(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110467
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】温度調節装置
(51)【国際特許分類】
B29C 45/78 20060101AFI20240808BHJP
B29C 45/17 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
B29C45/78
B29C45/17
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015010
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000146054
【氏名又は名称】株式会社松井製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】目次 正明
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AK01
4F206AK02
4F206AK05
4F206AK13
4F206AM04
4F206AR06
4F206JA07
4F206JL02
4F206JM16
4F206JP13
4F206JP14
4F206JQ88
(57)【要約】
【課題】冷却モード実行時における温調媒体の温度ばらつきを抑制し得る温度調節装置を提供する。
【解決手段】予め設定された目標温度となるように温度検出部18の検出温度に基づいて制御部7によって加熱部12及び冷却部28を制御し、温度調節対象4の媒体流通路5に接続される循環路10に温調媒体を循環させる温度調節装置1であって、温調媒体の供給源2に接続され、かつ前記温度検出部の検出温度に基づいて前記循環路の温調媒体の圧力が飽和蒸気圧以上となるように前記制御部に駆動制御される加圧ポンプ22が設けられた供給路20と、前記冷却部を構成する冷却弁が設けられ、前記循環路から温調媒体を排出する排出路25と、を備えており、前記制御部は、前記冷却部による冷却モードの開始に連動させて前記加圧ポンプを強制的に駆動させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定された目標温度となるように温度検出部の検出温度に基づいて制御部によって加熱部及び冷却部を制御し、温度調節対象の媒体流通路に接続される循環路に温調媒体を循環させる温度調節装置であって、
温調媒体の供給源に接続され、かつ前記温度検出部の検出温度に基づいて前記循環路の温調媒体の圧力が飽和蒸気圧以上となるように前記制御部に駆動制御される加圧ポンプが設けられた供給路と、前記冷却部を構成する冷却弁が設けられ、前記循環路から温調媒体を排出する排出路と、を備えており、
前記制御部は、前記冷却部による冷却モードの開始に連動させて前記加圧ポンプを強制的に駆動させることを特徴とする温度調節装置。
【請求項2】
予め設定された目標温度となるように温度検出部の検出温度に基づいて制御部によって加熱部及び冷却部を制御し、温度調節対象の媒体流通路に接続される循環路に温調媒体を循環させる温度調節装置であって、
温調媒体の供給源に接続され、かつ前記温度検出部の検出温度に基づいて前記循環路の温調媒体の圧力が飽和蒸気圧以上となるように前記制御部に駆動制御される加圧ポンプが設けられた供給路と、前記冷却部を構成する冷却弁が設けられ、前記循環路から温調媒体を排出する排出路と、を備えており、
前記制御部は、前記冷却部による冷却モードが開始され、かつ前記供給路における温調媒体の供給圧力が前記温度検出部の検出温度における飽和蒸気圧を下回っていれば、前記加圧ポンプを強制的に駆動させることを特徴とする温度調節装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記制御部は、前記冷却部による冷却モードの停止に連動させて前記加圧ポンプの駆動を停止させることを特徴とする温度調節装置。
【請求項4】
請求項1または2において、
前記制御部は、前記冷却部による冷却モードが停止または前記温度検出部の検出温度における飽和蒸気圧若しくは前記循環路の温調媒体の圧力が前記供給路における温調媒体の供給圧力となれば、前記加圧ポンプの駆動を停止させることを特徴とする温度調節装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、温度調節対象を温度調節する温度調節装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、金型等の温度調節対象の媒体流通路に温調媒体を循環供給し、温度調節対象の温度を調節する温度調節装置が知られている。
例えば、下記特許文献1には、金型に設けられた媒体流通路に温調媒体を供給する金型温度調節装置が開示されている。この金型温度調節装置は、温調媒体を加熱するヒーターが設けられた貯留部に、排出路の排出弁を開閉制御することで、供給路を介して冷却媒体としての温調媒体を直接的に供給して冷却する構成とされている。また、この特許文献1には、設定温度を高温域に設定可能なように、系内(温調媒体の循環路内)を加圧する加圧ポンプを供給路に設けた構成としてもよい旨の記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような加圧ポンプによって加圧された循環路内に排出弁を開放させて温調媒体を供給して冷却する際には、温調媒体の供給圧力(給水圧)によっては、温調媒体の供給が円滑になされないことが考えられる。そのため、冷却モードの開始から温調媒体の供給により循環路内の温調媒体が冷却されるまでに僅かなタイムラグが生じ、冷却出力(制御部によって開閉制御される排出弁の開時間)が過大となり、アンダーシュートが生じる懸念がある。
【0005】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、冷却モード実行時における温調媒体の温度ばらつきを抑制し得る温度調節装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本開示に係る第1例の温度調節装置は、予め設定された目標温度となるように温度検出部の検出温度に基づいて制御部によって加熱部及び冷却部を制御し、温度調節対象の媒体流通路に接続される循環路に温調媒体を循環させる温度調節装置であって、温調媒体の供給源に接続され、かつ前記温度検出部の検出温度に基づいて前記循環路の温調媒体の圧力が飽和蒸気圧以上となるように前記制御部に駆動制御される加圧ポンプが設けられた供給路と、前記冷却部を構成する冷却弁が設けられ、前記循環路から温調媒体を排出する排出路と、を備えており、前記制御部は、前記冷却部による冷却モードの開始に連動させて前記加圧ポンプを強制的に駆動させることを特徴とする。
【0007】
前記目的を達成するために、本開示に係る第2例の温度調節装置は、予め設定された目標温度となるように温度検出部の検出温度に基づいて制御部によって加熱部及び冷却部を制御し、温度調節対象の媒体流通路に接続される循環路に温調媒体を循環させる温度調節装置であって、温調媒体の供給源に接続され、かつ前記温度検出部の検出温度に基づいて前記循環路の温調媒体の圧力が飽和蒸気圧以上となるように前記制御部に駆動制御される加圧ポンプが設けられた供給路と、前記冷却部を構成する冷却弁が設けられ、前記循環路から温調媒体を排出する排出路と、を備えており、前記制御部は、前記冷却部による冷却モードが開始され、かつ前記供給路における温調媒体の供給圧力が前記温度検出部の検出温度における飽和蒸気圧を下回っていれば、前記加圧ポンプを強制的に駆動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る温度調節装置は、上述のような構成としたことで、冷却モード実行時における温調媒体の温度ばらつきを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の一実施形態に係る温度調節装置の一例を模式的に示す概略システム構成図である。
【
図2】(a)は、同温度調節装置において実行される基本動作の一例を模式的に示す概略フローチャート、(b)は、同温度調節装置において実行される基本動作の他例を模式的に示す概略フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1では、温調媒体等の流体が通過する経路となる管路(配管)等を、実線及び破線にて模式的に示している。
図1及び
図2は、本実施形態に係る温度調節装置の一例並びにこれを用いて実行される基本動作の一例及び他例を模式的に示す図である。
本実施形態に係る温度調節装置1は、
図1に示すように、予め設定された目標温度となるように温度検出部18の検出温度に基づいて制御部7によって加熱部及び冷却部を制御し、温度調節対象としての金型4の媒体流通路5に接続される循環路10に温調媒体を循環させる。つまり、本実施形態では、温度調節装置1は、金型4を温度調節する金型温度調節装置を構成する。
【0011】
この温度調節装置1は、温調媒体の供給源2に接続され、かつ温度検出部18の検出温度に基づいて循環路10の温調媒体の圧力が飽和蒸気圧以上となるように制御部7に駆動制御される加圧ポンプ22が設けられた供給路20を備えている。このような構成とすれば、目標温度が常圧の沸点よりも高温である場合にも加熱された温調媒体を沸騰させることなく媒体流通路5に供給することができる。また、検出温度に基づいて加圧ポンプ22が駆動制御されるので、目標温度が高温である場合に加圧ポンプ22を常時稼働させる構成と比べて、加圧ポンプ22の長寿命化が図れ、また、循環路10や媒体流通路5に過剰な圧力が掛かることを抑制することができる。
【0012】
金型4は、例えば、固定型と可動型とを有した構成とされており、これら固定型及び可動型には、温調媒体を流通させる媒体流通路5,5がそれぞれに設けられている。これら媒体流通路5,5の入口(送媒接続口)側には、循環路10を構成する送媒路16が接続される。媒体流通路5,5の出口(返媒接続口)側には、循環路10を構成する返媒路19が接続される。
送媒路16と媒体流通路5,5の入口とは、単一の送媒路16を複数に分岐させるマニホールド部やこのマニホールド部の複数の接続口に接続されたホースやチューブ等の可撓性を有した配管材を介して接続されていてもよい。また、マニホールド部や管路等の適所に、媒体流通路5,5に向けて送媒される温調媒体の通過を許容または遮断する送媒バルブを設けた例を示している。
【0013】
返媒路19と媒体流通路5,5の出口とも略同様、単一の返媒路19を複数に分岐させるマニホールド部やこのマニホールド部の複数の接続口に接続されたホースやチューブ等の可撓性を有した配管材を介して接続されていてもよい。また、マニホールド部や管路等の適所に、媒体流通路5,5から返媒される温調媒体の通過を許容または遮断する返媒バルブを設けた例を示している。
金型4の温度を検出する温度センサーを適所に設けた構成としてもよい。例えば、この温度センサーを、金型4に埋込状に設けた構成としてもよく、また、媒体流通路5の入口側部位や入口近傍部位の送媒路16、媒体流通路5の出口側部位や出口近傍部位の返媒路19等に設けた態様としてもよい。
この金型4の成形機としては、金型4の固定型と可動型とによって形成されるキャビティー等に、シリンダ等で溶融させた材料としての合成樹脂をノズル等から射出して充填し、成形品を逐次、成形する射出成形機等でもよい。成形機としては、溶融させた材料を金型からシート状に押し出して成形する押出成形機等でもよく、圧縮成形機等の他の成形機でもよい。成形材料としては、合成樹脂材料に、炭素繊維やガラス繊維等の強化繊維を含有させた繊維強化合成樹脂材料等でもよい。
温度調節対象としては、金型4に限られず、温調媒体が供給されて温度調節される構成とされていればよく、例えば、床暖房装置や、その他、種々の機械等であってもよい。
【0014】
温度調節装置1は、冷却部を構成する冷却弁(第2排出弁)28が設けられ、循環路10から温調媒体を排出する排出路25を備えている。温度調節装置1は、循環路10に温調媒体を循環させる循環ポンプ17と、温調媒体の温度を検出する温度検出部18と、加熱部を構成するヒーター12及び冷却弁としての第2排出弁28を制御する制御部7と、を備えている。
温度調節装置1は、温調媒体を満たした状態(満水状態)で貯留し、送媒路16及び返媒路19並びに金型4の媒体流通路5,5とによって循環路10を構成する媒体貯留部11を備えている。この媒体貯留部11に温調媒体を加熱する加熱部を構成するヒーター12を設けた例を示している。
媒体貯留部11は、有底筒状のタンク状とされ、当該温度調節装置1の稼働中には、原則的には温調媒体で満たされ満レベルとされる。ヒーター12は、筒状とされた媒体貯留部11内において略同軸状に延びるように設けられている。このヒーター12は、図例では、媒体貯留部11の天壁部に保持されている。媒体貯留部11には、このヒーター12を停止させる過温防止用のサーモスタット13が設けられている。温調媒体を加熱する加熱部としては、このようなヒーター12に限られず、その他、種々の構成とされていてもよい。
【0015】
この媒体貯留部11の上端部に温調媒体を排出する(オーバーフローさせる)排出路25が接続されている。
媒体貯留部11には、媒体貯留部11内の温調媒体の媒体レベルの低下を検出する媒体センサー14が設けられている。この媒体センサー14としては、種々のレベル計(液面計)等でもよいが、図例では、媒体貯留部11の上端部に管路を介して接続され、かつ排出路25に連通するように接続されたフロートスイッチとした例を示している。
媒体貯留部11には、加圧ポンプ22によって加圧される循環路10を含む略密閉状となる系内の圧力を検出する適宜の圧力センサー等の圧力検出部15が配された管路が接続されている。図例では、この圧力検出部15が配された管路に、圧力を表示する圧力ゲージや圧力の異常上昇を防止するリリーフ弁(安全弁)を設けた例を示している。圧力検出部15を媒体貯留部11に設けた態様に代えて、または加えて、送媒路16や返媒路19等の循環路10の適所に設けた態様としてもよい。
媒体貯留部11の底部には、媒体貯留部11内の温調媒体を排出するドレン(ドレンバルブ)等が設けられている。
【0016】
送媒路16は、媒体貯留部11の下端部(図例では、底部)に接続されている。送媒路16には、循環ポンプ17が配設されている。図例では、この送媒路16の循環ポンプ17の吐出側となる下流側に、温度検出部18を設けた例を示しているが、この温度検出部18に代えて、または加えて、送媒路16の他の部位や媒体貯留部11、返媒路19等に温度検出部を設けた構成としてもよい。また、図例では、送媒路16の循環ポンプ17の下流側に、圧力ゲージを設けた例を示している。また、図例では、この送媒路16の循環ポンプ17の下流側部位と媒体貯留部11とを接続するようにバイパス路16Aを設けた例を示している。このバイパス路16Aには、温調媒体の通過を許容または遮断するバイパスバルブが設けられている。また、このバイパス路16Aが分岐された部位よりも下流側に温調媒体の通過を許容または遮断するバルブを設けた例を示している。このようなバルブやバイパス路16Aを設けた場合には、上記した送媒バルブや返媒バルブを設けていない構成としてもよい。なお、バイパス路16Aの下流側端部を媒体貯留部11に接続した態様に代えて、返媒路19の途中部位に接続した態様としてもよい。
返媒路19は、媒体貯留部11の上端部(図例では、上端部の周壁)に接続されている。図例では、返媒路19に、ストレーナ等のフィルターを設けた例を示している。循環路10の適所に循環路10を流通する温調媒体の流量を検出する流量計が設けられていてもよい。
【0017】
加圧ポンプ22は、供給源2からの温調媒体を媒体貯留部11に供給する供給路20に設けられている。この加圧ポンプ22の吐出側には、逆流防止弁(逆止弁、チェックバルブ)等の適宜の逆流防止機能が設けられている。
供給路20の上流側端部が供給源2に連通するように接続され、供給路20の下流側端部が媒体貯留部11に接続されている。この供給路20には、温調媒体の供給圧力(給水圧)を検出する供給圧力検出部21が設けられている。また、この供給路20の上流側部位には、温調媒体の通過を許容または遮断する供給バルブやストレーナ等のフィルターが設けられている。温調媒体の供給源2としては、温調媒体としての水(清水)を供給する水道(工業用水道、上水道)でもよい。また、供給源2は、工場等に設置されるクーリングタワー等でもよい。この場合は、排出路25の下流側端部がクーリングタワーの戻り管路3等に接続されていてもよい。温調媒体としては、水に限られず、油系やアルコール系等の他の温調媒体でもよい。
【0018】
供給路20には、加圧ポンプ22の吸込側となる上流側と加圧ポンプ22の吐出側となる下流側とを接続するようにバイパス路23が設けられている。このバイパス路23には、上流(供給源2)側から下流(媒体貯留部11)側への温調媒体の流れを許容する一方、下流側から上流側への温調媒体の流れを阻止(遮断)する逆流防止弁(逆止弁、チェックバルブ)が設けられている。
この供給路20のバイパス路23よりも下流側部位から分岐するように、かつその下流側端部が後記する排出路25のバイパス路27の合流部よりも下流側部位に接続された分岐排出路24が設けられている。図例では、この分岐排出路24に、リリーフ弁(圧力逃がし弁)を設けた例を示している。供給路20の上流側部位等の適所に、供給源2から供給される温調媒体の供給圧が概ね一定圧力となるように維持する減圧弁が設けられていてもよい。
供給路20の上流側部位には、排出路25の下流側部位に接続されるバイパス路29が接続されている。
【0019】
温調媒体を冷却する冷却部は、熱交換器等で温調媒体を間接的に冷却する構成ではなく、比較的に低温(例えば、5℃~35℃程度)となる供給源2からの温調媒体を循環路10に供給して循環路10内の温調媒体を言わば直接的に冷却する構成とされている。
本実施形態では、排出路25から分岐するように設けられたバイパス路27に設けられ温調媒体の通過を許容または遮断する第2排出弁28が冷却部の冷却弁を構成する。排出路25におけるバイパス路27の分岐部と合流部との間には、温調媒体の通過を許容または遮断する第1排出弁26が設けられている。第2排出弁28に代えて、または加えて、第1排出弁26が冷却部の冷却弁を構成してもよい。つまり、第1排出弁26及び第2排出弁28の両方または一方が冷却弁を構成してもよい。第2排出弁28のオリフィス径は、第1排出弁26のオリフィス径よりも大とされている。これら第1排出弁26及び第2排出弁28は、後記する制御部7によって開閉制御される電磁弁等でもよい。
詳細については後述するが、第2排出弁28(及び/または第1排出弁26)を開放させれば、供給路20を介して供給源2からの温調媒体が媒体貯留部11に供給され、循環路10内の温調媒体が冷却される。
【0020】
制御部7は、当該温度調節装置1の適所や当該温度調節装置1から離間した箇所に設置された適宜の制御盤6に設けられている。制御部7は、CPU(Central Processing Unit)等の制御回路を含み、後記する基本動作等を実行する。この制御部7は、上記したヒーター12やサーモスタット13、媒体センサー14、圧力検出部15、循環ポンプ17、温度検出部18、供給圧力検出部21、加圧ポンプ22、第1排出弁26、第2排出弁28等を含む当該温度調節装置1の各部に信号線等を介して接続されている。ヒーター12や循環ポンプ17、加圧ポンプ22、第1排出弁26、第2排出弁28等は、制御部7によって起動(ON)/停止(OFF)や開閉が制御される。
制御盤6には、各種設定などの設定や入力、表示をするための表示操作部9が設けられている。制御盤6には、表示操作部9の操作により設定、入力された設定条件や入力値、後記する基本動作等を実行するための制御プログラムなどの各種プログラム、予め設定された各種動作条件、各種データテーブル等が格納され、ROMやRAM等の各種メモリ等から構成された記憶部8が設けられている。
【0021】
制御部7は、冷却部による冷却モードの開始に連動させて加圧ポンプ22を強制的に駆動させる。一般的には、冷却モードが開始されれば、冷却弁(排出弁)が開放され、排出路を介して温調媒体が排出されるため、循環路内の圧力が低下し、その圧力が飽和蒸気圧を下回れば、加圧ポンプが駆動され、温調媒体が供給されて冷却される。そのため、温調媒体の供給圧力によっては、温調媒体の供給が円滑になされず、冷却モードの開始から温調媒体の供給により循環路内の温調媒体が冷却されるまでにタイムラグが生じる懸念があった。本例によれば、冷却モードの開始に連動させて加圧ポンプ22が駆動される。つまり、循環路10内の圧力低下の検出の有無に関わらず、冷却弁を構成する第2排出弁28(及び/または第1排出弁26)が開放されれば、言わば強制的に加圧ポンプ22が駆動されるので、タイムラグを生じさせることなく温調媒体を円滑に循環路10内に供給し、冷却することができる。これにより、冷却モードの初期等において冷却出力が過大となり難く、アンダーシュートが生じ難くなり、冷却モード実行時における温調媒体の温度ばらつきを抑制することができる。また、後記する他の動作例のように温調媒体の供給圧力を参照するような構成と比べて簡易な制御となる。
【0022】
制御部7は、冷却部による冷却モードの停止に連動させて加圧ポンプ22の駆動を停止させる。このような構成とすれば、冷却モードが停止、つまり、第2排出弁28(及び/または第1排出弁26)が閉鎖されれば、加圧ポンプ22の駆動が停止されるので、循環路10や媒体流通路5に過剰な圧力が掛かることを抑制することができる。また、後記する他の動作例のように温調媒体の供給圧力を参照するような構成と比べて簡易な制御となる。
具体的には、上記構成とされた温度調節装置1においては、制御部7によって各部が制御され、以下のような基本動作等が実行される。
【0023】
温度調節装置1においては、起動初期等において系内に温調媒体が満たされていない場合、つまり、媒体センサー14が媒体無(補給レベル)を検出していれば、第1排出弁26を開放させる。これにより、供給源2からの温調媒体が供給路20及びバイパス路23を介して系内、つまり、媒体貯留部11、送媒路16、媒体流通路5、返媒路19、排出路25等に供給され、これらが温調媒体で満たされる。この際、第1排出弁26に加えて、第2排出弁28を開放させてもよい。そして、媒体センサー14が媒体満(満レベル)を検出すれば、第1排出弁26(及び第2排出弁28)を閉鎖し、循環ポンプ17を起動して温調媒体を循環させながら温調媒体の温度が予め設定された目標温度となるようにヒーター12及び第2排出弁28(及び/または第1排出弁26)を制御し温調媒体を温度調節する定常運転を実行する。
【0024】
つまり、温度検出部18の検出温度に基づいて、温調媒体が目標温度となるように、ヒーター12への通電制御による加熱及び循環路10への温調媒体の供給制御(第2排出弁28(及び/または第1排出弁26)の開閉制御)による冷却がなされる。循環ポンプ17を起動すれば、温調媒体が循環路10を構成する送媒路16、媒体流通路5、返媒路19及び媒体貯留部11を循環する。温度検出部18の検出温度が予め設定された目標温度を下回っていれば、加熱モードが実行、つまり、ヒーター12が起動される。ヒーター12が起動されれば、循環路10を循環する温調媒体が媒体貯留部11において加熱され、目標温度を上回れば、ヒーター12が停止される。温度検出部18の検出温度が目標温度を上回れば、冷却モードが実行、つまり、冷却弁を構成する第2排出弁28(及び/または第1排出弁26)が開放される。第2排出弁28(及び/または第1排出弁26)が開放されれば、循環路10(媒体貯留部11)に温調媒体が供給され、循環路10を循環する温調媒体が言わば直接的に冷却され、目標温度を下回れば、第2排出弁28(及び/または第1排出弁26)が閉鎖される。
【0025】
上記のように目標温度を境に加熱モード及び冷却モードに切り替えられる態様に代えて、目標温度から数℃程度(例えば、1℃~3℃程度)の所定温度を差し引いた値を下回れば、加熱モードが実行され、目標温度に数℃程度(例えば、1℃~3℃程度)の所定温度を加えた値を上回れば、冷却モードが実行される構成としてもよい。また、冷却モードを実行する際には、第2排出弁28に同期させて第1排出弁26を開放させるようにしてもよい。このような構成とすれば、供給路20及びバイパス路23を介して系内に低温の温調媒体が供給され冷却され、媒体貯留部11内の比較的に高温の温調媒体が排出路25及びバイパス路27を経て排出される。このような態様に代えて、目標温度が低温である場合には、第1排出弁26及び第2排出弁28を同期させて開放させ、目標温度が高温である場合には、第1排出弁26及び第2排出弁28のうちの一方(好ましくは、オリフィス径が小とされた第1排出弁26)のみを冷却弁として開放させてもよい。このような構成とすれば、目標温度が低温の場合には、冷却能力を高めることができ、目標温度が高温の場合には、系内の圧力低下を抑制することができる。なお、第1排出弁26及び第2排出弁28を開放させれば、比較的に高温の温調媒体が排出路25を経て排出されるが、バイパス路29を介して低温の温調媒体が混合されるので排出温度を低下させることができる。
【0026】
上記のように温調媒体の温度調整がなされれば、温調媒体の温度は、常温程度から目標温度(例えば、110℃~230℃程度の範囲内で予め設定された温度)に向けて上昇する。この際、温度検出部18の検出温度が予め設定された加圧ポンプ22を駆動させる温度下限値となる加圧設定温度を上回れば、加圧ポンプ22を駆動するようにしてもよい。例えば、温調媒体が水である場合には、系内における沸騰を確実に防止すべく、加圧設定温度を80℃~90℃程度としてもよい。
また、温度検出部18の検出温度に基づいて算出される飽和蒸気圧及び圧力検出部15の検出圧力に基づいて、循環路10(系内)の圧力が飽和蒸気圧以上となるように加圧ポンプ22を駆動制御する。温調媒体が水である場合には、飽和蒸気圧(絶対圧力)と温度(絶対温度)との関係は、例えば、ウェクスラーハイランドの式等を用いて算出可能である。このように算出された温度と飽和蒸気圧(絶対圧力)との関係から温度に対応するゲージ圧(飽和蒸気圧(絶対圧力)から大気圧を差し引いた圧力)を算出し記憶部8に予め格納させておいてもよく、制御部7の演算部等において算出してもよい。
圧力検出部15の検出圧力が温度検出部18の検出温度に対応する飽和蒸気圧またはこれをゲージ圧に換算した圧力(検出温度対応圧力)を下回れば、加圧ポンプ22を駆動するようにしてもよい。この際、加圧ポンプ22を予め設定された所定時間が経過するまで駆動してもよい。または、圧力検出部15の検出圧力が検出温度対応圧力に所定値を加えた圧力を上回れば加圧ポンプ22を停止させるようにしてもよい。
【0027】
また、上記のように温調媒体の温度調整がなされる際において、
図2(a)に示すように、冷却モードが開始されれば(ステップS100)、加圧ポンプ22を駆動させる(ステップS101)。つまり、冷却弁を構成する第1排出弁26及び第2排出弁28のうちの少なくとも一方の開放に連動させて加圧ポンプ22を駆動させる。つまりは、循環路10内の圧力低下検出の有無に関わらず、強制的に加圧ポンプ22の駆動がなされる。この際、加圧ポンプ22を、同冷却弁の開放と同時的に起動(ON)させてもよく、同冷却弁の開放から僅かな遅延時間(例えば、0.1秒~0.5秒程度)を経過後に起動させてもよい。また、この際、加圧ポンプ22は、連続的に駆動されてもよく、連続駆動が好ましくない場合等においては間欠的に駆動されてもよい。加圧ポンプ22を間欠的に駆動する際の駆動(ON)時間(パルス幅)及びパルス間の停止(OFF)時間は、例えば、駆動時間及び停止時間のそれぞれを0.5秒~10秒程度としてもよく、また、駆動時間を0.5秒~2秒程度とし、停止時間を3秒~5秒程度としてもよい。
そして、冷却モードが停止、つまり、ステップS100において開放された冷却弁(第1排出弁26及び第2排出弁28のうちの少なくとも一方)が閉鎖されれば(ステップS102)、加圧ポンプ22を停止(OFF)させる(ステップS103)。この際、加圧ポンプ22を、同冷却弁の閉鎖と同時的に停止させてもよく、同冷却弁の閉鎖から僅かな遅延時間(例えば、0.1秒~0.5秒程度)を経過後に停止させてもよい。
【0028】
次に、温度調節装置1において実行される基本動作の他例について、
図2(b)を参照して説明する。
本動作例では、制御部7は、冷却部による冷却モードが開始され、かつ供給路20における温調媒体の供給圧力が温度検出部18の検出温度における飽和蒸気圧を下回っていれば、加圧ポンプ22を強制的に駆動させる。このような構成とすれば、上記した例のように冷却モードの開始に連動させて加圧ポンプ22を強制的に駆動させる構成と比べて、省電力化及び加圧ポンプ22の長寿命化を図ることができる。つまり、温調媒体の供給圧力が飽和蒸気圧以上であれば、加圧ポンプ22を駆動せずとも温調媒体を円滑に循環路10内に供給し、冷却することができるので、加圧ポンプ22の駆動の効率化を図ることができる。
【0029】
本動作例では、制御部7は、冷却部による冷却モードが停止または温度検出部18の検出温度における飽和蒸気圧若しくは循環路10の温調媒体の圧力が供給路20における温調媒体の供給圧力となれば、加圧ポンプ22の駆動を停止させる。このような構成とすれば、冷却モード実行時においても、飽和蒸気圧若しくは循環路10の温調媒体の圧力が温調媒体の供給圧力となれば、加圧ポンプ22を駆動せずとも温調媒体を円滑に循環路10内に供給し、冷却することができるので、加圧ポンプ22の駆動の効率化を図ることができる。
【0030】
具体的には、冷却モードが開始、つまり、冷却弁を構成する第1排出弁26及び第2排出弁28のうちの少なくとも一方が開放され(ステップS200)、かつ供給圧力検出部21の検出圧力が温度検出部18の検出温度における飽和蒸気圧以下であれば(ステップS201)、加圧ポンプ22を駆動させる(ステップS202)。この際、供給圧力検出部21の検出圧力と温度検出部18の検出温度における飽和蒸気圧とを比較し、同検出圧力が同飽和蒸気圧以下であれば、直ぐに加圧ポンプ22を起動(ON)させてもよく、僅かな遅延時間(例えば、0.1秒~0.5秒程度)を経過後に加圧ポンプ22を起動させてもよい。また、この際、上記同様、加圧ポンプ22は、連続的に駆動されてもよく、間欠的に駆動されてもよい。
【0031】
そして、冷却モードが停止、つまり、ステップS200において開放された冷却弁(第1排出弁26及び第2排出弁28のうちの少なくとも一方)が閉鎖されれば(ステップS203)、加圧ポンプ22を停止させる(ステップS205)。この際、上記同様、加圧ポンプ22を、同冷却弁の閉鎖と同時的に停止(OFF)させてもよく、同冷却弁の閉鎖から僅かな遅延時間(例えば、0.1秒~0.5秒程度)を経過後に停止させてもよい。
また、ステップS203において、冷却モードの停止がなされなくとも、温度検出部18の検出温度における飽和蒸気圧が供給圧力検出部21の検出圧力以下となれば(ステップS204)、加圧ポンプ22を停止させる(ステップS205)。この際、供給圧力検出部21の検出圧力と温度検出部18の検出温度における飽和蒸気圧とを比較し、同飽和蒸気圧が同検出圧力以下となれば、直ぐに加圧ポンプ22を停止(OFF)させてもよく、僅かな遅延時間(例えば、0.1秒~0.5秒程度)を経過後に加圧ポンプ22を停止させてもよい。また、この際、供給圧力検出部21の検出圧力と温度検出部18の検出温度における飽和蒸気圧とを比較する態様に代えて、供給圧力検出部21の検出圧力と循環路10の温調媒体の圧力を検出する圧力検出部15の検出圧力とを比較し、この圧力検出部15の検出圧力が供給圧力検出部21の検出圧力以下となれば、加圧ポンプ22を停止させるようにしてもよい。
【0032】
なお、上記基本動作の各例は、一例に過ぎず、適宜の変形動作の実行が可能である。例えば、
図2(a)を参照して説明した動作例において、ステップS102以降に代えて、
図2(b)のステップS203以降を実行するような態様としてもよい。または、
図2(b)を参照して説明した動作例において、ステップS203以降に代えて、
図2(a)のステップS102以降を実行するような態様としてもよい。その他、種々の基本動作の実行が可能である。
上記した例では、第1排出弁26及び第2排出弁28の両方または一方を冷却弁とした例を示しているが、第2排出弁28のみを冷却弁としてもよく、さらには、排出路25にバイパス路27を設けずに、単一の排出弁(26)を冷却弁として設けた態様等としてもよい。
上記した実施形態に係る温度調節装置1が備える各部の具体的構成や温度調節装置1において実行される温度調節方法としては、上記した構成に限られず、その他、種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 温度調節装置
7 制御部
10 循環路
12 ヒーター(加熱部)
18 温度検出部
20 供給路
22 加圧ポンプ
25 排出路
26 第1排出弁(冷却弁、冷却部)
28 第2排出弁(冷却弁、冷却部)
2 供給源
4 金型(温度調節対象)
5 媒体流通路