IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社MARS Companyの特許一覧

特開2024-110436蓄冷材凍結装置および蓄冷材利用方法
<>
  • 特開-蓄冷材凍結装置および蓄冷材利用方法 図1
  • 特開-蓄冷材凍結装置および蓄冷材利用方法 図2
  • 特開-蓄冷材凍結装置および蓄冷材利用方法 図3
  • 特開-蓄冷材凍結装置および蓄冷材利用方法 図4
  • 特開-蓄冷材凍結装置および蓄冷材利用方法 図5
  • 特開-蓄冷材凍結装置および蓄冷材利用方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110436
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】蓄冷材凍結装置および蓄冷材利用方法
(51)【国際特許分類】
   F25D 9/00 20060101AFI20240808BHJP
   F25C 1/00 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
F25D9/00 B
F25C1/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014954
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】509317531
【氏名又は名称】株式会社MARS Company
(74)【代理人】
【識別番号】100144886
【弁理士】
【氏名又は名称】大坪 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】大野 正樹
(72)【発明者】
【氏名】井筒 伊朗
【テーマコード(参考)】
3L044
【Fターム(参考)】
3L044AA04
3L044BA01
3L044BA04
3L044CA04
3L044DB02
3L044KA04
3L044KA05
(57)【要約】
【課題】繰り返し使用可能な蓄冷材をスラリー状の液冷媒を用いて凍結させ、凍結状態の蓄冷材を用いて対象物を冷却することにより、環境負荷の少ない蓄冷材凍結装置および蓄冷材利用方法を提供する。
【解決手段】蓄冷材凍結装置100は、回路200B内を循環するエタノール水溶液を冷却して氷スラリーIとする一次冷却装置200と、氷スラリーIを用いて、繰り返し冷却の用に供することのできる蓄冷材800を凍結させる二次冷却装置300と、を有する。一次冷却装置200は、氷スラリーIを貯留する貯留タンク250を有し、貯留タンク250から二次冷却装置300に氷スラリーIが供給される。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路内を循環する液冷媒を冷却してスラリー状とする一次冷却装置と、
前記スラリー状の液冷媒を用いて、繰り返し冷却の用に供することのできる蓄冷材を凍結させる二次冷却装置と、を有することを特徴とする蓄冷材凍結装置。
【請求項2】
前記一次冷却装置は、前記スラリー状の液冷媒を貯留する貯留タンクを有し、
前記貯留タンクから前記二次冷却装置に前記スラリー状の液冷媒が供給される請求項1に記載の蓄冷材凍結装置。
【請求項3】
前記スラリー状の液冷媒を用いて、前記二次冷却装置で凍結された前記蓄冷材を凍結状態のまま保管する保管装置を有する請求項1に記載の蓄冷材凍結装置。
【請求項4】
前記一次冷却装置は、前記スラリー状の液冷媒を貯留する貯留タンクを有し、
前記貯留タンクから前記保管装置に前記スラリー状の液冷媒が供給される請求項3に記載の蓄冷材凍結装置。
【請求項5】
回路内を循環する液冷媒を冷却してスラリー状とする一次冷却ステップと、
前記スラリー状の液冷媒を用いて、繰り返し冷却の用に供することのできる蓄冷材を冷却する二次冷却ステップと、を有することを特徴とする蓄冷材利用方法。
【請求項6】
冷却の用に供された前記蓄冷材を回収する回収ステップをさらに有する請求項5に記載の蓄冷材利用方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄冷材凍結装置および蓄冷材利用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、氷スラリーを生成し、生成した氷スラリーの冷熱エネルギーを利用して室内を冷房する空調装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08-247505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、特許文献1では、氷スラリー自体を用いて室内を冷房するため、氷スラリーが溶けることにより発生するブラインを廃棄する必要がある。そのため、環境負荷の大きい空調装置となる。
【0005】
本発明の目的は、繰り返し使用することのできる蓄冷材をスラリー状の液冷媒を用いて凍結させ、凍結状態の蓄冷材を用いて対象物を冷却することにより、環境負荷の少ない蓄冷材凍結装置および蓄冷材利用方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
【0007】
(1) 回路内を循環する液冷媒を冷却してスラリー状とする一次冷却装置と、
前記スラリー状の液冷媒を用いて、繰り返し冷却の用に供することのできる蓄冷材を凍結させる二次冷却装置と、を有することを特徴とする蓄冷材凍結装置。
【0008】
(2) 前記一次冷却装置は、前記スラリー状の液冷媒を貯留する貯留タンクを有し、
前記貯留タンクから前記二次冷却装置に前記スラリー状の液冷媒が供給される上記(1)に記載の蓄冷材凍結装置。
【0009】
(3) 前記スラリー状の液冷媒を用いて、前記二次冷却装置で冷却された前記蓄冷材を凍結状態のまま保管する保管装置を有する上記(1)に記載の蓄冷材凍結装置。
【0010】
(4) 前記一次冷却装置は、前記スラリー状の液冷媒を貯留する貯留タンクを有し、
前記貯留タンクから前記保管装置に前記スラリー状の液冷媒が供給される上記(3)に記載の蓄冷材凍結装置。
【0011】
(5) 回路内を循環する液冷媒を冷却してスラリー状とする一次冷却ステップと、
前記スラリー状の液冷媒を用いて、繰り返し冷却の用に供することのできる蓄冷材を凍結させる二次冷却ステップと、を有することを特徴とする蓄冷材利用方法。
【0012】
(6) 冷却の用に供された前記蓄冷材を回収する回収ステップをさらに有する上記(5)に記載の蓄冷材利用方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の蓄冷材凍結装置および蓄冷材利用方法によれば、回路内を循環する液冷媒を冷却して生成されたスラリー状の液冷媒を用いて繰り返し使用可能な蓄冷材を凍結させ、凍結状態の蓄冷材を冷却の用に供する。つまり、スラリー状の液冷媒から冷熱だけを取り出し、液冷媒自体は回路内を循環するため、実質的に一次冷却装置から液冷媒が減らない。また、スラリー状の液冷媒により凍結される蓄冷材は、冷却の用に供され溶解しても、再度凍結することにより再利用が可能である。したがって、廃棄されるハード(物)が実質的になくなり、環境負荷が極めて小さい蓄冷材凍結装置および蓄冷材利用方法となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】好適な実施形態に係る蓄冷材凍結装置を示す全体構成図である。
図2】冷却装置の一例を示す図である。
図3】冷却装置の一例を示す図である。
図4】保管装置の一例を示す図である。
図5】蓄冷材の使用方法の一例を示す図である。
図6】蓄冷材の使用方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の蓄冷材凍結装置および蓄冷材利用方法を添付図面に示す各実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0016】
図1に示すように、蓄冷材凍結装置100は、液冷媒としてのエタノール水溶液(図では「EtOH」と記載。)を冷却して氷スラリーI(スラリー状の液冷媒)を生成する一次冷却装置200と、氷スラリーIとの熱交換によって蓄冷材800を凍結させる二次冷却装置300と、氷スラリーIを用いて蓄冷材800を凍結状態のまま保管する保管装置400と、を有する。保管装置400で保管された蓄冷材800は、必要時に必要箇所に搬送され、搬送先において冷却の用に供される。そして、冷却の用に供されて溶解した蓄冷材800は、回収されて再び二次冷却装置300および保管装置400において凍結、保管される。これにより、蓄冷材800の利用サイクルが構築される。
【0017】
このことから、蓄冷材凍結装置100を用いた蓄冷材800の利用方法は、一次冷却装置200によってエタノール水溶液から氷スラリーIを生成する一次冷却ステップと、二次冷却装置300によって氷スラリーIを用いて蓄冷材800を凍結させる二次冷却ステップと、冷却の用に供された蓄冷材800を回収する回収ステップと、を有すると言える。
【0018】
なお、氷スラリーIとは、エタノール水溶液中に微細な氷が混濁したシャーベット状の氷をいい、スラリー氷、アイススラリー、スラリーアイスなどとも呼ばれる。また、エタノール水溶液のエタノール濃度は、特に限定されないが、本実施形態の用途、つまり、蓄冷材800の凍結および保管に用いる場合には、45%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。これにより、エタノール水溶液の凍結点が-35℃以下となる。そのため、氷スラリーIがより低温となり、二次冷却装置300において蓄冷材800をより迅速に凍結させることができると共に、保管装置400においてより確実に蓄冷材800を凍結状態のまま保管することができる。
【0019】
なお、液冷媒としては、冷却によりスラリー状にすることができ、かつ、スラリー状の状態で蓄冷材800の融点以下の温度を維持することができれば、特に限定されない。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコールなどの各種アルコールまたはこれらの水溶液、砂糖水、塩化ナトリウム水溶液(塩水)、塩化カルシウム水溶液などを用いてもよい。例えば、液冷媒は、冷熱エネルギー利用装置200で利用される冷媒Nおよび蓄冷材800の種類によって適宜変更することができる。
【0020】
[一次冷却装置200]
図1に示すように、一次冷却装置200は、圧縮機210、凝縮器220、膨張弁230および冷却器240(熱交換器)を備え冷媒Nを循環させる冷媒回路200Aと、冷却器240にエタノール水溶液を循環させる液冷媒回路200B(回路)と、を有する。冷媒回路200Aでは、圧縮機210で冷媒Nが圧縮されて高温高圧ガス状となる。圧縮機210で高温高圧ガス状となった冷媒Nは、凝縮器220に流入し、凝縮・液化して高圧液状となる。凝縮器220で高圧液状となった冷媒Nは、膨張弁230で減圧されて冷却器240に流入する。冷却器240に流入した低圧液状の冷媒Nは、冷却器240においてエタノール水溶液から熱を奪いつつ蒸発・気化して低圧ガス状となる。冷却器240で低圧ガス状となった冷媒Nは、圧縮機210に戻され、圧縮機210により圧縮されて再び高温高圧ガス状となって吐出される。冷媒回路200Aは、このような熱交換サイクルで冷媒Nを循環させることにより、冷却器240においてエタノール水溶液を連続的に冷却する。
【0021】
また、冷却器240は、外管241と、外管241の内側に同軸的に配置された内管242と、を有する。外管241および内管242は、立てて設置され、互いの軸が鉛直方向を向く。つまり、冷却器240は、竪置き型二重管式蒸発器である。また、外管241および内管242は、それぞれ、下端側に設けられた導入口と、上端側に設けられた導出口と、を有する。そして、外管241に膨張弁230によって減圧された低圧液状の冷媒Nが導入され、内管412にエタノール水溶液が導入されることにより、これらの熱交換が行われ、エタノール水溶液が冷却される。
【0022】
一方、液冷媒回路200Bは、エタノール水溶液および氷スラリーIを貯留するための貯留タンク250と、貯留タンク250から冷却器240にエタノール水溶液を送出する管路261と、冷却器240から貯留タンク250にエタノール水溶液を送出する管路262と、管路261の途中に設けられた送液ポンプ270と、を有する。貯留タンク250には稼働前に十分な量のエタノール水溶液が貯留される。圧縮機210を駆動して冷媒回路200A内に冷媒Nを循環させると共に、送液ポンプ270を駆動して液冷媒回路200B内にエタノール水溶液を循環させると、冷却器240においてエタノール水溶液が連続的に冷却され、次第にエタノール水溶液中に微細な氷が発生して氷スラリーIが生成される。生成された氷スラリーIは、貯留タンク250に貯留される。このステップが一次冷却ステップである。
【0023】
なお、冷媒Nとしては、特に限定されず、例えば、HCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)、HFC(ハイドロフルオロカーボン)、HFO(ハイドロフルオロオレフィン)、プロパン、プロピレン、ブタン、イソブタン、ヘキサフルオロプロパン、ヘプタフルオロプロパン、アンモニア、二酸化炭素(炭酸ガス)等の自然冷媒(ガス)などを用いてもよい。例えば、冷媒Nは、液冷媒や蓄冷材800の凍結点によって適宜変更することができる。
【0024】
以上、一次冷却装置200について説明したが、一次冷却装置200の構成は、エタノール水溶液を冷却して氷スラリーIつまりスラリー状の液冷媒を生成することができれば、特に限定されない。例えば、天然ガスのプラントにおいて、気化器に送られる前のLNG(液化天然ガス)との熱交換によりエタノール水溶液を冷却して氷スラリーIを生成してもよい。また、例えば、石油ガスのプラントにおいて、気化器に送られる前のLPG(液化石油ガス)との熱交換によりエタノール水溶液を冷却して氷スラリーIを生成してもよい。
【0025】
[二次冷却装置300]
二次冷却装置300は、氷スラリーIとの熱交換によって蓄冷材800を冷却して凍結する。なお、蓄冷材800は、容器に保冷剤が収容されたものであり、容器が柔軟なソフトタイプのものであってもよいし、容器が硬質なハードタイプのものであってもよい。蓄冷材800は、保冷材とも呼ばれる。蓄冷材と保冷材との違いは、明確ではないが、蓄冷成分の殆どが水分であり氷点下数℃で凍結するものが保冷材であり、蓄冷成分に化学薬品を使って氷点下10℃以下で凍結するものが蓄冷材であるとも言われている。このような蓄冷材800としては、凍結により冷熱(潜熱)を蓄えることができれば、如何なる構成のものであってもよい。
【0026】
図2に示すように、二次冷却装置300は、氷スラリーIが貯留された冷却槽310を有する。そして、未凍結の蓄冷材800を冷却槽310内の氷スラリーIに浸漬することにより、蓄冷材800を冷却し、凍結させる。このように、蓄冷材800を氷スラリーIに直接、接触させることにとり、蓄冷材800を効率的に冷却し、迅速に凍結させることができる。なお、氷スラリーIによれば、潜熱の作用によって、氷成分が融解するまで氷スラリーIの温度がエタノール水溶液の凍結点付近に維持される。固体を液体とするための融解熱は、液体の比熱と比べて高いため、このような構成によれば、より長時間、冷却槽310内を低温に維持することができ、蓄冷材800を効率的に凍結させることができる。このステップが、二次冷却ステップである。
【0027】
冷却槽310は、管路321,322によって貯留タンク250に繋がっており、貯留タンク250内の氷スラリーIが冷却槽310との間を循環する。具体的には、蓄冷材800との熱交換により溶けたエタノール水溶液が管路321を介して貯留タンク250に戻され、貯留タンク250内のフレッシュな氷スラリーIが管路322を介して冷却槽310に供給されることにより、冷却槽310内の氷スラリーIが所定量以上に保たれる。そのため、冷却槽310内から氷スラリーIが枯渇することがなく、未凍結の蓄冷材800を連続して効率的に凍結させることができる。
【0028】
また、二次冷却装置300は、冷却槽310上に昇降自在な棚330が設けられている。棚330に未凍結の蓄冷材800を並べて、図3に示すように、棚330毎、氷スラリーI内に浸漬させることにより、棚330内の複数の蓄冷材800を一括して凍結することができる。これにより、凍結作業が容易となる。なお、未凍結の蓄冷材800を棚330に並べる作業、棚330を氷スラリーI内に浸漬させる作業、棚330から凍結済の蓄冷材800を回収する作業などは、作業者が行ってもよいし、機械が自動で行ってもよい。
【0029】
以上、二次冷却装置300について説明したが、二次冷却装置300の構成としては、氷スラリーIを用いて蓄冷材800を凍結させることができれば、特に限定されない。例えば、貯留タンク250と冷却槽310とが繋がっておらず、作業者が貯留タンク320内の氷スラリーIを冷却槽310まで搬送してもよい。
【0030】
[保管装置400]
保管装置400は、氷スラリーIの冷熱エネルギーを利用して、二次冷却装置300で凍結させた蓄冷材800の凍結状態を維持するための冷凍庫である。
【0031】
図4に示すように、保管装置400は、凍結状態の蓄冷材800を保管する保管室410と、保管室410と隣り合って設けられ氷スラリーIが貯留される貯留室420と、を有する。また、保管室410と貯留室420とを仕切る壁430は、アルミニウム、ステンレス鋼などの熱伝達率の高い材料で構成されている。そのため、貯留室420に貯留された氷スラリーIの冷熱が壁430を介して保管室410に効率的に伝わる。これにより、保管室410が冷却され、保管室410内の蓄冷材800の凍結状態が維持される。
【0032】
貯留室420は、管路441,442によって貯留タンク250に繋がっており、貯留タンク250内の氷スラリーIが貯留室420との間を循環する。具体的には、保管室410との熱交換により溶けたエタノール水溶液が管路441を介して貯留タンク250に戻され、貯留タンク250内のフレッシュな氷スラリーIが管路442を介して貯留室420に供給されることにより、貯留室420内の氷スラリーIが所定量以上に保たれる。そのため、貯留室420内から氷スラリーIが枯渇することがなく、保管室410を連続して効率的に冷却することができ、蓄冷材800の凍結状態がより確実に維持される。
【0033】
以上、保管装置400について説明したが、保管装置400の構成としては、氷スラリーIを用いて蓄冷材800の凍結状態を維持することができれば、特に限定されない。例えば、二次冷却装置300と同様に、氷スラリーIに蓄冷材800を浸漬させて、蓄冷材800の凍結状態を維持してもよい。また、貯留タンク250と貯留室420とが繋がっておらず、作業者が貯留タンク250内の氷スラリーIを貯留室420まで搬送してもよい。また、二次冷却装置300で凍結された蓄冷材800がコンベアなどによって自動的に保管室410に搬送される構成でもよい。
【0034】
このように、二次冷却装置300および保管装置400では、蓄冷材800の凍結や保管を行うために氷スラリーIを消費しているが、この消費量と同等またはそれ以上の氷スラリーIを一次冷却装置200で生成することにより、二次冷却装置300および保管装置400内の氷スラリーIが枯渇することがない。また、エタノール水溶液自体は、装置内で液状とスラリー状との間で状態変化だけを繰り返し、絶対量は実質的に減らない。このように、氷スラリーIの生成および消費を装置内で繰り返すことにより、エタノール水溶液の補充などが不要となり、メンテナンスが容易となる。
【0035】
以上のようにして保管装置400に保管された凍結済みの蓄冷材800は、例えば、冷凍車などで必要箇所に搬送され、搬送先において対象物を冷却する用に供される。蓄冷材800の搬送先やそこでの用途は、特に限定されないが、例えば、食品の冷却(昇温抑制)、室内の冷房などが挙げられる。具体的には、図5に示すように、保温ケース700内に食品Fと共に凍結済の蓄冷材800を収容してもよい。これにより、食品の温度上昇を抑制することができ、食品の鮮度をより長い時間保つことができるようになる。また、例えば、図6に示すように、建物B内に凍結済の蓄冷材800を配置してもよい。そして、蓄冷材800の冷熱で冷やした空気を室内に導入することにより、室内を冷房することができる。ただし、食品の冷却方法や室内の冷房方法は、特に限定されない。
【0036】
なお、蓄冷材800は、冷却の用に供されて溶解しても、再び凍結させることにより繰り返し冷却の用に供することができる。したがって、冷却の用に供されて溶解した蓄冷材800は、回収ステップとして種々の手段で蓄冷材凍結装置100に回収されて再び二次冷却装置300により凍結され、保管装置400によって凍結状態のまま保管される。このように、蓄冷材800の循環サイクルを構築することにより、蓄冷材800の廃棄が抑制される。したがって、廃棄されるハード(物)が実質的になくなり、環境負荷が極めて小さい蓄冷材凍結装置100となる。
【0037】
以上のような蓄冷材凍結装置100および蓄冷材800の利用方法によれば、液冷媒回路200B内を循環するエタノール水溶液を冷却して生成された氷スラリーIを用いて繰り返し使用可能な蓄冷材800を凍結させ、凍結状態の蓄冷材800を冷却の用に供する。つまり、氷スラリーIの冷熱だけを取り出すため、実質的に一次冷却装置200からエタノール水溶液が減らない。また、氷スラリーIにより凍結される蓄冷材800も、再利用が可能である。したがって、廃棄されるハード(物)が実質的になくなり、環境負荷が極めて小さい蓄冷材凍結装置100および蓄冷材800の利用方法となる。
【0038】
以上、本発明の蓄冷材凍結装置および蓄冷材利用方法を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物または任意の工程が付加されていてもよい。
【符号の説明】
【0039】
100…蓄冷材凍結装置、200…一次冷却装置、200A…冷媒回路、200B…液冷媒回路、210…圧縮機、220…凝縮器、230…膨張弁、240…冷却器、241…外管、242…内管、250…貯留タンク、261…管路、262…管路、270…送液ポンプ、300…二次冷却装置、310…冷却槽、320…貯留タンク、321…管路、322…管路、330…棚、400…保管装置、410…保管室、412…内管、420…貯留室、430…壁、441…管路、442…管路、700…保温ケース、800…蓄冷材、B…建物、F…食品、I…氷スラリー、N…冷媒

図1
図2
図3
図4
図5
図6