IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝メディカルシステムズ株式会社の特許一覧

特開2024-110447超音波診断装置、超音波診断方法、およびプログラム
<>
  • 特開-超音波診断装置、超音波診断方法、およびプログラム 図1
  • 特開-超音波診断装置、超音波診断方法、およびプログラム 図2
  • 特開-超音波診断装置、超音波診断方法、およびプログラム 図3
  • 特開-超音波診断装置、超音波診断方法、およびプログラム 図4
  • 特開-超音波診断装置、超音波診断方法、およびプログラム 図5
  • 特開-超音波診断装置、超音波診断方法、およびプログラム 図6
  • 特開-超音波診断装置、超音波診断方法、およびプログラム 図7
  • 特開-超音波診断装置、超音波診断方法、およびプログラム 図8
  • 特開-超音波診断装置、超音波診断方法、およびプログラム 図9
  • 特開-超音波診断装置、超音波診断方法、およびプログラム 図10
  • 特開-超音波診断装置、超音波診断方法、およびプログラム 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110447
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】超音波診断装置、超音波診断方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20240808BHJP
【FI】
A61B8/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014972
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 大晃
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601DD15
4C601EE11
4C601FF08
4C601JC16
4C601KK31
4C601KK36
(57)【要約】
【課題】超音波診断装置において、被検者の心臓の状態を診断するのに適した超音波画像の取得を行えるようにさせることである。
【解決手段】実施形態の超音波診断装置は、処理部と、表示制御部と、を持つ。処理部は、被検者に向けて送信した超音波信号が被検者の体内で反射された反射波信号に基づいて順次生成した複数の超音波画像を含む被検者の一心拍分の超音波動画像が、被検者を診断するための診断処理に適するか否かを判定し、診断処理に適すると判定した超音波動画像の解析を行う。表示制御部は、順次生成した超音波画像と、処理部により出力された判定の結果、または/および解析の結果との表示装置への表示を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者に向けて送信した超音波信号が前記被検者の体内で反射された反射波信号に基づいて順次生成した複数の超音波画像を含む前記被検者の一心拍分の超音波動画像が、前記被検者を診断するための診断処理に適するか否かを判定し、前記診断処理に適すると判定した前記超音波動画像の解析を行う処理部と、
順次生成した前記超音波画像と、前記処理部により出力された前記判定の結果、または/および前記解析の結果との表示装置への表示を制御する表示制御部と、
を備える超音波診断装置。
【請求項2】
前記処理部は、
前記被検者の心電図波形が適切に取得されているか否かを判定する心電判定部と、
前記超音波動画像に含まれる前記超音波画像に撮影された前記被検者の心臓の房室の数を判別し、前記超音波動画像に含まれる前記診断処理に適する前記超音波画像の割合に基づいて、前記超音波動画像が前記診断処理に適するか否かを判定する画像判定部と、
前記診断処理に適すると判定された前記超音波動画像を抽出する画像抽出部と、
前記診断処理に含まれる一部の処理を、抽出された前記超音波動画像に対する解析として行う画像解析部と、
を備える請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記画像判定部は、
前記被検者の心臓壁が撮影されていると判定するための条件を満たす前記超音波画像を前記診断処理に適する前記超音波画像であると判定する、
請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記診断処理は、前記心臓壁の壁運動を追跡することにより、前記被検者の心臓の状態を診断する処理であり、
前記画像解析部は、前記心臓壁の壁運動を追跡する解析を行った前記解析の結果を前記表示制御部に出力する、
請求項3に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記心電判定部は、前記被検者の前記心電図波形が適切に取得されていないと判定した場合に、前記心電図波形が適切に取得されていないことを表す前記判定の結果を前記表示制御部に出力し、
前記画像判定部は、少なくとも、
前記超音波動画像に撮影された前記被検者の前記房室の数を判別することができない場合に、前記被検者の前記房室を判別することができないことを表す判定の結果を前記表示制御部に出力し、
前記条件を満たさない前記超音波画像の割合が閾値を超える場合に、前記超音波動画像が前記診断処理に適さないことを表す前記判定の結果を前記表示制御部に出力する、
請求項4に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記画像判定部は、前記診断処理に適さない前記超音波画像であると判定した場合、前記超音波画像が前記診断処理に適さない原因、または/および前記診断処理に適した前記超音波画像を撮影するために行う対処方法を表す情報を、前記表示制御部に出力し、
前記表示制御部は、順次生成した前記超音波画像と、前記画像判定部により出力された前記情報との前記表示装置への表示を制御する、
請求項5に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記被検者の一心拍の期間は、前記被検者の前記心電図波形における二つのR波のピーク位置の間の期間である、
請求項2から請求項6のうちいずれか1項に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
超音波診断装置のコンピュータが、
被検者に向けて送信した超音波信号が前記被検者の体内で反射された反射波信号に基づいて順次生成した複数の超音波画像を含む前記被検者の一心拍分の超音波動画像が、前記被検者を診断するための診断処理に適するか否かを判定し、
前記診断処理に適すると判定した前記超音波動画像の解析を行い、
順次生成した前記超音波画像と、前記判定の結果、または/および前記解析の結果との表示装置への表示を制御する、
超音波診断方法。
【請求項9】
超音波診断装置のコンピュータに、
被検者に向けて送信した超音波信号が前記被検者の体内で反射された反射波信号に基づいて順次生成させた複数の超音波画像を含む前記被検者の一心拍分の超音波動画像が、前記被検者を診断するための診断処理に適するか否かを判定させ、
前記診断処理に適すると判定させた前記超音波動画像の解析を行わせ、
順次生成させた前記超音波画像と、前記判定の結果、または/および前記解析の結果との表示装置への表示を制御させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、超音波診断装置、超音波診断方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、超音波診断装置によって撮影した心臓の動画データに基づいて心臓の状態を診断する超音波検査が行われている。この超音波検査では、心臓の一心拍分の動画データに撮影されている心臓壁の動き(壁運動)を追跡し、追跡した壁運動から、診断に寄与する様々な解析パラメータを導出する。
【0003】
従来の超音波検査では、超音波診断装置によって撮影した心臓の一心拍分の動画データを保存しておき、この保存した動画データに対して解析パラメータを導出するための処理を行う。ところで、超音波診断装置によって撮影した動画データは、稀に、解析の処理に適さない(診断に寄与する解析パラメータを導出することができない)こともあり得る。これは、動画データに撮影されている心臓の動画像の画質や心臓の断面の方向が適切ではなく、心臓壁や壁運動を追跡することができないことによるものである。しかしながら、従来の超音波検査では、保存されている動画データを処理の対象とするため、動画データに対して処理を実行してみるまで、解析の処理に適した動画データ(診断に寄与する解析パラメータを導出することができる動画データ)であるか否かを確認することができない。そして、保存されている動画データが解析の処理に適さない場合、従来の超音波検査では、解析の処理に適した動画データを得るために、超音波診断装置による動画データの撮影を再度行わなければならない。つまり、被検者(患者)および検査者(医師など)が、再度検査室まで出向いて、超音波診断装置による動画データを撮影する再検査を行わなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2003-508139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題は、超音波診断装置において、被検者の心臓の状態を診断するのに適した超音波画像の取得を行えるようにさせることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の超音波診断装置は、処理部と、表示制御部と、を持つ。処理部は、被検者に向けて送信した超音波信号が前記被検者の体内で反射された反射波信号に基づいて順次生成した複数の超音波画像を含む前記被検者の一心拍分の超音波動画像が、前記被検者を診断するための診断処理に適するか否かを判定し、前記診断処理に適すると判定した前記超音波動画像の解析を行う。表示制御部は、順次生成した前記超音波画像と、前記処理部により出力された前記判定の結果、または/および前記解析の結果との表示装置への表示を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係る超音波診断装置の機能構成および使用環境の一例を示す図。
図2】実施形態に係る超音波診断装置において処理機能が生成する超音波動画像、および心電図波形の一例を示す図。
図3】実施形態に係る超音波診断装置における処理の流れの一例を示すフローチャート。
図4】実施形態に係る超音波診断装置において表示装置に表示させる表示画像の一例(その1)を示す図。
図5】実施形態に係る超音波診断装置において表示装置に表示させる表示画像の一例(その2)を示す図。
図6】実施形態に係る超音波診断装置において表示装置に表示させる表示画像の一例(その3)を示す図。
図7】実施形態に係る超音波診断装置において表示装置に表示させる表示画像の一例(その4)を示す図。
図8】実施形態に係る超音波診断装置において表示装置に表示させる表示画像の一例(その5)を示す図。
図9】実施形態に係る超音波診断装置において表示装置に表示させる表示画像の一例(その6)を示す図。
図10】実施形態に係る超音波診断装置において表示装置に表示させる表示画像の一例(その7)を示す図。
図11】実施形態に係る超音波診断装置において表示装置に表示させる表示画像の一例(その8)を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、実施形態の超音波診断装置、超音波診断方法、およびプログラムについて説明する。超音波診断装置は、例えば、超音波プローブから超音波信号を送信し、この超音波信号が被検者(患者)の体内で反射されて戻ってきた超音波信号(反射波信号:エコー信号)を超音波プローブで検出することにより被検者の超音波検査を行う。超音波診断装置は、超音波プローブで検出された反射波信号に対して画像処理を施して、反射波信号の大きさなどに基づく超音波画像を生成し、生成した超音波画像を表示装置に表示させることにより超音波検査の検査者(医師など)に提示する。これにより、検査者は、被検者の体内の組織の状態を目視で確認することができる。以下の説明においては、超音波診断装置によって、被検者の心臓の状態を診断するのに適した超音波画像の撮影をするものとする。
【0009】
図1は、実施形態に係る超音波診断装置の機能構成および使用環境の一例を示す図である。図1には、心臓の状態の診断に適した超音波画像を撮影する機能を実現するための超音波診断装置1の機能構成およびその使用環境の一例を示している。
【0010】
一方、図1では、超音波診断装置1における被検者の心臓の状態を診断する機能に関連しないその他の構成要素や機能構成の図示は省略している。例えば、図1では、超音波プローブ102に超音波信号を送信(発信)させるための制御信号を出力し、超音波プローブ102により出力された反射波信号を受け取る入出力回路や、超音波診断装置1や本体装置100の全体を制御する制御回路(制御機能)の図示を省略している。これら省略している構成要素や機能構成の構成や動作は、既存の超音波診断装置が備える構成要素や機能構成の構成や動作と等価なものであればよい。従って、省略している構成要素や機能構成の構成や動作に関する詳細な説明は省略する。
【0011】
心臓の状態の診断に適した超音波画像は、被検者の心臓を所定の期間連続して撮影した超音波の動画像(以下、「超音波動画像」という)である。所定の期間は、例えば、被検者の心電図波形において心臓の活動を表す、P波、Q波、R波、S波、T波、およびU波のそれぞれの波形の繰り返しのうち、例えば、R波の波形の繰り返しの期間、より具体的には、二つのR波のピーク位置の間の期間(以下、「R-R期間」という)である。このR-R期間の超音波動画像は、被検者の心臓の一心拍分の動画像である。例えば、動画像のフレームレートが40[fps]である場合、心拍数が100~120[bpm]であるとすると、一心拍分(R-R期間)の超音波動画像には、20~24の超音波画像がそれぞれのフレームとして含まれる。これにより、例えば、超音波動画像に含まれるそれぞれの超音波画像(フレーム)に基づいて心臓壁の動き(壁運動)を追跡する、ウォールモーショントラッキング(Wall Motion Tracking)と呼ばれる処理を行って、追跡した壁運動から、心臓の状態の診断に寄与する様々な解析パラメータを導出するための処理を行うことができる。ウォールモーショントラッキングの処理では、例えば、心臓が収縮するときの心臓壁の長さと、拡張するときの心臓壁の長さとを、追跡した壁運動から求め、心臓壁の長さを比較することによって、心臓の収縮能や拡張能などの解析パラメータを導出するストレイン(Strain)解析を行うことができる。ウォールモーショントラッキングの処理では、例えば、左心房、左心室、右心房、および右心室のそれぞれの容積(二次元の超音波画像では面積)を、心臓が収縮しているときと拡張しているときとで比較することによって、心臓の機能を評価するための解析パラメータを導出する駆出率(Ejection Fraction:EF)を求めることができる。例えば、左心室の駆出率(Left Ventricular Ejection Fraction:LVEF)などを求めることができる。このようなウォールモーショントラッキングの処理は、超音波診断装置1において行ってもよいし、他の処理装置で行ってもよい。
【0012】
超音波動画像に基づく心臓の状態を診断するための処理は、いかなる診断処理であってもよい。つまり、心臓の状態を診断する処理は、上述した壁運動を追跡することによって行う診断処理(ウォールモーショントラッキングの処理)に限定されず、既存の種々の診断処理が含まれてもよい。例えば、心臓内の血液の流れを検査するドプラ検査の診断処理が含まれてもよい。以下の説明においては、超音波動画像に基づいて行う心臓の状態を診断する処理を、「心臓診断処理」という。この心臓診断処理は、超音波診断装置1において行ってもよいし、他の処理装置で行ってもよい。以下の説明においては、心臓診断処理を他の処理装置で行うものとし、超音波診断装置1では、R-R期間の超音波動画像を撮影して、記憶装置に記憶させる(保存させる)ものとする。
【0013】
超音波診断装置1は、例えば、本体装置100と、超音波プローブ102と、入力装置104と、表示装置106と、を備える。図1では、入力装置104と表示装置106とが本体装置100に接続されている構成を示しているが、入力装置104および表示装置106は、本体装置100に組み込まれた構成であってもよい。
【0014】
超音波診断装置1は、超音波動画像の撮影に際して、例えば、心電計測装置(心電計)などによって計測された被検者の心電図波形の情報も取得する。図1には、計測した被検者の心電図波形を出力する心電計測装置300も本体装置100に接続されている場合を示している。図1では、心電計測装置300が、有線の信号線(ケーブル)によって本体装置100に接続されている構成を示しているが、心電計測装置300は、例えば、無線通信によって、計測した心電図波形の情報を本体装置100に送信する構成のもであってもよい。心電計測装置300は、計測した被検者の心電図波形を本体装置100に出力することができる構成のものであれば、その他の機能や、構成、動作などは、既存の心電計測装置(心電計)と等価なものであればよい。従って、心電計測装置300の機能や、構成、動作に関する詳細な説明は省略する。
【0015】
超音波診断装置1は、撮影した超音波動画像を、記憶装置に記憶させる。図1には、超音波診断装置1が撮影した超音波動画像を記憶させる記憶装置500も本体装置100に接続されている場合を示している。図1では、記憶装置500が、有線の信号線(ケーブル)によって本体装置100に接続されている構成を示しているが、記憶装置500は、超音波動画像を記憶することができる構成のものであれば、いかなる構成のものであってもよい。例えば、記憶装置500は、本体装置100に組み込まれたものであってもよいし、病院内に構築されたLAN(Local Area Network)などの不図示のネットワークによって接続されている、医用画像管理システム(PACS:Picture Archiving and Communication Systems)や、電子カルテシステムなど、被検者の診断や検査に関する種々の画像や情報を記憶するデータベースシステムに構築されたものであってもよい。従って、記憶装置500の構成や動作に関する詳細な説明は省略する。
【0016】
超音波プローブ102は、被検者の体表面に当接または近接させた状態で使用される。超音波プローブ102は、本体装置100からの制御に応じて、被検者の身体に指向性を有する超音波信号を送信(発信)し、被検者の体内で反射された反射波信号を検出して本体装置100に出力する。超音波プローブ102は、複数の超音波振動子を備える。超音波振動子は、例えば、圧電セラミックスなどの圧電素子である。超音波プローブ102は、さらに、超音波振動子のそれぞれに設けられる整合層、および超音波振動子の後方(被検者と反対側)への超音波信号の伝播を防止するバッキング材などを備える。複数の超音波振動子は、一列、あるいは二次元配列など、任意の配列方法で超音波プローブ102内に配列される。超音波プローブ102は、本体装置100に対して着脱可能であってよい。超音波プローブ102と本体装置100とは、専用のケーブルによって接続されてもよいし、無線通信機能によって接続されてもよい。
【0017】
入力装置104は、例えば、マウスやキーボード、タッチパネル、マイクなどにより実現される。入力装置104がタッチパネルである場合、入力装置104は、端末装置やパーソナルコンピュータ(PC)、あるいは本体装置100に接続された表示装置106などの表示装置と一体として形成されてよい。入力装置104は、端末装置やパーソナルコンピュータ(PC)、あるいは本体装置100と無線通信可能な表示装置(例えば、タブレット端末)により実現されてもよい。本明細書において入力装置104は、上述したマウスやキーボードなどの物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、端末装置やパーソナルコンピュータ(PC)、あるいは本体装置100とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を端末装置やパーソナルコンピュータ(PC)、あるいは本体装置100へ出力する電気信号の処理回路も入力装置104の例に含まれる。
【0018】
表示装置106は、例えば、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display:LCD)やCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、有機EL(Electroluminescence)ディスプレイなどである。表示装置106は、検査者に提示する超音波画像を含めた各種の情報を表示する。これにより、検査者は、表示装置106に表示された超音波画像を見ることによって、被検者の体内の組織の状態を目視で確認することができる。表示装置106が表示する各種の情報には、検査者による超音波診断装置1、つまり、入力装置104に対する各種の入力操作(例えば、超音波画像の取得開始の指示)を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)の情報(GUI画像)なども含まれる。
【0019】
本体装置100は、超音波プローブ102に超音波信号を送信(発信)させ、超音波プローブ102が検出して出力した反射波信号に基づいて、超音波画像(エコー画像)を生成する。本体装置100は、生成した超音波画像を表示装置106に出力して表示させることにより、検査者に提示する。さらに、本体装置100は、生成した超音波画像に基づく超音波動画像を生成し、記憶装置500に記憶させる。このとき、本体装置100は、生成した超音波動画像が心臓診断処理に適した超音波動画像であるか否かを判定し、心臓診断処理に適したR-R期間の超音波動画像を記憶装置500に記憶させる。
【0020】
[本体装置の構成]
本体装置100は、例えば、処理回路110を備える。処理回路110は、画像取得機能120や、心電取得機能130、処理機能140、記憶制御機能150、表示制御機能160などの処理を実行する。処理機能140は、心電判定機能142や、画像判定機能144、画像抽出機能146、画像解析機能148などの処理を実行する。処理回路110は、例えば、ハードウェアプロセッサが不図示のメモリに記憶されたプログラム(ソフトウェア)を実行することにより、これらの機能を実現するものである。不図示のメモリは、例えば、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリなどの半導体メモリ素子、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive:HDD)、光ディスクなどにより実現される。
【0021】
ハードウェアプロセッサとは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)または複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))などの回路(circuitry)を意味する。不図示のメモリにプログラムを記憶させる代わりに、ハードウェアプロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合、ハードウェアプロセッサは、回路内に組み込まれたプログラムを読み出して実行することで各機能を実現する。ハードウェアプロセッサは、単一の回路として構成されるものに限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのハードウェアプロセッサとして構成され、各機能を実現するようにしてもよい。複数の構成要素を1つのハードウェアプロセッサに統合して各機能を実現するようにしてもよい。複数の構成要素を1つの専用のLSIに組み込んで各機能を実現するようにしてもよい。ここで、プログラム(ソフトウェア)は、予めROMやRAM、フラッシュメモリなどの半導体メモリ素子、ハードディスクドライブなどの記憶装置を構成する記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体が本体装置100に備えるドライブ装置に装着されることで、本体装置100に備える記憶装置(不図示)にインストールされてもよい。プログラム(ソフトウェア)は、他のコンピュータ装置からネットワーク(不図示)を介して予めダウンロードされて、本体装置100に備える記憶装置(不図示)にインストールされてもよい。本体装置100に備える記憶装置(不図示)にインストールされたプログラム(ソフトウェア)は、処理回路110が備える記憶装置(不図示)に転送されて実行されてもよい。
【0022】
画像取得機能120は、超音波プローブ102により出力された反射波信号を取得する。画像取得機能120は、取得した反射波信号を、処理機能140に出力する。これにより、処理機能140は、不図示の画像処理機能によって、超音波プローブ102により出力された反射波信号に基づく超音波画像を生成する。画像取得機能120は、取得した反射波信号を、不図示の画像処理回路(画像処理機能)に出力してもよい。この場合、本体装置100では、不図示の画像処理回路(画像処理機能)によって、超音波プローブ102により出力された反射波信号に基づく超音波画像が生成される。画像取得機能120は、取得した反射波信号に基づいて超音波画像を生成してもよい。この場合、画像取得機能120は、生成した超音波画像を、処理機能140に出力してもよい。本体装置100においては、処理機能140が備える不図示の画像処理機能、本体装置100が備える不図示の画像処理回路(画像処理機能)、あるいは画像取得機能120によって生成された超音波画像は、表示制御機能160に出力され、表示装置106に表示される。
【0023】
心電取得機能130は、心電計測装置300により出力された心電図波形の情報を取得する。心電取得機能130は、取得した心電図波形の情報を、処理機能140に出力する。これにより、処理機能140は、不図示の画像処理機能によって生成した超音波画像と、心電図波形が表す心臓の活動とを対応付ける。より具体的には、処理機能140は、順次生成した超音波画像(つまり、超音波動画像に含まれるそれぞれのフレーム)に、心電図波形におけるいずれのタイミングで取得された反射波信号に基づく超音波画像であるかを表す情報を対応付ける。処理機能140は、少なくとも、心電図波形におけるR波のピーク位置のタイミングで取得された反射波信号に基づく超音波画像に、R波のピーク位置であることを表す情報を対応付ける。
【0024】
処理機能140は、上述したように、不図示の画像処理機能によって、画像取得機能120により出力された反射波信号(超音波プローブ102により出力された反射波信号)に基づく超音波画像を順次生成する。処理機能140は、生成した超音波画像を、表示制御機能160に順次出力して、表示装置106に表示させる。
【0025】
さらに、処理機能140は、上述したように、不図示の画像処理機能によって、順次生成したそれぞれの超音波画像に、心電取得機能130により出力された心電図波形の情報(心電図波形におけるいずれのタイミングで取得された反射波信号に基づく超音波画像であるかを表す情報)を対応付ける。そして、処理機能140は、心電図波形の情報を対応付けたそれぞれの超音波画像をそれぞれのフレームとして、超音波動画像を生成する。
【0026】
ここで、処理機能140が生成する超音波動画像について説明する。図2は、実施形態に係る超音波診断装置1において処理機能140が生成する超音波動画像(ここでは、1フレームの超音波画像)、および心電図波形の一例を示す図である。図2の(a)は、被検者の心臓の左心房、左心室、右心房、右心室のそれぞれが撮影された超音波画像の一例であり、図2の(b)は、被検者の心臓の左心房、左心室、右心房、右心室のうち二つが撮影された超音波画像の一例であり、図2の(c)は、被検者の心臓の左心房、左心室、右心房、右心室のうち三つが撮影された超音波画像の一例である。さらに、図2の(d)には、心電図波形の一例を示している。以下の説明においては、左心房、左心室、右心房、右心室のそれぞれを区別しない場合には、「房室(チャンバー:Chamber)」という。そして、以下の説明においては、四つの房室が撮影された超音波画像を「四房室超音波画像」といい、二つの房室が撮影された超音波画像を「二房室超音波画像」といい、三つの房室が撮影された超音波画像を「三房室超音波画像」という。
【0027】
心臓診断処理(ウォールモーショントラッキングの処理)では、図2の(a)~図2の(c)に示したそれぞれの超音波画像をフレームとして含む超音波動画像に基づいて、心臓の状態の診断に寄与する様々な解析パラメータを導出する。このため、処理機能140は、それぞれの超音波画像が含まれる超音波動画像、つまり、三つの超音波動画像を生成する。そして、処理機能140は、生成したそれぞれの超音波動画像において、R-R期間の超音波動画像が心臓診断処理に適した超音波動画像であるか否かを判定し、心臓診断処理に適すると判定したR-R期間の超音波動画像を、記憶制御機能150に出力して、記憶装置500に記憶させる。
【0028】
このため、処理機能140は、R-R期間の超音波動画像が心臓診断処理に適した超音波動画像であるか否かを判定する。ここで、超音波画像が心臓診断処理に適さない要因としては、以下のような様々なことが考えられる。
【0029】
(要因1):被検者の心電図波形(心電図)が適切に取得されていない。
(要因2):心臓診断処理に適した心臓の断面(房室)が撮影されていない。
(要因3):超音波画像に撮影された心臓壁の一部が欠けているなど、心臓壁が適切に描出されていない。
(要因4):超音波画像にノイズが多く、心臓壁(それぞれの房室の壁や中隔などの内腔)の境界部分の特定が困難である。
【0030】
そこで、処理機能140は、心臓診断処理に適した超音波動画像であると判定するために以下のような条件を設定し、設定した条件を満たすか否かによって、心臓診断処理に適した超音波動画像であるか否かを判定する。
【0031】
(条件1):超音波動画像におけるR-R期間において、被検者の心電図波形(心電図)が適切に取得されている。つまり、被検者の心臓が収縮しているときと、拡張しているときとの確認を行うことができる。
【0032】
(条件2):超音波動画像に含まれる超音波画像において、心臓壁が描出されていない超音波画像の割合が所定の割合を超えていない。言い換えれば、R-R期間の超音波動画像は動画データであるため、含まれている全ての超音波画像(フレーム)が心臓壁が描出されているものを撮影することは困難であるが、少なくとも心臓診断処理を行うために必要な数(フレーム数)以上、心臓壁が描出されている超音波画像が含まれている。
【0033】
(条件3):超音波動画像に含まれる超音波画像において、ノイズによって心臓壁の特定が困難である超音波画像の割合が所定の割合を超えていない。言い換えれば、R-R期間の超音波動画像は動画データであるため、含まれている全ての超音波画像(フレーム)が心臓壁を特定することができるものを撮影することは困難であるが、少なくとも心臓診断処理を行うために必要な数(フレーム数)以上、心臓壁を特定することができる超音波画像が含まれている。
【0034】
ここで、条件2や条件3における所定の割合、つまり、条件2や条件3における閾値は、例えば、3~4割である。例えば、R-R期間の超音波動画像に20フレームの超音波画像が含まれている場合において、条件2と条件3とのいずれか一方を満たさない超音波画像が6~8フレーム以上含まれている場合、処理機能140は、この超音波動画像は、心臓診断処理に適さない超音波動画像であると判定する。言い換えれば、処理機能140は、条件2と条件3との両方を満たす超音波画像が12フレーム以上含まれている超音波動画像は、心臓診断処理に適すると判定する。条件2や条件3における閾値は、同じ値であってもよし、異なる値であってもよい。以下の説明においては、条件2における閾値を「第1閾値」とし、条件3における閾値を「第2閾値」として説明する。
【0035】
処理機能140は、R-R期間の超音波動画像が心臓診断処理に適した超音波動画像であるか否かの判定や、心臓診断処理に適すると判定したR-R期間の超音波動画像の記憶装置500への記憶に際して、心電判定機能142や、画像判定機能144、画像抽出機能146、画像解析機能148などの処理を実行する。
【0036】
処理機能140は、生成したそれぞれの超音波動画像、つまり、処理を実行する前の超音波動画像に対して、心電判定機能142や、画像判定機能144、画像抽出機能146、画像解析機能148などの処理を実行してもよい。つまり、処理機能140は、生成したそれぞれの超音波動画像に対してリアルタイムに、心電判定機能142や、画像判定機能144、画像抽出機能146、画像解析機能148などの処理を実行してもよい。処理機能140は、生成したそれぞれの超音波動画像を、例えば、本体装置100、あるいは処理回路110が備える不図示のメモリに一時的に記憶(保存)させ、不図示のメモリに一時的に記憶されている超音波動画像に対して、心電判定機能142や、画像判定機能144、画像抽出機能146、画像解析機能148などの処理を実行してもよい。このとき、処理機能140は、不図示のメモリに、R-R期間で切り分けたそれぞれの超音波動画像を一時的に記憶させてもよいし、複数のR-R期間の超音波動画像を一つの超音波動画像として一時的に記憶させてもよい。以下の説明においては、処理を実行する前の超音波動画像をR-R期間で切り分けて不図示のメモリに一時的に記憶させ、不図示のメモリに一時的に記憶されているそれぞれのR-R期間の超音波動画像に対して、それぞれの機能による処理を実行するものとする。
【0037】
処理機能140は、「処理部」の一例である。
【0038】
心電判定機能142は、心電取得機能130により出力された心電図波形の情報に基づいて、心電計測装置300によって被検者の心電図波形(心電図)が適切に取得されているか否かを判定する。つまり、心電判定機能142は、R-R期間の超音波動画像が条件1を満たすか否かを判定する。
【0039】
心電判定機能142における心電図波形の判定は、例えば、AI(Artificial Intelligence:人工知能)による機能を用いて、心電図波形に含まれるそれぞれの波形や波形の繰り返しの一致の度合い(一致度)を学習した学習済みモデル(以下、「心電図学習済みモデル」という)を用いて行う。心電図学習済みモデルは、例えば、CNN(Convolutional Neural Network)やDNN(Deep Neural Network)などの機械学習の技術を用いて、入力された心電図波形に含まれるそれぞれの波形の状態(例えば、形状や、レベル、他の波形が現れたタイミングからの経過時間など)の一致度を判定結果として出力するように学習された学習済みモデルである。CNNは、畳み込み(Convolution)層やプーリング(Pooling)層などのいくつかの層が繋がれたニューラルネットワークである。DNNは、任意の形態の層が多層に連結されたニューラルネットワークである。心電図学習済みモデルは、例えば、不図示の演算装置などよる機械学習モデルを用いた機械学習によって生成される。不図示の演算装置には、心電図学習済みモデルを生成する際に、心電図学習済みモデルの入力側に、以前に取得された心電図波形などが入力データとして入力され、心電図学習済みモデルの出力側に、基本的な心電図波形や、規則的な周期の正常な心電図波形、例えば、周期が乱れていたり波形が歪んでいたりするなどの異常な心電図波形などのそれぞれの心電図波形に対して以前に判定された一致度などが教師データとして入力される。
【0040】
心電判定機能142における心電図波形の判定は、例えば、心電取得機能130により出力された心電図波形と、基本的な心電図波形や正常な心電図波形とのずれ量(一致度に相当)に基づいて行ってもよい。つまり、AIの処理機能を用いずに行ってもよい。
【0041】
心電判定機能142は、判定した心電図波形の一致度(ここでは、正常な心電図波形との一致度)に基づいて、被検者の心電図波形(心電図)が適切に取得されているか否かを判定する。心電判定機能142は、正常な心電図波形との一致度が低い(異常な心電図波形との一致度が高い)、つまり、被検者の心電図波形(心電図)が適切に取得されていない場合、このことを表す情報を、表示制御機能160に出力して表示装置106に表示させる。これにより、心電判定機能142は、被検者の心電図波形(心電図)が適切に取得されていないことを検査者に通知する。
【0042】
心電判定機能142は、「心電判定部」の一例である。
【0043】
画像判定機能144は、R-R期間の超音波動画像に含まれる超音波画像に撮影されている心臓壁を判定する。つまり、画像判定機能144は、R-R期間の超音波動画像が条件2および条件3を満たすか否かを判定する。
【0044】
まず、画像判定機能144は、R-R期間の超音波動画像に含まれるそれぞれの超音波画像が、被検者の心臓のいずれの断面を撮影した超音波画像であるかを判別する。つまり、画像判定機能144は、超音波画像が、四房室超音波画像、二房室超音波画像、あるいは三房室超音波画像のいずれの超音波画像であるかを判別する。
【0045】
画像判定機能144における超音波画像の判別は、例えば、AIによる機能を用いて、四房室超音波画像、二房室超音波画像、および三房室超音波画像のそれぞれを学習した学習済みモデル(以下、「房室画像学習済みモデル」という)を用いて行う。房室画像学習済みモデルは、例えば、CNNやDNNなどのニューラルネットワークによって、入力された超音波画像に撮影されている房室の数を判別結果として出力するように学習された学習済みモデルである。房室画像学習済みモデルも、例えば、不図示の演算装置などよる機械学習モデルを用いた機械学習によって生成される。不図示の演算装置には、房室画像学習済みモデルを生成する際に、房室画像学習済みモデルの入力側に、以前に取得された四房室超音波画像、二房室超音波画像、および三房室超音波画像などが入力データとして入力され、房室画像学習済みモデルの出力側に、それぞれの超音波画像に対して以前に判別された房室の数などが教師データとして入力される。
【0046】
そして、画像判定機能144は、それぞれの超音波画像に、四房室超音波画像、二房室超音波画像、三房室超音波画像、あるいはそれ以外の超音波画像(例えば、房室の数を認識することができない超音波画像)であるかを表す情報を対応付ける。画像判定機能144は、房室の数を認識することができない超音波画像を判別した場合、このことを表す情報を、表示制御機能160に出力して表示装置106に表示させる。これにより、画像判定機能144は、心臓診断処理に適さない超音波画像が撮影されていることを検査者に通知する。
【0047】
さらに、画像判定機能144は、R-R期間の超音波動画像に含まれる超音波画像のうち、心臓壁が描出されていない超音波画像の割合を判定する。より具体的には、画像判定機能144は、R-R期間の超音波動画像に、心臓壁が描出されていない超音波画像の割合が第1閾値を超えているか否かを判定する。心臓壁が描出されていない超音波画像とは、例えば、心臓壁の一部が欠けている(撮像されていない)などにより、心臓診断処理において心臓壁の壁運動の追跡が不可能となる超音波画像である。画像判定機能144は、心臓壁が描出されていない超音波画像の割合の判定に代えて、心臓壁が描出されている超音波画像の割合を判定してもよい。
【0048】
画像判定機能144における心臓壁が描出されていない超音波画像が含まれる割合の判定は、例えば、AIによる機能を用いて、心臓壁が描出されている超音波画像と、心臓壁が描出されていない超音波画像のそれぞれを学習した学習済みモデル(以下、「心臓壁画像学習済みモデル」という)を用いて行う。心臓壁画像学習済みモデルは、例えば、CNNやDNNなどのニューラルネットワークによって、入力された超音波画像に心臓診断処理に好適な心臓壁が描出されているか否かを判別結果として出力するように学習された学習済みモデルである。心臓壁画像学習済みモデルも、例えば、不図示の演算装置などよる機械学習モデルを用いた機械学習によって生成される。不図示の演算装置には、心臓壁画像学習済みモデルを生成する際に、心臓壁画像学習済みモデルの入力側に、以前に取得された心臓壁が描出されている超音波画像や心臓壁が描出されていない超音波画像などが入力データとして入力され、心臓壁画像学習済みモデルの出力側に、それぞれの超音波画像に対して以前に判別された心臓診断処理に好適な心臓壁が描出されているか否かなどが教師データとして入力される。
【0049】
そして、画像判定機能144は、R-R期間の超音波動画像に、心臓診断処理に好適な心臓壁が描出されていない割合を表す情報を対応付ける。画像判定機能144は、R-R期間の超音波動画像に、心臓診断処理に好適な心臓壁が描出されていない超音波画像が所定の割合を超えて含まれると判別した場合、このことを表す情報を、表示制御機能160に出力して表示装置106に表示させる。これにより、画像判定機能144は、心臓診断処理に適さない超音波画像が撮影されていることを検査者に通知する。
【0050】
さらに、画像判定機能144は、R-R期間の超音波動画像に含まれる超音波画像のうち、ノイズによって心臓壁が不明瞭な超音波画像の割合を判定する。より具体的には、画像判定機能144は、R-R期間の超音波動画像に、ノイズによって心臓壁が不明瞭な超音波画像の割合が第2閾値を超えているか否かを判定する。ノイズによって心臓壁が不明瞭な超音波画像とは、例えば、超音波画像の全体や心臓壁が撮影されている領域にノイズが多く、心臓壁(それぞれの房室の壁や中隔などの内腔)の境界部分が不明瞭であるため、房室の切り分けや、心臓壁の壁運動の追跡が不可能となる超音波画像である。画像判定機能144は、ノイズによって心臓壁が不明瞭な超音波画像の割合の判定に代えて、心臓壁が不明瞭とはなっていない超音波画像の割合を判定してもよい。
【0051】
画像判定機能144における心臓壁が不明瞭な超音波画像が含まれる割合の判定は、例えば、AIによる機能を用いて、心臓壁が不明瞭となるノイズが含まれている超音波画像と、ノイズが含まれていたとしても心臓壁が不明瞭とはならない超音波画像のそれぞれを学習した学習済みモデル(以下、「ノイズ画像学習済みモデル」という)を用いて行う。ノイズ画像学習済みモデルは、例えば、CNNやDNNなどのニューラルネットワークによって、ノイズによって心臓壁が不明瞭となっているか否かを判別結果として出力するように学習された学習済みモデルである。ノイズ画像学習済みモデルも、例えば、不図示の演算装置などよる機械学習モデルを用いた機械学習によって生成される。不図示の演算装置には、ノイズ画像学習済みモデルを生成する際に、ノイズ画像学習済みモデルの入力側に、以前に取得されたノイズによって壁画不明瞭になる超音波画像や、ノイズによって壁画不明瞭にならない超音波画像などが入力データとして入力され、ノイズ画像学習済みモデルの出力側に、それぞれの超音波画像に対して以前に判別された心臓壁が不明瞭となっているか否かなどが教師データとして入力される。
【0052】
そして、画像判定機能144は、それぞれの超音波画像に、ノイズによって心臓壁が不明瞭となっている割合を表す情報を対応付ける。画像判定機能144は、R-R期間の超音波動画像に、心臓壁がノイズによって不明瞭となっている超音波画像が所定の割合を超えて含まれると判別した場合、このことを表す情報を、表示制御機能160に出力して表示装置106に表示させる。これにより、画像判定機能144は、心臓診断処理に適さない超音波画像が撮影されていることを検査者に通知する。
【0053】
画像判定機能144は、心臓診断処理に適さない超音波画像が撮影されている原因(理由)、つまり、心臓壁が不明瞭となっている原因や、ノイズが多くなっている原因を、検査者に提示するようにしてもよい。さらに、画像判定機能144は、超音波画像を撮影する際の画質の条件など、心臓診断処理に適した超音波画像を撮影するための対処方法を、検査者に提示するようにしてもよい。例えば、心臓壁が不明瞭となっている原因が、超音波画像が全体的に暗いことによるものである場合、画像判定機能144は、超音波画像のゲインを上げることを提示したり、超音波プローブ102に送信(発信)させる超音波信号の周波数を低くして撮影する際の感度を上げることを提示したりしてもよい。この場合、画像判定機能144は、原因や対処方法を表す情報を表示制御機能160に出力して表示装置106に表示させることにより、検査者に提示する。
【0054】
画像判定機能144は、「画像判定部」の一例である。
【0055】
画像抽出機能146は、心臓診断処理に最も適したR-R期間の超音波動画像を抽出する。より具体的には、画像抽出機能146は、それぞれのR-R期間の超音波動画像に対して、同じ房室の数の超音波画像ごとに、画像判定機能144により対応付けられた、心臓診断処理に好適な心臓壁が描出されていない割合と、ノイズによって心臓壁が不明瞭となっている割合とを判定する。そして、画像抽出機能146は、判定したそれぞれの割合が最も低い超音波動画像を選択し、選択したR-R期間の超音波動画像を抽出する。画像抽出機能146は、抽出したR-R期間の超音波動画像を、処理を実行する前の超音波動画像とは別の超音波動画像として、不図示のメモリに一時的に再度記憶(保存)させる。
【0056】
ここで、不図示のメモリに複数のR-R期間の超音波動画像が一つの超音波動画像として一時的に記憶されている場合、画像抽出機能146は、選択したR-R期間の超音波動画像を、不図示のメモリに一時的に記憶されている一つの超音波動画像の中から切り出し、切り出したR-R期間の超音波動画像を、処理を実行する前の一つの超音波動画像とは別の超音波動画像として、不図示のメモリに一時的に再度記憶させる。
【0057】
画像抽出機能146は、選択したR-R期間の超音波動画像を記憶制御機能150に出力して、記憶装置500に記憶(保存)させてもよい。つまり、画像抽出機能146は、画像解析機能148が解析をする前の超音波動画像を、記憶装置500に記憶させてもよい。
【0058】
画像抽出機能146は、「画像抽出部」の一例である。
【0059】
画像解析機能148は、画像抽出機能146によって抽出されたR-R期間の超音波動画像を解析する。例えば、画像解析機能148は、心臓診断処理に含まれる一部の処理(心臓診断処理に含まれる診断項目のうち、いずれか一つの項目の処理)を、超音波動画像に対する解析として行う。画像解析機能148は、超音波動画像の解析結果を表示制御機能160に出力して表示装置106に表示させる。これにより、画像解析機能148は、現在取得した超音波動画像に対して心臓診断処理を行った場合の結果を、簡易的に検査者に示す。そして、画像解析機能148は、超音波動画像の解析結果を、解析を行ったR-R期間の超音波動画像に対応付けて、記憶制御機能150に出力する。
【0060】
画像解析機能148は、「画像解析部」の一例である。
【0061】
記憶制御機能150は、処理機能140(より具体的には、画像解析機能148)により出力されたR-R期間の超音波動画像の記憶装置500への記憶を制御する。より具体的には、画像解析機能148により出力された超音波動画像を記憶装置500に記憶させるための制御信号を生成し、この制御信号と超音波動画像とを記憶装置500に出力する。記憶装置500が、不図示のネットワークを介して接続されている場合、記憶制御機能150は、例えば、不図示の通信部を制御して、画像解析機能148により出力された超音波動画像を送信させ、記憶装置500に記憶させる。
【0062】
表示制御機能160は、表示装置106への表示画像の表示を制御する。より具体的には、表示制御機能160は、処理機能140が備える不図示の画像処理機能によって生成されて順次出力された超音波画像を表示装置106に表示させるための表示画像を生成し、生成した表示画像を、表示装置106に表示させる。このとき、表示制御機能160は、処理機能140により出力された情報(より具体的には、心電判定機能142や画像判定機能144により出力された情報)や、解析結果(より具体的には、画像解析機能148により出力された解析結果)を、表示画像に重畳させて、表示装置106に表示させる。
【0063】
表示制御機能160は、「表示制御部」の一例である。
【0064】
[超音波診断装置の処理]
次に、超音波診断装置1において、心臓診断処理に適した超音波動画像を取得する(記憶装置500に記憶させる)動作について説明する。図3は、実施形態に係る超音波診断装置1における処理の流れの一例を示すフローチャートである。本フローチャートの処理は、検査者からの超音波動画像の保存の指示に従って、本体装置100においてそれぞれの機能の処理が繰り返し実行される。図4図11は、実施形態に係る超音波診断装置1において表示装置106に表示させる表示画像の一例を示す図である。以下の説明においては、図4図11に示した表示画像を適宜参照して、超音波診断装置1における処理の流れを説明する。以下の説明においては、超音波診断装置1が起動され、検査者が超音波プローブ102を走査して被検者の心臓を撮影し、本体装置100によって、撮影されている心臓の状態が表示装置106に表示されている状態であるものとする。
【0065】
処理回路110は、検査者からの超音波動画像の保存指示があるか否かを確認する(ステップS100)。検査者からの保存指示は、例えば、入力装置104に含まれる画像保存ボタンの押下や、マウスによって表示装置106に表示されたGUI画面内の画像保存ボタンのクリックなどによって行われる。ステップS100において、検査者からの保存指示がないことが確認された場合、処理回路110は、ステップS100の処理を繰り返す。
【0066】
一方、ステップS100において、検査者からの保存指示があることが確認された場合、処理機能140は、不図示の画像処理機能によって、画像取得機能120により出力された反射波信号に基づいて生成した超音波画像に、心電取得機能130により出力された心電図波形の情報を対応付けたそれぞれの超音波画像をフレームとして含む超音波動画像を、不図示のメモリに一時的に記憶させる(ステップS110)。
【0067】
その後、心電判定機能142は、例えば、心電図学習済みモデルを用いたAIの処理機能によって、心電取得機能130により出力された心電図波形の情報が、被検者の心電図波形(心電図)が適切に取得されたものであるか否かを判定する(ステップS120)。
【0068】
ここで、超音波診断装置1には、心電取得機能130により出力された心電図波形の情報が逐次入力されている。このため、処理機能140は、ステップS110の処理と、ステップS120の処理とを、逆の順番で行ってもよい。
【0069】
ステップS120において、心電図波形が適切に取得されたものではないと判定した場合、心電判定機能142は、心電図波形が適切に取得されていないことを表す情報を表示制御機能160に出力して、表示装置106に表示させる(ステップS122)。例えば、心電判定機能142は、表示制御機能160に、「解析に適さない超音波画像です。心電図を適切に取得できる状態で撮影を再度行ってください。」というようなメッセージを、表示装置106に表示させている現在の超音波画像の表示画像に重畳して表示させる(図4参照)。図4に示した表示画像IM1には、メッセージに加えて、注意を促す注意アイコンIaを、現在の超音波画像の表示画像に重畳して表示させている場合を示している。その後、心電判定機能142は、処理をステップS100に戻す。これにより、検査者は、心電図波形が適切に取得できていないことを認識し、例えば、被検者に対する心電計測装置300の装着具合や、本体装置100と心電計測装置300との接続、心電計測装置300において心電図波形を計測する際の設定などを確認して、心電図波形が適切に取得される状態にした後、超音波プローブ102を走査して被検者の心臓を再度撮影することができる。
【0070】
一方、ステップS120において、心電図波形が適切に取得されたものであると判定した場合、画像判定機能144は、房室画像学習済みモデルを用いたAIの処理機能によって、R-R期間の超音波動画像に含まれるそれぞれの超音波画像が、被検者の心臓のいずれの断面を撮影した超音波画像であるか(四房室超音波画像、二房室超音波画像、あるいは三房室超音波画像のいずれの超音波画像であるか)を判別する(ステップS130)。ステップS130において、心臓のいずれの断面を撮影した超音波画像であるかを判別することができない場合、画像判定機能144は、房室を認識することができない超音波画像であることを表す情報を表示制御機能160に出力して、表示装置106に表示させる(ステップS132)。例えば、画像判定機能144は、表示制御機能160に、「解析に適さない超音波画像です。心臓の断面を確認し、適切な断面の状態で撮影を再度行ってください。」というようなメッセージを、表示装置106に表示させている現在の超音波画像の表示画像に重畳して表示させる(図5参照)。図5に示した表示画像IM2にも、メッセージに加えて、注意を促す注意アイコンIaを、現在の超音波画像の表示画像に重畳して表示させている場合を示している。その後、画像判定機能144は、処理をステップS100に戻す。これにより、検査者は、心臓の断面が適切に撮影されていない、つまり、現在の超音波画像は、四房室超音波画像、二房室超音波画像、あるいは三房室超音波画像のいずれの超音波画像でもないことを認識し、例えば、超音波プローブ102を走査して、被検者の心臓を別の角度から撮影する状態にして再度撮影することができる。
【0071】
一方、ステップS130において、心臓のいずれの断面を撮影した超音波画像であるかを判別することができた場合、画像判定機能144は、心臓壁画像学習済みモデルを用いたAIの処理機能によって、R-R期間の超音波動画像に、心臓壁が描出されていない超音波画像の割合が第1閾値を超えているか否かを判定する(ステップS140)。ステップS140において、心臓壁が描出されていない超音波画像の割合が第1閾値を超えていると判定した場合、画像判定機能144は、心臓診断処理に適さない超音波画像であることを表す情報を表示制御機能160に出力して、表示装置106に表示させる(ステップS142)。例えば、画像判定機能144は、表示制御機能160に、「解析に適さない超音波画像です。心臓壁を明瞭に描出できる状態で撮影を再度行ってください。」というようなメッセージを、表示装置106に表示させている現在の超音波画像の表示画像に重畳して表示させる(図6参照)。図6に示した表示画像IM3にも、メッセージに加えて、注意を促す注意アイコンIaを、現在の超音波画像の表示画像に重畳して表示させている場合を示している。その後、画像判定機能144は、処理をステップS100に戻す。これにより、検査者は、心臓診断処理に適さない心臓壁が不明瞭な超音波画像が撮影されていることを認識し、例えば、超音波プローブ102を走査して、被検者の心臓の心臓壁がより明瞭になるような状態にして再度撮影することができる。
【0072】
一方、ステップS140において、心臓壁が描出されていない超音波画像の割合が第1閾値を超えていないと判定した場合、画像判定機能144は、ノイズ画像学習済みモデルを用いたAIの処理機能によって、R-R期間の超音波動画像に、ノイズによって心臓壁が不明瞭な超音波画像の割合が第2閾値を超えているか否かを判定する(ステップS150)。ステップS150において、心臓壁が不明瞭な超音波画像の割合が第2閾値を超えていると判定した場合、画像判定機能144は、心臓診断処理に適さない超音波画像であることを表す情報を表示制御機能160に出力して、表示装置106に表示させる(ステップS142)。つまり、画像判定機能144は、ステップS140において心臓壁が描出されていない超音波画像の割合が第1閾値を超えていると判定した場合と同様に、ステップS142の処理によって、心臓診断処理に適さない超音波画像であることを表す情報を表示装置106に表示させる(図6参照)。その後、画像判定機能144は、処理をステップS100に戻す。これによっても、検査者は、心臓診断処理に適さない心臓壁が不明瞭な超音波画像が撮影されていることを認識し、例えば、超音波プローブ102を走査して、被検者の心臓の心臓壁がより明瞭になるような状態にして再度撮影することができる。
【0073】
一方、ステップS150において、心臓壁が不明瞭な超音波画像の割合が第2閾値を超えていないと判定した場合、画像抽出機能146は、心臓診断処理に最も適したR-R期間の超音波動画像を抽出する(ステップS160)。そして、処理回路110(画像抽出機能146であってもよい)は、心臓診断処理に適した超音波画像を取得したことを検査者に通知するため、画像判定機能144において判別した房室の数、および画像解析機能148による解析を開始することを表す情報を表示制御機能160に出力して、表示装置106に表示させる(ステップS162)。例えば、処理回路110は、表示制御機能160に、「四房室超音波画像の超音波動画像が取得されました。解析を開始します。」というようなメッセージを、表示装置106に表示させている現在の超音波画像の表示画像に重畳して表示させる(図7参照)。図7に示した表示画像IM4には、メッセージに加えて、情報を通知することを表す情報アイコンIiを、現在の超音波画像の表示画像に重畳して表示させている場合を示している。これにより、検査者は、心臓診断処理に適した超音波動画像が撮影されたことを認識することができる。
【0074】
図7に示した表示画像IM4に示したメッセージは、ステップS130の処理において画像判定機能144が、R-R期間の超音波動画像に含まれるそれぞれの超音波画像が四房室超音波画像であると判別した場合の一例である。ステップS130の処理において画像判定機能144が、R-R期間の超音波動画像に含まれるそれぞれの超音波画像が二房室超音波画像であると判別した場合、処理回路110は、表示制御機能160に、「二房室超音波画像の超音波動画像が取得されました。解析を開始します。」というようなメッセージを、表示装置106に表示させている現在の超音波画像の表示画像に重畳して表示させる。ステップS130の処理において画像判定機能144が、R-R期間の超音波動画像に含まれるそれぞれの超音波画像が三房室超音波画像であると判別した場合、処理回路110は、表示制御機能160に、「三房室超音波画像の超音波動画像が取得されました。解析を開始します。」というようなメッセージを、表示装置106に表示させている現在の超音波画像の表示画像に重畳して表示させる。
【0075】
その後、画像解析機能148は、画像抽出機能146によって抽出されたR-R期間の超音波動画像に対して解析を実行する(ステップS170)。そして、画像解析機能148は、実行した解析結果を表示制御機能160に出力して、表示装置106に表示させる(ステップS172)。図8に示した表示画像IM5には、画像解析機能148がR-R期間の超音波動画像に基づいて追跡した壁運動から心筋における縦歪み(Global Longitudinal Strain:GLS)を解析し、その解析結果Raを、心筋の表面を展開した極座標表示(Polar map)で表した場合の一例を示している。その後、画像解析機能148は、解析が完了したことを検査者に通知するため、このことを表す情報を表示制御機能160に出力して、表示装置106に表示させる(ステップS174)。例えば、画像解析機能148は、表示制御機能160に、「解析が完了しました。」というようなメッセージを、表示装置106に表示させている現在の超音波画像の表示画像に重畳して表示させる(図9参照)。図9に示した表示画像IM6には、メッセージに加えて、情報を通知することを表す情報アイコンIiを、現在の超音波画像の表示画像に重畳して表示させている場合を示している。これにより、検査者は、撮影した超音波動画像に基づいて心臓診断処理を行うことができることを認識することができる。画像解析機能148における、ステップS172の処理と、ステップS174の処理とは、この順番に限らず、例えば、同時であってもよい。
【0076】
その後、処理機能140は、画像抽出機能146が抽出し、画像解析機能148が解析したR-R期間の超音波動画像を、記憶制御機能150に出力して、記憶装置500に記憶(保存)させる(ステップS180)。このとき、処理機能140は、超音波動画像を記憶装置500に記憶(保存)させたことを検査者に通知するため、このことを表す情報を表示制御機能160に出力して、表示装置106に表示させてもよい。そして、処理機能140は、処理をステップS100に戻す。これにより、検査者は、記憶装置500に記憶(保存)された超音波動画像に対して、他の処理装置(超音波診断装置1であってもよい)を用いたより詳細な心臓診断処理を行うことができる。
【0077】
このような処理によって、超音波診断装置1では、本体装置100が備える処理回路110内の処理機能140が、画像取得機能120により出力された反射波信号に基づいて生成した超音波画像に、心電取得機能130により出力された心電図波形の情報を対応付けたそれぞれの超音波画像をフレームとして含む超音波動画像を生成する。そして、超音波診断装置1では、処理機能140が、生成した超音波動画像が、心臓診断処理に適した超音波動画像であるか否かを判定し、心臓診断処理に適した超音波動画像を記憶(保存)する。これにより、超音波診断装置1が保存した超音波動画像に基づいて、例えば、ウォールモーショントラッキングなどによって心臓壁の動き(壁運動)を追跡し、追跡した壁運動から、心臓の状態の診断に寄与する様々な解析パラメータを導出するための処理を行うことができる。
【0078】
ところで、例えば、ウォールモーショントラッキングでは、四房室超音波画像、二房室超音波画像、および三房室超音波画像をフレームとして含む三つの超音波動画像に基づいて、心臓の状態の診断に寄与する様々な解析パラメータを導出する。従って、超音波診断装置1では、図3に示したフローチャートの処理の流れを、少なくとも三回繰り返すことによって、三つの超音波動画像を記憶装置500に記憶させる。この場合でも、画像解析機能148は、画像抽出機能146によって抽出されたR-R期間の超音波動画像に対して解析を実行し、実行した解析結果を表示制御機能160に出力して、表示装置106に表示させる。このとき、画像解析機能148は、今回実行した解析結果を、前回実行した解析結果に追加して、表示装置106に表示させる。図10に示した表示画像IM7には、画像解析機能148がR-R期間の超音波動画像(二房室超音波画像の超音波動画像)に基づいて追跡した壁運動から心筋における縦歪みを解析し、前回実行した解析結果Raに今回実行した解析結果を追加した解析結果Ra2を、心筋の表面を展開した極座標表示で表した場合の一例を示している。さらに、図11に示した表示画像IM8には、画像解析機能148がR-R期間の超音波動画像(三房室超音波画像の超音波動画像)に基づいて追跡した壁運動から心筋における縦歪みを解析し、前回までに実行した解析結果Ra2に今回実行した解析結果を追加した解析結果Ra3を、心筋の表面を展開した極座標表示で表した場合の一例を示している。図10に示した表示画像IM7、および図11に示した表示画像IM8は、画像解析機能148において、ステップS172の処理と、ステップS174の処理とを同時に行った場合の表示画像IMの一例である。表示画像IM7、および表示画像IM8には、画像解析機能148が解析を行った超音波動画像を検査者に通知するため、いずれの超音波動画像の解析が完了したかを表す情報を表示装置106に表示させている。より具体的には、表示画像IM7では、「二房室超音波画像の超音波動画像の解析が完了しました。」というようなメッセージを、表示装置106に表示させ、表示画像IM8では、「三房室超音波画像の超音波動画像の解析が完了しました。」というようなメッセージを、表示装置106に表示させている。これにより、検査者は、解析が完了した超音波動画像を認識することができる。
【0079】
このようにして、超音波診断装置1では、例えば、ウォールモーショントラッキングの心臓診断処理に用いる四房室超音波画像と、二房室超音波画像と、三房室超音波画像とのそれぞれの超音波動画像を、記憶装置500に記憶(保存)させる。このため、例えば、図3に示したフローチャートのステップS120の処理とステップS130の処理との間に、すでに記憶装置500に記憶させている房室の数の超音波動画像であるか否かを画像判定機能144が確認する処理を追加してもよい。この場合、画像判定機能144は、二回目以降のステップS120の処理において、すでに記憶装置500に記憶させている房室の数の超音波動画像を判別した場合には、このことを表す情報を表示制御機能160に出力して、表示装置106に表示させてもよい。これにより、検査者は、今回撮影した超音波画像はすでに記憶装置500に記憶されていることを認識し、例えば、超音波プローブ102の今回の走査を中止して、記憶装置500に記憶されていない超音波画像を撮影することができる。
【0080】
上記に述べたとおり、実施形態の超音波診断装置では、超音波プローブにより出力された反射波信号に基づく超音波画像に心電計測装置により出力された心電図波形の情報を対応付けた超音波画像をフレームとして含む超音波動画像を生成する。そして、実施形態の超音波診断装置では、生成した超音波動画像に撮影されている房室の数を判別するとともに、R-R期間の超音波動画像が心臓診断処理に適した超音波動画像であるか否かを判定し、これらの結果を実施形態の超音波診断装置を利用して超音波検査を行う検査者に通知する。さらに、実施形態の超音波診断装置では、心臓診断処理に含まれる一部の処理を、超音波動画像の解析として行い、この解析結果を実施形態の超音波診断装置を利用して超音波検査を行う検査者に通知する。これらにより、実施形態の超音波診断装置を利用して超音波検査を行う検査者は、撮影したそれぞれの房室の数の超音波動画像が、心臓診断処理に適した超音波動画像であるか否かを認識し、仮に、心臓診断処理に適した超音波動画像ではない場合には、例えば、他の処理装置(実施形態の超音波診断装置であってもよい)で心臓診断処理を別途行うために記憶装置に記憶(保存)させる前に、超音波動画像の撮影を再度行うことができる。言い換えれば、実施形態の超音波診断装置では、心臓診断処理に適した超音波動画像のみを、記憶装置に記憶(保存)させることができる。これにより、実施形態の超音波診断装置では、従来と同様に、記憶装置に記憶(保存)されている超音波動画像に対して他の処理装置(実施形態の超音波診断装置であってもよい)によって心臓診断処理を行う場合でも、超音波動画像に含まれる超音波画像が不適切であるため心臓診断処理を行うことができないというような事態に陥ってしまうことを回避することができる。つまり、実施形態の超音波診断装置では、撮影した超音波動画像が心臓診断処理に不適切であることに起因する被検者の再検査を行う必要がなくなる。これにより、実施形態の超音波診断装置では、被検者に対する診断を、より円滑に行うことができる。
【0081】
上述した実施形態では、R-R期間の超音波動画像が心臓診断処理に適した超音波動画像であるか否かを判定するための条件として、条件1~条件3を示したが、これはあくまで一例であり、R-R期間の超音波動画像が心臓診断処理に適した超音波動画像であるか否かを判定するための条件であれば、上述した条件1~条件3に限定されない。この場合、画像判定機能144は、それぞれの条件に従って超音波画像を判定し、その判定結果を表示装置106に表示させることによって検査者に通知すればよい。そして、この場合における機能構成や、動作、処理は、上述した機能構成や、動作、処理と等価なものになるようにすればよい。従って、R-R期間の超音波動画像が心臓診断処理に適した超音波動画像であるか否かを判定するための条件が異なる場合の機能構成や、動作、処理に関する詳細な説明は省略する。
【0082】
上述した実施形態では、超音波プローブ102が検出して出力した反射波信号に基づいて生成する超音波画像(エコー画像)が、二次元の画像である場合について説明したが、心臓診断処理は、三次元の超音波画像に対して行うこともできる。つまり、ウォールモーショントラッキングの処理は、上述した二次元の超音波画像をフレームとして含む超音波動画像を対象とする処理のみではなく、三次元の超音波画像をフレームとして含む超音波動画像を対象として処理を行うこともできる。この場合における超音波診断装置1や、本体装置100、および処理回路110内のそれぞれの機能を含めた基本的な構成要素の機能構成、動作、処理などは、対象とする超音波動画像が三次元となるのみで、上述した実施形態におけるそれぞれの構成要素の機能構成、動作、処理などと等価なものになるようにすればよい。従って、処理をする対象の超音波動画像に含まれるフレームが三次元の超音波画像である場合の超音波診断装置1や本体装置100(処理回路110)のそれぞれの構成要素の機能構成、動作、処理などに関する詳細な説明は省略する。
【0083】
上述した実施形態では、心臓診断処理がウォールモーショントラッキングの処理である場合を例に挙げて説明したが、心臓診断処理は、ウォールモーショントラッキングの処理に限定されない。例えば、被検者の撮影中(検査中)に撮影した画像(超音波画像でなくてもよい)を表示装置に表示させつつ、生成した画像がその後の診断処理に適した画像であるか否かの判定や、詳細な診断処理を行う前に一部の処理(診断処理に含まれる診断項目のうち、いずれか一つの項目の処理)を行う場合には、上述した実施形態と同様の考え方を適用してもよい。この場合における超音波診断装置や医用画像診断装置の構成、動作、処理は、上述した実施形態の超音波診断装置1や本体装置100(処理回路110)のそれぞれの構成要素の構成や、動作、処理と等価なものになるようにすればよい。従って、この場合の超音波診断装置や医用画像診断装置の構成や、動作、処理に関する詳細な説明は省略する。
【0084】
上記説明した実施形態は、以下のように表現することができる。
処理回路(processing circuitry)を備え、
前記処理回路は、
被検者に向けて送信した超音波信号が前記被検者の体内で反射された反射波信号に基づいて順次生成した複数の超音波画像を含む前記被検者の一心拍分の超音波動画像が、前記被検者を診断するための診断処理に適するか否かを判定し、
前記診断処理に適すると判定した前記超音波動画像の解析を行い、
順次生成した前記超音波画像と、前記判定結果、または/および前記解析結果との表示装置への表示を制御する、
超音波診断装置。
【0085】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、被検者に向けて送信した超音波信号が前記被検者の体内で反射された反射波信号に基づいて順次生成した複数の超音波画像を含む前記被検者の一心拍分の超音波動画像が、前記被検者を診断するための診断処理(心臓診断処理、例えば、ウォールモーショントラッキングの処理)に適するか否かを判定し、前記診断処理に適すると判定した前記超音波動画像の解析を行う処理部(140)と、順次生成した前記超音波画像と、前記処理部により出力された前記判定結果、または/および前記解析結果との表示装置(106)への表示を制御する表示制御部(160)と、を備えることにより、超音波診断装置(1)において、被検者の心臓の状態を診断するのに適した超音波画像の取得を行えるようにさせることができる。
【0086】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0087】
1・・・超音波診断装置、100・・・本体装置、102・・・超音波プローブ、104・・・入力装置、106・・・表示装置、110・・・処理回路、120・・・画像取得機能、130・・・心電取得機能、140・・・処理機能、150・・・記憶制御機能、160・・・表示制御機能、142・・・心電判定機能、144・・・画像判定機能、146・・・画像抽出機能、148・・・画像解析機能、300・・・心電計測装置、500・・・記憶装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11