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特開2024-110473船舶推進機、船舶、および、プレート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110473
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】船舶推進機、船舶、および、プレート
(51)【国際特許分類】
   B63H 5/15 20060101AFI20240808BHJP
   B63H 23/10 20060101ALI20240808BHJP
   B63H 20/00 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
B63H5/15 Z
B63H23/10
B63H20/00 610
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015020
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 隼佑
(72)【発明者】
【氏名】塚田 隼也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 俊雄
(57)【要約】
【課題】ダクト近傍に発生する陥没渦に起因して船体の操船性が低下することを抑制する。
【解決手段】船舶推進機は、ダクトと、前記ダクト内に配置され、前記ダクトの軸方向に沿った回転軸を中心に回転可能に設けられたプロペラと、前記プロペラを回転させる回転機構と、を備える。前記ダクトの上側部分には、前記ダクトから前記軸方向に延びるとともに複数の孔が形成されたプレートが設けられている。本船舶推進機では、ダクトの上側部分から延びるようにプレートが設けられており、そのプレートには複数の孔が形成されている。ダクトに沿って回り込んでくる幾つかの水流は、プレートの孔を通過する際に減衰する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶推進機であって、
ダクトと、
前記ダクト内に配置され、前記ダクトの軸方向に沿った回転軸を中心に回転可能に設けられたプロペラと、
前記プロペラを回転させる回転機構と、
を備え、
前記ダクトの上側部分には、前記ダクトから前記軸方向に延びるとともに複数の孔が形成されたプレートが設けられている、船舶推進機。
【請求項2】
請求項1に記載の船舶推進機であって、
前記プレートの最下端は、前記回転軸よりも上側に位置している、船舶推進機。
【請求項3】
請求項2に記載の船舶推進機であって、
前記プレートは、上下方向視で前記回転軸に対して左右対称の形状である、船舶推進機。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の船舶推進機であって、
前記プレートは、前記ダクトの周方向に沿った湾曲形状である、船舶推進機。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の船舶推進機であって、
前記複数の孔は、前記ダクトの軸方向に沿って延びる複数のスリットを含む、船舶推進機。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の船舶推進機であって、
前記複数の孔は、上下方向視で前記回転軸に対して左右対称に配置されている、船舶推進機。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の船舶推進機であって、
互いに隣り合う2つの前記孔同士の離間間隔は、前記2つの孔の並び方向における前記各孔の開口幅よりも広い、船舶推進機。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の船舶推進機であって、
前記プレートは、前記ダクトとは別体であり、
前記プレートは、前記ダクトの外周面に対して、第1の固定位置と、前記第1の固定位置に対して前記ダクトの前記軸方向と周方向との両方にずれている第2の固定位置とで固定されている、船舶推進機。
【請求項9】
船舶であって、
船体と、
請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の船舶推進機と、
を備える、船舶。
【請求項10】
プロペラが、ダクト内に配置され、かつ、前記ダクトの軸方向に沿った回転軸を中心に回転可能に設けられた船舶推進機の前記ダクトの上側部分から前記軸方向に延びるように設けられるプレートであって、
前記プレートには、複数の孔が形成されている、プレート。
【請求項11】
請求項10に記載のプレートであって、
前記プレートは、上下方向視で左右対称の形状である、プレート。
【請求項12】
請求項10または請求項11に記載のプレートであって、
前記プレートは、湾曲形状である、プレート。
【請求項13】
請求項10から請求項12までのいずれか一項に記載のプレートであって、
前記複数の孔は、所定方向に沿って延びる複数のスリットを含む、プレート。
【請求項14】
請求項10から請求項13までのいずれか一項に記載のプレートであって、
前記複数の孔は、上下方向視で左右対称に配置されている、プレート。
【請求項15】
請求項10から請求項14までのいずれか一項に記載のプレートであって、
互いに隣り合う2つの前記孔同士の離間間隔は、前記2つの孔の並び方向における前記各孔の開口幅よりも広い、プレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、船舶推進機、船舶、および、プレートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ダクト式の船舶推進機が知られている。このダクト式の船舶推進機は、ダクトと、そのダクト内に配置され、ダクトの軸方向に沿った回転軸を中心に回転可能に設けられたプロペラと、プロペラを回転させる回転機構とを備えている(例えば下記特許文献1~4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-068610号公報
【特許文献2】特開2013-100013号公報
【特許文献3】特開2013-100014号公報
【特許文献4】特開2022-018645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、鋭意検討を重ねることにより、ダクト式の船舶推進機では、ダクトに向かう空気を巻き込んだ大きな渦(以下、「陥没渦」という)の発生によって、例えば横移動ができなくなるなど、船体の操船性に影響を及ぼすことがあることを新たに発見した。具体的には、水中でプロペラを回転させると、ダクトに沿って回り込んでくる幾つかの水流が合流し、水面付近の空気を巻き込む大きな渦(陥没渦)に成長する。その結果、例えば、横移動の操船指示に対して、船体が斜め横方向に移動するなど、その陥没渦が船体の操船性に影響を及ぼすおそれがある。
【0005】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示される技術は、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本明細書に開示される船舶推進機は、ダクトと、前記ダクト内に配置され、前記ダクトの軸方向に沿った回転軸を中心に回転可能に設けられたプロペラと、前記プロペラを回転させる回転機構と、を備える。前記ダクトの上側部分には、前記ダクトから前記軸方向に延びるとともに複数の孔が形成されたプレートが設けられている。本船舶推進機では、ダクトの上側部分から延びるようにプレートが設けられており、そのプレートには複数の孔が形成されている。ダクトに沿って回り込んでくる幾つかの水流は、プレートの孔を通過する際に渦度(強さ)が減衰する。これにより、本船舶推進機によれば、ダクト近傍に発生する陥没渦に起因して船体の操船性が低下することを抑制することができる。
【0008】
(2)上記船舶推進機において、前記プレートの最下端は、前記回転軸よりも上側に位置している構成としてもよい。本船舶推進機によれば、例えばプレートがダクトの全周から延びる構成に比べて、船舶推進機の軽量化を図りつつ、陥没渦に起因する船体の操船性の低下を抑制することができる。
【0009】
(3)上記船舶推進機において、前記プレートは、上下方向視で前記回転軸に対して左右対称の形状である構成としてもよい。本船舶推進機によれば、例えばプレートが左右非対称の形状である構成に比べて、例えばダクト近傍の流れが左右でばらつくことに起因して船舶推進機が左右不均等な力を受けることを抑制することができる。
【0010】
(4)上記船舶推進機において、前記プレートは、前記ダクトの周方向に沿った湾曲形状である構成としてもよい。本船舶推進機によれば、例えばプレートが平面形状である構成に比べて、ダクトの翼形状の繋がりを乱さず、またダクトへの装着性が優れるとともに、陥没渦に起因する船体の操船性の低下を抑制することができる。
【0011】
(5)上記船舶推進機において、前記複数の孔は、前記ダクトの軸方向に沿って延びる複数のスリットを含む構成としてもよい。本船舶推進機によれば、例えば孔がダクトの軸方向に交差する方向に延びるスリットである構成に比べて、孔の存在が船体の操船性に対する抵抗要素になることを抑制することができる。
【0012】
(6)上記船舶推進機において、前記複数の孔は、上下方向視で前記回転軸に対して左右対称に配置されている構成としてもよい。本船舶推進機によれば、複数の孔の配置のバラツキに起因して例えば船舶推進機が左右不均等な力を受けることを抑制することができる。
【0013】
(7)上記船舶推進機において、互いに隣り合う2つの前記孔同士の離間間隔は、前記2つの孔の並び方向における前記各孔の開口幅よりも広い構成としてもよい。本船舶推進機によれば、互いに隣り合う2つの孔によって分散された渦が、各孔の通過後に再び合流して大きな渦となり、その結果、船体の操船性が低下することを抑制することができる。
【0014】
(8)上記船舶推進機において、前記プレートは、前記ダクトとは別体であり、前記プレートは、前記ダクトの外周面に対して、第1の固定位置と、前記第1の固定位置に対して前記ダクトの前記軸方向と周方向との両方にずれている第2の固定位置とで固定されている構成としてもよい。本船舶推進機によれば、例えば全ての固定位置が同一円上に配置された構成に比べて、陥没渦により下方に向かう力に対するプレートの強度を向上させることができる。
【0015】
(9)船舶であって、船体と、上記(1)から(8)までのいずれか一つの船舶推進機と、を備える構成としてもよい。本船舶によれば、ダクト近傍に発生する陥没渦に起因して船体の操船性が低下することを抑制することができる。
【0016】
(10)本明細書に開示されるプレートは、プロペラが、ダクト内に配置され、かつ、前記ダクトの軸方向に沿った回転軸を中心に回転可能に設けられた船舶推進機の前記ダクトの上側部分から前記軸方向に延びるように設けられる。前記プレートには、複数の孔が形成されている。本プレートによれば、ダクト近傍に発生する陥没渦に起因して船体の操船性が低下することを抑制することができる。
【0017】
(11)上記プレートにおいて、前記プレートは、上下方向視で左右対称の形状である構成としてもよい。本プレートによれば、例えばプレートが左右非対称の形状である構成に比べて、例えばダクト近傍の流れが左右でばらつくことに起因して船舶推進機が左右不均等な力を受けることを抑制することができる。
【0018】
(12)上記プレートにおいて、前記プレートは、湾曲形状である構成としてもよい。本プレートによれば、例えばプレートが平面形状である構成に比べて、ダクトの翼形状の繋がりを乱さず、またダクトへの装着性が優れるとともに、陥没渦に起因する船体の操船性の低下を抑制することができる。
【0019】
(13)上記プレートにおいて、前記複数の孔は、所定方向に沿って延びる複数のスリットを含む構成としてもよい。本プレートによれば、例えば互いに異なる方向に延びる複数のスリットが形成された構成に比べて、孔の存在が船体の操船性に対する抵抗要素になることを抑制することができる。
【0020】
(14)上記プレートにおいて、前記複数の孔は、上下方向視で左右対称に配置されている構成としてもよい。本プレートによれば、複数の孔の配置のバラツキに起因して例えば船舶推進機が左右不均等な力を受けることを抑制することができる。
【0021】
(15)上記プレートにおいて、互いに隣り合う2つの前記孔同士の離間間隔は、前記2つの孔の並び方向における前記各孔の開口幅よりも広い構成としてもよい。本プレートによれば、互いに隣り合う2つの孔によって分散された渦が、各孔の通過後に再び合流して大きな渦となり、その結果、船体の操船性が低下することを抑制することができる。
【0022】
本明細書によって開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、船舶、船舶に備えられる船舶推進機、船舶推進機に備えられるプレート、ダクトに向かう陥没渦の抑制方法等の形態で実現することが可能である。
【発明の効果】
【0023】
本明細書に開示された船舶推進機によれば、ダクト近傍に発生する陥没渦に起因して船体の操船性が低下することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施形態における船舶10の構成を簡略的に示す上面図
図2】船舶10の先端部分の構成を簡略的に示す側面図
図3】電動推進機110の構成を簡略的に示す側面図
図4】駆動ユニット130の構成を示す模式図
図5】第1のプレート300の構成を示す上面図
図6】ダクト122に取り付けられた状態の第1のプレート300を示す上面図
図7】第2のプレート350の構成を示す前面図
図8】第1のプレート300が無い状態でのダクト122付近の水流を模式的に示す説明図
図9】第1のプレート300が有る状態でのダクト122付近の水流を模式的に示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0025】
A.実施形態:
A-1.船舶10の構成:
図1は、本実施形態における船舶10の構成を簡略的に示す上面図であり、図2は、船舶10の先端部分の構成を簡略的に示す側面図である。図1図2および後述する他の図面には、船舶10の位置を基準とした各方向を表す矢印を示している。より具体的には、各図には、前方(FRONT)、後方(REAR)、左方(LEFT)、右方(RIGHT)、上方(UPPER)および下方(LOWER)のそれぞれを表す矢印を示している。前後方向、左右方向および上下方向(鉛直方向)は、それぞれ互いに直交する方向である。
【0026】
図1および図2に示すように、船舶10は、船体200と、船体200に搭載される船舶推進システム(以下、「推進システム」という)100と、第1のプレート300(図後述の図3等参照)と、第2のプレート350(後述の図7参照)とを備える。
【0027】
船体200は、船舶10において乗員が搭乗する部分である。船体200は、例えば居住空間を有する船体本体部と、居住空間に設置された操縦席(図示しない)と、操縦席付近に設置された操縦装置(図示しない)とを有している。
【0028】
推進システム100は、複数の電動推進機110と、電動推進機110とは別に設けられたバウスラスタ150と、これらを制御する操船制御装置(図示しない)とを備える。電動推進機110は、特許請求の範囲における船舶推進機の一例である。なお、図1では、各電動推進機110のうち、後述のダクト122とステータフィン133と軸受け135とが示されており、また、バウスラスタ150のうち、後述のプロペラ154が示されている。
【0029】
(電動推進機110の構成)
電動推進機110は、船舶10を推進させる推力を発生する装置である。各電動推進機110は、船体200の船尾202に設けられ、船体200の瞬間的な旋回中心Pよりも後方で推進力を船体200に作用させるように設計されている。本実施形態では、複数の電動推進機110は、左側電動推進機110(図1の紙面左側の電動推進機110)と右側電動推進機110(図1の紙面右側の電動推進機110)とを含む。左側電動推進機110と右側電動推進機110とは、船体200の中心線Cに対して、左右対称な位置に配置されている。
【0030】
図3は、電動推進機110の構成を簡略的に示す側面図である。図3に示すように、各電動推進機110は、推進機本体112とブラケット114とを備えている。推進機本体112は、ブラケット114を介して、船体200の船尾202に取り付けられる。
【0031】
推進機本体112は、カバー116と、ベース118と、ハウジング120と、ダクト122と、駆動ユニット130とを含む。
【0032】
ベース118は、ブラケット114に接続されている。カバー116は、ブラケット114の上方を覆っている。ハウジング120は、ベース118の下方に配置されている。ハウジング120は、ベース118から下方に延びている。ダクト122は、ハウジング120の下方に配置されている。ダクト122は、管状に形成されている。ダクト122は、水面Wよりも低い位置に配置される(図3参照)。駆動ユニット130は、ダクト122内に配置されている。
【0033】
図4は、駆動ユニット130の構成を示す模式図である。駆動ユニット130は、船舶10を推進させるスラストを発生させる。図4に示すように、駆動ユニット130は、プロペラ132と電動モータ134とを含む。電動モータ134は、特許請求の範囲における回転機構の一例である。
【0034】
プロペラ132は、複数枚の羽を有する回転体であり、回転することによって推力を発生する。プロペラ132は、ダクト122の内周側に位置し、水平方向のプロペラ回転軸Lを中心に回転可能に設けられている(図4参照)。プロペラ回転軸Lは、ダクト122の中心軸に平行である。ダクト122は、プロペラ132の全周を覆っており、ダクト122のダクト効果により、ダクト122内に流れ込む水の流速が速くなる。ダクト122は、特許請求の範囲におけるダクトの一例である。
【0035】
電動モータ134は、プロペラ132を回転させる。電動モータ134は、ロータ136とステータ138とを含む。ロータ136とステータ138とは、それぞれ管状の形状を有している。ロータ136は、ステータ138の径方向内側に配置されている。また、ロータ136とステータ138とは、同一軸上に配置されている。ロータ136は、ダクト122に対して回転可能に支持されている。ロータ136は、ステータ138に対してプロペラ回転軸Lを中心に回転する。プロペラ132は、ロータ136の径方向内側に配置されている。プロペラ132は、ロータ136に固定されており、ロータ136と共に回転する。ロータ136は、複数の永久磁石140を含む。複数の永久磁石140は、ロータ136の周方向に沿って配置されている。なお、図4においては、複数の永久磁石140の1つのみに符号140が付されており、他の永久磁石140の符号は省略されている。
【0036】
ステータ138は、ダクト122に固定されている。ステータ138は、複数のコイル142を含む。複数のコイル142は、ステータ138の周方向に沿って配置されている。複数のコイル142に通電されることで、ロータ136を回転させる電磁力が発生する。なお、図4においては、複数のコイル142の1つのみに符号142が付されており、他のコイル142の符号は省略されている。以上の構成により、プロペラ132は、電動モータ134が正転することによって前方への推進力を発生し、逆転することによって後方への推進力を発生する。
【0037】
各電動推進機110では、ハウジング120は、ベース118に対して垂直回動軸としての操舵軸(各図の上下方向に沿った軸)まわりに回動自在に取り付けられている。ハウジング120の回動に伴って、駆動ユニット130も操舵軸まわりに回動する。また、ダクト122の径方向内側には、ステータフィン133と軸受け135とが設けられている。軸受け135は、プロペラ132を、プロペラ回転軸Lを中心に回転可能に支持する。ステータフィン133は、複数枚(例えば3枚)のフィンを有している。複数のフィンは、軸受け135を中心に放射状に配置されて、かつ、プロペラ回転軸L回りに等間隔で並んでおり、ダクト122に固定されている。なお、複数のフィンは、プロペラ132の後方において、ダクト122から後方に突出するように設けられている(図1および図3参照)。
【0038】
(バウスラスタ150の構成)
図2に示すように、バウスラスタ150は、船体200のうち、船首204の付近において水面Wよりも低い位置に配置される。バウスラスタ150は、船体200に対して左右方向の推進力を与える推進機である。バウスラスタ150は、ダクト152と、プロペラ154と、電動モータ(図示しない)とを有する。
【0039】
ダクト152は、左右方向に貫通する管状体であり、ブラケット156を介して船体200に取り付けられている。プロペラ154は、複数枚の羽を有する回転体であり、回転することによって推力を発生する。プロペラ154は、ダクト152の径方向内側に位置し、左右方向のプロペラ回転軸Mを中心に回転可能に設けられている。電動モータは、上記電動モータ134と同じ構成であり、ダクト152内に配置されている。プロペラ154は、電動モータが発生する動力によって回転する。具体的には、プロペラ154は、電動モータが正転することによって右方への推進力を発生し、逆転することによって左方への推進力を発生する。
【0040】
(第1のプレート300の構成)
図5は、第1のプレート300の構成を示す上面図であり、図6は、ダクト122に取り付けられた状態の第1のプレート300を示す上面図である。第1のプレート300は、電動推進機110のダクト122に取り付けられ(図3等参照)、ダクト122付近に発生する複数の水流によって発生する陥没渦の渦度を減衰させる役割を果たす。なお、本実施形態では、第1のプレート300は、ダクト122とは別体である。
【0041】
図3および図6に示すように、第1のプレート300は、ダクト122の上側部分に設けられ、ダクト122からプロペラ回転軸Lに沿った方向に延びている。第1のプレート300には、複数の孔322が形成されている。
【0042】
具体的には、図5に示すように、第1のプレート300は、全体として、略矩形状の平板である。第1のプレート300は、例えばアルミニウム合金等の金属により形成されている。第1のプレート300の厚みは、全体的に均一である。第1のプレート300は、ダクト122の周方向に沿った湾曲形状である(図3図5および図6参照)。第1のプレート300は、プロペラ回転軸Lを中心に湾曲している。ダクト122が水面Wよりも低い位置に配置され、かつ、プロペラ回転軸Lが水平方向に沿った状態において(図3参照)、第1のプレート300は、ダクト122の上側部分からプロペラ回転軸Lに沿って突出するように設けられている。
【0043】
第1のプレート300の最下端は、プロペラ回転軸Lよりも上側に位置している(図3参照)。具体的には、第1のプレート300(後述の突出部分320)の周方向の全長は、ダクト122の全周に対して120度相当の長さ(1/3)である。なお、第1のプレート300の全長は、ダクト122の全周に対して、90度相当の長さ(1/4)以上、180度相当の長さ(1/2)以下であることが好ましい。第1のプレート300は、上下方向視でプロペラ回転軸Lに対して左右対称の形状である(図5および図6参照)。具体的には、第1のプレート300は、固定部分310と突出部分320とを有している。なお、突出部分320の突出端の位置は、ハウジング120の後端より後方に位置していることが好ましい(図3参照)。また、プロペラ132の直径を「N」(例えば280mm)とすると、ダクト122の後端からの第1のプレート300が突出する長さ(突出部分320の長さ)は、0.25N以上でもよいし、0.4N以上でもよい。また、突出部分320の長さは、0.75D以下でもよいし、0.6N以下でもよい。
【0044】
固定部分310は、第1のプレート300のうち、ダクト122に固定される部分である。固定部分310は、第1のプレート300における前端を含む前側部分であり、ダクト122の外周面に固定される。具体的には、固定部分310は、ダクト122の外周面に対応した湾曲形状である。そのため、固定部分310の内周側の表面は、固定部分310の周方向の全長にわたって、ダクト122の外周面に面接触している。
【0045】
固定部分310は、ダクト122の外周面に対して、第1の固定位置312と、第2の固定位置314とで固定されている(図5および図6参照)。第1の固定位置312と第2の固定位置314とは、ダクト122のプロペラ回転軸Lに沿った方向と、ダクト122の周方向との両方にずれている。具体的には、第1の固定位置312は、上下方向視で、Lに対して左右対称の位置にそれぞれ配置されている。また、第2の固定位置314は、上下方向視で、Lに対して左右対称の位置にそれぞれ配置されている。各第1の固定位置312は、上下方向視で、プロペラ回転軸Lに対して第2の固定位置314よりも近い位置に配置されている。各第1の固定位置312は、プロペラ回転軸Lを中心とする第1の仮想円R1上に配置されている。各第2の固定位置314は、プロペラ回転軸Lを中心とする第2の仮想円R2上に配置されている。第2の仮想円R2は、第1のプレート300(固定部分310)の前端に対して、第1の仮想円R1よりも近い位置に位置する。各固定位置では、図示しない締結部材(ボルト等)によって、第1のプレート300がダクト122に固定される。
【0046】
突出部分320は、第1のプレート300のうち、ダクト122からプロペラ回転軸Lに沿った方向(ダクト122の後方側)に突出する部分である。突出部分320には、複数の孔322が形成されている。全ての孔322は、プロペラ回転軸Lに沿って延びるスリットである。スリットの開口幅D1(図5参照)は、スリットの全長にわたって略同一である。なお、スリットは、図5等に示すように、全周にわたって閉塞した閉塞孔でもよいが、一部(例えば第1のプレート300の後端側)が開放した開放孔でもよい。本実施形態では、全ての孔322は、互いに同一形状かつ同一サイズであり、ダクト122の周方向において等間隔(図3の離間間隔D2参照)に配置されている。離間間隔D2は、スリットの全長にわたって略同一である。
【0047】
全ての孔322は、上下方向視でプロペラ回転軸Lに対して左右対称に配置されている(図5及び図6参照)。本実施形態では、プロペラ回転軸Lに対して右側と左側とのそれぞれに孔322が複数個(同数)ずつ形成されている。互いに隣り合う2つの孔322(スリット)同士の離間間隔D2は、2つの孔322の並び方向(ダクト122の周方向)における各孔の開口幅D1よりも広い(図5参照)。
【0048】
本実施形態では、全ての孔322は、次の(1)~(5)の全ての条件を満たしている。
(1)プロペラ回転軸Lに沿った方向において、全ての孔322の長さは互いに略同一である。孔322の長さは、第1のプレート300の突出部分320の突出長さの1/2以上でもよい、2/3以上でもよく、4/5以上でもよい。
(2)全ての孔322の前端の位置は、いずれも、上下方向視でプロペラ回転軸Lに直交する同一の仮想線上に位置する。
(3)全ての孔322の後端の位置は、いずれも、上下方向視でプロペラ回転軸Lに直交する同一の仮想線上に位置する。
(4)各孔322の開口幅D1は、全長にわたって略同一である。
(5)孔322の孔形状の角部は、円弧状である。
【0049】
(第2のプレート350の構成)
図7は、第2のプレート350の構成を示す前面図である。第2のプレート350は、バウスラスタ150のダクト152に取り付けられ、ダクト152付近に発生する複数の水流によって発生する陥没渦の渦度を減衰させる役割を果たす。なお、本実施形態では、第2のプレート350は、ダクト152とは別体である。
【0050】
図7に示すように、第2のプレート350は、ダクト152の上側部分に設けられ、ダクト152からプロペラ回転軸Mに沿った方向に延びている。第2のプレート350には、複数の孔352が形成されている。
【0051】
具体的には、第2のプレート350は、全体として、略矩形状の平板である。第2のプレート350は、例えばアルミニウム合金等の金属により形成されている。第2のプレート350の厚みは、全体的に均一である。第2のプレート350は、ダクト152の周方向に沿った湾曲形状である。第2のプレート350は、プロペラ回転軸Mを中心に湾曲している。ダクト152が水面Wよりも低い位置に配置され、かつ、プロペラ回転軸Mが水平方向に沿った状態において(図7参照)、第2のプレート350は、ダクト152の上側部分からプロペラ回転軸Mに沿って突出するように設けられている。
【0052】
具体的には、第2のプレート350は、固定部分360と一対の突出部分370とを有している。固定部分360は、第2のプレート350のうち、ダクト152に固定される部分である。一対の突出部分370は、第2のプレート350のうち、ダクト152からプロペラ回転軸Mに沿った方向(ダクト152の左右両側)にそれぞれ突出する部分である。各突出部分370には、複数の孔352が形成されている。全ての孔352は、プロペラ回転軸Mに沿って延びるスリットである。全ての孔352は、ダクト152の周方向において等間隔に配置されている。
【0053】
A-2.横移動における陥没渦:
船舶10は、前後方向の移動に限らず、横移動も可能である。横移動とは、船体200を、船体200の旋回を伴わずに長手方向の向きを維持しつつ左右方向成分を含む方向(例えば右方向や右斜め後ろ方向など)に移動させる並進移動である。本実施形態では、電動推進機110に加えてバウスラスタ150の推進力を利用して船舶10を横移動させる。なお、船舶10は、バウスラスタ150の推進力を利用せずに横移動する構成でもよい。
【0054】
図1では、右方向に横移動する船舶10が例示されている。図1に示すように、左側電動推進機110による左推進力FLと右側電動推進機110による右推進力FRとによって右方向への推進力F1が発生する。このとき、左推進力FLの左作用線DLと右推進力FRの右作用線DRとが、電動推進機110の前方側で互いに交差するように各電動推進機110の向きが調整される。すなわち、各作用線DL,DRが、船体200の中心線Cに対して傾斜する。また、左側電動推進機110と右側電動推進機110とでプロペラ132を互いに逆方向に回転させる。これにより、左推進力FLと右推進力FRとの合力が、右方向の推進力F1として、左作用線DLと右作用線DRとの交差位置Xに発生する。さらに、本実施形態では、バウスラスタ150によって右方向の推進力F2が発生する。このため、右方向の推進力F1と右方向の推進力F2との合力である推進力F3が船体200に発生し、船体200が横移動する。
【0055】
なお、推進力F1による旋回中心Pまわりのヨーイングモーメント(以下、「モーメント」という。)と、推進力F2による旋回中心Pまわりのモーメントとが打ち消し合うように、推進力F1および推進力F2の大きさが設定される。操縦装置での操作量に応じて電動推進機110およびバウスラスタ150の出力が制御される。具体的には、操船制御装置は、推進力F3の目標値である船体目標値を、操縦装置での操作量に応じて設定する。
【0056】
図8は、第1のプレート300が無い状態でのダクト122付近の水流を模式的に示す説明図であり、図9は、第1のプレート300が有る状態でのダクト122付近の水流を模式的に示す説明図である。
【0057】
まず、図8に示すように、第1のプレート300がダクト122に取り付けられていない状態では、ダクト122内に向かう空気S3を巻き込んだ大きな渦(以下、「陥没渦S1」という)が発生し得る。具体的には、水中でプロペラ132を回転させると、ダクト122に沿って回り込んでくる幾つかの水流S2が合流し、水面W付近の空気S3を巻き込む大きな渦(陥没渦S1)に成長する。その結果、プロペラ132の近傍に空気の空洞が形成され、プロペラ132の推力が変動することにより電動推進機110の推進力(矢印FRa参照)が変動すると考えられる。
【0058】
なお、横移動では、特に陥没渦S1に起因する電動推進機110の推進力(矢印FRa参照)の変動が顕著になる。陥没渦S1は、特に右側電動推進機110におけるダクト122の上流側(プロペラ132の回転によりダクト122内を流れる水流の上流側 図1における右側のダクト122の後側)に発生しやすい。一方、左側電動推進機110におけるダクト122の上流側(図1における左側のダクト122の前側)では、陥没渦S1は比較的に発生しにくい。左側のダクト122の前側には、船体200が存在するため、ダクト122に沿って回り込んでくる幾つかの水流S2は、船体200との干渉により分散されるからである。右側のダクト122の後側での陥没渦S1の発生に起因して、右側電動推進機110による右推進力FRaが低下すると、左推進力FLと右推進力FRaとの合力が、右斜め前方向の推進力Faとなる(図1参照)。その結果、電動推進機110による右斜め前方向の推進力Faと、バウスラスタ150によって右方向の推進力F2との合力が、右斜め前方向の推進力Fbとなり、船舶10を精度良く横移動させることができなくなる。
【0059】
これに対して、本実施形態の船舶10では、右側電動推進機110のダクト122に第1のプレート300が取り付けられているため、右側電動推進機110のダクト122の後方側に発生する陥没渦S1の渦度を減衰させることができる。すなわち、第1のプレート300は、ダクト122の上側部分に設けられ、ダクト122からプロペラ回転軸Lに沿った方向に延びている。第1のプレート300には、複数の孔322が形成されている。図9に示すように、ダクト122に沿って回り込んでくる幾つかの水流S2は、第1のプレート300に形成された孔322を通過する際に渦度(強さ)が低減する。その結果、幾つかの水流S2によって発生する陥没渦S1の渦度を減衰させることができる。このため、左推進力FLと右推進力FRとの合力が、右方向の推進力F1となる(図1参照)。その結果、電動推進機110による右方向の推進力F1と、バウスラスタ150によって右方向の推進力F2との合力が、右方向の推進力F3となり、船舶10を精度良く横移動させることができる。
【0060】
なお、船舶10が左方向に横移動する場合でも、左側電動推進機110にも第1のプレート300が取り付けられているため、左側電動推進機110のダクト122の後方側に発生する陥没渦S1の渦度を減衰させることができる。また、船舶10が横移動する場合に限らず、例えば船舶10が前後方向に移動する場合でも、電動推進機110のダクト122付近に陥没渦が発生し得る。しかし、本実施形態によれば、第1のプレート300がダクト122に取り付けられているため、陥没渦に起因する船体200の操船性の低下を抑制することができる。
【0061】
また、本実施形態では、船舶10のバウスラスタ150のダクト152には第2のプレート350が取り付けられているため、ダクト152の右側や左側に発生する陥没渦S1の渦度を減衰させることができる。その結果、ダクト152付近での陥没渦S1の発生に起因してバウスラスタ150による推進力F2が低下し、船体200の横移動時の操船性が低下することを抑制することができる。
【0062】
本実施形態では、第1のプレート300の最下端は、プロペラ回転軸Lよりも上側に位置している(図3参照)。そのため、例えば第1のプレート300がダクト122の全周から延びる構成に比べて、電動推進機110の軽量化を図りつつ、陥没渦に起因する船体200の操船性の低下を抑制することができる。
【0063】
本実施形態では、第1のプレート300は、上下方向視でプロペラ回転軸Lに対して左右対称の形状である(図5および図6参照)。そのため、例えば第1のプレート300が左右非対称の形状である構成に比べて、例えばダクト122近傍の流れが左右でばらつくことに起因して電動推進機110が左右不均等な力を受けることを抑制することができる。
【0064】
本実施形態では、第1のプレート300は、ダクト122の周方向に沿った湾曲形状である(図3図5および図6参照)。そのため、例えば第1のプレート300が平面形状である構成に比べて、ダクト122の翼形状の繋がりを乱さず、またダクト122への装着性が優れ、また、第1のプレート300の強度を向上させつつ、陥没渦に起因する船体200の操船性の低下を抑制することができる。また、例えば第1のプレート300が平面形状である構成に比べて、第1のプレート300がダクト122に沿った水の流れの妨げになりにくくなる。そのため、第1のプレート300の存在に起因して船体200の操船性が低下することを抑制することができる。
【0065】
本実施形態では、第1のプレート300に形成された複数の孔322は、プロペラ回転軸Lに沿って延びるスリットである。そのため、例えば孔322がプロペラ回転軸Lに交差する方向に延びるスリットである構成に比べて、孔322がダクト122に沿った水の流れの妨げになりにくくなる。そのため、孔322の存在に起因して船体200の操船性が低下することを抑制することができる。また、スリットの代わりに、スリットの全長に相当する領域に複数の小孔が並べて形成されたプレートに比べて、孔を開けるための工数が少ない分だけ、プレートの製造工程の工数を軽減することができる。
【0066】
本実施形態では、複数の孔322は、上下方向視でプロペラ回転軸Lに対して左右対称に配置されている(図5及び図6参照)。そのため、複数の孔322の配置のバラツキに起因して例えば電動推進機110が左右不均等な力を受けることを抑制することができる。
【0067】
本実施形態では、互いに隣り合う2つの孔322(スリット)同士の離間間隔D2は、2つの孔322の並び方向(ダクト122の周方向)における各孔の開口幅D1よりも広い(図5参照)。そのため、互いに隣り合う1/2つの孔322によって分散された渦が、各孔322の通過後に再び合流して大きな渦となり、その結果、船体200の操船性が低下することを抑制することができる。
【0068】
本実施形態では、固定部分310は、ダクト122の外周面に対して、第1の固定位置312と、第2の固定位置314とで固定されている(図5および図6参照)。第1の固定位置312と第2の固定位置314とは、ダクト122のプロペラ回転軸Lに沿った方向と、ダクト122の周方向との両方にずれている。そのため、例えば全ての固定位置が同一円上に配置された構成に比べて、陥没渦により下方に向かう力に対する第1のプレート300の強度を向上させることができる。
【0069】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0070】
上記実施形態における船舶10、船舶推進システム100およびプレート300,350の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、船舶推進システム100は、複数の電動推進機110とバウスラスタ150とを備える構成であったが、1つまたは3つ以上の電動推進機110を備える構成でもよいし、バウスラスタ150を備えない構成でもよい。
【0071】
上記実施形態では、船舶推進機として、電動推進機110を例示したが、例えば船外機、船内機、船内外機やジェット推進機でもよい。これらの船外機等の駆動源は、電動モータでもよいし、エンジンでもよい。また、電動推進機110は、ステータフィン133を備えない構成でもよい。また、上記実施形態では、船舶推進機として、船体200の船首204の付近に配置されるバウスラスタ150を例示したが、船首204以外の位置(例えば船尾202の付近)に配置されるサイドスラスタでもよい。
【0072】
上記実施形態では、回転機構として、電動モータ134がダクト122に内蔵されたリムドライブ式の構成を例示したが、これに限らず、ダクト122の外部に設けられた駆動源と、その駆動源の動力をプロペラ132に伝達する伝達機構とを備える構成でもよい。
【0073】
上記実施形態では、第1のプレート300は、ダクト122とは別体であったが、第1のプレート300は、ダクト122に一体的に形成された構成でもよい。同様に、第2のプレート350は、ダクト152に一体的に形成された構成でもよい。
【0074】
第1のプレート300(突出部分320)は、ダクト122の上側部分に対応する位置に配置された構成であったが、ダクト122の全周にわたって配置された構成でもよい。要するに、第1のプレート300(突出部分320)は、少なくともダクト122の上側部分に対応する位置に配置されていればよい。なお、ダクト122の上側部分は、例えば、ダクト122のプロペラ回転軸Lから真上に延びる基準線(図示しない)に対して左回りに45度以上、60度以上、90度以下であり、基準線に対して右回りに45度以上、60度以上、90度以下であることが好ましい。
【0075】
第1のプレート300に形成された孔322や第2のプレート350に形成された孔352は、プロペラ回転軸Lに沿って延びるスリットに限らず、例えばプロペラ回転軸Lに交差(例えば直交)するスリットでもよいし、例えばプレートの突出端に向かうほど開口幅が広い三角スリットでもよいし、丸孔や矩形状の孔などでもよい。また、各プレート300,350に形成される複数の孔322,352は、互いに同一形状かつ同一サイズでもよいが、互いに形状とサイズとの少なくとも一方が互いに異なる複数の孔を含んでもよいし、不均一に配置された構成でもよい。また、各孔322,352における最小開口幅(上記開口幅D1)は、最も近くに位置する他の孔との離間距離(上記離間間隔D2)よりも狭いことが好ましいが、離間距離と同じでもよいし、離間距離よりも広くてもよい。また、各孔322,352における最小開口幅(上記開口幅D1)は、各プレート300,350の厚さよりも広いことが好ましいが、各プレート300,350の厚さ以下でもよい。また、上記実施形態において、第1のプレート300に形成された複数の孔322の少なくとも一部は、上記(1)~(5)の少なくとも一部の条件を満たさなくてもよい。
【0076】
第1のプレート300は、湾曲形状に限らず、全体として平面形状でもよい。第1のプレート300は、上下方向視でプロペラ回転軸Lに対して左右非対称の形状でもよい。
【0077】
第1のプレート300の固定部分310は、締結部材に限らず、他の固定方法(例えば溶接など)によりダクト122に固定されてもよい。また、固定部分310は、ダクト122の内周面側に固定されてもよい。第1のプレート300の突出部分320は、ダクト122の後方側だけでなく、ダクト122の前方側に突出するように設けられてもよい。
【0078】
第2のプレート350(突出部分370)は、ダクト152の上側部分に対応する位置に配置された構成であったが、ダクト152の全周にわたって配置された構成でもよい。要するに、第2のプレート350(突出部分370)は、少なくともダクト152の上側部分に対応する位置に配置されていればよい。なお、ダクト152の上側部分は、例えば、ダクト152のプロペラ回転軸Mから真上に延びる基準線(図示しない)に対して左回りに60度以上、90度以下であり、基準線に対して右回りに60度以上、90度以下であることが好ましい。
【0079】
第2のプレート350は、湾曲形状に限らず、全体として平面形状でもよい。第2のプレート350は、上下方向視でプロペラ回転軸Mに対して前後非対称の形状でもよい。
【符号の説明】
【0080】
10:船舶 110:電動推進機 122,152:ダクト 132:プロペラ 134:電動モータ 150:バウスラスタ 154:プロペラ 200:船体 300:第1のプレート 312:第1の固定位置 314:第2の固定位置 322,352:孔 350:第2のプレート L,M:プロペラ回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9