(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110440
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】経路生成方法、経路生成システム、及び経路生成プログラム
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20240808BHJP
【FI】
A01B69/00 303M
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014959
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100181869
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 雄一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 翼
(72)【発明者】
【氏名】高橋 葵
(72)【発明者】
【氏名】西野 光哉
(72)【発明者】
【氏名】西井 康人
(72)【発明者】
【氏名】西別府 慎也
【テーマコード(参考)】
2B043
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB20
2B043BA02
2B043BA07
2B043BA09
2B043BB01
2B043BB06
2B043BB12
2B043BB14
2B043DA17
2B043DC03
2B043EA02
2B043EA32
2B043EA37
2B043EB05
2B043EB16
2B043EB17
2B043EB18
2B043EC15
2B043EC16
2B043EE01
2B043EE05
2B043EE06
(57)【要約】
【課題】目標経路に従って自動走行可能な作業車両による作業精度を向上させることが可能な経路生成方法、経路生成システム、及び経路生成プログラムを提供する。
【解決手段】自動走行システム100は、生成処理部212と取得処理部213と補正処理部214とを備える。生成処理部212は、作業車両10を自動走行させる目標経路Rを生成する。取得処理部213は、目標経路Rの補正位置を取得する。補正処理部214は、前記補正位置に基づいて目標経路Rを補正する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車両を自動走行させる目標経路を生成することと、
前記目標経路の補正位置を取得することと、
前記補正位置に基づいて前記目標経路を補正することと、
を実行する経路生成方法。
【請求項2】
前記目標経路を補正するユーザー操作が行われた際の前記作業車両の現在位置を前記補正位置として取得する、
請求項1に記載の経路生成方法。
【請求項3】
作業対象物の位置を前記補正位置として取得する、
請求項1に記載の経路生成方法。
【請求項4】
前記目標経路又は前記目標経路の延長線が前記補正位置を通るように、前記目標経路の位置を補正する、
請求項1に記載の経路生成方法。
【請求項5】
前記目標経路又は前記目標経路の延長線が前記補正位置を通るように、前記目標経路を平行移動させる、
請求項1~4のいずれかに記載の経路生成方法。
【請求項6】
前記目標経路に含まれる複数の作業経路のうちユーザーに選択された作業経路、又は、当該作業経路の延長線が前記補正位置を通るように、前記目標経路を平行移動させる、
請求項5に記載の経路生成方法。
【請求項7】
前記目標経路に含まれる複数の作業経路のうち、前記作業車両の向きと同一方向に設定され、かつ前記補正位置に最も近い作業経路、又は、当該作業経路の延長線が前記補正位置を通るように、前記目標経路を平行移動させる、
請求項5に記載の経路生成方法。
【請求項8】
前記作業車両の現在位置に最も近い前記目標経路までの最短距離が第1所定値以下の場合に前記目標経路を補正する、
請求項2に記載の経路生成方法。
【請求項9】
前記作業車両の現在位置に最も近い前記目標経路までの最短距離が前記第1所定値よりも小さい第2所定値未満の場合に前記目標経路を補正しない、
請求項8に記載の経路生成方法。
【請求項10】
前記目標経路を補正するユーザー操作が行われた際の前記作業車両の現在位置における前記作業車両の向きに基づいて、前記目標経路の向きを補正する、
請求項2に記載の経路生成方法。
【請求項11】
作業領域において前記作業車両が作業を行った作業済領域と作業を行っていない未作業領域とを識別可能に表示させることをさらに実行し、
前記作業車両が補正前の前記目標経路に従って作業を行った作業済領域と、前記作業車両が補正後の前記目標経路に従って作業を行った作業済領域との間に未作業領域が存在する場合に、当該未作業領域を作業済領域として表示させる、
請求項1に記載の経路生成方法。
【請求項12】
前記目標経路に含まれる複数の作業経路のそれぞれの始端に基づいて設定された所定範囲内に前記作業車両が位置する場合に前記目標経路を補正するユーザー操作の受け付けを許可し、前記所定範囲内に前記作業車両が位置しない場合に前記目標経路を補正するユーザー操作の受け付けを禁止する、
請求項1に記載の経路生成方法。
【請求項13】
作業車両を自動走行させる目標経路を生成する生成処理部と、
前記目標経路の補正位置を取得する取得処理部と、
前記補正位置に基づいて前記目標経路を補正する補正処理部と、
を備える経路生成システム。
【請求項14】
作業車両を自動走行させる目標経路を生成することと、
前記目標経路の補正位置を取得することと、
前記補正位置に基づいて前記目標経路を補正することと、
を一又は複数のプロセッサーに実行させるための経路生成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両を自動走行させる経路(目標経路)を生成する経路生成方法、経路生成システム、及び経路生成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場において、予め設定された目標経路に従って自動走行する作業車両が知られている。例えば、作業車両に自動走行を開始させる前に作業の開始位置から終了位置までの経路を生成し、生成した経路に従って作業車両に自動走行を実行させるシステムが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業車両を目標経路に従って自動走行させる場合、圃場の状態、作業対象物(例えば収穫物)の状態の影響により、予め設定された目標経路が不適切なものになる場合がある。例えば収穫作業を行う圃場に対して生成された目標経路が収穫物の位置からずれた場合に、作業車両が当該目標経路に従って自動走行すると、収穫物を収穫できなかったり収穫物を踏み荒らしたりすることにより、作業精度が低下する問題が生じる。
【0005】
本発明の目的は、目標経路に従って自動走行可能な作業車両による作業精度を向上させることが可能な経路生成方法、経路生成システム、及び経路生成プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る経路生成方法は、作業車両を自動走行させる目標経路を生成することと、前記目標経路の補正位置を取得することと、前記補正位置に基づいて前記目標経路を補正することと、を実行する方法である。
【0007】
本発明に係る経路生成システムは、作業車両を自動走行させる目標経路を生成する生成処理部と、前記目標経路の補正位置を取得する取得処理部と、前記補正位置に基づいて前記目標経路を補正する補正処理部と、を備える。
【0008】
本発明に係る経路生成プログラムは、作業車両を自動走行させる目標経路を生成することと、前記目標経路の補正位置を取得することと、前記補正位置に基づいて前記目標経路を補正することと、を一又は複数のプロセッサーに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、目標経路に従って自動走行可能な作業車両による作業精度を向上させることが可能な経路生成方法、経路生成システム、及び経路生成プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る自動走行システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る作業車両の構成を示す外観図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る圃場に設定される目標経路の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係る操作端末に表示されるメニュー画面の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に係る操作端末に表示される操作画面の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態に係る目標経路及び作業列の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態に係る目標経路と作業列との位置がずれた状態を示す図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態に係る補正後の目標経路の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施形態に係る操作端末に表示される操作画面の他の例を示す図である。
【
図10】
図10は、本発明の実施形態に係る自動走行システムによって実行される自動走行処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図11A】
図11Aは、本発明の実施形態に係る操作端末に表示される経路補正画面の一例を示す図である。
【
図11B】
図11Bは、本発明の実施形態に係る操作端末に表示される経路補正画面の他の例を示す図である。
【
図12】
図12は、本発明の実施形態に係る補正後の目標経路の他の例を示す図である。
【
図13A】
図13Aは、本発明の実施形態に係る目標経路の補正方法の一例を示す図である。
【
図13B】
図13Bは、本発明の実施形態に係る目標経路の補正方法の他の例を示す図である。
【
図14A】
図14Aは、本発明の実施形態に係る目標経路と作業列との向き(方位)がずれた状態を示す図である。
【
図14B】
図14Bは、本発明の実施形態に係る補正後の目標経路の一例を示す図である。
【
図15】
図15は、本発明の実施形態に係る目標経路の補正方法の他の例を示す図である。
【
図16】
図16は、本発明の実施形態に係る目標経路の補正方法の他の例を示す図である。
【
図17】
図17は、本発明の実施形態に係る目標経路の補正方法の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0012】
図1及び
図2に示されるように、本発明の実施形態に係る自動走行システム100は、作業車両10と操作端末20とを含んでいる。作業車両10及び操作端末20は、通信網N1を介して通信可能である。例えば、作業車両10及び操作端末20は、携帯電話回線網、パケット回線網、又は無線LANを介して通信可能である。自動走行システム100は、作業領域(例えば
図3の圃場F)内において作業車両10を自動走行させることが可能なシステムである。
【0013】
本発明の作業車両は、トラクター、コンバイン、田植機など、作業領域(圃場F)で特定の作業を行う車両である。本実施形態では、作業車両10が作業対象物である収穫物(例えば芋)を収穫する車両(例えばポテトハーベスター)である場合を例に挙げて説明する。
【0014】
作業車両10は、圃場F(
図3参照)内を予め設定された目標経路R(作業経路R1~R10及び旋回経路R0)に従って自動走行(自律走行)可能な構成を備えている。例えば、作業車両10は、測位装置14により測位される作業車両10の現在位置の位置情報に基づいて、圃場Fに対して予め生成された目標経路Rに沿って自動走行することが可能である。
【0015】
また例えば、作業車両10は、
図3に示す圃場Fの作業領域において、作業開始位置Sから作業終了位置Gまで、作業経路R1~R10を平行に往復走行しながら芋を収穫する。目標経路Rは、
図3に示す経路に限定されず、圃場Fの形状、作業内容などに応じて適宜設定される。
【0016】
操作端末20は、作業車両10による作業に関する各種情報を表示させたり、ユーザー(オペレータ)の操作を受け付けて当該操作に応じた処理を実行したりする。例えばオペレータは、操作端末20を操作して、自動走行に必要な情報を設定したり、作業車両10に自動走行開始指示を出力したりする。また、操作端末20は、自動走行中の作業車両10の作業状況、走行状況などの情報を表示させる。オペレータは、操作端末20において作業状況、走行状況を把握することが可能である。
【0017】
操作端末20は、作業車両10に搭載(着脱)可能であってもよい。この場合、オペレータは作業車両10に搭乗して操作端末20を操作することが可能である。例えば、オペレータは、作業車両10に搭乗して操作端末20を操作することにより、手動操舵に切り替えて作業車両10を手動走行させたり、目標経路Rを補正したりすることが可能である。
【0018】
[作業車両10]
図1及び
図2に示すように、作業車両10は、車両制御装置11、記憶部12、作業部13、測位装置14、通信部15などを備える。車両制御装置11は、記憶部12、作業部13、測位装置14などに電気的に接続されている。なお、車両制御装置11及び測位装置14は、無線通信可能であってもよい。
【0019】
通信部15は、作業車両10を有線又は無線で通信網N1に接続し、通信網N1を介して操作端末20などの外部機器との間で所定の通信プロトコルに従ったデータ通信を実行するための通信インターフェースである。
【0020】
記憶部12は、各種の情報を記憶するHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はフラッシュメモリーなどの不揮発性の記憶部である。記憶部12には、車両制御装置11に自動走行処理(
図10参照)を実行させるための自動走行プログラムなどの制御プログラムが記憶されている。例えば、前記自動走行プログラムは、CD又はDVDなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に非一時的に記録されており、所定の読取装置(不図示)で読み取られて記憶部12に記憶される。なお、前記自動走行プログラムは、サーバー(不図示)から通信網N1を介して作業車両10にダウンロードされて記憶部12に記憶されてもよい。また、記憶部12には、操作端末20において生成される目標経路Rのデータ(経路データ)が記憶される。
【0021】
作業部13は、掘取搬送装置31、縦搬送装置32、土落とし装置33、選別装置34などを含む。
図2に示すように、シャーシ1の前端上に運転席35及びエンジン室が設けられ、シャーシ1の後部に取付フレーム2が設けられ、取付フレーム2の下端に掘取搬送装置31の後端が枢支されている。掘取搬送装置31は前輪5と後輪6との間に配設されている。掘取搬送装置31は、掘取搬送装置31の前上部と運転席35の後部のシャーシ1上に立設された支持フレーム3との間に、油圧シリンダー4を介して昇降可能に配置されている。
【0022】
掘取搬送装置31の前上部にはディガー7の上端が枢支され、モーターにてディガー7の下部を揺動して振動を与えて芋を浮き上がらせて掘り起こし、ディガー7の下部の後部から掘取搬送装置31の後端の枢支部までコンベア9が配設されている。コンベア9は幅広のローラーチェーンで構成されており、搬送途中の振動で土を落とすように構成されている。
【0023】
シャーシ1の後端には縦搬送装置32の下部が枢支され、縦搬送装置32は側面視「く」の字状に構成されてコンベア41を巻回する。コンベア41は、多数のタイン41aを備えており、芋を搬送可能に構成されている。コンベア41の下端はコンベア9の後方に配置され、コンベア9の後端と縦搬送装置32の下端との間に受継フォーク40が設けられている。
【0024】
縦搬送装置32の上部の「く」の字状曲げ部分の前方には受継樋30が設けられ、受継樋30は前下端が枢支されて回動自在に構成されており、コンベア41のタイン41aから芋を受けるように構成されている。
【0025】
受継樋30の前方には土落とし装置33が配設され、土落とし装置33の終端から座席19の後方に選別装置34が設けられている。
【0026】
前輪5は、ミッションケース42より前下方に突出した伝動ケース43よりフロントデフケースに動力を伝えて駆動する。後輪6は、ミッションケース42の後面からユニバーサルジョイント44を介してリヤデフケース45に動力を伝えて駆動する。
【0027】
また、ミッションケース42の後面に突出したPTO軸よりユニバーサルジョイント17を介してギアケース18に動力を伝え、ギアケース18の出力軸にプーリーを固設してプーリーよりベルトを介して選別装置34、掘取搬送装置31を駆動し、掘取搬送装置31の駆動軸に固設したスプロケットより縦搬送装置32の下端の駆動軸上に固設したスプロケットを駆動し、縦搬送装置32の上端の従動スプロケットからチェーンを介して土落とし装置33を駆動する。
【0028】
選別装置34には、中央部両側に選別作業者が着座する椅子がシャーシ1上に固定されている。選別装置34はローラーチェーン34aにより構成されており、ローラーチェーン34aの上に、選別作業者が拾い上げ選別した芋を投入し分離する仕切板が複数設けられている。仕切板の終端にはシュート34bが設けれ、シュート34bの下方にコンテナ34cが配設されている。
【0029】
ハンドル36は、オペレータ又は車両制御装置11によって操作される操作部である。例えば、車両制御装置11によるハンドル36の操作に応じて、不図示の油圧式パワーステアリング機構などによって前輪5の角度が変更され、作業車両10の進行方向が変更される。例えば、ハンドル36は、走行モードが自動走行モードに設定されている場合には車両制御装置11による自動操舵により動作し、走行モードが手動走行モードに設定されている場合にはオペレータによる手動操舵により動作する。
【0030】
また、作業部13は、車両制御装置11によって操作される不図示のシフトレバー、アクセル、ブレーキ等を備える。車両制御装置11による前記シフトレバーの操作に応じて、トランスミッションのギアが前進ギア又はバックギアなどに切り替えられ、作業車両10の走行態様が前進又は後進などに切り替えられる。また、車両制御装置11は、前記アクセルを操作してエンジンの回転数を制御する。また、車両制御装置11は、前記ブレーキを操作して電磁ブレーキを用いて前輪5及び後輪6の回転を制動する。
【0031】
測位装置14は、測位制御部141、記憶部142、通信部143、及び測位用アンテナ144などを備える通信機器である。例えば、測位装置14は、運転席35に設けられている。測位装置14の設置場所は運転席35に限定されない。また、測位制御部141、記憶部142、通信部143、及び測位用アンテナ144は、作業車両10において異なる位置に分散して配置されていてもよい。なお、測位装置14にはバッテリーが接続されており、測位装置14は、エンジンの停止中も稼働可能である。また、測位装置14として、例えば携帯電話端末、スマートフォン、タブレット端末、操作端末20などが代用されてもよい。
【0032】
通信部143は、測位装置14を有線又は無線で通信網N1に接続し、通信網N1を介して基地局サーバーなどの外部機器との間で所定の通信プロトコルに従ったデータ通信を実行するための通信インターフェースである。
【0033】
測位用アンテナ144は、衛星から発信される電波(GNSS信号)を受信するアンテナである。
【0034】
測位制御部141は、一又は複数のプロセッサーと、不揮発性メモリ及びRAMなどの記憶メモリとを備えるコンピュータシステムである。記憶部142は、測位制御部141に測位処理を実行させるための制御プログラム、及び測位情報、移動情報などのデータを記憶する不揮発性メモリなどである。例えば、前記制御プログラムは、CD又はDVDなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に非一時的に記録されており、所定の読取装置(不図示)で読み取られて記憶部142に記憶される。なお、前記制御プログラムは、サーバー(不図示)から通信網N1を介して測位装置14にダウンロードされて記憶部142に記憶されてもよい。
【0035】
測位制御部141は、測位用アンテナ144が衛星から受信するGNSS信号に基づいて作業車両10の位置(現在位置)を算出する。例えば、作業車両10が圃場F内を自動走行する場合に、測位用アンテナ144が複数の衛星のそれぞれから発信される電波(発信時刻、軌道情報など)を受信すると、測位制御部141は、測位用アンテナ144と各衛星との距離を算出し、算出した距離に基づいて作業車両10の現在位置(緯度及び経度)を算出する。また、測位制御部141は、作業車両10に近い基地局(基準局)に対応する補正情報を利用して作業車両10の現在位置を算出する、リアルタイムキネマティック方式(RTK-GNSS測位方式(RTK方式))による測位を行ってもよい。このように、作業車両10は、例えばRTK方式による測位情報を利用して自動走行を行う。
【0036】
車両制御装置11は、CPU、ROM、及びRAMなどの制御機器を有する。前記CPUは、各種の演算処理を実行するプロセッサーである。前記ROMは、前記CPUに各種の演算処理を実行させるためのBIOS及びOSなどの制御プログラムが予め記憶される不揮発性の記憶部である。前記RAMは、各種の情報を記憶する揮発性又は不揮発性の記憶部であり、前記CPUが実行する各種の処理の一時記憶メモリー(作業領域)として使用される。そして、車両制御装置11は、前記ROM又は記憶部12に予め記憶された各種の制御プログラムを前記CPUで実行することにより作業車両10を制御する。
【0037】
具体的には、車両制御装置11は、測位制御部141により測位される作業車両10の位置を示す位置情報に基づいて作業車両10を自動走行させる。例えば、前記測位状態がRTK測位可能な高精度状態(高精度測位完了)になって、オペレータが操作端末20においてスタートボタンK1(
図5参照)を押下すると、操作端末20は作業開始指示を作業車両10に出力する。車両制御装置11は、操作端末20から作業開始指示を取得すると、測位制御部141により測位される作業車両10の位置を示す位置情報に基づいて作業車両10の自動走行を開始させる。これにより、作業車両10は、目標経路R(
図3参照)に従って自動走行を開始し、作業部13による作業(例えば芋の収穫作業)を開始する。なお、作業車両10が走行する目標経路Rは、例えば操作端末20により予め生成される。作業車両10は、操作端末20から目標経路Rの経路データを取得して、目標経路Rに従って圃場F内を作業開始位置Sから作業終了位置Gまで自動走行する。
【0038】
また、車両制御装置11は、操作端末20から走行停止指示を取得すると作業車両10の自動走行を停止させる。例えば、オペレータが操作端末20においてストップボタンを押下すると、操作端末20は走行停止指示を作業車両10に出力する。車両制御装置11は、操作端末20から走行停止指示を取得すると、作業車両10の自動走行を停止させる。これにより、作業車両10は、自動走行を停止して作業部13による作業を停止する。
【0039】
オペレータが作業車両10に搭乗して作業車両10に自動走行及び作業を実行させる場合、操作端末20は作業車両10の運転席35に設置され、オペレータは運転席35で操作端末20を操作することが可能である。
【0040】
なお、図示は省略するが、作業車両10は、さらに障害物センサ、カメラを備えてもよい。前記障害物センサは、赤外線、超音波などを利用して所定の検出エリアの障害物を検出するセンサである。
【0041】
また、前記カメラは、被写体の画像を撮像してデジタル画像データとして出力するデジタルカメラである。前記カメラは、被写体を所定のフレームレートで連続して撮像し、所定の解像度のフレーム画像を生成して車両制御装置11に送信する。例えば前記カメラは、作業対象物である収穫物(芋)を撮像する。
【0042】
車両制御装置11は、前記障害物センサから測定情報を取得し、前記カメラから撮像画像を取得する。車両制御装置11は、障害物が検出された場合に作業車両10を障害物に接触しないように回避走行させたり停止させたりする。また、車両制御装置11は、前記カメラから取得した前記撮像画像の画像データを操作端末20に出力する。操作端末20は、前記画像データを取得すると、前記撮像画像を操作画面に表示させる。
【0043】
[操作端末20]
図1に示すように、操作端末20は、操作制御部21、記憶部22、操作表示部23、及び通信部24などを備える情報処理装置である。操作端末20は、タブレット端末、スマートフォンなどの携帯端末で構成されてもよい。
【0044】
通信部24は、操作端末20を有線又は無線で通信網N1に接続し、通信網N1を介して一又は複数の作業車両10などの外部機器との間で所定の通信プロトコルに従ったデータ通信を実行するための通信インターフェースである。
【0045】
操作表示部23は、各種の情報を表示する液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイのような表示部と、操作を受け付けるタッチパネル、マウス、又はキーボードのような操作部とを備えるユーザーインターフェースである。オペレータは、前記表示部に表示される操作画面において、前記操作部を操作して各種情報(後述の作業車両情報、圃場情報、作業情報など)を設定登録する操作を行うことが可能である。また、オペレータは、前記操作部を操作して作業車両10に対する作業開始指示、走行停止指示、目標経路Rの補正指示などを行うことが可能である。さらに、オペレータは、作業車両10から離れた場所において、操作端末20に表示される情報により、圃場F内を目標経路Rに従って自動走行する作業車両10の走行状況、作業状況などを確認することが可能である。
【0046】
記憶部22は、各種の情報を記憶するHDD、SSD、又はフラッシュメモリーなどの不揮発性の記憶部である。記憶部22には、操作制御部21に自動走行処理(
図10参照)を実行させるための自動走行プログラムなどの制御プログラムが記憶されている。例えば、前記自動走行プログラムは、CD又はDVDなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に非一時的に記録されており、所定の読取装置(不図示)で読み取られて記憶部22に記憶される。なお、前記自動走行プログラムは、サーバー(不図示)から通信網N1を介して操作端末20にダウンロードされて記憶部22に記憶されてもよい。
【0047】
操作制御部21は、CPU、ROM、及びRAMなどの制御機器を有する。前記CPUは、各種の演算処理を実行するプロセッサーである。前記ROMは、前記CPUに各種の演算処理を実行させるためのBIOS及びOSなどの制御プログラムが予め記憶される不揮発性の記憶部である。前記RAMは、各種の情報を記憶する揮発性又は不揮発性の記憶部であり、前記CPUが実行する各種の処理の一時記憶メモリー(作業領域)として使用される。そして、操作制御部21は、前記ROM又は記憶部22に予め記憶された各種の制御プログラムを前記CPUで実行することにより操作端末20を制御する。
【0048】
具体的には、操作制御部21は、
図1に示すように、設定処理部211、生成処理部212、取得処理部213、補正処理部214などの各種の処理部を含む。なお、操作制御部21は、前記CPUで前記制御プログラムに従った各種の処理を実行することによって前記各種の処理部として機能する。また、一部又は全部の前記処理部が電子回路で構成されていてもよい。なお、前記制御プログラムは、複数のプロセッサーを前記処理部として機能させるためのプログラムであってもよい。
【0049】
設定処理部211は、作業車両10に自動走行を実行させるための各種の設定情報を設定する。具体的には、設定処理部211は、作業車両10に関する情報(以下、作業車両情報という。)を設定する。設定処理部211は、作業車両10の種類(機種)、作業車両10において測位用アンテナ144が取り付けられている位置、作業機の種類、作業機のサイズ及び形状、作業機の作業車両10に対する位置、作業車両10の作業中の車速及びエンジン回転数、作業車両10の旋回中の車速及びエンジン回転数等の情報について、オペレータが操作端末20において登録する操作を行うことにより当該情報を設定する。
【0050】
例えば、設定処理部211は、操作表示部23に
図4に示すメニュー画面D1を表示させる。オペレータは、例えばメニュー画面D1の「作業機登録」を選択して作業機に関する作業機情報を登録する。なお、
図2には、作業車両10がポテトハーベスターの場合を例示しているが、本実施形態に係る作業車両10は、トラクターと、トラクターに連結される作業機(ポテトハーベスター)とで構成されてもよい。
【0051】
また、設定処理部211は、圃場Fに関する情報(以下、圃場情報という。)を設定する。設定処理部211は、圃場Fの位置及び形状、作業を開始する作業開始位置S及び作業を終了する作業終了位置G(
図3参照)、作業方向等の情報について、操作端末20において登録する操作を行うことにより当該情報を設定する。なお、作業方向とは、圃場Fから枕地、非作業領域を除いた作業領域において、作業機で作業を行いながら作業車両10を走行させる方向を意味する。例えば、オペレータは、メニュー画面D1の「圃場登録」を選択して圃場情報を登録する。
【0052】
圃場Fの位置及び形状の情報は、例えばオペレータが作業車両10に搭乗して圃場Fの外周に沿って一回り周回するように運転し、そのときの測位用アンテナ144の位置情報の推移を記録することで、自動的に取得することができる。また、圃場Fの位置及び形状は、操作端末20に地図を表示させた状態でオペレータが操作端末20を操作して当該地図上の複数の点を指定することで得られた多角形に基づいて取得することもできる。取得された圃場Fの位置及び形状により特定される領域は、作業車両10を走行させることが可能な領域(走行領域)である。
【0053】
また、設定処理部211は、作業を具体的にどのように行うかに関する情報(以下、作業情報という。)を設定する。設定処理部211は、作業情報として、無人の作業車両10と有人の作業車両10との協調作業の有無、作業車両10が枕地において旋回する場合にスキップする作業経路の数であるスキップ数、枕地の幅、及び非耕作地の幅等を設定可能に構成されている。例えば、オペレータは、メニュー画面D1の「作業登録」を選択して作業情報を登録する。
【0054】
生成処理部212は、前記各設定情報に基づいて、作業車両10を自動走行させる経路である目標経路Rを生成する。目標経路Rは、例えば作業開始位置Sから作業終了位置Gまでの作業経路である(
図3参照)。
図3に示す目標経路Rは、圃場Fにおいて作業車両10を平行に往復走行させる直進経路の作業経路R1~R10と、作業経路同士を接続する旋回経路R0とを含む。生成処理部212は、予め設定処理部211により設定された前記各設定情報に基づいて、作業車両10の目標経路Rを生成して記憶する。例えば、オペレータは、メニュー画面D1の「経路作成」を選択して目標経路Rの生成指示を行う。
【0055】
生成処理部212は、目標経路Rを生成すると、目標経路Rの経路データを作業車両10に転送する。なお、生成処理部212は、一つの圃場Fに対して、作業内容に応じた複数の目標経路Rを生成及び記憶することが可能である。
【0056】
操作端末20から転送された経路データは、作業車両10の記憶部12に記憶される。これにより、作業車両10は、測位装置14により作業車両10の現在位置を測位しつつ、目標経路Rに沿って自動走行を行うことが可能になる。
【0057】
なお、本実施形態に係る作業車両10は、
図3に示すような略長方形状の圃場Fを走行する。作業車両10は、現在位置が圃場F内に位置している場合に自動走行できるように構成されており、現在位置が圃場F外(公道等)に位置している場合には自動走行できないように構成されている。また、作業車両10は、例えば現在位置が作業開始位置Sと一致していること、作業開始位置Sから所定範囲内にあること、作業車両10の向き(方位)が目標経路Rに対して所定角度以内であることなどの条件(自動走行開始条件)を満たす場合に、自動走行できるように構成されている。
【0058】
作業車両10は、自動走行開始条件を満たす場合に、オペレータにより操作端末20の操作画面D2(
図5参照)においてスタートボタンK1が押されて作業開始指示が与えられると、自動走行を開始して作業(例えば芋の収穫作業)を開始する。すなわち、作業車両10は、自動走行開始条件を満たす場合に自動走行を許可する。なお、自動走行開始条件は、前記各条件に限定されない。
【0059】
作業車両10の自動走行が許可されると、車両制御装置11は、目標経路Rに基づいて、作業車両10を作業開始位置Sから作業終了位置Gまで自動走行させる。また、車両制御装置11は、作業車両10が自動走行している間、各種測定値(PTO回転速度、車速、位置情報など)を操作端末20に定期的に出力する。
【0060】
作業車両10が自動走行している場合、操作制御部21は、操作画面D2(
図5参照)において、圃場F、目標経路R、作業開始位置S、作業終了位置G、作業車両10の現在位置を含む地図情報を表示させる。また、操作制御部21は、操作画面D2において、前記地図情報に加えて、地図の表示倍率を変更する倍率アイコン、地図の方位を変更する方位アイコンなどの機能アイコン、作業車両10の駆動状況、車速状況、位置状況などの項目の現状(測定値など)を表示する表示アイコン(通知アイコン)を表示させる。
【0061】
ところで、作業車両10を目標経路Rに従って自動走行させる場合、圃場Fの状態、作業対象物(収穫物)の状態の影響により、予め設定された目標経路Rが不適切なものになる場合がある。例えば芋の収穫作業を行う圃場Fに対して生成された目標経路Rが芋の収穫位置からずれた場合に、作業車両10が目標経路Rに従って自動走行すると、芋を収穫できなかったり芋を踏み荒らしたりすることにより、作業精度が低下する問題が生じる。
図6には、目標経路Rの作業経路R1~R10が、芋が植え付けられている位置を表す作業列A1~A10に対して左側にずれている状態を示している。なお、
図6では、作業経路R1~R10の全体が、作業列A1~A10に対して一律にずれている状態を示しているが、圃場Fの状態、収穫物の状態の影響により、作業経路R1~R10の一部が、作業列A1~A10に対して位置ずれを起こす場合もある。また、各作業経路が各作業列に対してずれる量(位置ずれ量)は同一の場合もあるし異なる場合もある。さらに、作業経路ごとに作業列に対してずれる方向が異なる場合もある。
【0062】
このように目標経路Rが芋の収穫位置(作業列)に対して位置ずれした場合、芋を適切に収穫できなかったり芋を踏み荒らしたりすることにより、作業精度が低下する問題が生じる。これに対して、本実施形態に係る構成によれば、以下に示すように、目標経路Rに従って自動走行可能な作業車両10による作業精度を向上させることが可能である。
【0063】
具体的には、操作制御部21は、作業車両10が目標経路Rに従って自動走行を開始した後、目標経路Rの位置ずれが生じた場合に、目標経路Rの補正位置を取得し、当該補正位置に基づいて目標経路Rを補正する構成を備えている。
【0064】
詳細には、操作制御部21の取得処理部213は、目標経路Rの補正位置を取得する。例えば、取得処理部213は、目標経路Rを補正するユーザー操作が行われた際の作業車両10の現在位置を補正位置として取得する。例えば
図7に示すように、作業車両10が自動走行により作業経路R4の作業を終えて作業経路R5に移動した場合において、オペレータは、作業経路R5と次の収穫位置である作業列A5との位置ずれ(位置ずれ量L1)が大きく、目標経路Rを補正する必要があると判断すると、手動走行に切り替えて作業車両10を作業列A5の始端に合わせて一時停止させる。オペレータは、作業車両10を作業列A5の始端に合わせると操作画面D2のスタートボタンK1(
図5参照)を押下する。オペレータがスタートボタンK1を押下すると、取得処理部213は、目標経路Rを補正するユーザー操作(スタートボタンK1の押下操作)が行われた際の作業車両10の現在位置を取得する。なお、取得処理部213は、作業車両10が手動走行中にスタートボタンK1の押下操作が行われた際の作業車両10の現在位置を取得してもよい。
【0065】
補正処理部214は、取得処理部213により取得される前記補正位置に基づいて目標経路Rを補正する。具体的には、補正処理部214は、目標経路R又は目標経路Rの延長線が前記補正位置を通るように、目標経路Rの位置を補正する。例えば、補正処理部214は、目標経路R又は目標経路Rの延長線が前記補正位置を通るように、目標経路Rを平行移動させる。ここでは、
図8に示すように、補正処理部214は、作業経路R5又は作業経路R5の延長線が作業車両10の現在位置を通るように、目標経路R全体を右側に位置ずれ量L1だけ平行移動させる。
【0066】
補正処理部214は、目標経路Rを補正すると、補正後の目標経路R(
図8参照)の経路データを作業車両10に転送する。作業車両10は、補正後の目標経路Rに従って自動走行を再開する。また、補正処理部214は、記憶部22に保存されている目標経路Rを、補正後の目標経路Rに更新してもよい。
【0067】
このように、作業車両10が自動走行を開始した後にオペレータが自動走行から手動走行に切り替えて作業車両10を任意の位置(例えば作業列の始端)に移動させてスタートボタンK1を押下すると、補正処理部214は、目標経路Rを作業車両10の現在位置に合わせて移動(補正)し、作業車両10は、補正後の目標経路Rに従って作業車両10の自動走行を再開する。これにより、目標経路Rをオペレータが意図した位置に変更することができるため、以降の作業を適切に行うことが可能になる。
【0068】
上記構成では、スタートボタンK1の押下操作は、目標経路Rの補正指示と自動走行の開始(再開)指示とを兼用している。すなわち、オペレータが作業車両10を自動走行から手動走行に切り替えて移動させた後にスタートボタンK1を押下すると、作業車両10は、目標経路Rを補正するとともに補正後の目標経路Rに応じた自動走行を再開する。
【0069】
ここで、目標経路Rを補正する前記ユーザー操作は、操作画面D2のスタートボタンK1の押下操作に限定されず、目標経路Rを補正する指示を受け付ける専用の受付ボタンの押下操作であってもよい。例えば
図9に示すように、操作画面D2に経路補正ボタンK2が表示されてもよい。オペレータは、目標経路Rを補正する必要があると判断すると、手動走行に切り替えて作業車両10を作業列A5の始端に合わせて一時停止させ、その後に操作画面D2の経路補正ボタンK2を押下する。オペレータが経路補正ボタンK2を押下すると、取得処理部213は、経路補正ボタンK2の押下操作が行われた際の作業車両10の現在位置を取得する。補正処理部214は、取得処理部213により取得される前記現在位置に基づいて目標経路Rを補正する。目標経路Rが補正された後にオペレータがスタートボタンK1を押下すると、作業車両10は、補正後の目標経路Rに応じた自動走行を再開する。
【0070】
このように、作業車両10が自動走行を開始した後にオペレータが自動走行から手動走行に切り替えて作業車両10を任意の位置(例えば作業列の始端)に移動させて経路補正ボタンK2を押下すると、補正処理部214は、目標経路Rを作業車両10の現在位置に合わせて移動(補正)する。その後にオペレータがスタートボタンK1を押下すると、作業車両10は、補正後の目標経路Rに従って作業車両10の自動走行を再開する。
【0071】
操作端末20は、サーバー(不図示)が提供する農業支援サービスのウェブサイト(農業支援サイト)に通信網N1を介してアクセス可能であってもよい。この場合、操作端末20は、操作制御部21によってブラウザプログラムが実行されることにより、前記サーバーの操作用端末として機能することが可能である。そして、前記サーバーは、上述の各処理部を備え、各処理を実行する。
【0072】
[自動走行処理]
以下、
図10を参照しつつ、自動走行システム100が実行する前記自動走行処理の一例について説明する。
【0073】
なお、本発明は、前記自動走行処理に含まれる一又は複数のステップを実行する自動走行方法の発明として捉えることができる。また、ここで説明する前記自動走行処理に含まれる一又は複数のステップは適宜省略されてもよい。なお、前記自動走行処理における各ステップは同様の作用効果を生じる範囲で実行順序が異なってもよい。さらに、ここでは車両制御装置11及び操作制御部21が前記自動走行処理における各ステップを実行する場合を例に挙げて説明するが、一又は複数のプロセッサーが当該自動走行処理における各ステップを分散して実行する自動走行方法も他の実施形態として考えられる。
【0074】
先ずステップS1において、車両制御装置11は、作業開始指示を取得したか否かを判定する。オペレータは作業を開始する際に作業車両10を作業開始位置S(
図3参照)に移動させて操作端末20の操作画面D2においてスタートボタンK1(
図5参照)を押下する。操作制御部21は、スタートボタンK1の押下操作を受け付けると、作業車両10に作業開始指示を出力する。車両制御装置11は、操作端末20から前記作業開始指示を取得すると(S1:Yes)、処理をステップS2に移行させる。車両制御装置11は、前記作業開始指示を取得するまで待機する(S1:No)。
【0075】
ステップS2において、車両制御装置11は、自動走行処理を実行する。具体的には、車両制御装置11は、操作端末20において生成される目標経路R(
図3参照)に従って作業車両10を自動走行させる。例えば、車両制御装置11は、圃場Fにおいて、作業車両10を目標経路Rに従って自動走行させながら作業(芋の収穫作業)を実行させる。なお、車両制御装置11は、作業車両10に搭乗するオペレータによる変速レバーの操作を受け付け可能であってもよい。この場合、車両制御装置11は、オペレータの操作に応じて、自動走行する作業車両10の車速を変更する。
【0076】
次にステップS3において、車両制御装置11は、手動走行指示を受け付けたか否かを判定する。オペレータは作業経路と収穫位置(作業列)との位置ずれが大きく、目標経路Rを補正する必要があると判断すると、自動走行を手動走行に切り替える操作を行う。オペレータは、作業車両10に設けられる走行モードの切替レバー(不図示)により自動走行を手動走行に切り替えてもよいし、操作端末20の操作画面D2において自動走行を手動走行に切り替えてもよい。また、オペレータは、作業部13の作業を開始又は停止する操作によって自動走行及び手動走行を相互に切り替え可能であってもよい。例えば、オペレータが作業部13を作動させるクラッチを入れると、車両制御装置11は手動走行から自動走行に切り替え、オペレータがクラッチを切ると、車両制御装置11は自動走行から手動走行に切り替える。車両制御装置11は、自動走行を手動走行に切り替える操作(手動走行指示)を受け付けると(S3:Yes)、処理をステップS4に移行させる。一方、車両制御装置11は、自動走行を手動走行に切り替える操作(手動走行指示)を受け付けない場合(S3:No)、処理をステップS10に移行させる。
【0077】
ステップS4において、車両制御装置11は、手動走行処理を実行する。具体的には、車両制御装置11は、オペレータによる手動操舵に基づいて作業車両10を走行させる。例えば
図7に示すように、作業車両10が自動走行により作業経路R4の作業を終えて作業経路R5に移動した場合において、オペレータは、作業経路R5と次の収穫位置である作業列A5との位置ずれ(位置ずれ量L1)が大きく、目標経路Rを補正する必要があると判断すると、手動走行に切り替えて作業車両10を作業列A5の始端に移動させる。
【0078】
ステップS5において、操作制御部21は、目標経路Rの補正指示を受け付けたか否かを判定する。例えば、オペレータが作業車両10を作業列A5の始端に合わせて操作画面D2のスタートボタンK1(
図5参照)を押下すると、操作制御部21は、目標経路Rの補正指示を受け付ける。他の実施形態として、例えば、オペレータが作業車両10を作業列A5の始端に合わせて操作画面D2の経路補正ボタンK2(
図9参照)を押下すると、操作制御部21は、目標経路Rの補正指示を受け付ける。
【0079】
操作制御部21は、目標経路Rの補正指示を受け付けると(S5:Yes)、処理をステップS6に移行させる。一方、操作制御部21は、目標経路Rの補正指示を受け付けない場合(S5:No)、処理をステップS8に移行させる。
【0080】
ステップS6において、操作制御部21は、作業車両10の現在位置(補正位置)を取得する。具体的には、操作制御部21は、目標経路Rを補正する補正指示(スタートボタンK1又は経路補正ボタンK2の押下操作)を受け付けた時点の作業車両10の現在位置を取得する。
【0081】
次にステップS7において、操作制御部21は、目標経路Rを補正する。具体的には、操作制御部21は、目標経路R又は目標経路Rの延長線が作業車両10の現在位置を通るように、目標経路Rの位置を補正する。
図7に示す例では、操作制御部21は、作業経路R5又は作業経路R5の延長線が作業車両10の現在位置を通るように、目標経路R(作業経路R1~R10)を右方向に位置ずれ量L1だけ平行移動させる(
図8参照)。
【0082】
次にステップS8において、車両制御装置11は、自動走行指示を受け付けたか否かを判定する。操作制御部21は、オペレータが操作画面D2においてスタートボタンK1を押下すると、自動走行指示を作業車両10に出力する。車両制御装置11は、操作端末20から自動走行指示を取得する。
【0083】
なお、
図5に示す構成の場合、オペレータがスタートボタンK1を押下すると、操作制御部21は目標経路Rを補正し(S7)、車両制御装置11は自動走行指示を受け付ける(S8)。他の例として、操作制御部21は、1回目のスタートボタンK1の押下により目標経路Rを補正し、2回目のスタートボタンK1の押下により自動走行の開始指示を受け付けてもよい。また他の例として、操作制御部21は、スタートボタンK1が長押しされた場合には、目標経路Rを補正するとともに自動走行の開始指示を受け付け、スタートボタンK1の短押しされた場合には、自動走行の開始指示のみを受け付けてもよい。また、
図9に示す構成の場合、オペレータが経路補正ボタンK2を押下すると、操作制御部21は目標経路Rを補正し(S7)、その後にオペレータがスタートボタンK1を押下すると、車両制御装置11は自動走行指示を受け付ける(S8)。
【0084】
操作制御部21は、オペレータによりスタートボタンK1が押下されると、補正後の目標経路Rの経路データを作業車両10に出力する。車両制御装置11は、自動走行指示とともに補正後の目標経路Rの経路データを取得する。また、車両制御装置11は、自動走行指示を受け付けると、走行モードを手動走行から自動走行に切り替える。
【0085】
車両制御装置11は、自動走行指示を受け付けると(S8:Yes)、処理をステップS9に移行させる。一方、車両制御装置11は、自動走行指示を受け付けない場合(S8:No)、処理をステップS5に移行させる。車両制御装置11は、自動走行指示を受け付けるまで手動走行処理を続行する。
【0086】
ステップS9において、車両制御装置11は、自動走行処理を再開する。具体的には、車両制御装置11は、操作端末20において補正された目標経路R(
図8参照)に従って作業車両10の自動走行を再開させる。
【0087】
次にステップS10において、車両制御装置11は、作業車両10が作業終了位置G(
図8参照)に到達したか否かを判定する。車両制御装置11は、作業車両10が作業終了位置Gに到達したと判定すると(S10:Yes)、前記自動走行処理を終了する。車両制御装置11は、作業車両10が作業終了位置Gに到達していないと判定すると(S10:No)、処理をステップS3に移行させる。車両制御装置11は、作業車両10が作業終了位置Gに到達するまで、上述の処理を繰り返し実行する(S10:No)。以上のようにして、自動走行システム100は、前記自動走行処理を実行する。
【0088】
以上説明したように、本実施形態に係る自動走行システム100は、作業車両10を自動走行させる目標経路Rを生成することと、目標経路Rの補正位置を取得することと、前記補正位置に基づいて目標経路Rを補正することとを実行する。例えば、自動走行システム100は、目標経路Rを補正するユーザー操作が行われた際の作業車両10の現在位置を取得し、目標経路Rが前記現在位置を通るように目標経路Rの位置を補正(例えば平行移動)する。
【0089】
また、自動走行システム100は、予め生成された目標経路Rに従って作業車両10を自動走行させ、目標経路Rを補正した場合には補正後の目標経路Rに従って作業車両10を自動走行させる。
【0090】
上記構成によれば、予め生成された目標経路Rがオペレータの意図した位置に一致しない場合に、目標経路Rの位置を補正することができる。これにより、目標経路Rの位置ずれによる作業精度の低下を防ぐことができる。例えば、予め生成された目標経路Rが収穫物の位置(作業列)からずれた場合に、目標経路Rの位置を補正することにより収穫物を適切に収穫することが可能になる。
【0091】
[他の実施形態]
本発明は上述した実施形態に限定されない。本発明の他の実施形態について、以下に説明する。
【0092】
本発明の他の実施形態として、操作制御部21は、目標経路Rを補正する場合に、オペレータが選択した方向に目標経路Rを移動させてもよい。具体的には、操作制御部21は、目標経路Rに含まれる複数の作業経路R1~R10のうちオペレータに選択された作業経路又は当該作業経路の延長線が補正位置(例えば作業車両10の現在位置)を通るように、目標経路Rを平行移動させる。例えばオペレータが手動走行に切り替えて作業車両10を作業列A5の始端に合わせて一時停止させ、操作画面D2のスタートボタンK1(
図5参照)又は経路補正ボタンK2(
図9参照)を押下すると、操作制御部21は、
図11Aに示す経路補正画面D3を表示させる。操作制御部21は、経路補正画面D3に、目標経路Rの移動方向(シフト方向)を選択する選択ボタンK3、K4を表示させる。操作制御部21は、経路補正画面D3においてオペレータが選択ボタンK3を押下すると、作業経路が作業車両10の現在位置に一致するように目標経路Rを右方向に移動させ、オペレータが選択ボタンK4を押下すると、作業経路が作業車両10の現在位置に一致するように目標経路Rを左方向に移動させる。
【0093】
なお、操作制御部21は、目標経路Rの移動方向を自動的に決定してもよい。具体的には、操作制御部21は、目標経路Rに含まれる複数の作業経路のうち、作業車両10の向きと同一方向に設定され、かつ補正位置(例えば作業車両10の現在位置)に最も近い作業経路又は当該作業経路の延長線が前記補正位置を通るように、目標経路Rを平行移動させる。例えば
図7に示す例では、作業経路R1、R3、R5、R7、R9が作業車両10の向き(走行方向)と一致する。また、作業経路R1、R3、R5、R7、R9のうち作業経路R5が作業車両10の現在位置に最も近くなっている。この場合、操作制御部21は、作業経路R5が作業車両10の現在位置を通るように、目標経路Rの移動方向を右方向に決定して目標経路Rの位置を補正する。例えば
図11Bに示すように、操作制御部21は、決定した一方の方向(ここでは右方向)の選択ボタンK3のみを選択可能に表示させ、他方の方向(ここでは左方向)の選択ボタンK4を選択不可能に表示(グレーアウト表示)させてもよい。
【0094】
本発明の他の実施形態として、操作制御部21は、目標経路Rを補正する場合に、目標経路Rに含まれる複数の作業経路R1~R10のうち一部の作業経路のみを補正してもよい。例えば
図12に示すように、操作制御部21は、作業経路R1~R10のうち、目標経路Rを補正する操作が行われた際の作業車両10の現在位置から作業終了位置Gに含まれる作業経路(ここでは作業経路R5~R10)のみを補正(平行移動)する。
【0095】
また、他の実施形態として、操作制御部21は、目標経路Rを補正した場合に、補正後の目標経路Rを次回以降の作業経路に反映してもよい。例えば、操作制御部21は、耕耘、畝立てなどの作業において目標経路Rを補正した場合に、補正後の目標経路Rを次作業(植付作業、播種作業など)の目標経路に設定し、さらにその後の収穫作業の目標経路に設定する。また例えば、操作制御部21は、収穫作業において目標経路Rを補正した場合に、補正後の目標経路Rを次の収穫時期における収穫作業の目標経路に設定する。
【0096】
また、他の実施形態として、操作制御部21は、作業経路R1~R10のうち、目標経路Rを補正する操作が行われた際の作業車両10の現在位置に最も近い作業経路、すなわち自動走行再開後に最初に走行する作業経路(ここでは作業経路R5)のみを補正してもよい。また、他の実施形態として、操作制御部21は、作業経路R1~R10のうちオペレータが選択した一又は複数の作業経路のみを補正してもよい。
【0097】
また、他の実施形態として、操作制御部21は、目標経路Rの補正量(移動量)を異ならせてもよい。上述の実施形態では、操作制御部21は、複数の作業経路を一律に位置ずれ量L1だけ移動させているが、他の実施形態として、操作制御部21は、作業車両10の現在位置から作業終了位置Gに行くに従って、作業経路の補正量を小さくしてもよい。なお、上述の各実施形態において、複数の作業経路R1~R10のうち補正対象の作業経路をオペレータが設定可能であってもよいし、目標経路Rの補正量をオペレータが設定可能であってもよい。
【0098】
本発明の他の実施形態として、操作制御部21は、目標経路Rの補正量の上限値(上限補正量)を設定してもよい。具体的には、操作制御部21は、作業車両10の現在位置に最も近い目標経路R(作業経路)までの最短距離(位置ずれ量L1)が第1所定値以下の場合に目標経路Rを補正する。例えば
図13Aに示すように、操作制御部21は、作業車両10の現在位置に最も近い作業経路R5までの位置ずれ量L1(最短距離)が第1所定値L0以下の場合に目標経路Rを補正する。すなわち、操作制御部21は、作業車両10の現在位置が、目標経路R(作業経路R5)を中心として左右方向(作業方向に直交する幅方向)にそれぞれ第1所定値L0の範囲E1内に位置する場合に、目標経路Rの補正を許可する。
【0099】
これに対して、操作制御部21は、作業車両10の現在位置に最も近い作業経路R5までの位置ずれ量L1が第1所定値L0を超える場合、すなわち作業車両10の現在位置が範囲E1外に位置する場合には、目標経路Rの補正を禁止する。
【0100】
上記構成によれば、目標経路Rの過度な変更を抑制することができる。なお、上記構成において、第1所定値L0をオペレータが設定可能であってもよい。
【0101】
本発明の他の実施形態として、操作制御部21は、目標経路Rの補正量の下限値を設定してもよい。具体的には、操作制御部21は、作業車両10の現在位置に最も近い目標経路R(作業経路)までの最短距離(位置ずれ量L1)が第2所定値L2未満の場合に目標経路Rを補正しない。例えば
図13Bに示すように、操作制御部21は、作業車両10の現在位置に最も近い作業経路R5までの位置ずれ量L1(最短距離)が第1所定値L0以下かつ第2所定値L2以上の場合に目標経路Rを補正し、位置ずれ量L1が第1所定値L0を超える場合又は第2所定値L2未満の場合(
図13B参照)には目標経路Rを補正しない。すなわち、操作制御部21は、作業車両10の現在位置が、目標経路R(作業経路R5)を中心として左右方向(作業方向に直交する幅方向)にそれぞれ第1所定値L0の範囲E1内に位置し、かつ第2所定値L2の範囲E2外に位置する場合に、目標経路Rの補正を許可する。
【0102】
これに対して、操作制御部21は、作業車両10の現在位置が範囲E1外に位置する場合又は範囲E2内に位置する場合には、目標経路Rの補正を禁止する。なお、上記構成において、第1所定値L0及び第2所定値L2をオペレータが設定可能であってもよい。前記下限値(第2所定値L2)を設けることにより、位置ずれ量L1が目標経路Rを補正する必要のない程度であるにもかかわらず目標経路Rの補正処理が実行されることを防ぐことができる。
【0103】
例えば、範囲E2が自動走行の開始を許可する横偏差の許容範囲に設定され、自動走行の開始指示の操作により目標経路Rの補正処理を実行するように設定されている場合において、作業車両10が範囲E2内に位置した状態でオペレータが自動走行の開始操作を行うと、オペレータは目標経路Rを補正することなく自動走行を開始したいにも関わらず、目標経路Rを補正して自動走行を開始してしまう。この点、上記のように、作業車両10が範囲E2内に位置する場合に目標経路Rの補正を禁止する構成とすることにより、目標経路Rを補正することなく自動走行を開始することができる。なお、目標経路Rを補正するための(経路補正用の)スイッチ又は経路補正用の操作方法(例えば自動走行開始スイッチの長押し)などによって目標経路Rを補正するように設定されている場合には、上記構成(範囲E2内に位置する場合に目標経路Rの補正を禁止する構成)が省略されてもよい。また、作業車両10が範囲E2内に位置する場合に、前記経路補正用のスイッチ又は経路補正用の操作の受け付けを禁止してもよい。
【0104】
上述の実施形態では、操作制御部21は、目標経路Rを平行移動させているが、他の実施形態として、操作制御部21は、目標経路Rを回転移動させてもよい。具体的には、操作制御部21は、目標経路Rを補正するユーザー操作が行われた際の作業車両10の現在位置における作業車両10の向き(方位)に基づいて、目標経路Rの向きを補正する。例えば
図14Aに示すように、目標経路Rの向きと作業列の向きとが一致しない場合に、オペレータは手動走行により作業車両10の向きを作業列(作業列A5)の向きに合わせる。その後にオペレータが操作画面D2においてスタートボタンK1(
図5参照)又は経路補正ボタンK2(
図9参照)を押下すると、操作制御部21は、
図14Bに示すように、作業経路R5の向きが作業車両10の向き(作業列A5の向き)に一致するように目標経路Rの一部又は全部を回転移動させる。また、操作制御部21は、作業経路R5の位置が作業列A5の位置に一致しない場合には、目標経路Rの一部又は全部を平行移動させる。このように、操作制御部21は、作業車両10の現在位置及び現在位置における向きに基づいて目標経路Rを補正する。
【0105】
例えば、自動走行の開始指示の操作により目標経路Rの補正処理を実行するように設定されている場合において、操作制御部21は、目標経路Rに対する作業車両10の方位偏差が自動走行の開始を許可できる範囲内である状態でオペレータが自動走行の開始操作をした場合に、目標経路Rの方位を変更することなく自動走行を開始する構成としてもよい。なお、目標経路Rを補正するための(経路補正用の)スイッチ又は経路補正用の操作方法(例えば自動走行開始スイッチの長押し)などによって目標経路Rを補正するように設定されている場合には、上記構成(作業車両10の方位偏差が自動走行の開始を許可できる範囲内である場合に目標経路Rの補正を禁止する構成)が省略されてもよい。また、作業車両10の方位偏差が自動走行の開始を許可できる範囲内である場合に、前記経路補正用のスイッチ又は経路補正用の操作の受け付けを禁止してもよい。
【0106】
また、1つのスイッチ(操作具)で目標経路Rを平行移動させたり回転移動(方位変更)させたりすることが可能な場合に、操作制御部21は、平行移動及び回転移動のいずれを実行させるかをユーザーが選択できるように構成されてもよいし、1回の操作で平行移動及び回転移動の両方を実行できるように構成されてもよいし、1つのスイッチに対してそれぞれ異なる操作方法(平行移動の場合は短押し、回転移動の場合は長押しなど)を設定してもよい。また、平行移動用のスイッチと、回転移動用のスイッチとが個別に設けられてもよい。
【0107】
ここで、操作制御部21は、操作画面D2(
図5等参照)において、作業車両10が作業を行った作業済領域を識別可能に表示(例えば塗り潰し表示)する構成を備えている。この場合において、例えば、作業車両10が作業開始位置Sから自動走行及び作業を開始して途中で作業終了位置Gの方向に目標経路Rを補正すると、補正前の目標経路Rに従って作業した領域と、補正後の目標経路Rに従って作業した領域との間に隙間が生じ、操作画面D2において見かけ上、未作業領域として表示されてしまう場合がある。そこで、本発明の他の実施形態として、操作制御部21は、作業車両10が作業を行った作業済領域と作業を行っていない未作業領域とを識別可能に表示させる構成において、作業車両10が補正前の目標経路Rに従って作業を行った作業済領域と、作業車両10が補正後の目標経路Rに従って作業を行った作業済領域との間に未作業領域が存在する場合に、当該未作業領域を作業済領域として表示させてもよい。なお、操作制御部21は、前記未作業領域をオペレータの操作に従って作業済領域として表示させてもよい。これにより、不要な未作業領域の表示を抑制することができる。
【0108】
本発明の他の実施形態として、操作制御部21は、目標経路Rを補正する操作を受け付け可能な場所(範囲)を設定可能であってもよい。具体的には、操作制御部21は、目標経路Rに含まれる複数の作業経路のそれぞれの始端に基づいて設定された所定範囲内に作業車両10が位置する場合に目標経路Rを補正するユーザー操作の受け付けを許可し、所定範囲内に作業車両10が位置しない場合に目標経路Rを補正するユーザー操作の受け付けを禁止する。例えば
図15に示すように、操作制御部21は、作業経路R5の始端に基づいて設定された所定範囲Ar1内に作業車両10が位置する場合に目標経路Rを補正するユーザー操作の受け付けを許可し、所定範囲Ar1内に作業車両10が位置しない場合に目標経路Rを補正するユーザー操作の受け付けを禁止する。すなわち、操作制御部21は、作業車両10が所定範囲Ar1内に位置することを条件として目標経路Rの補正処理を実行する。所定範囲Ar1は、オペレータが設定可能であってもよい。
【0109】
本発明の他の実施形態として、作業車両10の走行方法に応じて目標経路Rの補正対象を決定してもよい。例えば
図16に示すように、作業車両10が作業開始位置Sから作業終了位置Gまで作業経路R1~R10をこの順に外側から内側に向かって往復走行する場合には、操作制御部21は、目標経路Rを補正するユーザー操作が行われた際の作業車両10の現在位置に近い作業経路R3と同じ作業方向の作業経路R1、R3、R5、R7、R9のみを補正(平行移動)し、作業経路R3とは異なる作業方向の作業経路R2、R4、R6、R8、R10を補正(平行移動)しない。
【0110】
同様に
図17に示すように、作業車両10が作業開始位置Sから作業終了位置Gまで外側から内側に向かって渦巻き状に走行する場合には、操作制御部21は、目標経路Rを補正するユーザー操作が行われた際の作業車両10の現在位置に近い作業経路Raと同じ作業方向の作業経路Ra、Rb、Rc、Rd、Reのみを補正(平行移動)し、作業経路Raとは異なる作業方向の他の作業経路を補正(平行移動)しない。
【0111】
上述の各実施形態では、操作制御部21は、作業車両10の現在位置に基づいて目標経路Rを補正している。他の実施形態として、操作制御部21は、作業対象物の位置に基づいて目標経路Rを補正してもよい。具体的には、操作制御部21の取得処理部213は、目標経路Rを補正するユーザー操作が行われた際の作業車両10の現在位置に最も近い作業列の位置を取得する。
図7に示す例では、取得処理部213は、目標経路Rを補正するユーザー操作が行われた際の作業車両10の現在位置に最も近い作業列A5の始端を前記補正位置として取得する。なお、取得処理部213は、作業車両10又は飛行体(ドローン)に搭載されたカメラの撮像画像に基づいて作業列の位置(始端位置)を取得してもよいし、収穫物の植付作業(定植作業など)の作業履歴データに基づいて作業列の位置を取得してもよい。補正処理部214は、目標経路R又は目標経路Rの延長線が前記補正位置(作業列A5の始端)を通るように、目標経路Rの位置を補正する。なお、目標経路Rの向きを補正する場合には、補正処理部214は、目標経路R又は目標経路Rの延長線が前記補正位置(作業列A5の始端)を通るように、目標経路Rの向きを補正する。このように、本発明の補正位置は、作業車両10の現在位置であってもよいし、作業対象物の位置であってもよい。
【0112】
ここで、作業車両10がトラクターで構成され、トラクターに昇降可能な作業機が連結される場合に、作業車両10は、作業機の昇降動作に連動して自動走行を実行してもよい。例えば、作業車両10は、オペレータが作業機を下降させる操作を行うと、自動走行を開始するとともに作業機を駆動させて作業を開始させる。この構成では、操作制御部21は、作業機の下降操作に基づいて、目標経路Rを補正してもよい。具体的には、オペレータが作業機を上昇させて自動走行から手動走行に切り替えた後に、作業車両10を任意の位置(例えば作業列の始端)に移動させて作業機を下降させると、操作制御部21は、目標経路Rを作業車両10の現在位置に合わせて移動(補正)し、作業車両10は、補正後の目標経路Rに従って作業車両10の自動走行を再開する。
【0113】
[発明の付記]
以下、上述の各実施形態から抽出される発明の概要について付記する。なお、以下の付記で説明する各構成及び各処理機能は取捨選択して任意に組み合わせることが可能である。
【0114】
<付記1>
作業車両を自動走行させる目標経路を生成することと、
前記目標経路の補正位置を取得することと、
前記補正位置に基づいて前記目標経路を補正することと、
を実行する経路生成方法。
【0115】
<付記2>
前記目標経路を補正するユーザー操作が行われた際の前記作業車両の現在位置を前記補正位置として取得する、
付記1に記載の経路生成方法。
【0116】
<付記3>
作業対象物の位置を前記補正位置として取得する、
付記1又は2に記載の経路生成方法。
【0117】
<付記4>
前記目標経路又は前記目標経路の延長線が前記補正位置を通るように、前記目標経路の位置を補正する、
付記1~3のいずれかに記載の経路生成方法。
【0118】
<付記5>
前記目標経路又は前記目標経路の延長線が前記補正位置を通るように、前記目標経路を平行移動させる、
付記1~4のいずれかに記載の経路生成方法。
【0119】
<付記6>
前記目標経路に含まれる複数の作業経路のうちユーザーに選択された作業経路、又は、当該作業経路の延長線が前記補正位置を通るように、前記目標経路を平行移動させる、
付記5に記載の経路生成方法。
【0120】
<付記7>
前記目標経路に含まれる複数の作業経路のうち、前記作業車両の向きと同一方向に設定され、かつ前記補正位置に最も近い作業経路、又は、当該作業経路の延長線が前記補正位置を通るように、前記目標経路を平行移動させる、
付記5又は6に記載の経路生成方法。
【0121】
<付記8>
前記作業車両の現在位置に最も近い前記目標経路までの最短距離が第1所定値以下の場合に前記目標経路を補正する、
付記2~7のいずれかに記載の経路生成方法。
【0122】
<付記9>
前記作業車両の現在位置に最も近い前記目標経路までの最短距離が前記第1所定値よりも小さい第2所定値未満の場合に前記目標経路を補正しない、
付記8に記載の経路生成方法。
【0123】
<付記10>
前記目標経路を補正するユーザー操作が行われた際の前記作業車両の現在位置における前記作業車両の向きに基づいて、前記目標経路の向きを補正する、
付記2~9のいずれかに記載の経路生成方法。
【0124】
<付記11>
作業領域において前記作業車両が作業を行った作業済領域と作業を行っていない未作業領域とを識別可能に表示させることをさらに実行し、
前記作業車両が補正前の前記目標経路に従って作業を行った作業済領域と、前記作業車両が補正後の前記目標経路に従って作業を行った作業済領域との間に未作業領域が存在する場合に、当該未作業領域を作業済領域として表示させる、
付記1~10のいずれかに記載の経路生成方法。
【0125】
<付記12>
前記目標経路に含まれる複数の作業経路のそれぞれの始端に基づいて設定された所定範囲内に前記作業車両が位置する場合に前記目標経路を補正するユーザー操作の受け付けを許可し、前記所定範囲内に前記作業車両が位置しない場合に前記目標経路を補正するユーザー操作の受け付けを禁止する、
付記1~11のいずれかに記載の経路生成方法。
【符号の説明】
【0126】
100 :自動走行システム
10 :作業車両
11 :車両制御装置
12 :記憶部
13 :作業部
14 :測位装置
15 :通信部
20 :操作端末
21 :操作制御部
22 :記憶部
23 :操作表示部
24 :通信部
211 :設定処理部
212 :生成処理部
213 :取得処理部
214 :補正処理部
Ar1 :所定範囲
D1 :メニュー画面
D2 :操作画面
D3 :経路補正画面
F :圃場
S :作業開始位置
G :作業終了位置
R :目標経路
R1~R10:作業経路
A1~A10:作業列
K1 :スタートボタン
K2 :経路補正ボタン
K3 :選択ボタン
K4 :選択ボタン
L1 :位置ずれ量
L0 :第1所定値
L2 :第2所定値
E1 :範囲
E2 :範囲