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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110453
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】検査装置および検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/956 20060101AFI20240808BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240808BHJP
   G01N 21/88 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
G01N21/956 B
G06T7/00 610B
G06T7/00 350B
G01N21/88 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014982
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【弁理士】
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【弁理士】
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】海津 正博
(72)【発明者】
【氏名】大西 潤
(72)【発明者】
【氏名】井上 学
(72)【発明者】
【氏名】打越 公成
【テーマコード(参考)】
2G051
5L096
【Fターム(参考)】
2G051AA65
2G051AB02
2G051AC02
2G051AC30
2G051BA20
2G051CA03
2G051CA04
2G051EA17
2G051EB01
2G051EB05
2G051EC01
2G051ED21
5L096AA02
5L096AA03
5L096BA03
5L096CA02
5L096DA02
5L096FA15
5L096JA11
5L096JA14
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】検査時間の増大を抑制しつつ基板上の欠陥を精度良く検出する。
【解決手段】表面上にパターンを有する基板を検査する検査装置は、第1検査部303と、第2検査部305とを備える。第1検査部303は、基板のグレースケール画像である第1画像に対して一次検査を行って欠陥候補を検出する。第2検査部305は、基板のうち当該欠陥候補を含む部分領域のカラー画像である第2画像に対して二次検査を行って、当該欠陥候補が欠陥であるか否かを判断する。これにより、検査時間の増大を抑制しつつ、基板上の欠陥を精度良く検出することができる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面上にパターンを有する基板を検査する検査装置であって、
基板のグレースケール画像である第1画像に対して一次検査を行って欠陥候補を検出する第1検査部と、
前記基板のうち前記欠陥候補を含む部分領域のカラー画像である第2画像に対して二次検査を行って、前記欠陥候補が欠陥であるか否かを判断する第2検査部と、
を備えることを特徴とする検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の検査装置であって、
前記二次検査は、機械学習により作成された学習済みモデルを利用したAI検査を含むことを特徴とする検査装置。
【請求項3】
請求項2に記載の検査装置であって、
学習用基板における学習用欠陥候補を含む部分領域のカラー画像の集合から作成した学習用データセットを用いて機械学習を行うことにより、前記学習用基板のカラー画像と欠陥の有無との関係を初期モデルに学習させて前記学習済みモデルを作成する学習部をさらに備え、
前記学習用欠陥候補は、前記学習用基板のグレースケール画像に対して前記一次検査を行うことにより検出されることを特徴とする検査装置。
【請求項4】
請求項3に記載の検査装置であって、
前記学習部は、追加学習用データセットを用いた機械学習により、前記学習済みモデルに対する再学習を行い、
前記追加学習用データセットは、前記第2検査部により欠陥の有無が判定された前記第2画像について、他の基準にて欠陥の有無が判断されて再分類されることにより作成されることを特徴とする検査装置。
【請求項5】
請求項1に記載の検査装置であって、
前記二次検査は、予め設定された登録色に基づく色検査を含むことを特徴とする検査装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1つに記載の検査装置であって、
前記一次検査はルールベース検査を含むことを特徴とする検査装置。
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれか1つに記載の検査装置であって、
前記基板を撮像してカラー画像である撮像画像を取得する撮像部と、
前記撮像画像をグレースケール画像に変換して前記第1画像を取得する画像変換部と、
前記基板上における前記欠陥候補の位置に基づいて前記撮像画像から前記第2画像を抽出する画像抽出部と、
をさらに備えることを特徴とする検査装置。
【請求項8】
請求項1ないし5のいずれか1つに記載の検査装置であって、
前記第1画像は、前記基板の一部を示すグレースケール画像であり、
前記第2画像は、前記第1画像の一部に対応するカラー画像であることを特徴とする検査装置。
【請求項9】
表面上にパターンを有する基板を検査する検査方法であって、
a)基板のグレースケール画像である第1画像に対して一次検査を行って欠陥候補を検出する工程と、
b)前記基板のうち前記欠陥候補を含む部分領域のカラー画像である第2画像に対して二次検査を行って、前記欠陥候補が欠陥であるか否かを判断する工程と、
を備えることを特徴とする検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面上にパターンを有する基板を検査する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント配線基板の検査では、検査装置によりプリント配線基板の各領域の画像が検査され、欠陥を有すると判断された画像が抽出される。そして、抽出された画像に対応するプリント配線基板上の領域を、作業者が目視によって確認する欠陥確認作業(いわゆる、ベリファイ作業)が行われる。検査装置により抽出される欠陥には、品質上問題となる可能性が高い真欠陥と、品質上問題となる可能性が実質的にない虚報とが含まれており、上述の欠陥確認作業では、検査装置により抽出された欠陥から、作業者が目視によって真欠陥を抽出している。
【0003】
上述のような検査装置としては、例えば、特許文献1のように、グレースケール画像に対して、所定のルールに基づいた欠陥検出(いわゆる、ルールベース検査)を行う装置が知られている。また、特許文献2では、カラー画像に対して、機械学習により作成された学習済みモデルを用いた欠陥検出を行う技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-38311号公報
【特許文献2】特開2021-47104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のような欠陥検査において、グレースケール画像による検査では真欠陥と虚報との判別が困難な場合が比較的多く、検査精度の向上に限界がある。このため、検査装置からベリファイ作業を行う装置に送られる画像が多くなり、ベリファイ作業に要する時間が増大するおそれがある。
【0006】
一方、カラー画像を欠陥検査に用いると、グレースケール画像を用いる場合よりも真欠陥と虚報との判別は容易となるが、検査装置において扱う処理データ量が増大するため、検査装置における処理に要する時間が多大となるおそれがある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、検査時間の増大を抑制しつつ基板上の欠陥を精度良く検出することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様1は、表面上にパターンを有する基板を検査する検査装置であって、基板のグレースケール画像である第1画像に対して一次検査を行って欠陥候補を検出する第1検査部と、前記基板のうち前記欠陥候補を含む部分領域のカラー画像である第2画像に対して二次検査を行って、前記欠陥候補が欠陥であるか否かを判断する第2検査部と、を備える。
【0009】
本発明の態様2は、態様1の検査装置であって、前記二次検査は、機械学習により作成された学習済みモデルを利用したAI検査を含む。
【0010】
本発明の態様3は、態様2の検査装置であって、前記検査装置は、学習用基板における学習用欠陥候補を含む部分領域のカラー画像の集合から作成した学習用データセットを用いて機械学習を行うことにより、前記学習用基板のカラー画像と欠陥の有無との関係を初期モデルに学習させて前記学習済みモデルを作成する学習部をさらに備える。前記学習用欠陥候補は、前記学習用基板のグレースケール画像に対して前記一次検査を行うことにより検出される。
【0011】
本発明の態様4は、態様3の検査装置であって、前記学習部は、追加学習用データセットを用いた機械学習により、前記学習済みモデルに対する再学習を行う。前記追加学習用データセットは、前記第2検査部により欠陥の有無が判定された前記第2画像について、他の基準にて欠陥の有無が判断されて再分類されることにより作成される。
【0012】
本発明の態様5は、態様1(態様1ないし4のいずれか1つ、であってもよい。)の検査装置であって、前記二次検査は、予め設定された登録色に基づく色検査を含む。
【0013】
本発明の態様6は、態様1ないし5のいずれか1つの検査装置であって、前記一次検査はルールベース検査を含む。
【0014】
本発明の態様7は、態様1ないし5のいずれか1つ(態様1ないし6のいずれか1つ、であってもよい。)の検査装置であって、前記検査装置は、前記基板を撮像してカラー画像である撮像画像を取得する撮像部と、前記撮像画像をグレースケール画像に変換して前記第1画像を取得する画像変換部と、前記基板上における前記欠陥候補の位置に基づいて前記撮像画像から前記第2画像を抽出する画像抽出部と、をさらに備える。
【0015】
本発明の態様8は、態様1ないし5のいずれか1つ(態様1ないし7のいずれか1つ、であってもよい。)の検査装置であって、前記第1画像は、前記基板の一部を示すグレースケール画像であり、前記第2画像は、前記第1画像の一部に対応するカラー画像である。
【0016】
本発明の態様9は、表面上にパターンを有する基板を検査する検査方法であって、a)基板のグレースケール画像である第1画像に対して一次検査を行って欠陥候補を検出する工程と、b)前記基板のうち前記欠陥候補を含む部分領域のカラー画像である第2画像に対して二次検査を行って、前記欠陥候補が欠陥であるか否かを判断する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、検査時間の増大を抑制しつつ基板上の欠陥を精度良く検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一の実施の形態に係る検査装置の構成を示す図である。
図2】第1コンピュータの構成を示す図である。
図3】第1コンピュータにより実現される機能構成を示す図である。
図4】基板の検査の流れを示す図である。
図5】第2コンピュータの構成を示す図である。
図6】第2コンピュータにより実現される機能構成を示す図である。
図7】学習済みモデルの作成の流れを示す図である。
図8】学習済みモデルに対する再学習の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る検査装置1の構成を示す図である。検査装置1は、例えば、電子部品が実装される前のプリント配線基板9(以下、単に「基板9」とも呼ぶ。)の外観を検査する装置である。基板9の表面上には、パターン(例えば、銅による配線パターンや電極パターン)が形成されている。基板9上には、例えば、銅のメッキが露出している領域、銅の配線が保護膜であるソルダレジストにより被覆されている領域、および、基材表面上に直接的にソルダレジストが配置されている領域等が存在する。
【0020】
検査装置1では、例えば、メッキ部上の異物やメッキ部の欠け等を検出するメッキ異物検査、メッキ部におけるメッキの濃淡を検出するメッキ多値検査、ソルダレジストの剥離を検出するSR剥離検査、および、ソルダレジストの濃淡を検出するSRムラ検査等のうち、1つ以上の検査が行われる。
【0021】
検査装置1は、基板9を撮像する装置本体2と、第1コンピュータ3と、第2コンピュータ4とを備える。第1コンピュータ3および第2コンピュータ4はそれぞれ、演算部を含む処理装置である。第1コンピュータ3は、検査装置1の全体動作の制御も行う。第2コンピュータ4は、後述する学習済みモデルの作成を行う学習装置である。装置本体2は、撮像部21と、基板9を保持するステージ22と、ステージ移動機構23と、を備える。撮像部21は、基板9を撮像して画像を取得する。当該画像は、例えば、基板9上において検査対象となる領域全体の多階調のカラー画像であり、以下の説明では「撮像画像」とも呼ぶ。ステージ移動機構23は、撮像部21に対してステージ22を相対的に移動する。
【0022】
撮像部21は、照明部211と、光学系212と、撮像デバイス213とを備える。光学系212は、照明部211から出射された照明光を基板9に導くとともに、基板9からの反射光を撮像デバイス213に導く。撮像デバイス213は、光学系212により結像された基板9の像を電気信号に変換する。照明部211は、LEDや電球等のランプと、ランプからの光を整えるレンズや反射部材等の光学要素と、を含む。光学系212は、複数のレンズやハーフミラー等の光学要素を含む。撮像デバイス213は、例えば、2次元のイメージングセンサである。撮像デバイス213は1次元のイメージングセンサであってもよく、この場合、ステージ22を移動しながら基板9の撮像が行われる。
【0023】
ステージ移動機構23は、例えば、ボールねじ、ガイドレール、モータ等により構成される。ステージ移動機構23としては様々な機構が採用可能であり、例えば、リニアモータが利用可能である。第1コンピュータ3がステージ移動機構23および撮像部21を制御することにより、ステージ22が水平方向に移動して基板9上の所望の領域が撮像される。ステージ22は基板9を保持する保持部である。基板9の保持は様々な方法で行われてよい。例えば、ステージ22に溝が形成され、溝内に形成された吸引口から吸引が行われることにより、基板9がステージ22上に吸着される。ステージ22に多数の吸引口が形成されて基板9が吸着されてもよい。ステージ22を多孔質材料にて形成し、多孔質材料から吸引が行われてもよい。ステージ22は機械的な機構により基板9を保持してもよい。
【0024】
図2は第1コンピュータ3の構成を示す図である。第1コンピュータ3は、CPU31と、ROM32と、RAM33と、固定ディスク34と、ディスプレイ35と、入力部36と、読取装置37と、通信部38と、GPU39と、バス30とを含む一般的なコンピュータシステムの構成を有する。CPU31は、各種演算処理を行う。GPU39は、画像処理に関する各種演算処理を行う。ROM32は、基本プログラムを記憶する。RAM33は、各種情報を記憶する。固定ディスク34は、情報記憶を行う。ディスプレイ35は、画像等の各種情報の表示を行う。入力部36は、操作者からの入力を受け付けるキーボード36aおよびマウス36bを備える。読取装置37は、光ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク、メモリカード等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体81から情報の読み取りを行う。ディスプレイ35、キーボード36a、マウス36bおよび読取装置37は、インターフェイスI/Fを介してバス30に接続される。通信部38は、検査装置1の他の構成、および、外部の装置との間で信号を送受信する。バス30は、CPU31、GPU39、ROM32、RAM33、固定ディスク34、ディスプレイ35、入力部36、読取装置37および通信部38を接続する信号回路である。
【0025】
第1コンピュータ3では、事前に読取装置37を介して記録媒体81からプログラム811が読み出されて固定ディスク34に記憶されている。プログラム811はネットワークを介して固定ディスク34に記憶されてもよい。CPU31およびGPU39は、プログラム811に従ってRAM33や固定ディスク34を利用しつつ演算処理を実行する。CPU31およびGPU39は、第1コンピュータ3において演算部として機能する。CPU31およびGPU39以外に演算部として機能する他の構成が採用されてもよい。
【0026】
図3は、第1コンピュータ3がプログラム811に従って演算処理等を実行することにより実現される機能構成を示す図である。これらの機能構成には、記憶部301と、画像変換部302と、第1検査部303と、画像抽出部304と、第2検査部305と、制御部306とが含まれる。これらの機能の全部または一部は専用の電気回路により実現されてもよい。また、複数のコンピュータによりこれらの機能が実現されてもよい。図3に示す機能構成のうち、画像変換部302、第1検査部303、画像抽出部304、第2検査部305および制御部306は、CPU31、GPU39、ROM32、RAM33、固定ディスク34およびこれらの周辺構成により実現される。また、記憶部301は、主としてRAM33および固定ディスク34により実現される。
【0027】
記憶部301は、撮像部21により取得された基板9のカラー画像である撮像画像、および、基板9の検査に関する様々な情報等を記憶する。制御部306は、撮像部21およびステージ移動機構23、並びに、各機能構成の動作を制御する。
【0028】
画像変換部302は、当該撮像画像をカラー画像からグレースケール画像に変換する。第1検査部303は、当該グレースケール画像を用いて検査を行って欠陥候補を検出する。以下の説明では、第1検査部303による検査を「一次検査」とも呼ぶ。一次検査では、例えば、基板9の一部を示すグレースケール画像が1回の検査の対象とされ、当該検査が基板9の検査対象となる領域全体に亘って複数回行われることにより、当該検査対象となる領域全体の一次検査が行われる。以下の説明では、一次検査において1回の検査の対象とされる画像(すなわち、基板9の一部を示すグレースケール画像)を「第1画像」とも呼ぶ。なお、一次検査では、1回の検査で基板9の検査対象となる領域全体の検査が行われてもよく、この場合、第1画像は、基板9の検査対象となる領域全体を示すグレースケール画像である。
【0029】
一次検査では、例えば、ルールベース検査が行われる。ルールベース検査とは、基板9上のパターン形状に対して一定のルールを設定し、基板9上のパターンのうち当該ルールから外れた部位を欠陥と判定する検査方法であり、様々な手法が公知である。一次検査に用いられる上記ルールに係る情報は、記憶部301に予め記憶される。一次検査では、例えば、第1画像に含まれるパターンの各部位から、デザインルールに基づいて予め作成された判定アルゴリズムにより所定の特徴量が算出され、当該特徴量が、良品と欠陥とを判別するための閾値と比較されることにより、当該部位が欠陥を含むか否かが判定される。当該特徴量は、例えば、パターンの線幅やパターンの終端形状等に基づいて算出される。
【0030】
一次検査において欠陥と判断された部位の位置は、欠陥候補の位置として記憶部301に記憶される。なお、一次検査では、上記特徴量を抽出するために、第1画像に対して所定の画像処理が行われてもよい。また、一次検査では、上述のルールベース検査に加えて、あるいは、上述のルールベース検査に代えて、他の手法による検査が行われてもよい。
【0031】
画像抽出部304は、一次検査にて検出された欠陥候補の基板9上における位置に基づいて、基板9のうち当該欠陥候補を含む部分領域のカラー画像(すなわち、基板9の一部を示す部分画像)を撮像画像から抽出する。以下の説明では、画像抽出部304により抽出された基板9の上記部分画像を「第2画像」とも呼ぶ。画像抽出部304は、例えば、欠陥候補が検出された第1画像(すなわち、基板9の一部を示すグレースケール画像)において、当該欠陥候補を含む領域を設定する。当該領域は、第1画像の一部であり、第1画像よりも小さい。画像抽出部304は、撮像画像(例えば、基板9の検査対象領域全体のカラー画像)から当該領域に対応する部分領域を抽出することにより、上述の第2画像を取得する。第2画像は、第1画像の一部に対応するカラー画像であり、第1画像よりも小さい。
【0032】
第2検査部305は、第2画像に対して検査を行って、第2画像に含まれる欠陥候補が欠陥であるか否かを判断する。以下の説明では、第2検査部305による第2画像に対する検査を「二次検査」とも呼ぶ。二次検査では、例えば、機械学習により作成された学習済みモデルを利用したAI検査が行われる。AI検査とは、基板9上のパターンの画像をAI(人工知能)の画像認識技術を使って解析し、欠陥の有無を判別する検査方法である。二次検査に用いられる学習済みモデルは、第2コンピュータ4により生成されて、記憶部301に予め記憶される。第2コンピュータ4による学習済みモデルの作成については後述する。第2検査部305は、記憶部301に記憶されている当該学習済みモデルを利用して第2画像を検査し、欠陥の有無により第2画像を分類する分類器である。なお、二次検査では、上述のAI検査に加えて、あるいは、上述のAI検査に代えて、他の手法による検査が行われてもよい。
【0033】
次に、検査装置1における基板9の検査の流れを、図4を参照しつつ説明する。基板9の検査は、上述のプログラム811が第1コンピュータ3によって実行されることにより実施される。検査装置1では、まず、図3に示す制御部306により撮像部21およびステージ移動機構23等が制御されることにより、撮像部21によって基板9が撮像され、カラー画像である上述の撮像画像が取得される(ステップS11)。
【0034】
続いて、画像変換部302により、撮像画像がグレースケール画像に変換され、当該グレースケール画像から、それぞれが基板9の一部を示す部分画像である複数の第1画像が取得される(ステップS12)。ステップS12において撮像画像をグレースケール画像に変換する際には、例えば、撮像画像をR(赤)、G(緑)、B(青)の3つの単色グレースケール画像に分離し、いずれかの単色グレースケール画像が上述のグレースケール画像として用いられる。あるいは、上述の3つの単色グレースケール画像のうち2つ以上を用いた差分画像(例えば、R-G、R-B、または、Rx2-B等)、積算画像(例えば、R+G等)、または、重み付け積算画像(例えば、Rx2+G等)が、上述のグレースケール画像として用いられてもよい。なお、ステップS12における撮像画像からグレースケール画像への変換は、上述の方法以外の様々な方法により行われてもよい。
【0035】
そして、第1検査部303により、複数の第1画像に対する一次検査(例えば、ルールベース検査)が順次行われ、欠陥候補が検出される(ステップS13)。ステップS13では、例えば、欠陥候補を含む第1画像が検出され、当該欠陥候補の第1画像中における位置に基づいて、基板9上における当該欠陥候補の位置が求められる。ステップS13にて検出された欠陥候補の基板9上における位置は、第1検査部303から記憶部301へと送られて、記憶部301に記憶される。
【0036】
次に、画像抽出部304により、記憶部301に記憶された基板9上における欠陥候補の位置に基づいて、カラー画像である上述の撮像画像から、欠陥候補を含む部分領域のカラー画像である第2画像が抽出される(ステップS14)。第2画像は、画像抽出部304から記憶部301へと送られて、記憶部301に記憶される。上述のように、第2画像は第1画像の一部に対応し、第1画像よりも小さい(すなわち、画像に含まれる基板9上の領域が小さい)ことが好ましい。
【0037】
上述の一次検査(ステップS13)において欠陥候補をそれぞれ含む複数の第1画像が検出された場合、ステップS14では、複数の第2画像が撮像画像から抽出される。また、一次検査において検出された1つの第1画像に複数の欠陥候補が含まれている場合、ステップS14では、当該複数の欠陥候補にそれぞれ対応する複数の第2画像が撮像画像から抽出されてもよく、あるいは、当該複数の欠陥候補を含む1つの第2画像が撮像画像から抽出されてもよい。
【0038】
その後、第2検査部305により、記憶部301に記憶された第2画像に対して二次検査(例えば、学習済みモデルを利用したAI検査)が行われ、第2画像に含まれる欠陥候補が欠陥であるか否かが判断される(ステップS15)。一次検査において検出された欠陥候補のうち、二次検査にて欠陥と判断されたものは、理想的には全て真欠陥(すなわち、基板9の品質上問題となる可能性が高い欠陥)であることが好ましい。ただし、実際には、二次検査にて欠陥と判断されたものには、真欠陥のみならず、ある程度の虚報(すなわち、品質上問題となる可能性が実質的にない欠陥)も含まれる可能性がある。
【0039】
ステップS15にて欠陥が検出された第2画像(すなわち、二次検査にて欠陥と判断された欠陥候補を含む第2画像)は、作業者によるベリファイ作業の対象画像としてディスプレイ35に表示される(ステップS16)。ベリファイ作業(すなわち、欠陥確認作業)を行う作業者は、ディスプレイ35に表示された第2画像を目視にて観察することにより、ベリファイ作業専用の装置を用いて実際の基板9上の欠陥を観察することなく、検出された欠陥を確認することができる。上述のように、第2画像はカラー画像であるため、作業者は、第2画像を観察することによってベリファイ作業を精度良く行うことができる。
【0040】
次に、第2コンピュータ4による上述の学習済みモデルの作成について説明する。図5は第2コンピュータ4の構成を示す図である。第2コンピュータ4は、第1コンピュータ3と略同様に、CPU41と、ROM42と、RAM43と、固定ディスク44と、ディスプレイ45と、入力部46と、読取装置47と、通信部48と、GPU49と、バス40とを含む一般的なコンピュータシステムの構成を有する。CPU41は、各種演算処理を行う。GPU49は、画像処理に関する各種演算処理を行う。ROM42は、基本プログラムを記憶する。RAM43は、各種情報を記憶する。固定ディスク44は、情報記憶を行う。ディスプレイ45は、画像等の各種情報の表示を行う。入力部46は、操作者からの入力を受け付けるキーボード46aおよびマウス46bを備える。読取装置47は、光ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク、メモリカード等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体82から情報の読み取りを行う。ディスプレイ45、キーボード46a、マウス46bおよび読取装置47は、インターフェイスI/Fを介してバス40に接続される。通信部48は、検査装置1の他の構成、および、外部の装置との間で信号を送受信する。バス40は、CPU41、GPU49、ROM42、RAM43、固定ディスク44、ディスプレイ45、入力部46、読取装置47および通信部48を接続する信号回路である。
【0041】
第2コンピュータ4では、事前に読取装置47を介して記録媒体82からプログラム821が読み出されて固定ディスク44に記憶されている。プログラム821はネットワークを介して固定ディスク44に記憶されてもよい。CPU41およびGPU49は、プログラム821に従ってRAM43や固定ディスク44を利用しつつ演算処理を実行する。CPU41およびGPU49は、第2コンピュータ4において演算部として機能する。CPU41およびGPU49以外に演算部として機能する他の構成が採用されてもよい。
【0042】
図6は、第2コンピュータ4がプログラム821に従って演算処理等を実行することにより実現される機能構成を示す図である。これらの機能構成には、記憶部401と、データセット作成部402と、学習部403とが含まれる。これらの機能の全部または一部は専用の電気回路により実現されてもよい。また、複数のコンピュータによりこれらの機能が実現されてもよい。図6に示す機能構成のうち、データセット作成部402および学習部403は、CPU41、GPU49、ROM42、RAM43、固定ディスク44およびこれらの周辺構成により実現される。また、記憶部401は、主としてRAM43および固定ディスク44により実現される。
【0043】
記憶部401は、学習済みモデルの作成に関する様々な情報等を記憶する。データセット作成部402は、学習済みモデルの作成に使用される学習用データセットを作成する。学習用データセットの詳細については、後述する。学習部403は、当該学習用データセットを用いた機械学習により、上述の第2検査部305(図3参照)における検査に利用される学習済みモデルを作成する。学習部403では、検査用の初期モデルに対して、基板9の一部を示すカラー画像と欠陥の有無との関係を機械学習させることにより、学習済みモデルが作成される。学習部403における機械学習は、例えば、ニューラルネットワークを用いたディープラーニングにより行われる。当該ディープラーニングによる学習は、例えば、ResNetを用いて行われる。なお、当該機械学習は、ディープラーニング以外の方法により行われてもよい。
【0044】
次に、検査装置1における学習済みモデルの作成の流れを、図7を参照しつつ説明する。学習済みモデルの作成は、上述のプログラム811およびプログラム821が第1コンピュータ3および第2コンピュータ4によって実行されることにより実施される。検査装置1では、まず、ステップS11と略同様に、撮像部21によって学習用基板が撮像され、学習用基板のカラー画像である学習用撮像画像が取得される(ステップS21)。学習用基板は、学習済みモデルの作成に使用される基板であり、学習用基板の表面上には、上述の基板9と略同様のパターンが形成されている。学習用基板は、学習済みモデル作成のための専用基板であってもよく、製品として製造された基板であってもよい。
【0045】
続いて、ステップS12と略同様に、画像変換部302(図3参照)により、学習用撮像画像がグレースケール画像に変換され、当該グレースケール画像から、それぞれが学習用基板の一部を示す部分画像である複数の第1学習用画像が取得される(ステップS22)。
【0046】
そして、ステップS13と略同様に、第1検査部303(図3参照)により、複数の第1学習用画像に対する上述の一次検査(例えば、ルールベース検査)が順次行われ、欠陥候補(以下、「学習用欠陥候補」とも呼ぶ。)が検出される(ステップS23)。ステップS23にて検出された学習用欠陥候補の学習用基板上における位置は、第1検査部303から記憶部301(図3参照)へと送られて、記憶部301に記憶される。
【0047】
次に、ステップS14と略同様に、画像抽出部304(図3参照)により、記憶部301に記憶された学習用基板上における学習用欠陥候補の位置に基づいて、カラー画像である上述の学習用撮像画像から、学習用欠陥候補を含む部分領域のカラー画像である第2学習用画像が抽出される(ステップS24)。第2学習用画像は、画像抽出部304から記憶部301へと送られて、記憶部301に記憶される。第2学習用画像は、第1学習用画像の一部に対応し、第1学習用画像よりも小さいことが好ましい。
【0048】
検査装置1では、例えば、複数の学習用基板に対して上述のステップS21~S24がそれぞれ行われ、複数の学習用基板から抽出された第2学習用画像の集合(以下、「第2学習用画像群」とも呼ぶ。)が、第1コンピュータ3から第2コンピュータ4へと送られて記憶部401に記憶される。
【0049】
第2コンピュータ4では、図6に示すデータセット作成部402により、第2学習用画像群がディスプレイ45等に表示され、作業者によって観察される。作業者は、各第2学習用画像に含まれる学習用欠陥候補が、検査装置1における上記二次検査にて検出されるべき欠陥(すなわち、真欠陥)であるか、検出される必要の無いもの(すなわち、虚報)であるかを判断し、各第2学習用画像を、欠陥を含む欠陥画像と、欠陥を含まない良品画像とに分類する。
【0050】
例えば、作業者は、第2学習用画像を目視して真欠陥が存在すると判断した場合、当該第2学習用画像を右クリックし、プルダウンメニューから「真欠陥」を選択することにより、当該第2学習用画像が欠陥画像フォルダに格納される。また、作業者が第2学習用画像を目視して真欠陥が存在しないと判断した場合、当該第2学習用画像を右クリックし、プルダウンメニューから「虚報」を選択することにより、当該第2学習用画像が良品画像フォルダに格納される。
【0051】
データセット作成部402では、第2学習用画像群の各第2学習用画像が、欠陥画像または良品画像であることを示す情報と紐付けられることにより、機械学習用の学習用データセットが作成される(ステップS25)。学習用データセットは、データセット作成部402から記憶部401へと送られ、記憶部401に記憶される。なお、学習用データセットには、欠陥画像と良品画像とに分類された第2学習用画像群以外に、他の学習用画像が含まれていてもよい。
【0052】
学習用データセットの作成が終了すると、学習部403は、当該学習用データセットを用いて、学習用基板のカラー画像と欠陥の有無との関係を検査用の初期モデルに機械学習させる。これにより、検査装置1において基板9を検査する際に利用される学習済みモデルが作成される(ステップS26)。当該学習済みモデルは、第2コンピュータ4から第1コンピュータ3へと送られて記憶部301(図3参照)に記憶される。
【0053】
なお、検査装置1では、ステップS22~S24における第1学習用画像の取得、第1学習用画像に対する一次検査、および、第2学習用画像の抽出は、必ずしも第1コンピュータ3において行われる必要はない。例えば、第1コンピュータ3の画像変換部302、第1検査部303および画像抽出部304と略同様の機能構成が、第2コンピュータ4または他のコンピュータにて実現され、第2コンピュータ4または当該他のコンピュータによってステップS22~S24が行われもよい。また、ステップS21における学習用撮像画像の取得も、検査装置1以外の装置にて行われてもよい。
【0054】
検査装置1では、基板9に対してステップS11~S15に示す検査が行われた後に、学習済みモデルに対する再学習が行われてもよい。当該再学習は、例えば、ステップS15の二次検査において欠陥と判断されたものの中に含まれる虚報の割合が、ある程度以上高い場合等に行われる。
【0055】
図8は、学習済みモデルに対する再学習の流れを示す図である。学習済みモデルの再学習が行われる場合、例えば、第2検査部305(図3参照)によって欠陥の有無が判定された基板9の第2画像群が、図6に示す第2コンピュータ4のディスプレイ45に表示される。当該第2画像群は、例えば、第2検査部305によって欠陥を有すると判断された第2画像のみで構成される。あるいは、当該第2画像群は、第2検査部305によって欠陥を有すると判断された第2画像、および、第2検査部305によって欠陥を有しないと判断された第2画像の双方を含んでいてもよい。
【0056】
続いて、ディスプレイ45に表示された検査済みの上記第2画像群を作業者が目視にて観察し、作業者の経験等に基づいて欠陥の有無(すなわち、真欠陥であるか、虚報であるか)を判断して再分類する。そして、データセット作成部402(図6参照)において、作業者によって再分類された第2画像群の各第2画像が、欠陥画像または良品画像であることを示す情報と紐付けられることにより、追加学習用データセットが作成される(ステップS31)。追加学習用データセットは、データセット作成部402から記憶部401へと送られ、記憶部401に記憶される。
【0057】
その後、学習部403において、追加学習用データセットを用いた機械学習により、学習済みモデルに対する再学習が行われる(ステップS32)。ステップS32における機械学習は、ステップS26における機械学習と略同様の方法にて行われる。検査装置1では、再学習が行われた学習済みモデルを用いてステップS11~S15に示す検査が行われることにより、ステップS15の二次検査において欠陥と判断されたものの中に含まれる虚報の割合が低減され、欠陥検査の精度が向上される。なお、上述の第2画像群の再分類は、必ずしも作業者の経験等に基づいて行われる必要はなく、ステップS15における二次検査(すなわち、再学習前の学習済みモデルによるAI検査)とは異なる他の基準にて行われればよい。
【0058】
検査装置1では、上述の一次検査(ステップS13)において行われるルールベース検査は、比較検査であってもよい。一次検査において比較検査が行われる場合、例えば、第1画像が、記憶部301に記憶されている参照画像(すなわち、良品パターンを示すグレースケール画像)と比較され、対応する領域において差異が大きい場合、当該領域が欠陥を含むと判定される。また、一次検査では、ルールベース検査に加えて、あるいは、ルールベース検査に代えて、他の手法による検査が第1画像に対して行われてもよい。当該他の手法による検査としては、例えばAI検査が挙げられる。一次検査においてAI検査が行われる場合、当該AI検査において用いられる学習済みモデルは、グレースケール画像である第1画像、または、当該第1画像の一部である部分画像を学習用データセットとして用いたディープラーニング等の機械学習により作成される。
【0059】
上述の二次検査(ステップS15)では、AI検査に加えて、あるいは、AI検査に代えて、他の手法による検査が第2画像に対して行われてもよい。当該他の手法による検査としては、例えば、ルールベース検査が挙げられる。二次検査においてルールベース検査が行われる場合、カラー画像である第2画像に対するデザインルールに係る情報や、良品パターンを示すカラー画像である参照画像が用いられる。
【0060】
二次検査における上記他の手法による検査は、例えば、予め設定された登録色に基づく色検査であってもよい。二次検査において色検査が行われる場合、例えば、ステップS13の一次検査において検出される欠陥候補のうち、真欠陥ではないもの(以下、「偽欠陥」とも呼ぶ。)の第2画像における色に関する情報が、登録色に係る情報として記憶部301に予め記憶されている。偽欠陥とは、例えば、基板9上に付着している除去可能な異物、および、基板9上に生じている許容範囲内の錆等であり、二次検査において欠陥として検出する必要のないものである。
【0061】
二次検査では、当該偽欠陥の登録色に係る情報と、一次検査にて検出された欠陥候補の第2画像における色情報とが比較され、当該欠陥候補が偽欠陥であるか否かが判断される。そして、一次検査にて検出された欠陥候補のうち、偽欠陥ではない(すなわち、真欠陥である)と判断されたもののみが、作業者によるベリファイ作業に送られる。なお、二次検査において行われる色検査は、上記例には限定されず、他の方法により行われる色検査であってもよい。
【0062】
以上に説明したように、表面上にパターンを有する基板9を検査する検査装置1は、第1検査部303と、第2検査部305とを備える。第1検査部303は、基板9のグレースケール画像である第1画像に対して一次検査を行って欠陥候補を検出する。第2検査部305は、基板9のうち当該欠陥候補を含む部分領域のカラー画像である第2画像に対して二次検査を行って、当該欠陥候補が欠陥であるか否かを判断する。このように、一次検査においてグレースケール画像から欠陥候補を検出しておくことにより、カラー画像を用いた高精度な二次検査に要する検査時間を短くすることができる。すなわち、検査装置1では、検査時間の増大を抑制しつつ、基板9上の欠陥を精度良く検出することができる。その結果、作業者によるベリファイ作業(すなわち、欠陥確認作業)の対象となる欠陥の数を低減することができ、ベリファイ作業に要する時間を短縮することができる。
【0063】
検査装置1では、第2検査部305によって欠陥が検出された第2画像(すなわち、二次検査にて欠陥と判断された欠陥候補を含む第2画像)が、ディスプレイ35に表示されることが好ましい。この場合、作業者は、ディスプレイ35に表示された第2画像を目視にて観察することにより、ベリファイ作業専用の装置を用いて実際の基板9上の欠陥を観察することなく、ベリファイ作業を行うことができる。したがって、ベリファイ作業専用の装置を省略することができるとともに、ベリファイ作業に要する時間をさらに短縮することもできる。
【0064】
上述のように、二次検査は、機械学習により作成された学習済みモデルを利用したAI検査を含むことが好ましい。これにより、ルールベース検査等では良否判断が難しい欠陥候補についても比較的精度良く良否判断を行うことができるため、二次検査における欠陥検出の精度を向上させることができる。また、この場合、カラー画像を学習用データセットとして用いた学習済みモデル(すなわち、学習用データセットの作成時における欠陥の有無の判断精度が高い学習済みモデル)によってAI検査を行うことができるため、二次検査における欠陥検出の精度をさらに向上させることができる。
【0065】
上述のように、検査装置1は、学習部403をさらに備えることが好ましい。学習部403は、学習用基板における学習用欠陥候補を含む部分領域のカラー画像の集合から作成した学習用データセットを用いて機械学習を行うことにより、学習用基板のカラー画像と欠陥の有無との関係を初期モデルに学習させて学習済みモデルを作成する。これにより、検査装置1において学習済みモデルを作成することができるため、学習済みモデルを作成するための他の装置を準備する必要がない。
【0066】
また、上記学習用欠陥候補は、学習用基板のグレースケール画像に対して上述の一次検査を行うことにより検出される。このように、学習用欠陥候補の検出を、基板9の検査における欠陥候補の検出と同じ方法によって行うことにより、学習用データセットに含められる学習用欠陥候補を、検査装置1における基板9の二次検査に適した学習用欠陥候補に絞ることができる。その結果、基板9の二次検査に適した学習用データセットを作成することができる。
【0067】
上述のように、学習部403は、追加学習用データセットを用いた機械学習により、学習済みモデルに対する再学習を行うことが好ましい。当該追加学習用データセットは、第2検査部305により欠陥の有無が判定された第2画像について、他の基準にて欠陥の有無が判断されて再分類されることにより作成される。これにより、二次検査における欠陥検出の精度を向上させることができる。
【0068】
上述のように、二次検査は、予め設定された登録色に基づく色検査を含むことも好ましい。この場合も、二次検査における欠陥検出の精度を向上させることができる。
【0069】
上述のように、一次検査はルールベース検査を含むことが好ましい。基板9の検査では、様々な方法のルールベース検査が公知であるため、一次検査における検査方法の選択の自由度が高くなる。したがって、検査装置1において行われる検査の目的に合わせて、適切な方法のルールベース検査を一次検査として採用することができる。その結果、一次検査において、検査目的に適合した欠陥候補を検出することができるため、二次検査における欠陥検出の精度を向上させることができる。
【0070】
上述のように、検査装置1は、撮像部21と、画像変換部302と、画像抽出部304とをさらに備えることが好ましい。撮像部21は、基板9を撮像してカラー画像である撮像画像を取得する。画像変換部302は、当該撮像画像をグレースケール画像に変換して上述の第1画像を取得する。画像抽出部304は、基板9上における欠陥候補の位置に基づいて当該撮像画像から第2画像を抽出する。これにより、1つの撮像画像から第1画像および第2画像の双方を取得することができるため、検査装置1における基板9の検査を簡素化することができる。また、検査装置1において、グレースケール画像である第1画像用の撮像部、および、カラー画像である第2画像用の撮像部の双方を設ける必要が無いため、検査装置1の構造を簡素化することもできる。
【0071】
上述のように、第1画像は、基板9の一部を示すグレースケール画像であり、第2画像は、第1画像の一部に対応するカラー画像であることが好ましい。これにより、第2画像のデータ量を小さくすることができるため、二次検査に要する時間をさらに短くすることができる。
【0072】
表面上にパターンを有する基板9を検査する上述の検査方法は、基板9のグレースケール画像である第1画像に対して一次検査を行って欠陥候補を検出する工程(ステップS13)と、基板9のうち当該欠陥候補を含む部分領域のカラー画像である第2画像に対して二次検査を行って、当該欠陥候補が欠陥であるか否かを判断する工程(ステップS15)と、を備える。これにより、上述のように、検査時間の増大を抑制しつつ、基板9上の欠陥を精度良く検出することができる。
【0073】
上述の検査装置1および検査方法では、様々な変更が可能である。
【0074】
第2画像は、必ずしも第1画像の一部に対応するカラー画像である必要はなく、例えば、基板9上において第1画像と同じ領域を示すカラー画像であってもよい。あるいは、第2画像は、基板9上において第1画像よりも大きい領域を示すカラー画像であってもよい。
【0075】
第1画像は、必ずしも、撮像部21によって撮像されたカラー画像である上述の撮像画像から取得される必要はない。例えば、検査装置1では、グレースケール画像用の他の撮像部が撮像部21とは別に設けられ、当該他の撮像部によって撮像されたグレースケール画像から第1画像が取得されてもよい。
【0076】
検査装置1では、第1コンピュータ3による各種機能(すなわち、記憶部301、画像変換部302、第1検査部303、画像抽出部304、第2検査部305および制御部306)と、第2コンピュータ4による各種機能(すなわち、記憶部401、データセット作成部402および学習部403)とは、例えば、1台のコンピュータにより実現されてもよい。
【0077】
検査装置1では、上述の学習済みモデルに対する再学習は、必ずしも行われる必要はない。
【0078】
また、検査装置1では、当該学習済みモデルの作成も、必ずしも行われる必要はなく、他の装置において作成された学習済みモデルを用いて、上述のAI検査が行われてもよい。この場合、検査装置1では、第2コンピュータ4は省略されてもよい。
【0079】
検査装置1では、撮像部21、ステージ22およびステージ移動機構23は省略されてもよい。この場合、他の装置にて撮像された基板9の撮像画像を用いて、検査装置1における基板9の検査が行われる。
【0080】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0081】
1 検査装置
9 基板
21 撮像部
302 画像変換部
303 第1検査部
304 画像抽出部
305 第2検査部
403 学習部
S11~S16,S21~S26,S31~S32 ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8