(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110450
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】転倒防止装置及び転倒防止プログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20240808BHJP
【FI】
G08G1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014975
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三井 嘉弘
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA05
5H181BB13
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181CC27
5H181FF22
5H181FF32
5H181LL02
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL16
(57)【要約】
【課題】車両の停車位置における路面の高低差が大きい場合でも立ちゴケを回避できるよう警告することができる転倒防止装置及び転倒防止プログラムを提供する。
【解決手段】 転倒防止装置10は、車両100周辺の路面の高低差情報を検出する路面検出部11と、車両100が停車する停車位置51からライダー200の足の着く位置である推定着足位置53を推定する位置推定部19と、停車位置51と推定着足位置53との路面110の高低差Δが第1高さΔ
1以上である場合にライダー200に警告をする警告部16と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両周辺の路面の高低差情報を検出する路面検出部と、
前記車両が停車する停車位置からライダーの足の着く位置である推定着足位置を推定する位置推定部と、
前記停車位置と前記推定着足位置との前記路面の高低差が第1高さ以上である場合に前記ライダーに警告をする警告部と、を備えることを特徴とする転倒防止装置。
【請求項2】
前記停車位置は、前記車両が停車すると予測される予測停車位置であり、
前記警告部は、前記車両の走行速度が第1速度以下になった場合に前記警告をする請求項1に記載の転倒防止装置。
【請求項3】
前記警告部は、前記車両の減加速量が第1減加速量以上になった場合に前記警告をする請求項2に記載の転倒防止装置。
【請求項4】
前記警告部は、前記第1減加速量よりも大きい第2減加速量以上の減加速量で前記車両が減速した場合には、前記高低差が前記第1高さよりも小さい第2高さ以上である場合に前記警告をする請求項3に記載の転倒防止装置。
【請求項5】
前記警告部は、前記走行速度が前記第1速度よりも大きい第2速度以下となった場合に前記警告をする請求項4に記載の転倒防止装置。
【請求項6】
前記第1高さと前記第2高さとの差異は、前記車両のフロントフォークの伸縮長さに基づいて決定される請求項4に記載の転倒防止装置。
【請求項7】
摩擦係数が低下している可能性のある低摩擦路面を検出する摩擦検出部をさらに備え、
前記警告部は、前記低摩擦路面上の走行時では前記高低差が前記第1高さよりも小さい第3高さ以上である場合に前記警告をする請求項1に記載の転倒防止装置。
【請求項8】
前記第3高さは、所定減加速量以上の減加速量で前記車両が減速した場合に前記警告部が前記警告をする前記高低差である第2高さよりも小さい請求項7に記載の転倒防止装置。
【請求項9】
前記車両の前記路面に対する傾きを検出可能な傾き検出部を備え、
前記警告部は、前記路面に対して前記車両が所定角度以上傾いた状態で停車した場合、前記警告を禁止する請求項1に記載の転倒防止装置。
【請求項10】
前記路面検出部は、前記停車位置周辺の路面マップを2.5次元マップで生成する請求項1に記載の転倒防止装置。
【請求項11】
コンピュータに、
車両周辺の路面の高低差情報を検出するステップ、
前記車両が停車する停車位置からライダーの足の着く位置である推定着足位置を推定するステップ、
前記停車位置と前記推定着足位置との前記路面の高低差が第1高さ以上である場合に前記ライダーに警告をするステップ、を実行させることを特徴とする転倒防止プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二輪車の転倒防止技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、二輪車において、路面状況をライダーに通知してライダーの注意を促進する技術がある。例えば、路面の摩擦係数の低下を予測してライダーに警告することでライダーのニーグリップを促進するものが知られている。ところで、多くの二輪車では、ライダーが停車時に車両を左右の一方に僅かに傾かせ、地面に足を着いて車両の姿勢を維持させる。車両の姿勢を安定的に維持できない場合、停車中にライダーが車体にまたがったまま車体が転倒してしまう、いわゆる立ちゴケが発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、ライダーの足を着く先の路面が想定以上に低い場合、立ちゴケするおそれがある。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、車両の停車位置における路面の高低差が大きい場合でも立ちゴケを回避できるよう警告することができる転倒防止装置及び転倒防止プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係る転倒防止装置は、車両周辺の路面の高低差情報を検出する路面検出部と、前記車両が停車する停車位置からライダーの足の着く位置である推定着足位置を推定する位置推定部と、前記停車位置と前記推定着足位置との前記路面の高低差が第1高さ以上である場合に前記ライダーに警告をする警告部と、を備えるものである。
【0007】
本実施形態に係る転倒防止プログラムは、コンピュータに、車両周辺の路面の高低差情報を検出するステップ、前記車両が停車する停車位置からライダーの足の着く位置である推定着足位置を推定するステップ、前記停車位置と前記推定着足位置との前記路面の高低差が第1高さ以上である場合に前記ライダーに警告をするステップ、を実行させるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、車両の停車位置における路面の高低差が大きい場合でも立ちゴケを回避できるよう警告することができる転倒防止装置及び転倒防止プログラムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る転倒防止装置を搭載した車両の概略構成図。
【
図2】(A) 前方カメラ取得した車両前方の画像情報を示す図、(B) 画像情報を変換して視点Mから見た図である路面マップを示す図。
【
図3】(A) 路面マップにおける自己位置と推定停車位置との関係を示す図、(B) 停車時のライダーの姿勢、及び停車位置と推定着足位置との高低差を示す図。
【
図5】転倒防止装置の動作手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
なお、以下の実施形態において「前」、「後」、「上」及び「下」の向き、及び「左右方向」は、鞍乗り型の車両に跨ったライダーを基準にして規定する。
【0011】
図1は、実施形態に係る転倒防止装置10を搭載した車両100の概略構成図である。
また、
図2(A),(B)は、前方路面110の画像情報33から路面マップ21へ変換する変換態様を示す図である。
図2(A)は、前方カメラ12で取得した車両100前方の画像情報33を示している。
図2(B)は、画像情報33を変換して視点Mから見たマップである路面マップ21を示している。
また、
図3(A)は、路面マップ21における自己位置54と推定停車位置52との関係を示す図であり、
図3(B)は、停車時のライダー200の姿勢、及び停車位置51と推定着足位置53との高低差Δを示す図である。
【0012】
転倒防止装置10は、
図1、
図2(A),(B)及び
図3(A),(B)に示されるように、主に、車両100周辺の路面110の高低差情報を検出する路面検出部11と、車両100が停車する停車位置51からライダー200の足の着く位置である推定着足位置53を推定する位置推定部19と、停車位置51と推定着足位置53との路面110の高低差Δが第1高さΔ
1以上である場合にライダー200に警告をする警告部16と、を備える。また、転倒防止装置10は、車両100内のネットワーク150で車輪速センサー22、表示部23及びオーディオ25などの各構成に接続されている。
【0013】
路面検出部11は、車両100周辺の路面110の高低差情報を検出する。路面検出部11は、例えば、前方カメラ12と、路面マップ生成部13と、を備える。
前方カメラ12は、車両100のボディ26に設置されて、車両100前方の画像情報33を取得する。前方カメラ12は、取得した画像情報33を路面マップ生成部13へ送信する。
【0014】
路面マップ生成部13は、
図2(A),(B)に示されるように、受信した画像情報33に基づき、例えば、前方の路面110の高低差を平面上にマッピングして路面マップ21を生成する。
【0015】
位置推定部19は、
図3(A)及び
図3(B)に示されるように、生成した路面マップ21において、車両100が停車する停車位置51からライダー200の足の着く位置である推定着足位置53を推定する。この停車位置51には、実際に停車した位置のみならず、車両100が停車すると予測される推定停車位置52が含まれうる。つまり、位置推定部19は、車両100が完全に停車する前に、停車位置51として予測される位置(以下、「推定停車位置」という)52を推定して停車位置51としてもよい。
【0016】
推定方法には、
図3(A)に示されるように、路面マップ21における自己位置54の特定後に位置推定部19が例えば車輪速センサー22から現在の車両100の速度及び停車までに予想される移動量δの情報を取得する方法がある。この方法では、位置推定部19は、この移動量δから停車位置51を推定する。
なお、ライダー200へ高低差Δが大きいことを正しく通知するためには、推定停車位置52の推定精度が高いことが求められる。そこで、車輪速センサー22を利用した車両100の移動量δの情報に加え、時系列のマップ情報を用いることが望ましい。
【0017】
時系列のマップ情報を用いた停車位置51の推定とは、時刻nに生成した鳥瞰マップに、時刻n+1に生成した鳥瞰マップを重ね合せることで、停車位置51を推定する手法である。鳥瞰マップの重ね合せにおいては、例えば、鳥瞰マップの生成時の画像処理で抽出したガードレール34、中央線35、歩道境界線36などの画像特徴部が同一点として一カ所に重なるように重ね合わせる方法がある。そして、移動量δの情報により推定した推定停車位置52aと、時系列のマップ情報により推定した推定停車位置52bと、を各々重み付けして合成して、最終的な推定停車位置52cとする。このように、複数の情報を利用して車両100の推定停車位置52cを算出することで、推定精度を高めることができる。以下では、停車位置51を推定停車位置52で推測する例を用いて説明する。
【0018】
なお、路面マップ生成部13及び位置推定部19の機能は、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)により実現されることが多い。SLAMとは、カメラで撮影した映像から自己位置54の推定と路面マップ21などの環境地図の作成とを同時に行う技術のことである。
【0019】
また、前方カメラ12の代わりに、又は前方カメラ12に加えて、レーザーセンサー14で車両100前方の路面110の凹凸情報を取得してもよい。つまり、レーザーセンサー14でレーザーセンサー14から路面上の各地点までの距離を測定して、各地点までの距離情報に基づいて自己位置54の推定及び環境地図の作成をする、いわゆるLidar SLAM(Light Detection and Ranging SLAM)技術を用いてもよい。
【0020】
ここで、
図4(A)~(C)は、2.5次元マップ29の説明図である。
図4(A)は3次元マップ28、
図4(B)は2.5次元マップ29、
図4(C)は2次元マップ30をそれぞれ示している。
走行する車両100の路面マップ21を逐次的にマップ化するにあたり、マップ生成の迅速化の観点から、生成する路面マップ21は
図4(B)の2.5次元マップ29とすることが望ましい。2.5次元マップ29とは、
図4(C)の2次元マップ30に高低差情報を付与したものである。つまり、2.5次元マップ29では、立体物とその設置面との間に空間31がある場合に、この空間31が無視される。
図4(A)の3次元マップ28のように高低差以外の立体情報はないため、3次元マップ28の生成に比べ処理速度が早い利点がある。
【0021】
図1に戻って各構成の説明を続ける。
警告部16は、停車位置51と推定着足位置53との路面110の高低差Δが第1高さΔ
1以上である場合にライダー200に警告をする。警告部16は、例えば判定部17及び傾き検出部18を備える。第1高さΔ
1をはじめとする各種閾値(Δ
1~Δ
3,D
1,D
2,V
1,V
2)は、例えば、転倒防止装置10内部の記憶部20に記憶される。
【0022】
判定部17は、路面マップ21から停車位置51と推定着足位置53とにおける路面110の高低差Δを検出する。そして、判定部17は、この高低差Δが第1高さΔ1以上である場合に、警告を発してライダー200に注意を促す。
第1高さΔ1は、この第1高さΔ1の高低差Δによって、車両100の最大安定傾斜角に数度、例えば3°~5°、の角度だけ加えた角度に車両100が傾くように規定される。最大安定傾斜角度とは車両100の耐転覆性能を示す目安のひとつで、ライダー200や荷物を乗せない状態の車両100を傾けた場合に転覆しないとされる最大の角度のことである。つまり、第1高さΔ1は、第1高さΔ1の高低差Δによる車両100の傾き以内であれば、サイドスタンドを使用して車両100を安定的に支持できる高さに設定される。
警告の方法としては、例えば、メーターパネル等の表示部23にランプや文字で表示する方法、オーディオ25からの警告音の発信、振動の発振、及びこれらの組み合わせがある。
【0023】
ところで、高低差Δの判定は、常時行われる必要はなく、車両100が停止しそうになった際に実施されれば十分である。そこで、判定部17は、車両100の走行速度Vが閾値である第1速度V1以下になった場合に高低差Δの判定を実施して適宜警告をすることが望ましい。また、低速であっても、停車に向けた減速ではなく低速のまま走行を継続するときは、警告を禁止することが望ましい。そこで、走行速度Vに第1速度V1という閾値を設けるだけでなく、減加速量すなわちマイナスの加速度にも閾値を設けることが望ましい。例えば、第1速度V1を10km/hとし、さらに、減加速量が閾値としての第1減加速量である0m/s2以下とする条件が成立した場合にのみ、判定部17が判定をすることが望ましい。
【0024】
傾き検出部18は、車両100の路面110に対する傾きを検出する。警告部16は、傾き検出部18により路面110に対して車両100が所定角度以上傾いた状態で停車したことが検出された場合、警告を禁止することが好ましい。Uターンのように車両100をバンクさせている途中で停車する際は、ライダー200が路面110に着足しやすい状況と考えられるためである。このような状況で警告をしてしまうと、ライダー200に煩わしさを与えるおそれがある。
【0025】
なお、転倒防止装置10の発動に対する走行速度Vによる制限は、判定部17の判定ではなく画像情報33の取得や路面マップ21の生成自体に設定してもよい。つまり、前方カメラ12による画像情報33の取得や路面マップ生成部13による路面マップ21の生成自体を走行速度Vが第1速度V1以下になった場合に限定してもよい。
【0026】
また、車両100の停車時に急ブレーキがかけられることがある。このとき、ゆっくりと減速して停車した場合に比較して、車両100が第1速度V1になった時点から完全停車時点までの時間が短くなる。よって、車両100が急ブレーキをかけた場合、ライダー200に立ちゴケに対する準備時間を十分に付与するため、警告部16は通常より早く警告を発信することが好ましい。つまり、車両100が所定減加速量D2以上の減加速量で停車した場合、走行速度Vが第1速度V1よりも大きい第2速度V2以下となった際に警告をするのが好ましい。
【0027】
また、車両100のボディ26と前輪27aの回転中心とを接続するフロントフォーク24には、ブレーキ時のボディ26及びライダー200が受ける衝撃を緩和するため、ショックアブソーバーが設けられている。ショックアブソーバーによって、フロントフォーク24の長さは弾性的に伸縮可能になる。よって、車両100にブレーキがかかると、フロントフォーク24に弾性的に接続されたボディ26は慣性により前輪27a側に押され、フロントフォーク24を縮ませる。
【0028】
この時、フロントフォーク24の縮みによって、ボディ26の前部は下向きに沈む前のめりな姿勢になりながらボディ26の重心位置は僅かに下向きに沈む。そして、車両100の停止後にボディ26はゆっくりと元の姿勢に戻ろうとする。このとき、もとに戻ろうとする力はショックアブソーバーによる弾性的な復元力であるため、ボディ26の重心位置は、一旦、ブレーキをかける前の重心位置よりも上方に浮上する。よって、ショックアブソーバーの弾性力によっては、停車時にボディ26が高くなる分だけ、車両100をより傾けてより遠くに着足することが必要になる。
【0029】
着足位置が遠い場合、停車位置51と推定着足位置53との高低差Δが小さくても、車両100を支持するライダー200の負担は大きくなる。そこで、ショックアブソーバーの伸縮量が大きい場合は、第1高さΔ1よりも小さい第2高さΔ2を高低差Δの閾値とすることが望ましい。なお、ショックアブソーバーの伸縮量は、フロントフォーク24の伸縮量と一致する。また、フロントフォーク24の伸縮量はおおむねフロントフォーク24の長さに比例する。よって、停車位置51と推定着足位置53との高低差Δの閾値は、フロントフォーク24の長さで第2高さΔ2を決定してもよい。
【0030】
また、前述のように車両100の停車時に急ブレーキがかけられた場合、フロントフォーク24が伸びる分、ライダー200の足が路面110から遠くなる。よって、ライダー200が姿勢を崩しやすいため、路面110への着足後に立ちゴケしやすい。そこで、同様に所定減加速量D2以上の減加速量で停車した場合、警告部16は、高低差Δが第1高さΔ1よりも小さい第2高さΔ2以上である場合に警告をすることが望ましい。すなわち、警告部16の警告のタイミングや警告を発信する高低差Δの条件に複数の閾値を設けて、車両100のブレーキの度合に応じて警告のタイミングを変更するのが好ましい。
【0031】
また、路面検出部11は、摩擦係数が低下している可能性のある低摩擦路面を検出する摩擦検出部15を備えることが望ましい。低摩擦路面は、例えば、雨天で路面110が濡れている場合や、雪天で路面110が凍結している場合に発生する。摩擦検出部15は、例えば、車輪27の回転量及び車両100の移動量δに基づき、車輪27のスリップ量を導き、このスリップ量から路面110の摩擦状況を算出する。
【0032】
車輪27のスリップ量が多い場合には、路面検出部11は、路面110の摩擦係数が低下している可能性のある低摩擦路面と推定する。低摩擦路面では、停車位置51と推定着足位置53との高低差Δが第1高さΔ1であっても、車輪27又はライダー200の足が滑って立ちゴケするおそれがある。そこで、低摩擦路面上の走行時では、警告の発信条件の閾値(第3高さΔ3)を別途設けることが望ましい。つまり、警告部16は、低摩擦路面上の走行時では高低差Δが第1高さΔ1よりも小さい第3高さΔ3以上である場合に、警告をすることが望ましい。
【0033】
このように、低摩擦路面を走行している際は、通常時よりも警告を出やすくすることで、停車時の立ちゴケを防止することができる。また、摩擦検出部15は、前方カメラ12などのカメラであってもよいし、車輪27のスリップを検出するABS(Anti-lock Brake System)であってもよい。
【0034】
低摩擦路面では、僅かな高低差Δであっても立ちゴケするおそれは非常に高い。そこで、第3高さΔ3は、急ブレーキをかけた場合に警告部16が警告をする高低差Δである第2高さΔ2よりも小さく設定することが望ましい。
【0035】
なお、これらの転倒防止装置10の各構成は、CPU等のプロセッサ、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、或いはHDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置、を具備するコンピュータとして構成することができる。
この場合、転倒防止装置10の各構成のうち、路面検出部11、位置推定部19、及び警告部16の搭載機能は、記憶装置に記憶された所定のプログラムをプロセッサが実行することによって実現することができる。
また、このようなソフトウェア処理に換えて、ASIC(Application Specific Integration Circuit)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)等のハードウェアで実現することもできる。
【0036】
次に、転倒防止装置10の動作手順を
図5のフローチャートを用いて説明する。なお、各ステップは、「S10」のように「S」を付けて適宜略記する。
【0037】
まず、路面検出部11が、路面110が低摩擦路面であるか確認する(S10)。
路面110が低摩擦路面である場合には、低摩擦路面のサブルーチンに進む(S10においてYESの場合、S100)。
低摩擦路面サブルーチンは、以下で説明するステップS16及びS23において高低差Δが第1高さΔ1及び第2高さΔ2よりも小さい第3高さΔ3である場合にも警告を警告部16が発信することを除き、S11~S13と同様の動作をするため、説明を省略する(S100)。
【0038】
また、傾き検出部18が車両100の傾きを検出した場合(S11においてYESの場合、S12に進む)、警告部16による警告は禁止される。Uターンのように車両100をバンクさせている途中で停車する際は、ライダー200が路面110に着足しやすい状況と考えられるためである。
一方、車両100の傾きが検出されていない場合、走行速度Vが第1速度V1以下で、かつ、減加速量D2が第1減加速量D1以上になるまでは警告を発信せずに通常の走行を継続する(S11においてNOかつS13においてNOの場合、S11に戻る)。
【0039】
走行速度Vが第1速度V1以下で、かつ、減加速量Dが第1減加速量D1以上の場合、前方路面110の画像情報33が取得される(S13においてYESの場合、S14へ進む)。そして、前方路面110の画像情報33に基づいて路面マップ生成部13が路面マップ21を生成する(S15)。位置推定部19は、この路面マップ21において推定停車位置51及び推定着足位置52を算出する。
【0040】
そして、高低差Δが第1高さΔ1以上の場合、警告部16が警告を発信する(S16においてYESの場合、S17へ)。判定部17が、推定停車位置51と推定着足位置52とにおける路面110の高低差Δを算出して高低差Δが第1高さΔ1以上であるか否かを判定する。ライダー200は、この警告により注意して着足する(S18)。
一方、高低差Δが第1高さΔ1より小さい場合、警告は発信されないまま、ライダー200は着足する(S16においてNOの場合、S18、END)。
【0041】
また、減加速量Dが第1減加速量D1より大きい第2減加速量D2以上の場合には、走行速度Vが第1速度V1より大きい閾値である第2速度V2以下になると前方路面110の画像情報33が取得され、路面マップ21が生成される(S19,S20においてYESの場合は、S21,S22に進む)。すなわち、ライダー200が急ブレーキをかけた場合には、車両100の走行速度Vが速い段階で警告の準備が開始される。
【0042】
そして、第1高さΔ1より低い第2高さΔ2以上の高低差Δが検出された場合、警告部16が警告を発信する(S23においてYESの場合、S17へ)。ライダー200は、この警告により注意して着足する(S18、END)。
【0043】
以上のように、実施形態に係る転倒防止装置10によれば、車両100の停車位置51における路面110の高低差Δが大きい場合でも立ちゴケを回避できるよう警告することができる。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0045】
例えば、閾値を警告部の外部の記憶部に記憶させた例で説明したが、警告部内部に記憶部を設けて、この記憶部に各種閾値を記憶させてもよい。
【符号の説明】
【0046】
10…転倒防止装置、11…路面検出部、12…前方カメラ、13…路面マップ生成部、14…レーザーセンサー、15…摩擦検出部、16…警告部、17…判定部、18…傾き検出部、19…位置推定部、20…記憶部、21…路面マップ、22…車輪速センサー、23…表示部、24…フロントフォーク、25…オーディオ、26…ボディ、27(27a)…車輪(前輪)、28…3次元マップ、29…2.5次元マップ、30…2次元マップ、31…空間、33…画像情報、34…ガードレール、35…中央線、36…歩道境界線、51…停車位置、52(52a~52c)…推定停車位置、53…推定着足位置、54…自己位置、100…車両、110…路面、150…ネットワーク、200…ライダー、D…減か測量、D1…第1減加速量、D2…第2減加速量、Δ…高低差、Δ1…第1高さ、Δ2…第2高さ、Δ3…第3高さ、M…視点、V…走行速度、V1…第1速度、V2…第2速度、δ…移動量。