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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110475
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】超音波プローブ及び超音波診断装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/00 20060101AFI20240808BHJP
【FI】
A61B8/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015028
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 聡人
(72)【発明者】
【氏名】岡田 健吾
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601DE16
4C601EE01
4C601EE04
4C601GB02
4C601GB19
4C601GB41
4C601GD03
(57)【要約】
【課題】送受信感度の低下を抑止しつつ、画像の高精細化を可能とすること。
【解決手段】実施形態の超音波プローブは、圧電素子と、偏光子と、光導波路とを備える。圧電素子は、透光性を有し、超音波を発生する。偏光子は、圧電素子の音響放射面側に設けられている。光導波路は、圧電素子の背面側に設けられ、偏光子側への光と、超音波が反射された反射波による圧電素子の電気光学効果によって変調された偏光子側への光が、偏光子によって反射された光とを伝送する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有し、超音波を発生する圧電素子と、
前記圧電素子の音響放射面側に設けられている偏光子と、
前記圧電素子の背面側に設けられ、前記偏光子側への光と、前記超音波が反射された反射波による前記圧電素子の電気光学効果によって変調された前記偏光子側への光が、前記偏光子によって反射された光とを伝送する光導波路と、
を備える、超音波プローブ。
【請求項2】
前記圧電素子は、印加電圧に応じて、透過する光の偏光角を変化させる圧電体である、請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項3】
前記光導波路は、前記圧電素子によって発生される超音波の音軸と一致する光軸を有する、請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項4】
前記偏光子は、前記偏光子側への光の波長以下の格子間隔のスリット形状の構造を有する、請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項5】
前記偏光子は、少なくとも2種類の複屈折率を有する結晶性材料が積層された構造を有する、請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項6】
前記光導波路によって伝送される光の波長は、220nm~2300nmである、請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項7】
前記圧電素子と前記光導波路との間に、前記偏光子の偏光角と平行ではない偏光角を有する偏光子をさらに有する、請求項1~6のいずれか1つに記載の超音波プローブ。
【請求項8】
請求項1に記載の超音波プローブと、
前記超音波プローブの光導波路によって伝送された光に基づく超音波画像を生成する画像生成部と、
を備える、超音波診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書等に開示の実施形態は、超音波プローブ及び超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波プローブは、圧電材料の逆圧電効果を利用して超音波を媒質中に送波し、被対象物からの反射波を圧電効果によって受信している。一方、近年では、圧電材料の圧電効果を用いない手法も開発されている。例えば、Si半導体技術による受音素子の集積化と回路一体型を目的としたコンデンサマイクの原理を利用したcMUT(Capacitive Micro-machined Ultrasound Transducer)や、被対象物の光吸収特性により光エネルギーによって熱膨張した際の超音波を受信する光超音波などが開発されている。しかしながら、これらの手法では、現在の圧電材料を用いた超音波プローブの送信感度を得ることが難しい。
【0003】
一方、高い圧電d定数を持つ圧電材料を用いた超音波プローブは、送信感度は高いが、受信感度に影響を及ぼす圧電g定数が低くなり、受信感度が低下する。さらには、より高精細な画像を収集するために、圧電素子の素子数を増大されてきているが、素子の微細化・多素子化に伴いケーブルが細径化し、ケーブルの寄生容量による感度低下の問題も抱えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-17723号公報
【特許文献2】特開2002-272737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書等に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、送受信感度の低下を抑止しつつ、画像の高精細化を可能とすることである。ただし、本明細書等に開示の実施形態により解決される課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を、本明細書等に開示の実施形態が解決する他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の超音波プローブは、圧電素子と、偏光子と、光導波路とを備える。圧電素子は、透光性を有し、超音波を発生する。偏光子は、前記圧電素子の音響放射面側に設けられている。光導波路は、前記圧電素子の背面側に設けられ、前記偏光子側への光と、前記超音波が反射された反射波による前記圧電素子の電気光学効果によって変調された前記偏光子側への光が、前記偏光子によって反射された光とを伝送する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る超音波プローブの構成の一例を示す図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る光ファイバの構成の一例を示す図である。
図4図4は、第1の実施形態に係る超音波プローブの作製法の一例を説明するための図である。
図5図5は、第1の実施形態に係る受光回路の一例を示す図である。
図6A図6Aは、第1の実施形態に係る反射光の一例を示す図である。
図6B図6Bは、第1の実施形態に係る反射波信号の抽出を説明するための図である。
図7図7は、第2の実施形態に係る超音波プローブの構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本願に係る超音波プローブ及び超音波診断装置の実施形態を詳細に説明する。なお、本願に係る超音波プローブ及び超音波診断装置は、以下に示す実施形態によって限定されるものではない。また、以下の説明において、同様の構成要素には共通の符号を付与するとともに、重複する説明を省略する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置100の構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態に係る超音波診断装置100は、超音波プローブ1と、ディスプレイ2と、入力インターフェース3と、装置本体4とを有し、超音波プローブ1と、ディスプレイ2と、入力インターフェース3とが装置本体4と通信可能に接続される。
【0010】
超音波プローブ1は、装置本体4と着脱自在に接続され、装置本体4に含まれる送信回路41と受光回路42とに接続される。例えば、超音波プローブ1は、セクタ型、リニア型又はコンベックス型などの超音波プローブである。超音波プローブ1は、例えば、プローブ本体とケーブルとで構成され、プローブ本体に複数の圧電素子を有し、これら複数の圧電素子は、送信回路41から供給される駆動信号に基づき超音波を発生する。ここで、本実施形態に係る超音波プローブ1は、圧電素子の振動によって超音波の送信を行い、受信を圧電素子の電気光学効果によって変調された光信号で行うことで、送受信感度の低下を抑止しつつ、画像の高精細化を可能とする。なお、超音波プローブ1については、後に詳述する。
【0011】
なお、本実施形態に係る超音波プローブ1は、複数の圧電素子が一列で配置された1次元超音波プローブであってもよく、1次元超音波プローブの複数の圧電素子を機械的に揺動する超音波プローブや複数の圧電素子が格子状に2次元で配置された2次元超音波プローブである場合でもよい。
【0012】
ディスプレイ2は、超音波診断装置100の操作者が入力インターフェース3を用いて各種設定要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)や、装置本体4において生成された超音波画像等を表示する。また、ディスプレイ2は、装置本体4の処理状況や処理結果を操作者に通知するために、各種のメッセージや表示情報を表示する。また、ディスプレイ2は、スピーカーを有し、音声を出力することもできる。
【0013】
入力インターフェース3は、種々の設定等を行うために操作され、例えば、トラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチモニタ、光学センサを用いた非接触入力回路、及び音声入力回路等によって実現される。入力インターフェース3は、後述する処理回路47に接続されており、操作者から受け付けた入力操作を電気信号へ変換し処理回路47へと出力する。なお、本明細書において入力インターフェース3は、マウス、キーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路47へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェースの例に含まれる。
【0014】
装置本体4は、送信回路41と、受光回路42と、信号処理回路43と、Bモード処理回路44と、ドプラ処理回路45と、メモリ46と、処理回路47とを有する。図1に示す超音波診断装置100においては、各処理機能がコンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ46へ記憶されている。送信回路41、受光回路42、信号処理回路43、Bモード処理回路44、ドプラ処理回路45、及び、処理回路47は、メモリ46からプログラムを読み出して実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の各回路は、読み出したプログラムに対応する機能を有することとなる。
【0015】
送信回路41は、パルス発生器、送信遅延回路、パルサ等を有し、超音波プローブ1に駆動信号を供給する。パルス発生器は、所定のレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。送信遅延回路は、超音波プローブ1から発生される超音波をビーム状に集束し、かつ送信指向性を決定するために必要な圧電素子ごとの遅延時間を、パルス発生器が発生する各レートパルスに対し与える。パルサは、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ1に駆動信号(駆動パルス)を印加する。すなわち、送信遅延回路は、各レートパルスに対し与える遅延時間を変化させることで、圧電素子の音響放射面から発生される超音波の送信方向を任意に調整する。
【0016】
なお、送信回路41は、後述する処理回路47の指示に基づいて、所定のスキャンシーケンスを実行するために、送信周波数、送信駆動電圧等を瞬時に変更可能な機能を有している。特に、送信駆動電圧の変更は、瞬間にその値を切り替え可能なリニアアンプ型の発信回路、又は、複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。
【0017】
受光回路42は、超音波プローブ1から伝送された光信号(光)を受光して、光信号に含まれる反射波信号成分(以下、反射波信号と記す)を抽出する。なお、受光回路42による処理については、後に詳述する。
【0018】
信号処理回路43は、プリアンプ、A/D(Analog/Digital)変換器、受信遅延回路、加算器等を有し、受光回路42によって抽出された反射波信号に対して各種処理を行って反射波データを生成する。プリアンプは、反射波信号をチャネル毎に増幅する。A/D変換器は、増幅された反射波信号をA/D変換する。受信遅延回路は、受信指向性を決定するために必要な遅延時間を与える。加算器は、受信遅延回路によって処理された反射波信号の加算処理を行なって反射波データを生成する。加算器の加算処理により、反射波信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調される。
【0019】
Bモード処理回路44は、信号処理回路43から反射波データを受信し、対数増幅、包絡線検波処理等を行なって、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。
【0020】
ドプラ処理回路45は、信号処理回路43から受信した反射波データから速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、速度、分散、パワー等の移動体情報を多点について抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。例えば、移動体は、血管内を流動する血液や、リンパ管内を流動するリンパ液等の流体である。
【0021】
なお、Bモード処理回路44及びドプラ処理回路45は、2次元の反射波データ及び3次元の反射波データの両方について処理可能である。すなわち、Bモード処理回路44は、2次元の反射波データから2次元のBモードデータを生成し、3次元の反射波データから3次元のBモードデータを生成する。また、ドプラ処理回路45は、2次元の反射波データから2次元のドプラデータを生成し、3次元の反射波データから3次元のドプラデータを生成する。
【0022】
また、Bモード処理回路44は、複数の2次元の反射波データを合成して3次元の反射波データを生成し、生成した3次元の反射波データから3次元のBモードデータを生成することもできる。また、ドプラ処理回路45は、複数の2次元の反射波データを合成して3次元の反射波データを生成し、生成した3次元の反射波データから3次元のドプラデータを生成することもできる。
【0023】
メモリ46は、処理回路47が生成した表示用の超音波画像を記憶する。また、メモリ46は、Bモード処理回路44が生成したBモードデータやドプラ処理回路45が生成したドプラデータを記憶することも可能である。また、メモリ46は、超音波送受信、画像処理及び表示処理を行なうための制御プログラムや、診断情報(例えば、患者ID、医師の所見等)や、診断プロトコルや各種ボディーマーク等の各種データを記憶する。
【0024】
処理回路47は、超音波診断装置100の処理全体を制御する。具体的には、処理回路47は、図1に示す制御機能471及び画像生成機能472に対応するプログラムをメモリ46から読み出して実行することで、種々の処理を行う。例えば、処理回路47は、各プログラムをメモリ46から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路47は、図1の処理回路47内に示された各機能を有することとなる。
【0025】
ここで、画像生成機能472は、画像生成部の一例である。なお、本実施形態においては、単一の処理回路47にて、以下に説明する各処理機能が実現されるものとして説明するが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。
【0026】
制御機能471は、入力インターフェース3を介して操作者から入力された各種設定要求や、メモリ46から読込んだ各種制御プログラム及び各種データに基づき、送信回路41、受光回路42、信号処理回路43、Bモード処理回路44、ドプラ処理回路45の処理を制御する。また、制御機能471は、超音波画像や、種々の情報をディスプレイ2に表示させるように制御する。
【0027】
画像生成機能472は、Bモード処理回路44及びドプラ処理回路45が生成したデータから超音波画像を生成する。すなわち、画像生成機能472は、Bモード処理回路44が生成した2次元のBモードデータから反射波の強度を輝度にて表した超音波画像を生成する。また、画像生成機能472は、ドプラ処理回路45が生成した2次元のドプラデータから移動体情報を表す超音波画像を生成する。ドプラデータに基づく超音波画像は、速度画像データ、分散画像データ、パワー画像データ、又は、これらを組み合わせた画像データである。
【0028】
ここで、画像生成機能472は、一般的には、超音波走査の走査線信号列を、テレビ等に代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)し、表示用の超音波画像を生成する。具体的には、画像生成機能452は、超音波プローブ1による超音波の走査形態に応じて座標変換を行なうことで、表示用の超音波画像を生成する。また、画像生成機能472は、スキャンコンバート以外に種々の画像処理として、例えば、スキャンコンバート後の複数の画像フレームを用いて、輝度の平均値画像を再生成する画像処理(平滑化処理)や、画像内で微分フィルタを用いる画像処理(エッジ強調処理)等を行なう。また、画像生成機能472は、超音波画像に、種々のパラメータの文字情報、目盛り、ボディーマーク等を合成する。
【0029】
更に、画像生成機能472は、Bモード処理回路44が生成した3次元のBモードデータに対して座標変換を行なうことで、3次元のBモード画像データを生成する。また、画像生成機能472は、ドプラ処理回路45が生成した3次元のドプラデータに対して座標変換を行なうことで、3次元のドプラ画像データを生成する。更に、画像生成機能472は、これら3次元の画像データ(ボリュームデータ)をディスプレイ2にて表示するための各種2次元画像を生成するために、ボリュームデータに対してレンダリング処理を行なうことができる。
【0030】
以上、第1の実施形態に係る超音波診断装置100の構成について説明した。かかる構成のもと、超音波診断装置100は、超音波プローブ1が圧電素子の振動によって超音波の送信を行い、受信を圧電素子の電気光学効果によって変調された光信号で行うことで、送受信感度の低下を抑止しつつ、画像の高精細化を可能とする。
【0031】
現在、経食道エコーで用いられている超音波内視鏡では、画像の高精細化が求められている。しかしながら、2次元アレイによる高精細化では、素子数が増大し、素子間が狭ピッチとなる。その結果、従来の超音波プローブと同様に、多素子化に伴うケーブル細径化による寄生容量の増大が、感度低下をもたらす課題が存在する。また、プローブヘッド内に小型IC基板を設置して、信号のON/OFF制御を行っているが、IC基板が発生する熱の排熱も課題となっている。さらに、経食道内に超音波プローブを挿入するにあたり、プローブヘッドのサイズを大型化することもできない。そこで、本実施形態に係る超音波プローブ1は、上記した課題を解決するため、以下の構成を備える。
【0032】
図2は、第1の実施形態に係る超音波プローブ1の構成の一例を示す図である。ここで、図2においては、超音波プローブ1の断面図を示す。図2に示すように、超音波プローブ1は、上部偏光子11と、上部電極12と、圧電素子13と、下部電極14と、基板15と、下部偏光子16と、光ファイバ17とを有し、基板15にキャビティ18が形成されている。
【0033】
上部偏光子11は、例えば、銀薄膜又は金薄膜によって形成され、圧電素子13の音響放射面側に敷設される。例えば、上部偏光子11は、1次元の回折格子である。
【0034】
上部電極12及び下部電極14は、例えば、ITO(Indium tin oxide)、FTO(Fluorine-doped tin oxide)などの透明導電膜によって形成される。ここで、上部電極12及び下部電極14は、一方が信号電極、他方がアース電極となる。
【0035】
圧電素子13は、透光性を有し、上部電極12及び下部電極14によって印加される電圧に応じて超音波を発生させる。例えば、圧電素子13は、印加電圧に応じて、透過する光の偏光角を変化させる圧電体であり、PLZT(La-modified lead zirconate titanate)により形成されている。なお、以下では、圧電素子13が、格子状に分割されることで、2次元マトリクス状に配列された素子群が形成されている場合について説明する。すなわち、超音波プローブ1が、2次元超音波プローブである場合について説明する。
【0036】
基板15は、透光性を有し、圧電素子13の背面側に敷設され、送信回路41から受信した電気信号を上部電極12及び下部電極14に送信する。例えば、基板15は、石英基板などによって実現される。なお、基板15は、透光性を有し、光の偏光角を変化させないものであれば適用することができる。
【0037】
下部偏光子16は、例えば、銀薄膜又は金薄膜によって形成され、圧電素子13と光ファイバ17の間に敷設される。ここで、下部偏光子16は、上部偏光子11の偏光角と平行ではない偏光角を有する。例えば、下部偏光子16は、1次元の回折格子である。
【0038】
光ファイバ17は、圧電素子13の背面側に設けられ、上部偏光子11側への光と、超音波が反射された反射波による圧電素子13の電気光学効果によって変調された上部偏光子11側への光が、上部偏光子11によって反射された光とを伝送する。具体的には、光ファイバ17は、超音波プローブ1のプローブ本体(プローブヘッド)と装置本体4とを繋ぐケーブル内に敷設され、光源(不図示)から入射された光を上部偏光子11側へ伝送し、上部偏光子11によって反射された光を装置本体4側(受光回路42)へ伝送する。
【0039】
ここで、光ファイバ17は、複数の微細な光ファイバを含む。図3は、第1の実施形態に係る光ファイバ17の構成の一例を示す図である。例えば、光ファイバ17は、図3に示すように、ケーブルの断面において2次元マトリクス状に配列されるように、複数の微細な光ファイバで構成される。そして、光ファイバ17は、先端部に下部偏光子16がワイヤーグリッド状にパターニングされ、基板15に接合される。ここで、下部偏光子16は、光源から出射された光の波長以下の格子間隔のスリット形状の構造を有する。
【0040】
なお、図2に示す超音波プローブ1の構成は一例であり、その他の構成が含まれる場合でもよい。例えば、超音波プローブ1は、プローブ本体において、圧電素子-生体間の音響インピーダンスの不整合を緩和する整合層と、圧電素子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を有する場合でもよい。
【0041】
次に、図1に示した超音波プローブ1の作製法について説明する。図4は、第1の実施形態に係る超音波プローブ1の作製法の一例を説明するための図である。図4に示すように、超音波プローブ1は、例えば、エッチングにより基板15にダイヤフラム構造が形成される。ここで、ダイヤフラム構造は、例えば、2μm以下の厚みとなるように形成される。
【0042】
続いて、ダイヤフラム構造が形成された基板15上に、厚み100~200nmの下部電極14と、厚み1μmの圧電素子13と、厚み100~200nmの上部電極12とが積層され、上部電極12上に上部偏光子11がワイヤーグリッド状にパターニングされる。ここで、上部偏光子11は、上部偏光子11側への光の波長以下の格子間隔のスリット形状の構造を有する。
【0043】
さらに、上部偏光子11が形成された基板15の背面側に、下部偏光子16が設けられた光ファイバ17が接合される。具体的には、光ファイバ17は、圧電素子13によって発生される超音波の音軸と一致する光軸を有するように、基板15に接合される。ここで、光ファイバ17は、下部偏光子16の偏光角と上部偏光子11の偏光角とが平行とならないように、基板15に接合される。例えば、上部偏光子11と下部偏光子16とがそれぞれ1次元の回折格子で実現された場合、格子の向きが平行とならないように(例えば、格子の向きが90°となるように)、光ファイバ17が基板15に接合される。
【0044】
上記したように、光ファイバ17の一方の端部は、基板15に接合されるが、他方の端部は、受光回路42に接続される。ここで、受光回路42は、光ファイバ17に含まれる複数の微細な光ファイバと接合する受光素子を有する。図5は、第1の実施形態に係る受光回路42の一例を示す図である。
【0045】
図5に示すように、受光回路42は、複数の微細な光ファイバに対応する複数の受光素子421を有する。ここで、受光素子421は、ケーブルの断面において2次元マトリクス状に配列された複数の微細な光ファイバに対応するように、2次元マトリクス状に配列される。受光回路42は、各受光素子421によって受光された光について、それぞれ反射波信号を抽出する。
【0046】
以下、超音波プローブ1による超音波スキャンについて説明する。上記したように、超音波プローブ1は、超音波を送信して、被対象物によって反射された反射波を光の変調によって捉える。具体的には、超音波プローブ1は、送信回路41の制御により、圧電素子13から超音波を発生して被検体内に送信する。このとき、本実施形態に係る超音波プローブ1では、送信回路41が光源(不図示)を制御して光ファイバ17に光を入射させ、プローブ本体側に光を伝送させる。なお、光源から出射される光の波長は、例えば、220nm~2300nmである。
【0047】
プローブ本体側に伝送された光は、下部偏光子16によって光波の振動方向が一定の偏光となり、基板15、下部電極14、圧電素子13、上部電極12を透過して、上部偏光子11に到達する。ここで、上部偏光子11は、偏光角が下部偏光子16の偏光角と平行とならないように設定されている(例えば、格子の向きが90°となるように設定されている)。したがって、上部偏光子11に到達した偏向は、上部偏光子11によって反射され、光ファイバ17に入射される。
【0048】
受光回路42は、光ファイバ17に入射され、伝送された偏光を受光する。ここで、偏光の偏光角(光波の振動方向)が変化しない場合、受光回路42は、およそ一定強度の偏光を受光することとなる。図6Aは、第1の実施形態に係る反射光の一例を示す図である。図6Aでは、縦軸を振幅、横軸を時間とした光波を示す。
【0049】
例えば、光の偏光角が変化しない場合、上部偏光子11によって反射された反射光は、図6Aに示すように、所定の波長でおよそ一定強度の光となる。
【0050】
一方、圧電素子13が、被対象物によって反射された反射波を受信した場合、圧電効果によって電圧が発生する。圧電素子13は、電圧が印加されると、電気光学効果により光の偏光角を変化させる。したがって、圧電素子13が反射波を受信して電気光学効果が生じているタイミングで、下部偏光子16を透過した偏光が圧電素子13を透過した場合、偏光の偏光角が変化する(回転する)こととなり、上部偏光子11に到達した偏光が、上部偏光子11を透過するようになる。
【0051】
すなわち、上部偏光子11によって反射されていた光の一部が上部偏光子11を透過することとなり、反射光の強度が低下することとなる。本実施形態に係る超音波診断装置100は、この反射光の強度の低下を捉えて、反射波信号を抽出する。
【0052】
図6Bは、第1の実施形態に係る反射波信号の抽出を説明するための図である。図6Bでは、縦軸に振幅を示し、横軸に時間を示す。図6Bの上段の図に示すように、圧電素子13が反射波を受信して電気光学効果が生じている場合、反射波の周波数に応じて、反射光の強度低下が生じる。すなわち、受光回路42は、図6Bの上段の図に示すように、反射波による振動で電気光学効果が生じたタイミングで矢印aの強度低下を示す反射光を受光する。
【0053】
受光回路42は、受光した反射光と、基準の光(例えば、図6Aに示す反射光)との差分を算出することで、図6Bの下段に示す反射波信号を抽出する。受光回路42は、抽出した反射波信号を信号処理回路43に送信する。
【0054】
なお、超音波プローブ1の基板15は、上記したように、ダイヤフラム構造を有する。したがって、反射波によってダイヤフラム膜が変位することで、反射光が変調される。具体的には、ダイヤフラム膜の変位により、反射光の位相がシフトする。そこで、受光回路42は、反射光の位相の変化を、反射波信号に関する情報として取得する場合でもよい。
【0055】
上述したように、第1の実施形態によれば、圧電素子13は、透光性を有し、超音波を発生する。上部偏光子11は、圧電素子13の音響放射面側に設けられている。光ファイバ17は、圧電素子13の背面側に設けられ、上部偏光子11側への光と、超音波が反射された反射波による圧電素子13の電気光学効果によって変調された上部偏光子11側への光が、上部偏光子11によって反射された光とを伝送する。従って、第1の実施形態に係る超音波プローブ1は、受信を光による信号で行うことで、従来のケーブルの寄生容量の影響を排除することができ、圧電素子の素子数を増大してもケーブルの寄生容量による感度低下が生じない。また、超音波プローブ1は、送信を超音波で行うことで、従来と同様の送信感度を得ることができる。その結果、第1の実施形態に係る超音波プローブ1は、送受信感度の低下を抑止しつつ、画像の高精細化を可能とする。
【0056】
また、超音波プローブ1は、受信を光による信号で行うことでケーブルの寄生容量の影響を排除することができることから、受信の信号におけるS/N比が高くなる。その結果、超音波プローブ1は、ダイナミックレンジを大きくすることができ、受信感度を向上させることができる。また、受信感度不足をASICのプリアンプ回路に頼らなくても良くなることから、プローブ本体内に設置することを省くことが可能となるため、小型化することができるとともに、発熱による影響を極端に少なくすることが可能となる。
【0057】
また、第1の実施形態によれば、圧電素子13は、印加電圧に応じて、透過する光の偏光角を変化させる圧電体である。従って、第1の実施形態に係る超音波プローブ1は、反射波の情報を、光の変調で捉えることを可能にする。
【0058】
また、第1の実施形態によれば、光ファイバ17は、圧電素子13によって発生される超音波の音軸と一致する光軸を有する。従って、第1の実施形態に係る超音波プローブ1は、素子面積の確保及び形状の小型化を行うことを可能にする。
【0059】
また、第1の実施形態によれば、上部偏光子11は、上部偏光子11側への光の波長以下の格子間隔のスリット形状の構造を有する。従って、第1の実施形態に係る超音波プローブ1は、上部偏光子11により光を反射させることを可能にする。
【0060】
また、第1の実施形態によれば、光ファイバ17によって伝送される光の波長は、220nm~2300nmである。従って、第1の実施形態に係る超音波プローブ1は、幅広い光を用いることを可能にする。
【0061】
また、第1の実施形態によれば、圧電素子13と光ファイバ17との間に、上部偏光子11の偏光角と平行ではない偏光角を有する下部偏光子16を有する。従って、第1の実施形態に係る超音波プローブ1は、反射波の情報を偏光の変調でとらえることができ、反射波信号を精度良く抽出することを可能にする。
【0062】
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態では、下部偏光子16を備える超音波プローブ1について説明した。第2の実施形態では、圧電素子13の音響放射面側にのみ偏光子を配置する場合について説明する。すなわち、偏光子として上部偏光子11のみ備える超音波プローブについて説明する。なお、第2の実施形態では、生体に対して光を照射することにより、生体の内部の光吸収体が発生する光音響波(光超音波とも呼ばれる)を受信する光超音波プローブに適用する場合を例に挙げて説明する。
【0063】
図7は、第2の実施形態に係る超音波プローブ1aの構成の一例を示す図である。ここで、図7においては、超音波プローブ1aの断面図を示す。図7に示すように、超音波プローブ1aは、上部偏光子11と、上部電極12と、圧電素子13と、下部電極14と、光ファイバ17とを有する。
【0064】
超音波プローブ1aは、図7の上段の図に示すように、図示しない光源から出射された光a1を被検体に対して照射する。ここで、光a1は、利用される光吸収体の種類に応じた波長を有し、例えば、750nm~850nmの光である。超音波プローブ1aから照射された光a1は、体内の光吸収体(例えば、血中のヘモグロビンなど)によって吸収される。光吸収体は、光a1のエネルギーを吸収して励起され、熱振動によって光超音波(図7の中段の図示す超音波)を発生する。
【0065】
圧電素子13は、光超音波を受信すると、圧電効果によって発生した電圧により電気光学効果が生じて、光a1を変調させる。変調された光a1は、上部偏光子11によって一部が反射される。すなわち、光a1は、圧電素子13による変調により、図7の下段の図に示すように、上部偏光子11を透過する光a2と、上部偏光子11によって反射される光a3とに分離される。
【0066】
光a3は、光ファイバ17を伝送され、装置本体内の受光回路42によって受光される。第2の実施形態に係る受光回路42は、受光した光a3に基づいて、光超音波信号を抽出する。
【0067】
上述したように、第2の実施形態によれば、光超音波プローブにおける受信を光による信号で行うことができる。したがって、第2の実施形態に係る超音波プローブ1aは、光超音波プローブにおけるプローブ本体内のASICを省くことができ、小型化することを可能にする。
【0068】
(その他の実施形態)
上述した実施形態では、格子の向きが90°となるように、上部偏光子11と下部偏光子16とが配置される場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、格子の向きを任意の角度で配置させることができる。例えば、格子の向きが45°となるように、上部偏光子11と下部偏光子16とが配置される場合でもよい。
【0069】
また、上述した実施形態では、上部偏光子11及び下部偏光子16がワイヤーグリッドによって形成された1次元の回折格子である場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、任意の偏光子を用いることができる。例えば、上部偏光子11及び下部偏光子16は、少なくとも2種類の複屈折率を有する結晶性材料が積層された構造を有する場合でもよい。例えば、上部偏光子11及び下部偏光子16は、方解石のプリズムを積層して形成される場合でもよい。これにより、偏光性能が高い上部偏光子11及び下部偏光子16を実現することができる。
【0070】
なお、上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサはメモリに保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、メモリにプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。
【0071】
なお、上記の実施形態の説明で図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。更に、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0072】
以上、説明したとおり、実施形態によれば、送受信感度の低下を抑止しつつ、画像の高精細化を可能にする。
【0073】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0074】
1、1a 超音波プローブ
11 上部偏光子
13 圧電素子
16 下部偏光子
17 光ファイバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7