実施例1は、壁面部(1)と谷部(2)と漏斗部(3)と補集部(5)と屋根部(9)を備え、壁面部(1)はポリエチレンテレフタレート(以下PETと表記する)やポリプロピレン、塩ビやアクリルなどの透明性で剛性のある薄平状物で合成樹脂で形成され、各部の大きさと厚さは任意でよいが、好ましくは各壁面部(1a、1b)の縦辺の長さは約300から1000mm、横辺は約80から200mmで、厚みは0.1から5ミリmm程度で、一例として好ましくはその厚みは2ミリmm程度で、各壁面部(1a、1b)の縦辺の長さは約650mm、横辺は約120mmで、壁面部(1a、1b)で、水平断面で内角度は約110°から15°の範囲が望ましいが、一例として好ましくは約70°から45°でV字形状で、前方に開口した縦向きの谷部(2)が備えられる。
【0027】
漏斗部(3)は、壁面部(1a、1b)の下端を対称同形の三角状で下向きに突き出した壁面と、剛性のある薄平状で谷部(2)の開口の下端から下に向かって傾斜した傾斜面(10)とで形成され、水平断面端面形状が2等辺三角形で頂部が下向きな錐状で谷部(2)の下に備えられ、漏斗部(3)の先に孔形状が2等辺三角形状で水平面で好ましくは約直径10mmの範囲を内包する大きさで補虫孔(4)を備える。
【0028】
捕集部(5)は、上側に開口部(6)が備えられた入れ物状で、補虫孔(4)より下に排水部(7)が備えられ、一例として厚みが約0.1から2mmのPETやポリエチレンや塩化ビニール等などの合成樹脂で、不透明でも良いが好ましくは透明で表面が平滑な材料で備えられ、錐状の漏斗部(3)の外面に補集部(5)の開口部(6)を嵌めて添わせて付けて固定し、補虫孔(4)の外側で傾斜面(10)と捕集部(5)の間に錐状の隙間が逆刺状部(8)として備えられる。
【0029】
排水部(7)は、カシナガの平均胴径1.3から1.5mmより小さい好ましくは直径約1mmの小孔で、補虫孔(4)より下の捕集部(5)の側面壁と底壁に好ましくは複数備える。
【0030】
屋根部(9)は、一例として壁面部(1)と同じ材料で、壁面部(1)の上端に水平に備えられ谷部(2)の上側を覆い、屋根部(9)には谷部(2)からはみ出した軒先部(17)が備えられる。
【0031】
実施例1の本捕獲器の使用方法を説明すれば、後述する実施例2の
図5に示すようにカシナガの被害にあうコナラなどの対象木に、壁面部(1a、1b)のうちどちらか一方を対象木の湾曲した樹皮面に、漏斗部(3)を下にして谷部(2)が地面に対してほぼ垂直になるようして、主に対象木の被害が集中する根元から高さ2.5mほどの範囲に取付け固定する。
【0032】
本捕獲器を取付て固定する方法として、壁面部(1)の厚みが薄いときは好ましくは2から6個の固定具の鋲を縦方向にほぼ一列に適宜な間隔で壁面部(1)に突き刺し貫通させて対象木の樹皮面(26)に刺して取付け、壁面部(1)が厚さが厚いときは壁面部(1)に固定具を差し込む孔を、縦方向にほぼ一列に適宜な間隔で好ましくは2から6個ほどを備えて、鋲などの固定具を差し込む孔に貫通させて対象木の樹皮面(26)に刺して壁面部(1)を対象木に取付け固定する。
【0033】
図5に示すように、本捕獲器のV字形状の谷部(2)の壁面部(1b)を樹皮面に固定して前方向に開いた開口を左に向けて取り付ければ、左から右方向に飛んでくるカシナガを捕獲でき、また図示しないが逆に谷部(2)の壁面部(1a)を樹皮面に固定して開口部を右に向けて取り付ければ、右から左方向に飛んでくるカシナガを捕獲できるので、谷部(2)の開口部の方向を左と右の相互逆にして対象木に複数取り付ければ、対象木の樹皮面の左と右の両方向から飛んでくるカシナガを捕獲することができ、本捕獲器2個用いて谷部(2)の開口をそれぞれ右と左に向けて、本捕獲器2個を壁面部(1)で重ねて固定して対象木の樹皮面に取りつけると左右両方向から飛んでくるカシナガを捕獲できる。
【0034】
実施例1の作用効果を説明すれば、カシナガは先行して対象木に取り付いた少数のカシナガの出す集合フェロモンを目標にして、数キロ先から対象木に大量に飛来して集まり、集まったカシナガの多くは頭部を樹皮面の周方向に向けて、対象木の樹皮面からおよそ2から6cm離れた間隔を保って上方または下方にゆっくり飛翔旋回し、または頭部を樹皮面に向けて左右にホバリングしながらゆっくりと飛翔し好適場所を見つけて、そこにとりつく習性である。
【0035】
対象木の周りを飛翔するカシナガは、透明な壁面部(1)を認識できないので避けることなく、谷部(2)の縦に開いた開口から谷底部(11)に向かって浸入し、主に壁面部(1)のどちらか一方の壁面部(1a)または壁面部(1b)に高速に羽ばたく羽根が接触して、その羽根の勢いではね飛ばされ他方の壁面部(1a)や壁面部(1b)または谷底部(11)に衝突してバランスを崩し飛べなくなり、多くは自重で漏斗部(3)に落下してから滑り落ちて補虫孔(4)を通過して捕集部(5)に捕獲される。
【0036】
カシナガが壁面部(1)から落下する勢いが弱く漏斗部(3)の傾斜面(10)で止まっても、トンネル状の巣孔での生息に適した円筒形で脚の短い形態のカシナガは傾斜面(10)の平滑面を這い上れず、もがいているうちに徐々に下に落ちてゆき補虫孔(4)から捕集部(5)に落ちて捕獲される。または、飛翔し直して再び認識できない透明な壁面部(1)に衝突して漏斗部(3)に落下してから補虫孔(4)を通過して捕集部(5)に捕獲される。
【0037】
漏斗部(3)に落下し補虫孔(4)を通過して捕集部(5)に捕獲されたカシナガは、脚が短かいので捕集部(5)の平滑な壁面を這い上れないので逃げ出せない、また捕集部(5)の中で飛翔して外に逃げようとしても、逆刺状部(8)の透明な捕集部(5)の壁面や傾斜面(10)に向かって飛翔し衝突しバランスを崩し飛べなくなり落下することを繰り返すが、漏斗部(3)の先の小さな補虫孔(4)に至れず、すぐに捕集部(5)の底に落ちるので逃げ出せず捕獲され続ける。
【0038】
カシナガは捕集部(5)の底で激しく動きまわるが、カシナガは4日ほど経過すると死ぬので以後逃げ出されることはなく、捕集部(5)の材質が合成樹脂で表面が平滑で厚み0.1mm以上であれば食い破られることはない。
【0039】
排水部(7)は、捕集部(5)に雨水が溜まりすぎるのを防止するために備えたもので、斜めに吹き付ける雨水は、主に谷部(2)の開口から浸入して漏斗部(3)と補虫孔(4)をつたって捕集部(5)に溜まるが、溜まりすぎた雨水は水頭圧で排水部(7)の小孔から排出される。
【0040】
補虫孔(4)より下にある排水孔(7)から雨水が排出されることで、捕集部(5)に溜まった雨水の水面と補虫孔(4)との間隔が保てるので、谷部(2)から落下してきたカシナガは補虫孔(4)を通過して捕集部(5)の水面に落ちて捕獲される。
【0041】
また、排水孔(7)が捕集部(5)に溜まる雨水量を減少させその重さを軽減するので、本捕獲器の各部が厚み0.2ミリ以下の材料で薄く形成されても捕集部(5)や漏斗部(3)や谷部(2)が変形することがなく、本捕獲器を固定する鋲などの固定具が対象木から取れにくくし、本捕獲器が地面に落ち破損するのを防ぐ効果がある。
【0042】
排水孔(7)は捕集部(5)の底部にも設けるのが好ましいが、捕集部(5)の側面壁にのみ排水孔(7)を備えた場合は、捕集部(5)に雨水が溜まっているときに捕獲されたカシナガは、水に濡れると水の粘性に引っ張られて水面から這い上がりにくくなるのでより逃げにくくする効果があり、銅線を捕集部(5)の底に備えれば銅の殺菌効果により、カシナガの死体が沈降して時間がたっても溜まった雨水が腐敗しないので悪臭が発生しない効果があり、まれに補虫孔(4)を通って溜まった雨水にヤブ蚊が入り込み、ボウフラが羽化しても逆刺状部(8)により補虫孔(4)に至れず逃げ出すことができないのでヤブ蚊を大量に繁殖させない効果がある。
【0043】
屋根部(9)が、本捕獲器を仕掛けた対象木から落ちる葉を遮り、落ち葉が谷部(2)に浸入するのを防ぎ、漏斗部(3)に落ち葉が溜まらず補虫孔(4)が塞がれない。壁面部(1)に衝突や接触などして飛翔できなくなり落下してくるカシナガは、漏斗部(3)に落ち葉が溜まっていなければ、何の障害も無く漏斗部(3)と補虫孔(4)を通過して捕集部(5)に捕獲されるので、既知トラップのように補虫部分に溜まる落ち葉を除去して回るという面倒で人手のかかる保全作業をする必要がなく、長期間にわたり捕獲能力が低下しないという効果がある。
【0044】
まれに、暴風雨時に飛ばされた落ち葉が漏斗部(3)に落ちても、漏斗部(3)の形状が錐状であるので、落ち葉は風が吹くとその力で絶えず揺れ動き、落ち葉の多くは傾きを変えられて茎を下にした縦向きの収まりが良い姿勢で補虫孔(4)に嵌まって保持され、落ち葉は薄いので補虫孔(4)を完全に塞がないという効果があり、カシナガは落ち葉の表面と補虫孔(4)の縁とで形成される隙間を通過して捕集部(5)に落下し捕集されるので、補虫孔(4)に落ち葉があってもカシナガを捕獲できる効果がある。
【0045】
屋根部(9)は谷部(2)の上側から落ちる雨水や、対象木の枝葉を伝って滴り落ちる雨水を遮り漏斗部(3)を伝って捕集部(5)に浸入する雨水を減少させるので、台風時の雨や夕立ように短時間に多量の雨がふっても捕集部(5)に溜まる雨水が少量となり、排水部(7)の排水能力が小さくしても、雨水の重みで本捕獲器が重くなり鋲などの固定具がその重みに耐えきれなくなり、本捕獲器が対象木から外れて落下することを防ぐ効果があり、軒先部(17)が大きく谷部(2)の開口から外に突き出しているほど雨水の浸入を防ぐ効果が高くなる。
【0046】
実施例1の本捕獲器は、後述する実施例2の
図5に示すのと同様に壁面部(1a、1b)のどちらか片方を、好ましくは鋲などの固定具を縦方向にほぼ一列に複数打てば、平面状の壁面部(1)の縦方向の平面の一部のみが、湾曲した対象木の樹皮面(26)に接触して固定されるので、幹直径が30cm以下で樹皮面がきつく湾曲した小径の対象木に、谷部(2)と漏斗部(3)と捕集部(5)と屋根部(9)を無理に変形させることなく容易に取り付けられる効果があり、また谷部(2)の開口が変形して狭くならないので捕獲能力が低下しない効果がある。
【0047】
例として
図5に示すように、本捕獲器を対象木に取り付けると平面状の壁面部(1)と湾曲した対象木の樹皮面(26)とが縦方方向に接触する部分の両側に、くさび形の隙間が形成され、その隙間が逆刺状に形成されるため対象木の樹皮面(26)を這い回るアリなどの虫類やヤスデなどの多足類やヤモリなどは本捕獲器に浸入しにくく、まれにくさび形の隙間の壁面部(1)を這い伝って谷部(2)に侵入しても、壁面部(1)を這い回れる能力があり谷部(2)や漏斗部(3)の外に這い逃げ出せるので、カシナガ以外の虫類が捕獲されにくいという効果がある。
【0048】
対象木に飛来してくるカブトムシやセミは体が大きく脚が長く、タテハチョウ類は羽根が大きく、補虫孔(4)より大きい体の昆虫などは補虫孔(4)を通過できずに漏斗部(3)の途中で止まり、しばらくすると漏斗部(3)の前方の傾斜面(10)から這い出すか飛翔して逃げ出すので、本捕獲器は森林の生態系を壊さず、対象木の樹皮面の近辺を飛翔する習性で大量に飛来するカシナガのみをほぼ選択的に捕獲できる効果がある。
【0049】
本捕獲器の壁面部(1)は薄平状物で透明部を備えとは、全てが透明または半透明であること、または部分的に印刷や塗装やシールなどで覆い不透明にして装飾性を高めたり、周囲の風景に溶け込み目立たないようにすることを含み、カシナガは不透明部分を避け透明部を目指して飛翔するので捕獲することができる。
【0050】
谷部(2)がV字形状に形成されたときの内角度は約110°から15°の範囲が望ましいが、好ましくは内角度が70°以下で鋭角であればあるほど捕獲率が高まる効果がある。
【0051】
谷部(2)の内角度を鋭角にすることで捕獲率が高まる理由を述べれば、例として
図5のカシナガ浸入軌跡(27)に示すように透明な壁面部(1a)を認識できずに飛翔直進する、カシナガの高速に羽ばたく羽根が、谷底部(11)に向かって傾斜した壁面部(1a)に接触し、羽ばたく羽根が壁面に衝突する勢いで弾きとばされて、谷底部(11)方向の谷部(2)の奥部に進み、他方側の壁面部(1b)に衝突して、またはバランスを失って飛翔できなくなったカシナガは、谷部(2)の開口から離れた奥部の谷底部(11)の近傍から漏斗部(3)に落下し、谷部(1)の開口から外に逃げることが少なくなるためである。
【0052】
また、対象木の好適部位を探しながらゆっくり飛翔して直進するカシナガは、透明な壁面部(1)を認識できないで、頭部を壁面部(1)に接触させたり離れたりを繰り返しながら前進し、谷底部(11)近くのV字形に狭まった空間まで誘導されると、高速に羽ばたく羽根が壁面部(1)に接触しやすくなり、接触するとバランスを崩し飛翔できず落下するので、谷部(2)が内角度が70°以下の鋭角V字形状で谷底部(11)の近傍に狭い空間が形成されることで捕獲率が高まる効果がある。
【0053】
補虫孔(4)の形状と大きさについて説明すれば、カシナガは平均体長約5mm、胴径約1.3から1.5mmの小さな虫で、対象木に突入しトンネル状の孔筒で生息するのに適した短い脚の円筒体形に進化した甲虫なので、補虫孔(4)は多角形状や円状など任意の形状でよいが、大きさは好ましくは水平面で約直径6から15mmの範囲を内包する大きさで備えれば、補虫孔(4)より大きな体で脚や羽根の長い昆虫は漏斗部(3)の途中で止まり捕集部(5)に落下せず、しばらくすると漏斗部(3)の前側の傾斜面(10)を登ってまたは飛翔して逃げ出せるので、カシナガを以外を捕獲しない効果がある。
【0054】
漏斗部(3)は壁面部(1)と一体とせず、漏斗部(3)は別部品にして谷部(2)の下側に備えてもよく、漏斗部(3)の先を筒状に伸ばして先端に補虫孔(4)を備えれば、垂直に上方向に飛べないカシナガは補虫孔(4)の上側に筒状に伸ばされた漏斗部(3)の中では羽根が内壁に接触するので飛び続けるとができず落下するので逃げ出すことがない。
【0055】
捕集部(5)は不透明でもよいが、好ましくは捕集部(5)を透明にすれば、外に逃げだそうとするカシナガは捕集部(5)の透明な外の見える壁面にむかって飛翔するので、補虫孔(4)から逃げだしにくくする効果があり、捕獲されたカシナガの数量が目視でわかる効果があり、対象木にどれくらいのカシナガが飛来しているかを推測できるので、本捕獲器が有効に作用しているか判別でき、本捕獲器をさらに追加するか取り外して別の対象木に付け替えるかの判断ができるため、本捕獲器を効率よく利用できる効果がある。
【0056】
捕集部(5)は剛性のある材料で形成してもよいが、ポリエチレンや塩化ビニールなどの柔軟性のある合成樹脂材料で成形し漏斗部(3)に付けて備えれば、捕集部(5)を平たくつぶして体積を減少させて梱包できるので保管運送費を安くすることができ、排水部(7)は小孔のほかに目が細かい多数の小孔を有する合成樹脂性の不織布や金網を底部や側面部に備えて水頭圧や毛細管現象により雨水を排水してもよい。
【0057】
屋根部(9)は、全体を不透明または、塗装やシールなどで装飾し一部を不透明にしてもよく、水平のほかに傾斜や逆傾斜で備えてもよいが、傾斜をつけたほうが落ち葉が屋根部(9)の上に溜まらないので好ましく、谷部(2)から張り出した軒先部(17)が大きいほど落ち葉を遮る機能は高くなり好ましい。
【0058】
屋根部(9)は落ち葉が谷部(2)へ浸入するのを防いで、落ち葉が漏斗部(3)の補虫孔(4)を塞ぐのを防ぐためなので、落ち葉が通過しない好ましくは5から15mmほどの大きさの網目を備えた網状物や、任意形の孔を任意数備えた平板状物で備えてもよい。
【0059】
屋根部(9)の他の実施例として、厚みが0.2ミリの壁面部(1)で形成される谷部(2)の谷底部(11)の上端から、谷底部(11)に添って下方向に切れ目をいれ、切れ目の長さは壁面部(1a、1b)の上端辺の水平の長さより長くし、切れ目により分離された両側のそれぞれの壁面部(1a、1b)を、切れ目の終端で谷部(2)の谷側方向に直角に折り曲げて、折り曲げられた壁面部(1a、1b)の重なり部で固定して屋根部(9)として備えてもよい。
【0060】
本捕獲器の漏斗部(3)と捕集部(5)や壁面部(1)と屋根部(9)など各部を取付付け固定する一般的な方法として、接着剤や熱融着や粘着材、ホチキスの針や鋲などにより固定してもよく、他に固定具類での固定の方法としてネジとナット、タッピンねじや割ピン鋲やリベット類や凹と凸の間に各部品を挟んできつく嵌合させ固定するスナップ類などを固定具として用いれば、漏斗部(3)と捕集部(5)を着脱自在に取り付けることができるので、捕集部(5)にカシナガが多量に捕獲され溜まりすぎたときは、漏斗部(3)から捕集部(5)を外しカシナガを排除すれば繰り返し使用できる効果があり、また本捕獲器を固定具を使用し組立方式にすれば部品を重ねて分解梱包できるので、包装体積を小さくでき梱包費と保管と輸送費用を安くできる効果がある。
【0061】
スナップ類の固定具を使用して漏斗部(3)に捕集部(5)を固定する場合は、漏斗部(3)の外側に捕集部(5)の開口部(6)を嵌め、漏斗部(3)と捕集部(5)とが重なった部分の同じ位置にそれぞれ共通の貫通孔を複数備え、漏斗部(3)と捕集部(5)前記共通の貫通孔にスナップ類のオスの嵌入棒を通して、漏斗部(3)と捕集部(5)を貫通して突き出たオスの嵌入棒にスナップ類のメスの嵌入孔を差し込んで漏斗部(3)に捕集部(5)を固定する。
実施例2の捕獲器も、基本的には前記の実施例1と同様である。以下においては、両者の異なる点を主に説明し、同様の箇所については説明を省略する。また、前記実施例1と対応する箇所には、同一の符号を付して説明する。
実施例2は、壁面部(1)がPET(ポリエチレンテレフタレート)やポリプロピレンなどの透明で剛性のある合成樹脂製の薄平状物で形成され、厚みと各部の大きさは任意であるが、一例として好ましくはその厚みは約0.1から2ミリmm程度で、その大きさは短辺260mm長辺650mmで、各辺に傾斜、出っ張り部、切り欠き部等を備える細長い薄平状物で、それを長手方向の中央で折り曲げて壁面部(1a,1b)を形成し、壁面部(1a,1b)が水平断面で好ましくは内角度約45°のV字形状で前方に開口した縦向きの谷部(2)を形成する。
漏斗部(3)は、壁面部(1a,1b)の下側の左右の壁面部下角部(12a,12b)を対称同形状の三角形状でそれぞれ谷部(2)の内側に折り曲げ、谷部(2)の開口の前で好ましくは左右均等に重ね合わせて固定して傾斜面(10)を形成し、水平断面端面形状が谷底部(11)を頂点とした2本の直線と傾斜面(10)の直線とで三角形に形成されて漏斗部(3)が下向きで錐状に備えられ、漏斗部(3)の先に孔形状が三角形の補虫孔(4)を備える。
薄平状物で谷部(2)を形成する効果を述べれば、高価な合成樹脂の射出成型金型を使用することなく安価な切り抜き加工と折り曲げ加工で生産できるので、設備投資の金額を安価にでき受注量に合わせて少量づづ生産できる効果があり、折らずに展開した薄平状の状態で包装梱包すれば体積を小さくでき保管運送の費用を安くできる効果がある。
対称同形の壁面部下角部(12a,12b)を均等に重ね合わせると、左右の材料の剛性が均等になり組み立てやすく、谷部(2)の開口の前で左右が同じ大きさで重なるので外見も整ってみえる利点があり、薄平状物の厚みが0.2mmと薄い場合も漏斗部(3)が三角形の3平面で構成されるので強度が増して形状が変形しにくくなる効果がある。
捕集部(5)は上側に開口部(6)が備えられた入れ物状で、底近くの側壁面に複数の直径約1mmの小孔が排水部(7)として備えられ、一例として厚みが約0.1から1.5mmで柔軟で透明なポリエチレンや塩化ビニール等などの表面が平滑な合成樹脂材料で形成され、捕集部(5)の底部に開閉自在口部(15)として好ましくは合成樹脂製で凹と凸がきつく嵌め合わされて開閉自在できるレール状チャック部を備える。
捕集部(5)の底部に開閉自在口部(15)を備える効果を述べれば、捕集部(5)にカシナガが多量に捕獲され死骸が溜まりすぎて高く積み重なって、補虫孔(4)を塞ぎ捕集部(5)にカシナガが落下しなくなり捕獲できなくなったときや、調査研究のために捕獲数量を確認したいときは、開閉自在口部(15)を開けて中のカシナガを簡単に取出せる効果があり、取出し後は開閉自在口部(15)を閉じればその後も本捕獲器を繰り返し使用できるので運用費用が安くなる効果がある。
排水部(7)の小孔が捕集部(5)の底近くに備えられるので雨水はほとんど溜まらず、捕集部(5)の底のレール状チャック部の両隅の未接着部の貫通したわずかな隙間孔を備えれば、底に付着した水も時間がたてばその隙間孔から、レール状チャック部の外側で口部を形成する2枚の壁面が重なることで形成される隙間に、毛細管現象で吸い取られて拡散して大気中に気化し排出されるので、開閉自在口部(15)としてのレール状チャック部を開いたときに手や受け容器を濡らさないので不快感がなく衛生的にカシナガが取り出せる効果があり、また銅線を水が付着しやすい捕獲部(5)の内部で排水部(7)の近くの底にあたる開閉自在口部(15)の上に備えれば銅の殺菌効果によりカビの発生を防ぎ排水部(7)がカビで塞がれないので長期間使用できる効果がある。
開閉自在口部(15)は、捕集部(5)を柔軟な薄い合成樹脂で筒状にし底部を紐で縛って開閉自在口部(15)として備えたり、捕集部(5)の下部をレ字形に折り曲げてホックやクリップなど挟んでレ字部を密着させて仮固定して開閉自在口部(15)として備えてもよい。
請求項3の実施例として、傾斜がつけられた屋根部(9)と壁面部(1a,1b)により谷部(2)の上側に、上方に尖った錐状の錐状空間部(14)が備えられたことを特徴とする一実施例について説明する。
なお、各屋根取付辺(13)は屋根部(9)に備えるのでなく、各壁面部(1a,1b)の上端の縁部を谷部(2)の内側に90°折り曲げて屋根取付辺(13)として備えて屋根部(9)と固定してもよく、軒先部(17)の先端縁辺に補強片を設けて屋根(9)を変形しにくくしてもよい。
錐状空間部(14)の作用効果を説明すれば、カシナガが壁面部(1)に衝突または接触した後も漏斗部(3)に落下しないで姿勢を立て直して再び飛翔し続けるときは、透明な壁面部(1)をカシナガは認識できずに回避することなく進行しようとして、前方にツンツンと小さく頭部を何回もぶつけながら、壁面部(1)に沿って谷部(2)の上方か下方に飛んでいくのが観察される。
カシナガが上方に向かって壁面部(1)に沿って飛んでいくときは、谷底部(11)の鋭角な空間の壁面部(1)に接触して落ちるか、錐状空間部(14)の頂部まで飛んでいき、錐状空間部(14)の頂部が錐状の狭まい空間でカシナガの高速に羽ばたく羽根が壁面部(1)または屋根部(9)の裏面に接触しやすくなり、羽根が接触すると羽ばたく羽根の勢いではじかれて、またはバランスを損ねてカシナガは飛翔できなくなり、漏斗部(3)に落下して捕獲孔(4)を通過して捕集部(5)に捕獲される。
他の甲虫と同様にカシナガは頭部を上にした斜めの姿勢で飛翔するので上方に進みやすく下方には進みにくいので、屋根部(9)に傾斜をつければカシナガは屋根部(9)の傾斜に沿って上方に飛翔するので錐状空間部(14)の頂部の狭い空間に導かれ、高速に羽ばたく羽根が壁面部(1)や屋根部(9)の裏面に接触しやすくなることで捕獲数が増加する効果がある。
なお、カシナガが壁面部(1)に沿って下方に飛んでいくときは、漏斗部(3)まで誘導される間に谷底部(11)の鋭角な空間の壁面部(1)に接触して落ちるか、そのまま下に飛翔して補虫孔(4)を通過して捕集部(5)に捕獲される。
逆刺壁(16)の作用効果を説明すれば、谷部(2)に飛翔して浸入したカシナガは壁面部(1)の透明部を透して見える樹皮面の好適部位を探しながら飛翔し、またはゆっくりホバリングしながら移動するが、好適部位が見つからないときは透明な壁面部(1)を認識できずに進行しようとするので、何度も頭部を壁面部(1)にぶつけながら壁面部(1)に沿って飛翔し続けるが、谷部(2)の開口に向かって飛翔する場合はそのまま谷部(2)の外に逃げ出るので捕獲できない。
透明な逆刺壁(16)を備えれば、谷部(2)の開口に向かって壁面部(1)に沿って飛翔するカシナガは透明な逆刺壁(16)を認識できないで、そのまま飛翔して進み壁面部(1)と逆刺壁(16)で形成されるV字形の狭い空間に誘導されて、高速に羽ばたく羽根が逆刺壁(16)または壁面部(1)に接触しやすくなり、羽根が接触すればバランスを崩し飛翔できなくなり漏斗部(3)に落下し補虫孔(4)を通過して捕集部(5)に捕獲されるので、逆刺壁(16)が備えられることよりカシナガの捕獲率が高まる効果がある。
本捕獲器は、壁面部(1)などに接触しバランスを崩して飛翔できなくなって落下するカシナガを漏斗部(3)で受け止めて捕獲するため、谷部(2)と漏斗部(3)が縦向きで重力方向で一致した垂直な姿勢で固定するのが好ましい。
山の斜面では対象木が多くが傾いて生えており、その対象木は幹全体が傾斜しているので、傾いた対象木の樹皮面に沿わせて本捕獲器を取り付けると、本捕獲器は傾いた状態で固定されるが、谷部(2)と漏斗部(3)が縦向きで重力方向で一致しない場合は、屋根部(9)近くの谷部(2)の上側にあたる高い部分で、一例として壁面部(1a)に接触して落下するカシナガは、下側に位置する他方の壁面部(1b)に落下し、壁面部(1b)沿って滑り落ちて谷部(2)の開口から外に落ちてしまい捕獲できないことがある。また、逆に取付方によって壁面部(1b)が上になる場合は、カシナガは下側の壁面部(1a)に沿って滑り落ちて谷部(2)の外に落ちるので捕獲できないことがある。
下側に位置する谷部(2)の壁面部(1)に逆刺壁(16)を備えれば、壁面部(1)に沿って滑って落下してくるカシナガは逆刺壁(16)に受け止められて、逆刺壁(16)に沿って滑り落ちてゆき漏斗部(3)に至り補虫孔(4)を通って捕集部(5)に捕獲されるので、本捕獲器を傾いた対象木の樹皮面に沿わせて、重力方向に対して15°程度以内の傾いた状態で取付けてもカシナガを捕獲できる効果がある。
谷部(2)の谷底部(11)の形状を水平断面がU字形やコ字形の場合や谷部(2)の内角度が90°以上の場合は、谷底部(11)では空間が広いので飛翔やホバリングしているカシナガの羽根が壁面部(1)に接触しにくく捕獲されにくいが、カシナガは壁面部(1)に沿って谷部(2)の開口に進むと逆刺壁(16)が備えられた狭い空間に至り、そこで羽根を接触させてバランスを崩して漏斗部(3)に落下するので捕獲できる。
逆刺壁(16)を備えることで、縦に細長い壁面部(1)の縦縁壁(18)が補強され強度を増すので、壁面部(1)を0.2mmなどの薄い安価な材料で形成した場合でも、強度が増して折れ曲がりにくく変形破損しにくくなる効果がある。
壁面部(1)の縦縁壁(18)を突出させて谷部(2)の内側に折り曲げて逆刺壁(16)として備える他に、逆刺壁(16)を断面形状がV字状の別部品で備え壁面部(1)に固定してもよく、逆刺壁(16)の上端を屋根部(9)の裏側に密接して隙間なく備えれば、屋根部(9)の屋根取付片(13)近傍の隅部に沿って谷部(2)の開口に向かって飛翔して進むカシナガを捕獲できる効果がある。
逆刺壁(16)は、谷部(2)の内側の壁面部(1)に複数の小片や極細線を逆刺壁(16)として多数備えてもよく、屋根部(9)の裏側から突出した逆刺壁(16)を設ければ、屋根部(9)の内側に沿って谷部(2)の開口に向かって飛翔するカシナガを逆刺壁(16)と屋根部(9)の狭い空間で捕獲することができるので捕獲率が高まる効果がある。
屋根部(9)からカシナガに認識されにくい直径0.05から0.5ミリ程度で直線や曲がりのある針や合成樹脂や金属の極細線材を妨害線材(20)として屋根部(9)に差し込んで谷部(2)に垂らして備え、カシナガの羽根が妨害線材(20)に接触することでより捕獲率を高めてもよく、妨害線材(20)は屋根部(9)から下に抜け落ちないように差し込む孔より大きい頭部を備えて、または妨害線材(20)は棒部を備えた逆Uの字形にして各棒部を屋根部(9)に設けた別々の孔に差し込んで備え、その棒部は直線または曲がった螺旋状などで漏斗部(3)まで届く長さでもよい。
本捕獲器は、壁面部(1)などにぶつかり自重で落下してくるカシナガを下側の漏斗部(3)で受け止めてから捕集部(5)で捕獲するために、落下してくるカシナガが漏斗部(3)から外れずに内側に落ちるように、谷部(2)と漏斗部(3)が縦向きで重力方向で一致するように取り付けるのが好ましいが、山に生えるコナラなどの対象木は山肌の土が動く谷の方向に傾斜して曲がって生えているものがほとんどで、間近で見ると対象木の樹皮面しか見えず近くに垂直かどうか角度を比較するものがないので、谷部(2)と漏斗部(3)が重力方向で一致するように垂直に取り付けるのが難しい。
本捕獲器が、谷部(2)の開口側に傾斜して前のめりに取り付けられると、上から見て谷部(2)の屋根部(9)近くの上方部が漏斗部(3)の傾斜面(10)の上端の横縁からはみ出すので、その谷部(2)の上方部で羽根が接触して落下するカシナガは、漏斗部(3)の外側に外れて落ちることが増えるので捕獲数が減少する欠点が生じる。
また、本捕獲器が谷部(2)の谷底部(11)側に傾斜して反って取り付けられると、上から見て漏斗部(3)の傾斜面(10)の上端の横縁が屋根部(9)の軒先部(17)からはみ出して斜め上向きな受け口状になるので、谷部(2)に浸入する落ち葉が増えて漏斗部(3)に溜まり補虫孔(4)を塞ぐために、落葉を取り除く保守作業を頻繁にしなければならない欠点が生じる。
重心線上印(19)の作用効果を説明すれば、本捕獲器の重心を通る垂直線上で重心点より上側の壁面部(1)に小孔などの重心線上印(19)を備えれば、最初に重心線上印(19)に鋲を刺して仮止めしてぶら下げれば、本捕獲器は自然に谷部(2)と漏斗部(3)が縦向きで重力方向で一致する姿勢になり、その姿勢状態で重心線上印(19)の下に縦一列に備えた複数の小孔に鋲などの固定具を打って壁面部(1)を対象木に固定すれば、本捕獲器を対象木に最適な垂直姿勢で簡単に取り付けられる効果があり、カシナガは谷部(2)の重力方向下側にある漏斗部(3)に外れることなく落下するので捕獲数が減らない効果があり、また屋根部(9)の重力方向下側に漏斗部(3)があれば落ち葉が屋根部(9)で遮られ漏斗部(3)に溜まらない効果がある。
固定部品(21)として、一度嵌めたら抜けない一対の嵌めきり形などのスナップ類の固定具を使用して漏斗部(3)と捕集部(5)を固定する一実施例を述べれば、漏斗部(3)の外側に捕集部(5)の開口部(6)を嵌め、漏斗部(3)と捕集部(5)が重なる壁部分の漏斗部(3)と捕集部(5)の同じ位置に共通の貫通孔を備え、貫通孔の位置は好ましくは漏斗部(3)の外から見て正面側に2個、両側面に各1個を備え、漏斗部(3)に捕集部(5)重ねて、各共通の貫通孔に固定部品(21)のオスの嵌入棒を通して漏斗部(3)と捕集部(5)貫いて突出させ、オスの突出した嵌入棒に固定部品(21)のメスの嵌入孔を差し込ん固定する。
固定部品(21)として一対の嵌めきり形などのスナップ類の固定具を使用して壁面部(1)と屋根部(9)を固定する一実施例を述べれば、壁面部(1)の上端に屋根部(9)を嵌めて、各壁面部(1a,1b)と両側の屋根取付片(13)が重なった部分の壁面部(1a,1b)と各屋根取付片(13)の同じ位置に共通の貫通孔を備え、その共通の貫通孔の位置は好ましくは谷部(2)の開口付近と谷底部(11)の付近でかつ屋根部(9)の両側に備え、それらの貫通孔に固定部品(21)のオスの嵌入棒を壁面部(1)と屋根取付片(13)に貫通させて突出させ、オスの突出した嵌入棒に固定部品(21)のメスの嵌入孔を差し込ん固定する。
本捕獲器を、固定部品(21)としてスナップ類の固定具を使用し組立方式にすれば、壁面部(1)と捕集部(5)、壁面部(1)と屋根部(9)の各部品を積み重ねて梱包できるので、包装体積を小さくでき梱包費と保管輸送費用を安くできる効果があり、スナップ類を貫通させる共通の貫通孔が組立てる部品同士の位置合わせの目安となるので、分解梱包されている部品の組立作業を容易にするという効果がある。
捕集部(5)に突張り部(24)を備えた一実施例について述べれば、捕集部(5)を柔軟な合成樹脂の薄い材料で形成し、扁平に押しつぶした状態で梱包されると形状くせが付き、組みたてたときに漏斗部(3)より下側の捕集部(5)の側壁同士が密接した状態となり膨らまずに、カシナガを捕獲しておく空間が十分に確保できないので捕獲量が減少する。
捕集部(5)を膨らます一例として、一対の嵌めきり形などのスナップ類の固定具で、胴と平頭と嵌入孔を備えるスナップ類のメスを捕集部(5)の中に入れ、嵌入棒を備えるスナップ類のオスの嵌入棒が貫通する孔を捕集部(5)の側壁に備えて、その孔にスナップ類のオスの嵌入棒を突き通して突出させ、突出した嵌入棒にスナップ類のメスの嵌入孔をきつく嵌めて、突張り部(24)を捕集部(5)の側壁に備えれば、捕集部(5)の両側壁が突張り部(24)により間隔が開けられるので、カシナガを捕獲収容するための空間が確実に形成されて捕獲量が減少しない効果がある。なお、突張り部(24)は、ネジとナットやカラー類で備えてもよい。