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  • 特開-温度調節装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110466
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】温度調節装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/78 20060101AFI20240808BHJP
   B29C 45/17 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
B29C45/78
B29C45/17
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015009
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000146054
【氏名又は名称】株式会社松井製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】目次 正明
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AB11
4F206AB25
4F206AJ12
4F206AJ13
4F206AK01
4F206AK02
4F206AK05
4F206AK13
4F206AM04
4F206AR06
4F206JA07
4F206JL02
4F206JM16
4F206JP13
4F206JP14
4F206JP15
4F206JP21
4F206JQ88
(57)【要約】
【課題】温度調節対象の媒体流通路に温調媒体を円滑に循環させ得る温度調節装置を提供する。
【解決手段】温度調節装置1は、温度調節対象4の媒体流通路5に接続される循環路10に温調媒体を循環させる循環ポンプ17と、温調媒体の温度を検出する温度検出部18と、温調媒体の温度が予め設定された目標温度となるように、前記温度検出部の検出温度に基づいて加熱部12及び冷却部34を制御する制御部7と、温調媒体の供給源2に連通され、かつ前記温度検出部の検出温度に基づいて前記循環路の温調媒体の圧力が飽和蒸気圧以上となるように前記制御部に駆動制御される加圧ポンプ22と、を備えており、前記制御部は、前記冷却部が冷却動作をしている際に所定の強制加圧モードとなれば、前記加圧ポンプを強制的に駆動させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度調節対象の媒体流通路に接続される循環路に温調媒体を循環させる循環ポンプと、温調媒体の温度を検出する温度検出部と、温調媒体の温度が予め設定された目標温度となるように、前記温度検出部の検出温度に基づいて加熱部及び冷却部を制御する制御部と、温調媒体の供給源に連通され、かつ前記温度検出部の検出温度に基づいて前記循環路の温調媒体の圧力が飽和蒸気圧以上となるように前記制御部に駆動制御される加圧ポンプと、を備えており、
前記制御部は、前記冷却部が冷却動作をしている際に所定の強制加圧モードとなれば、前記加圧ポンプを強制的に駆動させることを特徴とする温度調節装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記制御部は、前記強制加圧モードとなれば、前記加圧ポンプを間欠的に駆動させることを特徴とする温度調節装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記制御部は、前記検出温度が前記目標温度に予め設定された所定値を加えた加圧停止温度を超えていれば、前記強制加圧モードになったと判断することを特徴とする温度調節装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項において、
前記循環路から分岐するように設けられた分岐路が連通するように接続された媒体路及び冷却媒体を通過させる冷却路を有した熱交換器を備えており、
前記冷却部は、前記分岐路に設けられ該分岐路を開閉する冷却弁であることを特徴とする温度調節装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、温度調節対象を温度調節する温度調節装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、金型等の温度調節対象の媒体流通路に温調媒体を循環供給し、温度調節対象の温度を調節する温度調節装置が知られている。
例えば、下記特許文献1には、金型に接続される循環路を循環する媒体の圧力が飽和蒸気圧力より高くなるように加圧する加圧ポンプを備えた金型温度調節機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-87441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような金型温度調節機において検出温度が目標温度よりも高温になったり、金型変更や段階的な温度調節等で目標温度が低い温度に変更されたりすれば、冷却動作が実行され、媒体が冷却される。しかしながら、媒体が冷却されれば、媒体の温度低下によって系内の媒体の体積が収縮して系内の圧力が低下し、系内に存在する空気が膨張することが考えられる。また、圧力が低下することによって系内の媒体が沸騰し、キャビテーションが生じれば、ポンプに悪影響を及ぼすことも考えられる。また、系内の媒体の体積が収縮することによって媒体を加熱するヒータータンク等に設けられたフロートスイッチ等の媒体センサーが媒体減を検出すれば、媒体を循環させるポンプ等が停止されて媒体供給動作に移行したり、また、成形機が金型温度調節機からの信号を受信可能とされて金型温度調節機と連動している場合には成形機が停止することも考えられる。
【0005】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、温度調節対象の媒体流通路に温調媒体を円滑に循環させ得る温度調節装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本開示に係る温度調節装置の構成1は、温度調節対象の媒体流通路に接続される循環路に温調媒体を循環させる循環ポンプと、温調媒体の温度を検出する温度検出部と、温調媒体の温度が予め設定された目標温度となるように、前記温度検出部の検出温度に基づいて加熱部及び冷却部を制御する制御部と、温調媒体の供給源に連通され、かつ前記温度検出部の検出温度に基づいて前記循環路の温調媒体の圧力が飽和蒸気圧以上となるように前記制御部に駆動制御される加圧ポンプと、を備えており、前記制御部は、前記冷却部が冷却動作をしている際に所定の強制加圧モードとなれば、前記加圧ポンプを強制的に駆動させることを特徴とする。
【0007】
以下の実施の形態の記載により、本開示に係る温度調節装置は、以下の従属的構成を備えていてもよいことが開示される。
<構成2>
構成1において、前記制御部は、前記強制加圧モードとなれば、前記加圧ポンプを間欠的に駆動させてもよい。
<構成3>
構成1または構成2において、前記制御部は、前記検出温度が前記目標温度に予め設定された所定値を加えた加圧停止温度を超えていれば、前記強制加圧モードになったと判断してもよい。
<構成4>
構成1~構成3のいずれか1つにおいて、前記循環路から分岐するように設けられた分岐路が連通するように接続された媒体路及び冷却媒体を通過させる冷却路を有した熱交換器を備えていてもよい。
<構成5>
構成4において、前記冷却部は、前記分岐路に設けられ該分岐路を開閉する冷却弁でもよい。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る温度調節装置は、上述のような構成としたことで、温度調節対象の媒体流通路に温調媒体を円滑に循環させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の一実施形態に係る温度調節装置の一例を模式的に示す概略システム構成図である。
図2】同温度調節装置において実行される基本動作の一例を模式的に示す概略タイムチャートである。
図3】本開示の他の実施形態に係る温度調節装置の一例を模式的に示す概略システム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1及び図3では、温調媒体等の流体が通過する経路となる管路(配管)等を、実線及び破線にて模式的に示している。図2における概略タイムチャートでは、各機器のON/OFF動作や開閉動作等を模式的に示している。図2におけるグラフでは、横軸を時間軸、縦軸を温度検出部の検出温度とし、その推移を模式的に示している。
【0011】
図1及び図2は、第1実施形態に係る温度調節装置の一例及びこれを用いて実行される基本動作の一例を模式的に示す図である。
本実施形態に係る温度調節装置1は、図1に示すように、温度調節対象としての金型4の媒体流通路5に接続される循環路10に温調媒体を循環させる循環ポンプ17と、温調媒体の温度を検出する温度検出部18と、を備えている。つまり、本実施形態では、温度調節装置1は、金型4を温度調節する金型温度調節装置を構成する。
【0012】
温度調節装置1は、温調媒体の温度が予め設定された目標温度となるように、温度検出部18の検出温度に基づいて加熱部を構成するヒーター12及び冷却部を構成する冷却弁34を制御する制御部7と、温調媒体の供給源2に連通され、かつ温度検出部18の検出温度に基づいて循環路10の温調媒体の圧力が飽和蒸気圧以上となるように制御部7に駆動制御される加圧ポンプ22と、を備えている。
このような構成とすれば、目標温度が常圧の沸点よりも高温である場合にも加熱された温調媒体を沸騰させることなく媒体流通路5に供給することができる。また、検出温度に基づいて加圧ポンプ22が駆動制御されるので、目標温度が高温である場合に加圧ポンプ22を常時稼働させる構成と比べて、加圧ポンプ22の長寿命化が図れ、また、循環路10や媒体流通路5に過剰な圧力が掛かることを抑制することができる。
【0013】
金型4は、例えば、固定型と可動型とを有した構成とされており、これら固定型及び可動型には、温調媒体を流通させる媒体流通路5,5がそれぞれに設けられている。これら媒体流通路5,5の入口(送媒接続口)側には、循環路10を構成する送媒路16が接続される。媒体流通路5,5の出口(返媒接続口)側には、循環路10を構成する返媒路19が接続される。
送媒路16と媒体流通路5,5の入口とは、単一の送媒路16を複数に分岐させるマニホールド部やこのマニホールド部の複数の接続口に接続されたホースやチューブ等の可撓性を有した配管材を介して接続されていてもよい。また、マニホールド部や管路等の適所に、媒体流通路5,5に向けて送媒される温調媒体の通過を許容または遮断する送媒バルブを設けた例を示している。
【0014】
返媒路19と媒体流通路5,5の出口とも略同様、単一の返媒路19を複数に分岐させるマニホールド部やこのマニホールド部の複数の接続口に接続されたホースやチューブ等の可撓性を有した配管材を介して接続されていてもよい。また、マニホールド部や管路等の適所に、媒体流通路5,5から返媒される温調媒体の通過を許容または遮断する返媒バルブを設けた例を示している。
金型4の温度を検出する温度センサーを適所に設けた構成としてもよい。例えば、この温度センサーを、金型4に埋込状に設けた構成としてもよく、また、媒体流通路5の入口側部位や入口近傍部位の送媒路16、媒体流通路5の出口側部位や出口近傍部位の返媒路19等に設けた態様としてもよい。
この金型4の成形機としては、金型4の固定型と可動型とによって形成されるキャビティー等に、シリンダ等で溶融させた材料としての合成樹脂をノズル等から射出して充填し、成形品を逐次、成形する射出成形機等でもよい。成形機としては、溶融させた材料を金型からシート状に押し出して成形する押出成形機等でもよく、圧縮成形機等の他の成形機でもよい。成形材料としては、合成樹脂材料に、炭素繊維やガラス繊維等の強化繊維を含有させた繊維強化合成樹脂材料等でもよい。
温度調節対象としては、金型4に限られず、温調媒体が供給されて温度調節される構成とされていればよく、例えば、床暖房装置や、その他、種々の機械等であってもよい。
【0015】
温度調節装置1は、温調媒体を満たした状態(満水状態)で貯留し、送媒路16及び返媒路19並びに金型4の媒体流通路5,5とによって循環路10を構成する媒体貯留部11を備えている。この媒体貯留部11に温調媒体を加熱する加熱部を構成するヒーター12を設けた例を示している。
媒体貯留部11は、有底筒状のタンク状とされ、当該温度調節装置1の稼働中には、原則的には温調媒体で満たされ満レベルとされる。ヒーター12は、筒状とされた媒体貯留部11内において略同軸状に延びるように設けられている。このヒーター12は、図例では、媒体貯留部11の天壁部に保持されている。媒体貯留部11には、このヒーター12を停止させる過温防止用のサーモスタット13が設けられている。温調媒体を加熱する加熱部としては、このようなヒーター12に限られず、その他、種々の構成とされていてもよい。
【0016】
この媒体貯留部11の上端部には、温調媒体を排出する(オーバーフローさせる)排出路25が接続されている。この排出路25には、温調媒体の通過を許容または遮断する排出弁26が設けられている。この排出弁26は、後記する制御部7によって開閉制御される電磁弁等でもよい。
媒体貯留部11には、媒体貯留部11内の温調媒体の媒体レベルの低下を検出する媒体センサー14が設けられている。この媒体センサー14としては、種々のレベル計(液面計)等でもよいが、図例では、媒体貯留部11の上端部に管路を介して接続され、かつ排出路25に連通するように接続されたフロートスイッチとした例を示している。
媒体貯留部11には、加圧ポンプ22によって加圧される循環路10を含む略密閉状となる系内の圧力を検出する適宜の圧力センサー等の圧力検出部15が配された管路が接続されている。図例では、この圧力検出部15が配された管路に、圧力を表示する圧力ゲージや圧力の異常上昇を防止するリリーフ弁(安全弁)を設けた例を示している。圧力検出部15を媒体貯留部11に設けた態様に代えて、または加えて、送媒路16や返媒路19等の循環路10の適所に設けた態様としてもよい。
媒体貯留部11の底部には、媒体貯留部11内の温調媒体を排出するドレン(ドレンバルブ)等が設けられている。
【0017】
送媒路16は、媒体貯留部11の下端部(図例では、底部)に接続されている。送媒路16には、循環ポンプ17が配設されている。図例では、この送媒路16の循環ポンプ17の吐出側となる下流側に、温度検出部18を設けた例を示しているが、この温度検出部18に代えて、または加えて、送媒路16の他の部位や媒体貯留部11、返媒路19等に温度検出部を設けた構成としてもよい。また、図例では、送媒路16の循環ポンプ17の下流側に、圧力ゲージを設けた例を示している。また、図例では、この送媒路16の循環ポンプ17の下流側部位と媒体貯留部11とを接続するようにバイパス路16Aを設けた例を示している。このバイパス路16Aには、温調媒体の通過を許容または遮断するバイパスバルブが設けられている。また、このバイパス路16Aが分岐された部位よりも下流側に温調媒体の通過を許容または遮断するバルブを設けた例を示している。このようなバルブやバイパス路16Aを設けた場合には、上記した送媒バルブや返媒バルブを設けていない構成としてもよい。
なお、バイパス路16Aの下流側端部を媒体貯留部11に接続した態様に代えて、返媒路19の途中部位に接続した態様としてもよい。
返媒路19は、媒体貯留部11の上端部(図例では、上端部の周壁)に接続されている。図例では、返媒路19に、ストレーナ等のフィルターを設けた例を示している。循環路10の適所に循環路10を流通する温調媒体の流量を検出する流量計が設けられていてもよい。
【0018】
加圧ポンプ22は、供給源2からの温調媒体を媒体貯留部11に供給する供給路20に設けられている。この加圧ポンプ22の吐出側には、逆流防止弁(逆止弁、チェックバルブ)等の適宜の逆流防止機能が設けられている。
供給路20の上流側端部が供給源2に連通するように接続され、供給路20の下流側端部が媒体貯留部11に接続されている。この供給路20には、温調媒体の供給圧力(給水圧)を検出する供給圧力検出部21が設けられている。また、この供給路20の上流側部位には、温調媒体の通過を許容または遮断する供給バルブやストレーナ等のフィルターが設けられている。温調媒体の供給源2としては、温調媒体としての水(清水)を供給する水道(工業用水道、上水道)でもよい。また、供給源2は、工場等に設置されるクーリングタワー等でもよい。この場合は、排出路25の下流側端部がクーリングタワーの戻り管路に接続されていてもよい。温調媒体としては、水に限られず、油系やアルコール系等の他の温調媒体でもよい。
【0019】
供給路20には、加圧ポンプ22の吸込側となる上流側と加圧ポンプ22の吐出側となる下流側とを接続するようにバイパス路23が設けられている。このバイパス路23には、上流(供給源2)側から下流(媒体貯留部11)側への温調媒体の流れを許容する一方、下流側から上流側への温調媒体の流れを阻止(遮断)する逆流防止弁(逆止弁、チェックバルブ)が設けられている。
この供給路20のバイパス路23よりも下流側部位から分岐するように、かつその下流側端部が排出路25の排出弁26よりも下流側部位に接続された分岐排出路24が設けられている。図例では、この分岐排出路24に、リリーフ弁(圧力逃がし弁)を設けた例を示している。供給路20の上流側部位等の適所に、供給源2から供給される温調媒体の供給圧が概ね一定圧力となるように維持する減圧弁が設けられていてもよい。
【0020】
本実施形態では、温度調節装置1は、循環路10から分岐するように設けられた分岐路(熱交換器側分岐路)33が連通するように接続された媒体路31及び冷却媒体を通過させる冷却路32を有した熱交換器30を備えている。つまり、本実施形態では、熱交換器30によって温調媒体を間接的に冷却する。媒体路31は、温調媒体を流通させる高温側流路となり、冷却路32は、冷却媒体を流通させる低温側流路となる。
媒体路31の入口及び出口には、循環路10から分岐して設けられた熱交換器側分岐路33が接続されている。
この熱交換器側分岐路33は、循環路10を循環する温調媒体の一部を媒体路31に流通させる構成とされている。この熱交換器側分岐路33は、送媒路16から分岐するように設けられている。図例では、この熱交換器側分岐路33を、循環ポンプ17の吐出側部位から分岐させた例を示している。また、図例では、この熱交換器側分岐路33の下流側端部を媒体貯留部11に接続した例を示している。
この熱交換器側分岐路33には、温調媒体の通過を許容または遮断する冷却弁34が設けられている。この冷却弁34は、後記する制御部7によって開閉制御される電磁弁等でもよい。図例では、冷却弁34を、熱交換器側分岐路33の熱交換器30よりも上流側部位に設けた例を示している。
【0021】
冷却路32の入口及び出口には、冷却媒体の供給源3に連通するように接続された冷媒供給路35が接続されている。この冷媒供給路35には、冷却媒体の通過を許容または遮断する冷媒弁36が設けられている。この冷媒弁36は、後記する制御部7によって開閉制御される電磁弁等でもよい。図例では、冷媒弁36を、冷媒供給路35の熱交換器30よりも上流側部位に設けた例を示している。また、図例では、冷媒供給路35の上流側部位に、冷却媒体の通過を許容または遮断する供給バルブやストレーナ等のフィルターを設けた例を示している。熱交換器30を媒体貯留部11外に設けた構成に代えて、媒体貯留部11内に設けた構成としてもよい。また、熱交換器30としては、プレート型や二重管型、シェルアンドチューブ型、クロスフィン型等の種々の構成とされていてもよい。図例では、向流型のような熱交換器30を例示しているが、直交流型や並流型等の種々の構成とされた熱交換器を採用するようにしてもよい。
【0022】
冷却媒体の供給源3としては、工場等に設置されるクーリングタワー等でもよい。この場合は、冷媒供給路35の排出側となる下流側端部がクーリングタワーの戻り管路に接続されていてもよい。この冷却媒体の供給源3は、上記した温調媒体の供給源2と同一でもよい。この場合は、冷媒供給路35を供給路20から分岐させるように設けた構成としてもよい。また、冷却媒体としては、適宜のチラー等の冷却器等によって温度制御がなされる構成でもよく、また、上記のように間接冷却(熱交換)式とし、温調媒体と混在しないように管路が構成された場合には、エタノールやエチレングリコール、その他のアルコール等としてもよく、その他の冷却媒体としてもよい。
【0023】
制御部7は、当該温度調節装置1の適所や当該温度調節装置1から離間した箇所に設置された適宜の制御盤6に設けられている。制御部7は、CPU(Central Processing Unit)等の制御回路を含み、後記する基本動作等を実行する。この制御部7は、上記したヒーター12やサーモスタット13、媒体センサー14、圧力検出部15、循環ポンプ17、温度検出部18、供給圧力検出部21、加圧ポンプ22、排出弁26、冷却弁34、冷媒弁36等を含む当該温度調節装置1の各部に信号線等を介して接続されている。ヒーター12や循環ポンプ17、加圧ポンプ22、排出弁26、冷却弁34、冷媒弁36等は、制御部7によって起動(ON)/停止(OFF)や開閉が制御される。
制御盤6には、各種設定などの設定や入力、表示をするための表示操作部9が設けられている。制御盤6には、表示操作部9の操作により設定、入力された設定条件や入力値、後記する基本動作等を実行するための制御プログラムなどの各種プログラム、予め設定された各種動作条件、各種データテーブル等が格納され、ROMやRAM等の各種メモリ等から構成された記憶部8が設けられている。
【0024】
制御部7は、冷却部が冷却動作をしている際に所定の強制加圧モードとなれば、加圧ポンプ22を強制的に駆動させる。このような構成とすれば、冷却部の冷却動作の実行によって温調媒体が冷却されれば、系内の温調媒体の体積が収縮して圧力低下が生じ、系内に存在する空気が膨張しようとするが、加圧ポンプ22が駆動されるので、圧力低下を抑制することができる。これにより、温調媒体が沸騰してキャビテーションが生じるようなことを軽減することができる。また、加圧されるとともに温調媒体の供給もなされるので媒体センサー14が媒体減を検出することがない。これにより、冷却部の冷却動作が実行された場合にも、循環ポンプ17が停止したり、成形機が温度調節装置1からの信号を受信可能とされて温度調節装置1と連動している場合にも成形機が停止したりするようなことがない。これにより、温度調節対象としての金型4の媒体流通路5に温調媒体を円滑に循環させることができる。
また、本実施形態のように温調媒体を間接的に冷却する熱交換器30を設けた場合には、直接冷却式とは異なり冷却動作によって直接的に温調媒体が循環路10内に供給されることはないが、強制加圧モードの実行により加圧ポンプ22が駆動されるので、温調媒体が循環路10内に供給される。これにより、上記同様、温調媒体が沸騰してキャビテーションが生じるようなことを軽減することができ、また、媒体減が検出されることなく、金型4の媒体流通路5に温調媒体を円滑に循環させることができる。また、直接冷却式とすれば、冷却動作時に、温調媒体の供給圧力によっては温調媒体の供給が円滑になされず、冷却弁(排出弁)が開放されてから循環路内の温調媒体が冷却されるまでにタイムラグが生じる懸念がある。一方、本実施形態では、温調媒体の供給に関わらず、熱交換器30において温調媒体が冷却されるのでタイムラグが生じるようなことがない。
【0025】
制御部7は、強制加圧モードとなれば、加圧ポンプ22を間欠的に駆動させる。このような構成とすれば、系内の圧力が急激に上昇するようなことを抑制することができ、加圧ポンプ22を強制的に駆動することによって循環路10や媒体流通路5に過剰な圧力が掛かることを抑制することができる。
制御部7は、検出温度が目標温度に予め設定された所定値を加えた加圧停止温度を超えていれば、強制加圧モードになったと判断する。このような構成とすれば、検出温度が目標温度に所定値を加えた加圧停止温度を超えていれば、加圧ポンプ22が強制的に駆動される。これにより、上記同様、温調媒体が沸騰してキャビテーションが生じるようなことを軽減することができ、また、媒体減が検出されることなく、金型4の媒体流通路5に温調媒体を円滑に循環させることができる。また、検出温度が加圧停止温度を下回れば、加圧ポンプ22を強制的に駆動させる強制加圧モードが終了し、加圧ポンプ22が停止されるので、系内の圧力が過度に上昇するようなことがない。また、所定値を適切な値に設定することで、加圧ポンプ22を強制的に駆動させる強制加圧モードが頻繁に実行されるようなことを抑制することもできる。
【0026】
具体的には、上記構成とされた温度調節装置1においては、制御部7によって各部が制御され、以下のような基本動作等が実行される。
温度調節装置1においては、起動初期等において系内に温調媒体が満たされていない場合、つまり、媒体センサー14が媒体無(補給レベル)を検出していれば、排出弁26を開放させる。これにより、供給源2からの温調媒体が供給路20及びバイパス路23を介して系内、つまり、媒体貯留部11、送媒路16、媒体流通路5、返媒路19、排出路25、媒体路31等に供給され、これらが温調媒体で満たされる。この際、冷却弁34を開放させて熱交換器側分岐路33にも温調媒体を通すようにしてもよい。そして、媒体センサー14が媒体満(満レベル)を検出すれば、排出弁26を閉鎖し、循環ポンプ17を起動して温調媒体を循環させながら温調媒体の温度が予め設定された目標温度となるようにヒーター12及び冷却弁34を制御し温調媒体を温度調節する定常運転を実行する。
【0027】
つまり、温度検出部18の検出温度に基づいて、温調媒体が目標温度となるように、ヒーター12への通電制御による加熱及び熱交換器30の媒体路31への温調媒体の供給制御(冷却弁34の開閉制御)による冷却がなされる。循環ポンプ17を起動すれば、温調媒体が循環路10を構成する送媒路16、媒体流通路5、返媒路19及び媒体貯留部11を循環する。ヒーター12が起動されれば、循環路10を循環する温調媒体が媒体貯留部11において加熱され、所定温度を上回れば、ヒーター12が停止される。冷却弁34が開放されれば、循環路10を循環する温調媒体の一部が熱交換器側分岐路33を介して媒体路31に供給され、熱交換器30において冷却され、所定温度を下回れば、冷却弁34が閉鎖される。つまり、熱交換器30において冷却路32を通過する冷却媒体との熱交換がなされて媒体路31を通過する温調媒体が間接的に冷却される。なお、冷却路32に冷却媒体を通過させる冷媒弁36は、冷却弁34に同期させて開閉するようにしてもよい。このような態様に代えて、温度検出部18の検出温度または目標温度が所定温度(例えば70℃~100℃)以上であれば、冷媒弁36が常時開放される構成でもよい。このような構成とすれば、冷却弁34を開放させれば、冷却路32を通過する冷却媒体によって冷却された熱交換器30において迅速に熱交換がなされるので冷却効率を向上させることができる。
【0028】
上記のように温調媒体の温度調整がなされれば、温調媒体の温度は、常温程度から目標温度(例えば、110℃~230℃程度の範囲内で予め設定された温度)に向けて上昇する。この際、温度検出部18の検出温度が予め設定された加圧ポンプ22を駆動させる温度下限値となる加圧設定温度(図2参照)を上回れば、加圧ポンプ22を駆動するようにしてもよい。例えば、温調媒体が水である場合には、系内における沸騰を確実に防止すべく、加圧設定温度を80℃~90℃程度としてもよい。
また、温度検出部18の検出温度に基づいて算出される飽和蒸気圧及び圧力検出部15の検出圧力に基づいて、循環路10(系内)の圧力が飽和蒸気圧以上となるように加圧ポンプ22を駆動制御する。温調媒体が水である場合には、飽和蒸気圧(絶対圧力)と温度(絶対温度)との関係は、例えば、ウェクスラーハイランドの式等を用いて算出可能である。このように算出された温度と飽和蒸気圧(絶対圧力)との関係から温度に対応するゲージ圧(飽和蒸気圧(絶対圧力)から大気圧を差し引いた圧力)を算出し記憶部8に予め格納させておいてもよく、制御部7の演算部等において算出してもよい。
【0029】
圧力検出部15の検出圧力が温度検出部18の検出温度に対応する飽和蒸気圧またはこれをゲージ圧に換算した圧力(検出温度対応圧力)を下回れば、加圧ポンプ22を駆動するようにしてもよい。この際、加圧ポンプ22を予め設定された所定時間が経過するまで駆動してもよい。または、圧力検出部15の検出圧力が検出温度対応圧力に所定値を加えた圧力を上回れば加圧ポンプ22を停止させるようにしてもよい。
また、冷却部が冷却動作をしている際(本実施形態では、冷却弁34が開放されて熱交換器30において温調媒体を冷却している際)に所定の強制加圧モードとなれば、加圧ポンプ22を間欠的に駆動させる。
【0030】
より具体的には、例えば、図2に示すように、温度検出部18の検出温度が予め設定された目標温度としての第1温度を上回れば、加熱動作から冷却動作に切り替えられ、冷却弁34が開放されて冷却がなされ、第1温度を下回れば、冷却動作から加熱動作に切り替えられ、ヒーター12が起動されて加熱がなされる。このように目標温度(第1温度)を境に切り替えられる態様に代えて、目標温度(第1温度)に数℃程度(例えば、1℃~3℃程度)の所定温度を加えた値を上回れば、冷却がなされ、目標温度(第1温度)から数℃程度(例えば、1℃~3℃程度)の所定温度を差し引いた値を下回れば、加熱がなされる構成としてもよい。
【0031】
そして、金型4の変更や段階的な温度調節等によって目標温度が第1温度よりも低い第2温度に変更されれば、冷却弁34が開放されて第2温度となるまで冷却がなされるが、この際、温度検出部18の検出温度が低下するため、上記のような圧力検出部15の検出圧力に基づく加圧ポンプ22の駆動はなされ難くなる。本実施形態では、温度検出部18の検出温度が第2温度に所定値を加えた加圧停止温度を超えていれば、強制加圧モードになったと判断し、加圧ポンプ22を間欠的に駆動して強制加圧する構成としている。また、温度検出部18の検出温度が加圧停止温度を下回れば、加圧ポンプ22の間欠駆動(強制加圧)を停止させる。そして、上記同様、温度検出部18の検出温度が第2温度を下回れば、冷却動作から加熱動作に切り替えられ、ヒーター12が起動されて加熱がなされ、第2温度を上回れば、加熱動作から冷却動作に切り替えられ、冷却弁34が開放されて冷却がなされる。
【0032】
加圧停止温度は、例えば、目標温度としての第2温度に所定値として2℃~10℃程度を加えた温度としてもよく、上記した所定温度よりも大きい値、例えば、4℃以上を加えた温度としてもよい。
上記強制加圧モードにおいて加圧ポンプ22を間欠駆動する際の駆動(ON)時間(パルス幅)及びパルス間の停止(OFF)時間は、急激な圧力上昇とならないように適宜の時間としてもよく、また、温調媒体の温度変化に応じて適宜変更されてもよい。例えば、駆動時間及び停止時間のそれぞれを0.5秒~10秒程度としてもよく、また、駆動時間よりも停止時間を長くしてもよい。例えば、駆動時間を0.5秒~2秒程度とし、停止時間を3秒~5秒程度としてもよい。
【0033】
上記のように温度検出部18の検出温度が目標温度(第2温度)に所定値を加えた加圧停止温度を超えていれば、強制加圧モードになったと判断する態様に代えて、例えば、変更前の目標温度よりも変更後の目標温度が所定値以上低ければ、所定の強制加圧モードになったと判断してもよい。このような目標温度が変更される場合に実行される強制加圧モードに限られず、検出温度が目標温度よりも高温となった際に実行される強制加圧モードでもよい。
また、上記した例では、強制加圧モードにおいて加圧ポンプ22を間欠的に駆動する態様とした例を示しているが、予め設定された所定時間が経過するまで駆動する態様等としてもよく、その他、種々の態様としてもよい。
また、上記基本動作は、一例であり、適宜の変形動作の実行が可能である。
【0034】
次に、他の実施形態について説明する。
以下の実施形態では、先に説明した実施形態との相違点について主に説明し、同様の構成については、同一符号を付し、その説明を省略または簡略に説明する。以下の実施形態では、先に説明した実施形態と同様の基本動作や同様に奏する作用効果についても説明を省略または簡略に説明する。
【0035】
図3は、第2実施形態に係る温度調節装置の一例を模式的に示す図である。
本実施形態に係る温度調節装置1Aは、上記実施形態とは温調媒体を冷却する冷却部の構成が主に異なる。
本実施形態では、温調媒体を間接的に冷却する構成に代えて、低温の温調媒体を循環路10に供給して循環路10内の温調媒体を直接的に冷却する構成としている。温度調節装置1Aは、上記のような熱交換器30や熱交換器側分岐路33、冷媒供給路35、冷媒弁36に代えて、排出路25から分岐するように形成された冷却バイパス路27と、冷却バイパス路27に設けられた冷却弁28と、を備えている。この冷却弁28のオリフィス径は、排出弁26のオリフィス径よりも大とされている。また、本実施形態では、温度調節装置1Aは、供給路20の上流側部位と排出路25の下流側部位とを接続するバイパス路29を備えている。
【0036】
本実施形態においては、温調媒体を冷却する際には、排出弁26と同期させて冷却弁28を開放させるようにしてもよい。このような構成とすれば、供給路20及びバイパス路23を介して系内に低温の温調媒体が供給され冷却され、媒体貯留部11内の比較的に高温の温調媒体が排出路25及び冷却バイパス路27を経て排出される。このような態様に代えて、目標温度が低温である場合には、排出弁26及び冷却弁28を同期させて開放させ、目標温度が高温である場合には、排出弁26及び冷却弁28のうちの一方(好ましくは、オリフィス径が小とされた排出弁26)のみを冷却弁として開放させてもよい。このような構成とすれば、目標温度が低温の場合には、冷却能力を高めることができ、目標温度が高温の場合には、系内の圧力低下を抑制することができる。また、排出弁26及び冷却弁28を開放させれば、比較的に高温の温調媒体が排出路25を経て排出されるが、バイパス路29を介して低温の温調媒体が混合されるので排出温度を低下させることができる。
本実施形態においても、上記同様、冷却部が冷却動作をしている際(本実施形態では、排出弁26及び冷却弁28の両方または一方が開放されて温調媒体を冷却している際)に所定の強制加圧モードとなれば、加圧ポンプ22が強制的に駆動される。
上記した各実施形態に係る温度調節装置1,1Aが備える各部の具体的構成や温度調節装置1,1Aにおいて実行される温度調節方法としては、上記した構成に限られず、その他、種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0037】
1,1A 温度調節装置
7 制御部
10 循環路
12 ヒーター(加熱部)
17 循環ポンプ
18 温度検出部
22 加圧ポンプ
28,34 冷却弁(冷却部)
30 熱交換器
31 媒体路
32 冷却路
33 熱交換器側分岐路(分岐路)
2 供給源
4 金型(温度調節対象)
5 媒体流通路
図1
図2
図3