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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011047
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】半導体ウェハの製造装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/205 20060101AFI20240118BHJP
   C23C 16/52 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
H01L21/205
C23C16/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112726
(22)【出願日】2022-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤林 裕明
(72)【発明者】
【氏名】森 博隆
(72)【発明者】
【氏名】里村 隆幸
(72)【発明者】
【氏名】高木 茂行
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
4K030EA11
4K030GA06
4K030HA11
4K030KA28
4K030KA39
4K030KA41
5F045AA03
5F045AB06
5F045AC05
5F045AC07
5F045AC14
5F045AC19
5F045AD01
5F045AE29
5F045AF02
5F045BB20
5F045DP03
5F045DP28
5F045EE14
5F045EF20
5F045EK07
5F045EM02
(57)【要約】
【課題】エピタキシャル層を適切に成長できなくなることを抑制する。
【解決手段】筒部41および蓋部Cで囲まれる空間を中空室41aとして中空室41aに備えられる加熱装置60と、不活性ガスを中空室41aに導入する不活性ガス用供給管90と、不活性ガスを排気する不活性ガス用排気管100と、を備える。そして、蓋部Cの質量を蓋部Cの中空室41aに晒される部分の面積S2、S3、S5で除算した値を蓋部Cの圧力とし、蓋部Cの圧力のうちの最も小さい部分を最小閉塞部の圧力とすると、中空室41aは、圧力が反応室20aの圧力より高く、かつ、最小閉塞部の圧力以下となるように、不活性ガス用排気管100から排気される不活性ガスの量が調整されるようにする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウェハの製造装置であって、
反応ガスが導入されると共に、基礎ウェハ(10)の表面(10a)側にエピタキシャル層(11)を成長させる反応室(20a)を形成する反応室形成部(20)と、
前記反応室に備えられ、前記反応室に前記エピタキシャル層を成長させる反応ガスを供給する反応ガス用供給管(30)と、
前記反応室に備えられ、前記反応室から未反応ガスを排気する反応ガス用排気管(70)と、
前記反応室に配置され、前記基礎ウェハが配置されるサセプタ(50)と、
一端部側に前記サセプタが配置される筒部(41)を有し、前記サセプタを前記基礎ウェハと共に回転させる回転装置(40)と、
前記筒部の一端部側に配置される前記サセプタを含む蓋部(C)と、
前記筒部および前記蓋部で囲まれる空間を中空室(41a)として前記中空室に備えられ、前記基礎ウェハを加熱する加熱装置(60)と、
前記中空室に備えられ、不活性ガスを前記中空室に導入する不活性ガス用供給管(90)と、
前記中空室に備えられ、前記不活性ガスを排気する不活性ガス用排気管(100)と、を備え、
前記蓋部の質量を前記蓋部の前記中空室に晒される部分の面積(S2、S3、S5)で除算した値を前記蓋部の圧力とし、前記蓋部の圧力のうちの最も小さい部分を最小閉塞部の圧力とすると、前記中空室は、圧力が前記反応室の圧力より高く、かつ、前記最小閉塞部の圧力以下となるように、前記不活性ガス用排気管から排気される前記不活性ガスの量が調整される半導体ウェハの製造装置。
【請求項2】
前記サセプタは、前記筒部の一端部側に支持され、貫通孔(513)が形成された外縁サセプタ部(510)と、前記貫通孔に配置される部分を有し、前記外縁サセプタ部に支持され、前記外縁サセプタ部と分離可能とされた内縁サセプタ部(520)とを有し、
前記蓋部は、前記サセプタで構成され、
前記最小閉塞部の圧力は、前記内縁サセプタ部の質量を、前記内縁サセプタ部のうちの前記中空室に晒される部分の面積(S2)で除算した値とされている請求項1に記載の半導体ウェハの製造装置。
【請求項3】
前記サセプタは、前記筒部の開口端部に配置される一部材で構成され、
前記最小閉塞部の圧力は、前記サセプタの質量を、前記サセプタのうちの前記中空室に晒される部分の面積(S3)で除算した値とされている請求項1に記載の半導体ウェハの製造装置。
【請求項4】
前記サセプタは、貫通孔(53)が形成されており、
前記基礎ウェハは、前記貫通孔を閉塞する状態で配置され、
前記蓋部は、前記サセプタおよび前記基礎ウェハで構成されており、
前記最小閉塞部の圧力は、前記基礎ウェハの質量を、前記基礎ウェハのうちの前記中空室に晒される部分の面積(S5)で除算した値とされている請求項1に記載の半導体ウェハの製造装置。
【請求項5】
前記不活性ガス用供給管の前記不活性ガスを吐出する開口端部は、前記不活性ガス用排気管の前記不活性ガスを吸引する開口端部よりも、前記反応室における中心に近づけられている請求項1ないし4のいずれか1つに記載の半導体ウェハの製造装置。
【請求項6】
前記不活性ガス用供給管の前記不活性ガスを吐出する開口端部側は、前記不活性ガス用排気管の前記不活性ガスを吸引する開口端部側と反対側に折り曲げられている請求項1ないし4のいずれか1つに記載の半導体ウェハの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハの製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、原料ガスを含む反応ガスが導入される反応室において、基礎ウェハをサセプタに載置した状態で回転させながら加熱して当該基礎ウェハの表面に半導体層であるエピタキシャル層を成長させる半導体ウェハの製造装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
具体的には、この半導体ウェハの製造装置では、基礎ウェハが配置される回転装置が反応室に配置されている。回転装置は、一端部側が開口端とされた筒部を有する構成とされており、サセプタを含む蓋部が開口端に配置されることで内部が略閉塞されるようになっている。そして、筒部および蓋部で囲まれる空間を中空室とすると、中空室には、基礎ウェハを裏面側から加熱する加熱装置が配置されている。なお、このような加熱装置は、例えば、カーボン製の抵抗加熱ヒータが用いられる。
【0004】
また、この半導体ウェハの製造装置では、反応ガスが反応室から中空室内に流入して加熱装置と反応することを抑制するため、中空室に不活性ガスを導入するようにしている。詳しくは、この半導体ウェハの製造装置では、中空室に不活性ガスを導入して中空室内の圧力を反応室の圧力より高くすることにより、反応室から中空室に反応ガスが流入し難くなるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-69904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、中空室の圧力を反応室の圧力よりも高くし過ぎると、筒部を閉塞するための蓋部が浮上して筒部から外れる可能性があり、エピタキシャル層を適切に成長できなくなる可能性がある。
【0007】
本発明は上記点に鑑み、エピタキシャル層を適切に成長できなくなることを抑制できる半導体ウェハの製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための請求項1は、半導体ウェハの製造装置であって、反応ガスが導入されると共に、基礎ウェハ(10)の表面(10a)側にエピタキシャル層(11)を成長させる反応室(20a)を形成する反応室形成部(20)と、反応室に備えられ、反応室にエピタキシャル層を成長させる反応ガスを供給する反応ガス用供給管(30)と、反応室に備えられ、反応室から未反応ガスを排気する反応ガス用排気管(70)と、反応室に配置され、基礎ウェハが配置されるサセプタ(50)と、一端部側にサセプタが配置される筒部(41)を有し、サセプタを基礎ウェハと共に回転させる回転装置(40)と、筒部の一端部側に配置されるサセプタを含む蓋部(C)と、筒部および蓋部で囲まれる空間を中空室(41a)として中空室に備えられ、基礎ウェハを加熱する加熱装置(60)と、中空室に備えられ、不活性ガスを中空室に導入する不活性ガス用供給管(90)と、中空室に備えられ、不活性ガスを排気する不活性ガス用排気管(100)と、を備え、蓋部の質量を蓋部の中空室に晒される部分の面積(S2、S3、S5)で除算した値を蓋部の圧力とし、蓋部の圧力のうちの最も小さい部分を最小閉塞部の圧力とすると、中空室は、圧力が反応室の圧力より高く、かつ、最小閉塞部の圧力以下となるように、不活性ガス用排気管から排気される不活性ガスの量が調整される。
【0009】
これによれば、中空室の圧力は、反応室の圧力より高くされている。このため、反応室から中空室に反応ガスが入り込むことを抑制でき、加熱装置の寿命が低下することを抑制できる。また、中空室の圧力は、最小閉塞部の圧力以下とされている。このため、中空室の圧力を高くしたことによって蓋部の圧力のうちの最も小さくなる部分が浮上することを抑制でき、適切にエピタキシャル層を成長できないという不具合が発生することを抑制できる。
【0010】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態における半導体ウェハの製造装置を示す模式図である。
図2】使用時間と抵抗値の変化との関係を示す図である。
図3】第2実施形態における半導体ウェハの製造装置を示す模式図である。
図4】第3実施形態における半導体ウェハの製造装置を示す模式図である。
図5】第4実施形態における半導体ウェハの製造装置を示す模式図である。
図6】第5実施形態における半導体ウェハの製造装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0013】
(第1実施形態)
第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、本実施形態の半導体ウェハの製造装置は、例えば、基礎ウェハの表面上に炭化珪素(以下では、単にSiCともいう)で構成されるエピタキシャル層を成長させてSiCウェハを製造するのに適用されると好適である。以下、半導体ウェハの製造装置として、SiCウェハを製造する半導体ウェハの製造装置(以下では、単に製造装置ともいう)を例に挙げて説明する。
【0014】
製造装置1は、図1に示されるように、基礎ウェハ10の表面10a側に半導体層としてのエピタキシャル層11を成長させる反応室20aを構成するチャンバ20を有する。なお、本実施形態では、チャンバ20が反応室20aを形成する反応室形成部に相当する。
【0015】
チャンバ20は、上方側に、基礎ウェハ10の表面10a側に結晶薄膜を成長させるための反応ガスを供給する反応ガス用供給管30が設けられている。本実施形態では、SiCをエピタキシャル成長させるため、反応ガスは、例えば、三塩化シラン(SiHCl)およびプロパン(C)からなる原料ガス、水素および塩化水素(HCl)からなるキャリーガス、窒素(N)からなるドーパントガスを含んで構成される。
【0016】
具体的には、反応ガス用供給管30は、チャンバ20の上方側であり、基礎ウェハ10の表面10aに対向する位置が開口するように配置されている。これにより、反応室20aには、基礎ウェハ10の表面10aに交差する方向(すなわち、表面10aと略直交する方向)から基礎ウェハ10の表面10aに向けて反応ガスが供給される。このため、本実施形態の製造装置1は、基礎ウェハ10の表面10aに向けて反応ガスを吹き降ろすダウンフロー型のガス供給構造であるといえる。
【0017】
また、反応室20aには、下方側に、基礎ウェハ10が配置される回転装置40が配置されている。本実施形態では、基礎ウェハ10は、回転装置40に配置されたサセプタ50上に配置される。
【0018】
回転装置40は、筒部41、回転軸42、および駆動部43等を有する構成とされている。筒部41は、有底円筒形状の部材であって中空室41aを構成するものであり、開口端部側の端部にサセプタ50が配置されるようになっている。そして、筒部41は、開口端部側がチャンバ20の上方側(すなわち、反応ガス用供給管30側)に向けられて配置されている。なお、筒部41(すなわち、中空室41a)は、具体的には後述するが、内部に、後述する不活性ガスが導入されるようになっている。
【0019】
回転軸42は、駆動部43の出力によって回転する軸であり、筒部41と一体的に回転可能なように筒部41に連結されている。駆動部43は、回転力を出力するモータ等で構成されており、回転軸42を回転させる。そして、このように構成される回転装置40では、駆動部43の出力によって回転軸42が回転し、筒部41およびサセプタ50が一体的に回転する。
【0020】
サセプタ50は、筒部41の開口端部に合わせた外形とされている。そして、本実施形態のサセプタ50は、筒部41の開口端部に配置されることで筒部41を略閉塞する。これにより、筒部41の中空室41aが略閉塞される。
【0021】
以下、本実施形態のサセプタ50の形状について説明する。本実施形態のサセプタ50は、外縁サセプタ部510と、内縁サセプタ部520とを有する形状とされている。
【0022】
外縁サセプタ部510は、一面510aおよび他面510bを有する板状とされており、一面510a側に、基礎ウェハ10を収容するための第1凹部511が形成されている。また、外縁サセプタ部510は、第1凹部511の底面の略中央部に、内縁サセプタ部520を配置するための第2凹部512が形成されている。さらに、外縁サセプタ部510は、第2凹部512の底面の略中央部に貫通孔513が形成されている。また、外縁サセプタ部510は、他面510b側の外縁部に、筒部41の開口端部と嵌合されるための段差部514が形成されている。そして、外縁サセプタ部510は、段差部514が筒部41の開口端部に嵌合されることにより、筒部41に配置される。
【0023】
内縁サセプタ部520は、貫通孔513内に配置される凸部521と、凸部521が略中央部に配置され、第2凹部512の底面に配置される板部522とを有する構成とされている。言い換えると、内縁サセプタ部520は、板部522の外縁側に窪み部が形成されて内縁部側に凸部521が形成された構成とされている。なお、凸部521は、貫通孔513と同じ形状とされて同じ大きさとされており、配置されることで貫通孔513を閉塞するように構成されている。但し、本実施形態の内縁サセプタ部520は、外縁サセプタ部510と分離可能となる状態で配置されている。
【0024】
そして、本実施形態では、サセプタ50によって筒部41の中空室41aが略閉塞される。このため、本実施形態では、サセプタ50が筒部41を閉塞する蓋部Cを構成する。また、筒部41を閉塞するように配置されるサセプタ50は、中空室41aに晒される状態で配置される。具体的には、外縁サセプタ部510は、他面510bのうちの段差部514が形成される部分および貫通孔513が形成される部分と異なる部分が中空室41aに晒される露出面S1となる。内縁サセプタ部520は、凸部521の突出方向における先端面が中空室41aに晒される露出面S2となる。
【0025】
ここで、外縁サセプタ部510の露出面S1における外縁サセプタ部510に起因する圧力(以下、単に外縁サセプタ部510の圧力ともいう)は、(外縁サセプタ部510の質量)/(露出面S2の面積)で示される。同様に、内縁サセプタ部520の露出面S2における内縁サセプタ部520に起因する圧力(以下、単に内縁サセプタ部520の圧力ともいう)は、(内縁サセプタ部520の質量)/(露出面S2の面積)で示される。そして、本実施形態のサセプタ50は、内縁サセプタ部520の圧力が外縁サセプタ部510の圧力より小さくなるように構成されている。このため、本実施形態では、内縁サセプタ部520の圧力が最小閉塞部の圧力に相当する。
【0026】
中空室41aには、基礎ウェハ10を裏面10b側から加熱する加熱装置としてのヒータ60が配置されている。ヒータ60は、例えば、カーボン製の抵抗加熱ヒータが用いられ、図示を省略しているが、制御部110と接続されて所定温度に加熱される。
【0027】
チャンバ20は、下方側に反応後のガスや未反応ガスを排気するための反応ガス用排気管70が設けられている。反応ガス用排気管70は、チャンバ20側と反対側の部分が真空ポンプ80と接続されている。また、反応ガス用排気管70には、チャンバ20と真空ポンプ80との間に、圧力検出部71と、圧力調整弁72とが備えられている。そして、反応室20aは、圧力検出部71の圧力に基づいて圧力調整弁72の開閉率が調整され、所定の圧力に調整される。
【0028】
中空室41aには、不活性ガスを供給する不活性ガス用供給管90および不活性ガスを排気する不活性ガス用排気管100が配置されている。不活性ガス用供給管90は、マスフローコントローラ91が備えられており、一定の流量で中空室41a内に不活性ガスを供給する。この際、本実施形態では、後述するように、中空室41aの圧力が反応室20aの圧力より高くなるように調整される。したがって、蓋部C(すなわち、サセプタ50)と筒部41との間の隙間から反応ガスが中空室41a内に入り込むことが抑制される。
【0029】
不活性ガス用排気管100は、中空室41a側と反対側の部分が真空ポンプ80と接続されている。また、不活性ガス用排気管100には、中空室41aと真空ポンプ80との間に、圧力検出部101と、圧力調整弁102とが備えられている。そして、中空室41aは、圧力検出部101の圧力に基づいて圧力調整弁102の開閉率が調整されることにより、所定の圧力に調整される。なお、本実施形態では、不活性ガス用供給管90および不活性ガス用排気管100は、筒部41内に配置されて中空室41aと連通されている。
【0030】
ここで、本実施形態の反応ガス用排気管70と不活性ガス用排気管100とは、各圧力調整弁72、102を挟んで真空ポンプ80と反対側の位置で一部が連結されている。そして、圧力検出部101は、反応ガス用排気管70と不活性ガス用排気管100との連結部の圧力差を検出するように配置されている。つまり、本実施形態の圧力検出部101は、反応室20a内の圧力と、中空室41a内の圧力との差圧を検出する。
【0031】
なお、特に図示しないが、中空室41aには、搬送用ロボットによる反応室20aへの基礎ウェハ10が載置されたサセプタ50の搬入や、反応室20aからのサセプタ50の搬出を補助するためのサセプタ昇降機器が配置されている。このサセプタ昇降機器は、例えば、サセプタ50の搬出時にサセプタ50を上昇させて筒部41から引き離すことで搬送用ロボットにサセプタ50を受け渡す機能を有するものが用いられる。この際、本実施形態では、サセプタ50を外縁サセプタ部510および内縁サセプタ部520を有する構成としており、内縁サセプタ部520を外縁サセプタ部510から分離できるようにしている。このため、基礎ウェハ10の引き渡しを行い易くできる。但し、製造装置1は、基礎ウェハ10が載置されたサセプタ50の搬入および搬出を行うものではなく、サセプタ50を移動させずに基礎ウェハ10のみの搬入および搬出を行うようなものであってもよい。
【0032】
さらに、製造装置1は、制御部110を備えている。制御部110は、図示しないCPUや、ROM、RAM、フラッシュメモリ、HDD等の非遷移的実体的記憶媒体で構成される記憶部等を備えたマイクロコンピュータ等で構成される。CPUは、Central Processing Unitの略であり、ROMは、Read Only Memoryの略であり、RAMは、Random Access Memoryの略であり、HDDはHard Disk Driveの略である。
【0033】
そして、制御部110は、CPUが記憶部から各種データを読み出して実行することで各種の制御作動を実現する。具体的には、制御部110は、圧力検出部71の圧力に基づき、反応室20aの圧力が所定圧力となるように、圧力調整弁72の開閉率を調整する。また、制御部110は、反応室20aの圧力と中空室41aの圧力とにおいて、中空室41aの圧力が反応室20aの圧力より高くなり、かつ、中空室41aの圧力が所定圧力以下となるように、圧力調整弁102の開閉度を調整する。本実施形態では、制御部110は、圧力検出部101が差圧計であるため、圧力検出部101の結果に基づいて圧力調整弁102の開閉率を調整する。
【0034】
ここで、所定圧力とは、中空室41aの圧力によって蓋部Cが浮上しない(すなわち、蓋部Cが離れない)圧力のことである。本実施形態の製造装置1では、サセプタ50は、外縁サセプタ部510および内縁サセプタ部520を有している。そして、内縁サセプタ部520の圧力が外縁サセプタ部510の圧力より小さくされている。このため、所定圧力は、内縁サセプタ部520が浮上しない圧力とされ、内縁サセプタ部520の圧力以下とされる。
【0035】
以上が本実施形態における製造装置1の構成である。次に、上記の製造装置1を用いて基礎ウェハ10の表面10a上にエピタキシャル層11を成長させる方法について説明する。
【0036】
まず、上記のような製造装置1では、基礎ウェハ10が載置されたサセプタ50を回転装置40によって例えば200rpmで回転させつつ、反応室20aをヒータ60によって約1600~1750℃になるまで加熱する。そして、製造装置1では、反応ガス用供給管30から反応室20aに向けて反応ガスを供給すると共に、不活性ガス用供給管90から不活性ガスを供給する。
【0037】
この場合、本実施形態では、中空室41aの圧力が反応室20aの圧力より高くなるように調整される。これにより、中空室41aに反応ガスが入り込むことを抑制できる。例えば、図2に示されるように、中空室41aの圧力が反応室20aの圧力と等しい場合(すなわち、差圧が0)、使用時間が長くなるにつてヒータ60の抵抗値が急峻に大きくなっていることが確認される。これに対し、本実施形態では、中空室41aの圧力が反応室20aの圧力よりも高くなるようにしており、例えば、図2は、中空室41aの圧力が反応室20aの圧力よりも0.6gf/cmだけ高くなるようにした結果を示している。これにより、反応ガスが中空室41aに入り込むことを効果的に抑制でき、ヒータ60の寿命が短くなることを抑制できる。
【0038】
また、本実施形態では、中空室41aの圧力は、反応室20aの圧力より高くなり、かつ内縁サセプタ部520の圧力以下となるように調整される。例えば、内縁サセプタ部520の質量を40gとし、露出面S2の面積を50cmとした場合、内縁サセプタ部520の圧力は、0.8gf/cm(すなわち、78.4Pa)となる。このため、中空室41aは、圧力が0.8gf/cm以下となるように制御される。したがって、中空室41aの圧力を高くしたとしても内縁サセプタ部520(すなわち、サセプタ50)が筒部41から浮上し、内縁サセプタ部520が基礎ウェハ10等に衝突して適切にエピタキシャル層11を成長できないという不具合が発生することを抑制できる。
【0039】
なお、不活性ガスは、例えば、アルゴンとされるが、ヘリウム等であってもよい。また、不活性ガスは、例えば、流量が6slmとされるが、適宜変更可能である。但し、不活性ガスの流量があまりにも少ない場合には、圧力調整弁102の開閉率を変化させても排気量の変化が小さくなる可能性があり、圧力調整弁102で中空室41aの圧力を調整することが困難になる可能性がある。したがって、不活性ガスの流量は、少なくとも1slmとされることが好ましい。
【0040】
また、サセプタ50の厚みや材質を変更して質量を大きくすることでサセプタ50の圧力を大きくでき、中空室41aの圧力をさらに高くできる。しかしながら、サセプタ50の厚みを厚くした場合には、熱容量が大きくなり、基礎ウェハ10が所定温度に加熱されるまでの時間が長くなる。このため、サセプタ50(例えば、内縁サセプタ部520)の厚みは、例えば、10mm以下とされることが好ましく、5mm以下とされることがさらに好ましい。
【0041】
また、サセプタ50の質量を大きくした場合には、中空室41aの圧力を高くし易くできるが、回転装置40でサセプタ50を回転させた際の振動が大きくなり易く、回転によってサセプタ50が浮上し易くなる可能性がある。このため、サセプタ50は、質量が大きすぎる材料で構成されることは好ましくなく、例えば、質量、加工精度、および耐熱性の観点より、炭素を含む材料であることが好ましい。したがって、本実施形態では、例えば、SiCや、等方性黒鉛の表面に、SiC、炭化タンタル(TaC)、または炭化ニオブ(NbC)等がコーティングされた材料で構成される。この場合、例えば、10mm厚みのCの密度から換算した圧力は、1.8gf/cm(176.4Pa)以下とされることが好ましく、5mm厚みであれば、0.9gf/cm(88.2Pa)以下とされることが好ましい。
【0042】
以上説明した本実施形態によれば、中空室41aの圧力は、反応室20aの圧力より高くされている。このため、反応室20aから中空室41aに反応ガスが入り込むことを抑制でき、反応ガスとヒータ60とが反応してヒータ60の寿命が低下することを抑制できる。
【0043】
また、中空室41aの圧力は、内縁サセプタ部520の圧力(すなわち、最小閉塞部の圧力)以下とされている。したがって、中空室41aの圧力を高くしたことによって内縁サセプタ部520が筒部41から浮上し、内縁サセプタ部520が基礎ウェハ10等に衝突して適切にエピタキシャル層11を成長できないという不具合が発生することを抑制できる。つまり、本実施形態の製造装置1では、エピタキシャル層11を好適に成長し易くできる。
【0044】
(1)本実施形態では、サセプタ50は、外縁サセプタ部510および内縁サセプタ部520を有しており、分離可能とされている。このため、基礎ウェハ10を配置する際等において、内縁サセプタ部520のみを搬送することが可能となり、基礎ウェハ10の設置の自由度を向上できる。
【0045】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、サセプタ50の形状を変更したものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0046】
本実施形態では、図3に示されるように、サセプタ50は、一部材で構成されている。そして、サセプタ50は、一面50a側に基礎ウェハ10を収容するための凹部51が形成されている。また、サセプタ50は、他面50b側に、筒部41の開口端部と嵌合されるための段差部52が形成されている。そして、この段差部52が筒部41の開口端部に嵌合されることにより、サセプタ50が筒部41を閉塞するように配置されている。なお、本実施形態では、サセプタ50が一部材で構成されている。このため、サセプタ50で蓋部Cが構成される。
【0047】
また、このサセプタ50は、一部材で構成されており、他面50bのうちの段差部52が形成される部分と異なる部分が中空室41aに晒される露出面S3となる。したがって、このサセプタ50では、露出面S3におけるサセプタ50に起因する圧力(以下、単にサセプタ50の圧力ともいう)は、(サセプタ50の質量)/(露出面S3の面積)となる。そして、本実施形態では、サセプタ50の圧力が最小閉塞部の圧力に相当する。
【0048】
制御部110は、基礎ウェハ10の表面10a上にエピタキシャル層11を成長させる際、中空室41aの圧力が反応室20aよりも高く、かつサセプタ50の圧力以下となるように調整する。
【0049】
以上説明した本実施形態によれば、中空室41aの圧力が反応室20aの圧力より高く、かつ最小閉塞部の圧力以下となるように調整されるため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0050】
(1)本実施形態では、蓋部Cが一部材のサセプタ50で構成されている。このため、上記第1実施形態のようにサセプタ50が外縁サセプタ部510および内縁サセプタ部520で構成される場合と比較して、最小閉塞部の圧力を高くでき、中空室41aの圧力を高くし易くできる。したがって、さらに、反応室20aから中空室41aに反応ガスが入り込むことを抑制し易くなり、ヒータ60の寿命が低下することを抑制できる。
【0051】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。本実施形態は、第2実施形態に対し、サセプタ50の形状を変更したものである。その他に関しては、第2実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0052】
本実施形態では、図4に示されるように、サセプタ50には、凹部51の底部51aに貫通孔53が形成されている。このため、中空室41aは、サセプタ50および基礎ウェハ10によって閉塞される。つまり、本実施形態では、サセプタ50および基礎ウェハ10が蓋部Cを構成する。
【0053】
また、サセプタ50は、他面50bのうちの貫通孔53が形成される部分と異なる部分が露出面S4となる。基礎ウェハ10は、裏面10bのうちの貫通孔53を閉塞する部分が露出面S5となる。
【0054】
サセプタ50の露出面S5におけるサセプタ50に起因する圧力(以下、単にサセプタ50の圧力ともいう)は、(サセプタ50の質量)/(露出面S4の面積)で示される。同様に、基礎ウェハ10の露出面S5における基礎ウェハ10に起因する圧力(以下、単に基礎ウェハ10の圧力ともいう)は、(基礎ウェハ10の質量)/(露出面S5の面積)で示される。そして、本実施形態では、サセプタ50の圧力が基礎ウェハ10の圧力より高くされている。このため、本実施形態では、基礎ウェハ10の圧力が最小閉塞部の圧力に相当する。
【0055】
そして、制御部110は、基礎ウェハ10の表面10a上にエピタキシャル層11を成長させる際、中空室41aの圧力が反応室20aよりも高く、かつ基礎ウェハ10の圧力以下となるように調整する。
【0056】
以上説明した本実施形態によれば、中空室41aの圧力が反応室20aの圧力より高く、かつ最小閉塞部の圧力以下となるように調整されるため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0057】
(第4実施形態)
第4実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、不活性ガス用供給管90の配置位置を調整したものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0058】
本実施形態では、図5に示されるように、不活性ガス用供給管90のうちの不活性ガスが吐出される開口端部は、不活性ガス用排気管100のうちの不活性ガスを吸引する開口端部よりも中空室41aの中心に近づくように配置されている。
【0059】
以上説明した本実施形態によれば、中空室41aの圧力が反応室20aの圧力より高く、かつ最小閉塞部の圧力以下となるように調整されるため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0060】
(1)本実施形態では、不活性ガス用供給管90のうちの不活性ガスが吐出される開口端部が、不活性ガス用排気管100のうちの不活性ガスを吸引する開口端部よりも中空室41aの中心に近づくように配置されている。このため、中空室41a内に不活性ガスを充満させ易くできる。
【0061】
(第5実施形態)
第5実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、不活性ガス用供給管90の形状を変更したものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0062】
本実施形態では、図6に示されるように、不活性ガス用供給管90のうちの開口端部側は、不活性ガス用排気管100と反対側に折り曲げられている。
【0063】
以上説明した本実施形態によれば、中空室41aの圧力が反応室20aの圧力より高く、かつ最小閉塞部の圧力以下となるように調整されるため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0064】
(1)本実施形態では、不活性ガス用供給管90のうちの開口端部側が不活性ガス用排気管100と反対側に折り曲げられている。このため、中空室41a内に不活性ガスを充満させ易くできる。
【0065】
(他の実施形態)
本開示は、実施形態に準拠して記述されたが、本開示は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0066】
例えば、上記各実施形態では、SiCのエピタキシャル層11を成長させる製造装置1を例に挙げて説明した。しかしながら、成長させるエピタキシャル層11の構成は適宜変更可能であり、例えば、窒化ガリウムのエピタキシャル層11を成長させる製造装置1としてもよい。
【0067】
また、上記各実施形態では、中空室41aの圧力を検出する圧力検出部101が中空室41aと反応室20aとの差圧を検出する例について説明した。しかしながら、圧力検出部101で中空室41aの圧力を検出し、制御部110で反応室20aと中空室41aとの差圧を導出するようにしてもよい。但し、反応ガスが基礎ウェハ10の裏面10b側に周り込むことを抑制しつつ、蓋部Cが浮上等しないようにするためには、詳細な圧力管理が必要となる。このため、圧力検出部101は、直接的に反応室20aと中空室41aとの差圧を検出するようにすることが好ましい。
【0068】
そして、上記各実施形態を組み合わせることもできる。例えば、上記第4、第5実施形態を上記第1~第3実施形態に適宜組み合わせ、不活性ガス用供給管90の形状を適宜変更してもよい。
【0069】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0070】
10 基礎ウェハ
10a 表面
11 エピタキシャル層
20 チャンバ(反応室形成部)
20a 反応室
40 回転装置
41 筒部
41a 中空室
40 回転装置
50 サセプタ
60 加熱装置
90 不活性ガス用供給管
100 不活性ガス用排気管
C 蓋部
図1
図2
図3
図4
図5
図6