(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024110477
(43)【公開日】2024-08-16
(54)【発明の名称】作業機械の制御方法、作業機械用制御プログラム、作業機械用制御システム及び作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/24 20060101AFI20240808BHJP
E02F 9/26 20060101ALI20240808BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
E02F9/24 K
E02F9/26 B
H04N7/18 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023015031
(22)【出願日】2023-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【弁理士】
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 剛
(72)【発明者】
【氏名】段口 将志
【テーマコード(参考)】
2D015
5C054
【Fターム(参考)】
2D015GA02
2D015GA03
2D015HB07
5C054CA04
5C054CC02
5C054EA01
5C054EA05
5C054EA07
5C054FC12
5C054FC13
5C054FC15
5C054FE05
5C054FE24
5C054FE28
5C054FF06
5C054GB01
5C054HA30
5C054HA31
(57)【要約】
【課題】監視エリアに存在する検知対象物への対処がしやすい、作業機械の制御方法、作業機械用制御プログラム、作業機械用制御システム及び作業機械を提供する。
【解決手段】作業機械3の制御方法は、作業機械3の周囲の監視エリアA1における検知対象物Ob1を検知する検知部の検知結果に基づいて、作業機械3の動作を牽制する牽制処理を実行することと、牽制処理に係る機能の牽制レベルを変更することと、特定条件を満たす場合に、牽制レベルを高レベル側に変更することと、を有する。特定条件は、検知対象物Ob1としての第1対象物Ob11が監視エリアA1に存在する状態で牽制レベルが低レベル側に変更された後で、検知対象物Ob1として第1対象物Ob11とは別の第2対象物Ob12が監視エリアA1に存在すること、を含む。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械の周囲の監視エリアにおける検知対象物を検知する検知部の検知結果に基づいて、前記作業機械の動作を牽制する牽制処理を実行することと、
前記牽制処理に係る機能の牽制レベルを変更することと、
特定条件を満たす場合に、前記牽制レベルを高レベル側に変更することと、を有し、
前記特定条件は、前記検知対象物としての第1対象物が前記監視エリアに存在する状態で前記牽制レベルが低レベル側に変更された後で、前記検知対象物として前記第1対象物とは別の第2対象物が前記監視エリアに存在すること、を含む、
作業機械の制御方法。
【請求項2】
前記牽制レベルは、前記牽制処理の有効/無効を含み、
前記牽制レベルが低レベル側に変更されることで、前記牽制処理を有効から無効に切替可能である、
請求項1に記載の作業機械の制御方法。
【請求項3】
ユーザの操作に応じて前記牽制レベルを変更すること、を更に有する、
請求項1又は2に記載の作業機械の制御方法。
【請求項4】
前記特定条件は、前記牽制レベルが低レベル側に変更されるより前に、前記第1対象物が前記監視エリアに存在することによって前記牽制処理が実行されること、を更に含む、
請求項1又は2に記載の作業機械の制御方法。
【請求項5】
前記特定条件は、前記第1対象物が前記監視エリアに存在する状態において、前記牽制レベルが低レベル側に変更されるより前に、前記作業機械のカットオフレバーがロック状態からロック解除状態に切り替えられること、を更に含む、
請求項1又は2に記載の作業機械の制御方法。
【請求項6】
前記第1対象物と前記第2対象物とを識別する識別処理を実行すること、を更に有する、
請求項1又は2に記載の作業機械の制御方法。
【請求項7】
前記識別処理では、前記検知対象物の視覚的特徴量に基づいて識別する、
請求項6に記載の作業機械の制御方法。
【請求項8】
前記識別処理では、前記検知対象物の動きの特徴量に基づいて識別する、
請求項6に記載の作業機械の制御方法。
【請求項9】
前記識別処理では、前記検知対象物に付された識別子の識別情報に基づいて識別する、
請求項6に記載の作業機械の制御方法。
【請求項10】
前記作業機械の特定の操作と、前記監視エリアの特定エリアに前記検知対象物が存在することと、の少なくとも一方を含む規制条件を満たす場合に、前記牽制レベルの低レベル側への変更を規制すること、を更に有する、
請求項1又は2に記載の作業機械の制御方法。
【請求項11】
前記特定条件は、ユーザの操作受付状態において特定の操作状態が検知されること、を更に含む、
請求項1又は2に記載の作業機械の制御方法。
【請求項12】
請求項1又は2に記載の作業機械の制御方法を、
1以上のプロセッサに実行させるための作業機械用制御プログラム。
【請求項13】
作業機械の周囲の監視エリアにおける検知対象物を検知する検知部の検知結果に基づいて、前記作業機械の動作を牽制する牽制処理を実行する牽制処理部と、
前記牽制処理に係る機能の牽制レベルを変更する変更処理部と、を備え、
前記変更処理部は、特定条件を満たす場合に、前記牽制レベルを高レベル側に変更し、
前記特定条件は、前記検知対象物としての第1対象物が前記監視エリアに存在する状態で前記牽制レベルが低レベル側に変更された後で、前記検知対象物として前記第1対象物とは別の第2対象物が前記監視エリアに存在すること、を含む、
作業機械用制御システム。
【請求項14】
請求項13に記載の作業機械用制御システムと、
機体と、を備える、
作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周囲の監視エリアにおける検知対象物を検知する機能を有する作業機械に用いられる、作業機械の制御方法、作業機械用制御プログラム、作業機械用制御システム及び作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術として、周囲の障害物を検出する障害物検出装置と、障害物検出装置が障害物を検出した場合にアクチュエータの動作を制限する動作制限制御を行うコントローラと、を備える作業機械(油圧ショベル)が知られている(例えば、特許文献1参照)。関連技術に係る作業機械は、動作制限制御の解除を指示するための制御解除装置を更に備え、コントローラは、動作制限制御を有効とする通常モードと、動作制限制御を一時的に解除する一時解除モードとを有する。通常モードにおいて、制御解除装置の操作に起因して一時解除モードに移行し、一時解除モードにおいて、制御解除装置の操作に起因しない所定の条件が成立した場合に、通常モードに復帰する。
【0003】
上記関連技術に係る作業機械では、作業時の作業機械の動かし始めにおいて、オペレータが周囲の安全確認を実施した後は、オペレータが制御解除装置を操作することで動作制限が作動しない一時解除モードに移行させることができる。そのため、例えば、作業機械の周囲に作業に必要な物体が存在する場合でも、通常の作業機械として作業を行うことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記関連技術では、オペレータが、作業機械の周囲の監視エリアの検知対象物(障害物)の存在を認知した上で、作業を効率的に進めるために一時解除モードに移行させるが、一時解除モードでは、監視エリアに検知対象物が存在しようが動作制限は作動しない。そのため、一時解除モードにおいて、例えば、オペレータが認知していない新たな検知対象物が、オペレータの死角から不意に作業機械に接近するようなことがあっても、当該検知対象物の存在による動作制限は作動しない。
【0006】
本発明の目的は、監視エリアに存在する検知対象物への対処がしやすい、作業機械の制御方法、作業機械用制御プログラム、作業機械用制御システム及び作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る作業機械の制御方法は、作業機械の周囲の監視エリアにおける検知対象物を検知する検知部の検知結果に基づいて、前記作業機械の動作を牽制する牽制処理を実行することと、前記牽制処理に係る機能の牽制レベルを変更することと、特定条件を満たす場合に、前記牽制レベルを高レベル側に変更することと、を有する。前記特定条件は、前記検知対象物としての第1対象物が前記監視エリアに存在する状態で前記牽制レベルが低レベル側に変更された後で、前記検知対象物として前記第1対象物とは別の第2対象物が前記監視エリアに存在すること、を含む。
【0008】
本発明の一態様に係る作業機械用制御プログラムは、前記作業機械の制御方法を、1以上のプロセッサに実行させるためのプログラムである。
【0009】
本発明の一態様に係る作業機械用制御システムは、牽制処理部と、変更処理部と、を備える。前記牽制処理部は、作業機械の周囲の監視エリアにおける検知対象物を検知する検知部の検知結果に基づいて、前記作業機械の動作を牽制する牽制処理を実行する。前記変更処理部は、前記牽制処理に係る機能の牽制レベルを変更する。前記変更処理部は、特定条件を満たす場合に、前記牽制レベルを高レベル側に変更する。前記特定条件は、前記検知対象物としての第1対象物が前記監視エリアに存在する状態で前記牽制レベルが低レベル側に変更された後で、前記検知対象物として前記第1対象物とは別の第2対象物が前記監視エリアに存在すること、を含む。
【0010】
本発明の一態様に係る作業機械は、前記作業機械用制御システムと、機体と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、監視エリアに存在する検知対象物への対処がしやすい、作業機械の制御方法、作業機械用制御プログラム、作業機械用制御システム及び作業機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る作業機械の全体構成を示す概略斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係る作業機械の油圧回路等を示す概略図である。
【
図3】
図3は、実施形態1に係る作業機械を上方から見て、作業機械の周囲に設定された監視エリア等を模式的に表す概略平面図である。
【
図4】
図4は、実施形態1に係る作業機械用制御システムにより表示画面が表示される表示装置の概略外観図である。
【
図5】
図5は、実施形態1に係る作業機械用制御システムにより表示される表示画面の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、実施形態1に係る作業機械用制御システムによる検知対象物の検知動作の一例を説明する概略図である。
【
図7】
図7は、実施形態1に係る作業機械用制御システムによる検知対象物の検知動作の一例を説明する概略図である。
【
図8】
図8は、実施形態1に係る作業機械用制御システムにより表示される表示画面の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、実施形態1に係る作業機械用制御システムの動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する趣旨ではない。
【0014】
(実施形態1)
[1]全体構成
本実施形態に係る作業機械3は、
図1に示すように、走行部31と、旋回部32と、作業部33と、を機体30に備えている。また、作業機械3は、
図2に示すように、作業機械用制御システム1(以下、単に「制御システム1」ともいう)を更に備えている。その他、機体30は、表示装置2及び操作装置35等を更に備えている。
【0015】
本開示でいう「作業機械」は、各種の作業用の機械を意味し、一例として、バックホー(油圧ショベル、ミニショベル等を含む)、ホイルローダー及びキャリア等の作業車両である。作業機械3は、少なくとも吊り作業を含む1つ以上の作業を実行可能に構成された作業部33を備えている。作業機械3は、「車両」に限らず、例えば、作業用船舶、ドローン又はマルチコプター等の作業飛翔体等であってもよい。さらに、作業機械3は建設機械(建機)に限らず、例えば、田植機、トラクタ又はコンバイン等の農業機械(農機)であってもよい。本実施形態では、特に断りが無い限り、作業機械3が吊り機能付き(クレーン機能付き)のバックホーであって、吊り作業の他に、掘削作業、整地作業、溝掘削作業又は積込作業等を作業として実行可能である場合を例に挙げて説明する。
【0016】
また、本実施形態では、説明の便宜上、作業機械3が使用可能な状態での鉛直方向を上下方向D1と定義する。さらに、旋回部32の非旋回状態において、作業機械3(の運転部321)に搭乗したユーザ(オペレータ)から見た方向を基準として、前後方向D2及び左右方向D3を定義する。言い換えれば、本実施形態で用いられる各方向は、いずれも作業機械3の機体30を基準として規定される方向であって、作業機械3の前進時に機体30が移動する方向が「前方」、作業機械3の後退時に機体30が移動する方向が「後方」となる。同様に、作業機械3の右旋回時に機体30の前端部が移動する方向が「右方」、作業機械3の左旋回時に機体30の前端部が移動する方向が「左方」となる。ただし、これらの方向は、作業機械3の使用方向(使用時の方向)を限定する趣旨ではない。
【0017】
作業機械3は、動力源となるエンジンを備えている。作業機械3においては、例えば、エンジンによって油圧ポンプ41(
図2参照)が駆動され、油圧ポンプ41から機体30の各部の油圧アクチュエータ(油圧モータ43及び油圧シリンダ44等を含む)に作動油が供給されることで、機体30が駆動する。また、作業機械3は、例えば、機体30の運転部321に搭乗したユーザ(オペレータ)が、操作装置35の操作レバー等を操作することにより制御される。
【0018】
本実施形態では、上述したように作業機械3が乗用タイプのバックホーである場合を想定しているので、作業部33は、運転部321に搭乗したユーザ(オペレータ)の操作に従って駆動され、掘削作業等の作業を実行する。ユーザが搭乗する運転部321は、旋回部32に設けられている。
【0019】
走行部31は、走行機能を有し、地面を走行(旋回を含む)可能に構成されている。走行部31は、例えば、左右一対のクローラ311及びブレード312等を有している。走行部31は、クローラ311を駆動するための走行用の油圧モータ43(油圧アクチュエータ)等を更に有する。
【0020】
旋回部32は、走行部31の上方に位置し、走行部31に対して、鉛直方向に沿った回転軸を中心に旋回可能に構成されている。旋回部32は、旋回用の油圧モータ(油圧アクチュエータ)等を有している。旋回部32には、運転部321の他、エンジン及び油圧ポンプ41等が搭載されている。さらに、旋回部32の前端部には、作業部33が取り付けられるブームブラケット322が設けられている。
【0021】
作業部33は、吊り作業を含む作業を実行可能に構成されている。作業部33は、旋回部32のブームブラケット322に支持されており、作業を実行する。作業部33は、バケット331、ブーム332及びアーム333等を有している。作業部33は、各部を駆動するための油圧アクチュエータ(油圧シリンダ44及び油圧モータ等を含む)を更に有する。
【0022】
バケット331は、作業機械3の機体30に取り付けられるアタッチメント(作業具)の一種であって、複数種類のアタッチメントの中から作業の内容に応じて選択される任意の器具からなる。バケット331は、一例として、機体30に対して取り外し可能に取り付けられ、作業の内容に応じて交換される。作業機械3用のアタッチメントとしては、例えば、バケット331の他に、ブレーカ、オーガ、クラッシャ、フォーク、フォーククロー、鉄骨カッタ、アスファルト切削機、草刈機、リッパ、マルチャ、チルトローテータ及びタンパ等の種々の器具がある。作業部33は、駆動装置からの動力により、バケット331を駆動することで作業を実行する。
【0023】
ブーム332は、旋回部32のブームブラケット322にて、回転可能に支持されている。具体的には、ブーム332は、ブームブラケット322にて、水平方向に沿った回転軸を中心に回転可能に支持されている。ブーム332は、ブームブラケット322に支持される基端部から上方に延びる形状を有している。アーム333は、ブーム332の先端に連結されている。アーム333は、ブーム332に対して、水平方向に沿った回転軸を中心に回転可能に支持されている。アーム333の先端には、バケット331が取り付けられる。
【0024】
作業部33は、動力源としてのエンジンからの動力を受けて動作する。具体的には、エンジンによって油圧ポンプ41が駆動され、作業部33の油圧アクチュエータ(油圧シリンダ44等)に油圧ポンプ41から作動油が供給されることで、作業部33の各部(バケット331、ブーム332及びアーム333)が動作する。
【0025】
本実施形態では特に、作業部33は、ブーム332及びアーム333が個別に回転可能に構成された多関節型の構造を有している。つまり、ブーム332及びアーム333の各々が、水平方向に沿った回転軸を中心に回転することにより、例えば、ブーム332及びアーム333を含む多関節型の作業部33は、全体として伸ばしたり、折りたたんだりする動作が可能である。
【0026】
走行部31及び旋回部32の各々についても、作業部33と同様に、動力源としてのエンジンからの動力を受けて動作する。つまり、走行部31の油圧モータ43及び旋回部32の油圧モータ等に、油圧ポンプ41から作動油が供給されることで、旋回部32及び走行部31が動作する。
【0027】
エンジンは、上述したように各部に動力を供給する動力源として機能する。ここで、エンジンは、油圧ポンプ41等と共に旋回部32に搭載されている。本実施形態では一例として、エンジンはディーゼルエンジンである。エンジンは、燃料タンクから燃料(ここでは軽油)が供給されることにより駆動する。
【0028】
ここで、機体30には、機体30の周辺を撮像するカメラ等、作業機械3の周囲の監視エリアA1(
図3参照)における検知対象物Ob1(
図3参照)を検知するための各種のセンサ類(カメラを含む)が備わっている。本実施形態では一例として、
図3に示すように、左方カメラ341、右方カメラ342及び後方カメラ343を含む複数(ここでは3つ)のカメラが、機体30の旋回部32に搭載されている。左方カメラ341、右方カメラ342及び後方カメラ343は、制御システム1に接続されており、各々で撮像された画像を制御システム1に出力する。
図3は、作業機械3を上方から見た平面図であって、作業機械3の周囲に設定された監視エリアA1、検知対象物Ob1、並びに作業機械3の機体30(左方カメラ341、右方カメラ342及び後方カメラ343を含む)を模式的に表している。
【0029】
左方カメラ341、右方カメラ342及び後方カメラ343は、それぞれ旋回部32の運転部321に搭乗したオペレータから見て、左方、右方及び後方となる監視エリアA1を撮像できるように、運転部321を基準に左方、右方及び後方に向けて設置される。つまり、監視エリアA1は、
図3に示すように、複数(ここでは3つ)の小エリアA11,A12,A13を含み、左方カメラ341は、このうち運転部321に搭乗したオペレータから見て左方となる小エリアA11(左方エリア)を撮像する。同様に、右方カメラ342は、運転部321に搭乗したオペレータから見て右方となる小エリアA12(右方エリア)を撮像し、後方カメラ343は、運転部321に搭乗したオペレータから見て後方となる小エリアA13(後方エリア)を撮像する。これにより、オペレータにとって死角となりやすい、側方(左方及び右方)並びに後方を、左方カメラ341、右方カメラ342及び後方カメラ343でカバーすることが可能となる。
【0030】
図2では、本実施形態に係る作業機械3の油圧回路及び電気回路(電気的な接続関係)を模式的に示す。
図2では、実線が高圧の(作動油用の)油路、点線が低圧の(パイロット油用の)油路、一点鎖線の矢印が電気信号の経路を示す。さらに、カットオフレバー350とカットオフスイッチ353との間の太線(実線)は、カットオフレバー350とカットオフスイッチ353との間の物理的な連結を示す。
【0031】
図2に示すように、作業機械3は、油圧ポンプ41、油圧モータ43及び油圧シリンダ44に加えて、パイロットポンプ42、リモコン弁45、制御弁46、方向切換弁(コントロールバルブ)47、第1制限部48及び第2制限部49等を備えている。作業機械3は、電源351、カットオフレバー350、カットオフスイッチ353、音出力部36及び切替操作部37等を更に備えている。
図2では走行部31の油圧モータ43のみ図示しているが、旋回部32の油圧モータについても同様の油圧回路が構成されている。また、
図2では、ブーム332の駆動用の1つの油圧シリンダ44のみ図示しているが、アーム333又はバケット331等の駆動用の油圧シリンダ44についても同様の油圧回路が構成されている。
【0032】
エンジンにより駆動される油圧ポンプ41からの作動油は、走行部31の油圧モータ43、旋回部32の油圧モータ、及び作業部33の油圧シリンダ44等に供給される。これにより、油圧モータ43及び油圧シリンダ44等の油圧アクチュエータが駆動される。
【0033】
油圧モータ43及び油圧シリンダ44等の油圧アクチュエータには、油圧ポンプ41からの作動油の方向及び流量を切換可能なパイロット式の方向切換弁47が設けられている。方向切換弁47は、パイロットポンプ42から入力指令となるパイロット油が供給されて駆動される。
【0034】
ここで、例えば、走行部31の油圧モータ43に対応する方向切換弁47へのパイロット油の供給路には、リモコン弁45が設けられている。リモコン弁45は、操作装置35(操作レバー)の操作に応じて走行部31の走行操作指令を出力する。走行操作指令は、走行部31の走行動作(前進又は後退等)を指示する。
【0035】
同様に、作業部33の油圧シリンダ44に対応する方向切換弁へのパイロット油の供給路にも、リモコン弁45が設けられている。このリモコン弁45は、操作装置35(操作レバー)の操作に応じて作業部33の作業操作指令を出力する。作業操作指令は、作業部33の展開動作及び縮小動作等を指示する。さらに、旋回部32の油圧モータに対応する方向切換弁へのパイロット油の供給路にも、リモコン弁が設けられている。このリモコン弁は、操作装置35(操作レバー)の操作に応じて旋回部32の旋回操作指令を出力する。旋回操作指令は、旋回部32の旋回動作(左旋回又は右旋回等)を指示する。
【0036】
さらに、各方向切換弁47へのパイロット油の供給路には、第1制限部48が設けられている。第1制限部48は、第1制御弁481を有している。第1制御弁481は、いずれも電磁式の制御弁(電磁弁)からなり、それぞれリモコン弁45とパイロットポンプ42との間に直列に挿入されている。各第1制御弁481は、制御システム1に接続されており、制御システム1からの制御信号(供給電流)に応じて動作し、パイロットポンプ42からリモコン弁45に供給されるパイロット油の流量を調節する。本実施形態では、第1制限部48は、少なくとも第1制御弁481を閉じることにより、リモコン弁45に供給されるパイロット油の流路を遮断し、当該リモコン弁45に対応する油圧アクチュエータ(油圧モータ43及び油圧シリンダ44等)への油圧ポンプ41からの作動油の供給を停止することが可能である。油圧ポンプ41からの作動油の供給が停止した油圧アクチュエータは駆動不能となり、当該油圧アクチュエータは、操作装置35の操作によらずに、強制的に停止する。
【0037】
このような方向切換弁47、リモコン弁45及び第1制限部48は、走行部31の油圧モータ43及びブーム332の駆動用の油圧シリンダ44だけでなく、旋回部32の油圧モータ及びアーム333又はバケット331等の駆動用の油圧シリンダ44の油圧回路にも設けられている。そのため、例えば操作装置35の操作に応じて、走行部31、旋回部32及び作業部33を動作させることが可能である。
【0038】
さらに、第1制限部48(第1制御弁481)から見てパイロット油の上流側には、カットオフバルブとしての制御弁46が設けられている。制御弁46は、(電磁式)比例制御弁からなり、パイロットポンプ42と複数の第1制御弁481との間に挿入されている。制御弁46は、カットオフスイッチ353を介して電源351に接続されており、電源351からの供給電流に応じて動作する。ここで、制御弁46は、通電状態、つまり制御信号としての電流が供給されている状態で、パイロット油の流路を遮断し、非通電状態、つまり制御信号としての電流が遮断されている状態で、パイロット油の流路を開放する。そのため、制御弁46に供給電流が供給されることで、油圧アクチュエータ(油圧シリンダ44等)が駆動不能となり、操作装置35の操作によらずに、油圧アクチュエータが強制的に停止する。
【0039】
カットオフスイッチ353は、カットオフレバー350に連動している。カットオフレバー350は、機体30の運転部321に配置されており、ユーザ(オペレータ)による操作入力を受け付ける。本実施形態では一例として、カットオフレバー350は上下方向D1に沿って操作可能である。カットオフレバー350が可動範囲の上端位置である「上げ位置」にあればカットオフスイッチ353は「オン」であり、カットオフレバー350が可動範囲の下端位置である「下げ位置」にあればカットオフスイッチ353は「オフ」である。そして、カットオフスイッチ353は制御システム1に接続されており、カットオフスイッチ353のオン/オフが制御システム1にて監視されている。
【0040】
したがって、カットオフレバー350が「下げ位置」にあってロック解除状態にあれば、制御弁46が非通電状態となり、操作装置35の操作によって油圧アクチュエータ(油圧シリンダ44等)が駆動する。これに対して、カットオフレバー350が「上げ位置」にあってロック状態にあれば、制御弁46が通電状態となり、操作装置35の操作によらずに油圧アクチュエータが強制的に停止する。そのため、油圧アクチュエータ(油圧モータ43等)を駆動するには、ユーザ(オペレータ)は、カットオフレバー350を「下げ位置」(ロック解除状態)に操作する必要がある。
【0041】
さらに、走行部31、旋回部32及び作業部33のいずれについても、油圧アクチュエータ(油圧モータ43、油圧シリンダ44等)に油圧ポンプ41から作動油が供給されることで動作するので、カットオフレバー350が「上げ位置」(ロック状態)にあれば、走行部31、旋回部32及び作業部33のいずれもが駆動不能となる。つまり、カットオフレバー350が「上げ位置」にあれば、走行部31、旋回部32及び作業部33の全てについて、強制的に駆動不能な状態とされる。
【0042】
要するに、カットオフスイッチ353は、オンのときに作業機械3の動作が制限(禁止を含む)される「ロック状態」にあり、オフのときに作業機械3の動作を制限しない「ロック解除状態」にある。そして、カットオフレバー350が「上げ位置」にあってカットオフスイッチ353がロック状態(オン)にあれば、操作装置35の操作によらずに作業機械3の動作が強制的に制限される。カットオフレバー350は、このように作業機械3の動作をロックする際に操作されるレバーであって、ゲートロックレバーと同義である。また、第1制御弁481及び制御弁46は、本実施形態では、いずれも(電磁式)比例制御弁であることとするが、これに限らず、例えば、流路の開放/遮断を切替可能な開閉弁であってもよい。
【0043】
また、油圧ポンプ41から供給される作動油の流量は固定的ではなく、適宜の手段により変更可能(可変)である。本実施形態に係る作業機械3は、第2制限部49を備えており、第2制限部49にて作動油の流量を調節可能である。本実施形態では一例として、油圧ポンプ41は、駆動軸の1回転に対して吐出する作動油量を変更可能な可変容量形ポンプからなる。
【0044】
第2制限部49は、制御信号入力ポート491と、電磁比例弁492と、を有する。制御信号入力ポート491は、可変容量形ポンプからなる油圧ポンプ41の作動油の吐出量(流量)を調節するための制御信号が入力されるポートである。具体的に、制御信号入力ポート491には、パイロットポンプ42から制御信号となるパイロット油が供給され、パイロット油の供給量(パイロット圧)に応じて油圧ポンプ41の作動油の吐出量が変化する。電磁比例弁492は、制御信号入力ポート491へのパイロット油の供給路上に設けられた電磁式の比例制御弁であって、制御信号入力ポート491に入力されるパイロット圧を調節する。電磁比例弁492は、制御システム1に電気的に接続されており、制御システム1からの制御信号(供給電流)に応じて、制御信号入力ポート491に入力されるパイロット圧を調節し、油圧ポンプ41の作動油の吐出量を変化させる。
【0045】
このように、第2制限部49は、作動油を供給する油圧ポンプ41の流量、及びパイロット圧の少なくとも一方を制御することで、油圧ポンプ41から吐出される作動油の流量を調節可能である。第2制限部49は、油圧ポンプ41から吐出される作動油の流量を、無段階で連続的に変化させてもよいし、段階的(例えば2段階、5段階又は10段階等)に変化させてもよい。本実施形態では、第2制限部49は、少なくとも電磁比例弁492を閉じることにより、制御信号入力ポート491に供給されるパイロット油の流路を遮断し、油圧ポンプ41からの作動油の供給を停止することが可能である。油圧ポンプ41からの作動油の供給が停止すると、走行部31の油圧モータ43、旋回部32の油圧モータ、及び作業部33の油圧シリンダ44等の油圧アクチュエータは全て停止する。
【0046】
制御システム1は、CPU(Central Processing Unit)等の1以上のプロセッサと、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等の1以上のメモリとを有するコンピュータシステムを主構成とし、種々の処理(情報処理)を実行する。本実施形態では、制御システム1は、作業機械3全体の制御を行う統合コントローラであって、例えば、電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)からなる。ただし、制御システム1は、統合コントローラと別に設けられていてもよい。制御システム1について詳しくは「[2]制御システムの構成」の欄で説明する。
【0047】
表示装置2は、機体30の運転部321に配置されており、ユーザ(オペレータ)による操作入力を受け付け、ユーザに種々の情報を出力するためのユーザインターフェースである。表示装置2は、例えば、ユーザの操作に応じた電気信号を出力することにより、ユーザによる各種の操作を受け付ける。これにより、ユーザ(オペレータ)は、表示装置2に表示される表示画面Dp1(
図4参照)を視認でき、また、必要に応じて表示装置2を操作することが可能である。
【0048】
表示装置2は、
図2に示すように、制御部21と、操作部22と、表示部23と、を備えている。表示装置2は、制御システム1と通信可能に構成されており、制御システム1との間でデータの授受が可能である。本実施形態では一例として、表示装置2は作業機械3に用いられる専用のデバイスである。
【0049】
制御部21は、制御システム1からのデータに従って、表示装置2を制御する。具体的には、制御部21は、操作部22で受け付けたユーザの操作に応じた電気信号を出力したり、制御システム1で生成される表示画面Dp1を表示部23に表示したりする。
【0050】
操作部22は、表示部23に表示される表示画面Dp1に対するユーザ(オペレータ)による操作入力を受け付けるためのユーザインターフェースである。操作部22は、例えば、ユーザU1(
図4参照)の操作に応じた電気信号を出力することにより、ユーザU1による各種の操作を受け付ける。本実施形態では一例として、操作部22は、
図4に示すように、機械式の複数(ここでは6つ)の押釦スイッチ221~226を含む。これら複数の押釦スイッチ221~226は、表示部23の表示領域の周縁に沿うように、表示領域に近接して(
図4の例では下方に)配置されている。これら複数の押釦スイッチ221~226は、後述する表示画面Dp1に表示される項目に対応付けられており、複数の押釦スイッチ221~226のいずれかが操作されることにより、表示画面Dp1のいずれかの項目が操作(選択)される。
【0051】
また、操作部22は、タッチパネル及び操作ダイヤル等を含んでいてもよい。この場合においても、操作部22に対する操作により、表示画面Dp1のいずれかの項目が操作(選択)されることになる。
【0052】
表示部23は、各種の情報を表示する液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイのような、ユーザU1(オペレータ)に情報を提示するためのユーザインターフェースである。表示部23は、ユーザに対して各種の情報を表示により提示する。本実施形態では一例として、表示部23は、バックライト付きのフルカラーの液晶ディスプレイであって、
図4に示すように、横方向に長い「横長」の表示領域を有している。
【0053】
表示装置2は、作業機械3を操作するユーザU1(オペレータ)に向けて表示画面Dp1にて種々の情報を提示する。つまり、作業機械3を操作するユーザU1は、表示装置2に表示される表示画面Dp1を見ることで、作業機械3に関連する種々の情報を視覚的に得ることが可能である。一例として、表示装置2に、冷却水温及び作動油温等の作業機械3の稼働状態に関する情報が表示されることで、ユーザU1は、作業機械3の操作に必要な作業機械3の稼働状態に関する情報を、表示装置2で確認することができる。また、表示装置2は、左方カメラ341、右方カメラ342及び後方カメラ343にて撮像される作業機械3の周辺画像(監視エリアA1の画像)についても、表示画面Dp1に表示することができる。これにより、ユーザU1(オペレータ)は、作業機械3を操作する際に、例えば、運転部321からの死角となりやすい作業機械3の側方及び後方等の状況を、表示装置2に表示される表示画面Dp1にて確認することができる。
【0054】
音出力部36は、ブザー又はスピーカ等を含み、電気信号を受けて音を出力する。音出力部36は、制御システム1に接続されており、制御システム1からの音制御信号に応じて、ビープ音又は音声等の音を出力する。本実施形態では、音出力部36は、表示装置2と同様に機体30の運転部321に設けられている。音出力部36は、表示装置2と一体に設けられていてもよい。
【0055】
切替操作部37は、ユーザ(オペレータ)による操作入力を受け付けるためのユーザインターフェースである。切替操作部37は、一例として押釦スイッチからなり、制御システム1に接続されており、切替操作部37からの操作信号が制御システム1に出力される。本実施形態では、切替操作部37は、表示装置2と同様に機体30の運転部321に設けられている。切替操作部37は、表示装置2と一体に設けられていてもよく、この場合、例えばタッチパネルにて切替操作部37が具現化されてもよい。
【0056】
また、機体30は、上述した構成に加えて、通信端末、燃料タンク及びバッテリ等を更に備えている。さらには、機体30には、冷却水温センサ、作動油温センサ、エンジンの回転数を計測する回転数計、及び稼働時間を計測するアワーメータ等、機体30の稼働状態を監視するためのセンサ類が備わっている。
【0057】
[2]制御システムの構成
次に、本実施形態に係る制御システム1の構成について、
図2を参照して説明する。制御システム1は、機体30(走行部31、旋回部32及び作業部33等を含む)の各部を制御する。本実施形態では、上述したように、作業機械3の機体30には、作業機械3を駆動するための「駆動部」として、走行部31の油圧モータ43、旋回部32の油圧モータ、及び作業部33の油圧シリンダ44等の油圧アクチュエータが搭載されている。制御システム1は、作業機械3の構成要素であって、機体30等と共に作業機械3を構成する。言い換えれば、本実施形態に係る作業機械3は、少なくとも制御システム1と、駆動部(油圧モータ43及び油圧シリンダ44等の油圧アクチュエータ)が搭載される機体30(走行部31、旋回部32及び作業部33を含む)と、を備えている。
【0058】
制御システム1は、
図2に示すように、表示処理部11と、データ取得部12と、検知部13と、牽制処理部14と、変更処理部15と、規制処理部16と、を備えている。本実施形態では一例として、制御システム1は1以上のプロセッサを有するコンピュータシステムを主構成とするので、1以上のプロセッサが作業機械用制御プログラムを実行することにより、これら複数の機能部(表示処理部11等)が実現される。制御システム1に含まれる、これら複数の機能部は、複数の筐体に分散して設けられていてもよいし、1つの筐体に設けられていてもよい。
【0059】
制御システム1は、機体30の各部に設けられたデバイスと通信可能に構成されている。つまり、制御システム1には、少なくとも第1制限部48(第1制御弁481)、第2制限部49(電磁比例弁492)、左方カメラ341、右方カメラ342、後方カメラ343、表示装置2、音出力部36及び切替操作部37等が接続されている。これにより、制御システム1は、第1制限部48、第2制限部49、表示装置2及び音出力部36等を制御したり、左方カメラ341、右方カメラ342及び後方カメラ343等の撮像画像を取得したりすることが可能である。ここで、制御システム1は、各種の情報(データ)の授受を、各デバイスと直接的に行ってもよいし、中継器等を介して間接的に行ってもよい。
【0060】
表示処理部11は、作業機械3に関連する情報を含む表示画面Dp1を表示装置2に表示させる表示処理を実行する。具体的には、表示処理部11は、データ取得部12で取得されるデータ等に基づいて表示画面Dp1を生成し、表示装置2を制御することによって、表示画面Dp1を表示装置2の表示部23に表示させる。さらに、表示処理部11は、表示装置2の操作部22が受け付けた操作に応じて動作する。
【0061】
ここで、表示画面Dp1に含まれる作業機械3に関連する情報は、例えば、燃料の残量、冷却水温、作動油温、及び吊り作業時の吊り下げ重量等の、作業機械3の稼働状態に関する稼働情報を含む。つまり、表示処理部11は、作業機械3の稼働状態に関する稼働情報を含む表示画面Dp1を、表示装置2に表示させることができる。さらに、表示画面Dp1に含まれる作業機械3に関連する情報は、左方カメラ341、右方カメラ342及び後方カメラ343で撮像される撮像画像Im11,Im12,Im13(
図5参照)を表示画面Dp1に表示させる。つまり、表示処理部11は、作業機械3の周囲の監視エリアA1(各小エリアA11,A12,A13)の撮像画像Im11,Im12,Im13を含む表示画面Dp1を、表示装置2に表示させることができる。
【0062】
本開示でいう表示画面Dp1等の「画面」は、表示装置2にて表示される映像(画像)を意味し、図像、図形、写真、テキスト及び動画等を含む。すなわち、制御システム1は、例えば、冷却水温及び作動油温等の作業機械3の稼働状態に関する情報を表す図像等を含む表示画面Dp1を、表示装置2に表示させることが可能である。ここで、表示画面Dp1が動画等を含む場合には、表示画面Dp1は一定の映像ではなく、刻一刻と変化する映像を含む。
【0063】
データ取得部12は、作業機械3の周囲の監視エリアA1の撮像画像等、作業機械3に関連する各種のデータを取得するデータ取得処理を実行する。本実施形態では、データ取得部12は、左方カメラ341、右方カメラ342及び後方カメラ343の出力を、左方カメラ341、右方カメラ342及び後方カメラ343から定期的又は不定期に取得する。つまり、データ取得部12は、作業機械3の周囲の監視エリアA1(各小エリアA11,A12,A13)の画像データ(撮像画像)を取得する。
【0064】
さらに、データ取得部12は、データ取得処理により、少なくとも切替操作部37の操作状態を含む、作業機械3の各部の動作状態に関する情報を、定期的又は不定期に取得可能である。ここで、データ取得部12は、燃料の残量センサ、冷却水温センサ及び作動油温センサの出力(センサ信号)についても取得可能である。データ取得部12は、各種のデータを、各種センサ等(カメラを含む)から直接的に取得してもよいし、電子制御ユニット等を介して間接的に取得してもよい。データ取得部12で取得されたデータは、例えば、メモリ等に記憶される。
【0065】
検知部13は、作業機械3の周囲の監視エリアA1における検知対象物Ob1を検知する。つまり、検知部13は、監視エリアA1における検知対象物Ob1の存否(有無)を判断し、監視エリアA1に検知対象物Ob1が存在するか否かを表す検知結果を出力する。本実施形態では一例として、検知対象物Ob1は「人」である。つまり、作業機械3が移動し、又は作業機械3の周囲の「人」が移動した結果、作業機械3の周囲の監視エリアA1に「人」が侵入した場合、検知部13は当該「人」を検知対象物Ob1として検知する。監視エリアA1に複数の検知対象物Ob1が存在する場合には、検知部13は、検知対象物Ob1の数(人数)も含めて検知してもよい。
【0066】
本実施形態では、検知部13は、左方カメラ341、右方カメラ342及び後方カメラ343の出力(画像データ)に基づいて、監視エリアA1における検知対象物Ob1を検知する。具体的には、検知部13は、データ取得部12で取得された画像データに対して、画像処理を施すことにより、画像中の特徴量を抽出し、当該特徴量に基づいて、画像に検知対象物Ob1(本実施形態では「人」)が写り込んでいるか否かを判断する。ここで、画像に検知対象物Ob1が写り込んでいる場合、検知部13は、左方カメラ341、右方カメラ342及び後方カメラ343のいずれで撮像された画像に検知対象物Ob1が写り込んでいるかを判断する。つまり、検知部13は、左方カメラ341で撮像される小エリアA11、右方カメラ342で撮像される小エリアA12、及び後方カメラ343で撮像される小エリアA13のいずれに検知対象物Ob1が存在するかを区別して、検知対象物Ob1の検知を行う。
【0067】
さらに、本実施形態では、検知部13は、機体30から検知対象物Ob1までの距離についても検知可能である。つまり、検知部13は、画像に検知対象物Ob1が写り込んでいる場合、検知対象物Ob1の画像上での位置に基づいて、機体30から検知対象物Ob1までの距離を算出する。そのため、検知部13では、例えば、機体30からある距離(例えば、2m、3m、4m又は5m等)以内に存在する検知対象物Ob1を検知することが可能である。言い換えれば、検知部13は、左方カメラ341、右方カメラ342及び後方カメラ343で撮像される全域を監視エリアA1とするだけでなく、任意に設定される大きさ及び形状の監視エリアA1の検知対象物Ob1を検知することも可能である。
【0068】
ここで、検知部13は、検知対象物Ob1を識別する識別処理を実行可能に構成されている。本開示でいう「識別」は、事物の種類及び性質等を見分けることを意味する。すなわち、
図6に示すように、検知部13は、検知対象物Ob1として、一人の「作業者」からなる第1対象物Ob11と、他の「作業者」からなる第2対象物Ob12と、を互いに区別して検知することが可能である。例えば、
図6に示すように、まずは第1対象物Ob11としての作業者が小エリアA12に侵入し(
図6の左側の図)、その後、機体30に左方から近づいた別の作業者が小エリアA11に侵入する(
図6の右側の図)ような場合がある。この場合、検知部13は、最初に検知した作業者(第1対象物Ob11)と後で検知した作業者(第2対象物Ob12)とを識別して検知する。結果的に、検知部13は、監視エリアA1に作業者が2人存在することを検知できる。
【0069】
牽制処理部14は、検知部13の検知結果に基づいて、作業機械3の動作を牽制する牽制処理を実行する。本実施形態では、検知部13の検知結果が、監視エリアA1に検知対象物Ob1(ここでは人)の存在を示す結果である場合に、牽制処理部14は牽制処理を実行する。本開示でいう「牽制処理」は、作業機械3の動作に関し、何かしら抑制する方向に作用する処理を意味する。一例として、牽制処理は、作業機械3を操作するユーザU1(オペレータ)に対して、音又は光(表示を含む)により警告を行うことで、作業機械3の動作を間接的に牽制する処理を含む。さらに、牽制処理は、作業機械3の走行部31、旋回部32及び作業部33等を制御することで、作業機械3の動作を直接的に牽制する処理を含む。
【0070】
本実施形態では、牽制処理部14は、警報処理部141と、制限処理部142と、を含んでいる。
【0071】
警報処理部141は、監視エリアA1に検知対象物Ob1が存在する場合に、音又は光(表示を含む)によりユーザU1(オペレータ)に警報を行うことで、作業機械3の動作を間接的に牽制する。ここでは一例として、警報処理部141は、監視エリアA1に検知対象物Ob1が存在する場合に、音出力部36を制御することにより、音出力部36から報知音を出力させる。すなわち、本実施形態では、牽制処理は、報知音を出力する警報処理を含む。報知音は、単なるビープ音であってもよいし、「ご注意ください」等の音声であってもよい。さらに、報知音は、検知部13の検知結果(機体30から検知対象物Ob1までの距離等)に応じて変化してもよい。これにより、作業機械3を操作するユーザU1に対して、報知音による警告を行うことで、作業機械3の動作を間接的に牽制できるので、作業機械3の操作の自由度が高い。つまり、ユーザU1が検知対象物Ob1に注意して作業機械3を操作することで、検知対象物Ob1との接触を回避しつつも作業機械3の動作を継続することができる。
【0072】
制限処理部142は、監視エリアA1に検知対象物Ob1が存在する場合に、作業機械3の動作を制限する制限処理を実行し、作業機械3の動作を直接的に牽制する。本開示でいう「制限処理」は、作業機械3の動作に関し、何かしら制限(抑制)する方向に作用する処理を意味する。例えば、制限処理は、作業機械3の走行部31、旋回部32及び作業部33等を制御することで、作業機械3の動作を直接的に制限する処理を含む。一例として、制限処理は、走行部31の走行動作を禁止する(走行動作不能とする)処理、旋回部32の旋回動作を禁止する(旋回動作不能とする)処理、及び作業部33の動作を禁止する(作業不能とする)処理等を含む。これにより、ユーザU1(オペレータ)の操作によらずに、作業機械3の動作を強制的に制限することができる。つまり、作業機械3が動作することによる機体30と検知対象物Ob1との接触を回避できる。
【0073】
本実施形態では、制限処理部142は、第1制限部48と第2制限部49との少なくとも一方を制御する。制限処理部142は、例えば、第1制限部48を作動させ、第1制御弁481を閉じることによって、走行部31の油圧モータ43、旋回部32の油圧モータ、及び作業部33の油圧シリンダ44等の個々の駆動部(油圧アクチュエータ)の動作を制限する。つまり、制限処理部142が第1制限部48を作動させると、第1制御弁481がパイロット油の流路を遮断し、油圧アクチュエータへの油圧ポンプ41からの作動油の供給を停止することにより、油圧アクチュエータの動作を強制的に停止させる。
【0074】
さらに、制限処理部142は、第2制限部49を作動させ、電磁比例弁492を閉じることによって、走行部31の油圧モータ43、旋回部32の油圧モータ、及び作業部33の油圧シリンダ44等の複数の駆動部(油圧アクチュエータ)の動作を一括して制限する。つまり、制限処理部142が第2制限部49を作動させると、電磁比例弁492が油圧ポンプ41からの作動油の吐出量を制限し、油圧アクチュエータへの油圧ポンプ41からの作動油の供給を停止することにより、油圧アクチュエータの動作を強制的に停止させる。
【0075】
ここで、制限処理部142が実行する制限処理は、少なくとも旋回部32の旋回動作を制限する処理を含む。具体的に、制限処理部142は、第1制御弁481又は電磁比例弁492を閉じて油圧ポンプ41からの作動油の供給を停止することで、少なくとも旋回部32の油圧モータが駆動不能となり、旋回部32の旋回動作中であれば旋回部32が緊急停止し、旋回部32の旋回動作中でなければ旋回部32の旋回動作が禁止される。これにより、ユーザU1(オペレータ)の死角となる監視エリアA1に検知対象物Ob1が存在する場合に、旋回部32が旋回することによる機体30と検知対象物Ob1との接触を回避できる。
【0076】
変更処理部15は、牽制処理に係る機能の牽制レベルを変更する変更処理を実行する。本開示でいう「牽制レベル」は、牽制処理に係る機能の程度(度合い)を意味する。本実施形態では、変更処理部15にて変更可能な牽制レベルは、牽制処理の有効/無効を含む。そのため、変更処理部15は、少なくとも牽制処理部14の有効と無効とを切り替える。ここで、牽制処理が「有効」である場合には、牽制レベルは「1」であって、牽制処理が「無効」である場合には、牽制レベルは「0」である。そのため、牽制レベルが低レベル側に変更されることで、牽制処理を有効から無効に切替可能である。反対に、牽制レベルが高レベル側に変更されることで、牽制処理を無効から有効に切替可能である。
【0077】
要するに、牽制処理部14は常に有効という訳ではなく、有効/無効の切り替えが可能である。牽制処理部14が有効であれば、監視エリアA1に検知対象物Ob1が存在する場合に、牽制処理部14による牽制処理が実行される。一方、牽制処理部14が無効であれば、監視エリアA1に検知対象物Ob1が存在する場合でも、牽制処理部14による牽制処理は実行されない。そのため、例えば、ユーザU1(オペレータ)が検知対象物Ob1の存在を認識した上で、牽制処理を無効にすることで、監視エリアA1に検知対象物Ob1が存在する場合でも作業機械3による作業を継続することが可能である。
【0078】
本実施形態では一例として、牽制処理に係る機能(牽制処理部14)の有効と無効との切り替え(牽制レベルの変更)は、ユーザU1(オペレータ)が切替操作部37を操作することによって行われる。つまり、牽制処理が有効である状態で、ユーザU1が、切替操作部37を操作すると、変更処理部15は、この操作を受けて、牽制処理に係る機能を無効にする。一方、牽制処理が無効である状態で、ユーザU1が、切替操作部37を操作すると、変更処理部15は、この操作を受けて、牽制処理に係る機能を有効にする。このように、本実施形態では、変更処理部15は、ユーザU1の操作に応じて牽制レベルを変更する。これにより、例えば、ユーザU1(オペレータ)が検知対象物Ob1の存在を認識したときに、ユーザU1が自らの意思により牽制処理を無効にすることで、監視エリアA1に検知対象物Ob1が存在する場合でも作業機械3による作業を継続することが可能となる。
【0079】
ここにおいて、変更処理部15は、特定条件を満たす場合に、牽制レベルを高レベル側に変更する。本開示でいう「特定条件」は、変更処理部15が牽制レベルを高レベル側に自動的に変更するための条件であって、予め設定されている。そのため、変更処理部15は、特定条件を満たすか否かの判定を行い、特定条件を満たす場合には、牽制レベルを高レベル側、つまり牽制処理が「無効」にあれば「有効」へと自動的に切り替える。一方、特定条件を満たさなければ、変更処理部15は、牽制処理の「無効」に維持する。特定条件について詳しくは、「[3.3]変更処理」の欄で説明する。
【0080】
規制処理部16は、規制条件を満たす場合に、変更処理部15による牽制レベルの低レベル側への変更を規制する規制処理を実行する。本開示でいう「規制条件」は、規制処理部16が規制処理を実行するための条件であって、予め設定されている。そのため、規制処理部16は、規制条件を満たすか否かの判定を行い、規制条件を満たす場合には、変更処理部15による牽制レベルの低レベル側への変更を規制、つまり牽制処理を「有効」から「無効」への切り替えを禁止する。さらに、牽制処理が元々「無効」である場合に、規制条件を満たすと、規制処理部16は、変更処理部15にて牽制処理を「無効」から「有効」へと切り替える。規制条件について詳しくは、「[3.3]変更処理」の欄で説明する。
【0081】
ところで、検知部13は、制御システム1に必須の構成ではない。例えば、制御システム1は、外部の検知部の検知結果を取得し、当該検知結果に基づいて牽制処理部14が牽制処理を実行するように構成されていてもよい。
【0082】
[3]作業機械の制御方法
以下、
図5~
図9を参照しつつ、主として制御システム1によって実行される作業機械3の制御方法(以下、単に「制御方法」という)の一例について説明する。
【0083】
本実施形態に係る制御方法は、コンピュータシステムを主構成とする制御システム1にて実行されるので、言い換えれば、作業機械用制御プログラム(以下、単に「制御プログラム」という)にて具現化される。つまり、本実施形態に係る制御プログラムは、制御方法に係る各処理を1以上のプロセッサに実行させるためのコンピュータプログラムである。このような制御プログラムは、例えば、制御システム1及び表示装置2によって協働して実行されてもよい。
【0084】
ここで、制御システム1は、制御プログラムを実行させるための予め設定された特定の開始操作が行われた場合に、制御方法に係る下記の各種処理を実行する。開始操作は、例えば、作業機械3のエンジンの起動操作等である。一方、制御システム1は、予め設定された特定の終了操作が行われた場合に、制御方法に係る下記の各種処理を終了する。終了操作は、例えば、作業機械3のエンジンの停止操作等である。
【0085】
[3.1]表示画面
ここではまず、本実施形態に係る制御方法によって表示装置2の表示部23に表示される表示画面Dp1の構成について説明する。
図5等の表示装置2の表示部23に表示される表示画面Dp1を示す図面において、領域を表す一点鎖線、引出線及び参照符号は、いずれも説明のために付しているに過ぎず、実際に表示装置2に表示される訳ではない。
【0086】
表示画面Dp1は、
図5に示すように、第1領域R1、第2領域R2、第3領域R3、第4領域R4、第5領域R5、第6領域R6、第7領域R7、第8領域R8、第9領域R9及び第10領域R10を含む。
【0087】
具体的には、表示画面Dp1は、縦方向(上下方向)に4つの領域に分割されている。そして、上から3つの領域は、それぞれ更に横方向(左右方向)に3つの領域に分割されている。これにより、表示画面Dp1は、計10個の領域に分割される。そして、上から2段目の領域は、左から順に、第1領域R1、第2領域R2、第3領域R3となる。最下段の領域は第4領域R4となる。さらに、上から3段目の領域は、左から順に、第5領域R5、第6領域R6、第7領域R7となり、最上段の領域は、左から順に、第8領域R8、第9領域R9、第10領域R10となる。縦方向のサイズは、縦方向に分割された4つの領域の中では、上から2段目の領域(第1領域R1、第2領域R2、第3領域R3)が最も広い。横方向のサイズは、横方向に分割された3つの領域の中では、真ん中の領域(第2領域R2、第6領域R6、第9領域R9)が最も広い。
【0088】
第1領域R1は、縦方向に長い矩形状の領域である。第1領域R1には、例えば、エンジンの燃料(例えば軽油)の残量に関する残量情報G1が表示される。表示処理部11は、残量センサの出力(センサ信号)等に基づいて、表示画面Dp1中の残量情報G1を生成する。
【0089】
第2領域R2は、横方向に長い矩形状の領域である。第2領域R2には、監視エリアA1の撮像画像Im11,Im12,Im13、及び検知部13の検知結果を表す検知結果情報I1,I2等が表示される。撮像画像Im11は、左方カメラ341で撮像される運転部321の左方となる小エリアA11の画像であって、撮像画像Im12は、右方カメラ342で撮像される運転部321の右方となる小エリアA12の画像である。撮像画像Im13は、後方カメラ343で撮像される運転部321の後方となる小エリアA13の画像である。
【0090】
制御システム1は、検知部13で取得される撮像画像Im11,Im12,Im13をリアルタイムで表示させる。第2領域R2の中央部には、上方から見た機体30を模したアイコンIm10が表示されている。アイコンIm10は、機体30から見た左方カメラ341、右方カメラ342及び後方カメラ343の撮像範囲(小エリアA11,A12,A13)の位置関係を、模式的に表している。
【0091】
検知結果情報I1は、撮像画像Im11,Im12,Im13のうち、検知対象物Ob1が含まれる撮像画像を強調表示する帯状(枠状)の図像である。検知結果情報I2は、運転部321から見て検知対象物Ob1が存在する方向を示す図像である。
図5の例では、左方カメラ341で撮像される運転部321の左方となる小エリアA11に検知対象物Ob1(ここでは「人」)が存在する場合を想定している。そのため、撮像画像Im11,Im12,Im13のうち撮像画像Im11が検知結果情報I1にて強調表示され、かつ撮像画像Im11の下方に運転部321の左方に検知対象物Ob1が存在することを示す検知結果情報I2が表示されている。
【0092】
検知結果情報I1,I2の表示態様は、監視エリアA1における検知対象物Ob1の位置によって変更されることが好ましい。例えば、検知結果情報I1,I2の表示色、サイズ、又は表示パターン(点滅パターン等を含む)等の表示態様が、監視エリアA1における検知対象物Ob1の位置によって変更される。例えば、検知対象物Ob1が機体30に近いほど、検知結果情報I1,I2の表示態様が目立つ表示色に変更され、一例として、検知対象物Ob1が機体30に近づくと、検知結果情報I1,I2の表示色が黄色から赤色に変化する。
【0093】
このように、表示画面Dp1には、監視エリアA1の撮像画像Im11,Im12,Im13が表示されるだけでなく、監視エリアA1における検知対象物Ob1の検知結果についても検知結果情報I1,I2として表示される。そのため、オペレータ(ユーザU1)は、表示画面Dp1を見ることで、監視エリアA1における検知対象物Ob1の有無(存否)を容易に確認できる。これにより、オペレータ(ユーザU1)は、運転部321からの死角となりやすい作業機械3の側方及び後方等の状況を、表示装置2に表示される表示画面Dp1にて確認することができる。したがって、検知結果情報I1,I2だけが表示される構成に比較して、監視エリアA1内に検知対象物Ob1が存在する場合、検知対象物Ob1の状況を表示画面Dp1にて詳細に把握しやすくなる。
【0094】
第3領域R3には、作業機械3の各部の稼働状態に応じた図像(アイコン)Im1が表示される。第3領域R3には、複数の図像Im1を表示可能であって、個々の図像Im1のデザイン(絵柄)によって、例えば、バッテリ、シートベルト、冷却水温、作動油温等の、いずれの状態を表すかを示す。ここで、各図像Im1は、例えば、表示色又はサイズ等の表示態様によって、稼働状態を示す。表示処理部11は、作業機械3の各部の稼働状態を検知する種々のセンサ(冷却水温センサ及び作動油温センサを含む)の出力を用いて、作業機械3の各部の状態を判断する。そして、表示処理部11は、いずれかの部位で異常値が検知された場合には、その部位の図像Im1の表示色等の表示態様を変化させる等により、警告表示を行う。
【0095】
第4領域R4は、表示画面Dp1の全幅にわたって延びる帯状の領域である。第4領域R4には、表示画面Dp1に対する操作のための各項目が表示される。
図5では一例として、第4領域R4には、「メニュー」、「クレーン」、「モード」、「カメラ」、「PTO」、「切替」の6つの項目が、この順で左から並べて配置されている。これら6つの項目には、その真下に位置する操作部22の6つの押釦スイッチ221~226がそれぞれ対応付けられている。例えば、「メニュー」の項目には押釦スイッチ221が、「クレーン」の項目には押釦スイッチ222が、それぞれ対応付けられている。そのため、例えば、「カメラ」の項目に対応する押釦スイッチ224がユーザU1(
図4参照)により操作されると、「カメラ」の項目が操作(選択)されることになる。
【0096】
第5領域R5には、種々のセンサ(冷却水温センサ及び作動油温センサを含む)にて異常値が検知されていることを示す、警告表示用の図像(アイコン)が表示される。第6領域R6には、例えば、作業機械3において稼働中の作業部33に関する情報が表示される。第7領域R7には、例えば、エンジンの回転数等、作業機械3の稼働状態に関する情報が表示される。第8領域R8には、例えば、現在時刻が表示される。第9領域R9には、例えば、現在表示されている表示画面Dp1が属する項目を示す情報が表示される。第10領域R10には、例えば、作業機械3の稼働時間(アワーメータ)に関する情報が表示される。
【0097】
[3.2]牽制処理
次に、本実施形態に係る制御方法の牽制処理の詳細について説明する。ただし、ここでは、牽制レベルが「1」、つまり牽制処理が「有効」である場合を想定する。
【0098】
本実施形態では、検知部13の検知結果が監視エリアA1に検知対象物Ob1(ここでは人)の存在を示す結果である場合、牽制処理部14は、作業機械3の動作を牽制する牽制処理を実行する。ここで、牽制処理は警報処理及び制限処理を含むところ、基本的に、牽制処理部14は、警報処理及び制限処理の両方を牽制処理として実行する。すなわち、監視エリアA1に検知対象物Ob1が存在する場合、牽制処理部14は、音出力部36から報知音を出力させて作業機械3の動作を間接的に牽制し、かつ、第1制限部48と第2制限部49との少なくとも一方を制御して作業機械3の動作を直接的に牽制する。
【0099】
具体的に、検知部13の検知結果が監視エリアA1に検知対象物Ob1の存在を示す結果である場合、制限処理部142は、第1制限部48を作動させ、所望の駆動部の動作を制限する。一例として、制限処理部142は、走行部31の油圧モータ43に対応する第1制限部48を作動させ、油圧モータ43を停止させる。この例に限らず、制限処理部142は、例えば、走行部31の油圧モータ43、旋回部32の油圧モータ及び作業部33の油圧シリンダ44のうちの1つ以上の駆動部に対応する第1制限部48を作動させ、当該1つ以上の駆動部を停止させてもよい。
【0100】
また、検知部13の検知結果が監視エリアA1に検知対象物Ob1の存在を示す結果である場合、制限処理部142は、第2制限部49を作動させ、全ての駆動部の動作を制限する。つまり、制限処理部142は、第2制限部49の電磁比例弁492を閉じることにより、油圧ポンプ41からの作動油の供給を停止して、走行部31の油圧モータ43、旋回部32の油圧モータ、及び作業部33の油圧シリンダ44等を含む複数の駆動部を全て停止させる。
【0101】
このように、本実施形態に係る制御方法では、制限処理部142は、制限処理として、第1制限部48と第2制限部49との両方を制御するが、この例に限らない。すなわち、制限処理部142は、制限処理として、第1制限部48と第2制限部49との少なくとも一方を制御すればよく、例えば、第1制限部48のみ、又は第2制限部49のみを制御してもよい。
【0102】
そして、牽制処理が「有効」であれば、上述したような牽制処理(警報処理及び制限処理)は、検知部13の検知結果が監視エリアA1に検知対象物Ob1の存在を示している間に亘って継続的に実行される。要するに、監視エリアA1に検知対象物Ob1が侵入すると、牽制処理が実行され、監視エリアA1から検知対象物Ob1が退出するまでは、牽制処理が継続する。結果的に、牽制処理が「有効」である限り、監視エリアA1に検知対象物Ob1が存在している間は、牽制処理により作業機械3の動作が牽制される。
【0103】
[3.3]変更処理
次に、本実施形態に係る制御方法の変更処理の詳細について説明する。
【0104】
本実施形態に係る制御方法は、作業機械3の周囲の監視エリアA1における検知対象物Ob1を検知する検知部13の検知結果に基づいて、作業機械3の動作を牽制する牽制処理を実行することと、牽制処理に係る機能の牽制レベルを変更することと、特定条件を満たす場合に、牽制レベルを高レベル側に変更することと、を有する。ここで、特定条件は、検知対象物Ob1としての第1対象物Ob11が監視エリアA1に存在する状態で牽制レベルが低レベル側に変更された後で、検知対象物Ob1として第1対象物Ob11とは別の第2対象物Ob12が監視エリアA1に存在すること、を含む。
【0105】
要するに、牽制レベル(本実施形態では、有効/無効の2値)は単に変更可能であるだけでなく、特定条件を満たすと、牽制レベルが高レベル側に自動的に変更される。そして、検知部13の検知結果が監視エリアA1に検知対象物Ob1(第1対象物Ob11)の存在を示す結果である状態で、牽制レベルが低レベル側(つまり「無効」)に変更された後で、監視エリアA1に第1対象物Ob11とは別の検知対象物Ob1(第2対象物Ob12)が侵入すると、特定条件を満たすことになる。したがって、このような特定条件を満たす場合に、牽制レベルが高レベル側(つまり「有効」)に自動的に変更される。
【0106】
本実施形態に係る制御方法によれば、ユーザU1(オペレータ)は、監視エリアA1に検知対象物Ob1(第1対象物Ob11)が存在することを認知した上で、例えば、手動操作により牽制レベルを低レベル側に変更することで、牽制処理によらずに作業機械3を作業に用いることができる。これにより、作業を効率的に進めることが可能となる。さらに、この状況(牽制レベルを低レベル側に変更した状況)で、監視エリアA1に新たな検知対象物Ob1(第2対象物Ob12)が侵入し、第2対象物Ob12が追加で検知されると、牽制レベルが高レベル側に自動的に変更される。したがって、例えば、ユーザU1が認知していない新たな検知対象物Ob1が、ユーザU1の死角から不意に作業機械3に接近するようなことがあれば、当該検知対象物Ob1の存在による動作制限(牽制処理)を作動させることができる。よって、本実施形態に係る制御方法によれば、監視エリアA1に存在する検知対象物Ob1への対処がしやすくなる。
【0107】
本実施形態では、特定条件は、牽制レベルが低レベル側に変更されるより前に、第1対象物Ob11が監視エリアA1に存在することによって牽制処理が実行されること、を更に含む。すなわち、特定条件に含まれる牽制レベルの低レベル側への変更よりも前に、第1対象物Ob11に起因して牽制処理が実行されること、が特定条件に含まれている。言い換えれば、第1対象物Ob11に起因して牽制処理が実行された後に、牽制レベルが低レベル側(つまり「無効」)に変更されて初めて、特定条件を満たすことになる。これにより、ユーザU1(オペレータ)は、監視エリアA1に検知対象物Ob1(第1対象物Ob11)が存在することを確実に認知した上で、例えば、手動操作により牽制レベルを低レベル側に変更することができる。
【0108】
以下に、特定条件を満たす具体例を示す。本実施形態では、牽制レベル有効/無効の2値である。しかも、牽制レベルはユーザU1の操作に応じて変更可能である。そのため、例えば、
図6の左側に示すように、第1対象物Ob11が監視エリアA1(小エリアA12)に存在することで、牽制処理によって作業機械3の動作が牽制された状態でも、ユーザU1の意思により、牽制レベルを低レベル側に変更して牽制処理を「無効」にすることが可能である。その結果、ユーザU1は、牽制処理によらずに作業機械3を用いて作業を効率的に進めることが可能となる。
【0109】
さらに、牽制処理が「無効」にされた後で、
図6の右側に示すように、第1対象物Ob11とは別の第2対象物Ob12が監視エリアA1(小エリアA11)に侵入すると、特定条件を満たすため、牽制レベルが高レベル側に変更され牽制処理が「有効」となる。特定条件を満たす場合は、ユーザU1の意思によらずに、牽制レベルが高レベル側(つまり「有効」)に自動的に変更されるので、ユーザU1が第2対象物Ob12の存在に気付いていなくても、第2対象物Ob12に起因した牽制処理が実行される。
【0110】
一方で、
図6の左側に示すように、第1対象物Ob11のみが監視エリアA1に存在する状態で、牽制処理を「無効」にする操作がされない場合には、特定条件を満たさない。また、
図6の左側に示すように、第1対象物Ob11のみが監視エリアA1に存在する状態で、牽制処理が実行される前に、牽制処理を「無効」にする操作がされた場合も、特定条件を満たさない。そのため、これらの場合には、牽制レベルが高レベル側(つまり「有効」)に自動的に変更されることはなく、
図6の右側に示すように、第2対象物Ob12が監視エリアA1に侵入しても、第2対象物Ob12に起因した牽制処理は実行されない。
【0111】
ところで、検知部13は、検知対象物Ob1を識別する識別処理を実行可能であるため、本実施形態に係る制御方法は、第1対象物Ob11と第2対象物Ob12とを識別する識別処理を実行すること、を更に有することになる。そのため、例えば、検知部13にて検知された第1対象物Ob11が一時的に監視エリアA1外に出て、再び監視エリアA1に戻ったような場合に、第2対象物Ob12とは区別して検知可能である。したがって、例えば、監視エリアA1の外周付近に検知対象物Ob1が存在することで、検知対象物Ob1が検知されたり検知されなかったりを繰り返すような状況で、第1対象物Ob11が検知された後に第2対象物Ob12が検知されたとの誤った判定を回避しやすい。
【0112】
また、本実施形態に係る制御方法は、識別処理では、検知対象物Ob1の視覚的特徴量に基づいて識別する。要するに、検知部13は、データ取得部12で取得された画像データに画像処理を施すことにより、画像中の特徴量(視覚的特徴量)を抽出し、当該視覚的特徴量に基づいて、画像に検知対象物Ob1(本実施形態では「人」)が写り込んでいるか否かを判断する。このとき、検知部13は、画像中の特徴量(視覚的特徴量)から、例えば、検知対象物Ob1の顔、髪型、服装、体形若しくは身長等、又はこれらの組み合わせを特定し、第1対象物Ob11と第2対象物Ob12とを識別する。したがって、第1対象物Ob11と第2対象物Ob12との識別を、比較的高精度で行うことが可能である。
【0113】
以上説明したように、第1対象物Ob11と第2対象物Ob12とを識別することで、例えば、
図7のようなケースで、第1対象物Ob11を誤って第2対象物Ob12と判定することを回避できる。すなわち、
図7の左側に示すように、第1対象物Ob11が小エリアA12に存在することで、牽制処理によって作業機械3の動作が牽制された状態で、牽制レベルが低レベル側(つまり「無効」)に変更された後、
図7の右側に示すように、作業機械3が旋回して第1対象物Ob11が別の小エリアA13に移動する場合を想定する。この場合、検知部13においては、検知対象物Ob1が小エリアA12から別の小エリアA13に移動しているものの、当該検知対象物Ob1がいずれも第1対象物Ob11であると判断できる。したがって、このような場合において、第1対象物Ob11を第2対象物Ob12と見誤った結果、特定条件を満たすとの誤判定が生じにくくなる。
【0114】
また、本実施形態に係る制御方法において、特定条件は、ユーザU1の操作受付状態において特定の操作状態が検知されること、を更に含む。具体的に、本実施形態では、第1対象物Ob11が監視エリアA1に存在する状態で牽制処理が「無効」にされた後で、第1対象物Ob11とは別の第2対象物Ob12が監視エリアA1に侵入すると、例えば
図8に示すような、承認表示I3を含む表示画面Dp1を表示装置2に表示させる。承認表示I3は、牽制処理が「無効」の状態で第2対象物Ob12(新規障害物)が検知されたことを示し、「牽制処理の無効状態を継続しますか?」のように、現在の牽制レベルを維持するか否かを問うテキストを表示する。さらに、承認表示I3は、ユーザU1の操作を受け付ける「はい」ボタンI31及び「いいえ」ボタンI32を含む。
【0115】
承認表示I3が表示された状態で、ユーザU1が、「はい」ボタンI31及び「いいえ」ボタンI32のいずれも操作しないまま所定時間が経過するか、又は「いいえ」ボタンI32を操作すると、特定の操作状態が検知されたこととなる。特定の操作状態が検知されると、特定条件を満たすと判定されるため、承認表示I3の表示を終了し、牽制レベルが高レベル側(つまり「有効」)に自動的に変更される。一方、所定時間内にユーザU1が、「はい」ボタンI31を操作すると、特定の操作状態が検知されないため、特定条件を満たさず、牽制レベルは低レベル側(つまり「無効」)に維持される。このように、特定の操作状態が検知されることを特定条件に含むことで、ユーザU1が第2対象物Ob12の存在を認知している場合には、牽制レベルを低レベル側に維持することも可能となる。
【0116】
また、本実施形態に係る制御方法は、規制条件を満たす場合に、牽制レベルの低レベル側への変更を規制することを更に有する。ここで、規制条件は、作業機械3の特定の操作と、監視エリアA1の特定エリアに検知対象物Ob1が存在することと、の少なくとも一方を含む。すなわち、本実施形態では、いつでも牽制レベルを低レベル側(つまり「無効」)に変更できるのではなく、規制条件を満たす場合にあっては、牽制レベルの低レベル側への変更が規制(禁止)される。作業機械3の特定の操作は、例えば、表示装置2に対して行う、牽制処理を「有効」に固定するための操作等である。特定エリアは、監視エリアA1のうち、例えば、機体30からある距離(例えば、1m等)以内のエリア、又は小エリアA11,A12,A13のいずれか等である。
【0117】
要するに、牽制処理を「有効」に固定するための操作がユーザU1によりなされている場合には、そもそも変更処理部15が、牽制レベルを低レベル側(つまり「無効」)に変更することができない。同様に、例えば、監視エリアA1のうち機体30からある距離以内の特定エリアに検知対象物Ob1が存在する場合には、そもそも変更処理部15が、牽制レベルを低レベル側(つまり「無効」)に変更することができない。さらに、本実施形態では、牽制レベルが低レベル側(つまり「無効」)に変更された状態で、規制条件を満たす場合には、変更処理部15は、牽制レベルを高レベル側(つまり「有効」)に変更することとする。したがって、規制条件を満たす場合にあっては、作業機械3が検知対象物Ob1に接触することを回避しやすくなる。
【0118】
[3.4]全体処理
次に、制御方法に係る処理の全体の流れについて、
図9を参照して説明する。
図9は、制御方法に係る処理の一例を示すフローチャートである。
図9では、牽制レベルの初期値として「1」が設定されており、牽制処理が「有効」に設定されている場合を想定する。
【0119】
図9に示すように、制御システム1の牽制処理部14は、検知部13の検知結果に基づいて検知対象物Ob1(第1対象物Ob11)が監視エリアA1に存在するか否かを判定する(S1)。監視エリアA1に検知対象物Ob1が存在する場合、牽制処理部14は、第1対象物Ob11が存在すると判定し(S1:Yes)、牽制処理を開始する(S2)。一方、監視エリアA1に検知対象物Ob1が存在しない場合(S1:No)、制御システム1はステップS1を繰り返し実行する。
【0120】
ステップS2の次のステップS3において、制御システム1の変更処理部15は、牽制レベルを低レベル側、つまり牽制処理を「無効」にする操作がなされたか否かを判定する。切替操作部37が操作された場合、変更処理部15は、牽制処理を「無効」にする操作がされたと判定し(S3:Yes)、牽制レベルを低レベル側(「0」)に変更し、牽制処理を無効化する(S4)。これにより、牽制処理部14は牽制処理を終了する(S5)。一方、切替操作部37が操作されなければ、変更処理部15は、牽制処理を「無効」にする操作がされていないと判定し(S3:No)、処理をステップS9に移行させる。
【0121】
ステップS5の次のステップS6において、制御システム1の変更処理部15は、検知部13の検知結果に基づいて第2対象物Ob12が監視エリアA1に存在するか否かを判定する。監視エリアA1に第1対象物Ob11とは別の検知対象物Ob1が存在する場合、変更処理部15は、第2対象物Ob12が存在すると判定し(S6:Yes)、牽制レベルを高レベル側(「1」)に変更し、牽制処理を有効化する(S7)。これにより、牽制処理部14は牽制処理を開始(再開)する(S8)。一方、監視エリアA1に第2対象物Ob12が存在しない場合(S6:No)、制御システム1は、一連の処理を終了する。
【0122】
ステップS9においては、制御システム1の牽制処理部14は、検知部13の検知結果に基づいて検知対象物Ob1(第1対象物Ob11又は第2対象物Ob12)が監視エリアA1に存在するか否かを判定する。監視エリアA1に検知対象物Ob1が存在する場合、制御システム1はステップS9を繰り返し実行する。一方、監視エリアA1に検知対象物Ob1が存在しない場合(S9:No)、牽制処理部14は牽制処理を終了する(S10)。
【0123】
制御システム1は、上記ステップS1~S10の処理を繰り返し実行する。ただし、
図9に示すフローチャートは一例に過ぎず、処理が適宜追加又は省略されてもよいし、処理の順番が適宜入れ替わってもよい。
【0124】
[4]変形例
以下、実施形態1の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0125】
本開示における制御システム1は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしての1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における制御システム1としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。また、制御システム1に含まれる一部又は全部の機能部は電子回路で構成されていてもよい。
【0126】
また、制御システム1の少なくとも一部の機能が、1つの筐体内に集約されていることは制御システム1に必須の構成ではなく、制御システム1の構成要素は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。反対に、実施形態1において、複数の装置(例えば制御システム1及び表示装置2)に分散されている機能が、1つの筐体内に集約されていてもよい。さらに、制御システム1の少なくとも一部の機能がクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。
【0127】
ところで、特定条件は、第1対象物Ob11が監視エリアA1に存在する状態において、牽制レベルが低レベル側に変更されるより前に、作業機械3のカットオフレバー350がロック状態からロック解除状態に切り替えられること、を更に含んでもよい。すなわち、特定条件に含まれる牽制レベルの低レベル側への変更よりも前に、カットオフレバー350がロック状態からロック解除状態に切り替えられること、が特定条件に含まれてもよい。言い換えれば、カットオフレバー350がロック状態からロック解除状態に切り替えられた後に、牽制レベルが低レベル側(つまり「無効」)に変更されて初めて、特定条件を満たすことになる。これにより、ユーザU1(オペレータ)は、監視エリアA1に検知対象物Ob1(第1対象物Ob11)が存在することを確実に認知した上で、例えば、手動操作により牽制レベルを低レベル側に変更することができる。
【0128】
また、牽制レベルが低レベル側に変更されるより前に、第1対象物Ob11が監視エリアA1に存在することによって牽制処理が実行されることは、特定条件に含まれなくてもよい。ユーザの操作受付状態において特定の操作状態が検知されることも、特定条件に含まれなくてもよい。
【0129】
また、変更処理部15にて変更可能な牽制レベルが、有効(1)/無効(0)の2値であることは必須ではない。牽制レベルは、例えば、牽制処理のうち警報処理と制限処理とのいずれを有効とするか、又は、警報処理における報知音の音量若しくは制限処理における動作制限の内容等の、「牽制処理の強度」を含んでもよい。一例として、警報処理のみが有効である状態よりも、警報処理と制限処理との両方が有効である状態の方が、牽制レベル(牽制処理の強度)は高レベルとなる。同様に、制限処理において旋回部32の動作のみを制限する状態よりも、走行部31、旋回部32及び作業部33の全ての動作を制限する状態の方が、牽制レベル(牽制処理の強度)は高レベルとなる。
【0130】
さらに、牽制レベルは、例えば、監視エリアA1の大きさ、又は、検知対象物Ob1の検知用の閾値等の、「検知感度」を含んでもよい。一例として、監視エリアA1が広い程、牽制レベル(検知感度)は高レベルとなる。同様に、検知対象物Ob1の検知用の閾値が低い程、牽制レベル(検知感度)は高レベルとなる。牽制レベルは、これら有効/無効、牽制処理の強度及び検知感度のうちの2つ以上の項目を含んでもよい。
【0131】
また、変更処理部15が、ユーザの操作に応じて牽制レベルを変更することは必須ではない。例えば、変更処理部15は、作業機械3の種別、監視エリアA1、検知対象物Ob1又は時間帯等に関する情報に基づいて、牽制レベルを自動的に変更してもよい。
【0132】
また、作業機械3は、乗用タイプに限らず、例えば、作業機械3の外部からユーザ(オペレータ)の遠隔操作に従って駆動される無人機であってもよい。この場合、作業機械3と無線通信可能な端末に、例えば、表示装置2、音出力部36及び切替操作部37等に相当する機能が搭載されることが好ましい。これにより、ユーザは、作業機械3の外部から切替操作部37を操作すること等が可能となる。
【0133】
また、作業機械3の動力源は、ディーゼルエンジンに限らず、例えば、ディーゼルエンジン以外のエンジンであってもよいし、モータ(電動機)、又はエンジンとモータ(電動機)とを含むハイブリッド式の動力源であってもよい。
【0134】
また、表示装置2は、専用のデバイスに限らず、例えば、ラップトップコンピュータ、タブレット端末又はスマートフォン等の汎用端末であってもよい。さらに、表示部23は、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイのように、表示画面を直接的に表示する態様に限らず、例えば、プロジェクタのように、投影により表示画面を表示する構成であってもよい。
【0135】
また、操作部22の情報の入力の態様として、押釦スイッチ、タッチパネル及び操作ダイヤル以外の態様を採用してもよい。例えば、操作部22は、キーボード、マウス等のポインティングディバイス、音声入力、ジェスチャ入力又は他の端末からの操作信号の入力等の態様を採用してもよい。
【0136】
また、制限処理部142が実行する制限処理は、作業機械3の動作を制限する処理であればよく、作業機械3の動作(旋回動作等)を禁止する(動作不能とする)処理に限らない。制限処理は、例えば、作業機械3の動作(旋回動作等)の速度を減速する処理、作業機械3の動作範囲(旋回角度等)を狭める処理、又は作業機械3の動作の許容エリアを制限する処理等であってもよい。さらに、第2制限部49は、油圧ポンプ41を駆動するエンジンの回転数を制御することで、油圧ポンプ41から吐出される作動油の流量を調節可能であってもよい。この場合、第2制限部49は、エンジンの回転数を制御するエンジン制御部を含み、油圧ポンプ41の回転数を制御することで、油圧ポンプ41の作動油の吐出量を変化させる。
【0137】
また、作業機械3の周囲の監視エリアA1における検知対象物Ob1を検知するためのセンサは、左方カメラ341、右方カメラ342及び後方カメラ343に限らず、1つ、2つ又は4つ以上のカメラ(イメージセンサ)を含んでもよい。さらに、例えば、全天球カメラ(360度カメラ)のように作業機械3から見て全方位を撮像可能なカメラにて、監視エリアA1における検知対象物Ob1を検知してもよい。また、監視エリアA1における検知対象物Ob1を検知するためのセンサは、カメラに加えて又は代えて、たとえば、人感センサ、ソナーセンサ、レーダ又はLiDAR(Light Detection and Ranging)等のセンサを含んでもよい。ここで、監視エリアA1における検知対象物Ob1を検知するセンサは、光又は音が測距点に到達して戻るまでの往復時間に基づいて測距点までの距離を測定するTOF(Time Of Flight)方式により、検知対象物Ob1までの距離を測定する3次元センサであってもよい。
【0138】
また、検知対象物Ob1は、「人」に加えて又は代えて、車両等の移動体(他の作業機械を含む)、壁及び柱等の構造物、植物、動物、段差、溝、若しくはその他の障害物を含んでいてもよい。
【0139】
(実施形態2)
本実施形態に係る作業機械3は、識別処理の内容が、実施形態1に係る作業機械3と相違する。以下、実施形態1と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。
【0140】
本実施形態において、監視エリアA1における検知対象物Ob1を検知するためのセンサは、例えば、LiDAR等の検知対象物Ob1までの距離を測定する3次元センサを含んでいる。そして、識別処理では、検知対象物Ob1の動きの特徴量に基づいて識別する。要するに、検知部13は、データ取得部12で取得された3次元センサの出力から、監視エリアA1における検知対象物Ob1の動きの特徴量(位置、移動速度及び移動方向等)を抽出し、当該特徴量に基づいて、第1対象物Ob11と第2対象物Ob12とを識別する。すなわち、検知部13は、検知対象物Ob1(第1対象物Ob11)が検知されると、動きの特徴量に基づいて第1対象物Ob11を追跡し、第1対象物Ob11とは別の検知対象物Ob1が検知された場合には、これを第2対象物Ob12として識別する。したがって、第1対象物Ob11と第2対象物Ob12との識別を、比較的高精度で行うことが可能である。
【0141】
また、他の例として、識別処理では、検知対象物Ob1に付された識別子の識別情報に基づいて識別してもよい。本開示でいう「識別子」は、識別情報が割り当てられた物体を意味し、例えば、RFID(Radio Frequency Identification)を利用した電子タグ(RFIDタグ)、又は、バーコードリーダ若しくは二次元コード等が付されたヘルメット等である。要するに、検知対象物Ob1としての作業者が、固有の識別情報が割り当てられた電子タグを所持している場合、検知部13は、データ取得部12で取得されたタグリーダの出力から、監視エリアA1における検知対象物Ob1の識別情報(作業車ID等)を特定する。検知部13は、特定される識別情報により、第1対象物Ob11と第2対象物Ob12とを識別する。したがって、第1対象物Ob11と第2対象物Ob12との識別を、比較的高精度で行うことが可能である。
【0142】
実施形態2の変形例として、識別処理では、検知対象物Ob1の視覚的特徴量と、検知対象物Ob1の動きの特徴量と、検知対象物Ob1に付された識別子の識別情報と、のうちの2つ以上の組み合わせに基づいて検知対象物Ob1を識別してもよい。
【0143】
実施形態2に係る構成(変形例を含む)は、実施形態1で説明した種々の構成(変形例を含む)と適宜組み合わせて採用可能である。
【0144】
〔発明の付記〕
以下、上述の実施形態から抽出される発明の概要について付記する。なお、以下の付記で説明する各構成及び各処理機能は取捨選択して任意に組み合わせることが可能である。
【0145】
<付記1>
作業機械の周囲の監視エリアにおける検知対象物を検知する検知部の検知結果に基づいて、前記作業機械の動作を牽制する牽制処理を実行することと、
前記牽制処理に係る機能の牽制レベルを変更することと、
特定条件を満たす場合に、前記牽制レベルを高レベル側に変更することと、を有し、
前記特定条件は、前記検知対象物としての第1対象物が前記監視エリアに存在する状態で前記牽制レベルが低レベル側に変更された後で、前記検知対象物として前記第1対象物とは別の第2対象物が前記監視エリアに存在すること、を含む、
作業機械の制御方法。
【0146】
<付記2>
前記牽制レベルは、前記牽制処理の有効/無効を含み、
前記牽制レベルが低レベル側に変更されることで、前記牽制処理を有効から無効に切替可能である、
付記1に記載の作業機械の制御方法。
【0147】
<付記3>
ユーザの操作に応じて前記牽制レベルを変更すること、を更に有する、
付記1又は2に記載の作業機械の制御方法。
【0148】
<付記4>
前記特定条件は、前記牽制レベルが低レベル側に変更されるより前に、前記第1対象物が前記監視エリアに存在することによって前記牽制処理が実行されること、を更に含む、
付記1~3のいずれかに記載の作業機械の制御方法。
【0149】
<付記5>
前記特定条件は、前記第1対象物が前記監視エリアに存在する状態において、前記牽制レベルが低レベル側に変更されるより前に、前記作業機械のカットオフレバーがロック状態からロック解除状態に切り替えられること、を更に含む、
付記1~4のいずれかに記載の作業機械の制御方法。
【0150】
<付記6>
前記第1対象物と前記第2対象物とを識別する識別処理を実行すること、を更に有する、
付記1~5のいずれかに記載の作業機械の制御方法。
【0151】
<付記7>
前記識別処理では、前記検知対象物の視覚的特徴量に基づいて識別する、
付記6に記載の作業機械の制御方法。
【0152】
<付記8>
前記識別処理では、前記検知対象物の動きの特徴量に基づいて識別する、
付記6又は7に記載の作業機械の制御方法。
【0153】
<付記9>
前記識別処理では、前記検知対象物に付された識別子の識別情報に基づいて識別する、
付記6~8のいずれかに記載の作業機械の制御方法。
【0154】
<付記10>
前記作業機械の特定の操作と、前記監視エリアの特定エリアに前記検知対象物が存在することと、の少なくとも一方を含む規制条件を満たす場合に、前記牽制レベルの低レベル側への変更を規制すること、を更に有する、
付記1~9のいずれかに記載の作業機械の制御方法。
【0155】
<付記11>
前記特定条件は、ユーザの操作受付状態において特定の操作状態が検知されること、を更に含む、
付記1~10のいずれかに記載の作業機械の制御方法。
【0156】
<付記12>
付記1~11のいずれかに記載の作業機械の制御方法を、
1以上のプロセッサに実行させるための作業機械用制御プログラム。
【符号の説明】
【0157】
1 作業機械用制御システム
3 作業機械
13 検知部
14 牽制処理部
15 変更処理部
30 機体
350 カットオフレバー
A1 監視エリア
Ob1 検知対象物
Ob11 第1対象物
Ob12 第2対象物