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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110468
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】呼吸監視装置及び呼吸監視方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/113 20060101AFI20240808BHJP
   A61B 3/113 20060101ALI20240808BHJP
   A61B 5/08 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
A61B5/113
A61B3/113
A61B5/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015011
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】市橋 正英
【テーマコード(参考)】
4C038
4C316
【Fターム(参考)】
4C038VA04
4C038VB28
4C038VB33
4C038VC02
4C038VC08
4C316AA21
4C316FB26
4C316FC28
(57)【要約】
【課題】呼吸制御の精度を向上させること。
【解決手段】実施形態に係る呼吸監視装置は、出力制御部と、取得部と、評価部とを備える。出力制御部は、被治療体に対して呼吸をガイドする呼吸ガイド情報を出力させる。取得部は、前記被治療体の呼吸情報と、前記呼吸ガイド情報に対する前記被治療体の視線情報とを取得する。評価部は、前記呼吸ガイド情報と、前記治療体の呼吸情報と、前記被治療体の視線情報とに基づいて、前記呼吸ガイド情報に対する前記被治療体の反応を評価する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被治療体に対して呼吸をガイドする呼吸ガイド情報を出力させる出力制御部と、
前記被治療体の呼吸情報と、前記呼吸ガイド情報に対する前記被治療体の視線情報とを取得する取得部と、
前記呼吸ガイド情報と、前記治療体の呼吸情報と、前記被治療体の視線情報とに基づいて、前記呼吸ガイド情報に対する前記被治療体の反応を評価する評価部と、
を備える、呼吸監視装置。
【請求項2】
前記出力制御部は、前記被治療体に対して、呼気と吸気のタイミングを示す呼吸ガイド情報を出力させ、
前記評価部は、前記被治療体の呼吸情報と前記呼吸ガイド情報との比較結果と、前記被治療体の視線情報と前記呼吸ガイド情報との比較結果とに基づいて、前記呼吸ガイド情報に対する前記被治療体の反応を評価する、請求項1に記載の呼吸監視装置。
【請求項3】
前記評価部は、前記呼吸ガイド情報にて示された呼気と吸気のタイミングに対する前記被治療体の呼吸のずれと、前記呼吸ガイド情報に対する前記被治療体の視線のずれとに基づいて、前記被治療体の反応を評価する、請求項2に記載の呼吸監視装置。
【請求項4】
前記評価部は、前記呼気と吸気のタイミングに対する前記被治療体の呼吸のずれが所定の閾値を超えるか否か、及び、前記呼吸ガイド情報に対する前記被治療体の視線のずれが所定の閾値を超えるか否かを判定する、請求項3に記載の呼吸監視装置。
【請求項5】
前記出力制御部は、前記被治療体の反応が評価された評価情報をさらに出力させる、請求項1~3のいずれか1つに記載の呼吸監視装置。
【請求項6】
前記出力制御部は、前記呼気と吸気のタイミングに対する前記被治療体の呼吸のずれが所定の閾値を超え、かつ、前記呼吸ガイド情報に対する前記被治療体の視線のずれが所定の閾値を超えていない場合に、前記呼吸ガイド情報の表示形態を変化させる、請求項4に記載の呼吸監視装置。
【請求項7】
前記出力制御部は、前記呼気と吸気のタイミングに対する前記被治療体の呼吸のずれが所定の閾値を超え、かつ、前記呼吸ガイド情報に対する前記被治療体の視線のずれが所定の閾値を超えた場合に、前記呼吸ガイド情報の表示形態を変化させ、かつ、呼吸に関する支援情報をさらに出力させる、請求項4に記載の呼吸監視装置。
【請求項8】
被治療体に対して呼吸をガイドする呼吸ガイド情報を出力させ、
前記被治療体の呼吸情報と、前記呼吸ガイド情報に対する前記被治療体の視線情報とを取得し、
前記呼吸ガイド情報と、前記治療体の呼吸情報と、前記被治療体の視線情報とに基づいて、前記呼吸ガイド情報に対する前記被治療体の反応を評価する、
ことを含む、呼吸監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、呼吸監視装置及び呼吸監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放射線治療において、治療対象が胸部や腹部の場合に、呼吸同期照射や息止め照射による治療が行われている。呼吸同期照射は、被治療体の呼吸における所定のタイミングで放射線を照射する照射方法であり、息止め照射は、被治療体が息を止めたタイミングで放射線を照射する照射方法である。
【0003】
また、被治療体の呼吸のタイミングを制御する方法として、被治療体に対して呼吸ガイドを提示するシステムが知られている。当該呼吸ガイドは、例えば、被治療体の呼吸波形を測定し、測定した波形を模擬した情報を被治療体に提示することで、被治療体が一定のリズムで呼吸することを支援する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-37297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、呼吸制御の精度を向上させることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る呼吸監視装置は、出力制御部と、取得部と、評価部とを備える。出力制御部は、被治療体に対して呼吸をガイドする呼吸ガイド情報を出力させる。取得部は、前記被治療体の呼吸情報と、前記呼吸ガイド情報に対する前記被治療体の視線情報とを取得する。評価部は、前記呼吸ガイド情報と、前記治療体の呼吸情報と、前記被治療体の視線情報とに基づいて、前記呼吸ガイド情報に対する前記被治療体の反応を評価する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1の実施形態に係る呼吸監視装置を含むシステムの構成の一例を示す図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る呼吸監視装置の構成の一例を示す図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る呼吸監視装置の処理回路が有する各処理機能によって行われる処理の処理手順を示すフローチャートである。
図4図4は、第1の実施形態に係るVC画面の一例を示す図である。
図5図5は、第1の実施形態に係る制御機能による表示制御の一例を示す図である。
図6図6は、第1の実施形態に係る基準点に対する視線位置のずれの算出例を説明するための図である。
図7図7は、第1の実施形態に係る呼吸のずれの算出例を説明するための図である。
図8図8は、第1の実施形態に係る制御機能による表示制御の一例を示す図である。
図9図9は、第1の実施形態に係る評価機能による評価のパターンの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に添付図面を参照して、本願に係る呼吸監視装置及び呼吸監視方法の実施形態を詳細に説明する。なお、本願に係る呼吸監視装置及び呼吸監視方法は、以下に示す実施形態によって限定されるものではない。
【0009】
(第1の実施形態)
まず、本実施形態に係る呼吸監視装置を含むシステムについて説明する。図1は、第1の実施形態に係る呼吸監視装置2を含むシステムの構成の一例を示す図である。図1に示すように、第1の実施形態に係る呼吸監視装置2は、ネットワークを介して、放射線治療装置1と、呼吸周期測定装置3と、視線位置取得装置4とに接続されている。なお、図1では、放射線治療装置1と、呼吸監視装置2と、呼吸周期測定装置3と、視線位置取得装置4とを含むシステムを示しているが、当該システムは、治療計画用CT(Computed Tomography)装置や、治療計画装置、放射線治療情報システムなどの他の装置、システムを含む場合でもよい。
【0010】
放射線治療装置1は、図示しない治療計画装置による治療計画に従い、被治療体に対して放射線を照射し、放射線治療を実行する。具体的には、放射線治療装置1は、架台と寝台とを含み、架台を治療計画に沿った照射角度に設定して、寝台の天板に横臥した被治療体に対して放射線を照射する。ここで、本実施形態に係る放射線治療装置1は、呼吸同期照射及び息止め照射を行う。呼吸同期照射や息止め照射を行う場合、放射線治療装置1は、呼吸周期測定装置3によって測定された被治療体の呼吸状態に基づく信号、或いは、操作者による操作に基づく信号を受信した場合に限定して放射線を照射する。
【0011】
呼吸監視装置2は、放射線治療装置1による放射線治療を受ける被治療体の呼吸を監視する装置である。具体的には、呼吸監視装置2は、放射線治療装置1によって呼吸同期照射、或いは、息止め照射が行われる被治療体に対して呼吸ガイド情報を提示するとともに、呼吸ガイド情報に対する被治療体の反応を評価し、評価結果に応じて種々の処理を実行する。ここで、呼吸監視装置2は、呼吸周期測定装置3及び視線位置取得装置4からそれぞれ情報を取得し、取得した情報に基づいて呼吸ガイド情報に対する被治療体の反応を評価する。
【0012】
呼吸周期測定装置3は、放射線照射前及び放射線照射中の被治療体の呼吸周期を測定する。具体的には、呼吸周期測定装置3は、放射線治療装置1の天板に横臥した被治療体の呼吸動を測定し、呼吸状態を示す波形情報を生成して、放射線治療装置1及び呼吸監視装置2に送信する。例えば、呼吸周期測定装置3は、例えば、被治療体の腹部等に配置した可動式の接触部の動きに応じて被治療体の呼吸動を測定する機械式や、被治療体の体表面を光で走査し、光源と被治療体との距離の変位に応じて被治療体の呼吸動を測定する光学式等の測定装置によって実現される。
【0013】
視線位置取得装置4は、放射線照射前及び放射線照射中の被治療体の視線位置を取得する。具体的には、視線位置取得装置4は、呼吸監視装置2によって提示された呼吸ガイド情報に対する被治療体の視線位置を取得して、取得した視線位置の情報を呼吸監視装置2に送信する。例えば、視線位置取得装置4は、近赤外線を被治療体の目に照射して角膜の反射パターンから視線を取得する方式や、カメラによって取得した画像を画像処理することで瞳孔や虹彩を認識して視線を取得する方式等の取得装置によって実現される。なお、視線位置取得装置4として、眼鏡型やヘッドマウントディスプレイなどが用いられてもよい。
【0014】
次に、呼吸監視装置2の詳細について説明する。図2は、第1の実施形態に係る呼吸監視装置2の構成の一例を示す図である。図2に示すように、呼吸監視装置2は、通信インターフェース21と、入力インターフェース22と、ディスプレイ23と、スピーカー24と、記憶回路25と、処理回路26とを備える。
【0015】
通信インターフェース21は、呼吸監視装置2と、ネットワークを介して接続された他の装置との間で送受信される各種データの伝送及び通信を制御する。具体的には、通信インターフェース21は、処理回路26に接続されており、他の装置から受信したデータを処理回路26に送信、又は、処理回路26から送信されたデータを他の装置に送信する。例えば、通信インターフェース21は、ネットワークカードやネットワークアダプタ、NIC(Network Interface Controller)等によって実現される。
【0016】
入力インターフェース22は、操作者から各種指示及び各種情報の入力操作を受け付ける。具体的には、入力インターフェース22は、処理回路26に接続されており、操作者から受け取った入力操作を電気信号へ変換して処理回路26に送信する。例えば、入力インターフェース22は、トラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力インターフェース、及び音声入力インターフェース等によって実現される。なお、本明細書において、入力インターフェース22は、マウス、キーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路へ送信する電気信号の処理回路も入力インターフェース22の例に含まれる。
【0017】
ディスプレイ23は、各種情報及び各種データを表示する。具体的には、ディスプレイ23は、処理回路26に接続されており、処理回路26から受信した各種情報及び各種データを表示する。例えば、ディスプレイ23は、放射線治療装置1の寝台に横臥した被治療体が見ることができる位置に配置されたい治療体モニタと、放射線治療装置1を操作する技師が見ることができる位置に配置された技師用モニタとを含み、各モニタが、処理回路26から受信した各種情報及び各種データを表示する。例えば、ディスプレイ23は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、タッチパネル等によって実現される。
【0018】
スピーカー24は、各種音声を出力する。具体的には、スピーカー24は、放射線治療装置1が配置された治療室に配置され、処理回路26と接続されており、処理回路26の制御に応じて各種音声を出力する。例えば、スピーカー24は、マグネチックスピーカー、ダイナミックスピーカー、コンデンサスピーカー等によって実現される。
【0019】
記憶回路25は、各種データ及び各種プログラムを記憶する。具体的には、記憶回路25は、処理回路26に接続されており、処理回路26から受信したデータを記憶、又は、記憶しているデータを読み出して処理回路26に送信する。例えば、記憶回路25は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子や、ハードディスク、光ディスク等によって実現される。
【0020】
処理回路26は、呼吸監視装置2の全体を制御する。例えば、処理回路26は、入力インターフェース22を介して操作者から受け付けた入力操作に応じて、各種処理を行う。例えば、処理回路26は、他の装置から送信されたデータを、通信インターフェース21を介して受信し、受信したデータを記憶回路25に格納する。また、例えば、処理回路26は、記憶回路25から受信したデータを通信インターフェース21に送信することで、当該データを他の装置に送信する。また、例えば、処理回路26は、記憶回路25から受信したデータをディスプレイ23に表示させたり、スピーカー24からの音声の出力を制御させたりする。
【0021】
以上、本実施形態に係る呼吸監視装置2の構成の一例について説明した。例えば、呼吸監視装置2は、病院や診療所等の医療施設(例えば、放射線治療装置1が設置された治療室など)に設置され、放射線治療における被治療体の呼吸制御を支援する。具体的には、呼吸監視装置2は、息止め照射や呼吸同期照射を行う被治療体における呼吸制御の精度を向上させる。
【0022】
息止め照射や呼吸同期照射が実施される場合、例えば、被治療体の呼吸の波形を模擬した情報を被治療体に提示して、呼吸のタイミングを制御する呼吸ガイドが行われる。しかしながら、運動機能や認知機能が低下している被治療体(例えば、高齢者など)は、呼吸ガイドと実際の呼吸にずれが生じる場合がある。また、治療や検査時間が長くなった場合、疲れによって呼吸ガイドと実際の呼吸にずれが生じる場合がある。
【0023】
そこで、呼吸監視装置2は、治療中の被治療体の呼吸と呼吸ガイドに対する視線を監視することで、呼吸ガイドに対する被治療体の反応を評価して、呼吸制御の精度を向上させる。以下、呼吸監視装置2の詳細について説明する。
【0024】
本実施形態では、例えば、図2に示すように、呼吸監視装置2の処理回路26が、制御機能261と、取得機能262と、計画機能263と、評価機能264とを実行する。ここで、制御機能261は、出力制御部の一例である。また、取得機能262は、取得部の一例である。また、評価機能264は、評価部の一例である。
【0025】
制御機能261は、入力インターフェース22を介した操作に応じて、種々のGUI(Graphical User Interface)や、種々の表示情報を生成して、ディスプレイ23に表示するように制御する。例えば、制御機能261は、被治療体に対して、呼気と吸気のタイミングを示す呼吸ガイド情報を出力させる。また、制御機能261は、被治療体の反応が評価された評価情報を出力させる。ここで、制御機能261は、種々の情報を、ディスプレイ23への表示情報として出力したり、スピーカー24への音声情報として出力したりすることができる。なお、制御機能261による処理については、後に詳述する。
【0026】
取得機能262は、通信インターフェース51を介して、ネットワークに接続された各種装置から種々の情報を取得する。具体的には、取得機能262は、被治療体の呼吸情報と、呼吸ガイド情報に対する被治療体の視線情報とを取得する。例えば、取得機能262は、呼吸周期測定装置3によって測定された被治療体の呼吸状態を示す波形情報を取得する。また、例えば、取得機能262は、視線位置取得装置4によって取得された被治療体の視線位置の情報を取得する。なお、取得機能262による処理については、後に詳述する。
【0027】
計画機能263は、被治療体の呼吸状態を示す波形情報に基づいて、被治療体に対して提示する呼吸ガイド情報を生成する。具体的には、計画機能263は、被治療体の呼吸を模擬した情報を生成する。例えば、計画機能263は、被治療体の呼気と吸気の状態を視覚的に表した視覚情報を含む呼吸ガイド情報を生成する。なお、計画機能263による処理については、後に詳述する。
【0028】
評価機能264は、呼吸ガイド情報と、治療体の呼吸情報と、被治療体の視線情報とに基づいて、呼吸ガイド情報に対する被治療体の反応を評価する。具体的には、評価機能264は、被治療体の呼吸情報と呼吸ガイド情報との比較結果と、被治療体の視線情報と呼吸ガイド情報との比較結果とに基づいて、呼吸ガイド情報に対する被治療体の反応を評価する。例えば、評価機能264は、放射線治療中の取得された被治療体の呼吸状態を示す波形情報と計画機能263によって生成された呼吸ガイド情報との比較結果と、放射線治療中に取得された被治療体の呼吸ガイド情報に対する視線情報と呼吸ガイド情報との比較結果とに基づいて、呼吸ガイド情報に対する被治療体の反応を評価する。なお、評価機能264による処理については、後に詳述する。
【0029】
上述した処理回路26は、例えば、プロセッサによって実現される。その場合に、上述した各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路25に記憶される。そして、処理回路26は、記憶回路25に記憶された各プログラムを読み出して実行することで、各プログラムに対応する機能を実現する。換言すると、処理回路26は、各プログラムを読み出した状態で、図2に示した各処理機能を有することとなる。
【0030】
次に、呼吸監視装置2による処理の手順について、図3を用いて説明した後、各処理の詳細について説明する。図3は、第1の実施形態に係る呼吸監視装置2の処理回路26が有する各処理機能によって行われる処理の処理手順を示すフローチャートである。なお、図3に示すフローチャートは、被治療体が放射線治療装置1の寝台に横臥した後の処理について示す。
【0031】
例えば、図3に示すように、本実施形態では、取得機能262が、放射線治療前に呼吸周期測定装置3によって測定された被治療体の呼吸情報(被治療体の呼吸状態を示す波形情報)を取得する(ステップS101)。例えば、取得機能262は、呼吸周期測定装置3によって呼吸情報の測定が開始されると、測定された呼吸情報を取得する。なお、呼吸周期測定装置3による被治療体の呼吸情報の測定、及び、取得機能262による呼吸情報の取得は、放射線治療が終了するまで継続して行われる。この処理は、例えば、処理回路26が、取得機能262に対応するプログラムを記憶回路25から呼び出して実行することにより実現される。
【0032】
続いて、計画機能263が、取得された被治療体の呼吸情報に基づいて、呼吸周期のガイドを計画する(ステップS102)。具体的には、計画機能263は、被治療体の呼吸における呼気と吸気のタイミングを示す呼吸ガイド情報を生成する。この処理は、例えば、処理回路26が、計画機能263に対応するプログラムを記憶回路25から呼び出して実行することにより実現される。
【0033】
続いて、制御機能261が、計画機能263によって生成された呼吸ガイド情報を示すVC(Visual Coaching)画面をディスプレイ23に表示させる(ステップS103)。この処理は、例えば、処理回路26が、制御機能261に対応するプログラムを記憶回路25から呼び出して実行することにより実現される。
【0034】
続いて、取得機能262が、VC画面に対する被治療体の視線情報を取得する(ステップS104)。具体的には、取得機能262は、放射線治療が開始され、VC画面を見ながら呼吸を行っている被治療体の視線情報を取得する。この処理は、例えば、処理回路26が、取得機能262に対応するプログラムを記憶回路25から呼び出して実行することにより実現される。
【0035】
続いて、評価機能264が、呼吸ガイド情報と被治療体の実呼吸とのずれ、及び、呼吸ガイド情報と被治療体の視線情報とのずれを算出する(ステップS105)。具体的には、評価機能264は、呼吸ガイド情報における呼気と吸気のタイミングと被治療体の実際の呼吸の状態とのずれを算出する。また、評価機能264は、呼吸ガイド情報において示される呼吸の状態を示す情報と、当該情報に対する視線の位置とのずれを算出する。この処理は、例えば、処理回路26が、評価機能264に対応するプログラムを記憶回路25から呼び出して実行することにより実現される。
【0036】
そして、評価機能264が、各比較におけるずれが閾値以内であるか否かを判定する(ステップS106)。具体的には、評価機能264は、呼吸ガイド情報における呼気と吸気のタイミングと被治療体の実際の呼吸の状態とのずれが閾値以内であるか否かを判定する。また、評価機能264は、呼吸ガイド情報において示される呼吸の状態を示す情報と、当該情報に対する視線の位置とのずれが閾値以内であるか否かを判定する。この処理は、例えば、処理回路26が、評価機能264に対応するプログラムを記憶回路25から呼び出して実行することにより実現される。
【0037】
ここで、ずれが閾値以内ではない(閾値を超える)場合(ステップS106、No)、計画機能263が、呼吸ガイド情報を変更したり、制御機能261が、VC画面の変更や支援情報の出力を行ったりする(ステップS107)。この処理は、例えば、処理回路26が、計画機能263及び制御機能261に対応するプログラムを記憶回路25から呼び出して実行することにより実現される。
【0038】
一方。ステップS106において、ずれが閾値以内である場合(ステップS106、Yes)、制御機能261は、放射線治療の照射が終了したか否かを判定する(ステップS108)。ここで、照射が終了していない場合(ステップS108、No)、制御機能261は、ステップS103に戻って、VC画面の表示を継続する。一方、照射が終了した場合(ステップS108、Yes)、制御機能261は、処理を終了する。
【0039】
以下、呼吸監視装置2によって実行される各処理の詳細について、説明する。
【0040】
(呼吸情報の取得処理)
図3のステップS101で説明したように、取得機能262は、呼吸周期測定装置3によって計測された被治療体の呼吸情報を取得する。具体的には、取得機能262は、放射線治療装置1の寝台に横臥した被治療体の呼吸の状態(呼気から吸気、吸気から呼気への連続した一連の状態)を示す呼吸情報を取得する。例えば、取得機能262は、上記した被治療体の呼吸の状態を示す波形情報を取得する。
【0041】
(呼吸ガイドの計画処理)
図3のステップS102で説明したように、計画機能263は、取得機能262によって取得された被治療体の呼吸情報に基づいて、被治療体の呼吸周期をガイドする呼吸ガイド情報を生成する。具体的には、計画機能263は、被治療体の呼吸の状態を示す波形情報から、1呼吸(例えば、吸い始めから次の吸い始めまで)の呼吸情報である呼吸周期を取得し、取得した呼吸周期を示す呼吸ガイド情報を生成する。
【0042】
例えば、計画機能263は、取得された呼吸状態を示す波形情報から1呼吸分の波形を複数抽出し、抽出した1呼吸分の波形の長さ(時間)と波形の高さ(呼吸レベルの状態)の平均をそれぞれ算出する。そして、計画機能263は、算出した平均時間を1呼吸の時間とし、算出した平均の呼吸レベルで1呼吸が行われるものとする呼吸周期を設定する。そして、計画機能263は、設定した呼吸周期に基づいて、呼吸ガイド情報を生成する。一例を挙げると、計画機能263は、被治療体の呼吸周期を示す視覚情報として、呼吸周期をバーの伸縮で示した呼吸ガイド情報を生成する。
【0043】
(VC画面の表示処理)
図3のステップS103で説明したように、制御機能261は、計画機能263によって生成された呼吸ガイド情報を示すVC画面をディスプレイ23に表示させる。具体的には、制御機能261は、放射線治療において、息止め照射、或いは、呼吸同期照射が行われる被治療体に対して呼吸をガイドするためのVC画面を表示させる。ここで、制御機能261は、放射線治療装置1を操作する技師に対して、呼吸ガイド情報に対する被治療体の反応を示す情報を表示させる。
【0044】
図4は、第1の実施形態に係るVC画面の一例を示す図である。ここで、図4では、息止め照射を行う場合のVC画面の例を示す。例えば、制御機能261は、図4の(A)に示すように、計画機能263によって生成された呼吸情報を示す視覚情報(バーV1)と、実際の被治療体の呼吸状態を示す視覚情報(バーV2)と、呼吸において息止めを行うタイミングを示す領域R1とを含むVC画面を表示させる。
【0045】
例えば、バーV1は、計画機能263によって算出された呼吸周期に沿って、伸縮する。一例を挙げると、バーV1は、図4の(B)、(C)に示すように、徐々に伸長することで1呼吸における吸気をガイドする。なお、図示していないが、バーV1は、徐々に収縮することで1呼吸における呼気をガイドする。
【0046】
息止め照射が実行される被治療体は、図4に示されたバーV1を見ながら、それに合わせて呼吸を行う。呼吸周期測定装置3は、バーV1を見ながら呼吸を行っている被治療体の呼吸動を継続して測定し、取得機能262は、測定された被治療体の呼吸動を示す波形情報を取得する。計画機能263は、取得された波形情報に基づいて、被治療体が実際に行っている呼吸の状態をバーの伸縮で示したバーV2の情報を生成する。
【0047】
制御機能261は、図4に示すように、計画機能263によって生成されたバーV2の情報を表示させる。すなわち、バーV2は、バーV1を見ながら呼吸している被治療体の実際の呼吸の状態を示しており、例えば、1呼吸における吸気がバーの伸長で示され、1呼吸における呼気がバーの収縮で示される。
【0048】
息止め照射では、例えば、図4の(C)に示すように、被治療体の実際の呼吸(バーV2)が領域R1に入ったタイミングで息止めを促し、その間に放射線が照射される。ここで、放射線照射の制御は、被治療体の実際の呼吸状態(息止めの状態)に基づいて自動で実施されてもよく、或いは、技師によって手動で実施されてもよい。なお、息止めの時間などは、放射線の治療計画において被治療体ごとにそれぞれ計画される。
【0049】
(視線情報の取得処理)
図3のステップS104で説明したように、取得機能262は、VC画面を見る被治療体の視線情報を取得する。上記したように、被治療体は、VC画面に表示された呼吸ガイド情報(例えば、図4のバーV1)を見ながら、自身の呼吸を制御する。したがって、被治療体は、呼吸ガイド情報の基準点(呼吸をガイドするために動く点)を見ながら、自身の呼吸を行う。例えば、被治療体は、図4のバーV1の先端部分(伸縮するバーの上端)を見ながら呼吸を行う。
【0050】
視線位置取得装置4は、放射線治療中の被治療体の視線位置を取得し、取得機能262は、視線位置取得装置4によって取得された被治療体の視線位置を取得する。具体的には、取得機能262は、視線位置取得装置4によって取得されたVC画面上の被治療体の視線位置を取得する。
【0051】
取得機能262によって被治療体の視線位置が取得されると、制御機能261は、取得された視線位置の情報をVC画面上に表示させることができる。図5は、第1の実施形態に係る制御機能261による表示制御の一例を示す図である。ここで、図5では、被治療体用モニタに表示されるVC画面と、技師用モニタに表示されるVC画面の一例を示す。
【0052】
例えば、制御機能261は、図5の被治療体モニタに示すように、呼吸ガイド情報であるバーV1と、実際の被治療体の呼吸状態を示すバーV2と、呼吸において息止めを行うタイミングを示す領域R1とを含むVC画面を被治療体用モニタに表示させる。また、制御機能261は、図5に示すように、呼吸をガイドするための情報として、文字情報「息を吸って」を表示させることもできる。ここで、制御機能261は、被治療体の視線位置が取得された場合でも、図5に示すように、被治療体用モニタには視線位置の情報を表示させないように制御することができる。すなわち、被治療体用モニタに被治療体の視線位置が表示されると、バーV1が見にくくなったり、誤って視線位置を見てしまったりする場合が生じる可能性があるため、制御機能261は、被治療体用モニタに視線位置を表示させないようにすることができる。なお、制御機能261は、被治療体用モニタに被治療体の視線位置を表示させることも可能である。
【0053】
また、制御機能261は、図5の技師用モニタに示すように、バーV1と、バーV2と、領域R1と、文字情報とに加えて、被治療体の視線位置P1を技師用モニタに表示させる。これにより、技師は、呼吸ガイド情報に対する被治療体の視線位置を確認することができ、放射線治療中の被治療体の状態を把握することができる。
【0054】
(ずれの算出処理)
図3のステップS105で説明したように、評価機能264は、呼吸ガイド情報と被治療体の視線とのずれ、及び、呼吸ガイド情報と被治療体の実呼吸とのずれを算出する。具体的には、評価機能264は、呼吸ガイド情報における基準点と視線位置とのずれ、及び、呼吸ガイド情報における呼気と吸気のタイミングと被治療体の実際の呼吸の状態とのずれを算出する。以下、基準点と視線位置とのずれ、及び、呼吸のずれの算出例について説明する。
【0055】
図6は、第1の実施形態に係る基準点に対する視線位置のずれの算出例を説明するための図である。例えば、図6に示すように、評価機能264は、呼吸ガイド情報であるバーV1と視線位置P1とが領域R1に到達した時点のずれを、基準点に対する視線位置のずれとして算出する。すなわち、評価機能264は、図6の(A)に示すバーV1の上端が領域R1の下端を通過した時点と、図6の(B)に示す視線位置P1が領域R1の下端を通過した時点との時間差を、基準点に対する視線位置のずれとして算出する。ここで、評価機能264は、上記した時間差を複数呼吸分算出し、算出した時間差の平均を、基準点に対する視線位置のずれとして算出することもできる。
【0056】
上記したように、被治療体は、呼吸ガイド情報の基準点(本実施形態では、バーV1の上端)を見ながら、呼吸を制御する。したがって、被治療体の視線位置は、バーV1の上端の動きを追従して動くこととなる。評価機能264は、このときの基準点に対する視線位置のずれを時間差で算出する。ここで、評価機能264によって算出されるずれは、視線位置P1の移動がバーV1の移動よりも遅い場合に限らず、視線位置P1の移動がバーV1の移動よりも早い場合も含む。
【0057】
図7は、第1の実施形態に係る呼吸のずれの算出例を説明するための図である。例えば、図7に示すように、評価機能264は、呼吸ガイド情報であるバーV1と実際の呼吸の状態を示すバーV2とが領域R1に到達した時点のずれを、呼吸のずれとして算出する。すなわち、評価機能264は、図7(A)に示すバーV1の上端が領域R1の下端を通過した時点と、図7の(B)に示すバーV2が領域R1の下端を通過した時点との時間差を、呼吸のずれとして算出する。ここで、評価機能264は、上記した時間差を複数呼吸分算出し、算出した時間差の平均を、呼吸のずれとして算出することもできる。また、評価機能264によって算出されるずれは、バーV2の移動がバーV1の移動よりも遅い場合に限らず、バーV2の移動がバーV1の移動よりも早い場合も含む。
【0058】
ここで、上記した例では、息止め照射を行う場合を例に挙げて説明したが、各機能は、呼吸同期照射においても同様の処理を行う。図8は、第1の実施形態に係る制御機能による表示制御の一例を示す図である。ここで、図8では、被治療体用モニタに表示されるVC画面と、技師用モニタに表示されるVC画面の一例を示す。
【0059】
例えば、制御機能261は、図8の被治療体モニタに示すように、呼吸ガイド情報であるバーV1と、実際の被治療体の呼吸状態を示すバーV2と、自由呼吸下において最も息が吸われるタイミングの位置を示す線L1と、自由呼吸下において最も息が吐き出されるタイミングの位置を示す線L2を含むVC画面を被治療体用モニタに表示させる。また、制御機能261は、図8に示すように、呼吸同期照射においても、呼吸をガイドするための情報として、文字情報「息を吸って」を表示させることもできる。また、制御機能261は、図5で説明した息止め照射の場合と同様に、被治療体用モニタにおける視線位置の情報を表示・非表示を制御することができる。
【0060】
また、制御機能261は、図8の技師用モニタに示すように、バーV1と、バーV2と、線L1と、線L2と、文字情報とに加えて、被治療体の視線位置P1を技師用モニタに表示させることができる。ここで、制御機能261は、評価機能264によって算出されたずれの情報(評価情報)をVC画面に表示させることもできる。例えば、制御機能261は、図8の技師用モニタに示すように、「差異:-0.8sec」を表示させることができる。なお、制御機能261は、上記したずれの情報を、息止め照射時のVC画面にも同様に表示させることができる。
【0061】
(ずれの評価処理)
図3のステップS106で説明したように、評価機能264は、呼吸ガイド情報にて示された呼気と吸気のタイミングに対する前記被治療体の呼吸のずれと、呼吸ガイド情報に対する被治療体の視線のずれとに基づいて、被治療体の反応を評価する。具体的には、評価機能264は、呼気と吸気のタイミングに対する被治療体の呼吸のずれが所定の閾値を超えるか否か、及び、呼吸ガイド情報に対する被治療体の視線のずれが所定の閾値を超えるか否かを判定する。なお、視線のずれを評価するための閾値、及び、呼吸のずれを評価する閾値は、それぞれ任意に設定することができる。
【0062】
図9は、第1の実施形態に係る評価機能264による評価のパターンの一例を示す図である。例えば、評価機能264は、呼吸ガイド情報に対する被治療体の反応を、図9に示す4つのパターンで評価する。すなわち、評価機能264は、被治療体の反応が、呼吸ガイド情報と実呼吸との時間差及び呼吸ガイド情報と視線との時間差が共に閾値以内であるパターン1、呼吸ガイド情報と実呼吸との時間差が閾値を超過、かつ、呼吸ガイド情報と視線との時間差が閾値以内であるパターン2、呼吸ガイド情報と実呼吸との時間差が閾値以内、かつ、呼吸ガイド情報と視線との時間差が閾値を超過したパターン3、呼吸ガイド情報と実呼吸との時間差及び呼吸ガイド情報と視線との時間差が共に閾値を超過したパターン4のいずれであるかを判定する。
【0063】
ここで、評価機能264は、実呼吸のずれが閾値以内となるパターン1及びパターン3については、問題なしと判定する。すなわち、評価機能264は、図3のステップS106の判定において、閾値以内(Yes)と判定する。一方、実呼吸のずれが閾値を超えるパターン2と、実呼吸のずれ及び視線のずれが共に閾値を超えるパターン4については、評価機能264は、問題ありと判定する。すなわち、評価機能264は、図3のステップS106の判定において、閾値を超える(No)と判定する。
【0064】
(出力情報の制御処理)
図3のステップS107で説明したように、ステップS106の判定で閾値を超える(No)と判定された場合、計画機能263が、呼吸ガイド情報を変更したり、制御機能261が、VC画面の変更や支援情報の出力を行ったりする。
【0065】
例えば、制御機能261は、呼気と吸気のタイミングに対する被治療体の呼吸のずれが所定の閾値を超え、かつ、呼吸ガイド情報に対する被治療体の視線のずれが所定の閾値を超えていない場合に、呼吸ガイド情報の表示形態を変化させる。すなわち、パターン2の場合、呼吸ガイド情報に対する視線位置のずれが小さく、呼吸のずれが大きいことから、制御機能261は、呼吸のずれが小さくなるように、呼吸ガイド情報を変化させる。
【0066】
かかる場合には、例えば、計画機能263が、呼吸周期を長くしたり、息止めの時間を短くしたりするように、呼吸ガイド情報を変更する。これにより、制御機能261によって表示される呼吸ガイド情報は、ガイドの移動速度(バーV1の伸縮のスピード)が遅くなるとともに、ガイドが停止している時間(バーV1の伸縮が止まっている時間)が短くなる。
【0067】
また、例えば、制御機能261は、呼気と吸気のタイミングに対する被治療体の呼吸のずれが所定の閾値を超え、かつ、呼吸ガイド情報に対する被治療体の視線のずれが所定の閾値を超えた場合に、呼吸ガイド情報の表示形態を変化させ、かつ、呼吸に関する支援情報をさらに出力させる。すなわち、パターン4の場合、呼吸ガイド情報に対する視線位置のずれ、及び、呼吸のずれが共に大きいことから、制御機能261は、呼吸のずれが小さくなり、かつ、呼吸ガイド情報の視認性を上げるように制御するとともに、呼吸を支援するための支援情報を出力させる。
【0068】
かかる場合には、例えば、計画機能263と制御機能261は、パターン2の場合と同様の処理を行う。さらに、制御機能261は、呼吸ガイド情報(例えば、バーV1)の視認性が上がるように、呼吸ガイド情報の表示を変更する。例えば、制御機能261は、バーV1の表示サイズを大きくする、バーV1に枠線を付けて強調させて表示する、バーV1の色を変える、などの制御を行う。
【0069】
また、制御機能261は、支援情報として、スピーカー24から呼吸をガイドする音声を出力したり、バーV1を注視するように注意を促す情報を被治療体用モニタに表示させたりする。
【0070】
なお、上記した例では、パターン2及びパターン4の場合に、VC画面の変更や支援情報の出力を行う例について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、他のパターンにおいても、VC画面の変更や支援情報の出力を行ってもよい。例えば、パターン1の場合に、制御機能261は、呼吸の状態がよく、この状態を維持するように支援情報を、被治療体用モニタに表示させることもできる。また、例えば、パターン3の場合に、制御機能261は、視線の追従ずれが大きくなってきたことを伝える支援情報を被治療体用モニタに表示させることもできる。
【0071】
上述したように、第1の実施形態によれば、制御機能261は、被治療体に対して呼吸をガイドする呼吸ガイド情報を出力させる。取得機能262は、被治療体の呼吸情報と、呼吸ガイド情報に対する被治療体の視線情報とを取得する。評価機能264は、呼吸ガイド情報と、治療体の呼吸情報と、被治療体の視線情報とに基づいて、呼吸ガイド情報に対する被治療体の反応を評価する。従って、第1の実施形態に係る呼吸監視装置2は、呼吸ガイド情報に対する被治療体の視線と実呼吸とを評価することができ、被治療体の呼吸制御の精度を向上させることを可能にする。
【0072】
また、第1の実施形態によれば、制御機能261は、被治療体に対して、呼気と吸気のタイミングを示す呼吸ガイド情報を出力させる。評価機能264は、被治療体の呼吸情報と呼吸ガイド情報との比較結果と、被治療体の視線情報と呼吸ガイド情報との比較結果とに基づいて、呼吸ガイド情報に対する被治療体の反応を評価する。従って、第1の実施形態に係る呼吸監視装置2は、被治療体の視線と実呼吸のそれぞれについて評価を行うことができ、呼吸がうまくいかない場合に、VC画面がきちんと見ることができていないのか、見てはいるが呼吸制御がついていけないのかを判別することができ、呼吸制御の精度を向上させることを可能にする。
【0073】
また、第1の実施形態によれば、評価機能264は、呼吸ガイド情報にて示された呼気と吸気のタイミングに対する被治療体の呼吸のずれと、呼吸ガイド情報に対する被治療体の視線のずれとに基づいて、被治療体の反応を評価する。従って、第1の実施形態に係る呼吸監視装置2は、呼吸と視線をそれぞれ評価することを可能にする。
【0074】
また、第1の実施形態によれば、評価機能264は、呼気と吸気のタイミングに対する被治療体の呼吸のずれが所定の閾値を超えるか否か、及び、呼吸ガイド情報に対する被治療体の視線のずれが所定の閾値を超えるか否かを判定する。従って、第1の実施形態に係る呼吸監視装置2は、呼吸と視線をそれぞれ独立して評価することを可能にする。
【0075】
また、第1の実施形態によれば、制御機能261は、被治療体の反応が評価された評価情報をさらに出力させる。従って、第1の実施形態に係る呼吸監視装置2は、被治療体及び技師に対して、被治療体の状態を提示することを可能にする。
【0076】
また、第1の実施形態によれば、制御機能261は、呼気と吸気のタイミングに対する被治療体の呼吸のずれが所定の閾値を超え、かつ、呼吸ガイド情報に対する被治療体の視線のずれが所定の閾値を超えていない場合に、呼吸ガイド情報の表示形態を変化させる。従って、第1の実施形態に係る呼吸監視装置2は、呼吸ガイド情報は見えているが、呼吸制御がついていけていない場合の支援を行うことを可能にする。
【0077】
また、第1の実施形態によれば、制御機能261は、呼気と吸気のタイミングに対する被治療体の呼吸のずれが所定の閾値を超え、かつ、呼吸ガイド情報に対する被治療体の視線のずれが所定の閾値を超えた場合に、呼吸ガイド情報の表示形態を変化させ、かつ、呼吸に関する支援情報をさらに出力させる。従って、第1の実施形態に係る呼吸監視装置2は、呼吸ガイド情報及び呼吸制御がついていけていない場合の支援を行うことを可能にする。
【0078】
(その他の実施形態)
これまで第1の実施形態について説明したが、上述した第1の実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
【0079】
上述した実施形態では、被治療体用モニタに実呼吸の状態を示す視覚情報(バーV2)を表示させる場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、被治療体用モニタに実呼吸の状態を示す視覚情報(バーV2)を表示させない場合でもよい。
【0080】
また、上述した実施形態では、技師用モニタに視線位置P1を表示させる場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、視線位置P1を表示せず、視線位置に基づく情報を通知する場合でもよい。かかる場合には、例えば、制御機能261は、呼吸ガイド情報に対する視線の追従が遅れていること(或いは、徐々に遅れてきていること)を、表示情報や音声で通知したり、遅れの時間を表示情報や音声で通知したりする。
【0081】
また、上述した実施形態では、呼吸監視装置2が独立した装置としてネットワークに接続される場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、放射線治療装置1が上記した呼吸監視装置2の処理を実行する場合でもよい。かかる場合には、放射線治療装置1の処理回路が、上記した制御機能261、取得機能262、計画機能263、評価機能264の各機能を実行する。
【0082】
また、上述した実施形態では、呼吸監視装置2が、放射線治療を行う被治療体の呼吸を監視する場合について説明したが、被治療体の呼吸を監視するものであれば、どのような治療においても適用することができる。例えば、電子線、X線、ガンマ線、陽子線、重粒子線、中性子線のいずれを照射する場合でもよい。
【0083】
なお、図2では、単一の処理回路26によって各処理機能が実現される場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、処理回路26は、複数の独立したプロセッサを組み合わせて構成され、各プロセッサが各プログラムを実行することにより各処理機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路26が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
【0084】
また、上述した各実施形態の説明で用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。ここで、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合には、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出して実行することで機能を実現する。また、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成され、その機能を実現するようにしてもよい。
【0085】
ここで、プロセッサによって実行されるプログラムは、ROM(Read Only Memory)や記憶部等に予め組み込まれて提供される。なお、このプログラムは、これらの装置にインストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD(Compact Disk)-ROM、FD(Flexible Disk)、CD-R(Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されて提供されてもよい。また、このプログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納され、ネットワーク経由でダウンロードされることにより提供又は配布されてもよい。例えば、このプログラムは、各機能部を含むモジュールで構成される。実際のハードウェアとしては、CPUが、ROM等の記憶媒体からプログラムを読み出して実行することにより、各モジュールが主記憶装置上にロードされて、主記憶装置上に生成される。
【0086】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、呼吸制御の精度を向上させることができる。
【0087】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0088】
2 呼吸監視装置
261 制御機能
262 取得機能
264 評価機能
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9