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特開2024-110445ハイブリッド車両の制御方法及びハイブリッド車両の制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110445
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両の制御方法及びハイブリッド車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 41/04 20060101AFI20240808BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20240808BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20240808BHJP
   B60W 20/16 20160101ALI20240808BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20240808BHJP
   F02D 9/02 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
F02D41/04
B60W10/06 900
B60W10/08 900
B60W20/16 ZHV
F01N3/08 A ZAB
F02D9/02 341G
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014968
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】吉村 太
【テーマコード(参考)】
3D202
3G065
3G091
3G301
【Fターム(参考)】
3D202BB09
3D202BB11
3D202CC41
3D202DD20
3D202DD21
3D202DD24
3D202EE01
3G065BA06
3G065CA12
3G065FA03
3G065GA41
3G091AA14
3G091AB03
3G091AB06
3G091BA15
3G091BA19
3G091CB02
3G091CB03
3G091EA07
3G091EA34
3G091HA36
3G091HA37
3G091HA42
3G301JA26
3G301MA01
3G301MA11
3G301MA18
3G301NE13
3G301PA11Z
3G301PD09Z
(57)【要約】
【課題】NOxトラップ触媒のNOx処理能力を向上させる。
【解決手段】ハイブリッド車両は、空燃比を理論空燃比よりもリッチにしてNOxトラップ触媒に吸着されたNOxの脱離還元処理を行う場合、内燃機関のトルクをリーン運転時のトルクよりも低下させるトルク低下処理を行うことで吸入空気量をリーン運転時と等トルクが得られる空気量よりも減少させる。ハイブリッド車両は、NOxトラップ触媒の脱離還元処理を行う際に排気ガス流量を減らすことで触媒の反応時間を確保することができ、NOxの脱離還元処理、及び脱離還元処理時に排出されるNOx以外の他の排ガス成分(HC、CO等)の処理率を向上させることができる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素過剰のリーン雰囲気のとき排気中のNOxをトラップし、酸素濃度が低下したリッチ雰囲気においてNOxを脱離還元処理するNOxトラップ触媒が排気通路に配置された内燃機関を有し、上記内燃機関が停止していても駆動輪を駆動可能なハイブリッド車両の制御方法において、
上記内燃機関の空燃比が理論空燃比よりもリーンとなるリーン運転時に空燃比を理論空燃比よりもリッチにして上記脱離還元処理を行う場合、上記内燃機関の吸入空気量を上記リーン運転時と等トルクが得られる空気量よりも減少させることを特徴とするハイブリッド車両の制御方法。
【請求項2】
上記リーン運転時に上記脱離還元処理を行う場合、上記内燃機関のトルクを上記リーン運転時のトルクよりも低下させるトルク低下処理を行うことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の制御方法。
【請求項3】
上記トルク低下処理は、上記NOxトラップ触媒に吸着されたNOx量の変化に合わせてトルクの低下量を変化させることを特徴とする請求項2に記載のハイブリッド車両の制御方法。
【請求項4】
上記トルク低下処理は、上記NOxトラップ触媒に吸着されたNOx量が減少するほどトルクが大きくなるようにトルクの低下量を変化させることを特徴とする請求項3に記載のハイブリッド車両の制御方法。
【請求項5】
上記トルク低下処理は、上記NOxトラップ触媒に吸着されているNOx量に応じて当該トルク低下処理の開始時におけるトルクの低下量を変化させることを特徴とする請求項2に記載のハイブリッド車両の制御方法。
【請求項6】
上記トルク低下処理は、上記NOxトラップ触媒に吸着されているNOx量が多くなるほど当該トルク低下処理の開始時におけるトルクの低下量を大きくすることを特徴とする請求項5に記載のハイブリッド車両の制御方法。
【請求項7】
上記トルク低下処理は、上記NOxトラップ触媒のNOxトラップ能力の低下に応じてトルクの低下量を変化させることを特徴とする請求項2に記載のハイブリッド車両の制御方法。
【請求項8】
上記トルク低下処理は、上記NOxトラップ触媒のNOxトラップ能力が低下するほどトルクの低下量を大きくすることを特徴とする請求項7に記載のハイブリッド車両の制御方法。
【請求項9】
酸素過剰のリーン雰囲気のとき排気中のNOxをトラップし、酸素濃度が低下したリッチ雰囲気においてNOxを脱離還元処理するNOxトラップ触媒が排気通路に配置された内燃機関を有し、上記内燃機関が停止していても駆動輪を駆動可能なハイブリッド車両の制御装置において、
上記内燃機関の空燃比が理論空燃比よりもリーンとなるリーン運転時に空燃比を理論空燃比よりもリッチにして上記脱離還元処理を行う場合、上記内燃機関の吸入空気量を上記リーン運転時と等トルクが得られる空気量よりも減少させる制御部を有することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両の制御方法及びハイブリッド車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、NOxトラップ触媒(窒素酸化物吸蔵還元触媒)に吸蔵されたNOx(窒素酸化物)を還元して放出する際に、吸入空気量を減少させることで内燃機関の空燃比をリッチにする技術が開示されている。
【0003】
特許文献1では、吸入空気量を減少させて空燃比をリッチすることで、NOxトラップ触媒に吸蔵されたNOxを還元して放出する際のトルク段差を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-184418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1においては、NOxトラップ触媒に吸蔵されたNOxを還元して放出する際のNOx処理能力の向上に関して何ら考慮されておらず、この点でさらなる改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のハイブリッド車両は、内燃機関の空燃比が理論空燃比よりもリーンとなるリーン運転時に空燃比を理論空燃比よりもリッチにしてNOxトラップ触媒でNOxの脱離還元処理を行う場合、上記内燃機関の吸入空気量を上記リーン運転時と等トルクが得られる空気量よりも減少させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、脱離還元処理を行う際に排気ガスの流量を減らすことで、脱離還元処理時の触媒の反応時間を確保することができる。そのため、ハイブリッド車両は、NOxの脱離還元処理、及び脱離還元処理時に排出されるNOx以外の他の排ガス成分(HC、CO等)の処理率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明が適用されるハイブリッド車両のシステム構成の概略を模式的に示した説明図。
図2】NOxの残存率と触媒容量を排気ガス流量で除した値との相関を示した特性図。
図3】NOxの残存率とリッチ時間との相関を示した特性図。
図4】排気中のHC量とリッチ時間との相関を示した特性図。
図5】第1実施例におけるリッチスパイク制御の際の各種パラメータの変化を示すタイミングチャート。
図6】NOx脱離処理開始時にNOxトラップ触媒に吸着されているNOx量とNOx処理時の指令低下トルクとの相関を示す特性図。
図7】第2実施例におけるリッチスパイク制御の際の各種パラメータの変化を示すタイミングチャート。
図8】トルク低下処理の開始時に設定される内燃機関のトルクとNOxトラップ触媒のNOxトラップ能力との相関を示す特性図。
図9】NOxトラップ触媒のNOxトラップ能力とNOxトラップ触媒の触媒劣化との相関を示す特性図。
図10】NOxトラップ触媒のNOxトラップ能力とNOxトラップ触媒の触媒温度との相関を示す特性図。
図11】第3実施例におけるリッチスパイク制御の際の各種パラメータの変化を示すタイミングチャート。
図12】触媒出口NOx量とNOxトラップ量との相関を模式的に示した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
図1は、本発明が適用されるハイブリッド車両のシステム構成の概略を模式的に示した説明図である。
【0011】
内燃機関1は、例えばガソリンを燃料とする火花点火式の内燃機関であって、ハイブリッド車両(図示せず)に搭載されている。ハイブリッド車両は、内燃機関1が停止していても駆動輪(図示せず)を駆動可能なものであって、例えば、内燃機関1が発電用となるシリーズハイブリッドである。なお、本発明が適用されるハイブリッド車両は、上記駆動輪の駆動源として内燃機関1と走行用モータとを有するようなパラレルハイブリッド車両であってもよい。
【0012】
内燃機関1は、排気通路2に三元触媒3及びNOxトラップ触媒(LNT)4を有している。三元触媒3は、排気流れ方向で、NOxトラップ触媒4の上流側に位置している。三元触媒3は、理論空燃比(λ=1)を中心とするいわゆるウィンドウに空燃比がある場合に最大の転化効率をもって排気中のNOx、HC、COを同時に浄化できるものである。
【0013】
NOxトラップ触媒4は、排気空燃比がリーンのときに排気中のNOx(窒素酸化物)を吸着(トラップ)し、吸着したNOxを排気空燃比がストイキやリッチのときに排気中のHC(ハイドロカーボン)、COを還元剤として用いて還元浄化するものである。つまり、NOxトラップ触媒4は、酸素過剰のリーン雰囲気のとき排気中のNOxを吸着し、酸素濃度が低下したリッチ雰囲気において排気中のHC等を還元剤としてNOxを脱離還元処理するものである。
【0014】
排気通路2には、空燃比センサ5と酸素センサ6が設けられている。空燃比センサ5は、三元触媒3の上流側に配置されている。つまり、空燃比センサ5は、三元触媒3の入口側における排気の空燃比を検出する。空燃比センサ5は、空燃比に応じた略リニアな出力特性を有するものである。酸素センサ6は、三元触媒3下流側となり、NOxトラップ触媒4の上流側となる位置に配置されている。酸素センサ6は、排気空燃比のリッチ/リーンのみを検出するものである。つまり、酸素センサ6は、三元触媒3の出口側における排気空燃比のリッチ/リーンを検出する。
【0015】
また、内燃機関1は、クランクシャフト(図示せず)のクランク角を検出するクランク角センサ7、運転者により操作されるアクセルペダルの踏込量を検出するアクセル開度センサ8等の各種センサを備えている。クランク角センサ7は、内燃機関1の機関回転数を検出可能なものである。
【0016】
上述した各種センサ類の検出信号は、コントロールユニット9に入力される。
【0017】
コントロールユニット9は、CPU、ROM、RAM及び入出力インターフェースを備えた周知のデジタルコンピュータである。
【0018】
コントロールユニット9は、各種センサ類の検出信号等に基づいて、内燃機関1のスロットル開度、内燃機関1の空燃比、内燃機関1の吸入空気量等を最適に制御する。内燃機関1のスロットル開度とは、内燃機関1の吸気通路(図示せず)に設けられたスロットル弁(図示せず)の開度である。
【0019】
制御部としてのコントロールユニット9は、NOxトラップ触媒4に吸着されたNOx量(NOxトラップ量)が予め設定された所定値に達すると、NOxトラップ触媒4に吸着されたNOxを脱離還元するために、排気空燃比を理論空燃比よりもリッチとするリッチスパイク制御を実施する。
【0020】
NOxトラップ触媒4に吸着されたNOxは、上記リッチスパイク制御を実施することにより、排気中のHC等を還元剤として脱離還元処理される。
【0021】
図2は、上記リッチスパイク制御の実施時において、NOxトラップ触媒4に吸着されたNOxの残存率とNOxトラップ触媒4の触媒容量をNOxトラップ触媒4に流れる排気ガス流量で除した値との相関を示した特性図である。
【0022】
NOxトラップ触媒4のNOx残存率は、NOxトラップ触媒4の触媒容量に対してNOxトラップ触媒4に流れる排気ガス流量が少なくなるほど低くなる。つまり、NOxトラップ触媒4のNOx残存率は、上記リッチスパイク制御の際の排気ガス流量が少ないほど低くなる。これは、排気ガス流量が少なくなることで、NOxトラップ触媒4の触媒反応時間が稼げるためである。なお、本願明細書における排気ガス流量は、体積流量である。
【0023】
また、上記リッチスパイク制御の際に、内燃機関1の出力にトルク段差が生じないようにするには、上記リッチスパイク制御の前後における内燃機関1のトルクと等しくなるように吸入空気量を制御する必要がある。例えば、空燃比が理論空燃比よりもリーンとなるリーン運転時(リーン運転中)に上記リッチスパイク制御を行う場合は、リーン運転と上記リッチスパイク制御中のリッチ運転では要求される吸入空気量が異なることから、トルク変動を回避するためにスロットル弁の開度を絞る必要がある。
【0024】
図3は、NOxトラップ触媒4に吸着されたNOxの残存率と上記リッチスパイク制御の継続時間であるリッチ時間との相関を示した特性図である。図3における実線は、上記リッチスパイク制御中の内燃機関1のトルクが上記リッチスパイク制御前後の内燃機関1のトルクよりも低くなるように吸入空気量を制御した場合を示している。図3における破線は、上記リッチスパイク制御中の内燃機関1のトルクが上記リッチスパイク制御前後の内燃機関1のトルクと等しくなるように吸入空気量を制御した場合を示している。
【0025】
図3に実線で示すように、上記リッチスパイク制御中の内燃機関1のトルクが上記リッチスパイク制御前後の内燃機関1のトルクよりも低くなるように吸入空気量を制御すると、上記リッチ時間によらずNOx残存率を低下させることが可能となる。
【0026】
図4は、上記リッチスパイク制御時の排気中のHC量と上記リッチスパイク制御の継続時間であるリッチ時間との相関を示した特性図である。図4における実線は、上記リッチスパイク制御中の内燃機関1のトルクが上記リッチスパイク制御前後の内燃機関1のトルクよりも低くなるように吸入空気量を制御した場合を示している。図4における破線は、上記リッチスパイク制御中の内燃機関1のトルクが上記リッチスパイク制御前後の内燃機関1のトルクと等しくなるように吸入空気量を制御した場合を示している。
【0027】
図4に実線で示すように、上記リッチスパイク制御中の内燃機関1のトルクが上記リッチスパイク制御前後の内燃機関1のトルクよりも低くなるように吸入空気量を制御すると、還元剤として供給されたHCが有効に脱離したNOxの転化に使用され、NOxトラップ触媒4の下流側に排出されるHCが減少する。
【0028】
そこで、第1実施例のハイブリッド車両における内燃機関1は、上記リッチスパイク制御に際して、内燃機関1の吸入空気量をリーン運転時(リーン運転中)と等トルクが得られる空気量よりもさらに減少させる。
【0029】
詳述すると、第1実施例のハイブリッド車両は、燃料噴射弁(図示せず)からの燃料噴射量の増量により空燃比を理論空燃比よりもリッチにしてNOxトラップ触媒4に吸着されたNOxの脱離還元処理を行う場合、内燃機関1のトルクをリーン運転時(リーン運転中)のトルクよりも低下させるトルク低下処理を行うことで吸入空気量をリーン運転時(リーン運転中)と等トルクが得られる空気量よりも減少させる。換言すると、制御部としてのコントロールユニット9は、燃料噴射弁(図示せず)からの燃料噴射量の増量により空燃比を理論空燃比よりもリッチにしてNOxトラップ触媒4に吸着されたNOxの脱離還元処理を行う場合、内燃機関1のトルクをリーン運転時(リーン運転中)のトルクよりも低下させるトルク低下処理を行うことで内燃機関1の吸入空気量をリーン運転時(リーン運転中)と等トルクが得られる空気量よりも減少させる。トルク低下処理は、脱離還元処理と同時並行して実施されるものである。トルク低下処理の開始時期は、脱離還元処理の開始時期と一致する。トルク低下処理の終了時期は、脱離還元処理の終了時期と一致する。
【0030】
図5は、第1実施例における上記リッチスパイク制御の際の各種パラメータの変化を示すタイミングチャートである。図5中の実線は、第1実施例における上記リッチスパイク制御の際の各種パラメータの変化を示している。図5中の破線は、上記リッチスパイク制御に際して、内燃機関1の吸入空気量をリーン運転時(リーン運転中)と等トルクが得られる空気量とした場合を示す比較例である。
【0031】
図5の時刻t1は、NOxトラップ触媒4に吸着されたNOx量(NOxトラップ量)が所定量に達して上記リッチスパイク制御の実施要求であるNOx処理要求が成立したタイミングである。
【0032】
NOxトラップ触媒4に吸着されたNOx量は、従来から知られている公知の算出方法を用いて算出する。NOxトラップ触媒4に吸着されたNOx量の算出方法としては、例えば特開2003-293742号公報に記載されているような方法で、単位時間もしくは単位サイクル当たりのNOx吸着量およびNOx放出量を繰り返し加減算することにより、そのときにNOxトラップ触媒4に吸着されたNOx量を算出するようにしてもよい。
【0033】
内燃機関1の空燃比(指示空燃比)は、図5の時刻t1のタイミングで空燃比指示に従い理論空燃比(λ=1)よりもリーンとなる所定のリーン空燃比から理論空燃比よりもリッチとなる所定のリッチ空燃比に切り替えられている。
【0034】
第1実施例における内燃機関1のトルクは、図5の時刻t1のタイミングで、リーン運転時(リーン運転中)のトルクよりも小さくなるよう、スロットル開度を小さくして、排気ガス流量を減少させている。
【0035】
またそれぞれの内燃機関トルクに合わせる形でジェネレータ(内燃機関1に駆動される発電機)での発電量もコントロールされる。
【0036】
ここで、図5中のV1は、上記リッチスパイク制御中の内燃機関1のトルクが上記リッチスパイク制御前後の内燃機関1のトルクと等しくなるように吸入空気量を制御した場合の排気ガス流量である。
【0037】
第1実施例における内燃機関1は、図5の時刻t1のタイミングで、排気ガス流量が上記V1よりも小さくなるようにスロットル開度が制御される。
【0038】
図5の時刻t2は、比較例においてNOxトラップ触媒4に吸着されたNOx量が所定量Dsに達したタイミングである。比較例においては、図5の時刻t2のタイミングで、NOx処理要求が不成立となり、内燃機関1の空燃比(指示空燃比)及びスロットル開度が時刻t1以前の状態に切り替えられ、排気ガス流量も時刻t1以前の状態に戻される。つまり、比較例においては、図5の時刻t1~t2の期間、NOxトラップ触媒4に流れ込む排気の雰囲気が理論空燃比よりもリッチとなってNOxトラップ触媒4で脱離還元処理が行われる。
【0039】
図5の時刻t3は、第1実施例のハイブリッド車両においてNOxトラップ触媒4に吸着されたNOx量が所定量Dsに達したタイミングである。第1実施例における内燃機関1は、図5の時刻t3のタイミングで、NOx処理要求が不成立となり、内燃機関1の空燃比(指示空燃比)及びスロットル開度が時刻t1以前の状態に切り替えられ、排気ガス流量も時刻t1以前の状態に戻される。つまり、第1実施例においては、図5の時刻t1~t3の期間、NOxトラップ触媒4に流れ込む排気の雰囲気が理論空燃比よりもリッチとなってNOxトラップ触媒4で脱離還元処理が行われる。
【0040】
第1実施例における内燃機関1は、図5の時刻t1~t3の期間、スロットル開度が徐々に大きくなるよう制御され、内燃機関1のトルクが徐々に大きくなって、排気ガス流量が徐々に多くなっている。
【0041】
第1実施例における内燃機関1は、図5の時刻t1~t3の期間、NOxトラップ触媒4に吸着されたNOx量の変化に合わせてトルクの低下量を変化させるトルク低下処理を行っている。詳述すると、第1実施例における内燃機関1は、図5の時刻t1~t3の期間、NOxトラップ触媒4に吸着されたNOx量が減少するほどトルクが大きくなるようにトルクの低下量を変化させるトルク低下処理を行っている。
【0042】
第1実施例における内燃機関1は、図5の時刻t3において空燃比が理論空燃比となるように、図5の時刻t1~t3の期間、空燃比が徐々にリーン側に変化するよう制御されている。
【0043】
以上説明してきたように、上述した第1実施例のハイブリッド車両における内燃機関1は、NOxトラップ触媒4の脱離還元処理を行う際に排気ガス流量を減らすことで、触媒の反応時間を確保することができる。
【0044】
そのため、第1実施例のハイブリッド車両は、NOxの脱離還元処理、及び脱離還元処理時に排出されるNOx以外の他の排ガス成分(HC、CO等)の処理率を向上させることができる。
【0045】
脱離還元処理時にNOxトラップ触媒4に吸着されているNOx量は、脱離還元処理の開始時に多く、時間経過に伴い減少する。換言すると、脱離還元処理時にNOxトラップ触媒4から脱離するNOx量(NOx脱離量)は、脱離還元処理の開始時に多く、時間経過に伴い減少する。そこで、第1実施例のハイブリッド車両は、脱離還元処理時の時間経過によるNOxトラップ量またはNOx脱離量の変化に合わせてトルク低下処理におけるトルクの低下量を変化させる。
【0046】
これによって、第1実施例のハイブリッド車両は、NOxの脱離還元処理の処理能力を確保しつつ、NOxの脱離還元処理の処理時間を短縮し、脱離還元処理を実施することによる燃費悪化を抑制することができる。
【0047】
第1実施例のハイブリッド車両は、NOxトラップ触媒4に吸着されているNOx量が相対的に多くなる脱離還元処理の前半ほど内燃機関1の排気ガス流量を少なくしているので、NOxの脱離還元処理の処理能力を効率良く確保することができる。換言すると、第1実施例のハイブリッド車両は、NOxトラップ触媒4から脱離するNOx量が相対的に多くなる脱離還元処理の前半ほど内燃機関1の排気ガス流量を少なくしているので、NOxトラップ触媒4から脱離したNOxの転化率が向上してNOxの脱離還元処理の処理能力を効率良く確保することができる。
【0048】
第1実施例のハイブリッド車両は、NOxトラップ触媒4に吸着されているNOx量が相対的に少なくなる脱離還元処理の後半ほど内燃機関1の排気ガス流量を多くしているので、総じてNOxの脱離還元処理の処理時間短縮を図ることができる。換言すると、第1実施例のハイブリッド車両は、NOxトラップ触媒4から脱離するNOx量が相対的に少なくなる脱離還元処理の後半ほど内燃機関1の排気ガス流量を多くしているので、総じてNOxの脱離還元処理の処理時間短縮を図ることができる。
【0049】
以下、本発明の他の実施例について説明する。なお、上述した実施例と同一の構成要素には同一の符号を付し重複する説明を省略する。
【0050】
図6及び図7を用いて本発明の第2実施例のハイブリッド車両について説明する。第2実施例のハイブリッド車両は、上述した第1実施例のハイブリッド車両と略同一構成となっているが、トルク低下処理の開始時におけるトルクの低下量がNOxトラップ触媒4に吸着されているNOx量に応じて変化するよう設定されている。詳述すると、第2実施例のハイブリッド車両は、トルク低下処理の開始時にNOxトラップ触媒4に吸着されているNOx量が多くなるほどトルク低下処理の開始時における内燃機関1のトルクの低下量が大きくなるよう設定されている。
【0051】
図6は、NOx脱離処理開始時にNOxトラップ触媒に吸着されているNOx量とNOx処理時の指令低下トルクとの相関を示す特性図である。なお、図6中の破線は、リーン運転時中に設定される内燃機関1のトルクの一例である。
【0052】
図6に示すように、第2実施例のハイブリッド車両においては、トルク低下処理の開始時にNOxトラップ触媒4に吸着されているNOx量が多くなるほどトルク低下処理の開始時における内燃機関1のトルクが小さくなるよう設定される。
【0053】
図7は、第2実施例における上記リッチスパイク制御の際の各種パラメータの変化を示すタイミングチャートである。図7中の実線は、トルク低下処理の開始時にNOxトラップ触媒4に吸着されているNOx量が多い場合(例えば吸着されたNOx量がNOxトラップ触媒4に吸着可能な最大量の場合)を示している。図7中の破線は、トルク低下処理の開始時にNOxトラップ触媒4に吸着されているNOx量が少ない場合(例えば吸着されたNOx量がNOxトラップ触媒4に吸着可能な最大量に比べて少ない場合)を示している。
【0054】
図7の時刻t1は、NOxトラップ触媒4に吸着されたNOx量(NOxトラップ量)が所定量に達して上記リッチスパイク制御の実施要求であるNOx処理要求が成立したタイミングである。
【0055】
内燃機関1の空燃比(指示空燃比)は、図7の時刻t1のタイミングで空燃比指示に従い理論空燃比(λ=1)よりもリーンとなる所定のリーン空燃比から理論空燃比よりもリッチとなる所定のリッチ空燃比に切り替えられている。
【0056】
第2実施例における内燃機関1のトルクは、図7の時刻t1のタイミングで、リーン運転時(リーン運転中)のトルクよりも小さくなるよう、スロットル開度を小さくして、排気ガス流量を減少させている。
【0057】
ここで、図7中のV1は、上記リッチスパイク制御中の内燃機関1のトルクが上記リッチスパイク制御前後の内燃機関1のトルクと等しくなるように吸入空気量を制御した場合の排気ガス流量である。
【0058】
第2実施例における内燃機関1は、図7の時刻t1のタイミングで、排気ガス流量が上記V1よりも小さくなるようにスロットル開度が制御される。
【0059】
図7の時刻t2は、トルク低下処理の開始時にNOxトラップ触媒4に吸着されているNOx量が少ない場合の第2実施例のハイブリッド車両においてNOxトラップ触媒4に吸着されたNOx量が所定量Dsに達したタイミングである。トルク低下処理の開始時にNOxトラップ触媒4に吸着されているNOx量が少ない場合においては、図7の時刻t2のタイミングで、NOx処理要求が不成立となり、内燃機関1の空燃比(指示空燃比)及びスロットル開度が時刻t1以前の状態に切り替えられ、排気ガス流量も時刻t1以前の状態に戻される。
【0060】
図7の時刻t3は、トルク低下処理の開始時にNOxトラップ触媒4に吸着されているNOx量が多い場合の第2実施例のハイブリッド車両においてNOxトラップ触媒4に吸着されたNOx量が所定量Dsに達したタイミングである。トルク低下処理の開始時にNOxトラップ触媒4に吸着されているNOx量が多い場合においては、図7の時刻t3のタイミングで、NOx処理要求が不成立となり、内燃機関1の空燃比(指示空燃比)及びスロットル開度が時刻t1以前の状態に切り替えられ、排気ガス流量も時刻t1以前の状態に戻される。
【0061】
つまり、トルク低下処理の開始時にNOxトラップ触媒4に吸着されているNOx量が少ない場合の第2実施例においては、図7の時刻t1~t2の期間、NOxトラップ触媒4に流れ込む排気の雰囲気が理論空燃比よりもリッチとなってNOxトラップ触媒4で脱離還元処理が行われる。また、トルク低下処理の開始時にNOxトラップ触媒4に吸着されているNOx量が多い場合の第2実施例においては、図7の時刻t1~t3の期間、NOxトラップ触媒4に流れ込む排気の雰囲気が理論空燃比よりもリッチとなってNOxトラップ触媒4で脱離還元処理が行われる。
【0062】
トルク低下処理の開始時にNOxトラップ触媒4に吸着されているNOx量が少ない場合の第2実施例における内燃機関1は、図7の時刻t1~t2の期間、スロットル開度が徐々に大きくなるよう制御され、トルクが徐々に大きくなって排気ガス流量が徐々に多くなっている。トルク低下処理の開始時にNOxトラップ触媒4に吸着されているNOx量が多い場合の第2実施例における内燃機関1は、図7の時刻t1~t3の期間、スロットル開度が徐々に大きくなるよう制御され、トルクが徐々に大きくなって排気ガス流量が徐々に多くなっている。
【0063】
トルク低下処理の開始時にNOxトラップ触媒4に吸着されているNOx量が少ない場合の第2実施例における内燃機関1は、図7の時刻t1~t2の期間、NOxトラップ触媒4に吸着されたNOx量が減少するほどトルクが大きくなるようにトルクの低下量を変化させるトルク低下処理を行っている。トルク低下処理の開始時にNOxトラップ触媒4に吸着されているNOx量が多い場合の第2実施例における内燃機関1は、図7の時刻t1~t3の期間、NOxトラップ触媒4に吸着されたNOx量が減少するほどトルクが大きくなるようにトルクの低下量を変化させるトルク低下処理を行っている。
【0064】
トルク低下処理の開始時にNOxトラップ触媒4に吸着されているNOx量が少ない場合の第2実施例における内燃機関1は、図7の時刻t2において空燃比が理論空燃比となるように、図7の時刻t1~t2の期間、空燃比が徐々にリーン側に変化するよう制御されている。トルク低下処理の開始時にNOxトラップ触媒4に吸着されているNOx量が多い場合の第2実施例における内燃機関1は、図7の時刻t3において空燃比が理論空燃比となるように、図7の時刻t1~t3の期間、空燃比が徐々にリーン側に変化するよう制御されている。
【0065】
このような第2実施例のハイブリッド車両は、上述した第1実施例のハイブリッド車両と略同様の作用効果を得ることができる。
【0066】
また、トルク低下処理で処理するNOx量は、NOxトラップ触媒4に吸着されているNOx量(NOxトラップ量)が少ないほど少なくなる。そこで、第2実施例のハイブリッド車両は、NOxトラップ触媒4に吸着されているNOx量に応じてトルク低下処理の開始時におけるトルクの低下量を変化させる。
【0067】
これによって、第2実施例のハイブリッド車両は、内燃機関1の燃費悪化を抑制できる。
【0068】
詳述すると、第2実施例のハイブリッド車両は、脱離還元処理の開始時にNOxトラップ触媒4に吸着されているNOx量が多いほどトルク低下処理におけるトルクの低下量を大きくする。第2実施例におけるハイブリッド車両は、トルク低下処理によりNOxトラップ触媒4に吸着されているNOx量が少ないほどトルクが大きくなり、内燃機関1の排気ガス流量が多くなる。そのため、第2実施例における脱離還元処理は、NOxトラップ触媒4に吸着されているNOx量が少ないほどNOxの処理時間を短くなる。
【0069】
つまり、第2実施例のハイブリッド車両は、NOxトラップ触媒4に吸着されているNOx量に応じて脱離還元処理におけるNOxの処理時間を最適化でき、総じて脱離還元処理を実施することによる燃費悪化を抑制することができる。
【0070】
図8図12を用いて本発明の第3実施例のハイブリッド車両について説明する。第3実施例のハイブリッド車両は、上述した第1実施例のハイブリッド車両と略同一構成となっているが、トルク低下処理におけるトルク低下量がNOxトラップ触媒4のNOxトラップ能力(NOx吸着能力)の低下に応じて変化するよう設定されている。詳述すると、第3実施例のハイブリッド車両は、NOxトラップ触媒4のNOxトラップ能力が低下するほどトルク低下処理におけるトルクの低下量が大きくなるよう設定されている。
【0071】
図8は、トルク低下処理の開始時(直前)に設定される内燃機関1のトルクとNOxトラップ触媒4のNOxトラップ能力との相関を示す特性図である。図8の横軸は、トルク低下処理の開始時(直前)にNOxトラップ触媒4に吸着されているNOx量(NOxトラップ量)をNOxトラップ触媒4のNOxトラップ能力で除した値である。なお、図8中の破線は、リーン運転時中に設定される内燃機関1のトルクの一例である。
【0072】
図8に示すように、第3実施例のハイブリッド車両においては、NOxトラップ触媒4のNOxトラップ能力が低下するほど横軸の値は大きくなり、トルク低下処理の開始時における内燃機関1のトルクが小さくなるよう設定される。
【0073】
NOxトラップ触媒4のNOxトラップ能力は、例えば、NOxトラップ触媒4の触媒劣化や、NOxトラップ触媒4の温度に依存する。
【0074】
NOxトラップ触媒4の触媒劣化は、具体的には、酸素ストレージ能力の低下や、硫黄被毒量の増加等により進行する。つまりNOxトラップ触媒4のNOxトラップ能力は、図9に示すように、酸素ストレージ能力の低下や硫黄被毒量の増加により低下する。図9は、NOxトラップ触媒4のNOxトラップ能力とNOxトラップ触媒4の触媒劣化との相関を示す特性図である。
【0075】
また、NOxトラップ触媒4のNOxトラップ能力は、図10に示すように、NOxトラップ触媒4の温度が所定温度以上になると急激に低下する。図10は、NOxトラップ触媒4のNOxトラップ能力とNOxトラップ触媒4の触媒温度との相関を示す特性図である。
【0076】
図11は、第3実施例における上記リッチスパイク制御の際の各種パラメータの変化を示すタイミングチャートである。図11中の実線は、トルク低下処理の開始時にNOxトラップ触媒4のNOxトラップ能力が高い場合を示している。図11中の破線は、トルク低下処理の開始時にNOxトラップ触媒4のNOxトラップ能力が低い場合を示している。
【0077】
なお、NOxトラップ触媒4のNOxトラップ能力が高い場合とNOxトラップ触媒4のNOxトラップ能力が低い場合とでは、制御上、NOxトラップ触媒4に吸着可能とするNOx量の最大値が異なるものとなる。基本的には、図12に示すように、NOxトラップ触媒4の下流側にNOxが流出することがないように、NOxトラップ触媒4に吸着可能とするNOx量の最大値が決定される。
【0078】
図12は、NOxトラップ触媒4に流入するNOx量(触媒流入NOx量)を一定としたときの触媒出口NOx量とNOxトラップ量との相関を模式的に示した説明図である。触媒出口NOx量は、NOxトラップ触媒4から流出するNOx量である。
【0079】
NOxトラップ触媒4に吸着可能とするNOx量の最大値は、NOxトラップ触媒4からNOxが流出することがないよう、図12に示すように所定のマージンを設けて設定される。
【0080】
なお、第3実施例のハイブリッド車両は、NOxトラップ触媒4のNOxトラップ能力と、トルク低下処理の開始時にNOxトラップ触媒4に吸着されているNOx量の比率に基づいて、トルク低下処理における内燃機関1のトルクの低下量を設定してもよい。
【0081】
図11の時刻t1は、NOxトラップ触媒4に吸着されたNOx量(NOxトラップ量)が所定量に達して上記リッチスパイク制御の実施要求であるNOx処理要求が成立したタイミングである。
【0082】
内燃機関1の空燃比(指示空燃比)は、図11の時刻t1のタイミングで空燃比指示に従い理論空燃比(λ=1)よりもリーンとなる所定のリーン空燃比から理論空燃比よりもリッチとなる所定のリッチ空燃比に切り替えられている。
【0083】
第3実施例における内燃機関1のトルクは、図11の時刻t1のタイミングで、リーン運転時(リーン運転中)のトルクよりも小さくなるよう、スロットル開度を小さくして、排気ガス流量を減少させている。
また、第3実施例において、トルク低下処理の開始時のトルクの低下量は、NOxトラップ触媒4のNOxトラップ能力が状態A(実線)の場合の方が、NOxトラップ触媒4のNOxトラップ能力が状態B(破線)の場合のときよりも少なくなっている。
【0084】
ここで、図11中のV1は、上記リッチスパイク制御中の内燃機関1のトルクが上記リッチスパイク制御前後の内燃機関1のトルクと等しくなるように吸入空気量を制御した場合の排気ガス流量である。
【0085】
また、図11中のDHは、NOxトラップ触媒4のNOxトラップ能力の状態が状態Aのときに吸着可能なNOx量の最大値である。図11中のDLは、NOxトラップ触媒4のNOxトラップ能力の状態が状態Bのときに吸着可能なNOx量の最大値である。
【0086】
第3実施例における内燃機関1は、図11の時刻t1のタイミングで、排気ガス流量が上記V1よりも小さくなるようにスロットル開度が制御される。
【0087】
図11の時刻t2は、トルク低下処理の開始時にNOxトラップ触媒4のNOxトラップ能力の状態が状態Aの場合の第3実施例のハイブリッド車両においてNOxトラップ触媒4に吸着されたNOx量が所定量Dsに達したタイミングである。トルク低下処理の開始時にNOxトラップ触媒4のNOxトラップ能力の状態が状態Aの場合においては、図11の時刻t2のタイミングで、NOx処理要求が不成立となり、内燃機関1の空燃比(指示空燃比)及びスロットル開度が時刻t1以前の状態に切り替えられ、排気ガス流量も時刻t1以前の状態に戻される。
【0088】
図11の時刻t3は、トルク低下処理の開始時にNOxトラップ触媒4のNOxトラップ能力の状態が状態Bの場合の第3実施例のハイブリッド車両においてNOxトラップ触媒4に吸着されたNOx量が所定量Dsに達したタイミングである。トルク低下処理の開始時にNOxトラップ触媒4のNOxトラップ能力の状態が状態Bの場合においては、図11の時刻t3のタイミングで、NOx処理要求が不成立となり、内燃機関1の空燃比(指示空燃比)及びスロットル開度が時刻t1以前の状態に切り替えられ、排気ガス流量も時刻t1以前の状態に戻される。
【0089】
つまり、トルク低下処理の開始時にNOxトラップ触媒4のNOxトラップ能力の状態が状態Aの場合の第3実施例においては、図11の時刻t1~t2の期間、NOxトラップ触媒4に流れ込む排気の雰囲気が理論空燃比よりもリッチとなってNOxトラップ触媒4で脱離還元処理が行われる。また、トルク低下処理の開始時にNOxトラップ触媒4のNOxトラップ能力の状態が状態Bの場合の第3実施例においては、図11の時刻t1~t3の期間、NOxトラップ触媒4に流れ込む排気の雰囲気が理論空燃比よりもリッチとなってNOxトラップ触媒4で脱離還元処理が行われる。
【0090】
トルク低下処理の開始時にNOxトラップ触媒4のNOxトラップ能力の状態が状態Aの場合の第3実施例における内燃機関1は、図11の時刻t1~t2の期間、スロットル開度が徐々に大きくなるよう制御され、トルクが徐々に大きくなって排気ガス流量が徐々に多くなっている。トルク低下処理の開始時にNOxトラップ触媒4のNOxトラップ能力の状態が状態Bの場合の第3実施例における内燃機関1は、図11の時刻t1~t3の期間、スロットル開度が徐々に大きくなるよう制御され、トルクが徐々に大きくなって排気ガス流量が徐々に多くなっている。
【0091】
トルク低下処理の開始時にNOxトラップ触媒4のNOxトラップ能力の状態が状態Aの場合の第3実施例における内燃機関1は、図11の時刻t1~t2の期間、NOxトラップ触媒4に吸着されたNOx量が減少するほどトルクが大きくなるようにトルクの低下量を変化させるトルク低下処理を行っている。トルク低下処理の開始時にNOxトラップ触媒4のNOxトラップ能力の状態が状態Bの場合の第3実施例における内燃機関1は、図11の時刻t1~t3の期間、NOxトラップ触媒4に吸着されたNOx量が減少するほどトルクが大きくなるようにトルクの低下量を変化させるトルク低下処理を行っている。
【0092】
トルク低下処理の開始時にNOxトラップ触媒4のNOxトラップ能力の状態が状態Aの場合の第3実施例における内燃機関1は、図11の時刻t2において空燃比が理論空燃比となるように、図11の時刻t1~t2の期間、空燃比が徐々にリーン側に変化するよう制御されている。トルク低下処理の開始時にNOxトラップ触媒4のNOxトラップ能力の状態が状態Bの場合の第3実施例における内燃機関1は、図11の時刻t3において空燃比が理論空燃比となるように、図11の時刻t1~t3の期間、空燃比が徐々にリーン側に変化するよう制御されている。
【0093】
このような第3実施例のハイブリッド車両は、上述した第1実施例のハイブリッド車両と略同様の作用効果を得ることができる。
【0094】
NOxトラップ触媒4は、NOxトラップ能力が低下するほど、排気流れ方向で自身の下流側の部分にもNOxが吸着されることになり、なおかつ劣化により脱離還元処理の処理能力が低下する。
【0095】
そこで、第3実施例のハイブリッド車両は、NOxトラップ触媒4のNOxトラップ能力の低下に応じてトルク低下処理におけるトルクの低下量を変化させる。
【0096】
これによって、第3実施例のハイブリッド車両は、トラップ能力の低下に応じて排気ガスの流量を変化させ、脱離還元処理時の触媒の反応時間を確保して、トルク低下処理時のNOx処理性能の低下を抑制することができる。
【0097】
詳述すると、第3実施例のハイブリッド車両は、NOxトラップ触媒4のNOxトラップ能力が低下するほどトルク低下処理におけるトルクの低下量を大きくして排気ガスの流量を低下させることで、脱離還元処理時の触媒の反応時間を確保してトルク低下処理時のNOx処理性能の低下を抑制することができる。
【0098】
以上、本発明の具体的な実施例を説明してきたが、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0099】
例えば、上述した各実施例のハイブリッド車両が駆動輪を駆動する走行用モータを有するパラレルハイブリッド車両の場合、コントロールユニット9は、上記リッチスパイク制御に際して、リーン運転時(リーン運転中)と等トルクが得られるように走行用モータでトルクを補う(アシストする)ことで、トルク変動による違和感を運転者に与えないようにしてもよい。
【0100】
上述した各実施例は、ハイブリッド車両の制御方法及びハイブリッド車両の制御装置に関する。
【符号の説明】
【0101】
1…内燃機関
2…排気通路
3…三元触媒
4…NOxトラップ触媒
5…空燃比センサ
6…酸素センサ
7…クランク角センサ
8…アクセル開度センサ
9…コントロールユニット
図1
図2
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図5
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