(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110435
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】冷熱エネルギー利用方法および冷熱エネルギー利用装置
(51)【国際特許分類】
F17C 7/04 20060101AFI20240808BHJP
【FI】
F17C7/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014953
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】509317531
【氏名又は名称】株式会社MARS Company
(74)【代理人】
【識別番号】100144886
【弁理士】
【氏名又は名称】大坪 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】大野 正樹
(72)【発明者】
【氏名】井筒 伊朗
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB01
3E172AB04
3E172AB05
3E172AB20
3E172BA06
3E172BD02
3E172BD05
3E172DA90
3E172EB03
3E172GA17
3E172GA26
3E172KA03
(57)【要約】
【課題】液化ガスの冷熱エネルギーを有効活用することができる冷熱エネルギー利用方法および冷熱エネルギー利用装置を提供する。
【解決手段】冷熱エネルギー利用装置200は、LNGとの熱交換により二酸化炭素N1を冷却する第1熱交換ユニット300と、二酸化炭素N1との熱交換によりブラインN2を冷却する第2熱交換ユニット400と、を有する。また、冷熱エネルギー利用装置200は、LNGを貯留するタンク110と、タンク110から送出されたLNGを気化する気化器120と、を有するプラント160に接続して用いられ、タンク110から第1熱交換ユニット300にLNGが導入される。また、第1熱交換ユニット300に導入されたLNGは、液状のまま気化器120の上流側においてプラント160に戻される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガスとの熱交換により一次冷媒を冷却する第1熱交換ステップと、
前記一次冷媒との熱交換により二次冷媒を冷却する第2熱交換ステップと、を有することを特徴とする冷熱エネルギー利用方法。
【請求項2】
前記液化ガスを貯留するタンクと、前記タンクから送出された前記液化ガスを気化する気化器と、を有するプラントに接続して用いられ、
前記第1熱交換ステップでは、前記タンクから前記液化ガスが導入される請求項1に記載の冷熱エネルギー利用方法。
【請求項3】
前記第1熱交換ステップの用に供された前記液化ガスは、液状の状態で前記気化器の上流側において前記プラントに戻される請求項2に記載の冷熱エネルギー利用方法。
【請求項4】
前記第1熱交換ステップは、前記液化ガスとの熱交換により前記一次冷媒を冷却する一次冷媒冷却ステップと、
前記一次冷媒冷却ステップにより少なくとも一部がガス化した前記液化ガスを凝縮する凝縮ステップと、を有する請求項3に記載の冷熱エネルギー利用方法。
【請求項5】
前記第1熱交換ステップは、前記一次冷媒冷却ステップに先立って、前記液化ガスを減圧する減圧ステップをさらに有する請求項4に記載の冷熱エネルギー利用方法。
【請求項6】
前記凝縮ステップでは、前記一次冷媒冷却ステップを経ていない前記液化ガスとの熱交換により、前記一次冷媒冷却ステップを経た前記液化ガスを凝縮する請求項4に記載の冷熱エネルギー利用方法。
【請求項7】
前記第2熱交換ステップで冷却された前記二次冷媒を用いて対象物を冷却する対象物冷却ステップをさらに有する請求項1に記載の冷熱エネルギー利用方法。
【請求項8】
前記第2熱交換ステップで冷却された前記二次冷媒を用いて、前記対象物冷却ステップで冷却された前記対象物を冷却状態のまま保管する保管ステップをさらに有する請求項7に記載の冷熱エネルギー利用方法。
【請求項9】
前記第2熱交換ステップでは、前記二次冷媒の一部を凍結させてスラリー状とする請求項7または8に記載の冷熱エネルギー利用方法。
【請求項10】
前記対象物は、蓄冷材であり、
前記対象物冷却ステップでは、未凍結の前記蓄冷材を凍結し、
前記保管ステップでは、前記蓄冷材を凍結状態のまま保管する請求項8に記載の冷熱エネルギー利用方法。
【請求項11】
前記液化ガスは、液化天然ガスまたは液化石油ガスである請求項1に記載の冷熱エネルギー利用方法。
【請求項12】
液化ガスとの熱交換により一次冷媒を冷却する第1熱交換ユニットと、
前記一次冷媒との熱交換により二次冷媒を冷却する第2熱交換ユニットと、を有することを特徴とする冷熱エネルギー利用装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷熱エネルギー利用方法および冷熱エネルギー利用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、LNG(液化天然ガス)を気化する気化器が開示されている。この気化器は、オープンラック式気化器(ORV)であり、複数の熱交換パネルと、各熱交換パネルを下端で並列に接続する下部マニホールドと、各熱交換パネルを上端で並列に接続する上部マニホールドと、を有する。また、各熱交換パネルは、鉛直方向に延在する複数の伝熱管と、各伝熱管を下端で接続した下部ヘッダー管と、各伝熱管を上端で接続した上部ヘッダー管と、を有する。また、気化器は、各伝熱管の外表面に供給するための海水を貯めるトラフと、トラフに海水を供給する海水供給手段と、を有する。
【0003】
このような気化器では、LNGが下部マニホールドから下部ヘッダー管を介して各伝熱管内に導入される。一方、海水供給手段によりトラフに貯められた海水は、トラフから溢流して伝熱管の外表面を濡らしながら垂下する。伝熱管内に導入されたLNGは、伝熱管の外部を流通する海水により加熱されて気化することによりNG(天然ガス)となり伝熱管内を上昇する。そして、このNGは、上部ヘッダー管を介して上部マニホールドへ導出される。このように、特許文献1の気化器は、海水との熱交換によってLNGを加熱して気化することによりNGを生成するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的なプラントでは、特許文献1の気化器の上流側にLNGを一時的に貯留するタンクが配置されており、このタンクから送出されたLNGを気化器によって気化する。そのため、このようなプラントでは、タンクに貯留されたLNG、つまり、気化器で気化される前のLNGの冷熱エネルギーを利用することができない。
【0006】
本発明の目的は、気化される前の液化ガスの冷熱エネルギーを有効活用することのできる冷熱エネルギー利用方法および冷熱エネルギー利用装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
【0008】
(1) 液化ガスとの熱交換により一次冷媒を冷却する第1熱交換ステップと、
前記一次冷媒との熱交換により二次冷媒を冷却する第2熱交換ステップと、を有することを特徴とする冷熱エネルギー利用方法。
【0009】
(2) 前記液化ガスを貯留するタンクと、前記タンクから送出された前記液化ガスを気化する気化器と、を有するプラントに接続して用いられ、
前記第1熱交換ステップでは、前記タンクから前記液化ガスが導入される上記(1)に記載の冷熱エネルギー利用方法。
【0010】
(3) 前記第1熱交換ステップの用に供された前記液化ガスは、液状の状態で前記気化器の上流側において前記プラントに戻される上記(2)に記載の冷熱エネルギー利用方法。
【0011】
(4) 前記第1熱交換ステップは、前記液化ガスとの熱交換により前記一次冷媒を冷却する一次冷媒冷却ステップと、
前記一次冷媒冷却ステップにより少なくとも一部がガス化した前記液化ガスを凝縮する凝縮ステップと、を有する上記(3)に記載の冷熱エネルギー利用方法。
【0012】
(5) 前記第1熱交換ステップは、前記一次冷媒冷却ステップに先立って、前記液化ガスを減圧する減圧ステップをさらに有する上記(4)に記載の冷熱エネルギー利用方法。
【0013】
(6) 前記凝縮ステップでは、前記一次冷媒冷却ステップを経ていない前記液化ガスとの熱交換により、前記一次冷媒冷却ステップを経た前記液化ガスを凝縮する上記(4)に記載の冷熱エネルギー利用方法。
【0014】
(7) 前記第2熱交換ステップで冷却された前記二次冷媒を用いて対象物を冷却する対象物冷却ステップをさらに有する上記(1)に記載の冷熱エネルギー利用方法。
【0015】
(8) 前記第2熱交換ステップで冷却された前記二次冷媒を用いて、前記対象物冷却ステップで冷却された前記対象物を冷却状態のまま保管する保管ステップをさらに有する上記(7)に記載の冷熱エネルギー利用方法。
【0016】
(9) 前記第2熱交換ステップでは、前記二次冷媒の一部を凍結させてスラリー状とする上記(7)または(8)に記載の冷熱エネルギー利用方法。
【0017】
(10) 前記対象物は、蓄冷材であり、
前記対象物冷却ステップでは、未凍結の前記蓄冷材を凍結し、
前記保管ステップでは、前記蓄冷材を凍結状態のまま保管する上記(8)に記載の冷熱エネルギー利用方法。
【0018】
(11) 前記液化ガスは、液化天然ガスまたは液化石油ガスである上記(1)に記載の冷熱エネルギー利用方法。
【0019】
(12) 液化ガスとの熱交換により一次冷媒を冷却する第1熱交換ユニットと、
前記一次冷媒との熱交換により二次冷媒を冷却する第2熱交換ユニットと、を有することを特徴とする冷熱エネルギー利用装置。
【発明の効果】
【0020】
本発明の冷熱エネルギー利用方法および冷熱エネルギー利用装置によれば、今まで使われることのなかった気化前の液化ガスの冷熱エネルギーを用いて二次冷媒を冷却し、この二次冷媒を用いて様々な対象物の冷却を行うことができる。そのため、液化ガスの冷熱エネルギーを無駄にすることなく、有効活用することができる。また、今まで使われることのなかった冷熱エネルギーを有効活用することにより、他のエネルギーの消費が低減され、その分、環境負荷を低減することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1実施形態に係る冷熱エネルギー利用装置の全体構成図である。
【
図8】第2実施形態に係る冷熱エネルギー利用装置の全体構成図である。
【
図9】第3実施形態に係る冷熱エネルギー利用装置の全体構成図である。
【
図10】第4実施形態に係る冷熱エネルギー利用装置の全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の冷熱エネルギー利用方法および冷熱エネルギー利用装置を添付図面に示す各実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0023】
なお、本発明の冷熱エネルギー利用方法および冷熱エネルギー利用装置で利用される液化ガスとしては、特に限定されないが、典型的には、LNG(液化天然ガス)またはLPG(液化石油ガス)である。これらは、液化ガスの中でも特に消費量が多く、その分、廃棄されている冷熱エネルギーが大きい。そのため、より有益な冷熱エネルギー利用方法および冷熱エネルギー利用装置となる。ただし、液化ガスとしては、LNG、LPG以外のいかなるもの、例えば、アンモニアガス、水素ガスなどであってもよい。以下の各実施形態では、説明の便宜上、液化ガスとしてLNGを用いる例について代表して説明する。
【0024】
<第1実施形態>
まず、日本国内におけるNG(天然ガス)の供給方法について簡単に説明する。日本国においては、NGのほとんどを輸入に頼っている。また、NG原産国との間にパイプラインが通っておらず、海運により輸入される。この際、輸送効率を高めるため、NGは、天然ガス田に設置された液化プラントによって-162℃程度のLNG(液化天然ガス)にされ、LNGタンカーを用いて受け入れ基地100に輸送される。
【0025】
図1に示すように、受け入れ基地100には、主に、輸送されたLNGを一時的に保管するタンク110と、タンク110に保管されたLNGを気化して必要量のNGを生成する気化器120と、タンク110と気化器120とを繋ぐ管路130と、管路130の途中に配置され、タンク110内のLNGを気化器120に送出するポンプ140と、気化器120で生成されたNGに匂いを付ける付臭器150と、を有するプラント160が設置されている。図示しないが、付臭器150で臭い付けされたNGは、ガス管を通って市街地等の各所に設置されたガスホルダーに送られて貯留され、さらに、ガスホルダーからガス管を通って各契約先に送られる。
【0026】
図1に示すように、冷熱エネルギー利用装置200は、プラント160に接続して用いられる。このような冷熱エネルギー利用装置200は、タンク110から導入されるLNGとの熱交換によって一次冷媒を冷却する第1熱交換ユニット300と、一次冷媒との熱交換によって二次冷媒を冷却する第2熱交換ユニット400と、二次冷媒との熱交換によって対象物を冷却する冷却装置500と、二次冷媒を用いて冷却装置500により冷却された対象物の冷却状態を維持する保管装置600と、を有する。
【0027】
[第1熱交換ユニット]
まず、第1熱交換ユニット300について説明する。第1熱交換ユニット300は、主に、LNGと一次冷媒であるHFC(ハイドロフルオロカーボン)との熱交換を行う第1熱交換器310と、第1熱交換器310で気化したLNGを凝縮する凝縮器320と、を有する。
【0028】
第1熱交換器310は、外管311と、外管311を貫くように配置された内管312と、を有する。そして、外管311にHFCが導入され、内管312にLNGが導入されることにより、これらの熱交換が行われ、HFCが凝縮する。
【0029】
凝縮器320は、上述した第1熱交換器310と同様の構成である。つまり、凝縮器320は、外管321と、外管321を貫くように配置された内管322と、を有する。そして、外管321に第1熱交換器310を経由したガス状のLNGが導入され、内管322に第1熱交換器310を経由していない液状のLNGが導入されることにより、これらの熱交換が行われ、第1熱交換器310を経由したガス状のLNGが凝縮する。
【0030】
図1に示すように、タンク110は、管路331によって内管312の導入側に接続されている。管路331の途中には送液ポンプ340および膨張弁350が設けられている。また、管路331は、送液ポンプ340と膨張弁350との間において管路334に分岐し、管路334の下流側は、内管322の導入側に接続されている。つまり、管路334は、第1熱交換器310を経由せずに、タンク110と凝縮器320とをバイパスしている。また、管路334の途中には、凝縮器320へのLNGの供給量を調整する流量調整バルブ360が設けられている。また、内管312の導出側は、管路332によって外管321の導入側に接続されている。また、外管321の導出側および内管322の導出側は、管路333によって途中で合流したのち気化器120の上流側に接続されている。特に、図示の構成では、管路130のポンプ140よりも上流側(タンク110とポンプ140との間)に接続されている。
【0031】
このような構成の第1熱交換ユニット300では、第1熱交換ステップが行われる。第1熱交換ステップでは、送液ポンプ340を作動することにより、タンク110内のLNGが管路331を進む。そして、その一部が膨張弁350で減圧されたのち第1熱交換器310の内管312に導入され、残りが管路334を介して凝縮器320の内管322に導入される。この際、流量調整バルブ360によって内管322に導入されるLNGの量が調整される。内管312に導入されたLNGは、内管312内で気化しながら外管311に導入されるガス状のHFCから熱を奪い、少なくとも一部がガス化した状態、本実形態では全部がガス化した状態で内管312から導出される。LNGを内管312に導入する前に膨張弁350で減圧することにとり、内管312内でLNGが気化し易くなり、冷却効率が高まる。一方で、外管311内のHFCは、内管312に導入されたLNGに熱を奪われ、凝縮して液化したのち外管311から導出される。このような第1熱交換器310によれば、-162°という超低温のLNGを用いるため、HFCを効率的に凝縮・液化することができる。このステップが減圧ステップおよび一次冷媒冷却ステップである。
【0032】
内管312から導出されたガス状のLNGは、管路332を介して凝縮器320の外管321に導入される。管路334を介してタンク110から直接内管322に導入された液状のLNGは、外管321内に導入されたガス状のLNGから熱を奪い、液状のまま内管322から導出される。一方で、外管321に導入されたガス状のLNGは、内管322に導入された液状のLNGに熱を奪われ、凝縮して液化したのち外管321から導出される。内管322から導出された液状のLNGおよび外管321から導出された液状のLNGは、管路333の途中で合流したのち、管路130に合流する。このような凝縮器320によれば、ガス化したLNGを容易に液状に戻すことができる。このステップが凝縮ステップである。
【0033】
なお、説明の便宜上、
図1中にはガス状であることを示す(G)と、液状であることを示す(L)とを図示している。
【0034】
このような構成の第1熱交換ユニット300によれば、プラント160から借りたLNGを実質的に全量かつ液状のままプラント160に戻すことができる。そのため、実質的に、LNGが減らず、NGの生産量を下げることがない。また、実質的に、LNGを消費することなく、LNGの冷熱エネルギーだけを取り出すことができる。したがって、環境負荷の少ない優れた熱交換ユニットとなる。また、このような第1熱交換ユニット300は、気化器120の上流側に、タンク110からLNGを借りる管路331と、借りたLNGをプラント160に戻す管路333と、を接続するだけのため、プラント160の処理工程については、従来通りでよい。そのため、既存のプラント160に対して大掛かりな改修、改造などを伴うことなく、プラント160に第1熱交換ユニット300を導入することができる。したがって、冷熱エネルギー利用装置200の導入コストが極めて安価となる。また、凝縮器320において外管321に導入されたガス状のLNGの熱を内管322に導入された液状のLNGに吸収させるため、環境負荷の低減を図ることもできる。
【0035】
以上、第1熱交換ユニット300について説明したが、第1熱交換ユニット300の構成は、LNGを用いて一次冷媒であるHFCを冷却することができれば、特に限定されない。また、凝縮器320の構成も、ガス化したLNGを凝縮することができれば、特に限定されない。また、例えば、凝縮器320を省略して、ガス状のLNGをプラント190に戻してもよい。この場合、ガス状のLNGを気化器120の上流側に戻して管路130を流れる液状のLNGと合流させてもよいし、気化器120の下流側に戻して気化器120でガス化したLNG(NG)と合流させてもよい。
【0036】
[第2熱交換ユニット400]
次に、第2熱交換ユニット400について説明する。
図1に示すように、第2熱交換ユニット400は、主に、一次冷媒であるHFCとの熱交換によって二次冷媒であるエタノール水溶液(図では「EtOH」と記載する。)の一部を凍結させて氷スラリーIを生成する第2熱交換器410と、生成された氷スラリーIを貯留する貯留タンク420と、を有する。なお、氷スラリーIとは、エタノール水溶液中に微細な氷(結晶)が混濁したシャーベット状の氷をいい、スラリー氷、アイススラリー、スラリーアイスなどとも呼ばれる。また、エタノール水溶液のエタノール濃度は、特に限定されないが、本実施形態の用途(後述する蓄冷材800の凍結および保管)に用いる場合には、45%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。これにより、エタノール水溶液の凍結点が-35℃以下となる。そのため、氷スラリーIがより低温となり、後述するように、蓄冷材800をより迅速に凍結させることができる。
【0037】
図2に示すように、第2熱交換器410は、外管411と、外管411の内側に同軸的に配置された内管412と、を有する。外管411および内管412は、立てて設置され、軸が鉛直方向を向く。つまり、第2熱交換器410は、竪置き型二重管式蒸発器である。また、外管411および内管412は、それぞれ、下端側に設けられた導入口と、上端側に設けられた導出口と、を有する。そして、外管411に第1熱交換器310で凝縮された液状のHFCが導入され、内管412にエタノール水溶液が導入されることにより、これらの熱交換が行われ、エタノール水溶液が冷却される。
【0038】
貯留タンク420は、第2熱交換器410で冷却されたエタノール水溶液を導入する導入口と、タンク内のエタノール水溶液を第2熱交換器410に向けて導出する導出口と、を有する。また、貯留タンク420は、タンク内の氷スラリーIを撹拌する図示しない撹拌機を有する。撹拌機によって氷スラリーIを撹拌することにより、貯留タンク420内での氷スラリーIの凝集を抑制することができる。
【0039】
外管411の導出側は、管路441によって外管311の導入側に接続され、外管311の導出側は、管路442によって外管411の導入側に接続されている。管路442の途中には、送液ポンプ450および膨張弁460が設けられている。また、内管412の導出側は、管路443によって貯留タンク420の導入側に接続され、貯留タンク420の導出側は、管路444によって内管412の導入側に接続されている。管路444の途中には、送液ポンプ470が設けられている。
【0040】
このような構成の第2熱交換ユニット400では、第2熱交換ステップが行われる。第2熱交換ステップでは、送液ポンプ450の作動により、管路441,442を介して外管411と外管311との間をHFCが循環する。第1熱交換器310で凝縮された液状のHFCは、膨張弁460によって減圧されたのちに外管411に導入される。外管411に導入されたHFCは、管内で気化しながら内管412を流れるエタノール水溶液から熱を奪い、少なくとも一部、本実形態では全部がガス化した状態で外管411から導出される。外管411から導出されたガス状のHFCは、再び第1熱交換器310によって凝縮され液化する。HFCをこのように循環させることにより、第2熱交換器410においてエタノール水溶液を連続的に冷却することができる。HFCを外管411に導入する前に膨張弁460で減圧することにとり、外管411内でHFCが気化し易くなり、冷却効率が高まる。
【0041】
このようなHFCの循環と共に、送液ポンプ470を作動させて、管路443,444を介して内管412と貯留タンク420との間でエタノール水溶液を循環させる。これにより、第2熱交換器410においてエタノール水溶液が連続的に冷却され、次第にエタノール水溶液中に微細な氷が発生し、氷スラリーIが生成される。生成された氷スラリーIは、貯留タンク420に貯留される。このような第2熱交換ユニット400によれば、氷スラリーIを効率的に生成することができる。
【0042】
ここで、氷スラリーIの生成時に内管412の内壁で氷が成長してしまうと、エタノール水溶液の循環が鈍くなり、氷スラリーIの生成効率が低下するおそれがある。そこで、内管412内に、内壁に付着した氷を削り取るための回転ブレードや、内管412内を流れるエタノール水溶液を撹拌して内壁に氷が付着し難くする撹拌機を設置してもよい。また、別の効果として、これら回転ブレードや撹拌機によって内管412内を流れるエタノール水溶液に対流が生じ、HFCとエタノール水溶液との熱交換効率が高まる。
【0043】
以上、第2熱交換ユニット400について説明したが、第2熱交換ユニット400の構成は、一次冷媒を用いて二次冷媒を冷却することができれば、特に限定されない。
【0044】
また、一次冷媒としては、HFCに限定されず、LNG(液化ガス)によって冷却され、かつ、二次冷媒を冷却することができれば、如何なるものであってもよい。例えば、HCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)、HFO(ハイドロフルオロオレフィン)、プロパン、プロピレン、ブタン、イソブタン、ヘキサフルオロプロパン、ヘプタフルオロプロパン、アンモニア、二酸化炭素(炭酸ガス)等の自然冷媒(ガス)などを用いてもよい。例えば、一次冷媒は、冷熱エネルギー利用装置200で利用される液化ガスおよび二次冷媒の種類によって適宜変更することができる。
【0045】
また、二次冷媒としては、エタノール水溶液に限定されず、一次冷媒によって冷却され、かつ、対象物を冷却することができれば、如何なるものであってもよい。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコールなどの各種アルコールまたはこれらの水溶液、砂糖水、塩化ナトリウム水溶液(塩水)、塩化カルシウム水溶液などを用いてもよい。例えば、二次次冷媒は、冷熱エネルギー利用装置200で利用される一次冷媒および対象物の種類によって適宜変更することができる。
【0046】
[冷却装置500]
冷却装置500は、エタノール水溶液との熱交換によって対象物である蓄冷材800を凍結する。なお、蓄冷材800は、容器に保冷剤が収容されたものであり、容器が柔軟なソフトタイプのものであってもよいし、容器が硬質なハードタイプのものであってもよい。また、蓄冷材800は、保冷材とも呼ばれる。蓄冷材と保冷材との違いは、明確ではないが、蓄冷成分の殆どが水分であり氷点下数℃で凍結するものが保冷材であり、蓄冷成分に化学薬品を使って氷点下10℃以下で凍結するものが蓄冷材であるとも言われている。
【0047】
図3に示すように、冷却装置500は、氷スラリーIが貯留された冷却槽510を有する。そして、未凍結の蓄冷材800を冷却槽510内の氷スラリーIに浸漬することにより、蓄冷材800を冷却し、凍結させる。なお、氷スラリーI(一部が凍結した二次冷媒)によれば、潜熱の作用によって、氷成分が融解するまで氷スラリーIの温度がエタノール水溶液の凍結点付近に維持される。固体を液体とするための融解熱は、液体の比熱と比べて高いため、より長時間、冷却槽510内を低温に維持することができ、蓄冷材800を効率的に凍結させることができる。このステップが対象物冷却ステップである。
【0048】
冷却槽510は、管路521,522によって貯留タンク420に繋がっており、貯留タンク420内の氷スラリーIが冷却槽510との間を循環する。具体的には、蓄冷材800との熱交換により溶けたエタノール水溶液が管路521を介して貯留タンク420に戻され、貯留タンク420内のフレッシュな氷スラリーIが管路522を介して冷却槽510に供給されることにより、冷却槽510内の氷スラリーIが所定量以上に保たれる。そのため、冷却槽510内から氷スラリーIが枯渇することがなく、未凍結の蓄冷材800を連続して効率的に凍結させることができる。
【0049】
また、冷却装置500は、冷却槽510上に昇降自在な棚530が設けられている。棚530に未凍結の蓄冷材800を並べて、
図4に示すように、棚530毎、氷スラリーI内に浸漬させることにより、棚530内の複数の蓄冷材800を一括して凍結することができる。これにより、凍結作業が容易となる。なお、未凍結の蓄冷材800を棚530に並べる作業、棚530を氷スラリーI内に浸漬させる作業、棚530から凍結済の蓄冷材800を回収する作業などは、作業者が行ってもよいし、機械が自動で行ってもよい。
【0050】
以上、冷却装置500について説明したが、冷却装置500の構成としては、氷スラリーIを用いて蓄冷材800を凍結させることができれば、特に限定されない。例えば、貯留タンク420と冷却槽510とが繋がっておらず、作業者が貯留タンク420内の氷スラリーIを冷却槽510まで搬送してもよい。
【0051】
また、氷スラリーIで冷却する対象物としては、蓄冷材800に限定されず、冷却を必要とするものであれば、例えば、生肉、魚介類、野菜、果実などの食品、臓器、薬品など、如何なるものであってもよい。また、対象物を凍結させる必要もない。
【0052】
[保管装置600]
保管装置600は、氷スラリーIの冷熱エネルギーを利用して、冷却装置500で凍結させた蓄冷材800の凍結状態を維持するための冷凍庫である。
【0053】
図5に示すように、保管装置600は、凍結状態の蓄冷材800を保管する保管室610と、保管室610と隣り合って設けられ氷スラリーIが貯留される貯留室620と、を有する。また、保管室610と貯留室620とを仕切る壁630は、アルミニウム、ステンレス鋼などの熱伝達率の高い材料で構成されている。そのため、貯留室620に貯留された氷スラリーIの冷熱が壁630を介して保管室610に効率的に伝わる。これにより、保管室610が冷却され、保管室610内の蓄冷材800の凍結状態が維持される。このステップが保管ステップである。
【0054】
貯留室620は、管路641,642によって貯留タンク420に繋がっており、貯留タンク420内の氷スラリーIが貯留室620との間を循環する。具体的には、保管室610との熱交換により溶けたエタノール水溶液が管路641を介して貯留タンク420に戻され、貯留タンク420内のフレッシュな氷スラリーIが管路642を介して貯留室620に供給されることにより、貯留室620内の氷スラリーIが所定量以上に保たれる。そのため、貯留室620内から氷スラリーIが枯渇することがなく、保管室610を連続して効率的に冷却することができ、蓄冷材800の凍結状態がより確実に維持される。
【0055】
以上、保管装置600について説明したが、保管装置600の構成としては、氷スラリーIを用いて蓄冷材800の凍結状態を維持することができれば、特に限定されない。例えば、冷却装置500と同様に、氷スラリーIに蓄冷材800を浸漬させて、蓄冷材800の凍結状態を維持してもよい。また、例えば、貯留タンク420と貯留室620とが繋がっておらず、例えば、作業者が貯留タンク420内の氷スラリーIを貯留室620まで搬送してもよい。また、冷却装置500で凍結された蓄冷材800がコンベアなどによって自動的に保管室610に搬送される構成でもよい。
【0056】
このように、冷却装置500および保管装置600では、蓄冷材800の凍結や保管を行うために氷スラリーIを消費しているが、この消費量と同等またはそれ以上の氷スラリーIを第2熱交換ユニット400で生成することにより、冷却装置500および保管装置600内の氷スラリーIが枯渇することがない。また、エタノール水溶液自体は、装置内で液状とスラリー状との間で状態変化だけを繰り返し、絶対量は実質的に減らない。このように、氷スラリーIの生成および消費を装置内で繰り返すことにより、エタノール水溶液の補充などが不要となり、メンテナンスが容易となる。また、優れたエネルギー効率を有する冷熱エネルギー利用装置200となる。
【0057】
以上のようにして保管装置600に保管された凍結済みの蓄冷材800は、例えば、冷凍車などを用いて必要箇所に搬送され、搬送先において使用される。蓄冷材800の搬送先やそこでの用途は、特に限定されないが、例えば、食品の冷却(昇温抑制)、室内の冷房などが挙げられる。具体的には、
図6に示すように、保温ケース700内に食品Fと共に凍結済の蓄冷材800を収容してもよい。これにより、食品の温度上昇を抑制することができ、食品の鮮度をより長い時間保つことができるようになる。また、例えば、
図7に示すように、建物B内に凍結済の蓄冷材800を配置してもよい。蓄冷材800の冷熱で冷やした空気を室内に導入することにより、室内を冷房することができる。ただし、食品の冷却方法や室内の冷房方法は、特に限定されない。
【0058】
なお、これら冷却の用に供されて溶解した蓄冷材800は、種々の手段で回収されて再び冷却装置500により凍結され、保管装置600で凍結状態のまま保管される。このように、蓄冷材800の循環サイクルを構築することにより、廃棄されるハード(物)が実質的になくなり、環境負荷が極めて小さい冷熱エネルギー利用装置200となる。そのため、冷熱エネルギー利用装置200の価値がさらに高まる。
【0059】
以上、冷熱エネルギー利用装置200について説明したが、冷熱エネルギー利用装置200の構成は、特に限定されない。例えば、第1熱交換器310、凝縮器320、第2熱交換器410および貯留タンク420が並列または直列に複数設けられていてもよい。これにより、処理能力を高めることができる。また、冷熱エネルギー利用装置200の設置場所は、特に限定されず、受け入れ基地100以外であってもよいし、当然、日本以外の国であってもよい。
【0060】
<第2実施形態>
本実施形態に係る冷熱エネルギー利用装置200は、LNGの戻し先が異なること以外は、前述した第1実施形態の冷熱エネルギー利用装置200と同様である。なお、以下の説明では、本実施形態の冷熱エネルギー利用装置200に関し、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、本実施形態の各図では、前述した実施形態と同様の構成について、同一符号を付している。
【0061】
図8に示すように、本実施形態の冷熱エネルギー利用装置200では、管路333の下流側がタンク110に接続されている。つまり、タンク110から借りたLNGを、再びタンク110に戻している。例えば、前述した第1実施形態では、管路333がタンク110の下流側において管路130に合流するため、プラント160が稼働し、タンク110から気化器120にLNGが送出されているときにしか、冷熱エネルギー利用装置200を稼働させることができない場合がある。これに対して、本実施形態では、管路333がタンク110に合流するため、プラント160が稼働していない状態でも冷熱エネルギー利用装置200を稼働させることができる。
【0062】
このような第2実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0063】
<第3実施形態>
本実施形態に係る冷熱エネルギー利用装置200は、LNGの戻し先が異なること以外は、前述した第1実施形態の冷熱エネルギー利用装置200と同様である。なお、以下の説明では、本実施形態の冷熱エネルギー利用装置200に関し、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、本実施形態の各図では、前述した実施形態と同様の構成について、同一符号を付している。
【0064】
図9に示すように、本実施形態の冷熱エネルギー利用装置200では、管路333の下流側が管路130のポンプ140の下流側、つまり、気化器120とポンプ140との間に接続されている。この構成では、管路333内のLNGをポンプ140で引っ張ることができないため、管路333の途中に別途、送液ポンプ390が設けられている。
【0065】
このような第3実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0066】
<第4実施形態>
本実施形態に係る冷熱エネルギー利用装置200は、LNGの戻し先が異なること以外は、前述した第1実施形態の冷熱エネルギー利用装置200と同様である。なお、以下の説明では、本実施形態の冷熱エネルギー利用装置200に関し、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、本実施形態の各図では、前述した実施形態と同様の構成について、同一符号を付している。
【0067】
図10に示すように、本実施形態の冷熱エネルギー利用装置200では、管路333の下流側が3股に分岐しており、そのうちの管路333aがポンプ140の上流側において管路130に接続され、管路333bがポンプ140の下流側において管路130に接続され、管路333cがタンク110に接続されている。また、管路333a、333b、333cには、それぞれ、バルブ380が設けられており、さらに、管路333bには、送液ポンプ390が設けられている。このような構成では、各バルブ380の開閉によって、どの管路333a,333b,333cを用いてLNGをプラント160に戻すかを選択することができる。
【0068】
このような第4実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0069】
以上、本発明の冷熱エネルギー利用方法および冷熱エネルギー利用装置を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物または任意の工程が付加されていてもよい。また、各実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0070】
100…受け入れ基地、110…タンク、120…気化器、130…管路、140…ポンプ、150…付臭器、160…プラント、200…冷熱エネルギー利用装置、300…第1熱交換ユニット、310…第1熱交換器、外管…シェル、312…内管、320…凝縮器、321…外管、322…内管、331…管路、332…管路、333…管路、333a…管路、333b…管路、333c…管路、334…管路、340…送液ポンプ、350…膨張弁、360…流量調整バルブ、380…バルブ、390…送液ポンプ、400…第2熱交換ユニット、410…第2熱交換器、411…外管、412…内管、420…貯留タンク、441…管路、442…管路、443…管路、444…管路、450…送液ポンプ、460…膨張弁、470…送液ポンプ、500…冷却装置、510…冷却槽、511…冷却槽、521…管路、522…管路、530…棚、600…保管装置、610…保管室、620…貯留室、630…壁、641…管路、642…管路、700…保温ケース、800…蓄冷材、I…氷スラリー