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特開2024-110463インバランス回避装置、インバランス回避方法、および、インバランス回避プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110463
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】インバランス回避装置、インバランス回避方法、および、インバランス回避プログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/46 20060101AFI20240808BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20240808BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
H02J3/46
H02J3/38 120
H02J3/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015002
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】酢山 明弘
(72)【発明者】
【氏名】村井 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 祐太
(72)【発明者】
【氏名】金子 雄
(72)【発明者】
【氏名】本宮 拓也
(72)【発明者】
【氏名】藤田 ほなみ
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066HA15
5G066HB02
5G066HB06
5G066HB09
5G066JA05
5G066JB03
(57)【要約】
【課題】GC後の再生可能エネルギー発電量の変動に対応するとともに、通信遅延を考慮した蓄電池制御を行うことによって、BG全体でインバランスを回避する。
【解決手段】実施形態のインバランス回避装置は、1以上の再生可能エネルギー電源、および、複数の蓄電池を有するBGに対して設けられる制御部を備える。制御部は、再生可能エネルギー電源ごとの所定単位時間における発電量予測値と、再生可能エネルギー電源ごとの所定単位時間における現在までの発電量実績値と、蓄電池ごとの充放電量実績値と、蓄電池ごとの指示から動作開始までの遅延時間を示す通信遅延時間と、広域機関に提出した発電計画と、に基づいて、所定単位時間におけるBGの発電と需要のインバランスを最小にするように蓄電池ごとの充放電量に関する指示値を作成する指示値作成部と、指示値に基づいて蓄電池を制御するシステム制御部と、を有する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の再生可能エネルギー電源、および、複数の蓄電池を有するBG(バランシンググループ)に対して設けられる制御部を備え、
前記制御部は、
前記再生可能エネルギー電源ごとの所定単位時間における発電量予測値と、前記再生可能エネルギー電源ごとの前記所定単位時間における現在までの発電量実績値と、前記蓄電池ごとの充放電量実績値と、前記蓄電池ごとの指示から動作開始までの遅延時間を示す通信遅延時間と、広域機関に提出した発電計画と、に基づいて、前記所定単位時間における前記BGの発電と需要のインバランスを最小にするように前記蓄電池ごとの充放電量に関する指示値を作成する指示値作成部と、
前記指示値に基づいて前記蓄電池を制御するシステム制御部と、を有するインバランス回避装置。
【請求項2】
前記指示値作成部は、複数の前記蓄電池の充放電余力の比に基づいて、前記蓄電池ごとの指示値を作成する、請求項1に記載のインバランス回避装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記再生可能エネルギー電源ごとの所定単位時間における発電量予測値と、前記再生可能エネルギー電源ごとの前記所定単位時間における現在までの発電量実績値と、前記蓄電池ごとの充放電量実績値と、前記蓄電池ごとの前記通信遅延時間と、前記広域機関に提出した前記発電計画と、に基づいて、前記インバランスの予測値を算出するインバランス算出部を備え、
前記指示値作成部は、前記インバランスの予測値に基づいて、前記所定単位時間における前記BGの前記インバランスを最小にするように前記蓄電池ごとの前記指示値を作成する、請求項1に記載のインバランス回避装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記蓄電池ごとの、定格出力で実現可能な第1の充放電余力と、現在のSOC(State of Charge)と上下限SOCとの差分で算出される第2の充放電余力と、のうちの小さなほうを充放電余力として算出する余力算出部を備え、
前記指示値作成部は、複数の前記蓄電池の前記充放電余力の比に基づいて、前記蓄電池ごとの指示値を決定する、請求項1に記載のインバランス回避装置。
【請求項5】
指示値作成部が、1以上の再生可能エネルギー電源、および、複数の蓄電池を有するBG(バランシンググループ)における前記再生可能エネルギー電源ごとの所定単位時間における発電量予測値と、前記再生可能エネルギー電源ごとの前記所定単位時間における現在までの発電量実績値と、前記蓄電池ごとの充放電量実績値と、前記蓄電池ごとの指示から動作開始までの遅延時間を示す通信遅延時間と、広域機関に提出した発電計画と、に基づいて、前記所定単位時間における前記BGの発電と需要のインバランスを最小にするように前記蓄電池ごとの充放電量に関する指示値を作成する指示値算出ステップと、
システム制御部が、前記指示値に基づいて前記蓄電池を制御するシステム制御ステップと、を含むインバランス回避方法。
【請求項6】
コンピュータを、
1以上の再生可能エネルギー電源、および、複数の蓄電池を有するBG(バランシンググループ)における前記再生可能エネルギー電源ごとの所定単位時間における発電量予測値と、前記再生可能エネルギー電源ごとの前記所定単位時間における現在までの発電量実績値と、前記蓄電池ごとの充放電量実績値と、前記蓄電池ごとの指示から動作開始までの遅延時間を示す通信遅延時間と、広域機関に提出した発電計画と、に基づいて、前記所定単位時間における前記BGの発電と需要のインバランスを最小にするように前記蓄電池ごとの充放電量に関する指示値を作成する指示値作成部と、
前記指示値に基づいて前記蓄電池を制御するシステム制御部と、して機能させるためのインバランス回避プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、インバランス回避装置、インバランス回避方法、および、インバランス回避プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、分散型エネルギーリソース(DER:Distributed Energy Resources)を遠隔・統合制御し、複数の発電事業者を発電バランシンググループ(以下、「BG」ともいう。)としたバーチャルパワープラント(VPP)の技術開発が進められている。
【0003】
また、再生可能エネルギー発電機(太陽光発電装置、風力発電装置等)や再生可能エネルギー発電機と蓄電池を備えた発電システムをDERとして利用するケースもある。例えば、太陽光発電装置と蓄電池を備えた発電システムが出力する電力量を予測し、電力系統全体を管理する電力事業者等の管理者へ事前に通知するシステムがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6813409号公報
【特許文献2】特許第7048797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、例えば、従来技術で、電力の実需給時の発電と需要のインバランス(以下、単に「インバランス」ともいう。)を解消するために、各需要家に設置された蓄電池を制御(充放電制御。以下同様)してインバランスを解消する手法がある。この手法では、例えば、BGに属する各需要家単位で30分より細かい単位で計画値を設定する。そして、各需要家で、その細かい単位の計画値に対するインバランスが発生した場合、蓄電池を制御する制御装置(コントローラ)によって、蓄電池を制御して充放電を行うことでインバランスを解消する。また、蓄電池の制御だけでインバランスを解消できない場合は、デマンド制御を行うこともできる。しかしながら、電力の実需給時に、需要家ごとのコントローラで蓄電池の制御が行われるため、BG全体でのインバランスを解消するという観点では充分な効果が得られない場合がある。
【0006】
また、従来技術では、GC(Gate Close:電力市場において、発電事業者、小売電気事業者などの系統利用者から系統運用者への需給計画の提出期限)前において電力系統全体の負荷平準化を図ることができる。しかしながら、GC後の再生可能エネルギー発電量の変動が考慮されておらず、再生可能エネルギーの計画値同時同量の点で改善の余地がある。
【0007】
また、蓄電池を制御する場合、制御装置が指示を出してから実際に蓄電池が動作するまでにはタイムラグ(以下、通信遅延ともいう。)がある。したがって、その通信遅延も踏まえた蓄電池制御を行うことが好ましい。
【0008】
そこで、本発明の課題は、GC後の再生可能エネルギー発電量の変動に対応するとともに、通信遅延を考慮した蓄電池制御を行うことによって、BG全体でインバランスを回避することができるインバランス回避装置、インバランス回避方法、および、インバランス回避プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態のインバランス回避装置は、1以上の再生可能エネルギー電源、および、複数の蓄電池を有するBG(バランシンググループ)に対して設けられる制御部を備える。前記制御部は、前記再生可能エネルギー電源ごとの所定単位時間における発電量予測値と、前記再生可能エネルギー電源ごとの前記所定単位時間における現在までの発電量実績値と、前記蓄電池ごとの充放電量実績値と、前記蓄電池ごとの指示から動作開始までの遅延時間を示す通信遅延時間と、広域機関に提出した発電計画と、に基づいて、前記所定単位時間における前記BGの発電と需要のインバランスを最小にするように前記蓄電池ごとの充放電量に関する指示値を作成する指示値作成部と、前記指示値に基づいて前記蓄電池を制御するシステム制御部と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の目的を説明するための図である。
図2】実施形態の電力システムの概要を示す全体構成図である。
図3】インバランス回避装置、発電システム、蓄電池システムの機能構成の例を示す図である。
図4】インバランスの予測値の算出の例の説明図である。
図5】BGにおける蓄電池出力算出の例の説明図である。
図6】充放電余力算出の概念図である。
図7】充放電余力に基づいてそれぞれの蓄電池への指示値を作成する例を示す図である。
図8】インバランス回避処理の流れの例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るインバランス回避装置、インバランス回避方法、および、インバランス回避プログラムの実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下において、時刻とは、時間の瞬間を指す場合と、所定単位時間(例えば、30分)のその時間幅を指す場合の2種類がある。また、インバランスの「回避」とは、完全回避だけを意味するものではなく、部分回避も含む。
【0012】
実施形態の理解を容易にするために、図1を参照して、本発明の目的についてあらためて説明する。図1は、本発明の目的を説明するための図である。なお、図1における各グラフは、概要を示すもので、正確とは限らない。
【0013】
図1(a)では、あるBGにおける30分コマの0~30分における発電量計画値B1と、発電量実績値P1と、を表している。これらを積算量に変換したグラフが図1(b)である。つまり、発電量計画値B1の積算量が発電量計画値B2であり、発電量実績値P1の積算量が発電量実績値P2である。
【0014】
積算量として示した場合、発電量計画値B2は30分時点では点として表現される。そして、発電量実績値P2が30分時点で発電量計画値B2と一致するように蓄電池を制御することが、本発明の目的である。つまり、蓄電池を制御しない場合に発生するインバランスIBを、蓄電池を制御することで最小化する。
【0015】
(実施形態)
次に、実施形態について説明する。まず、用語の定義は、以下の通りである。
BG・PV発電量[kWh]は、BG内のある時刻スロット(30分間)のPV発電の電力量の合計値[kWh]である。
【0016】
BG蓄電池充電量[kWh]は、BG内のある時刻スロット(30分間)の蓄電池の充電量の合計値[kWh]である。
BG蓄電池放電量[kWh]は、BG内のある時刻スロット(30分間)の蓄電池の放電量の合計値[kWh]である。
【0017】
BG発電量[kWh]は、ある時刻スロット(30分間)で、BGが発電する電力量[kWh]であり、以下の式により算出される。
BG発電量=BG・PV発電量+BG蓄電電池放電量-BG蓄電池充電量
【0018】
BG・PV発電量(t)[kWh]は、BG内において、時刻tから1分間のPV発電の電力量の合計値[kWh]である。
BG蓄電池充電量(t)[kWh]は、BG内において、時刻tから1分間の蓄電池の充電量の合計値[kWh]である。
【0019】
BG蓄電池放電量(t)[kWh]は、BG内において、時刻tから1分間の蓄電池の放電量の合計値[kWh]である。
BG発電量(t)[kWh]は、BG内において、時刻tから1分間で、BGが発電する電力量の合計値[kWh]である。
【0020】
また、上記の各用語に対して、予測値、計画値、実績値、指示値、推定値の意味は、以下の通りである。
予測値は、インバランス回避装置10の入力として与えられる計画段階の、PVなどの再エネ電源の発電量予測[kWh]、ならびに、インバランス回避装置10が、後述のBG発電量計画値と、BG発電量推定値、とを入力にして、将来のインバランス量を計算したインバランスの予測値[kWh]とする。
【0021】
計画値は、インバランス回避装置10の入力として与えられる計画段階の、BG発電量、蓄電池充放電量である。なお、BG発電量、蓄電池充放電量は制御可能なため計画値とし、再エネ電源の発電量は制御不可能なため予測値とする。
【0022】
実績値は、制御部27および制御部29が、インバランス回避装置10へ出力する電力量[kWh]である。
指示値は、インバランス回避装置10から、制御部27および制御部29へ出力する電力指示値[kW]である。
【0023】
推定値は、インバランス回避装置10によって導出された、尤らしい統計的モデルから得られる発電量の推定値[kWh]である。
【0024】
図2は、実施形態の電力システムSの概要を示す全体構成図である。電力システムSは、アグリゲータ1と、需要家4と、卸電力市場5と、広域機関6と、複数の発電所8と、を備える。
【0025】
広域機関6は、電力広域的運営推進機関であり、電力の安定供給の確保のため、全国の電力の需給状況や電力系統2の運用状況を24時間監視し、系統運用者の電力需給を管理する。電力系統2を利用する全ての系統利用者(発電事業者、小売電気事業者など)は、広域機関6に発電や需要の計画(年間、月間、週間、前日などの計画)を提出することになっている。そして、広域機関6は、これらの計画の整合性などを確認し、系統運用者に転送する。
【0026】
アグリゲータ1は、複数の発電所8を束ねて管理する事業者である。すなわち、複数の発電所8は、発電BG3として機能する。
【0027】
アグリゲータ1は、複数の発電所8の各々の発電量などを予測し、卸電力市場5での売電や、需要家4との電力の直接取引等を行う。また、アグリゲータ1は、発電所8の発電スケジュール等に基づいて発電所8の各々の発電量等を制御することにより、広域機関6に提出した発電計画に対する同時同量を達成したり、電力系統2の負荷平準化に貢献したりする。
【0028】
アグリゲータ1は、インバランス回避装置10を備える。インバランス回避装置10は、広域機関6に提出した再生可能エネルギーの発電計画通りになるように、発電所8の蓄電池を制御する。
【0029】
発電所8は、例えば、発電システム20、蓄電池システム21等である。発電システム20は、蓄電池25と、PV(Photovoltaics)26と、を備える。PV26は、太陽光発電装置であり、再生可能エネルギー電源の例である。発電システム20は、再生可能エネルギー電源を備えた構成であればよい。このため、発電システム20は、PV26に替えて、地熱、風、水などの自然界に存在する環境や資源を利用した発電装置を備えた構成であってもよい。本実施形態では、発電システム20が、太陽光発電装置であるPV26を備えた構成を例として説明する。
【0030】
本実施形態では、発電システム20の蓄電池25、および、蓄電池システム21の蓄電池25は、発電BG3内のどのPV26からでも充電可能である。
本実施形態では、インバランス回避装置10が、発電BG3に含まれる1または複数の蓄電池25に対する充放電量の指示値を作成する形態を例として説明する。
【0031】
インバランス回避装置10は、PC(Personal Computer)等であり、CPU(Central Processing Unit)と、メモリと、HDD(Hard Disk Drive)と、通信インタフェース(I/F)と、ディスプレイ等の表示装置と、キーボードやマウス等の入力装置と、を備える通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっている。
【0032】
図3は、インバランス回避装置10、発電システム20、蓄電池システム21の機能構成の例を示す図である。なお、発電システム20と蓄電池システム21は、それぞれ1つ以上であればよい。
【0033】
まず、発電システム20について説明する。発電システム20は、電力量計23と、発電部24と、を備える。電力量計23は、発電部24から出力される電力量を計測する。すなわち、電力量計23は、発電システム20の発電量である発電システム出力を計測する。発電システム出力は、発電システム20から電力系統2へと供給される電力量である。電力量計23は、単位時間(所定単位時間。時間スロット)ごとに発電システム出力を計測する。
【0034】
単位時間とは、電力システムSで管理される管理時間である。本実施形態では、単位時間が30分である形態を例として説明する。
【0035】
発電部24は、蓄電池25と、PV26と、制御部27と、を備える。上述したように、本実施形態では、蓄電池25は、自身の発電システム20のPV26からだけでなく、別の発電システム20のPV26からも充電可能である。制御部27は、インバランス回避装置10から受付けた充放電計画および発電計画に基づいて蓄電池25の充放電等を制御する。この制御の詳細は後述する。また、制御部27は、PV26のPV発電量実績値、蓄電池25の充放電量実績値、および、蓄電池25の充電率である蓄電池SoC(State Of Charge)を単位時間ごとにインバランス回避装置10へ出力する。なお、これらの情報が、電力量計23、蓄電池25、および、PV26の各々からインバランス回避装置10へ出力される構成であってもよい。
【0036】
次に、蓄電池システム21について説明する。蓄電池システム21は、電力量計23と、蓄電部28と、を備える。蓄電部28は、蓄電池25と、制御部29と、を備える。上述したように、本実施形態では、蓄電池25は、発電システム20のPV26からの充電も可能である。制御部29は、インバランス回避装置10から受付けた充放電計画および発電計画に基づいて蓄電池25の充放電等を制御する。この制御の詳細は後述する。また、制御部29は、蓄電池25の充放電量実績値、および、蓄電池25の充電率である蓄電池SoCを単位時間ごとにインバランス回避装置10へ出力する。なお、これらの情報が、電力量計23、蓄電池25の各々からインバランス回避装置10へ出力される構成であってもよい。
【0037】
次に、インバランス回避装置10について説明する。インバランス回避装置10は、通信部11と、入力部12と、表示部13と、記憶部14と、制御部15と、を備える。それらの各構成は、バス等によって互いに通信可能に接続されている。
【0038】
通信部11は、広域機関6、予測システム7、発電システム20、蓄電池システム21と通信するための通信インターフェースである。入力部12は、ユーザによる操作入力を受付けるキーボード等の入力デバイスである。表示部13は、各種の情報を表示するディスプレイである。記憶部14は、各種の情報を記憶する。記憶部14は、例えば、HDDやメモリ等である。
【0039】
制御部15は、情報処理を実行する演算部である。制御部15は、1つ以上のPV26、および、複数の蓄電池25を有する発電BG3に対して設けられ、指示値作成部151と、インバランス算出部152と、通信遅れ算出部153と、余力算出部154と、表示制御部155と、システム制御部156と、を備える。
【0040】
各部151~156は、例えば、1または複数のプロセッサにより実現される。例えば、各部151~156は、CPUなどのプロセッサにプログラムを実行させること、すなわちソフトウェアにより実現してもよい。また、各部151~156は、専用のIC(Integrated Circuit)などのプロセッサ、すなわちハードウェアにより実現してもよい。また、各部151~156は、ソフトウェアおよびハードウェアを併用して実現してもよい。複数のプロセッサを用いる場合、各プロセッサは、各部151~156のうち1つを実現してもよいし、各部のうち2以上を実現してもよい。
【0041】
指示値作成部151は、PV26ごとの単位時間におけるPV発電量予測値と、PV26ごとの単位時間における現在までのPV発電量実績値と、蓄電池25ごとの充放電量実績値と、蓄電池25ごとの指示から動作開始までの遅延時間を示す通信遅延時間と、広域機関6に提出した発電計画と、に基づいて、単位時間における発電BG3の発電と需要のインバランスを最小にするように蓄電池25ごとの充放電量に関する指示値を作成する。以下、指示値作成部151について詳述する。
【0042】
例えば、指示値作成部151は、広域機関6に提出した任意の時間帯の発電量計画値と、同時間帯のPV26のPV発電量予測値と、現在の蓄電池SoCと、に基づいて、インバランスの予測値を最小化する充放電量の指示値を作成する。
【0043】
具体的には、まず、指示値作成部151は、PV26のPV発電量予測値を導出する。PV26のPV発電量予測値とは、単位時間ごとのPV26のPV発電量の予測値である。指示値作成部151は、発電システム20から取得したPV26のPV発電量実測値や、日照量等の気象情報等に基づいて、単位時間ごとのPV発電量予測値を導出する。なお、指示値作成部151は、予測システム7、入力部12、記憶部14などからPV発電量予測値を取得することで、PV発電量予測値を導出してもよい。
【0044】
また、インバランス算出部152は、PV26ごとの単位時間におけるPV発電量予測値と、PV26ごとの単位時間における現在までのPV発電量実績値と、蓄電池25ごとの充放電量実績値と、蓄電池25ごとの通信遅延時間と、広域機関6に提出した発電計画と、に基づいて、インバランスの予測値を算出する(詳細は後述)。
【0045】
そして、指示値作成部151は、インバランスの予測値に基づいて、単位時間における発電BG3のインバランスを最小にするように蓄電池25ごとの充放電量に関する指示値を作成する。このとき、指示値作成部151は、通信遅れ算出部153で算出された通信遅延時間を加味した指示値を算出する(詳細は後述)。
【0046】
また、余力算出部154は、蓄電池25ごとの、定格出力で実現可能な第1の充放電余力と、現在のSOCと上下限SOCとの差分で算出される第2の充放電余力と、のうちの小さなほうを充放電余力として算出する(詳細は後述)。
そして、指示値作成部151は、余力算出部154によって算出された充放電余力に基づいて、指示値を算出する。
【0047】
指示値作成部151は、作成した指示値を、表示制御部155およびシステム制御部156へ出力する。
【0048】
表示制御部155は、指示値作成部151から受付けた指示値を表示部13へ表示する。このため、ユーザは表示部13を視認することで蓄電池25に対する充放電量の指示値を確認することができる。
【0049】
また、システム制御部156は、指示値作成部151によって作成された指示値に基づいて蓄電池25を制御する。例えば、システム制御部156は、指示値作成部151から受付けた指示値を、通信部11を介して発電システム20および蓄電池システム21へ出力する。
【0050】
インバランス回避装置10から充放電量の指示値を受付けた発電システム20の制御部27(蓄電池システム21の制御部29)は、受け付けた指示値に基づいて蓄電池25を制御する。詳細には、制御部27(制御部29)は、指示値通りに、蓄電池25の充電電力および放電電力を制御する。蓄電池25は、充電電力を示す指示信号を受付けると、PV26で発電された電力のうち、指示信号によって示される充電電力の電力を充電する。また、蓄電池25は、放電電力を示す指示信号を受付けると、指示信号によって示される放電電力の電力を電力系統2へ放電する。また、制御部27は、発電計画通りの発電システム出力が得られるように、発電計画に沿って蓄電池25の充放電を制御してもよい。
【0051】
なお、システム制御部156が、指示値作成部151で作成された指示値に基づいて蓄電池25を制御してもよい。すなわち、制御部27による蓄電池25の制御機能(制御部29による蓄電池25の制御機能)を、システム制御部156が備えた構成であってもよい。本実施形態では、システム制御部156が、指示値作成部151で作成された充放電量指示値に基づいて、蓄電池25を制御する形態を例として説明する。
【0052】
次に、図4図6を用いて、制御部15での計算について説明する。図4は、インバランスの予測値の算出の例の説明図である。(a)は、発電BG3での発電電力の1分ごとの時間推移を示す図である。(b)は、発電BG3での蓄電池25の充放電(上側が放電で、下側が充電)の1分ごとの時間推移を示す図である。
【0053】
(a)に示すように、BG・PV発電量実績値42(合計値)に基づいて、例えば、最小二乗法などの手法によって、BG・PV発電量推定値41を算出する。また、(b)に示すように、発電BG3内のすべての蓄電池25について、BG蓄電池充放電量実績値C1と、BG蓄電池充放電量指示値C2と、を取得する。
【0054】
そして、インバランスは、30分コマ終端でのBG・PV発電量推定値41[kWh]とBG蓄電池充放電量[kWh](BG蓄電池充放電量実績値C1とBG蓄電池充放電量指示値C2の合計)との合計値から、発電量計画値を減算した値で計算される。具体的には、[数式1]で各時刻のBG・PV発電量推定値(t)を求め、[数式2]を用いてインバランスを算出する。現在時刻tcの計算をする場合、通信遅延時間tdを考慮している。なお、例えば、「Σt=0 tc+td」は、時刻0から時刻tc+tdまでの積算値を示す。また、A(t)は関数を示し、Bは定数を示す。
【0055】
[数式1]
BG・PV発電量推定値(t)[kWh] =A(t)+B
minimize A,BΣt=0 tc(BG・PV発電量実績値-A(t)+B)2
【0056】
[数式2]
インバランス[kWh]=
Σt=0 tc+td {BG・PV発電量推定値(t)+BG蓄電池放電量(t)
-BG蓄電池充電量(t))}
t=tc+td+1 T (BG・PV発電量推定値(t))-BG発電量計画値
【0057】
図5は、発電BG3における蓄電池出力算出の例の説明図である。なお、BG発電量推定値P2は、時刻0から時刻tc+tdまでは、BG・PV発電量推定値(t)+BG蓄電池放電量(t)-BG蓄電池充電量(t)で与えられ、時刻tc+td+1から時刻Tまでは、BG・PV発電量推定値(t)で与えられる。ここでは、発電BG3のインバランスに対して、インバランスを回避するためのBG蓄電池出力を決定する例を説明する。BG蓄電池出力は、[数式3]で示すように、インバランスIBを相殺するための電力量を、時刻tc+tdから時刻T(=30)になるまで一定で出力したことを仮定し、算出する。
【0058】
[数式3]
BG蓄電池出力[kW]
=(-インバランスIB[kWh]/((T[min]-(tc+td)[min])/60[min/h])
【0059】
図6は、充放電余力算出の概念図である。ここでは、インバランス回避装置10によって、蓄電池25の充放電量の配分を決定する際に用いられる、充放電余力(kW)(定格出力で実現可能な第1の充放電余力)と、充放電余力(kWh)(現在のSOCと上下限SOCとの差分で算出される第2の充放電余力)と、を示す図である。
【0060】
充放電余力(kW)は、蓄電池25の定格出力で、現在時刻から30分までの残り時間で充放電した場合に充電(または放電)可能な電力量であり、[数式4]で定義される。充放電余力(kWh)は、現在の蓄電池25の蓄電池SoCと、蓄電池25の上限あるいは下限の蓄電池SoCとの差分容量であり、[数式5]として定義される。
【0061】
蓄電池25は容量制約から、充放電余力(kW)、充放電余力(kWh)のどちらか小さいほうでしか、充放電ができないため、充放電余力は[数式6]で定義できる。なお、min(A,B)は、AとBの小さいほうを選択する関数である。
【0062】
[数式4]
充電余力C13(kW)[kWh] =定格充電電力C11(kW)×
((T[min]-(tc+td)[min])/60[min/h])
放電余力D13(kW)[kWh] =定格放電電力D11(kW)×
((T[min]-(tc+td)[min])/60[min/h])
※ここでの(kW)は単位を意味するものではない。[kW][kWh]が単位を表す。
【0063】
[数式5]
充電余力C12(kWh)[kWh]=(蓄電池上限SoC[-] - 蓄電池SoC(tc+td)[-]))×
蓄電容量[kWh]
放電余力D12(kWh)[kWh]=(蓄電池SoC(tc+td)[-] - 蓄電池下限SoC[-]))×
蓄電容量[kWh]
※ここでの(kW)は単位を意味するものではない。[kW][kWh]が単位を表す。
【0064】
[数式6]
充電余力[kWh]=min(充電余力(kW)[kWh], 充電余力(kWh)[kWh])
放電余力[kWh]=min(放電余力(kW)[kWh], 放電余力(kWh)[kWh])
【0065】
図7は、充放電余力に基づいてそれぞれの蓄電池25への指示値を作成する例を示す図である。ここでは、指示値作成部151が、時刻(tc+td+1)[min]における各蓄電池出力指示値を作成する例を説明する。
【0066】
まず、本事例の仮定条件を説明する。発電BG3下に3つの蓄電池25(25A、25B、25C)があるとする。インバランス算出部152により、インバランスが計算され、その結果が+200kWh(BG発電量実績値がBG発電量計画値より200kWhオーバー)である。この結果を基に、指示値作成部151が算出した時刻(tc+td+1)[min]のBG蓄電池出力が-2400kW(2400kWの充電)である。一方、余力算出部154による計算で、蓄電池25Aの充電余力が130kWh、放電余力が180kWhであり、同様に、蓄電池25B、25Cの充電余力、放電余力が図示した値になったものとする。
【0067】
指示値作成部151は、複数の蓄電池25の充放電余力の比に基づいて、蓄電池25ごとの指示値を決定する。具体的には、指示値作成部151は、(tc+td+1)[min]のBG蓄電池出力-2400kW、蓄電池25A~25Cの充放電余力を入力として、[数式7]により充放電余力の比を求め、それぞれの蓄電池25の出力を[数式8]により決定する。そうすると、蓄電池出力配分結果は、図8の右側に示す通りとなる。
【0068】
[数式7]
蓄電池jの放電余力比=蓄電池jの放電余力/Σj=1…n (蓄電池放電余力)
蓄電池jの充電余力比=蓄電池jの充電余力/Σj=1…n (蓄電池充電余力)
【0069】
[数式8]
If BG蓄電池出力≧0 Then
蓄電池jの出力指示値=蓄電池jの放電余力比×BG蓄電池出力
ELSE
蓄電池jの出力指示値=蓄電池jの充電余力比×BG蓄電池出力
【0070】
図8は、インバランス回避処理の流れの例を示すフローチャートである。ここでは、ある1つの時刻コマにおけるインバランス回避処理の流れを説明する。なお、インバランス回避装置10は、30分の時刻コマの毎コマ、図8の処理を実施する。
【0071】
まず、指示値作成部151は、記憶部14に記憶された情報を初期化する(ステップS100)。
次に、指示値作成部151は、PV発電量予測値を取得する(ステップS101)。
次に、指示値作成部151は、広域機関6に提出した発電計画を取得する(ステップS102)。
【0072】
次に、指示値作成部151は、次の実行時刻(例えば、処理が1分間隔の場合、1分後)になったか否かを判定し(ステップS103)、Yesの場合はステップS104に進み、Noの場合はステップS103aで処理待ちをしてステップS103に戻る。
【0073】
ステップS104において、指示値作成部151は、時刻コマが終了したか否かを判定し、Yesの場合はこの時刻コマにおけるインバランス回避処理を終了し、Noの場合はステップS105に進む。
【0074】
ステップS105において、指示値作成部151は、PV26のPV発電量実績値、および、蓄電池25の蓄電池SoCを取得する。なお、PV26のPV発電量実績値は、この処理で実行している時刻コマにおける0分から取得時刻までの積算量を意味する。
【0075】
次に、インバランス算出部152は、ステップS101で取得したPV発電量予測値およびステップS102で取得した発電計画(発電量計画値)、ステップS105で取得した実績値に基づいて、当該単位時間におけるインバランスの予測値を算出する(ステップS106)。このとき、インバランス算出部152は、通信遅れ算出部153が算出した通信遅延による影響を考慮した計算を行う(図4)。
【0076】
次に、指示値作成部151は、ステップS106で算出されたインバランスの予測値を相殺するようにBG蓄電池出力を計算する(図5)(ステップS107)。BG蓄電池出力(充放電1分値)は、この時刻コマの残り時間(分)の間の一定値として算出する。また、現在時刻tcが0~15(分)の間は、BG蓄電池出力を0kWhとする。なお、0~15(分)における「15(分)」は例であり、これに限定されない。
【0077】
次に、余力算出部154は、ステップS107で算出された蓄電池出力を、発電BG3内の複数の蓄電池25に配分するために、充放電余力を計算する(図6)(ステップS108)。上述したように、充放電余力は、充放電余力(kW)と充放電余力(kWh)の小さいほうの値である。
【0078】
次に、指示値作成部151は、ステップS107で算出された発電BG3おける蓄電池出力を、ステップS108で計算された複数の蓄電池25の充放電余力の比によって配分し、蓄電池25ごとの蓄電池出力を決定する(ステップS109)。
【0079】
次に、表示制御部155は、ステップS109で作成された複数の蓄電池25の指示値を表示部13へ表示する(ステップS110)。
【0080】
次に、システム制御部156は、ステップS109で作成された複数の蓄電池25の指示値を用いて蓄電池25ごとの充放電制御を実行する(ステップS111)。例えば、システム制御部156は、通信部11を介して、蓄電池25ごとに対して、ステップS109で作成された指示値で制御する。本ルーチンを、この時刻コマが終了するまで1分毎に実行し終了する。
【0081】
このようにして、本実施形態の電力システムSによれば、通信遅延時間を考慮した蓄電池25ごとの充放電量に関する指示値を作成することで、GC後の再生可能エネルギー発電量の変動に対応するとともに、通信遅延を考慮した蓄電池制御を行い、発電BG3全体でインバランスを回避することができる。
【0082】
また、複数の蓄電池25の充放電余力の比に基づいて指示値を作成することで、それぞれの蓄電池25をバランスよく動作させることができる。
【0083】
また、蓄電池25ごとの指示値を決定する場合に、定格出力で実現可能な第1の充放電余力と、現在のSOCと上下限SOCとの差分で算出される第2の充放電余力と、のうちの小さなほうを充放電余力として用いることで、蓄電池25ごとの現在の蓄電状況に応じて、それぞれの蓄電池25を動作させることができる。
【0084】
なお、上述した実施形態における、上記情報処理を実行するためのプログラムは、上記複数の機能部の各々を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしては、例えば、CPUがROM(Read Only Memory)またはHDDから情報処理プログラムを読み出して実行することにより、上述した複数の機能部の各々がRAM(Random Access Memory)上にロードされ、上述した複数の機能部の各々がRAM(主記憶)上に生成されるようになっている。なお、上述した複数の機能部の各々の一部または全部を、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)などの専用のハードウェアを用いて実現することも可能である。
【0085】
なお、上記には、本開示の実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、本開示の範囲を限定することは意図していない。上記新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施形態は、本開示の範囲または要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0086】
例えば、インバランス回避装置10の機能の少なくとも一部を、クラウドコンピューティングシステムによって実現してもよい。
【符号の説明】
【0087】
1…アグリゲータ、2…電力系統、3…発電BG、4…需要家、5…卸電力市場、6…広域機関、7…予測システム、10…インバランス回避装置、11…通信部、12…入力部、13…表示部、14…記憶部、15…制御部、20…発電システム、21…蓄電池システム、23…電力量計、24…発電部、25…蓄電池、26…PV、27…制御部、28…蓄電部、151…指示値作成部、152…インバランス算出部、153…通信遅れ算出部、154…余力算出部、155…表示制御部、156…システム制御部、S…電力システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8