(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110458
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】電力変換装置及び直流電力供給システム
(51)【国際特許分類】
H02J 1/12 20060101AFI20240808BHJP
H02J 1/00 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
H02J1/12
H02J1/00 301B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014995
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土井 昌志
(72)【発明者】
【氏名】徳崎 裕幸
【テーマコード(参考)】
5G165
【Fターム(参考)】
5G165BB04
5G165CA04
5G165DA01
5G165EA02
5G165HA01
5G165LA03
(57)【要約】
【課題】負荷変動時にも出力電流又は出力電力のオーバーシュートを抑制できる垂下制御を提供する。
【解決手段】直流電源が接続され、直流電力を昇圧、昇降圧又は降圧して出力し、他の直流電源が接続され、直流電力を昇圧、昇降圧又は降圧する他の電力変換装置と、並列して負荷に電力線を介して接続される電力変換装置であって、前記電力変換装置を流れる電流又は電力のいずれかである物理量を取得する物理量取得部と、前記電力線の電圧を取得する電圧取得部と、前記電圧を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記物理量と前記電圧との関係を規定する垂下特性に応じて前記電力線の電圧を垂下させる垂下制御を行う垂下制御部と、前記垂下特性の補正を、前記垂下特性の前記物理量に対する傾きの補正と、前記垂下特性における所定の前記物理量に対する前記電圧の値である切片の補正とに分配する補正分配部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源が接続され、直流電力を昇圧、昇降圧又は降圧して出力し、
他の直流電源が接続され、直流電力を昇圧、昇降圧又は降圧する他の電力変換装置と、並列して負荷に電力線を介して接続される電力変換装置であって、
前記電力変換装置を流れる電流又は電力のいずれかである物理量を取得する物理量取得部と、
前記電力線の電圧を取得する電圧取得部と、
前記電圧を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記物理量と前記電圧との関係を規定する垂下特性に応じて前記電力線の電圧を垂下させる垂下制御を行う垂下制御部と、
前記垂下特性の補正を、前記垂下特性の前記物理量に対する傾きの補正と、前記垂下特性における所定の前記物理量に対する前記電圧の値である切片の補正とに分配する補正分配部と、
を備えたことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記他の電力変換装置を流れる前記物理量を、該他の電力変換装置それぞれの定格によって除した他の負荷率を取得する他装置負荷率取得部を備え、
前記補正分配部は、
前記他の負荷率と、前記物理量を前記電力変換装置の前記物理量の定格によって除した負荷率との和を、前記電力変換装置及び前記他の電力変換装置の台数の和で除した、システム平均負荷率に応じて、前記垂下特性の前記物理量に対する前記傾きの補正と、前記垂下特性の前記切片の補正とに分配することを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記補正分配部は、所定の閾値と、前記システム平均負荷率との比較に基づいて、前記垂下特性の前記物理量に対する前記傾きの補正と、前記垂下特性の前記切片の補正とに分配することを特徴とする請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記補正分配部は、前記システム平均負荷率に応じて、前記垂下特性の前記物理量に対する傾きの補正と、前記垂下特性の前記切片の補正とに分配することを特徴とする請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記垂下特性の補正の範囲を制限する補正範囲制限部を備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
それぞれに直流電源が接続され、直流電力を昇圧、昇降圧又は降圧して負荷に供給する複数の電力変換装置を、該負荷に対して並列に接続した直流電力供給システムであって、
前記複数の電力変換装置は、第1種電力変換装置を含み、
前記第1種電力変換装置は、
前記第1種電力変換装置を流れる電流又は電力のいずれかである第1種物理量を取得する物理量取得部と、
前記第1種電力変換装置と前記負荷を接続する電力線の電圧を取得する電圧取得部と、
前記電圧を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記第1種物理量と前記電圧との関係を規定する垂下特性に応じて前記電力線の電圧を垂下させる垂下制御を行う垂下制御部と、
前記垂下特性の補正を、前記垂下特性の前記第1種物理量に対する傾きの補正と、前記垂下特性における所定の前記第1種物理量に対する前記電圧の値である切片の補正とに分配する補正分配部と、
を含むことを特徴とする直流電力供給システム。
【請求項7】
前記第1種電力変換装置は、
前記直流電力供給システムに含まれる他の電力変換装置を流れる電流又は電力のいずれかを、該他の電力変換装置それぞれの定格によって除した他の負荷率を取得する他装置負荷率取得部を備え、
前記補正分配部は、
前記他の負荷率と、前記第1種物理量を前記第1種電力変換装置の前記第1種物理量の定格によって除した負荷率の和を、前記電力変換装置及び前記他の電力変換装置の台数の和で除した、システム平均負荷率に応じて、前記垂下特性の前記第1種物理量に対する前記傾きの補正と、前記垂下特性の前記切片の補正とに分配することを特徴とする請求項6に記載の直流電力供給システム。
【請求項8】
前記補正分配部は、所定の閾値と、前記システム平均負荷率との比較に基づいて、前記垂下特性の前記第1種物理量に対する前記傾きの補正と、前記垂下特性の前記切片の補正とに分配することを特徴とする請求項7に記載の直流電力供給システム。
【請求項9】
前記補正分配部は、前記システム平均負荷率に応じて、前記垂下特性の前記第1種物理量に対する前記傾きの補正と、前記垂下特性の前記切片の補正とに分配することを特徴とする請求項7に記載の直流電力供給システム。
【請求項10】
前記制御部は、
前記垂下特性の補正の範囲を制限する補正範囲制限部を備えたことを特徴とする請求項6乃至9のいずれか1項に記載の直流電力供給システム。
【請求項11】
前記複数の電力変換装置は、第2種電力変換装置を含み、
前記第2種電力変換装置は、
前記第2種電力変換装置を流れる電流又は電力のいずれかである第2種物理量を取得する第2種物理量取得部と、
前記第2種電力変換装置と前記負荷を接続する第2種電力線の電圧である第2種電圧を取得する第2種電圧取得部と、
前記第2種電圧を制御する第2種制御部と、
を備え、
前記第2種制御部は、
前記第2種物理量と前記第2種電圧との関係を規定する第2種垂下特性に応じて前記第2種電圧を垂下させる第2種垂下制御を行う第2種垂下制御部と、
を含み、
前記第2種垂下特性の補正を、前記第2種垂下特性の前記第2種物理量に対する傾きの補正と、前記第2種垂下特性における所定の前記第2種物理量に対する前記第2種電圧の値である切片の補正とに分配する補正分配部を含まないことを特徴とする請求項6乃至9のいずれか1項に記載の直流電力供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置及び直流電力供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蓄電池を電力源としたコンバータを複数台用いて直流電力を供給する直流電力供給システムの並列運転制御には、大きくマスタースレーブ方式と垂下制御方式がある。
このうち、垂下制御方式は、各コンバータの出力電圧の制御目標値に、出力電流による垂下特性を持たせることで、並列接続される電源の数が増減しても、負荷電流と出力電流が自律的に釣り合う拡張性の高いシステムを設計できるが、マスタースレーブ方式に比べ、出力電圧の精度が低く、また、蓄電池の放電電流を任意の値に設定することができない。
【0003】
これに対して、非特許文献1記載の技術では、各コンバータの負荷率から垂下特性の傾きを補正する制御を付与することで、各コンバータの放電電流の平準化を実現している。しかし、垂下特性の傾きのみを補正する方式であるため、垂下特性の切片に誤差がある場合、軽負荷時に垂下特性の傾きを過剰に補正してしまうことで、負荷変動時の垂下特性が揃わず、出力電流のオーバーシュートが発生してしまうという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】IEEE Transaction on Power Electronics, Vol. 31, No. 9, Sep. 2016 “An Improved Distributed Secondary Control Method for DC Microgrids With Enhanced Dynamic Current Sharing Performance”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、負荷変動時にも出力電流又は出力電力のオーバーシュートを抑制できる垂下制御技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明は、
直流電源が接続され、直流電力を昇圧、昇降圧又は降圧して出力し、
他の直流電源が接続され、直流電力を昇圧、昇降圧又は降圧する他の電力変換装置と、並列して負荷に電力線を介して接続される電力変換装置であって、
前記電力変換装置を流れる電流又は電力のいずれかである物理量を取得する物理量取得部と、
前記電力線の電圧を取得する電圧取得部と、
前記電圧を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記物理量と前記電圧との関係を規定する垂下特性に応じて前記電力線の電圧を垂下させる垂下制御を行う垂下制御部と、
前記垂下特性の補正を、前記垂下特性の前記物理量に対する傾きの補正と、前記垂下特性における所定の前記物理量に対する前記電圧の値である切片の補正とに分配する補正分
配部と、
を備えたことを特徴とする。
【0008】
電圧等の検出バラつきにより、垂下特性の切片にバラつきが生じる場合に、垂下特性の補正を傾きだけでなく、傾きの補正と切片の補正に分配して行うことにより、垂下特性の傾きの過剰な補正が抑制される。これにより、負荷に対して複数の電力変換装置を並列して接続しても、負荷変動による出力電流又は出力電力のオーバーシュートを抑制することができる。
【0009】
また、本発明において、
前記他の電力変換装置を流れる前記物理量を、該他の電力変換装置それぞれの定格によって除した他の負荷率を取得する他装置負荷率取得部を備え、
前記補正分配部は、
前記他の負荷率と、前記物理量を前記電力変換装置の前記物理量の定格によって除した負荷率との和を、前記電力変換装置及び前記他の電力変換装置の台数の和で除した、システム平均負荷率に応じて、前記垂下特性の前記物理量に対する前記傾きの補正と、前記垂下特性の前記切片の補正とに分配するようにしてもよい。
【0010】
このように、当該電力変換装置と、これと並列運転される他の電力変換装置とを含む複数の電力変換装置の平均の負荷率であるシステム平均負荷率に応じて、垂下特性の傾きの補正と切片の補正とに分配することにより、各電力変換装置の垂下特性を揃えることができるので、負荷に対してこれらの複数の電力変換装置を並列して接続しても、負荷変動による出力電流又は出力電力のオーバーシュートを抑制することができる。
【0011】
また、本発明において、
前記補正分配部は、所定の閾値と、前記システム平均負荷率との比較に基づいて、前記垂下特性の前記物理量に対する前記傾きの補正と、前記垂下特性の前記切片の補正とに分配するようにしてもよいし、前記補正分配部は、前記システム平均負荷率に応じて、前記垂下特性の前記物理量に対する傾きの補正と、前記垂下特性の前記切片の補正とに分配するようにしてもよく、これらを組み合わせて、垂下特性の傾きの補正と、切片の補正とに分配するようにしてもよい。
【0012】
また、本発明において、
前記制御部は、
前記垂下特性の補正の範囲を制限する補正範囲制限部を備えるようしてもよい。
【0013】
このように、垂下特性の範囲を制限する補正範囲制限部を設けることにより、過剰な補正を抑制することができる。
【0014】
また、本発明は、
それぞれに直流電源が接続され、直流電力を昇圧、昇降圧又は降圧して負荷に供給する複数の電力変換装置を、該負荷に対して並列に接続した直流電力供給システムであって、
前記複数の電力変換装置は、第1種電力変換装置を含み、
前記第1種電力変換装置は、
前記第1種電力変換装置を流れる電流又は電力のいずれかである第1種物理量を取得する物理量取得部と、
前記第1種電力変換装置と前記負荷を接続する電力線の電圧を取得する電圧取得部と、
前記電圧を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記第1種物理量と前記電圧との関係を規定する垂下特性に応じて前記電力線の電圧を垂下させる垂下制御を行う垂下制御部と、
前記垂下特性の補正を、前記垂下特性の前記第1種物理量に対する傾きの補正と、前記垂下特性における所定の前記第1種物理量に対する前記電圧の値である切片の補正とに分配する補正分配部と、
を含むことを特徴とする。
【0015】
電圧等の検出バラつきにより、垂下特性の切片にバラつきが生じる場合に、垂下特性の補正を傾きだけでなく、傾きの補正と切片の補正に分配して行うことにより、垂下特性の傾きの過剰な補正が抑制される。これにより、第1種電力変換装置を含む複数の電力変換装置を負荷に対して並列に接続する直流電力供給システムにおいて、負荷変動時の出力電流又は出力電力のオーバーシュートを抑制することができる。
【0016】
また、本発明において、
前記第1種電力変換装置は、
前記直流電力供給システムに含まれる他の電力変換装置を流れる電流又は電力のいずれかを、該他の電力変換装置それぞれの定格によって除した他の負荷率を取得する他装置負荷率取得部を備え、
前記補正分配部は、
前記他の負荷率と、前記第1種物理量を前記第1種電力変換装置の前記第1種物理量の定格によって除した負荷率の和を、前記電力変換装置及び前記他の電力変換装置の台数の和で除した、システム平均負荷率に応じて、前記垂下特性の前記第1種物理量に対する前記傾きの補正と、前記垂下特性の前記切片の補正とに分配するようにしてもよい。
【0017】
このように、当該第1種電力変換装置と、これと並列運転される他の電力変換装置とを含む複数の電力変換装置の平均の負荷率であるシステム平均負荷率に応じて、垂下特性の傾きの補正と切片の補正とに分配することにより、各電力変換装置の垂下特性を揃えることができるので、負荷に対してこれらの複数の電力変換装置を並列して接続する直流電力供給システムにおいて、負荷変動による出力電流又は出力電力のオーバーシュートを抑制することができる。
【0018】
また、本発明において、
前記補正分配部は、所定の閾値と、前記システム平均負荷率との比較に基づいて、前記垂下特性の前記第1種物理量に対する前記傾きの補正と、前記垂下特性の前記切片の補正とに分配するようにしてもよいし、前記補正分配部は、前記システム平均負荷率に応じて、前記垂下特性の前記物理量に対する前記傾きの補正と、前記垂下特性の前記切片の補正とに分配するようにしてもよく、これらを組み合わせて、垂下特性の傾きの補正と、切片の補正とに分配するようにしてもよい。
【0019】
また、本発明において、
前記制御部は、
前記垂下特性の補正の範囲を制限する補正範囲制限部を備えるようにしてもよい。
【0020】
このように、垂下特性の範囲を制限する補正範囲制限部を設けることにより、過剰な補正を抑制することができる。
【0021】
また、本発明において、
前記複数の電力変換装置は、第2種電力変換装置を含み、
前記第2種電力変換装置は、
前記第2種電力変換装置を流れる電流又は電力のいずれかである第2種物理量を取得す
る第2種物理量取得部と、
前記第2種電力変換装置と前記負荷を接続する第2種電力線の電圧である第2種電圧を取得する第2種電圧取得部と、
前記第2種電圧を制御する第2種制御部と、
を備え、
前記第2種制御部は、
前記第2種物理量と前記第2種電圧との関係を規定する第2種垂下特性に応じて前記第2種電圧を垂下させる第2種垂下制御を行う第2種垂下制御部と、
を含み、
前記第2種垂下特性の補正を、前記第2種垂下特性の前記第2種物理量に対する傾きの補正と、前記第2種垂下特性における所定の前記第2種物理量に対する前記第2種電圧の値である切片の補正とに分配する補正分配部を含まないようにしてもよい。
【0022】
垂下特性の補正を傾きの補正と切片の補正とに分配して実行する補正分配部を備える第1種電力変換装置と、このような補正分配部を備えない第2種電力変換装置が、並列して負荷に接続される直流電力供給システムにおいおいても、負荷変動による出力電流又は出力電力のオーバーシュートを抑制することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、負荷変動時にも出力電流又は出力電力のオーバーシュートを抑制できる垂下制御技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施例1に係る直流電力供給システムの概略構成を示す図である。
【
図2】実施例1に係るドループ特性補正演算部の概略構成を示す図である。
【
図3】実施例1に係る補正分配演算部における補正値の分配方法を説明する図である。
【
図4】実施例1に係る補正範囲の制限範囲について説明する図である。
【
図5】先行技術に係る直流電力供給システムにおける垂下特性補正を説明する図である。
【
図6】実施例1に係る直流電力供給システムにおける垂下特性補正を説明する図である。
【
図7】先行技術及び実施例1に係る垂下特性補正による効果を説明する図である。
【
図8】実施例2に係るドループ特性補正演算部の概略構成を示す図である。
【
図9】実施例2に係る補正分配演算部における補正値の分配方法を説明する図である。
【
図10】先行技術及び実施例2に係る垂下特性補正による効果を説明する図である。
【
図11】先行技術及び実施例2に係る垂下特性補正による効果を比較して説明する図である。
【
図12】実施例3に係るドループ特性補正演算部の概略構成を示す図である。
【
図13】実施例3に係る補正分配演算部における補正値の分配方法を説明する図である。
【
図14】実施例4に係るドループ特性補正演算部の概略構成を示す図である。
【
図15】実施例4に係る補正分配演算部における補正値の分配方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
〔適用例〕
以下、本発明の適用例について、図面を参照しつつ説明する。
【0026】
図1は、本発明の適用例に係る直流電力供給システム100の概略構成を示す図である。直流電力供給システム100は、蓄電池13から放電される直流電力の電圧を昇圧、昇降圧又は降圧して出力する第1DC-DCコンバータ11と、蓄電池23から放電される直流電力の電圧を昇圧、昇降圧又は降圧して出力する第2DC-DCコンバータ21を備え、負荷3に対して並列に接続された第1DC-DCコンバータ11、第2DC-DCコンバータ21を並列運転して負荷3に直流電力を供給する。
【0027】
第2DC-DCコンバータ21は、制御部22、第2DC-DCコンバータ出力電圧検出回路24、第2DC-DCコンバータ出力電流検出回路25、通信部26を備える。制御部22は、ドループ特性補正演算部220、垂下ゲイン(kd2)乗算器225、補償器226、加え合わせ点227、228を含み、ドループ特性補正演算部220は、補正値分配演算部221、ドループ傾き補正演算部222、ドループ切片補正演算部223及び補正範囲制限部224を含む。
【0028】
第2DC-DCコンバータ21の制御部22では、第2DC-DCコンバータ出力電流検出回路25によって検出される出力電流io1に基づいて出力電圧vo2を垂下させる垂下制御を行う。本適用例に係る垂下制御では、直流電力供給システム100を構成する第1DC-DCコンバータ11及び第2DC-DCコンバータ21の出力電流値io1及びio2をそれぞれの定格電流値によって規格化された出力電流値に基づいて、垂下特性の補正を、垂下特性の傾きと切片の少なくともいずれかに分配して行う。
【0029】
図3は、垂下特性の傾き補正と切片補正の少なくともいずれかに分配して、垂下特性の補正を行う方法の例を示す。
図3では、傾き補正分配率を1点鎖線、切片補正分配率を実線で示している。平均負荷率i
avg_puが切替閾値α
thr以下である場合には、切片補正分配率が100%で傾き補正分配率が0%であり、垂下特性の傾きのみが補正され、切片は補正されない。そして、平均負荷率i
avg_puが切替閾値α
thrを超えた場合には、傾き補正分配率が100%で切片補正分配率が0%であり、垂下特性の切片のみが補正され、傾きは補正されない。
【0030】
図2は、ドループ特性補正演算部220の概略構成を示す。
図2では、n(n≧2)台のDC-DCコンバータを含む一般的な直流電力供給システムの例を示す。必要に応じて、n=2である直流電力供給システムに該当する
図1に示した直流電力供給システム100を例として説明する。ここでは、i
j_puは、第jDC-DCコンバータ(1≦j≦n)の規格化された出力電流値(負荷率ということもできる。)、すなわち、第jコンバータの出力電流検出値io
jを、第jDC-DCコンバータの定格出力電流値I
jで除した値io
j/I
jを示す。加算器221aでは、直流電力供給システムを構成するすべてのDC-DCコンバータの負荷率i
j_pu(1≦j≦n)の総和を算出する。
【0031】
負荷率の総和に対しては、ゲイン(1/n)乗算器221bにおいて、1/nが乗算され、DC-DCコンバータ1台当たりの平均負荷率iavg_puが算出される。加え合わせ点221cでは、平均負荷率iavg_puから、当該DC-DCコンバータ(ここでは第2DC-DCコンバータ21)の負荷率ij_puが減算され、平均負荷率と負荷率との差分iavg_pu-ij_puが算出され、条件分岐ブロック221dに入力される。
【0032】
条件分岐ブロック221dでは、平均負荷率iavg_puと切替閾値αthrとの比較に基づいて、ドループ特性の切片又は傾きのいずれを補正するかを切り替える。ここでは、平均負荷率iavg_puが切替閾値αthrより大きい、すなわち、iavg_pu>αthrである場合には、傾き補正用差分Δij_Rを、平均負荷率と負荷率との差
分iavg_pu-ij_puとし、切片補正用差分Δij_Vを0とし、それ以外(iavg_pu≦αthr)の場合には、傾き補正用差分Δij_Rを0とし、切片補正用差分Δij_Vを平均負荷率と負荷率との差分iavg_pu-ij_puとする。
【0033】
条件分岐ブロック221dで演算された傾き補正用差分Δij_Rがドループ傾き補正演算部222に入力され、また、条件分岐ブロック221dで演算された切片補正用差分Δij_Vがドループ切片補正演算部223に入力される。ドループ傾き補正演算部222では、PI補償器222aにおいて、入力された傾き補正用差分Δij_Rに対してPI制御が施され、垂下特性の傾き補正値ΔRjが算出され、垂下ゲイン(kd2)乗算器225に入力される。ドループ切片補正演算部223では、PI補償器223aにおいて、入力された切片補正用差分Δij_Vに対してPI制御が施され、垂下特性の切片補正値ΔVjが算出され、加え合わせ点227に入力される。
【0034】
このような負荷特性の補正を行う直流電力供給システム100では、例えば、検出バラつき等により電圧を低く検出する第1DC-DCコンバータ11の垂下特性R1と、電圧を高く検出する第2DC-DCコンバータ21の垂下特性R2について、切片及び傾きに分配して垂下特性の補正が行われる。このようにして補正された垂下特性を
図6(B)に示す。垂下特性R1の補正された垂下特性R12を太破線R12で示し、垂下特性R2の補正された垂下特性R22を太実線R22で示す。例えば、第1DC-DCコンバータ11が垂下特性R1及びR12に従って垂下制御され、第2DC-DCコンバータ21が垂下特性R2及びR22に従って垂下制御されるとする。黒丸P1で示す軽負荷において補正された垂下特性R12及びR22に従って制御される直流電力供給システム100では、負荷変動が生じた場合でも、第1DC-DCコンバータ11の出力電流が白丸P7に対応するi
P7となり、第2DC-DCコンバータ21の出力電流が白丸P6に対応するi
P6となるので、電流アンバランス量を抑制することができる。
【0035】
図7(B)は、上述の直流電力供給システム100における第1DC-DCコンバータ11の平均出力電流値i
bus_ave1及び第2DC-DCコンバータ21の平均出力電流値i
bus_ave2を示す。
図7(B)では、横軸に時間[s]、縦軸に電流[A]を示す。
図7(B)に示されるように、平均出力電流が0に近いところにおいても電流アンバランスが抑制されており、負荷変動による第1DC-DCコンバータ11の平均出力電流値i
bus_ave1のオーバーシュートも抑制される。また、第1DC-DCコンバータ11の平均出力電流値i
bus_ave1及び第2DC-DCコンバータ21の平均出力電流値i
bus_ave2がほぼ重なって示されていることからも、負荷特性の補正による電流アンバランスが抑制される。
【0036】
〔実施例1〕
以下では、本発明の実施例1に係る直流電力供給システム100について、図面を用いて、より詳細に説明する。ただし、この実施例に記載されている装置及びシステムの構成は各種条件により適宜変更されるべきものである。すなわち、この発明の範囲を以下の実施例に限定する趣旨のものではない。
【0037】
図1は、本発明の実施例1に係る直流電力供給システム100を構成する第1DC-DCコンバータ11と第2DC-DCコンバータ21及び制御部22の概略構成を示す図である。第1DC-DCコンバータ11の制御部も第2DC-DCコンバータ21の制御部22と同様の構成を有するが説明は省略する。
図1では、説明のために第2DC-DCコンバータ21と制御部22を分けて記載しているが、具体的な装置としては、第2DC-DCコンバータ21の筐体に制御部22が収容される(以下に説明するDC-DCコンバータについても同様である。)。ここでは、直流電力供給システム100が本発明の直流電力供給システムに相当し、第1DC-DCコンバータ11及び第2DC-DCコンバー
タ21が本発明の電力変換装置及び第1種電力変換装置に相当する。また、第2DC-DCコンバータ21を本発明の電力変換装置に相当するとしたときに、第1DC-DCコンバータ11が本発明の他の電力変換装置に相当し、第1DC-DCコンバータ11を本発明の電力変換装置に相当するとしたときに、第2DC-DCコンバータ21が本発明の他の電力変換装置に相当する。
【0038】
直流電力供給システム100は、蓄電池13から放電される直流電力の電圧を昇圧、昇降圧又は降圧して出力する第1DC-DCコンバータ11と、蓄電池23から放電される直流電力の電圧を昇圧、昇降圧又は降圧して出力する第2DC-DCコンバータ21とを備える。直流電力供給システム100では、2台の第1DC-DCコンバータ11及び第2DC-DCコンバータ21は、DCバスDCbを介して負荷3に対して並列に接続され、これらを並列運転することにより負荷3に直流電力を供給する。
図1では、2台の蓄電池13及び23にそれぞれ接続された第1DC-DCコンバータ11及び第2DC-DCコンバータ21を含む直流電力供給システム100を示しているが、直流電力供給システム100は、並列接続された3台以上の蓄電池及びDC-DCコンバータを含んでもよく、直流電源として、種々の分散型電源を採用することができ、蓄電池に限られない。ここでは、蓄電池13及び23が本発明の直流電源に相当する。ここでは、第1DC-DCコンバータ11及び第2DC-DCコンバータ21が、本発明の複数の電力変換装置に相当する。
【0039】
第1DC-DCコンバータ11は、第1DC-DCコンバータ11の出力線PwL1及びDCバスDCbを介して負荷3に接続され、第2DC-DCコンバータ21は、第2DC-DCコンバータ21の出力線PwL2及びDCバスDCbを介して負荷3に接続される。ここでは、インダクタンスLb1及び抵抗Rlb1は、出力線PwL1の配線インピーダンスのインダクタンス成分及び抵抗成分を示す。また、インダクタンスLb2及び抵抗Rlb2は、出力線PwL2の配線インピーダンスのインダクタンス成分及び抵抗成分を示す。
第2DC-DCコンバータ21は、制御部22、第2DC-DCコンバータ出力電圧検出回路24、第2DC-DCコンバータ出力電流検出回路25、通信部26を備える。制御部22は、ドループ特性補正演算部220、補正値分配演算部221、ドループ傾き補正演算部222、ドループ切片補正演算部223、補正範囲制限部224、垂下ゲイン(kd2)乗算器225、補償器226、加え合わせ点227、228を含む。制御部22は、CPU(Central Processing Unit)及びメモリを含むコンピュータ、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等を含んで構成することができる。各部の機能の一部又は全部は、ハードウェアにおいてソフトウェアを実行することにより実現されてもよいし、専用のハードウェアによって実現されてもよい。ここでは、補正値分配演算部221が、本発明の補正分配部に相当する。
【0040】
第2DC-DCコンバータ出力電圧検出回路24は、第2DC-DCコンバータ21の出力線PwL2間の電圧である出力電圧vo2を検出する。第2DC-DCコンバータ出力電流検出回路25は、第2DC-DCコンバータ21の出力線PwL2を流れる電流(第2DC-DCコンバータ出力電流)io2を検出する。通信部26は、第1DC-DCコンバータ11を含む外部装置との間で適宜の通信方式により通信を行うインターフェースである。出力線PwL2は本発明の電力線に相当し、出力線PwL2間の電圧である出力電圧vo2は、本発明の電力線の電圧に相当し、第2DC-DCコンバータ出力電圧検出回路24は本発明の電圧取得部に相当する。また、出力線PwL2を流れる出力電流io2は、本発明の電力変換装置を流れる電流並びに物理量及び第1種物理量に相当し、第2DC-DCコンバータ出力電流検出回路25は本発明の物理量取得部に相当する。
【0041】
第2DC-DCコンバータ出力電圧検出回路24によって検出された第2DC-DCコ
ンバータ21の出力電圧値vo2は、補償器226に入力される。
【0042】
第2DC-DCコンバータ出力電流検出回路25によって検出された第2DC-DCコンバータ21の出力電流値io2は、垂下ゲイン(kd2)乗算器225及び補正値分配演算部221に入力される。
【0043】
補正値分配演算部221には、上述のように、第2DC-DCコンバータ21の出力電流値io2が第2DC-DCコンバータ出力電流検出回路25から入力されるとともに、通信部26を介して第1DC-DCコンバータ11から取得した第1DC-DCコンバータ11の出力電流値io1が入力される。直流電力供給システム100が、第1DC-DCコンバータ11及び第2DC-DCコンバータ21に加えて、負荷3に対してDCバスDCbを介して並列接続される他のDC-DCコンバータを含む場合には、他のDC-DCコンバータの出力電流も、各DC-DCコンバータから通信部26を介して同様に補正値分配演算部221に入力される。
【0044】
補正値分配演算部221、ドループ傾き補正演算部222、ドループ切片補正演算部223及び補正範囲制限部224を含むドループ特性補正演算部220については、後に詳述する。ドループ傾き補正演算部222から出力される傾き補正値ΔR2が、垂下ゲイン(kd2)乗算器225に入力され、出力電流値io2に、補正された垂下ゲイン(kd2+ΔR2)を乗算した値(kd2+ΔR2)io2が、垂下ゲイン(kd2)乗算器225から加え合わせ点228に入力される。
【0045】
ドループ切片補正演算部223から出力される切片補正値ΔV2が、加え合わせ点227に入力される。加え合わせ点227では、DCバスDCbの電圧指令値Vrefに切片補正値ΔV2が加算され、加え合わせ点228に出力される。
【0046】
加え合わせ点228では、加え合わせ点227から入力された(Vref+ΔV2)から、垂下ゲイン(kd2)乗算器225から入力された(kd2+ΔR2)io2が減算された第2DC-DCコンバータ電圧指令値Vref2=(Vref+ΔV2)-(kd2+ΔR2)io2が、補償器226に入力される。垂下ゲイン(kd2)乗算器225及び加え合わせ点228が本発明の垂下制御部に相当する。
【0047】
補償器226では、第2DC-DCコンバータ21の電圧指令値Vref2と、第2DC-DCコンバータ21の出力電圧値vo2との偏差に基づいて、第2DC-DCコンバータ21のデューティ指令値dref2が生成される。入力されたデューティ指令値dref2に応じて第2DC-DCコンバータ21が制御される。
【0048】
図2は、実施例1に係るドループ特性補正演算部220の概略構成を示す。
図2では、n(n≧2)台のDC-DCコンバータを含む一般的な直流電力供給システムの例を示す。以下では、必要に応じて、n=2である直流電力供給システムに該当する
図1に示した直流電力供給システム100を例として説明するが、nが2以上の適宜の台数DC-DCコンバータを含む直流電力供給システムについても同様に成り立つ(以下の、各実施例についても同様である。)。ここでは、i
j_puは、第jDC-DCコンバータ(1≦j≦n)の規格化された出力電流値(負荷率ということもできる。)、すなわち、第jコンバータの出力電流検出値io
jを、第jDC-DCコンバータの定格出力電流値I
jで除した値io
j/I
jを示す。各DC-DCコンバータの負荷率は、各DC-DCコンバータ(
図1の例では、第1DC-DCコンバータ11及び第2DC-DCコンバータ21)が、直流電力供給システム100に含まれ、並列運転される自機を含むDC-DCコンバータの定格電流値の情報を記憶しておき、通信部26を介し、又は、第2DC-DCコンバータ出力電流検出回路25から入力された出力電流値から算出することができる。直流
電力供給システム100に含まれる各DC-DCコンバータから出力電流値に替えて負荷率を他のDC-DCコンバータに向けて送信するようにしてもよい。加算器221aでは、直流電力供給システムに含まれ、並列運転されるすべてのDC-DCコンバータの負荷率i
j_pu(1≦j≦n)の総和を算出する。ここでは、負荷率を算出する際に、第jコンバータの出力電流検出値io
jを用いているが、代わりに第jコンバータの出力電流推定値を用いてもよい。また、図示は省略しているが、第2DC-DCコンバータ21の通信部26からは、第2DC-DCコンバータ出力電流検出回路25から出力された出力電流値io
2が、第1DC-DCコンバータ11を含む他のDC-DCコンバータに送信される。ここでは、通信部26、及び、通信部26を介して取得した他のDC-DCコンバータの出力電流値に対して、各DC-DCコンバータの定格出力電流値で除する演算を行う演算処理部が、本発明の他装置負荷率取得部に相当する。他のDC-DCコンバータから負荷率が直接送信される構成では、通信部26が、本発明の他装置負荷率取得部に相当する。
【0049】
負荷率の総和に対しては、ゲイン(1/n)乗算器221bにおいて、1/nが乗算され、直流電力供給システム100に含まれるDC-DCコンバータ1台当たりの平均負荷率iavg_puが算出される。加え合わせ点221cでは、平均負荷率iavg_puから、当該DC-DCコンバータ(ここでは第2DC-DCコンバータ21)の負荷率ij_puが減算され、平均負荷率と負荷率との差分iavg_pu-ij_puが算出され、条件分岐ブロック221dに入力される。ここでは、直流電力供給システム100に含まれるDC-DCコンバータ1台当たりの平均負荷率iavg_puが、本発明のシステム平均負荷率に相当する。
【0050】
条件分岐ブロック221dでは、平均負荷率iavg_puと切替閾値αthrとの比較に基づいて、ドループ特性の切片又は傾きのいずれを補正するかを切り替える(切替式)。ここでは、平均負荷率iavg_puが切替閾値αthrより大きい、すなわち、iavg_pu>αthrである場合には、傾き補正用差分Δij_Rを、平均負荷率と負荷率との差分iavg_pu-ij_puとし、切片補正用差分Δij_Vを0とし、それ以外(iavg_pu≦αthr)の場合には、傾き補正用差分Δij_Rを0とし、切片補正用差分Δij_Vを平均負荷率と負荷率との差分iavg_pu-ij_puとする。すなわち、平均負荷率と負荷率との差分iavg_pu-ij_puを、平均負荷率iavg_puと切替閾値αthrとの比較に基づいて、垂下特性の傾き補正と切片補正のいずれか一方に切り替えて分配している。ここでは、切替閾値αthrが、本発明の所定の閾値に相当する。
【0051】
図3は、上述の補正値分配演算部221における、傾きの補正と切片の補正に分配して、垂下特性の補正を行う方式を説明するグラフである。
図3のグラフの横軸は、%で示した平均負荷率i
avg_puであり、縦軸は、垂下特性の補正を、傾き補正と切片補正のいずれに分配するかを%で示した分配率である。
図3では、傾き補正分配率を1点鎖線、切片補正分配率を実線で示している。平均負荷率i
avg_puが切替閾値α
thr以下である場合には、切片補正分配率が100%で傾き補正分配率が0%であり、垂下特性の切片のみが補正され、傾きは補正されない。そして、平均負荷率i
avg_puが切替閾値α
thrより大きい場合には、傾き補正分配率が100%で切片補正分配率が0%であり、垂下特性の傾きのみが補正され、切片は補正されない。
【0052】
このように、条件分岐ブロック221dで演算された傾き補正用差分Δij_Rがドループ傾き補正演算部222に入力され、また、条件分岐ブロック221dで演算された切片補正用差分Δij_Vがドループ切片補正演算部223に入力される。ドループ傾き補正演算部222では、PI補償器222aにおいて、入力された傾き補正用差分Δij_Rに対してPI制御が施され、垂下特性の傾き補正値ΔRjが算出され、垂下ゲイン(k
d2)乗算器225に入力される。ドループ切片補正演算部223では、PI補償器223aにおいて、入力された切片補正用差分Δij_Vに対してPI制御が施され、垂下特性の切片補正値ΔVjが算出され、加え合わせ点227に入力される。
【0053】
また、ドループ特性補正演算部220は、補正範囲制限部224を有する。補正範囲制限部224は、ドループ傾き補正演算部222及びドループ切片補正演算部223における垂下特性の補正の範囲を制限する機能を有する。
図4に、補正範囲制限部224による、垂下特性の補正範囲の制限を示すグラフである。
図4のグラフの横軸が出力電流値、縦軸がバス電圧指令値を示す。実線で示される垂下特性の設計値を含む、バス電圧の検出バラつきの下限から上限までの範囲を薄灰色の領域で示し、ドループ特性補正演算部220による補正範囲の下限から上限までの範囲を濃灰色の領域で示す。
図4に示すように、ドループ特性補正演算部220による、垂下特性の傾き及び切片の補正は、バス電圧の検出バラつきの範囲(検出誤差範囲)に少し余裕を持たせた上下限を超えないように演算する。補正範囲制限部224は、例えば、PI補償器222a及びPI補償器223aにおける積分処理の積分範囲を限定することにより、垂下特性の補正範囲を制限することができるが、補正範囲の制限方法はこれに限られない。このように、垂下特性の補正の範囲を制限することにより、過剰な補正を抑制することができる。補正範囲制限部224は、本発明の補正範囲制限部に相当する。
このような補正範囲制限部224を省略することもできる。また、直流電力供給システム100を、補正範囲制限部224を有しないDC-DCコンバータと、補正範囲制限部224を有するDC-DCコンバータとを含むように構成することもできる。
【0054】
上述した直流電力供給システム100において、負荷変動による出力電流のアンバランスやオーバーシュートを抑制することができる。以下に、
図5及び
図6を参照して、直流電力供給システム100がこのような効果を奏する原理について説明する。
図5は、非特許文献1に例示される先行技術について説明するグラフである。
図5(A)は、垂下特性の設計値Rdを1点鎖線で示し、バス電圧の検出バラつき等によりずれた垂下特性R1及びR2をそれぞれ破線及び実線で示す。垂下特性R1は、例えば、第2DC-DCコンバータ出力電圧検出回路24が電圧を低く検出している場合であり、例えば、第2DC-DCコンバータ出力電圧検出回路24が電圧を高く検出している場合に相当する。
図5(A)に示すような垂下特性に基づいて各DC-DCコンバータが制御される直流電力供給システムにおいて、黒丸P1で示す軽負荷で、先行技術のように垂下特性の傾き補正を行うと、垂下特性R1の補正された垂下特性が太破線R11、垂下特性R2の補正された垂下特性が太実線R21で表される。このとき、負荷変動が生じると、垂下特性R21に従って垂下制御されるDC-DCコンバータの出力電流は白丸P3に対応するi
P3となり、垂下特性R11に従って垂下制御されるDC-DCコンバータの出力電流は白丸P2に対応するi
P2となるため、電流のアンバランスが生じる。
【0055】
図6は、上述の直流電力供給システム100における垂下特性補正を行う場合について説明する図である。
図6(A)に示すように、直流電力供給システム100では、白丸で示される垂下特性R1の切片P4と、垂下特性R1の傾きがそれぞれの矢印で示されるように補正により変更される。同様に、黒丸で示される垂下特性R2の切片P5と、垂下特性R2の傾きがそれぞれの矢印で示されるように補正により変更される。このようにして補正された垂下特性を
図6(B)に示す。垂下特性R1の補正された垂下特性R12を太破線R12で示し、垂下特性R2の補正された垂下特性R22を太実線R22で示す。例えば、第1DC-DCコンバータ11が垂下特性R1及びR12に従って垂下制御され、第2DC-DCコンバータ21が垂下特性R2及びR22に従って垂下制御されるとする。先行技術と同様に、黒丸P1で示す軽負荷において補正された垂下特性R12及びR22に従って制御される直流電力供給システム100では、負荷変動が生じた場合でも、第1DC-DCコンバータ11の出力電流が白丸P7に対応するi
P7となり、第2DC-
DCコンバータ21の出力電流が白丸P6に対応するi
P6となるので、電流アンバランス量を抑制することができる。例えば、
図6(A)に示す白丸P4のように垂下特性を表す直線が縦軸(出力電流=0)と交わる値が垂下特性の切片であり、本発明の、垂下特性における所定の物理量(出力電流=0)に対する電圧(バス電圧指令値)の値に相当する。
【0056】
図7は、上述の直流電力供給システム100における垂下特性補正によるオーバーシュート抑制効果を説明するグラフである。
図7(A)は、横軸に時間[s]、縦軸に電流[A]を示し、先行技術による垂下特性補正を行う場合の第1DC-DCコンバータ11の平均出力電流値i
bus_ave1及び第2DC-DCコンバータ21の平均出力電流値i
bus_ave2を示す。
図7(A)に示すように、先行技術によれば、平均出力電流が0に近いところでは、電流のアンバランスが大きく、負荷変動により第1DC-DCコンバータの平均出力電流i
bus_ave1にオーバーシュートが発生していることが分かる。このように、オーバーシュートが発生すると、第1DC-DCコンバータ11の定格に余裕がなくなる可能性がある。先行技術においても、垂下特性の傾き補正が繰り返されることにより、第1DC-DCコンバータ11と第2DC-DCコンバータ21の電流アンバランスは徐々に解消されている。
【0057】
図7(B)は、上述の直流電力供給システム100における第1DC-DCコンバータ11の平均出力電流値i
bus_ave1及び第2DC-DCコンバータ21の平均出力電流値i
bus_ave2を示す。
図7(B)も同様に、横軸に時間[s]、縦軸に電流[A]を示す。
図7(B)に示されるように、平均出力電流が0に近いところにおいても電流アンバランスが抑制されており、負荷変動による第1DC-DCコンバータ11の平均出力電流値i
bus_ave1のオーバーシュートも抑制されていることが分かる。また、第1DC-DCコンバータ11の平均出力電流値i
bus_ave1及び第2DC-DCコンバータ21の平均出力電流値i
bus_ave2がほぼ重なって示されていることからも、負荷特性の補正による電流アンバランスが抑制されていることが分かる。
【0058】
〔実施例2〕
以下、実施例2に係る直流電力供給システム100について説明する。実施例1に係る直流電力供給システム100とドループ特性補正演算部220-2の構成を除いて同様の構成を有するため、同様の構成については同様の符号を用いて詳細な説明を省略する。
図8は、実施例2に係るドループ特性補正演算部220-2の概略構成を示す。実施例1に係るドループ特性補正演算部220と同様の構成については、同様の符号を用いて説明を省略する。補正値分配演算部221-2は、補正値分配演算部221と共通の構成である、加算器221a、ゲイン(1/n)乗算器221b及び加え合わせ点221cを備える。補正値分配演算部221-2は、さらに、引き出し点221e、引き出し点221f、乗算器221g、乗算器221h、加え合わせ点221kを備える。ここでは、補正値分配演算部221-2が、本発明の補正分配部に相当する。
【0059】
補正値分配演算部221-2では、ゲイン(1/n)乗算器221bから出力されたDC-DCコンバータ1台当たりの平均負荷率iavg_puが、加え合わせ点221cに入力されるとともに、引き出し点221eを経て乗算器221g及び加え合わせ点221kにも入力される。また、加え合わせ点221cから出力された平均負荷率と負荷率との差分iavg_pu-ij_puが引き出し点221fを経て、乗算器221g及び乗算器221hに入力される。加え合わせ点221kでは、DC-DCコンバータ1台当たりの平均負荷率iavg_puが1から減算され、得られた1-iavg_puが、乗算器221hに入力される。乗算器221gでは、傾き補正分配率に相当するiavg_puが、平均負荷率と負荷率との差分iavg_pu-ij_puに乗算され、算出された傾き補正用差分Δij_R=iavg_pu(iavg_pu-ij_pu)が、ドループ
傾き補正演算部222のPI補償器222aに入力される。また、乗算器221hでは、切片補正分配率に相当する1-iavg_puが、平均負荷率と負荷率との差分iavg_pu-ij_puに乗算され、算出された切片補正用差分Δij_V=(1-iavg_pu)(iavg_pu-ij_pu)が、ドループ切片補正演算部223のPI補償器223aに入力される。ここでは、平均負荷率と負荷率との差分iavg_pu-ij_puを、平均負荷率iavg_puに応じて変動する分配率に従って、垂下特性の傾き補正と切片補正に分配している(変動式)。ドループ傾き補正演算部222、ドループ切片補正演算部223及び補正範囲制限部224の機能は、実施例1に係るドループ特性補正演算部220と同様であるため説明を省略する。
【0060】
図9は、上述の補正値分配演算部221-2における、傾きの補正と切片の補正に分配して、垂下特性の補正を行う方式を説明するグラフである。
図9のグラフの横軸は、%で示した平均負荷率i
avg_puであり、縦軸は、垂下特性の補正を、傾き補正と切片補正のいずれに分配するかを%で示した分配率である。
図93では、傾き補正分配率を1点鎖線、切片補正分配率を実線で示している。平均負荷率i
avg_puが0%から100%に変化するのに応じて切片補正分配率が100%から0%まで単調に減少する一方で、傾き補正分配率が0%から100%まで単調に増加する。このように、実施例2における垂下特性補正では、切片補正分配率と傾き補正分配率は、平均負荷率i
avg_puに応じて変動する。
【0061】
図10は、本実施例に係る直流電力供給システム100における垂下特性補正によるオーバーシュート抑制効果を説明するグラフである。
図10(A)は、横軸に時間[s]、縦軸に電流[A]を示し、先行技術による垂下特性補正を行う場合の第1DC-DCコンバータの平均出力電流値i
bus_ave1及び第2DC-DCコンバータの平均出力電流値i
bus_ave2を示す。
図9(A)は、
図7(A)について説明したところと同様であるため、説明を省略する。
図10(B)は、実施例2に係る直流電力供給システム100における第1DC-DCコンバータ11の平均出力電流値i
bus_ave1及び第2DC-DCコンバータ21の平均出力電流値i
bus_ave2を示す。
図10(B)も同様に、横軸に時間[s]、縦軸に電流[A]を示す。
図10(B)に示されるように、平均出力電流が0に近いところにおいても電流アンバランスが抑制されており、負荷変動による第1DC-DCコンバータ11の平均出力電流値i
bus_ave1のオーバーシュートも抑制されており、丸で囲ったピークでは、先行技術に比して過渡的なオーバーシュートが18パーセントまで改善されている。また、第1DC-DCコンバータ11の平均出力電流値i
bus_ave1及び第2DC-DCコンバータ21の平均出力電流値i
bus_ave2がほぼ重なって示されていることからも、負荷特性の補正による電流アンバランスが抑制されていることが分かる。
【0062】
図11は、先行技術に係る垂下特性補正と本実施例2に係る垂下特性補正による平均出力電流を並べて示したグラフである。
図11(A)の点線で囲ったピーク近傍を拡大して
図11(B)に示す。
図11(B)は、本実施例2に係る垂下特性補正を行う直流電力供給システム100では、先行技術に比して、オーバーシュートが有効に抑制されていることを示している。
【0063】
〔実施例3〕
以下、実施例3に係る直流電力供給システム100について説明する。実施例1に係る直流電力供給システム100とドループ特性補正演算部220-3の構成を除いて同様の構成を有するため、同様の構成については同様の符号を用いて詳細な説明を省略する。
図12は、実施例3に係るドループ特性補正演算部220-3の概略構成を示す。実施例1に係るドループ特性補正演算部220と同様の構成については、同様の符号を用いて説明を省略する。補正値分配演算部221-3は、補正値分配演算部221と共通の構成であ
る、加算器221a、ゲイン(1/n)乗算器221b及び加え合わせ点221cを備える。補正値分配演算部221-3は、条件分岐ブロック221dに代えて、条件分岐ブロック221-3dを備える。ここでは、補正値分配演算部221-3が、本発明の補正分配部に相当する。
【0064】
条件分岐ブロック221-3dでは、平均負荷率i
avg_puと切替閾値α
thrとの比較に基づいて、補正値をドループ特性の切片又は傾きのいずれに分配するかの方式を変更する(切替・変動混合式)。ここでは、
図13に示すように、平均負荷率i
avg_puが切替閾値α
thr以下である場合には、実施例1のような切替式で補正値を分配し、平均負荷率i
avg_puが切替閾値α
thr大きい場合には、実施例2のような変動式で補正値を分配する。すなわち、i
avg_pu≦α
thrである場合には、傾き補正用差分Δi
j_Rを、平均負荷率と負荷率との差分i
avg_pu-i
j_puとし、切片補正用差分Δi
j_Vを0とし、それ以外(i
avg_pu>α
thr)の場合には、傾き補正用差分Δi
j_Rを{(i
avg_pu-α
thr)/(1-α
thr)}(i
avg_pu-i
j_pu)とし、Δi
j_Vを{(1-i
avg_pu)/(1-α
thr)}(i
avg_pu-i
j_pu)とする。
【0065】
このような実施例3に係る直流電力供給システム100においても、負荷変動時における電流アンバランス量を抑制するとともに、オーバーシュートを抑制することができる。
【0066】
〔実施例4〕
以下、実施例4に係る直流電力供給システム100について説明する。実施例1に係る直流電力供給システム100とドループ特性補正演算部220-4の構成を除いて同様の構成を有するため、同様の構成については同様の符号を用いて詳細な説明を省略する。
図14は、実施例4に係るドループ特性補正演算部220-4の概略構成を示す。実施例1に係るドループ特性補正演算部220と同様の構成については、同様の符号を用いて説明を省略する。補正値分配演算部221-4は、補正値分配演算部221と共通の構成である、加算器221a、ゲイン(1/n)乗算器221b及び加え合わせ点221cを備える。補正値分配演算部221-4は、条件分岐ブロック221dに代えて、条件分岐ブロック221-4dを備える。ここでは、補正値分配演算部221-4が、本発明の補正分配部に相当する。
【0067】
条件分岐ブロック221-4dでは、平均負荷率i
avg_puと切替閾値α
thrとの比較に基づいて、補正値をドループ特性の切片又は傾きのいずれに分配するかの方式を変更する(切替・変動混合式)。ここでは、
図15に示すように、平均負荷率i
avg_puが切替閾値α
thr以下である場合には、実施例2のような変動式で補正値を分配し、平均負荷率i
avg_puが切替閾値α
thrより大きい場合には、実施例1のような切替式で補正値を分配する。すなわち、i
avg_pu>α
thrである場合には、傾き補正用差分Δi
j_Rを、平均負荷率と負荷率との差分i
avg_pu-i
j_puとし、切片補正用差分Δi
j_Vを0とし、それ以外(i
avg_pu≦α
thr)の場合には、傾き補正用差分Δi
j_Rを(1-α
thr)(i
avg_pu-i
j_pu)とし、Δi
j_Vを{1-(i
avg_pu)/(1-α
thr)}(i
avg_pu-i
j_pu)とする。
【0068】
このような実施例4に係る直流電力供給システム100においても、負荷変動時における電流アンバランス量を抑制するとともに、オーバーシュートを抑制することができる。
【0069】
〔変形例1〕
上述の各実施例では、第1DC-DCコンバータ11に接続された蓄電池13及び第2DC-DCコンバータ21に接続された蓄電池23から放電する場合の垂下制御について
説明したが、蓄電池13及び蓄電池23が充電される場合、例えば、DCバスDCbに接続された直流電力供給源から蓄電池13及び蓄電池23に直流電力が供給される場合においても同様の垂下制御が可能である。直流電力供給源は、DCバスDCbに接続される商用電力系統等の交流電源から供給される交流電力を直流電力に変換するAC-DCコンバータを含む装置であってもよいし、蓄電池、太陽電池、燃料電池等の直流電源とこれらの出力を昇圧、昇降圧又は降圧するDC-DCコンバータを含む装置であってもよく、これらに限られない。
【0070】
蓄電池13及び蓄電池23から放電される場合には、第1DC-DCコンバータ11の出力電流io
1及び第2DC-DCコンバータ21の出力電流io
2は
図1に示す矢印の方向に流れ、それぞれの出力電流は正の値になるものとして、上述の各実施例における垂下制御を説明した。これに対して、蓄電池13及び蓄電池23を充電する場合には、第1DC-DCコンバータ11の出力電流io
1及び第2DC-DCコンバータ21の出力電流io
2は
図1に示す矢印とは逆方向に流れる。このように、
図1に示す矢印とは逆方向に電流が流れる場合には、それぞれの出力電流が負の値となるものとする。このとき、第1DC-DCコンバータ11及び第2DC-DCコンバータ21の垂下特性は、上述の実施例における垂下特性のグラフを、i(出力電流)=0の縦軸を中心として正負を反転させた形状となる。
【0071】
〔変形例2〕
上述の各実施例では、第2DC-DCコンバータ出力電流検出回路25において検出された出力電流io2と出力電圧vo2との関係を規定する垂下特性について説明したが、垂下特性は、出力電力検出(ここではpo2とする)と出力電圧との関係を規定する垂下特性に応じた垂下制御についても、同様に垂下特性の補正を行うことができる。このような垂下制御を行う直流電力供給システムでは、例えば、第2DC-DCコンバータ出力電流検出回路25によって検出された出力電流io2に第2DC-DCコンバータ出力電圧検出回路24によって検出された出力電圧vo2を乗算して出力電力po2を算出する第2DC-DCコンバータ出力電力取得部を設ける。垂下制御及び垂下特性の補正の内容については、出力電流を用いる上述の各実施例と同様なので、説明は省略する。ここでは、出力電力po2が本発明の電力並びに物理量及び第1種物理量に相当し、第2DC-DCコンバータ出力電力取得部が、本発明の物理量取得部に相当する。
【0072】
〔変形例3〕
上述の各実施例では、実施例1に係る
図1に示すように、第2DC-DCコンバータ出力電流検出回路25及び第2DC-DCコンバータ出力電圧検出回路24を、第2DC-DCコンバータ21の出力線PwL2に設け、出力線PwL2を流れる電流及び出力線PwL2間の電圧をそれぞれ検出し取得している。
しかし、第2DC-DCコンバータ21の出力電流や出力電圧を取得可能な構成はこれに限られない。すなわち、第2DC-DCコンバータ21に関する種々の検出値や情報から所定の変換や推定を行うことにより、出力電流や出力電圧を取得することができる(直流電力供給システム100を構成する他のDC-DCコンバータも同様である。)。
【0073】
例えば、第2DC-DCコンバータ21は、自機のPWMのデューティ値を保有しているので、昇圧コンバータであれば、昇圧比等から、出力電圧や出力電流への変換が可能である。昇圧コンバータであれば、入力電流の平均値とインダクタ電流の平均値も同様である。損失等が事前に評価できていれば、さらに変換の精度を上げることも可能である。
また、第2DC-DCコンバータ21のインダクタ、スイッチ、コンデンサ等の各部品の電流を検出することにより入力や出力の電圧を推定することもできる。
【0074】
従って、本発明の電圧取得部及び物理量取得部に相当する構成も、本発明の電圧や物理
量を最終的に取得可能な構成であれば足り、各実施例で説明した構成に限定されるものではなく、種々の検出値や情報から変換又は推定により取得する構成を含む。
【0075】
〔変形例4〕
上述の各実施例においては、直流電力供給システム100に含まれる第1DC-DCコンバータ11及び第2DC-DCコンバータ21が、各実施例において説明した垂下特性の補正を含む垂下制御を行っているが、直流電力供給システム100に含まれる複数のDC-DCコンバータのうちに、制御部にドループ特性補正演算部を含まず、各実施例において説明した垂下特性の補正を含む垂下制御を行わないDC-DCコンバータが含まれていてもよい。
このような、制御部にドループ特性補正演算部を含まず、各実施例において説明した垂下特性の補正を含む垂下制御を行わないDC-DCコンバータが、本発明の第2種電力変換装置に相当する。また、このようなDC-DCコンバータの構成のうち、第2DC-DCコンバータ21の制御部22に対応する構成が本発明の第2種制御部に相当し、垂下ゲイン(kd2)乗算器225及び加え合わせ点228に対応する構成が本発明の第2種垂下制御部に相当する。垂下ゲイン(kd2)によって表される垂下特性が、本発明の第2種垂下特性に相当し、この垂下特性に従って実行される垂下制御が、本発明の第2種垂下制御に対応する。また、このようなDC-DCコンバータの構成のうち、第2DC-DCコンバータ出力電流検出回路25に対応する構成が、本発明の第2種物理量取得部に相当し、出力線PwL2を流れる出力電流io2に対応する出力電流が、本発明の第2種電力変換装置を流れる電流及び第2種物理量に相当する。また、このようなDC-DCコンバータの構成のうち、出力線PwL2に対応する構成が本発明の第2種電力線に相当し、出力線PwL2間の電圧である出力電圧vo2に対応する出力電圧が、本発明の第2種電圧に相当し、第2DC-DCコンバータ出力電圧検出回路24に対応する構成が、本発明の第2種電圧取得部に相当する。
【0076】
<付記1>
直流電源(23)が接続され、直流電力を昇圧、昇降圧又は降圧して出力し、
他の直流電源(13)が接続され、直流電力を昇圧、昇降圧又は降圧する他の電力変換装置(11)と、並列して負荷(3)に電力線(PwL2)を介して接続される電力変換装置(21)であって、
前記電力変換装置(21)を流れる電流又は電力のいずれかである物理量を取得する物理量取得部(25)と、
前記電力線(PwL2)の電圧を取得する電圧取得部(24)と、
前記電圧を制御する制御部(22)と、
を備え、
前記制御部(22)は、
前記物理量と前記電圧との関係を規定する垂下特性に応じて前記電力線の電圧を垂下させる垂下制御を行う垂下制御部(225、228)と、
前記垂下特性の補正を、前記垂下特性の前記物理量に対する傾きの補正と、前記垂下特性における所定の前記物理量に対する前記電圧の値である切片の補正とに分配する補正分配部(221)と、
を備えたことを特徴とする電力変換装置(21)。
<付記2>
前記他の電力変換装置(11)を流れる前記物理量を、該他の電力変換装置それぞれの定格によって除した他の負荷率を取得する他装置負荷率取得部(26)を備え、
前記補正分配部(221)は、
前記他の負荷率と、前記物理量を前記電力変換装置(21)の前記物理量の定格によって除した負荷率との和を、前記電力変換装置(21)及び前記他の電力変換装置(11)の台数の和で除した、システム平均負荷率に応じて、前記垂下特性の前記物理量に対する
前記傾きの補正と、前記垂下特性の前記切片の補正とに分配することを特徴とする付記1に記載の電力変換装置(21)。
<付記3>
前記補正分配部(221)は、所定の閾値と、前記システム平均負荷率との比較に基づいて、前記垂下特性の前記物理量に対する前記傾きの補正と、前記垂下特性の前記切片の補正とに分配することを特徴とする付記2に記載の電力変換装置(21)。
<付記4>
前記補正分配部(221)は、前記システム平均負荷率に応じて、前記垂下特性の前記物理量に対する傾きの補正と、前記垂下特性の前記切片の補正とに分配することを特徴とする付記2に記載の電力変換装置(21)。
<付記5>
前記制御部(22)は、
前記垂下特性の補正の範囲を制限する補正範囲制限部(224)を備えたことを特徴とする付記1乃至付記4のいずれかに記載の電力変換装置(21)。
<付記6>
それぞれに直流電源が接続され、直流電力を昇圧、昇降圧又は降圧して負荷(3)に供給する複数の電力変換装置(11、21)を、該負荷に対して並列に接続した直流電力供給システム(100)であって、
前記複数の電力変換装置(11、21)は、第1種電力変換装置(21)を含み、
前記第1種電力変換装置(21)は、
前記第1種電力変換装置(21)を流れる電流又は電力のいずれかである第1種物理量を取得する物理量取得部(25)と、
前記第1種電力変換装置(21)と前記負荷(3)を接続する電力線(PwL2)の電圧を取得する電圧取得部(24)と、
前記電圧を制御する制御部(22)と、
を備え、
前記制御部(22)は、
前記第1種物理量と前記電圧との関係を規定する垂下特性に応じて前記電力線の電圧を垂下させる垂下制御を行う垂下制御部(225、228)と、
前記垂下特性の補正を、前記垂下特性の前記第1種物理量に対する傾きの補正と、前記垂下特性における所定の前記第1種物理量に対する前記電圧の値である切片の補正とに分配する補正分配部(221)と、
を含むことを特徴とする直流電力供給システム(100)。
<付記7>
前記第1種電力変換装置(21)は、
前記直流電力供給システム(100)に含まれる他の電力変換装置(11)を流れる電流又は電力のいずれかを、該他の電力変換装置それぞれの定格によって除した他の負荷率を取得する他装置負荷率取得部(26)を備え、
前記補正分配部(221)は、
前記他の負荷率と、前記第1種物理量を前記第1種電力変換装置(21)の前記第1種物理量の定格によって除した負荷率の和を、前記電力変換装置(21)及び前記他の電力変換装置(11)の台数の和で除した、システム平均負荷率に応じて、前記垂下特性の前記第1種物理量に対する前記傾きの補正と、前記垂下特性の前記切片の補正とに分配することを特徴とする付記6に記載の直流電力供給システム(100)。
<付記8>
前記補正分配部(221)は、所定の閾値と、前記システム平均負荷率との比較に基づいて、前記垂下特性の前記第1種物理量に対する前記傾きの補正と、前記垂下特性の前記切片の補正とに分配することを特徴とする付記7に記載の直流電力供給システム(100)。
<付記9>
前記補正分配部(221)は、前記システム平均負荷率に応じて、前記垂下特性の前記第1種物理量に対する前記傾きの補正と、前記垂下特性の前記切片の補正とに分配することを特徴とする付記7に記載の直流電力供給システム(100)。
<付記10>
前記制御部(22)は、
前記垂下特性の補正の範囲を制限する補正範囲制限部(224)を備えたことを特徴とする付記6乃至9のいずれかに記載の直流電力供給システム(100)。
<付記11>
前記複数の電力変換装置(11、21)は、第2種電力変換装置(11)を含み、
前記第2種電力変換装置(11)は、
前記第2種電力変換装置を流れる電流又は電力のいずれかである第2種物理量を取得する第2種物理量取得部と、
前記第2種電力変換装置と前記負荷を接続する第2種電力線の電圧である第2種電圧を取得する第2種電圧取得部と、
前記第2種電圧を制御する第2種制御部と、
を備え、
前記第2種制御部は、
前記第2種物理量と前記第2種電圧との関係を規定する第2種垂下特性に応じて前記第2種電圧を垂下させる第2種垂下制御を行う第2種垂下制御部と、
を含み、
前記第2種垂下特性の補正を、前記第2種垂下特性の前記第2種物理量に対する傾きの補正と、前記第2種垂下特性における所定の前記第2種物理量に対する前記第2種電圧の値である切片の補正とに分配する補正分配部を含まないことを特徴とする付記6乃至10のいずれかに記載の直流電力供給システム(100)。
【符号の説明】
【0077】
3 :負荷
11 :第1DC-DCコンバータ
21 :第2DC-DCコンバータ
22 :制御部
221 :補正値分配演算部
225 :垂下ゲイン乗算部
227,228 :加え合わせ点
100 :直流電力供給システム