(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110441
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】レーザ加工装置及びレーザ加工方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/082 20140101AFI20240808BHJP
B23K 26/042 20140101ALI20240808BHJP
【FI】
B23K26/082
B23K26/042
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014960
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000233332
【氏名又は名称】ビアメカニクス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 賢司
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AD11
4E168CB04
4E168CB19
4E168EA15
4E168JB01
(57)【要約】
【課題】ガルバノミラーにより2次元方向に偏向されてfθレンズから出射するレーザ光を、被加工物へ垂直に入射させることができるレーザ加工装置を提供する。
【解決手段】レーザ光を発振するレーザ発振器と、前記レーザ光を2次元方向に偏向するガルバノミラーと、前記ガルバノミラーで偏向されたレーザ光をテーブルに載置した被加工物上に集光するfθレンズと、を備えるレーザ加工装置であって、前記fθレンズを傾動するレンズ傾動機構と、前記レンズ傾動機構を制御するレンズ制御部と、を備え、前記レンズ制御部が、前記fθレンズから出射するレーザ光の傾斜角度と等しい角度前記fθレンズの中心軸が傾斜するように前記レンズ傾動機構を制御する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を発振するレーザ発振器と、
前記レーザ光を2次元方向に偏向するガルバノミラーと、
前記ガルバノミラーで偏向されたレーザ光をテーブルに載置した被加工物上に集光するfθレンズと、を備えるレーザ加工装置であって、
前記fθレンズを傾動するレンズ傾動機構と、
前記レンズ傾動機構を制御するレンズ制御部と、を備え、
前記レンズ制御部が、前記fθレンズから出射するレーザ光の傾斜角度と等しい角度前記fθレンズの中心軸が傾斜するように前記レンズ傾動機構を制御し、レーザ光を被加工物に垂直に入射させる、
ことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
前記レンズ傾動機構が、前記fθレンズを、X軸と平行であって該fθレンズの中心を通過する軸を中心に傾動し、かつ、Y軸と平行であって該fθレンズの中心を通過する軸を中心に傾動する、
ことを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
レーザ発振器から発振されたレーザ光をガルバノミラーにより2次元方向に偏向し、fθレンズを介してテーブルに載置した被加工物に集光して加工するレーザ加工方法であって、
前記fθレンズを、その中心軸が該fθレンズから出射するレーザ光の傾斜角度と等しい角度傾斜するように傾動して、レーザ光を被加工物に垂直に入射させる、
ことを特徴とするレーザ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばプリント基板等の被加工物にレーザ光を使用して穴あけ加工を行うレーザ加工装置及びレーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板にレーザ光を使用して穴あけ等の加工を行うレーザ加工装置においては、例えば特許文献1や2に開示されるように、レーザ発振器から出射されたレーザ光をガルバノミラー(ガルバノスキャナ)により2次元方向へ偏向し、fθレンズを介してテーブルに載置されたプリント基板に集光して加工するようになっている。
【0003】
ここでfθレンズの特性として、レンズへ入射するレーザ光がその前側焦点を通過しない場合、レンズから出射するレーザ光がレンズ中心軸に対して傾斜することが知られている。
図1は、fθレンズから出射するレーザ光が傾斜する原理を説明する図である。同図においてF1は前側焦点、F2は後側焦点であり、いずれもfθレンズ81の中心軸O(一点鎖線)上にある。また、fはfθレンズ81の焦点距離である。同図に実線で示すように、光軸が前側焦点F1を通り、中心軸Oに対して角度θで入射するレーザ光は、光軸が中心軸Oと平行になってfθレンズ81から出射し、後側焦点F2において中心軸Oに垂直な面における中心軸Oの位置からfθ離れた位置Pに集光される。
【0004】
一方、同図に点線で示すように、前側焦点F1を通らず、中心軸Oに対する光軸の角度がθであるレーザ光も位置Pに集光されるが、光軸が中心軸Oに対して角度ε傾いて出射する。なお、入射光が前側焦点F1の前側(fθレンズ81から遠い側)で中心軸Oと交差する場合、出射光の光軸は、
図1のように中心軸Oに向かう方向に傾き、入射光が前側焦点F1の後側(fθレンズ81に近い側)で中心軸Oと交差する場合、中心軸Oから離れる方向に傾く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-71153号公報
【特許文献2】特開2020-49531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のレーザ加工装置において、fθレンズはその中心軸がテーブルに対して垂直になるように設置されているため、fθレンズからの出射光が傾いていると、テーブルに載置したプリント基板にレーザ光が傾斜して入射する。そのため、加工穴がプリント基板の厚み方向において傾斜し、基板表面の開口位置と、基板裏面の開口位置とにずれが生じることがあった。また、特許文献2にも記載されているように、基板表面に微細な凹凸がある場合には、XY方向における加工位置に誤差が生じるなど、加工精度に問題があった。なお、ガルバノミラーによるレーザ光の偏向位置を前側焦点F1に一致させられれば、レンズからの出射光はレンズ中心軸と平行となるが、ガルバノミラーはX軸用とY軸用の2つあるため、両者を共に前側焦点F1に一致させることは困難である。
【0007】
そこで本発明は、上記従来技術における課題を解決し、ガルバノミラーにより2次元方向に偏向されてfθレンズから出射するレーザ光を、被加工物であるプリント基板に垂直に入射させることができるレーザ加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、レーザ光を発振するレーザ発振器と、前記レーザ光を2次元方向に偏向するガルバノミラーと、前記ガルバノミラーで偏向されたレーザ光をテーブルに載置した被加工物上に集光するfθレンズと、を備えるレーザ加工装置であって、前記fθレンズを傾動するレンズ傾動機構と、前記レンズ傾動機構を制御するレンズ制御部と、を備え、前記レンズ制御部が、前記fθレンズから出射するレーザ光の傾斜角度と等しい角度前記fθレンズの中心軸が傾斜するように前記レンズ傾動機構を制御し、レーザ光を被加工物に垂直に入射させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、fθレンズからの出射光を被加工物へ垂直に入射させることができ、加工精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】fθレンズから出射するレーザ光が傾斜する原理を説明する図である。
【
図2】本発明の一実施例におけるレーザ加工装置の全体構成の概略図である。
【
図3】本発明の一実施例におけるガルバノスキャナユニット及びfθレンズユニットの概略図である。
【
図4】本発明の一実施例におけるfθレンズユニットの概略横断面図である。
【
図5】本発明の一実施例における角度情報テーブルを示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の代表的な実施形態について、図を用いて説明する。
図2は、本発明の一実施例におけるレーザ加工装置の全体構成の概略図、
図3は本発明の一実施例におけるガルバノスキャナユニット及びfθレンズユニットの概略図である。
【0012】
図2に示すように、本発明にかかるレーザ加工装置は、被加工物であるプリント基板3を保持するテーブル2が、ベッド1上を水平な直交2軸方向(X、Y方向)に図示を省略する駆動機構により移動可能に設けられている。ベッド1上には門型のコラム4が固定され、コラム4上部にはレーザ発振器5が設置されている。レーザ発振器5から発振され点線で示すレーザ光は、ミラー6(a)、6(b)によって光軸を偏向され、コラム4の前面に位置するガルバノスキャナユニット7へ入射する。
【0013】
ガルバノスキャナユニット7に入射したレーザ光は、
図3に示すように、ガルバノスキャナユニット7内部のミラー71により光軸を偏向される。そして、X軸ガルバノモータ72によりZ軸と平行な軸を中心に回動可能に軸支され、所定角度に位置決めされるX軸ガルバノミラー73に入射し、
図3の紙面に対して手前へ向かう方向に偏向される。X軸ガルバノミラー73から出射したレーザ光は、Y軸ガルバノモータ74によりX軸と平行な軸を中心に回動可能に軸支され、所定角度に位置決めされるY軸ガルバノミラー75に入射し、
図3の下方に向かう方向へ偏光される。
【0014】
ガルバノスキャナユニット7の下部にはレンズ傾動機構であるfθレンズユニット8が設けられており、Y軸ガルバノミラー75により偏向されたレーザ光が、fθレンズユニット8内のfθレンズ81へ入射する。そして、fθレンズ81を出射したレーザ光がプリント基板3に照射され、加工が行われる。
【0015】
図4はfθレンズユニット8の概略横断面図である。fθレンズユニット8は、fθレンズ81を、当該レンズの中心軸がXY平面の垂線に対して所定角度傾斜するよう傾動して位置決めする機能を有する。
図4に示すように、fθレンズ81は、支持軸83(a)、(b)を介して、レンズ中心を通りY軸と平行な傾動軸であるB軸を中心に傾動可能に傾動枠82に軸支されている。傾動枠82には、B軸を傾動中心としてfθレンズ81を傾動するB軸アクチュエータ84が設けられている。
【0016】
傾動枠82は、支持軸85(a)、(b)を介して、レンズ中心を通りX軸と平行な傾動軸(つまりB軸と直交する傾動軸)であるA軸を中心に傾動可能に固定枠86に軸支されている。固定枠86には、A軸を傾動中心として傾動枠82を傾動するA軸アクチュエータ87が設けられている。A軸アクチュエータ87、B軸アクチュエータ84としては、例えばエンコーダを備えた薄型モータを用いることができる。A軸アクチュエータ87及びB軸アクチュエータ84は、後述のレンズ制御部13により制御され、傾動枠82及びfθレンズ81をそれぞれ傾動して所定の角度に位置決めする。つまり、本実施例において、fθレンズ81はA軸及びB軸において傾動可能であり、所定の角度に位置決めされる。本発明は、fθレンズ81をこのように傾動し、所定の角度に位置決め可能とすることで、fθレンズから出射するレーザ光の傾斜角と等しくfθレンズを傾斜させて、レーザ光をプリント基板3に垂直に入射させるものである。なおfθレンズユニット8は、fθレンズ81の中心軸をXY平面に対して垂直にした状態において、ガルバノミラー73及び75が原点位置(振り角の中心位置)にあるときのレーザ光軸が、fθレンズ81の中心軸と一致する位置に設けられている。
【0017】
図2に戻り、11は装置全体の動作を制御する全体制御部である。全体制御部11は、例えばプログラム制御の処理装置によって実現され、その中の各構成要素や接続線は、論理的なものも含むものとする。また各構成要素の一部は全体制御部11と別個に設けられていてもよい。更に各構成要素や各構成要素間を接続する線は、主に本実施例を説明するために必要と考えられるものを示してあり、ここで説明するもの以外の構成要素や制御機能を有しているものとする。
【0018】
全体制御部11には、X軸ガルバノモータ72及びY軸ガルバノモータ74を制御し、X軸ガルバノミラー73及びY軸ガルバノミラー75を回動してそれぞれ所定角度に位置決めするガルバノ制御部12、fθレンズユニット8におけるA軸アクチュエータ87及びB軸アクチュエータ84をそれぞれ制御し、fθレンズ81をA軸及びB軸を中心に傾動し所定角度に位置決めするレンズ制御部13、加工位置を指定した加工プログラムを格納するためのプログラム記憶部14、加工位置毎に1エントリとしてガルバノミラー及びfθレンズの角度に関する情報を登録する角度情報テーブル15が設けられている。
【0019】
図5は、角度情報テーブル15を示す図表である。角度情報テーブル15には、プリント基板3上の加工位置P1、P2、P3、…の各々の位置において、fθレンズ81から出射したレーザ光が、各加工位置に垂直に入射することとなるA軸におけるfθレンズ81の傾動角度α、B軸におけるfθレンズ81の傾動角度β、X軸ガルバノミラー73の回動角度γ、Y軸ガルバノミラー75の回動角度δが記憶されている。つまり、レーザ光がfθレンズ81から出射する角度と等しくfθレンズ81を傾斜させたときに、レーザ光が加工位置に入射することとなる各角度が記憶されている。なお、各加工位置における角度α、β、γ及びδは予め実験等により求めておく。
【0020】
次に、本発明によるレーザ加工装置における加工動作を説明する。全体制御部11は、プログラム記憶部14に予め記憶された加工プログラムが指定する加工位置について、角度情報テーブル15から対応する角度を読み出し、A軸角度α及びB軸角度βをレンズ制御部13へ送信し、X軸角度γ及びY軸角度δをガルバノ制御部12へ送信する。
【0021】
ガルバノ制御部12は、X軸ガルバノモータ72及びY軸ガルバノモータ74を制御し、X軸ガルバノミラー73及びY軸ガルバノミラー75を読み出した各角度にそれぞれ位置決めする。また、レンズ制御部13は、A軸アクチュエータ87及びB軸アクチュエータ84をそれぞれ制御し、fθレンズ81をA軸及びB軸における読み出した角度に位置決めする。そして、全体制御部11は、レーザ発振器5を制御しレーザ光を発振させることにより加工を行う。ガルバノミラー73、75及びfθレンズ81は、レーザ光が加工位置に垂直に入射する位置に位置決めされているので、レーザ光はプリント基板3の加工位置に垂直に入射する。
【0022】
図6及び7は、本発明の原理を説明する図であり、加工位置P1を加工する場合のレーザ光の偏向状態を示している。なお、
図6はレーザ光のX軸方向における偏向状態を示し、
図7はレーザ光のY軸方向における偏向状態を示したものである。また、図中GxはX軸ガルバノミラー73の位置(X軸ガルバノミラー73にて、レーザ光が偏向される位置)を表し、GyはY軸ガルバノミラー75の位置(Y軸ガルバノミラー75にて、レーザ光が偏向される位置)を表すが、それぞれのミラーで偏向される前のレーザ光は図示を省略する。更に、
図1と同じものは、同一の符号を付して説明を省略する。
図6及び
図7を用いて本発明の原理を説明する。
【0023】
例えばP1を加工する場合、ガルバノミラー及びfθレンズは、
図5に示す角度情報テーブル15の位置P1に対応する各角度に位置決めされる。すなわち、fθレンズ81はA軸において角度α1、B軸において角度β1となるよう位置決めされ、X軸ガルバノミラー73は角度γ1、Y軸ガルバノミラー75は角度δ1に位置決めされる。
【0024】
X方向においては、X軸ガルバノミラー73が角度γ1に位置決めされることにより、
図6に示すように、レーザ光はGxを通る点線に示すようにfθレンズ81へ入射する。fθレンズ81へ入射したレーザ光は、レンズ中心軸0に対して角度εx傾斜して当該レンズから出射するが、fθレンズ81が垂線に対してεxと等しい角度β1傾斜しているので、プリント基板3のP1xにおいて垂直に入射することとなる。また、Y方向においては、Y軸ガルバノミラー75が角度δ1に位置決めされることにより、
図7に示すように、レーザ光はGyを通る点線に示すようにfθレンズ81へ入射する。fθレンズ81へ入射したレーザ光は、レンズ中心軸0に対して角度εy傾斜して当該レンズから出射するが、fθレンズ81が垂線に対してεyと等しい角度α1傾斜しているので、プリント基板3のP1yにおいて垂直に入射することとなる。なお、fθレンズを傾動することにより、被加工物の高さ方向における焦点位置に微小なずれが生じうるが、レーザ光の焦点深度の範囲内で許容される。
【0025】
以上のように、本発明のレーザ加工装置は、fθレンズから出射するレーザ光の傾斜角度と等しくfθレンズを傾動することにより、被加工物に対してレーザ光を垂直に入射させることができる。これにより、加工精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0026】
F1:前側焦点、F2:後側焦点、О:fθレンズ中心軸、1:ベッド、2:テーブル、3:プリント基板(被加工物)、4:コラム、5:レーザ発振器、6(a)、(b):ミラー、7:ガルバノスキャナユニット、71:ミラー、72:X軸ガルバノモータ、73:X軸ガルバノミラー、74:Y軸ガルバノモータ、75:Y軸ガルバノミラー、8:fθレンズユニット(レンズ傾動機構)、81:fθレンズ、82:傾動枠、83(a)、(b):支持軸(B軸)、84:アクチュエータ(B軸)、85(a)、(b):支持軸(A軸)、86:固定枠、87:アクチュエータ(A軸)、11:全体制御部、12:ガルバノ制御部、13:レンズ制御部
14:プログラム記憶部、15:角度情報テーブル、Gx:X軸ガルバノミラーの位置、Gy:Y軸ガルバノミラーの位置