(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110470
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】軸受装置およびスピンドル装置
(51)【国際特許分類】
F16C 41/00 20060101AFI20240808BHJP
F16C 35/12 20060101ALI20240808BHJP
F16C 19/06 20060101ALI20240808BHJP
F16C 19/52 20060101ALI20240808BHJP
G01L 5/00 20060101ALI20240808BHJP
B23B 19/02 20060101ALI20240808BHJP
B23Q 17/00 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
F16C41/00
F16C35/12
F16C19/06
F16C19/52
G01L5/00 K
B23B19/02 B
B23Q17/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015013
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】大口 耀示
(72)【発明者】
【氏名】豊口 陽亮
(72)【発明者】
【氏名】福島 靖之
【テーマコード(参考)】
2F051
3C029
3C045
3J217
3J701
【Fターム(参考)】
2F051AA11
2F051AB09
2F051BA07
3C029EE01
3C045FD13
3J217JA02
3J217JA14
3J217JA38
3J217JA39
3J217JB15
3J217JB68
3J217JB82
3J217JB84
3J701AA02
3J701AA32
3J701AA42
3J701AA54
3J701AA62
3J701BA71
3J701BA77
3J701FA48
3J701GA31
(57)【要約】
【課題】スピンドル装置において、ヒステリシスの発生を抑制し、軸受予圧の推定精度を向上させること。
【解決手段】スピンドル装置1は、予圧が与えられた状態で、主軸4を支持する第1軸受5aおよび第2軸受5bを備える。第1軸受5aと第2軸受5bの間には、間座6が配置されている。間座6は主軸4の軸方向に両端の補助間座7ga、7gbと中央の中央間座7gbに3分割されており、その中央間座7gbには、ひずみセンサ11が固定されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予圧が与えられた状態で、回転軸を支持する、外輪、内輪および転動体を含む第1軸受と、
前記回転軸の軸方向に前記第1軸受と並列するように配置され、予圧が与えられた状態で、前記回転軸を支持する、外輪、内輪および転動体を含む第2軸受と、
前記第1軸受と前記第2軸受の間に配置される間座と、を備え、
前記間座は、少なくとも3つの分割体へと前記回転軸の軸方向に分割されており、
前記分割体のうちの、前記回転軸の軸方向の両端部を除く分割体には、ひずみセンサが搭載されている、軸受装置。
【請求項2】
前記間座は、3つの分割体へと前記回転軸の軸方向に分割されており、
その中央の分割体に前記ひずみセンサが搭載されている、請求項1に記載の軸受装置。
【請求項3】
前記ひずみセンサは、前記分割体の内径面に固定されている請求項1または2に記載の軸受装置。
【請求項4】
前記ひずみセンサは、前記分割体の外径面に固定されている請求項1または2に記載の軸受装置。
【請求項5】
前記分割体の隣接する分割体との接触面は、摩擦力を低減する表面処理がなされている請求項1または2に記載の軸受装置。
【請求項6】
前記ひずみセンサの出力から軸受の予圧を算出する軸受予圧演算部と、
前記ひずみセンサの出力と軸受予圧の関係式を保存した記憶部とを備える、請求項1または2に記載の軸受装置。
【請求項7】
請求項1または2に記載の軸受装置と、前記回転軸を回転するモータとを備える、スピンドル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受装置およびスピンドル装置に関する。
より詳しくは、本発明は、ヒステリシスの発生を抑制することで軸受予圧の推定精度を向上させた軸受装置およびスピンドル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械等のスピンドル装置では、加工精度や加工効率を向上させるため、加工荷重や軸受の予圧管理が求められている。
また、軸受に異常が起こる前にその予兆を検出して、軸受の異常を未然に防ぐ要求もある。
【0003】
このため、特許文献1のように、間座を介して背面合わせにした1対のアンギュラ玉軸受の、その間座の外輪間座にひずみセンサを取り付け、外輪間座のひずみ量をセンサで検出し、これにより軸受の予圧量を計測する試みがなされている。
なお、特許文献1では、ひずみセンサは、ひずみに応じた信号を出力する検知部および前記信号を増幅させるアンプを内蔵している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、外輪間座に搭載したひずみセンサでひずみを検知することで、軸受予圧を推定するものであるが、アンギュラ玉軸受は、接触角をもっているため、転動体が軸受外輪の軌道面へ与える力(軸受予圧)は、軸受外輪を軸方向と径方向へ変形させることとなる。
【0006】
アンギュラ玉軸受が背面組み合わせの場合、軸受予圧が上昇するときには、軸受外輪と外輪間座とは接触面ですべりが生じながら径方向へと拡張する。
一方、その後、軸受予圧が減少するときには、外輪間座は、軸受予圧の上昇時とは異なる接触状態を経て元の形状に戻ろうとする。
すなわち、軸受予圧の上昇時と減少時では、外輪間座の変形状態が異なるため、ひずみセンサ出力にはヒステリシス(履歴現象)が発生することになる。
このため、ひずみセンサの出力から軸受予圧を推定する際に、ヒステリシスの発生にともなう誤差が生じる問題があった。
【0007】
そこで本発明の解決すべき課題は、軸受装置およびスピンドル装置において、ヒステリシスの発生を抑制し、軸受予圧の推定精度を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するため、発明にかかる軸受装置を、予圧が与えられた状態で、回転軸を支持する、外輪、内輪および転動体を含む第1軸受と、前記回転軸の軸方向に前記第1軸受と並列するように配置され、予圧が与えられた状態で、前記回転軸を支持する、外輪、内輪および転動体を含む第2軸受と、前記第1軸受と前記第2軸受の間に配置される間座と、を備え、前記間座は、少なくとも3つの分割体へと前記回転軸の軸方向に分割されており、前記分割体のうちの、前記回転軸の軸方向の両端部を除く分割体には、ひずみセンサが搭載されている構成としたのである。
【0009】
このように構成すると、軸受予圧が上昇するとき、間座の両端部の分割体は、軸受外輪の拡径に伴って、すべりを生じつつ径方向へと拡張することになるが、より中央側の分割体との接触面でもすべりが生じるため、中央側の分割体は、両端部の分割体よりも径方向への変形が小さくなる。
このため、両端部を除く分割体に搭載したひずみセンサは、径方向のひずみをほぼ無視することができ、概ね軸方向のひずみのみを検出することが可能となる。
【0010】
したがって、間座が分割されていない場合と比較して、ひずみセンサ出力のヒステリシスが小さくなり、軸受予圧の荷重推定精度を向上することができる。
なお、間座の軸方向への分割数を増やすことで、各分割体の接触面ですべりが生じるため、軸受外輪の径方向への変形を、中央よりの分割体へとより伝達しにくくすることできる。
この結果、分割数を増加すればするほど、また、ひずみセンサを搭載する分割体を中央に最も近い分割体にすればするほど、ひずみセンサ出力のヒステリシスが低減することとなる。
【0011】
発明にかかる軸受装置において、前記間座は、3つの分割体へと前記回転軸の軸方向に分割されており、その中央の分割体に前記ひずみセンサが搭載されている構成を採用することができる。
また、前記ひずみセンサは、前記分割体の内径面に固定されている構成を採用することもできるし、前記分割体の外径面に固定されている構成を採用することもできる。
さらに、前記分割体の隣接する分割体との接触面は、摩擦力を低減する表面処理がなされている構成を採用することもできる。
前記ひずみセンサの出力から軸受の予圧を算出する軸受予圧演算部と、前記ひずみセンサの出力と軸受予圧の関係式を保存した記憶部とを備える、構成を採用することもできる
【0012】
また、上記した課題を解決するため、発明にかかるスピンドル装置を、以上のような軸受装置と、前記回転軸を回転するモータとを備える構成としたのである。
【発明の効果】
【0013】
発明にかかる軸受装置およびスピンドル装置を以上のように構成したので、ひずみセンサ出力のヒステリシスが小さくなることで、高精度で軸受予圧を推定することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図6】スピンドル装置のさらに他の例の要部縦断面図
【
図10】印加される荷重とひずみセンサの出力信号との関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
図1に示すスピンドル装置1は、たとえば、工作機械のビルトインモータ方式のスピンドル装置として使用される。
この場合、工作機械主軸用のスピンドル装置1で支持されている主軸4は、その一端の側に主軸を回転させるためのモータ40が、その他端にワークを切削加工するためのエンドミル等の切削工具が接続されることになる。
【0016】
図1および
図2のように、スピンドル装置1は、その軸受装置50として、主軸4の軸方向に並列する第1軸受5aおよび第2軸受5bと、第1軸受5aと第2軸受5bの間に配置される間座6、7と、モータ40の後方に配置される第3軸受16とを備える。
【0017】
主軸4は、ハウジング3内に設置された第1軸受5aおよび第2軸受5bによって回転自在に支持されている。ハウジング3は、外筒2の内径側に配置されている。
第1軸受5aは、内径側の内輪5iaと、外径側の外輪5gaと、内輪5iaと外輪5gaとの間の転動体Taと、周方向に並列する複数の転動体Taを等間隔に保持する保持器Rtaとを備える。
同様に、第2軸受5bは、内輪5ibと、外輪5gbと、転動体Tbと、保持器Rtbとを備える。
第1軸受5aと第2軸受5bの間に配置された間座6、7は、内径側の内輪間座6と、外径側の外輪間座7とを備える。
【0018】
主軸4には、第1軸受5aの内輪5iaおよび第2軸受5bの内輪5ibが締まり嵌め状態(圧入状態)で嵌合されている。
内輪5iaと内輪5ibの間には内輪間座6が配置され、外輪5gaと外輪5gbの間には外輪間座7が配置される。
【0019】
第1軸受5aおよび第2軸受5bは、軸方向に予圧を付与することが可能な軸受となっており、たとえば、アンギュラ玉軸受、深溝玉軸受、またはテーパころ軸受等を用いることができる。
図示では、軸受装置50にはアンギュラ玉軸受が用いられ、第1軸受5aおよび第2軸受5bが背面組み合わせ(DB組み合わせ)で設置されている。
一方、第3軸受16は、円筒ころ軸受である。
なお、ここでは、第1軸受5aおよび第2軸受5bと、第3軸受16との計3つの軸受で主軸4を支持する構造を例示しているが、3つ以上の軸受で主軸4を支持する構造であってもよい。
【0020】
アンギュラ玉軸受である第1軸受5a、第2軸受5bにより、スピンドル装置1に作用するラジアル方向の荷重およびアキシアル方向の荷重が支持され、円筒ころ軸受である単列の第3軸受16により、スピンドル装置1に作用するラジアル方向の荷重が支持されることになる。
【0021】
図示のように、ハウジング3には冷却媒体流路が形成されている。
ハウジング3と外筒2との間に冷却媒体を流すことにより、第1軸受5aおよび第2軸受5bを冷却することができる。
なお、第1軸受5a、第2軸受5bとしてグリース潤滑の軸受を用いた場合には潤滑油供給路は不要であるが、エアオイル等の潤滑が必要な場合には、外輪間座7には、図示省略の潤滑油供給路が設けられる。
【0022】
スピンドル装置1の組立時には、はじめに主軸4に対して第1軸受5a、間座6、7、第2軸受5b、他の間座9が順に挿入され、ナット10を締めることによって初期予圧が与えられることになる。
第1軸受5aおよび第2軸受5bに付与される予圧は、たとえば間座の外輪間座7と内輪間座6との幅の寸法差によって定まる。
【0023】
その後、
図1における第2軸受5bの外輪5gbの右側がハウジング3に設けた段差部3aに当たるまで第1軸受5a、第2軸受5bが取り付けられた主軸4がハウジング3へと挿入される。
さらに、前蓋12によって、第1軸受5aの外輪5gaや間座の外輪間座7を押すことで、主軸4がハウジング3に固定される。
【0024】
また、単列の円筒ころ軸受である第3軸受16の内輪16aは、主軸4の外周に嵌合した筒状部材15と、内輪押さえ19とにより軸方向に位置決めされている。
内輪押さえ19は、主軸4の端部にねじ合わされたナット20により抜け止めされている。
第3軸受16の外輪16bは、後蓋17に固定された前位置決め部材21と、後位置決め部材18とに挟み込まれている。
内輪16aは主軸4の伸縮に応じて後蓋17に対して摺動可能になっている。
【0025】
主軸4と外筒2との間には、空間部22が形成されている。
この空間部22の、第1軸受5aおよび第2軸受5bと単列の第3軸受16との軸方向中間位置には、主軸4を回転駆動させるモータ40が配置されている。
モータ40のロータ14は、主軸4の外周に嵌合した筒状部材15に固定され、モータ40のステータ13は外筒2の内周部に固定されている。
なお、モータ40を冷却するための冷却媒体流路は、図示されていない。
【0026】
ここで、外輪間座7は軸方向に複数の分割体へと分割されている。図示では、3つに分割した構造を例示しているが、3つ以上で分割されてもよい。
3つに分割された外輪間座7のうち、第1軸受5aおよび第2軸受5bにそれぞれ隣接する2つの分割体は第1軸受5aの側の補助間座7ga、第2軸受5bの側の補助間座7gcとなり、補助間座7ga、補助間座7gcの間に配置された分割体は中央間座7gbとなる。
【0027】
この中央間座7gbには、ひずみセンサ11が固定されている。
ひずみセンサ11は軸方向と周方向のひずみを検出するものであって、ひずみセンサの出力は、軸方向のひずみと周方向のひずみの和または差を算出して利用する。
また、ひずみゲージからなる検出部のみで構成されてもよく、ひずみゲージの信号を増幅して出力する処理部を備えてもよい。
【0028】
図2および
図3の例では、中央間座7gbの90度等配した4カ所の外径面に面取り加工などによって平坦部7aを設け、各平坦部7aにひずみセンサ11a、11b、11c、11dが固定されている。
また、
図4および
図5の例では、中央間座7gbの90度等配した4カ所の内径面に溝加工などによって平坦部7bを設け、各平坦部7bにひずみセンサ11a、11b、11c、11dが固定されている。
【0029】
このようにすれば、外輪間座7への追加工は、中央間座7gbに平坦部7a、7bを設けるだけであるため、構造を大きく変更することなく、剛性を大きく低下させず、構成を簡単にすることができる。
なお、ここで、外輪間座7に対するひずみセンサ11の搭載態様はこれらに限定されず、ひずみセンサ11および各平坦部7a、7bの個数もこれらの例に限定されない。
【0030】
スピンドル装置1の運転時において、主軸4の回転速度が変化した場合、転動体Ta、転動体Tbの遠心力が変化し、外輪5ga、外輪5gbの軌道面への面圧が変化することで軸受予圧が変化する。
転動体Ta、転動体Tbは外輪5ga、外輪5gbと接触角をもって外輪軌道面を押圧しているため、外輪5ga、外輪5gbは軸方向と径方向に変形する。
この外輪5ga、外輪5gbの変形が補助間座7ga、補助間座7gcを変形させ、補助間座7ga、補助間座7gcの変形は中央間座7gbを変形させるため、中央間座7gbに固定したひずみセンサ11の出力より、軸受予圧を推定することができる。
【0031】
軸受予圧の変化時において径方向の変形については、外輪5ga、外輪5gbの端面と補助間座7ga、補助間座7gcとの端面は固着されていないため、補助間座7ga、補助間座7gcは外輪5ga、外輪5gbに対してすべりを伴って変形する。
また、中央間座7gbは、補助間座7ga、補助間座7gcの変形に倣って、かつ同様に端面が固着されていないことから、すべりを伴って変形する。
【0032】
ここで軸受予圧の増加時と減少時では、外輪5ga、外輪5gbと外輪間座7との接触状態が異なり、これに伴ない径方向の変形態様が異なるため、補助間座7ga、補助間座7gcおよび中央間座7gbでヒステリシスが発生する。
このとき、中央間座7gbの径方向の変形は、補助間座7ga、補助間座7gcの径方向の変形に対して小さくなるため、径方向の変形のヒステリシスも小さくなる。
このため、中央間座7gbに固定したひずみセンサ11は、概ね軸方向のひずみのみを検出することになるため、ヒステリシスが低減されたひずみセンサ出力を得ることができ、精度の高い軸受予圧を推定することができる。
【0033】
なお、外輪間座7の分割数を増やすことで、中央間座7gbの径方向への変形は小さくなり、よりヒステリシスを低減することが可能となる。
また、外輪5ga、外輪5gbの端面と補助間座7ga、補助間座7gcの端面との接触状態、および補助間座7ga、補助間座7gcの端面と中央間座7gbの端面との接触状態については、すべりが発生しやすいほど、径方向の変形が伝達されにくく、ヒステリシスを低減することができる。
このため、
図6のように、外輪5ga、外輪5gbの端面、補助間座7ga、補助間座7gcの端面および中央間座7gbの端面に、摩擦力を低減させる表面処理をすることもできる。こうして形成される表面処理層7cとしては、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)コーティング層、樹脂コーティング層が例示できる。
【0034】
図7にひずみセンサ11の検出部と処理部を備えた場合の内部構成を示す。また、
図8にひずみセンサ11の構造図を示す。
【0035】
図7のように、ひずみセンサ11は、ひずみゲージからなる検出部24と、処理部25を備える。
ここで処理部25は、ひずみゲージの信号を電気的に増幅する増幅部25aと、この信号を元にひずみを算出して外部に出力する出力部25bからなる。
【0036】
図8のように、検出部24と処理部25とは、同一の基板23に固定されており、検出部24と処理部25とは配線等により電気的に接続されている。
基板23の種類は特に限定されないが、外輪間座7(中央間座7gb)と線膨張係数が同程度の金属板が例示できる。
【0037】
なお、ひずみセンサ11は、検出部24と処理部25を一体にしたワンチップのICとし、基板23上に固定してもよい。
こうすることで、より小型化が図られ、中央間座7gbへの組込みが容易になる。
また、このように検出部24と処理部25を近接配置することで、リード線が短くなって配線抵抗の影響を低減することができる。また、ひずみをデジタル値に変換すれば、電気的なノイズの影響を防止できる。
なお、基板23を介することで組み立て性が向上するが、基板23を省略して、検出部24を、直接、平坦部7a(7b)に固定することもできる。
【0038】
ひずみの算出には、出力部25bの内部にCPUを搭載し、デジタル的に処理してもよい。
検出部24の材料として、抵抗温度係数(温度の変化とともに抵抗値が変化する割合)が小さいものを使用すれば、ひずみの計算に当たり、外輪間座7の温度によって検出部24の抵抗が変化してセンサ出力がドリフトすることを低減することも可能である。また、温度補償機能を備える処理部を用いてもよい。
たとえば、基板23の内部、あるいはひずみセンサ11を実装した中央間座7gbに温度センサを実装し、ひずみを補正することもできる。
【0039】
図9は、間座6、7に搭載されたひずみセンサ11の出力から、軸受予圧を算出する方法を示している。
ここでは、ひずみセンサ11は、4つ搭載されているとして、ひずみセンサ11(11a、11b、11c、11d)の出力(ひずみSa、Sb、Sc、Sd)を演算処理する軸受予圧演算部27と、予め測定したセンサ出力と荷重の関係を保存する記憶部A28を備える。
軸受予圧演算部27では、ひずみセンサ11の出力と記憶部A28のデータから軸受予圧を算出するものとしている。
【0040】
また、
図9の軸受予圧算出方法において、軸受予圧演算部27で算出した軸受予圧から第1軸受5a、第2軸受5bの異常状態を判定する診断部29と、あらかじめ第1軸受5a、第2軸受5bの軸受予圧の基準値を保存した記憶部B30を設けることができる。
そして、他の記憶部B30で設けた各基準値を超えたときに軸受5の異常信号を出力するものとすると、異常信号より軸受の過大予圧による発熱や焼き付き、軸受の過少予圧による振動を未然に防止することができる。
ここで、軸受予圧演算部27、記憶部A28、診断部29、記憶部B30は、軸受装置50の外部に設けてもよいし、内部に設けてもよい。
【0041】
工作機械はスピンドル装置1の回転速度を上昇させ、加工負荷を上げることで、生産効率を上げることができるため、他の記憶部に保存する第1軸受5a、第2軸受5bの軸受予圧の基準値を複数段階設けることで、詳細に軸受の状態を監視することができ、スピンドル装置1の回転速度や、加工負荷を効率良くコントロールすることができる。
【0042】
図10に、ひずみセンサ11を固定した外輪間座7単体に荷重を印加したときの、荷重と各ひずみセンサの出力との関係例を示す。
各ひずみセンサ11(11a、11b、11c、11d)は、外輪間座7に加わる軸方向荷重(軸受予圧)によるひずみSa、Sb、Sc、Sdを検出するが、ひずみは外輪間座7の周方向に均一ではなく、
図10に示すように、検出バラツキが発生する。これは、外輪間座7、ハウジング3、前蓋12、軸受5等の寸法精度や組立バラツキや、荷重印加点の中心ずれ等の影響による。
また、主軸4が回転すると、主軸4に負荷されるモーメント荷重の影響や、軸受5の転動体移動に伴って、ひずみが変動する可能性もある。
【0043】
そのため、各ひずみセンサ11のひずみ出力Sa、Sb、Sc、Sdを軸受予圧演算部27で処理したセンサ出力代表値と、予め記憶部A28に保存したひずみと荷重の関係を示すテーブル、あるいは近次式から予圧(荷重)を算出する。
センサ出力代表値としては、各センサ出力を加算したひずみSsum、各センサ出力の平均値Savg、あるいは、センサ出力の最大値や最小値、最大値と最小値の差、が例示できる。
【0044】
これらセンサ出力代表値(ひずみSsum、Savgなど)をローパスフィルタ処理後、予圧(荷重)を算出してもよいし、得られた予圧(荷重)をローパスフィルタ処理して、予圧(荷重)測定値の変動を抑制してもよい。
【0045】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0046】
1 スピンドル装置
2 外筒
3 ハウジング
3a 段差部
4 主軸
5 軸受
5a 第1軸受
5ia 内輪
5ga 外輪
5b 第2軸受
5ib 内輪
5gb 外輪
6 内輪間座
7 外輪間座
7ga 補助間座
7gb 中央間座
7gc 補助間座
7a 平坦部
7b 平坦部
7c 表面処理層
9 他の間座
10 ナット
11 ひずみセンサ
12 前蓋
13 ステータ
14 ロータ
15 筒状部材
16 第3軸受
16a 内輪
16b 外輪
17 後蓋
18 後位置決め部材
19 内輪押さえ
20 ナット
21 前位置決め部材
22 空間部
23 基板
24 検出部
25 処理部
25a 増幅部
25b 出力部
27 軸受予圧演算部
28 記憶部A
29 診断部
30 記憶部B
40 モータ
50 軸受装置
G 冷却媒体流路